ここに開示された実施形態について、添付された図面を参照して以下に説明する。図1は、スライドドアを有する車両を上から見た概略図である。スライドドア100は、車両本体101の昇降口102を全閉する全閉状態と、昇降口102を全開する全開状態とを採り得るように、昇降口102に対して開閉可能に車両本体101に取り付けられる。スライドドア100を開閉操作するためのアウトサイドハンドルがスライドドア100の室外面に、インサイドハンドルがスライドドア100の室内面に、それぞれ設けられる。
図2は、スライドドア100およびスライドドア100に取り付けられる車両ドア開閉装置を示す図である。図2に示すように、スライドドア100の内部には、スライドドア100を全閉位置にて係止するための前側ドアロック装置10Aおよび後側ドアロック装置10Bと、スライドドア100を全開位置にて係止するための全開ドアロック装置10Cと、これらのドアロック装置にケーブル等の接続部材を介して接続され、接続部材を介してこれらのドアロック装置の作動を操作するリモコン装置10Dが設けられる。前側ドアロック装置10Aはスライドドア100の前端側に設けられ、後側ドアロック装置10Bはスライドドア100の後端側に設けられる。全開ドアロック装置10Cはスライドドア100の前端側の下方部位に設けられる。これらの配設位置に対応するように、車両本体101のドア枠の内側面に複数のストライカ103が設けられる(図1参照)。また、車両本体101の所望位置にドア制御装置104が取り付けられる。ドア制御装置104は、スライドドア100の開閉作動に関する動作を制御する。また、車両本体101にはパワースライドドアユニット105が設けられる。パワースライドドアユニット105は、スライドドア100を自動的に開閉させるための駆動部品を有し、ドア制御装置104からの指令に基づいてスライドドア100を開閉作動させる。前側ドアロック装置10A、後側ドアロック装置10B、全開ドアロック装置10C、リモコン装置10D、ドア制御装置104およびパワースライドドアユニット105により本実施形態の車両ドア開閉装置が構成される。なお、パワースライドドアユニット105及びドア制御装置104は、車両本体101ではなく、スライドドア100に設けても良い。
図6Aは後側ドアロック装置10Bの概略構成を示す正面図、図6Bは後側ドアロック装置10Bの背面図である。なお、前側ドアロック装置10Aの構成は、後側ドアロック装置10Bの構成と類似しているので、その具体的な構成の説明は省略する。図6Aおよび図6Bからわかるように、後側ドアロック装置10Bは、第1ベース盤11Aと、第2ベース盤11Bと、係止機構としてのラッチアンドポール機構20と、レバー機構40と、駆動部60とを備える。第1ベース盤11Aはボルト等の締結部材を介して第2ベース盤11Bに連結される。第1ベース盤11Aと第2ベース盤11Bは、それぞれ互いに交差する平面を有する。第1ベース盤11Aにラッチアンドポール機構20が取付けられる。第2ベース盤11Bにレバー機構40および駆動部60が取付けられる。
図3は、第1ベース盤11Aに取付けられるラッチアンドポール機構20の概略構成を主に示す図である。図3に示すように、ラッチアンドポール機構20は、ラッチ21と、ポール22と、ポール駆動レバー23と、第1ベース盤11Aに形成されたストライカ受容溝14とを有する。スライドドア100を閉じるとストライカ受容溝14の開放端部からストライカ受容溝14内にストライカ103が進入する。
ストライカ受容溝14よりも図3において車両上方位置にて、ポール22が第1ベース盤11Aに回動可能に軸支される。ポール22は、その回動軸22aから図3において左方側に延出したラッチ係止片22bを有する。また、ポール22と第1ベース盤11Aとの間にトーションコイルバネ(図示省略)が設けられており、このトーションコイルバネによりポール22が図3において反時計周り方向(規制方向)に付勢される。
ポール駆動レバー23は回動軸22aを中心としてポール22と一体的に回動するように構成される。ポール駆動レバー23が図3において時計周り方向に回動した場合、これに連動してポール22がトーションコイルバネの付勢力に抗して図3において時計周り方向(解除方向)に回動する。
ストライカ受容溝14よりも車両下方位置にて、ラッチ21が第1ベース盤11Aに回動可能に軸支される。ラッチ21は、その回動軸21aから径外方に向けて突出したハーフラッチ爪21bおよびフルラッチ爪21cを有する。また、フルラッチ爪21cの図において下方部分には、回動軸21aから径外方に向けて延びた溝21dが形成される。溝21d内にストライカ103が受け入れられる。ラッチ21と第1ベース盤11Aとの間にはトーションコイルバネ(図示省略)が設けられ、このトーションコイルバネによりラッチ21が図3において時計周り方向(解除方向)に付勢される。そして、スライドドア100を開けた状態では、ラッチ21に形成された図示しないストッパが第1ベース盤11Aに当接することにより、ラッチ21は図3に示されるような所定の位置(解除位置)に位置決めされる。
スライドドア100が開いている状態から、スライドドア100を閉方向にスライドさせた場合、ストライカ103がストライカ受容溝14に進入する。ストライカ103はさらにラッチ21に形成されている溝21d内にも進入する。ストライカ103が溝21dの側壁に当接することによりラッチ21がストライカ103に押されて図3において反時計周り方向(規制方向)に回動する。これによりラッチ21がストライカ103に噛み合う。
ラッチ21の回転位置は、ストライカ103に押されることによって図3に示される解除位置から図4に示される回転位置(ハーフラッチ位置)を経由して図5に示される回転位置(フルラッチ位置)に移行する。図5に示されるフルラッチ位置では、ラッチ21のフルラッチ爪21cがポール22のラッチ係止片22bに係合してラッチ21の解除方向への回動が規制されるとともにラッチ21がストライカ103を保持する状態が維持される。このためスライドドア100が全閉位置に係止されるとともに全閉状態が維持される。尚、ラッチ21の回転位置が図4に示されるハーフラッチ位置であるときは、ラッチ21のハーフラッチ爪21bがポール22のラッチ係止片22bに係合する。この状態でもラッチ21がストライカ103を保持する状態が維持される。ただし、スライドドア100は全閉位置の近傍位置に係止され、スライドドア100の開閉状態はいわゆる半ドア状態である。
また、ポール駆動レバー23には被押下片23aが形成される。被押下片23aは、後述するオープンレバー43の押下片43cによって押し下げられるような位置に配置される。ラッチ21がストライカ103を保持しているときに、オープンレバー43によって被押下片23aが押し下げられることで、ポール駆動レバー23が図5において時計周り方向に回動操作され、これに伴いポール22も時計周り方向(解除方向)に回動する。そして、図5の点線で示す回転位置(解除位置)までポール22が回転する。点線で示す回転位置ではポール22はラッチ21に係合しない。したがって、ポール22によるラッチ21の回転規制が解除されて、ラッチ21の解除方向への回動が許容される。この状態では、スライドドア100を開くことができる。すなわちラッチアンドポール機構によるスライドドア100の係止が解除される。
また、図3に示すように、ラッチ21には脚部21eが形成される。脚部21eはラッチ21の回動軸21aから図3において下方に延びている。脚部21eは、ラッチ21がハーフラッチ位置であるときに、後述するシーソー型レバー42に当接する。
全開ドアロック装置10Cも、上述したラッチアンドポール機構に類似するラッチアンドポール機構を有する。全開ドアロック装置10Cは、スライドドア100が全開状態であるときに、ポールがラッチの解除方向への回転を規制してラッチがストライカを保持する状態に維持する。これによりスライドドア100が全開位置にて係止されるとともにスライドドア100の全開状態が維持される。そして、スライドドア100が全開状態であるときに、インサイドハンドル又はアウトサイドハンドルを閉操作することにより、ポールによるラッチの規制が解除される。これによりスライドドア100を閉じることができる。なお、全開ドアロック装置10Cでは、ラッチが解除位置とフルラッチ位置との2位置に移行するものが一般的である。
図6Aに示すように、レバー機構40は、アクティブレバー41と、シーソー型レバー42と、オープンレバー43と、位置決めレバー44と、リリースレバー45と、中継レバー46と、キャンセルレバー47とを備える。これらの各レバーの回転軸方向は同一方向である。また、これらの各レバーは第2ベース盤11Bに支持されており、各レバーの回転軸方向は第1ベース盤11Aに支持されているラッチ21、ポール22およびポール駆動レバー23の回転軸方向に直交する。
アクティブレバー41は図6Aに示すように略扇形状をなし、その円弧中心(軸心)C1にて第2ベース盤11Bに回動可能に軸支される。アクティブレバー41の円弧辺の外周にギヤ41dが形成される。また、アクティブレバー41には、その軸心C1から図6Aにおいて左下方向に延びる支持突片41aと、軸心C1から図6Aにおいて右上方向に延びる当接片41bとが形成される。支持突片41aにシーソー型レバー42が回動可能に軸支される。
当接片41bは、アクティブレバー41の円弧辺の反時計周り方向側の端部から図6Aにおいて上方に突出するように設けられる。当接片41bは、アクティブレバー41が図6Aにおいて軸心C1を中心として反時計周り方向に回動したときに、後述する中継レバー46の突部46dに係合するように構成される。
シーソー型レバー42は、その回動軸42aから一方に延びた第1腕部42bおよび第1腕部42bの延在方向とは反対の方向に延びた第2腕部42cを有し、回動軸42aを挟んでシーソー状に構成される。第1腕部42bは、その先端部にてラッチ21の脚部21eに当接可能な位置に設けられる。一方、第2腕部42cの先端には当接コロ42dが取り付けられる。また、シーソー型レバー42はトーションコイルバネによって第1腕部42bの先端部がラッチ21の脚部21eから離れる方向に付勢される。
位置決めレバー44は、オープンレバー43と同軸的に第2ベース盤11Bに軸心C2にて回動可能に軸支される。位置決めレバー44は、その軸心C2から図6Aにおいて下方に延在した第1当接片44aと、その軸心C2から図6において上方に延在した第2当接片44bとを有する。アクティブレバー41が図6Aにおいて軸心C1を中心として時計周り方向に回動すると、位置決めレバー44の第1当接片44aの下方端に当接コロ42dが当接する。これにより当接コロ42dが位置決めされる。一方、位置決めレバー44が当接コロ42dを位置決めしない位置に移動すると、位置決めレバー44によるシーソー型レバー42の位置決めおよび支持が解除されてシーソー型レバー42がアクティブレバー41に対して回転可能になる。
オープンレバー43は上述したように位置決めレバー44と同軸的に第2ベース盤11Bに軸心C2にて回動可能に軸支される。オープンレバー43は、その軸心C2から一方に延在したポール駆動腕部43aと、軸心C2からポール駆動腕部43aの延在方向とは反対方向に延在したケーブル取り付け片43bとを有する。ポール駆動腕部43aの先端には押下片43cが設けられており、この押下片43cが上述のようにポール駆動レバー23の被押下片23aを押し下げる。一方、ケーブル取り付け片43bの先端にはオープンケーブル92Wの一端が接続される。なお、オープンレバー43には図示しないトーションスプリングが取り付けられており、このトーションスプリングによって、オープンケーブル92Wを引っ張る方向に、すなわち図6において時計周り方向に付勢される。
図7は、位置決めレバー44、リリースレバー45、中継レバー46およびキャンセルレバー47の配置関係を表す図である。また、図8はリリースレバー45の正面図、図9は中継レバー46の正面図、図10はキャンセルレバー47の正面図である。
図6Aに示すように、リリースレバー45は、オープンレバー43の軸心C2から右斜め上方に離間した位置(軸心C3)にて第2ベース盤11Bに回動可能に軸支される。図7および図8に示すように、リリースレバー45は、その軸心C3から左方に延在し先端に向かうほど先細りに形成された連結片45aと、その軸心C3から右斜め下方に延在したケーブル取り付け片45bを有する。連結片45aには、左右方向に延びる孔部45cが貫通形成される。孔部45cは、左右に延びる長孔部と、長孔部の右端部に形成され長孔部の短径(幅)よりも大きい径を持つ丸孔部とからなる。この孔部45c内に連結ピン51が挿通される。リリースレバー45は、図示しないトーションスプリングによって図7において反時計周り方向に付勢される。そして、図示しないストッパに当接することにより図7に示す位置(原位置)に位置決めされる。尚、図7において、孔部45cの長孔部に連結ピン51が挿通されている。また、図6Aに示すように、ケーブル取り付け片45bの先端にはリリースケーブル93Wの一端が接続される。
中継レバー46はリリースレバー45と同軸的に軸心C3にて第2ベース盤11Bに回動可能に軸支される。この中継レバー46はリリースレバー45の連結片45aと重なるように配置され、連結片45aと同様に軸心C3から先端に向かうほど先細りに形成される。また、図9に良く示すように、中継レバー46の先端部分には、先端側に開口した切欠き46aが形成される。切欠き46aは図9において左右方向に延びて形成される。中継レバー46とリリースレバー45が重ね合わされたときに、切欠き46aはリリースレバー45の孔部45cの長孔部に重ね合わされる。上述した連結ピン51は中継レバー46の切欠き46aにも挿通可能である。また、切欠き46aを境として軸心C3から図9において左方に延びる上側部分46bおよび下側部分46cが上下に離間して互いに平行に形成される。上側部分46bの長さは下側部分46cの長さよりも長く形成される。また、中継レバー46には下方に突出した突部46dが形成される。突部46dは、アクティブレバー41がその軸心C1(図6A参照)を中心として図6Aにおいて反時計周り方向に回動したときに、アクティブレバー41の当接片41bが係合する位置に形成される。中継レバー46は、図示しないトーションスプリングによって図7において反時計周り方向に付勢される。そして、図示しないストッパに当接することにより図7に示す位置(原位置)に位置決めされる。リリースレバー45と中継レバー46の回転位置が共に原位置であるときに、中継レバー46の切欠き46aがリリースレバー45の孔部45cの長孔部に重ね合わされる。
キャンセルレバー47は、図6Aに示すように、リリースレバー45の上方位置(軸心C4)にて第2ベース盤11Bに回動可能に軸支される。図7および図10に示すように、キャンセルレバー47は、その軸心C4からリリースレバー45に近づく方向に向けて円弧状に延在した第1腕部47aと、軸心C4から第1腕部47aの延在方向とは反対方向に延在した第2腕部47bとを有する。第1腕部47aには、軸心C3を中心とする円弧状の長孔47cが設けられる。第1腕部47aは図7に示す方向から見てリリースレバー45の連結片45aおよび中継レバー46に重ね合わされるように配置されており、連結ピン51はキャンセルレバー47の長孔47cにも挿通する。つまり、連結ピン51が、キャンセルレバー47の長孔47c、リリースレバー45の孔部45c、および中継レバー46の切欠き46aに同時に挿通することができるように、それぞれのレバーが配置されている。キャンセルレバー47は、図示しないトーションスプリングによって図7において反時計周り方向に付勢されている。そして、図示しないストッパに当接することにより図7に示す位置(原位置)に位置決めされる。また、第2腕部47bにはケーブル取り付け片47dが取り付けられており、このケーブル取り付け片47dはキャンセルケーブル94Wの一端に接続される。
駆動部60は、ドア制御装置104からの駆動指令信号に基づいて駆動する。駆動部60は、例えばスライドドア100の係止状態が半ドア状態である場合に自動的に全閉位置にて係止されるように駆動するクローズ動作、ポールによるラッチの規制を自動的に解除するように駆動するリリース動作、を実行する。
図6Aに示すように、駆動部60は、電動モータ61および減速機構62を備える。電動モータ61は第2ベース盤11Bの所望の位置に固定される。また、減速機構62は、ウォームギヤ62a、ホイールギヤ62bおよびピニオンギヤ62cを有するウォーム式減速機である。ウォームギヤ62aは電動モータ61の出力軸と一体的に回転するように出力軸と同軸的に配置される。ホイールギヤ62bはウォームギヤ62aの回転軸に直交する回転軸を有し、ウォームギヤ62aの回転を減速するようにウォームギヤ62aに噛み合わされる。また、ピニオンギヤ62cはホイールギヤ62bよりも小径であり、ホイールギヤ62bと同軸回転するようにホイールギヤ62bに取り付けられる。このような構成の減速機構62は、そのピニオンギヤ62cがアクティブレバー41の外周縁に形成されているギヤ41dに噛み合うように、第2ベース盤11Bの所望位置に固定される。
図11はリモコン装置10Dを示す図である。図11に示すように、リモコン装置10Dは、板状のベース盤70と、操作機構80とを備える。操作機構80はベース盤70の一方の面側に取り付けられる。このベース盤70の他方の面側には、インサイドハンドル71が設けられる。したがって、リモコン装置10Dがスライドドア100に取り付けられることによって、インサイドハンドル71がスライドドア100に取り付けられる。
インサイドハンドル71は、図11において上下方向に延びた縦長形状をなし、スライドドア100の室内面に露出している。インサイドハンドル71は、スライドドア100を開閉操作するときに、乗員により車室内から手動操作される。インサイドハンドル71は、スライドドア100のスライド方向に傾動可能に構成される。具体的には、インサイドハンドル71は、トーションコイルバネによって図11に示す原点位置に付勢されており、原点位置からスライドドア100の閉方向側に傾動させる閉操作と、原点位置からスライドドア100の開方向側に傾動させる開操作とを行うことが可能に構成される。
図12は、操作機構80を含むリモコン装置10D内の主な構成を示す図である。図12に示すように、操作機構80は、ロッキングレバー81、リモコン側オープンレバー82、インサイドハンドルレバー83、アウトサイドハンドルレバー84、リモコン側リリースレバー85、全開ロックレバー86、リモコン側キャンセルレバー87を備え、これらのレバーが重ね合わされた状態で、ベース盤70から起立した支持軸72にそれぞれ回転可能に軸支される。
図13は全開ロックレバー86の正面図である。図13に示すように、全開ロックレバー86は、支持軸72から上方に延出した第1レバー突片86aおよび下方に延出した第2レバー突片86bを有する。第1レバー突片86aの先端部はオープンケーブル95W(図2参照)を介して全開ドアロック装置10Cに設けられているポール(ポール駆動レバー)に接続される。第2レバー突片86bには、支持軸72を中心とする円弧状長孔86cが貫通形成される。円弧状長孔86cにはスライドブッシュ73が摺動可能に支持され、そのスライドブッシュ73にインサイドハンドル71から延びたロッド71aが固定される(図11参照)。スライドドア100が全開状態であるときにインサイドハンドル71を閉操作した場合、全開ロックレバー86がロッド71aに押されて支持軸72周りを図11〜図13における時計周り方向に回動する。すると、第1レバー突片86aに接続されたオープンケーブル95Wがリモコン装置10D側に引っ張られて、全開ドアロック装置10Cに設けられているポールによるラッチの回動規制が解除される。なお、図11に示すように全開ロックレバー86の第1レバー突片86aとベース盤70との間にコイルバネ74が介在しており、このコイルバネ74により全開ロックレバー86が図11〜図13における反時計周り方向に付勢される。そして、スライドブッシュ73が円弧状長孔86cの端部にて全開ロックレバー86に係合することによって、全開ロックレバー86が図11に示す位置(原位置)に位置決めされる。
また、全開ロックレバー86には、スイッチ押下突片86dが形成される。スイッチ押下突片86dは、支持軸72から図11〜図13の左方に延出される。スイッチ押下突片86dは、全開ロックレバー86が支持軸72を中心として時計周り方向に回動したときに、ベース盤70に固定されたスイッチ79を押下する。スイッチ79のオン・オフ状態はドア制御装置104に入力される。さらに、全開ロックレバー86には係合片86hが形成される。係合片86hは円弧状長孔86cの下方部位から全開ロックレバー86の回動半径方向外方に突出するように形成されていて、後述するリモコン側リリースレバー85の係合片85hに係合可能に構成される。
図14はリモコン側オープンレバー82の正面図である。図14に示すように、リモコン側オープンレバー82は、支持軸72から相反する方向に延びた第1レバー突片82aおよび第2レバー突片82bとを有する。ここで、後述するように、ロッキングレバー81とベース盤70(支持軸72)との間にトーションコイルバネが取り付けられており、このトーションコイルバネの付勢力によりロッキングレバー81が図11において反時計周り方向に付勢される。リモコン側オープンレバー82は、後述する可動ピン52でロッキングレバー81に連結しているので、リモコン側オープンレバー82はこのトーションコイルバネの付勢力で反時計周り方向に付勢される。そして、リモコン側オープンレバー82は、図11に示す回転位置にてベース盤70に係合することにより、図11に示す位置(原位置)に位置決めされる。
また、図14に示すように、第1レバー突片82aの先端には、前側オープンケーブル取り付け部82cおよび後側オープンケーブル取り付け部82dが形成される。前側オープンケーブル取り付け部82cには、前側ドアロック装置10Aに設けられているオープンレバーにその一端が接続されたオープンケーブル91Wが接続される。したがって、オープンケーブル91Wを介してリモコン側オープンレバー82の第1レバー突片82aが前側ドアロック装置10Aに設けられているオープンレバーに接続される。一方、後側オープンケーブル取り付け部82dには、オープンケーブル92Wの端部が接続される。上述のようにオープンケーブル92Wの一端は後側ドアロック装置10Bのオープンレバー43に接続される。したがって、オープンケーブル92Wを介してリモコン側オープンレバー82の第1レバー突片82aが後側ドアロック装置10Bのオープンレバー43に接続される。オープンレバー43、オープンケーブル92Wおよびリモコン側オープンケーブルによってオープン機構が構成される。
リモコン側オープンレバー82の第2レバー突片82bには、リモコン側オープンレバー82の回動半径方向に延びた直線状長孔82eが貫通形成される。図12に示すように、直線状長孔82e内には可動ピン52が挿通される。リモコン側オープンレバー82はスプリングにより図11および図12において反時計周り方向に付勢される。そして、図示しないストッパに当接することにより図11および図12に示す位置(原位置)に位置決めされる。
図15はインサイドハンドルレバー83の正面図である。図15に示すように、インサイドハンドルレバー83は支持軸72から上方に延びており、その左側面の上方部分に係止片83aが形成される。係止片83aは、後述するリモコン側キャンセルレバー87の図12において左側端に係止可能である。また、インサイドハンドルレバー83は、図11に示すように、ロッド71bによってインサイドハンドル71に接続される。インサイドハンドル71を開操作すると、ロッド71bがインサイドハンドル71を引っ張る。すると、インサイドハンドルレバー83が支持軸72周りを時計周り方向に回動する。インサイドハンドルレバー83が時計周り方向に回動すると、インサイドハンドルレバー83の回動に連動して、係止片83aに係止されたリモコン側キャンセルレバー87も図12において時計周り方向に回動する。
また、インサイドハンドルレバー83にはスイッチ押下突片83bが一体形成されている。スイッチ押下突片83bは、図12に示すようにベース盤70に固定されたスイッチ75に向かって突出するように形成される。インサイドハンドルレバー83が時計周り方向に回動したときに、スイッチ押下突片83bがスイッチ75を押下する。スイッチ75のオン・オフ状態はドア制御装置104に入力される。
図16はロッキングレバー81の正面図である。図16に示すように、ロッキングレバー81は、支持軸72から右斜め上方に延出した第1レバー突片81aおよび下方に延出した第2レバー突片81bを有する。第1レバー突片81aと支持軸72との間にトーションコイルバネが巻回されていて、そのトーションコイルバネによりロッキングレバー81が図11および図12において反時計周り方向に付勢される。そして、図示しないストッパに係合することにより所定の位置(原位置)に位置決めされる。
第2レバー突片81bは、支持軸72から回動半径方向にそって下方に延びた直線部分および直線部分の先端から反時計周り方向に向かって円弧状に延びた円弧部分を有する鉤型形状をなしており、その鉤型に倣った鉤型長孔81cが貫通形成される。鉤型長孔81cは、ロッキングレバー81の回動半径方向に直線状に延びた直線部81dと、直線部81dの端部のうち支持軸72から遠い側の端部から反時計周り方向に沿って円弧状に延びた円弧部81eを有する。リモコン側オープンレバー82およびロッキングレバー81の回転位置が共に原位置であるときに、リモコン側オープンレバー82の直線状長孔82eとロッキングレバー81の鉤型長孔81cの直線部81dが重ね合わされる。このとき、可動ピン52がリモコン側オープンレバー82の直線状長孔82eとロッキングレバー81の鉤型長孔81cの直線部81dとを貫通し、これらの孔内を往復移動可能とされるとともに、ロッキングレバー81が回動したときに可動ピン52を介してリモコン側オープンレバー82が回動する。
なお、可動ピン52は、車室内に配設される図示しないロックノブ等に連結されている。このロックノブはアンロック位置とロック位置とに変位可能に構成されている。ロックノブの位置に応じてロッキングレバー81の鉤型長孔81c内での可動ピン52の位置が変化する。ロックノブがアンロック位置であるとき、可動ピン52は、図12に示すように鉤型長孔81cの直線部81dの上端側に位置する。可動ピン52がこの位置(第1の位置)にあるとき、ロッキングレバー81の回動が可動ピン52を介してリモコン側オープンレバー82に伝わる。一方、ロックノブがロック位置であるとき、可動ピン52は、鉤型長孔81cの直線部81dの下端側、すなわち円弧部81eの図12において左端側に位置する。可動ピン52が円弧部81eの左端側の位置(第2の位置)にあるときにロッキングレバー81が図12において時計周り方向に回動した場合、ロッキングレバー81の鉤型長孔81cの円弧部81eが可動ピン52に対して相対的にその長手方向に移動するのみであって、可動ピン52自体は移動しない。そのためロッキングレバー81の回動動作はリモコン側オープンレバー82に伝達されない。
また、ロッキングレバー81の第1レバー突片81aには、その延在方向に沿って延びたチャイルドロック用長孔81fが貫通形成される。このチャイルドロック用長孔81f内に、図12に示すようにチャイルドロックピン53が支持される。チャイルドロックピン53はチャイルドロック用長孔81fを貫通しており、チャイルドロック用長孔81f内を往復移動可能である。
チャイルドロックピン53を外部操作するために、リモコン装置10Dにはチャイルドロック操作部88が設けられる。チャイルドロック操作部88は、ベース盤70に回動可能に軸支され、その回動中心C5から離れた一端部88aがスライドドア100の端面から露出する。また、回動中心C5から離れた他端部には、支持軸72を中心とする円弧状の長孔が形成される。チャイルドロックピン53はこの円弧状の長孔に挿通される。チャイルドロックピン53は、チャイルドロック操作部88の回動操作により、支持軸72から離間するチャイルドロック位置と、支持軸72に近づくチャイルドアンロック位置との間を往復するように、チャイルドロック用長孔81f内を移動する。なお、図12においては、チャイルドロックピン53の位置がチャイルドアンロック位置である。チャイルドアンロック位置であるとき、チャイルドロックピン53はインサイドハンドルレバー83の回動領域内に位置する。したがって、インサイドハンドルレバー83が図12において時計周り方向に回動したときに、チャイルドロックピン53を介して、チャイルドロックピン53を支持しているロッキングレバー81が一体的に回転する。すなわち、インサイドハンドル71の開操作による操作動力が、インサイドハンドルレバー83およびチャイルドロックピン53を介してロッキングレバー81に伝達される。一方、チャイルドロック位置であるとき、チャイルドロックピン53はインサイドハンドルレバー83の回動領域外に退避する。これにより、インサイドハンドルレバー83とロッキングレバー81との動力伝達が遮断される。すなわち、インサイドハンドル71の開操作による操作動力はロッキングレバー81に伝達されない。
なお、図16に示すように、ロッキングレバー81にはスイッチ押下突片81gが一体形成される。スイッチ押下突片81gはスイッチ75に向かって突出するように、支持軸72から図16において左方に延出する。ロッキングレバー81が時計周り方向に回動したときに、スイッチ押下突片81gがスイッチ75を押下する。また、ロッキングレバー81には係合片81hが形成される。係合片81hはロッキングレバー81の第2レバー突片81bの円弧部分の先端に形成される。
図17は、アウトサイドハンドルレバー84の正面図である。図17に示すように、アウトサイドハンドルレバー84は、支持軸72から図17において右斜め下方に延びた直線部84aと、直線部84aの先端から左方に延びた係合部84bとを有する。係合部84bには丸孔84cが形成されており、この丸孔84c内にスライドブッシュ76が係合する。スライドブッシュ76には、図12に示すようにアウトサイドハンドル77に連結されたオープンケーブル96Wの一端が連結されている。アウトサイドハンドル77はスライドドア100の室外面側に取り付けられていて、スライドドア100を開閉操作するときに車室外から手動操作される。
また、図17に示すように、アウトサイドハンドルレバー84の直線部84aの一方の側辺に第1係合部84dおよび第2係合部84eが形成される。第1係合部84dは、アウトサイドハンドルレバー84が支持軸72を中心として時計周り方向に回動したときに、ロッキングレバー81に形成された係合片81hおよび、後述するリモコン側キャンセルレバー87の第1係合部87dに係合可能である。第2係合部84eは、アウトサイドハンドルレバー84が支持軸72を中心として時計周り方向に回動したときに、後述するリモコン側リリースレバー85に係合可能である。
アウトサイドハンドル77を開操作すると、オープンケーブル96Wがアウトサイドハンドル側に引っ張られてアウトサイドハンドルレバー84が図12において支持軸72の周りを時計周り方向に回動する。このとき第1係合部84dに係合されたロッキングレバー81、リモコン側キャンセルレバー87、および第2係合部84eに係合されたリモコン側リリースレバー85も共に支持軸72の周りを時計周り方向に回動する。この場合において、可動ピン52がリモコン側オープンレバー82の直線状長孔82eとロッキングレバー81の鉤型長孔81cの直線部81dとの双方に挿通されていれば、アウトサイドハンドル77の開操作力がロッキングレバー81および可動ピン52を介してリモコン側オープンレバー82に伝達されて、リモコン側オープンレバー82が時計周り方向に回動する。
図18は、リモコン側リリースレバー85の正面図である。図18に示すように、リモコン側リリースレバー85は、支持軸72から図18において右斜め下方に延びた直線部85aと、直線部85aの先端から時計周り方向に向かって円弧状に延設された円弧部85bとを有する。円弧部85bには、支持軸72を中心とする円弧状長孔85cが貫通形成されている。円弧状長孔85cにはスライドブッシュ78が摺動可能に支持される。スライドブッシュ78には、後側ドアロック装置10Bに設けられているリリースレバー45のケーブル取り付け片45bにその一端が接続されたリリースケーブル93Wの他端が接続される。したがって、リモコン側リリースレバー85は、リリースケーブル93Wを介して後側ドアロック装置10Bのリリースレバー45に接続される。このリモコン側リリースレバー85は、スプリングにより図12において反時計周り方向に付勢される。そして、図示しないストッパに当接することによって図12に示す位置(原位置)に位置決めされる。
リモコン側リリースレバー85には第1係合部85dが形成される。第1係合部85dは直線部85aの一方の側辺の先端に設けられ、アウトサイドハンドルレバー84の第2係合部84eと係合可能である。また、リモコン側リリースレバー85には、突部85fが形成される。突部85fは直線部85aの他方の側辺の中央部分から図18において時計周り方向に向かって突出するように形成される。突部85fは、リモコン側リリースレバー85が支持軸72を中心として時計周り方向に回動したときに、リモコン側オープンレバー82の直線状長孔82e内に挿通される可動ピン52に係合する。さらに、リモコン側リリースレバー85には係合片85hが形成される。係合片85hは、直線部85aの一方の側辺の中央部分から突出するように形成されていて、リモコン側リリースレバー85が支持軸72を中心として時計周り方向に回転したときに全開ロックレバー86の係合片86hに係合する。
図19は、リモコン側キャンセルレバー87の正面図である。図19に示すように、リモコン側キャンセルレバー87は、支持軸72から図19において左斜め上方に延びた連結片87aと、支持軸72から図19において右方に延びた当接片87bとを有する。連結片87aの先端付近に貫通孔87cが形成される。貫通孔87cにキャンセルケーブル94Wが連結される。上述のように、キャンセルケーブル94Wは、後側ドアロック装置10Bに設けられているキャンセルレバー47に接続されている。したがって、リモコン側キャンセルレバー87はキャンセルケーブル94Wを介してキャンセルレバー47に接続される。このリモコン側キャンセルレバー87は、スプリングにより図12において反時計周り方向に付勢される。そして、図示しないストッパに当接することにより図12に示す位置(原位置)に位置決めされる。
リモコン側キャンセルレバー87の当接片87bには、アウトサイドハンドルレバー84が支持軸72を中心として時計周り方向に回動したときに、アウトサイドハンドルレバー84の第1係合部84dに係合する第1係合部87dが形成される。また、リモコン側キャンセルレバー87の連結片87aには、インサイドハンドルレバー83が支持軸72を中心として時計周り方向に回動したときに、インサイドハンドルレバー83の係止片83aに係合する第2係合部87eが形成される。
各ドアロック装置とリモコン装置10Dは、以上の説明のように構成されている。図20は、後側ドアロック装置10Bとリモコン装置10Dが、ケーブル92W、93W,94Wにより接続された状態を示す図である。
次に、操作機構80の動作について説明する。スライドドア100が全開位置にて全開ドアロック装置10Cに係止されているときにインサイドハンドル71が閉操作された場合、全開ロックレバー86がロッド71aに押されて支持軸72を中心として図12において時計周り方向に回動する。すると、全開ロックレバー86に接続されたオープンケーブル95Wがリモコン装置10D側に引っ張られて、全開ドアロック装置10Cのラッチアンドポール機構におけるラッチの規制が解除される。すなわち、スライドドア100の全開位置における係止が解除されて、スライドドア100を閉方向にスライドさせることが可能になる。
スライドドア100が全開位置にて全開ドアロック装置10Cに係止されているときにアウトサイドハンドル77が閉操作された場合、オープンケーブル96Wに引かれてアウトサイドハンドルレバー84が図12において時計周り方向に回動し、さらにアウトサイドハンドルレバー84に押されてリモコン側リリースレバー85が図12において時計周り方向に回動する。そして、リモコン側リリースレバー85の係合片85hが全開ロックレバー86の係合片86hに係合することによって、全開ロックレバー86がリモコン側リリースレバー85に押されて支持軸72を中心として時計周り方向に回転する。すると、オープンケーブル95Wがリモコン装置10D側に引っ張られて、全開ドアロック装置10Cによるスライドドア100の全開位置での係止が解除される。
スライドドア100が全開位置にて全開ドアロック装置10Cに係止されているときに、例えばリモコンキー又は車両のドア開閉ボタンが閉操作された場合、後側ドアロック装置10Bに備えられている駆動部60の電動モータ61が正転作動する。これによりアクティブレバー41が図6Aにおいて反時計周り方向に回動し、アクティブレバー41の当接片41bが中継レバー46の突部46dに当接する。この状態からさらに電動モータ61が正転作動してアクティブレバー41が反時計周り方向に回動すると、中継レバー46が当接片41bに押し上げられて軸心C3を中心として図6Aにおいて時計周り方向に回動する。中継レバー46の回動によって、中継レバー46に形成されている切欠き46a内に挿通されている連結ピン51も時計周り方向に回動する。連結ピン51はリリースレバー45に形成された孔部45cにも挿通されている。このため連結ピン51の回動に伴いリリースレバー45も時計周り方向に回動する。つまり、中継レバー46および連結ピン51を介してアクティブレバー41の回動操作力がリリースレバー45に伝達されて、リリースレバー45が軸心C3を中心として時計周り方向に回動する。
リリースレバー45の時計周り方向への回動によって、リリースケーブル93Wが後側ドアロック装置10B側に引っ張られる。このためリリースケーブル93Wを介してリリースレバー45に接続しているリモコン側リリースレバー85が支持軸72を中心として図12において時計周り方向に回動する。さらにリモコン側リリースレバー85の係合片85hが全開ロックレバー86の係合片86hに係合して、全開ロックレバー86が支持軸72周りを時計周り方向に回転する。すると、オープンケーブル95Wがリモコン装置10D側に引っ張られて、全開ドアロック装置10Cによるスライドドア100の全開位置での係止が解除される。
スライドドア100が全閉位置にて前側ドアロック装置10Aおよび後側ドアロック装置10Bに係止されているときに、インサイドハンドル71が開操作された場合、インサイドハンドルレバー83がロッド71bに引かれて支持軸72周りを時計周り方向に回動する。インサイドハンドルレバー83の回動に伴い、第2係合部87eにて係止片83aに係合するリモコン側キャンセルレバー87は時計周り方向に回動する。また、チャイルドロックピン53の位置がチャイルドアンロック位置である場合、インサイドハンドルレバー83の時計周り方向への回動に伴いロッキングレバー81も時計周り方向に回動する。ロッキングレバー81の回動は可動ピン52を介してリモコン側オープンレバー82に伝達され、リモコン側オープンレバー82が時計周り方向に回動する。このように、リモコン側オープンレバー82はインサイドハンドル71の操作に応じて作動する。
リモコン側オープンレバー82の時計周り方向への回動によりオープンケーブル91W、92Wがリモコン装置10D側に引っ張られる。オープンケーブル91Wがリモコン装置10D側に引かれることにより前側ドアロック装置10Aのラッチアンドポール機構によるラッチ21の回転規制が解除される。また、オープンケーブル92Wがリモコン装置10D側に引かれることにより、オープンケーブル92Wを介してリモコン側オープンレバー82に接続された後側ドアロック装置10B内のオープンレバー43が軸心C2を中心として図6Aにおける反時計周り方向に回動する。オープンレバー43の反時計周り方向への回動により、オープンレバー43の押下片43cがポール駆動レバー23の被押下片23aを押し下げる。ポール駆動レバー23の被押下片23aが押し下げられることにより、ポール22が規制位置から解除位置まで回転する。このためラッチ21の回動規制が解除される。これにより、前側ドアロック装置10Aおよび後側ドアロック装置10Bのラッチアンドポール機構によるスライドドア100の全閉位置での係止が解除される。
なお、上記した動作は、車室内に配設された図示しないロックノブがアンロック位置にある場合、すなわち可動ピン52がロッキングレバー81の鉤型長孔81cの直線部81dの上端側(第1の位置)に位置しているときになされる。これに対し、ロックノブがロック位置にあるときにインサイドハンドル71が開操作された場合、インサイドハンドルレバー83がロッド71bに引かれて支持軸72周りを時計周り方向に回動し、それに伴いリモコン側キャンセルレバー87およびロッキングレバー81も時計周り方向に回動するが、可動ピン52がロッキングレバー81の鉤型長孔81cの直線部81dの図12における下端側、すなわち円弧部81eの図12における左端側(第2の位置)に位置しているため、ロッキングレバー81が時計周り方向に回動しても可動ピン52は円弧部81e内での相対位置を変化させるのみであって移動しない。このためロッキングレバー81の回動はリモコン側オープンレバー82に伝達されず、故に、スライドドア100の全閉位置での係止は維持される。
インサイドハンドル71の開操作によりスライドドア100の全閉位置での係止が解除された場合、乗員はインサイドハンドル71を開操作したままスライドドア100を速やかに開けることができる。また、インサイドハンドル71の開操作によりスライドドア100の係止が解除された後にインサイドハンドル71が原位置に戻された場合、電動モータ61が正転作動する。電動モータ61の正転作動により後側ドアロック装置10Bのアクティブレバー41が反時計周り方向に回動してアクティブレバー41の当接片41bが中継レバー46の突部46dに当接する。この状態からさらに電動モータ61が正転作動してアクティブレバー41が反時計周り方向に回動すると、中継レバー46が当接片41bに押し上げられて軸心C3を中心として図6において時計周り方向に回動する。中継レバー46の回動によって、中継レバー46に形成されている切欠き46a内に挿通されている連結ピン51も時計周り方向に回動する。なお、この場合において、連結ピン51は、リリースレバー45の孔部45cおよび中継レバー46の切欠き46aの双方に挿通されており、リリースレバー45は連結ピン51を介して中継レバー46に連結されている。したがって連結ピン51の回動に伴いリリースレバー45も時計周り方向に回動する。
リリースレバー45の回動によりリリースケーブル93Wが後側ドアロック装置10B側に引っ張られてリモコン側リリースレバー85が図12において時計周り方向に回動する。リモコン側リリースレバー85の時計周り方向への回動によって、図21に示すように、リモコン側リリースレバー85に形成されている突部85fが可動ピン52に当接する。この状態でさらにリモコン側リリースレバー85が時計周り方向に回動することにより、可動ピン52が時計周り方向に回動する。可動ピン52は図21に示すようにリモコン側オープンレバー82の直線状長孔82eにも挿通されているので、可動ピン52の時計周り方向への回動にともないリモコン側オープンレバー82も時計周り方向に回動する。リモコン側オープンレバー82の時計周り方向への回動によりオープンケーブル91W、92Wがリモコン装置10D側に引っ張られる。このため前側ドアロック装置10Aおよび後側ドアロック装置10Bの各ラッチアンドポール機構によるスライドドア100の係止が解除される。このように、インサイドハンドル71の開操作が終了してインサイドハンドルレバー83が原位置に復帰した後に、電動モータ61が正転作動することによりスライドドア100の係止が解除されるとともにスライドドア100の係止の解除が維持される。
スライドドア100が全閉位置にて前側ドアロック装置10Aおよび後側ドアロック装置10Bに係止されているときに、アウトサイドハンドル77が開操作された場合、アウトサイドハンドルレバー84がオープンケーブル96Wに引っ張られる。このためアウトサイドハンドルレバー84が支持軸72を中心として図12において時計周り方向に回動する。アウトサイドハンドルレバー84の回動に伴い、係合片81hにてアウトサイドハンドルレバー84に係合したロッキングレバー81、および、第1係合部87dにてアウトサイドハンドルレバー84の第1係合部84dに係合するリモコン側キャンセルレバー87も図12において時計周り方向に回動する。ロッキングレバー81の回動は可動ピン52を介してリモコン側オープンレバー82に伝達され、リモコン側オープンレバー82が時計周り方向に回動する。このように、リモコン側オープンレバー82は、アウトサイドハンドル77の操作に応じて作動する。リモコン側オープンレバー82の時計周り方向への回動によりオープンケーブル91W、92Wがリモコン装置10D側に引っ張られる。これにより前側ドアロック装置10Aおよび後側ドアロック装置10Bの各ラッチアンドポール機構によるスライドドア100の係止が解除される。
なお、上記した動作は、車室内に配設された図示しないロックノブがアンロック位置にある場合、すなわち可動ピン52がロッキングレバー81の鉤型長孔81cの直線部81dの上端側(第1の位置)に位置しているときになされる。これに対し、ロックノブがロック位置にあるときにアウトサイドハンドル77が開操作された場合、アウトサイドハンドルレバー84が時計周り方向に回動し、それに伴いリモコン側キャンセルレバー87およびロッキングレバー81も時計周り方向に回動するが、可動ピン52がロッキングレバー81の鉤型長孔81cの直線部81dの図12における下端側、すなわち円弧部81eの図12における左端側(第2の位置)に位置しているため、ロッキングレバー81が時計周り方向に回動しても可動ピン52は円弧部81e内での相対位置を変化させるのみであって、移動しない。このためロッキングレバー81の回動はリモコン側オープンレバー82に伝達されず、故に、スライドドア100の全閉位置での係止は維持される。可動ピン52が本発明のロック/アンロック機構に相当する。
アウトサイドハンドル77の開操作によりスライドドア100の全閉位置での係止が解除された場合、乗員はアウトサイドハンドル77を開操作したままスライドドア100を速やかに開けることができる。また、アウトサイドハンドル77の開操作によりスライドドア100の係止が解除された後にアウトサイドハンドル77が原位置に戻された場合、電動モータ61が正転作動する。電動モータ61の正転作動により後側ドアロック装置10Bのアクティブレバー41が反時計周り方向に回動する。このため、上述したように、中継レバー46、連結ピン51、リリースレバー45、リリースケーブル93W、を介してリモコン側リリースレバー85にアクティブレバー41の回動操作力が伝達されて、リモコン側リリースレバー85が時計周り方向に回動する。リモコン側リリースレバー85の時計周り方向への回動によって、リモコン側リリースレバー85に形成されている突部85fが可動ピン52に当接する。この状態でさらにリモコン側リリースレバー85が時計周り方向に回動することにより、可動ピン52が挿通された直線状長孔82eを有するリモコン側オープンレバー82が時計周り方向に回動し、スライドドア100の係止が解除される。このように、アウトサイドハンドル77の開操作が終了してアウトサイドハンドルレバー84が原位置に復帰した後に、電動モータ61が正転作動することによりスライドドア100の係止が解除されるとともに、スライドドア100の係止の解除が維持される。
スライドドア100が全閉位置にて前側ドアロック装置10Aおよび後側ドアロック装置10Bに係止されているときに、例えばリモコンキー又は車両のドア開閉ボタンを開操作すると、後側ドアロック装置10Bに備えられている駆動部60の電動モータ61が正転作動する。電動モータ61の正転作動により後側ドアロック装置10Bのアクティブレバー41が反時計周り方向に回動する。このため、上述したように、中継レバー46、連結ピン51、リリースレバー45、リリースケーブル93W、を介してリモコン側リリースレバー85にアクティブレバー41の回動操作力が伝達されて、リモコン側リリースレバー85が時計周り方向に回動する。リモコン側リリースレバー85の時計周り方向への回動によって、リモコン側リリースレバー85に形成されている突部85fが可動ピン52に当接する。この状態からさらにリモコン側リリースレバー85が時計周り方向に回動することにより、可動ピン52が支持軸72を中心として時計周り方向に回動する。上述のように可動ピン52はリモコン側オープンレバー82の直線状長孔82eに挿通されているので、可動ピン52の時計周り方向への回動に伴いリモコン側オープンレバー82も支持軸72を中心として時計周り方向に回動する。リモコン側オープンレバー82の時計周り方向への回動によりオープンケーブル91W、92Wがリモコン装置10D側に引っ張られる。このため前側ドアロック装置10Aおよび後側ドアロック装置10Bのラッチアンドポール機構によるスライドドア100の係止が解除される。
スライドドア100を閉める際に、後側ドアロック装置10Bのポール22がラッチ21のハーフラッチ爪に係合した場合、スライドドア100の開閉状態が半ドア状態となる。この場合、スライドドア100は全閉位置の近傍位置で前側ドアロック装置10Aおよび後側ドアロック装置10Bに係止される。スライドドア100が半ドア状態であるか否かは、センサ等により検出され、その検出信号がドア制御装置104に入力される。ドア制御装置104は、スライドドア100が半ドア状態であると認識した場合、後側ドアロック装置10Bに備えられている駆動部60に駆動指令信号を出力する。駆動部60の電動モータ61は駆動指令信号を受けて逆転駆動する。電動モータ61の逆転駆動に伴いアクティブレバー41が図6Aにおいて時計回り方向に回動する。このとき当接コロ42dが位置決めレバー44の第1当接片44aに当接し、位置決めレバー44により支持される。
アクティブレバー41が時計周り方向へ回動すると、シーソー型レバー42の回動軸42aが上方に移動する。このとき当接コロ42dが位置決めされているので、シーソー型レバー42の第1腕部42bの先端部分が図6Aにおいて上方に移動する。ここで、ポール22がラッチ21のハーフラッチ爪21bに係合している場合は、図4に示すようにラッチ21の脚部21eがシーソー型レバー42の第1腕部42bの上方に位置する。したがって、第1腕部42bが上方移動することによりラッチ21の脚部21eが上方に押し上げられる。脚部21eの上方への押し上げによりラッチ21が図4において反時計周り方向に回転する。このようなラッチ21の回転により、ラッチ21のフルラッチ爪がポール22に係合する。これにより、スライドドア100の開閉状態が半ドア状態から全閉状態に移行する。すなわち、本実施形態の車両ドア開閉装置は、スライドドア100が全閉位置の近傍位置にて係止された場合(半ドア状態である場合)に、スライドドアが全閉位置にて係止されるように、シーソー型レバー42を介して電動モータ61の動力によりラッチアンドポール機構を作動させるイージークローザ機構を搭載している。
ところで、電動モータ61が正転作動すると、上述したように、中継レバー46、リリースレバー45、リモコン側リリースレバー85、リモコン側オープンレバー82、オープンレバー43、等が回転作動して、ポール22によるラッチ21の回転規制が解除される。このためドアロック装置によるスライドドア100の係止が解除される。電動モータ61の作動によってラッチの回転規制が解除されているときに、例えば電動モータ61が失陥した場合、ポールによるラッチの回転規制が解除された状態(リリース状態)からポールによりラッチを回転規制する状態に移行すること(すなわちリリース状態をキャンセルすること)ができない。このような非常状態(リリースエマージェンシー状態)において、特開2010−31569号公報では、電動モータと係止機構との動力伝達経路を遮断してリリース状態をキャンセルするキャンセル操作バーが設けられた車両ドア開閉装置を開示する。しかしながら、キャンセル操作バーはスライドドアに設けられた貫通孔からツールを差し込むことにより操作されるため、操作が困難である上に、操作が煩わしいといった問題を有する。本実施形態では、インサイドハンドルまたはアウトサイドハンドルを操作することにより、リリースエマージェンシー状態においてリリース状態をキャンセルすることができる車両ドア開閉装置が提供される。
図22Aは、リリースエマージェンシー状態であるときにおける、位置決めレバー44、リリースレバー45、中継レバー46およびキャンセルレバー47の配置関係を表す正面図である。図22Aに示すように、リリースエマージェンシー状態であるときは、リリースレバー45および中継レバー46が図7に示す状態から軸心C3を中心として時計周り方向に回動している。
リリースエマージェンシー状態であるときにインサイドハンドル71を開操作すると、リモコン装置10D内のインサイドハンドルレバー83が支持軸72を中心として時計周り方向に回動する。インサイドハンドルレバー83の時計周り方向への回動に伴い、上述したように、第2係合部87eにて係止片83aに係合するリモコン側キャンセルレバー87もインサイドハンドルレバー83の回動に連動して支持軸72を中心として時計周り方向に回動する。リモコン側キャンセルレバー87の時計周り方向への回動によってキャンセルケーブル94Wがリモコン装置10Dに引かれる。このためキャンセルケーブル94Wの一端に接続された後側ドアロック装置10Bのキャンセルレバー47が、図22Aにおいて軸心C4を中心として時計周り方向に回動する。つまり、キャンセルレバー47はインサイドハンドル71の開操作に応じて作動(回動)する。
キャンセルレバー47に形成された円弧状の長孔47c内には連結ピン51が挿通されている。この連結ピン51は中継レバー46の切欠き46aおよびリリースレバー45の孔部45cにも同時に挿通している。したがって、キャンセルレバー47が時計周り方向に回動すると、連結ピン51は、長孔47cをスライドしながら、長孔47cを形成する側壁からキャンセルレバー47の回動力を受けることにより軸心C3から遠ざかる方向に向かって切欠き46aおよび孔部45c内をもスライドする。図22Bは、キャンセルレバー47の回動に伴い連結ピン51が軸心C3から遠ざかる方向に移動した状態を示す図である。図22Aと図22Bとを比較してわかるように、キャンセルレバー47が時計周り方向に回動することにより、連結ピン51が軸心C3から遠ざかるように切欠き46aおよび孔部45c内をスライドしている。なお、キャンセルレバー47が時計周り方向に回動することにより、キャンセルレバー47の第1腕部47aが位置決めレバー44の第2当接片44bに当接する。この状態からさらにキャンセルレバー47が時計周り方向に回動することにより位置決めレバー44が軸心C2を中心として反時計周り方向に回動する。このため位置決めレバー44の第1当接片44aが移動する。第1当接片44aが図22bに示す位置に移動した場合、当接コロ42dは位置決めレバー44に当接しない。このため当接コロ42dは位置決めレバー44によって位置決めされない。
キャンセルレバー47の回動により連結ピン51が軸心C3から遠ざかる方向に向かって切欠き46aおよび孔部45c内をスライドすると、やがて連結ピン51と切欠き46aを形成する側壁との係合が解かれ、連結ピン51が切欠き46aから離脱する。具体的には、連結ピン51は、中継レバー46の上側部分46bには当接するが下側部分46cに当接しない位置に移動する。つまり、キャンセルレバー47の回動により、連結ピン51が切欠き46a、孔部45cおよび長孔47c内を同時に挿通している状態から、孔部45cおよび長孔47c内を挿通し切欠き46a内を挿通していない状態に変化する。
連結ピン51が切欠き46aから離脱した場合、連結ピン51を介した中継レバー46とリリースレバー45との連結が遮断される。ここで、中継レバー46はアクティブレバー41を介して電動モータ61に接続されている。また、リリースレバー45は、リリースケーブル93W、リモコン側リリースレバー85、可動ピン52を介してリモコン側オープンレバー82に接続されている。したがって、インサイドハンドル71の操作に応じたキャンセルレバー47の回動により、電動モータ61の動力を伝達する部材(動力伝達部材)とリモコン側オープンレバー82(オープン機構)との接続が遮断される。これにより、動力伝達部材による電動モータ61の駆動力のオープン機構への伝達が遮断される。
中継レバー46とリリースレバー45との連結が遮断された場合、リリースレバー45がスプリングの付勢力によって軸心C3を中心として反時計周り方向に回動して原位置に復帰する。このとき連結ピン51も、リリースレバー45の反時計周り方向への回動に追従するようにリリースレバー45の孔部45cおよびキャンセルレバー47の円弧状の長孔47c内を移動する。一方、中継レバー46は、アクティブレバー41の当接片41bに押し上げられているので、原位置には復帰しない。図22Cは、連結ピン51が切欠き46aから離脱してリリースレバー45が原位置に復帰した状態を示す図である。
リリースレバー45が原位置に復帰した場合、リモコン装置10Dのリモコン側リリースレバー85を図12の時計周り方向に回動させるために必要なリリースケーブル93Wからの張力が喪失する。このためリモコン側リリースレバー85がスプリングの付勢力で反時計周り方向に回動して原位置に復帰する。リモコン側リリースレバー85が反時計周り方向へ回動することにより、リモコン側リリースレバー85によって時計周り方向に回動させられていたリモコン側オープンレバー82も反時計方向に回動して原位置に復帰する。リモコン側オープンレバー82が原位置に復帰することにより、オープンケーブル91W,92Wをリモコン装置10Dに引っ張るための張力が喪失する。このため、前側ドアロック装置10Aおよび後側ドアロック装置10Bに設けられているオープンレバー43が原位置に復帰するとともにポール駆動レバー23が押し上げられて、ポール22がラッチ21の規制位置に復帰する。これにより、リリースエマージェンシー状態においてリリース状態がキャンセルされる。
また、リリースエマージェンシー状態であるときにアウトサイドハンドル77を開操作すると、アウトサイドハンドルレバー84がオープンケーブル96Wに引っ張られて、支持軸72を中心として図12において時計周り方向に回動する。アウトサイドハンドルレバー84が時計周り方向に回動すると、リモコン側キャンセルレバー87がその第1係合部87dにてアウトサイドハンドルレバー84の第1係合部84dに係合する。斯かる係合によって、リモコン側キャンセルレバー87もアウトサイドハンドルレバー84の回動に連動して図12において時計周り方向に回動する。リモコン側キャンセルレバー87の時計周り方向への回動によってキャンセルケーブル94Wがリモコン装置10Dに引かれる。このためキャンセルケーブル94Wの一端に接続された後側ドアロック装置10Bのキャンセルレバー47が、図22Aにおいて軸心C4を中心として時計周り方向に回動する。つまり、キャンセルレバー47は、アウトサイドハンドル77の開操作に応じて作動(回動)する。以降の動作は上記したリリースエマージェンシー状態であるときにインサイドハンドル71を開操作した場合について説明したように各レバーが作動してリリース状態がキャンセルされる。このように、本実施形態によれば、リリースエマージェンシー状態であるときには、インサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77を開操作することにより、簡単にリリース状態をキャンセルすることができるのである。
また、本実施形態の構成によれば、チャイルドロックピン53の位置がチャイルドアンロック位置であってもチャイルドロック位置であっても、インサイドハンドル71を開操作すればインサイドハンドルレバー83が回動する。インサイドハンドルレバー83が回動しさえすればリモコン側キャンセルレバー87が回動するため、キャンセルレバー47も回動してリリース状態がキャンセルされる。すなわち本実施形態によれば、リリースエマージェンシー状態であるときには、チャイルドロックピン53がチャイルドアンロック位置にあるかチャイルドロック位置にあるかにかかわらず、インサイドハンドル71を開操作することによりリリース状態をキャンセルすることができる。
また、本実施形態の構成によれば、車室内に設けられたロックノブの位置がアンロック位置であってもロック位置であっても(すなわち可動ピン52が第1の位置にあっても第2の位置にあっても)、インサイドハンドル71を開操作すればインサイドハンドルレバー83が回動し、アウトサイドハンドル77を開操作すればアウトサイドハンドルレバー84が回動する。インサイドハンドルレバー83あるいはアウトサイドハンドルレバー84が回動しさえすればリモコン側キャンセルレバー87が回動するため、キャンセルレバー47も回動してリリース状態がキャンセルされる。すなわち本実施形態によれば、リリースエマージェンシー状態であるときには、ロックノブがアンロック位置(すなわちスライドドアが施錠状態)にあるかロック位置(すなわちスライドドアが解錠状態)にあるかにかかわらず、インサイドハンドル71あるいはアウトサイドハンドル77を開操作することによりリリース状態をキャンセルすることができる。
したがって、スライドドア100がどのような状態であるときでも、インサイドハンドル71あるいはアウトサイドハンドル77を開操作することにより、リリース状態をキャンセルすることができるのである。
ちなみに、電動モータ61が正転することによりリモコン側リリースレバー85が図12において支持軸72を中心として時計周り方向に回動したときには、リモコン側キャンセルレバー87は回動しない。つまりリモコン側リリースレバー85とリモコン側キャンセルレバー87は一体的に回転しない。電動モータ61の正転は、ラッチアンドポール機構によるスライドドアの係止を解除すること、つまりラッチアンドポール機構をリリース状態にすることを目的としているので、そのような目的を持って電動モータ61が正転しているときにリモコン側キャンセルレバー87が回動すると、リリース状態がキャンセルされてしまう。斯かる矛盾を回避するために、リモコン側キャンセルレバー87はリモコン側リリースレバー85の回転によっては回転しないように構成される。図23Aは、インサイドハンドルレバー83の回動に伴いリモコン側キャンセルレバー87が回動した状態を示す図であり、図23Bは、アウトサイドハンドルレバー84の回動に伴いリモコン側キャンセルレバー87が回動した状態を示す図であり、図23Cはリモコン側リリースレバー85が回動しているがリモコン側キャンセルレバー87が回動していない状態を示す図である。
スライドドア100が全閉位置にて前側ドアロック装置10Aおよび後側ドアロック装置10Bのラッチアンドポール機構に係止されているときにインサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77を開操作すると、上述したようにポールによるラッチの回転規制が解除されて、スライドドアの係止が解除される。その後、インサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77を原位置に復帰させた場合に、パワースライドドアユニット105が駆動して、スライドドア100が自動的に開く。図24は、スライドドア100がパワースライドドアユニット105によって自動的に開くまでにドア制御装置104が実行するドア開閉処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、車両のイグニッションがON状態にされた後に、所定の短時間ごとに繰り返し実行される。
ドア開閉処理が開始されると、まず、ドア制御装置104は、図24のステップ(以下、ステップ番号をSと略記する)10にて、スライドドア100が全閉位置にて前側ドアロック装置10Aおよび後側ドアロック装置10Bに係止されているか否か、すなわち全閉状態であるか否かを判断する。スライドドア100が全閉状態であるか否かは、例えば車両本体101に設けられたセンサにより検出することができる。スライドドア100が全閉状態ではない場合(S10:No)、ドア制御装置104はドア開閉処理を一旦終了する。一方、スライドドア100が全閉状態である場合(S10:Yes)、ドア制御装置104は、リモコン装置10Dに取り付けられているスイッチ75がオン状態であるか否かを判断する(S12)。スイッチ75がオン状態であるかオフ状態であるかは、インサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77が開操作されているか否かにより変化する。インサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77が開操作されているときは、スイッチ75はオン状態であり、開操作されていないときは、スイッチ75はオフ状態である。
スイッチ75がオフ状態である場合(S12:No)、ドア制御装置104はドア開閉処理を一旦終了する。一方、スイッチ75がオン状態である場合(S12:Yes)、すなわちスライドドア100が全閉位置で係止されているときにインサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77が開操作されて、インサイドハンドル71のスイッチ押下突片83bまたはロッキングレバー81のスイッチ押下突片81gがスイッチ75を押下した場合、ドア制御装置104はスイッチ75がオン状態からオフ状態に変化したか否かを判断する(S14)。スイッチ75がオン状態からオフ状態に変化していない場合(S14:No)は変化するまで待ち、スイッチ75がオン状態からオフ状態に変化した場合(S14:Yes)にドア制御装置104はS16に進む。
S16では、スライドドア100が全開状態であるか否かを判断する。すなわちS16では、乗員がインサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77を開操作したままスライドドア100を開き、全開位置にてスライドドア100が係止されたか否かを判断する。全開状態である場合(S16:Yes)、パワースライドドアユニット105を駆動させる必要がないので、ドア制御装置104はドア開閉処理を一旦終了する。一方、全開状態ではない場合(S16:No)、ドア制御装置104は、電動モータ61が正転駆動するように駆動部60に指令信号を出力する(S18)。すなわち、ドア制御装置104は、スイッチ75がオン状態にされ、その後にオフ状態にされたことを確認した後に、電動モータ61を正転駆動させる。
次いで、ドア制御装置104は、電動モータ61の駆動が完了したか否かを判断し(S20)、駆動が完了した後に、パワースライドドアユニット(PSDユニット)105を駆動するための信号を出力する(S22)。これによりパワースライドドアユニット105が駆動を開始して、スライドドア100が開く。その後、ドア制御装置104はドア開閉処理を一旦終了する。
このように、本実施形態のドア開閉処理によれば、スイッチ75がオン状態からオフ状態に変化したことが確認された後に、パワースライドドアユニット105が駆動される。
図25は、スイッチ75がオン状態であるときの、リリースレバー45、中継レバー46およびキャンセルレバー47の配置関係を示す図である。スイッチ75がオン状態であるときは、インサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77が開操作されている。インサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77の開操作によって、リモコン側オープンレバー82が図12の時計周り方向に回動するとともに、リモコン側キャンセルレバー87も時計周り方向に回動する。リモコン側キャンセルレバー87が時計周り方向に回動した場合、キャンセルケーブル94Wがリモコン装置10D側に引っ張られて後側ドアロック装置10Bのキャンセルレバー47が図6Aにおいて時計周り方向に回動する。キャンセルレバー47に形成された円弧状の長孔47c内には連結ピン51が挿通されていて、この連結ピン51は上述したようにリリースレバー45の孔部45cおよび中継レバー46の切欠き46a内にも同時に挿通している。したがって、キャンセルレバー47が時計周り方向に回動すると、連結ピン51は、長孔47cをスライドしながら、長孔47cを形成する側壁からキャンセルレバー47の回動力を受けることにより軸心C3から遠ざかる方向に向かってリリースレバー45の孔部45cおよび中継レバー46の切欠き46a内をスライドする。そして、図25に示すように、連結ピン51がリリースレバー45の孔部45cの左端付近までスライドする。
連結ピン51が図25に示す位置にスライドした場合、連結ピン51は中継レバー46の切欠き46aから離脱する。具体的には、連結ピン51は、中継レバー46の切欠き46aの上下に形成される上側部分46bと下側部分46cのうち、上側部分46bには係合しているが下側部分46cには係合しない。
したがって、連結ピン51の位置が図25に示す位置であるときに、電動モータ61を正回転させた場合、アクティブレバー41を介して中継レバー46が時計周り方向に回動しても、連結ピン51が中継レバー46の切欠き46aから離脱しているので、中継レバー46は単独で回動し、その回動が連結ピン51を介してリリースレバー45に伝達されない。図26は、連結ピン51が切欠き46aから離脱しているときに中継レバー46が単独で回動する様子を示す図である。
図26に示すように中継レバー46が単独で回動し、その回動がリリースレバー45に伝達されない場合、リリースレバー45は回動しない。このため電動モータ61の正転駆動によるスライドドア100の係止の解除は達成されない。
パワースライドドアユニット105を駆動させる際には、ドアロック装置のラッチアンドポール機構によるスライドドア100の係止が解除されている必要がある。つまり、ポールによってラッチが回転規制されていないことが必要である。ここで、インサイドハンドル71やアウトサイドハンドル77の開操作によってスライドドア100の係止を解除した場合、スライドドア100はそれをドア枠にシールするシールゴム等の弾性力によって動くことによりラッチに係合していたストライカがストライカ受容溝から抜け出る。このためラッチとストライカとの係合が解かれてラッチが解除位置に回動する。ラッチが解除位置に回動すれば、図3に示すようにポール22が規制位置に位置していてもラッチ21は回転規制されない。
しかしながら、インサイドハンドル71やアウトサイドハンドル77の開操作によってスライドドア100の係止を解除しようとしても、凍結等によってスライドドア100が全く動かない場合には、ストライカはストライカ受容溝から抜け出ることができない。その状態でインサイドハンドル71やアウトサイドハンドル77を原位置に戻すと、再度、ポール22がラッチ21の回転を規制してしまう。つまり、インサイドハンドル71やアウトサイドハンドル77を開操作しただけでは、確実にスライドドア100の係止が解除されていることを保障できない。
したがって、スライドドア100の係止の解除を確実に保証するために、インサイドハンドル71やアウトサイドハンドル77を操作した後に、電動モータ61を駆動させて、ポールを解除位置(図5の点線で示す位置)に維持させておく必要がある。ところが、本実施形態においては、スイッチ75がオン状態であるとき(すなわちインサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77を開操作しているとき)に電動モータ61が駆動した場合、図26に示すように中継レバー46が単独で回動し、その回動がリリースレバー45に伝達されない。このためリリースレバー45が回動せず、その結果、電動モータ61の駆動によるスライドドア100の係止の解除は達成されない。
そこで、本実施形態においては、スイッチ75がオン状態である場合(インサイドハンドル71やアウトサイドハンドル77が開操作された場合)に、その後にスイッチ75がオフ状態に変化したこと(インサイドハンドル71やアウトサイドハンドル77が原位置に戻されたこと)を確認した後に、電動モータ61を駆動させているのである。
図27は、スイッチ75がオフ状態であるときの、リリースレバー45、中継レバー46およびキャンセルレバー47の配置関係を示す図である。図27に示すように、スイッチ75がオフ状態であるときは、連結ピン51がリリースレバー45の孔部45cのうち軸心C3に近い側に位置している。この位置では、連結ピン51は、リリースレバー45の孔部45cと中継レバー46の切欠き46aの双方に挿通されており、連結ピン51を介してリリースレバー45が中継レバー46と連結される。よって、電動モータ61を駆動した場合、リリースレバー45が中継レバー46とともに回動する。図28は、リリースレバー45が中継レバー46とともに回動する様子を示す図である。
このようにリリースレバー45が中継レバー46とともに時計周り方向に回動することにより、リリースケーブル93Wを介してリモコン側リリースレバー85にアクティブレバー41の回動操作力が伝達されて、リモコン側リリースレバー85が時計周り方向に回動する。リモコン側リリースレバー85の時計周り方向への回動によって、リモコン側リリースレバー85に形成されている突部85fが可動ピン52に当接する。この状態でさらにリモコン側リリースレバー85が時計周り方向に回動することにより、可動ピン52が挿通された直線状長孔82eを有するリモコン側オープンレバー82が時計周り方向に回動する。このためオープンレバー43がポール駆動レバー23を押し下げた状態が維持される。ポール駆動レバー23が押し下げられた状態は、ポール22が解除位置に回動している状態である。したがって、ポール22によってラッチ21の回転が規制されることはない。すなわち、スライドドア100の係止が解除されたことが確実に保証される。この状態でパワースライドドアユニット105が駆動することで、スライドドア100を速やかに開くことができる。
以上、本実施形態について説明した。本実施形態において、ラッチアンドポール機構20が係止機構に相当し、オープンレバー43、オープンケーブル92Wおよびリモコン側オープンレバー82がオープン機構に相当し、電動モータ61、アクティブレバー41、中継レバー46、リリースレバー45、連結ピン51、リリースケーブル93Wおよびリモコン側リリースレバー85がリリース機構に相当し、キャンセルレバー47、キャンセルケーブル94Wおよびリモコン側キャンセルレバー87がキャンセル機構に相当する。
本実施形態の車両ドア開閉装置は、スライドドア100に取り付けられるよう適合されるとともにスライドドア100を開閉操作するときに車室内から操作されるよう適合されるインサイドハンドル71と、スライドドア100に取り付けられるよう適合されるとともにスライドドア100を開閉操作するときに車室外から操作されるよう適合されるアウトサイドハンドル77と、スライドドア100を所定の開閉位置(全閉位置あるいは全開位置)に係止するように作動するよう適合されるラッチアンドポール機構20と、インサイドハンドル71の操作およびアウトサイドハンドル77の操作に応じて作動してラッチアンドポール機構20によるスライドドア100の係止を解除するよう適合されるオープン機構(オープンレバー43、オープンケーブル92Wおよびリモコン側オープンレバー82)と、電動モータ61と、電動モータ61の動力をオープン機構に伝達する動力伝達部材とを有し、電動モータ61の駆動力でオープン機構を作動させることによりスライドドア100の係止を解除するよう適合されるリリース機構と、インサイドハンドル71の操作およびアウトサイドハンドル77の操作に応じて作動して動力伝達部材による電動モータ61の駆動力のオープン機構へ伝達を遮断するキャンセル機構(キャンセルレバー47およびリモコン側キャンセルレバー87)とを備える。
また、上記動力伝達部材は、電動モータ61に接続され電動モータ61の動力により回動するアクティブレバー41と、アクティブレバー41に当接可能でありアクティブレバー41により回動される中継レバー46と、リリースケーブル93Wおよびリモコン側リリースレバー85等のリンク部材を介してオープン機構(リモコン側オープンレバー82)に接続される回動可能なリリースレバー45と、リリースレバー45に連結されるとともに中継レバー46に離脱可能に連結された連結ピン51(連結部材)を有する。また、上記キャンセル機構は、インサイドハンドル71の操作およびアウトサイドハンドル77の操作に応じて回動して連結ピン51を中継レバー46から離脱させるキャンセルレバー47を有する。
また、本実施形態の車両ドア開閉装置は、係止機構(ラッチアンドポール機構20)を有するドアロック装置10Bと、インサイドハンドル71の操作動力およびアウトサイドハンドル77の操作動力をドアロック装置に伝達するためのリモコン装置10Dと、を備える。オープン機構は、ドアロック装置10Bの第2ベース盤11Bに回動可能に設けられ回動することにより係止機構によるスライドドア100の係止を解除するよう適合されるオープンレバー43と、リモコン装置10Dのベース盤70に回動可能に設けられるとともにオープンケーブル92W等の接続部材を介してオープンレバー43に接続され、インサイドハンドル71の操作およびアウトサイドハンドル77の操作に応じて回動するリモコン側オープンレバー82とを備える。リリース機構は、ドアロック装置10Bの第2ベース盤11Bに取り付けられた電動モータ61と、ドアロック装置10Bに回動可能に設けられたアクティブレバー41および中継レバー46ならびにリリースレバー45と、リモコン装置10Dに回動可能に設けられリリースケーブル93W等の接続部材を介してリリースレバー45に接続されるとともにその回動によってリモコン側オープンレバー82を回動させることができるように構成されたリモコン側リリースレバー85とを備える。キャンセル機構は、ドアロック装置10Bの第2ベース盤11Bに回動可能に設けられたキャンセルレバー47と、リモコン装置10Dに回動可能に設けられキャンセルケーブル94W等の接続部材を介してキャンセルレバー47に接続されるとともにインサイドハンドル71の操作およびアウトサイドハンドル77の操作に応じて回動するリモコン側キャンセルレバー87とを備える。
さらに、本実施形態の車両ドア開閉装置において、リモコン装置10Dは、インサイドハンドル71に接続されインサイドハンドル71の操作に連動して回動するインサイドハンドルレバー83と、アウトサイドハンドル77に接続されアウトサイドハンドル77の操作に連動して回動するアウトサイドハンドルレバー84と、を有する。そして、リモコン側キャンセルレバー87は、インサイドハンドルレバー83の回動およびアウトサイドハンドルレバー84の回動に連動して回動し、リモコン側リリースレバー85の回動に連動して回動しないように構成される。
本実施形態の車両ドア開閉装置によれば、リリースエマージェンシー状態であるときに、インサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77を開操作することにより、キャンセルレバー47が回動し、中継レバー46とリリースレバー45とを接続している連結ピン51が中継レバー46の切欠き46aから離脱する。このため、中継レバー46側の部材とリリースレバー45に接続されたオープン機構との接続が遮断され、動力伝達部材を介した電動モータ61の駆動力のオープン機構への伝達が遮断される。このようにオープン機構が電動モータ61から切り離されることで、オープン機構が原位置に復帰する。このため、リリースエマージェンシー状態であるときに、乗員がインサイドハンドル71あるいはアウトサイドハンドル77を操作するという簡単な方法で、リリース状態をキャンセルすることができる。
また、スライドドア100が全閉位置の近傍位置にてラッチアンドポール機構20により半ドア状態で係止された場合に、スライドドア100が全閉位置にてラッチアンドポール機構20により係止されるように電動モータ61が逆転作動(クローズ作動)する。本実施形態の車両ドア開閉装置は、電動モータ61のクローズ作動により生じる動力をラッチアンドポール機構20に伝達するためのシーソー型レバー42(駆動レバー)を備える。このためシーソー型レバー42を介してラッチアンドポール機構20が作動し、スライドドア100が全閉位置にて係止される。すなわち、本実施形態の車両ドア開閉装置はイージークローザ機構を備える。このため、スライドドア100が半ドア状態であっても、自動的に全閉位置にてスライドドア100を係止することができる。
また、本実施形態の車両ドア開閉装置は、シーソー型レバー42が電動モータ61のクローズ作動により生じる動力をラッチアンドポール機構20に伝達することができるようにシーソー型レバー42を位置決めおよび支持する位置決めレバー(支持レバー)44をさらに備えている。位置決めレバー44によってシーソー型レバー42が支持されている場合に、シーソー型レバー42が電動モータ61のクローズ作動により生じる動力をラッチアンドポール機構20に伝達することができる。また、位置決めレバー44は、図22bに示すように、キャンセル機構(キャンセルレバー47)の回動により、支持軸C2を中心として反時計周り方向に回動する。位置決めレバー44が回動した場合、位置決めレバー44の当接片44aにシーソー型レバー42に取り付けられた当接コロ42dが当接しないため、位置決めレバー44によるシーソー型レバー42の位置決めがなされない。このためシーソー型レバー42は電動モータ61の動力をラッチアンドポール機構20に伝達することができない。つまり、位置決めレバー44は、キャンセル機構の作動に連動して作動することによりシーソー型レバー42の支持を解除するように構成される。
ここで、上述のようにキャンセル機構(キャンセルレバー47)はインサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77を操作することにより作動(回動)する。したがって、インサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77を操作することにより、位置決めレバー44によるシーソー型レバー42の位置決め支持が解除される。
すなわち、本実施形態によれば、電動モータ61のクローズ作動により生じる動力によりスライドドア100の開閉状態が半ドア状態から全閉状態に移行する際に、インサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77を操作して位置決めレバー44と当接コロ42dとの係合(当接)を解くことによって、簡単に電動モータ61の動力のラッチアンドポール機構20への伝達を遮断することができる。
また、本実施形態によれば、インサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77が操作され(スイッチ75がオン状態にされ)、その後にインサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77が原位置に戻された(スイッチ75がオフ状態に変化した)後に、電動モータ61を正転作動(リリース作動)させる。このように、スイッチのオン・オフを確認した上で電動モータ61を作動させることにより、上記したように確実にスライドドア100の係止を解除することができる。
なお、乗員がインサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77を手動操作した直後にパワースライドドアユニット105が作動してスライドドア100が動いた場合、手動操作した手がスライドドア100の動作に引っ張られて不快感を覚えることがある。また、手動操作した直後にパワースライドドアユニット105が作動した場合、パワースライドドアユニット105の作動にしたがってスライドドア100がゆっくりと開くために、乗員が素早くスライドドア100を開けたいといった意思を反映させることができない。これに対し、本実施形態では、乗員がインサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77を手動操作し、その操作が終了し、例えばインサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77を離すことによりインサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77が原位置に復帰した後に、電動モータ61が作動してスライドドア100の係止が解除され、その後にパワースライドドアユニット105が駆動される。パワースライドドアユニット105が手動操作直後に作動することはないため、手動操作した手がスライドドア100の動作に引っ張られることもない。また、素早くスライドドア100を開けたい場合は、そのまま乗員がスライドドア100を開ければよく、この場合はインサイドハンドル71またはアウトサイドハンドル77の原位置への復帰が認識されない(すなわちスイッチ75がオフ状態に変化したことが認識されない)ので、パワースライドドアユニット105が作動することはない。
また、本実施形態の車両ドア開閉装置によれば、キャンセルレバー47が回動することにより、リリースエマージェンシー状態でリリース状態が解除(リリースキャンセル)されるともに、キャンセルレバー47が回動することにより、位置決めレバー44と当接コロ42dとの係合が解かれてクローズ作動による電動モータ61の動力のラッチアンドポール機構20への伝達が遮断(クローズキャンセル)される。すなわち一つのレバーによりリリースエマージェンシー状態でのリリースキャンセルと、クローズキャンセルが実現される。このためそれぞれのリリースキャンセル用のキャンセルレバーとクローズキャンセル用のキャンセルレバーを設ける場合と比較して、コストが低減するとともに、シンプルにドアロック装置を構成できる。
また、本実施形態の車両ドア開閉装置は、チャイルドロック位置とチャイルドアンロック位置とに変位可能であり、チャイルドアンロック位置であるときにインサイドハンドルレバー83に係合することによってインサイドハンドル71の操作力がオープン機構に伝達され、チャイルドロック位置であるときにインサイドハンドルレバー83に係合しないことによってインサイドハンドル71の操作力がオープン機構に伝達されないように構成されるチャイルドロックピン53(チャイルドロック機構)と、チャイルドロックピン53をとチャイルドロック位置とチャイルドアンロック位置とに変位させるためのに変位させるためのチャイルドロック操作部88とを備える。そして、キャンセルレバー47は、チャイルドロックピン53がチャイルドロック位置にあるかチャイルドアンロック位置にあるかにかかわらず、インサイドハンドル71の操作に応じて回動するように構成される。このため、チャイルドロックピン53がチャイルドロック位置であるかチャイルドアンロック位置であるかに関係なく、リリースエマージェンシー状態であるときにインサイドハンドル71を開操作すれば、リリース状態が解除される。
また、本実施形態の車両ドア開閉装置は、第1の位置と第2の位置とに変位可能であり、第1の位置であるときにロッキングレバー81の回動をリモコン側オープンレバー82に伝達することによりインサイドハンドル71の操作力およびアウトサイドハンドル77の操作力がオープン機構に伝達され、第2の位置であるときにロッキングレバー81の回動をリモコン側オープンレバー82に伝達させないことによりインサイドハンドル71の操作力およびアウトサイドハンドル77の操作力がオープン機構に伝達されないように構成される可動ピン52(ロック/アンロック機構)を備える。そして、キャンセルレバー47は、可動ピン52が第1の位置にあるか第2の位置にあるかにかかわらず、インサイドハンドル71の操作およびアウトサイドハンドル77の操作に応じて回動するように構成される。このため、スライドドア100が解錠状態(可動ピン52が第1の位置にある状態)から施錠状態(可動ピン52が第2の位置にある状態)であるかに関係なく、リリースエマージェンシー状態であるときにインサイドハンドル71あるいはアウトサイドハンドル77を開操作すれば、リリース状態が解除される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態においてはスライドドアの開閉装置について説明したが、その他の開閉方式を採用したドアに本発明を適用することもできる。また、上記実施形態では、ラッチアンドポール機構によってスライドドアを係止する例について説明したが、他の方法によってスライドドアを係止する場合にも本発明を適用することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて変形可能である。