JP6161843B1 - ガラス製品の製造装置、該ガラス製品の製造方法、及び白金族金属の回収方法 - Google Patents

ガラス製品の製造装置、該ガラス製品の製造方法、及び白金族金属の回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶融ガラス内に含まれた不純物を回収できるガラス製品の製造装置を提供することを目的とする。【解決手段】ガラス製品の製造装置100は、ガラス材料が投入される投入口10と、ガラス溶融炉20と、少なくとも1つのノズル41と、ガラス溶融炉20及びノズル41を加熱する加熱手段70と、少なくとも1つの冷却手段80とを備える。ガラス溶融炉20は、少なくとも内壁面が耐火材料から形成されており、投入口10に連続し、投入されたガラス材料を溶融して溶融ガラスを生成する。ノズル41は、ガラス溶融炉20の下部に設けられ、溶融ガラスを吐出する。冷却手段80は、ガラス溶融炉20において溶融ガラスが最高溶融温度となる高温領域と、ノズル41との間に配置され、溶融ガラスを、溶融ガラスの最高溶融温度より低い温度に冷却する。【選択図】図1

Description

本発明は、ガラス製品の製造装置に関する。
ガラス繊維を製造するガラス繊維紡糸炉は、一般的に白金とロジウム(Pt/Rh)の合金により形成されており、溶融領域及び紡糸領域を有している。ガラス繊維紡糸炉内の溶融領域は、ガラス材料の溶融温度以上に加熱され、溶融領域に投入されたガラス材料が溶融される。溶融状態の溶融ガラスは紡糸領域に導入され、ノズルから溶融ガラスが吐出され、ガラス繊維が製造される。
特許文献1には、白金系材料の板体の組み合わせで構成されている溶融領域及び紡糸領域を有するガラス繊維紡糸炉が開示されている。このガラス繊維紡糸炉では、溶融領域と紡糸領域とが電流の流れに対して直列に配置されており、各領域の抵抗も直列接続となっている。よって、溶融領域を構成する白金系材料の板体の幅及び厚みを薄くして溶融領域の抵抗を大きくすることで、溶融領域での発熱を大きくして高温にすることができる。これにより、溶融領域での発熱を確保しつつも、溶融領域の板体に使用される白金系材料の量を減らし、白金系材料の析出を抑えることができる。
特公昭59−6826号公報
しかしながら、特許文献1において、溶融領域の白金系材料の板体の幅及び厚みを薄くした場合でも、板体が高温に加熱されることで、板体から白金系材料等が溶融し、溶融ガラス内に不純物として含まれる。このような白金系材料がノズルにおいて析出すると、ノズルが詰まり、ノズルを介したガラス繊維の製造に悪影響を与える。また高価な白金系材料の損失は、白金系材料の板体の差し替え等によってコスト上昇を招く。しかし、特許文献1には、溶融ガラス内に含まれた不純物を如何に回収するかについては何らの開示もない。
そこで、本発明は、溶融ガラス内に含まれた不純物を回収できるガラス製品の製造装置を提供することを目的とする。
本発明の一観点に係るガラス製品の製造装置は、ガラス材料が投入される投入口と、ガラス溶融炉と、少なくとも1つのノズルと、ガラス溶融炉及びノズルを加熱する加熱手段と、少なくとも1つの冷却手段とを備える。ガラス溶融炉は、少なくとも内壁面が耐火材料から形成されており、投入口に連続し、投入されたガラス材料を溶融して溶融ガラスを生成する。少なくとも1つのノズルは、ガラス溶融炉の下部に設けられ、溶融ガラスを吐出する。少なくとも1つの冷却手段は、ガラス溶融炉において溶融ガラスが最高溶融温度となる高温領域と、ノズルとの間に配置され、溶融ガラスを、溶融ガラスの最高溶融温度より低い温度に冷却する。
上記構成によれば、溶融ガラスが最高溶融温度となる高温領域と、ノズルとの間に冷却手段が配置されており、冷却手段が溶融ガラスを最高溶融温度よりも低い温度に冷却するため、この冷却手段により、溶融ガラス内に溶融している不純物、例えば、ガラス材料とともに溶融される耐火材料の一部などを析出させることができる。これにより、冷却手段に付着した不純物を回収することができ、不純物の少ない溶融ガラスからなるガラス製品を、ノズルから吐出することができる。
上記ガラス製品の製造装置においては、高温領域を含む領域に設けられ、ガラス溶融炉を上下方向に仕切る仕切り部材をさらに備えることができる。仕切り部材は、中央部から端部にいくほど、上方に向かって傾斜するように形成されるとともに、端部に開口を有している。
上記構成によれば、ガラス溶融炉の高温領域を含む領域に、中央部から端部に向かって上方に傾斜する仕切り部材が設けられているため、溶融ガラスは、投入口からノズルに向かう過程で、一旦、仕切り部材に受け止められ、この仕切り部材上で、傾斜に沿って中央部から端部の開口に向かって、登るように流すことができる。したがって、仕切り部材上での溶融ガラスの滞留時間を長くすることができる。これにより、固形ガラスを完全に溶解させるための時間を確保でき、溶融ガラス内の固形ガラスを完全に溶解できる。そして、溶融ガラス内の固形成分が十分に低くなった溶融ガラスによって、ブツ(ガラス成分の少なくとも1つ以上からなる結晶物)のないガラス製品を製造できる。
上記ガラス製品の製造装置においては、冷却手段は、溶融ガラスを、ノズルでの溶融ガラスに近い温度、あるいはノズルでの溶融ガラスの温度以下まで冷却できる。
これにより、ノズルの手前に配置された冷却手段は、ノズルでの溶融ガラスの温度に近い温度、あるいはノズルでの溶融ガラスの温度以下まで冷却できる。したがって、ノズルの手前において、溶融ガラス内に含まれる不純物の析出を促進することができ、冷却手段により不純物を回収できる。そのため、ノズルに対しては不純物の少ない溶融ガラスを供給できるので、ノズルが不純物によって詰まるなどの不具合を抑制できる。また、不純物の少ない溶融ガラスからなるガラス製品をノズルから吐出できる。
上記ガラス製品の製造装置においては、冷却手段は、上方に開放する凹部を有するように構成できる。冷却手段が上方に開放する凹部を有するように構成されているため、溶融ガラスは凹部に収容された後、例えば、凹部から溢れ出して、ノズル側へ流れていく。そのため、冷却手段に接触した溶融ガラスと、接触していない溶融ガラスとの温度差によって、溶融ガラスが冷却手段内で対流させることができる。これにより、冷却手段との接触により溶融ガラスが冷却されるだけでなく、冷却手段内での対流によって溶融ガラスが混ざり合うことによって、冷却される溶融ガラスの量が多くなり、また冷却スピードも向上する。その結果、効率的に溶融ガラスを冷却し、溶融ガラス内に溶融している不純物を析出させることができる。
上記ガラス製品の製造装置においては、加熱手段は、ガラス溶融炉に電圧を印加して所定方向に電流を流す端子を有しており、冷却手段は、電流が流れる導電部材により構成され、当該導電部材は、電流の流れる所定方向と交差する方向に延びるように配置できる。
この構成によれば、冷却手段が、加熱手段に印加される電圧によって流れる電流の所定方向と交差するように配置されているため、冷却手段には電流が流れにくくすることができる。これは、所定方向の両端では加熱手段に電位差を設けて電流を流しているのに対して、所定方向と交差する冷却手段の長手方向では、ブリッジ回路と同様の原理により、電位差が小さくなるため、電流が流れにくいからである。したがって、冷却手段を、ガラス溶融炉での最高溶融温度より低い温度に調整することができる。
上記ガラス製品の製造装置においては、耐火材料は、白金元素単体からなる金属;ロジウム元素単体からなる金属;パラジウム元素単体からなる金属;金元素単体からなる金属;白金元素を含む金属化合物;ロジウム元素を含む金属化合物;パラジウム元素を含む金属化合物;金元素を含む金属化合物;白金元素、ロジウム元素、パラジウム元素及び金元素からなる群より選ばれる2種以上からなる合金;並びに耐火煉瓦;からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
上記ガラス製品の製造装置においては、ノズルは、溶融ガラスを通過させて冷却固化して吐出可能に構成できる。
上記ガラス製品の製造装置においては、ガラス製品が、ガラス繊維、ガラスロービング、ガラスフレーク、ガラスペレット、ガラスビーズ、ガラスフィラー又はガラスマーブルである。
本発明の一観点に係るガラス製品の製造方法は、上記ガラス製品の製造装置を用いる。
本発明の一観点に係る白金族金属の回収方法は、上記ガラス製品の製造装置を準備するする工程であって、耐火材料に白金族金属が含まれている、工程と、冷却手段に析出した白金族金属を回収する工程と、を備えている。
本発明によれば、溶融ガラス内に含まれた不純物を回収できるガラス製品の製造装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るガラス繊維の製造装置の斜視図。 図1のガラス繊維の製造装置の側面図。 図1のガラス繊維の製造装置の上面図。 第1部材の模式図であり、(a)は第1部材を上面視した平面図、(b)は第1部材の側面図。 第2部材の模式図であり、(a)は第2部材を上面視した平面図、(b)は第2部材の側面図。 (a)は1つの冷却手段の拡大図、(b)は1つの冷却手段の展開図。 図2のAの部分の拡大図であり、冷却手段が、第2部材から離隔した下方に配置されている様子を示す模式図。 冷却手段が側壁に取り付けられている様子を示す側面図。 別の例の冷却手段を用いたガラス繊維の製造装置の側面図。 図9のガラス繊維の製造装置の上面図。 他の例の冷却手段を示す模式図。 他の例の冷却手段を示す模式図。 2つの第2部材が設けられているガラス繊維の製造装置の側面図。 別の形態のガラス繊維の製造装置の斜視図。 図14のガラス繊維の製造装置の側面図。 冷却手段が側壁に取り付けられている様子を示す斜視図。 固形ガラスの製造装置の側面図。 冷却手段が第2部材及び側壁に取り付けられている様子を示す模式図。 図18のBの部分の拡大図であり、冷却手段が、第2部材に取り付けられている様子を示す模式図。 図18の側面図。
<1.実施形態>
以下、本発明に係るガラス製品の製造装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。ここでは、ガラス製品の一例として、ガラス繊維を挙げ、本発明をガラス繊維の製造装置に適用した例を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るガラス繊維の製造装置の斜視図である。図2は、図1のガラス繊維の製造装置の側面図である。図3は、図1のガラス繊維の製造装置の上面図である。なお、図1、図2では、ガラス繊維の製造装置内を視認可能なように、側壁の一部を省略している。本実施形態に係るガラス繊維の製造装置100は、ガラス材料が投入される投入口10と、投入されたガラス材料を溶融する領域であるガラス溶融炉20と、溶融されたガラス材料を吐出する複数のノズル41が形成されたノズル部材40とを含む。
以下に、製造装置100の各部の構成について説明する。以下では、図1等に示す方向、つまり上、下、前、後、右、左にしたがって説明を行う。具体的には、投入口10とノズル部材40との間の方向が上下方向である。また、後述の加熱手段70a、70bが対向している方向が左右方向であり、上下方向及び左右方向と直交する方向が前後方向である。これらの方向にしたがって、説明を行うが、但し、この向きによって、本発明が限定されるものではない。
(1)投入口10
製造装置100の上部には、ガラス材料を投入するための投入口10が設けられている。投入口10は、上下方向に貫通する筒体により形成されており、ガラス溶融炉20の上端部に連結されている。また、投入口10は、上面視において例えばガラス溶融炉20よりも小さく形成されており、これによって、投入口10によるガラス溶融炉20の開口を小さくすることができ、ガラス溶融炉20内の温度の低下を抑制できる。
(2)ガラス溶融炉20
ガラス溶融炉20は、投入口10から投入されたガラス材料を溶融する筐体を備えている。この筐体は、左右方向に対向する1組の側壁101a、101bと、前後方向に対向する101c、101dと、上部壁102とが組み合わされ、下部にノズル部材40が配置されることで、内部空間を有する概ね直方体状に形成されている。そして、このガラス溶融炉20は、後述する耐火材料で形成されている。また、ガラス溶融炉20の内部空間には、上から下方に並ぶ、第1部材(仕切り部材)50及び第2部材60が配置されており、内部空間は、これら第1及び第2部材50、60により、上から順に第1領域21、第2領域23及び第3領域25に仕切られている。また、このガラス溶融炉20には、ガラス材料を溶融するための加熱手段70が設けられている。以下、ガラス溶融炉20を構成する部材について、詳細に説明する。
(2−1)加熱手段70
ガラス溶融炉20の右側及び左側それぞれには、加熱手段70a、70bが設けられている。加熱手段70a、70bそれぞれは電極の端子(ターミナル)を含み、図示しない電源から電圧が印加される。これにより、製造装置100には、加熱手段70a、70b間の方向、つまり左右方向に沿った電流が流れ、ガラス溶融炉20が加熱される。加熱手段70は、ガラス溶融炉20を例えばガラス材料の粘度が400ポイズ以下となるように加熱する。そして、ガラス溶融炉20の第1領域21内のいずれかの地点は、製造装置100内で溶融ガラスが最高溶融温度となる高温領域となっている。また、加熱手段70は、筐体の内部に加え、ノズル部材40を加熱することで、ノズル41から吐出されるガラス繊維の紡糸速度、繊維の太さ及び強度等を調整するように構成されている。
(2−2)第1部材50
図4は、第1部材の模式図であり、(a)は第1部材を上面視した平面図であり、(b)は第1部材の側面図である。第1部材50は、直方体状のガラス溶融炉20の形状に対応して、長方形状の板状に形成されている。より詳細に説明すると、第1部材50は、板状面が左右方向に沿うように、ガラス溶融炉20の側壁101a〜101dに、例えば溶接等により取り付けられている。この第1部材50は、図1、図2、図4に示すように、側面視において、V字状に形成されている。すなわち、左右方向の中央部51から右端部52a及び左端部52bにいくにしたがって上方に向かうように傾斜しており、右端部52a及び左端部52bは、左右の側壁101a、101bに連結されている。そして、右端部52aには、前後方向に並ぶ開口53a(開口53a1及び開口53a2)が形成され、左端部52bにも、前後方向に並ぶ開口53b(開口53b1及び開口53b2)が形成されている。
第1部材50は、後述するように、中央部51から右端部52a及び左端部52bに向かう傾斜によって、第1領域21内の溶融ガラス内の固形ガラスを完全に溶解させる。よって、第1部材50において、左右方向を基準とし、中央部51を中心とした左右の傾斜角度θa、θbは、溶融ガラス内の固形ガラスを十分に堰止められる程度に調整されている。言い換えれば、傾斜角度θa、θbは、第1領域21内の溶融ガラスが、中央部51から端部52a、52bの開口53a、53に向かって徐々に流れ、滞留することで固形ガラスを十分に溶解させる時間を確保できる程度に調整されている。溶融ガラスの粘度はガラス材料の種類及び温度等によって異なるため、例えばガラス材料の種類及び最高溶融温度等によって傾斜角度θa、θbを異ならせるのが好ましい。
同様に、中央部51から、各開口53a、53bの中央部51側の端辺までの距離La、Lbもまた、溶融ガラスを滞留させて固形ガラスを十分に溶解させることができるように調整されている。なお、開口53a、53bそれぞれから第2領域23に対して、固形ガラスが完全に消失した溶融ガラスを供給するため、距離La、Lbは概ね同一であり、傾斜角度θa、θbも概ね同一であるのが好ましい。
(2−3)第2部材60
第2部材60は、第2領域23と第3領域25との間に配置されている。図5は、第2部材の模式図であり、(a)は第2部材を上面視した平面図であり、(b)は第2部材の側面図である。第2部材60は、直方体状のガラス溶融炉20の形状に対応して、長方形状の板状に形成されている。第2部材60は、板状面が左右方向に沿うように、例えば溶接等によりガラス溶融炉20の側壁101a〜101dに取り付けられている。この第2部材60は、図1、図2、図5に示すように、側面視において、左右方向の中央部61から右端部62a及び左端部62bに向かうほど、上方に傾斜している。言い換えれば、第2部材60の中央部61は、右端部62a及び左端部62bよりも下部のノズル部材40に近い。
そして、第2部材60には、その平面を上下方向に貫通する複数の長方形状の開口63が形成されている。開口63は、互い違いに位置するように形成されている。つまり、例えば、開口63aと開口63bとは、前後方向及び左右方向の位置がずれるように形成されている。
第2部材60は、右端部62a及び左端部62bから中央部61に向かう傾斜によって、第2領域23内の溶融ガラスを概ね均一に混ざり合わせる。よって、第2部材60において、左右方向を基準として、中央部61を中心とした左右の傾斜角度θc、θdは、第2領域23内の溶融ガラスが、右端部62a及び左端部62bから中央部61向かって流れるにつれて、概ね均一に混ざり合うことができる程度に調整されている。溶融ガラスの粘度はガラス材料の種類及び温度等によって異なるため、例えばガラス材料の種類及び温度等によって傾斜角度θc、θdを異ならせるのが好ましい。
また、溶融ガラスが概ね均一に混ざり合い、開口63から流れ出ることができるように、中央部61から、右端部62a及び左端部62bまでの距離Lc、Ldは概ね同一であり、傾斜角度θc、θdも概ね同一であるのが好ましい。
(2−4)冷却手段80
図1、図2に示すように、第2部材60から離隔した下方には、第2部材60の複数の開口63に対応して、例えば導電部材から形成された複数の冷却手段80が配置されている。この冷却手段80は、前述した第1領域21内のいずれかの地点の最高溶融温度より、溶融ガラスを低い温度に冷却する手段である。本実施形態では、冷却手段80は、側面視においてV字状の形状を有している。図6〜図8を用いて、冷却手段80についてさらに説明する。
図6の(a)は1つの冷却手段の拡大図であり、(b)は1つの冷却手段の展開図である。図7は、図2のAの部分の拡大図であり、冷却手段が、第2部材から離隔した下方に配置されている様子を示す模式図である。図8は、冷却手段が側壁に取り付けられている様子を示す側面図である。本実施形態の冷却手段80は、図6の(b)に示す板状部材を図6の(a)に示すV字状に折り曲げてなる部材である。冷却手段80は、一方向に延びるV字状の先端部81を中心として、一方側と他方側とが概ね対称の形状を有している。よって、冷却手段80の一方側のみ説明を行い、他方側については説明を省略する。
冷却手段80の一方側には、先端部81から傾斜部82aが延びており、これによりV字の傾斜の一方が形成されている。傾斜部82aの両端部83a、83bそれぞれからは、V字の傾斜に沿って連結部84a及び84bが延びている。両端部83a、83bは、先端部81から離れた位置において、先端部81に延びる方向に沿って互いに対向している。連結部84aには取付部85aが連結され、連結部84bには取付部85bが連結されている。取付部85a、85bは、先端部81が延びる方向に沿って互いに反対方向に延びている。また、取付部85a、85bは、連結部84a、84bに対して所定の角度で折り曲げられている。取付部85aは、板状面85a1と、ガラス溶融炉20の左右方向に延びる側壁101c、101dに接触する側壁側面85a2を有する。同様に、取付部85bは、板状面85b1及び側壁側面85b2を有する。
傾斜部82aの両端部83a、83bからは連結部84a及び84bが延びているため、連結部84a及び84bに対して傾斜部82aが凹んだ位置にあり、段部87aが形成されている。また、先端部81に対して段部87aと対称の位置において、連結部84c及び84dに対して傾斜部82bが凹んだ位置にあるため、段部87bが形成されている。さらに、前述の通り、取付部85a、85cが傾斜部82a、82bから離れる方向に延びている。よって、取付部85a、85cに対して、傾斜部82a及び傾斜部82bが凹んだ位置にあり、段部86aが形成されている。同様に、取付部85b、85dが傾斜部82a、82bから離れる方向に延びている。よって、傾斜部82a及び傾斜部82bと、取付部85b、85dとにより段部86bが形成されている。
図7に示すように、冷却手段80は、開口63の下部に対応するように配置されている。冷却手段80の数は限定されないが、本実施形態では7個の冷却手段80が設けられている。これらの冷却手段80は、図7、図8に示すように、取付部85a〜85dの側壁側面85a2〜85d2がガラス溶融炉20の左右方向に延びる側壁101c、101dと接触し、例えば溶接等により接着されている。
前述の取付状態において、冷却手段80は、取付部85a〜85dを上にして、V字の先端部81が下に位置している。また、冷却手段80は、その長手方向に延びる先端部81が、左右方向に直交する前後方向に沿うように取り付けられている。これは、右端部の加熱手段70aと、左端部の加熱手段70bとの間に電位差を設けて電圧を印加することで、第2部材60の左右方向に沿って電流が流れていることによる。そして、電流の流れる左右方向に対して直交する前後方向では、ブリッジ回路と同様の原理により、電位差が小さいか又はないため、電流が流れにくいか又は流れない。また、冷却手段80は、電流が流れている第2部材60から離隔して配置され、前後方向に対向する側壁101c、101dに取り付けられている。このことによっても、冷却手段80には電流が流れにくいか又は流れない。そのため、冷却手段80は、発熱しにくいか又は発熱せず、ガラス溶融炉20での最高溶融温度より低い温度に調整される。なお、冷却手段80の長手方向は、電流の流れる左右方向と直交する前後方向だけでなく、電流の流れる左右方向と交差する方向に沿っていてもよい。
また、冷却手段80の傾斜部82aと傾斜部82bとのなす角である角度θeは、第2部材60から供給される溶融ガラスを、冷却手段80によって受容可能な程度の角度に調整されている。これに限定されないが、例えば、角度θeは45〜120°とすることができる。
なお、本発明において、「最高溶融温度」とは、ガラス溶融炉20内における溶融ガラスが最も高くなる温度であり、ガラス材料を溶融する温度である。また、最高溶融温度は、ガラス材料を溶融する温度であって、ガラス材料の粘性を例えば400ポイズ以下、好ましくは100ポイズ以下等にして十分低下させ、ガラス材料中のブツを完全に溶解させる温度が好ましい。最高溶融温度は、ガラス材料の形状、組成等によって選択できるが、例えば、1400℃以上が挙げられる。溶融するガラス材料を構成するガラス組成物が後述する質量%で表示して、56≦SiO2≦66、16≦Al23≦26、10≦MgO≦20を含むガラス組成物、または、質量%で表示して、45≦SiO2≦60、20≦B23≦30、10≦Al23≦20を含むガラス組成物である場合は、最高溶融温度は、例えば、1400℃以上1650℃以下が挙げられ、1500℃以上1650℃以下が好ましく挙げられる。
また、本発明において、冷却手段80が冷却する溶融ガラスの「最高溶融温度より低い温度」は、最高溶融温度より低く、溶融ガラス内に含まれた不純物を析出させることのできる温度であればよく、析出させる不純物によって適宜選択される。例えば、「最高溶融温度より低い温度」は、後述する溶融させるガラス材料の液相温度以上、溶融させるガラス材料の400ポイズ温度以下が挙げられる。具体的には、「最高溶融温度より低い温度」は、析出させる不純物が白金を含む金属化合物の場合であって、ガラス材料を構成するガラス組成物が後述する質量%で表示して、56≦SiO2≦66、16≦Al23≦26、10≦MgO≦20を含むガラス組成物、または、質量%で表示して、45≦SiO2≦60、20≦B23≦30、10≦Al23≦20を含むガラス組成物である場合は、最高溶融温度より低く、かつ、1200℃以上1500℃以下であることが挙げられ、最高溶融温度より低く、かつ、1200℃以上1450℃以下であることが好ましく挙げられ、最高溶融温度より低く、かつ、1200℃以上1400℃以下であることがより好ましく挙げられる。
(3)ノズル部材40
ガラス溶融炉20の第3領域25の底部には、ノズル部材40が設けられている。ノズル部材40は、複数のノズル41を有しており、ノズル41から溶融ガラスを吐出する。
(4)耐火材料
ガラス材料を溶融するため、少なくとも製造装置100のうちガラス溶融炉20は、耐火材料で形成されている。耐火材料としては、例えば、白金元素単体からなる金属;ロジウム元素単体からなる金属;パラジウム元素単体からなる金属;金元素単体からなる金属;白金元素を含む金属化合物;ロジウム元素を含む金属化合物;パラジウム元素を含む金属化合物;金元素を含む金属化合物;白金元素、ロジウム元素、パラジウム元素及び金元素からなる群より選ばれる2種以上からなる合金;並びに耐火煉瓦からなる群から選択される少なくとも1つが含まれる。また、耐火材料としては、その他、モリブデン、黒鉛、酸化スズ、セラミック、アルミナ、酸化クロム、マグネシア、ジルコン、ジルコニア、酸化イットリウムからなる群から選択される少なくとも1つが含まれる。また、耐火材料としては、上記に記載した材料の組み合わせも含まれ、例えば、複数の材料による合金を耐火材料として用いてもよい。また、複数の耐火材料を各層として組み合わせてもよく、例えば、耐火煉瓦を外壁とする炉において、その内壁に白金又は白金-ロジウム合金等の板材や被膜が形成されてもよい。
また、耐火材料により形成されるのはガラス溶融炉20に限らない。例えば、ノズル部材40、第1部材50、第2部材60及び冷却手段80の少なくともいずれかが耐火材料により形成されてもよい。
(5)ガラス材料
製造装置100に投入されるガラス材料には、粉末等のガラス原料(ガラス材料を構成するガラス組成物の成分、例えばSiO2、Al23、MgO等の各酸化物等、を含む。)、及び固形ガラス等が含まれる。また、固形ガラスは、粉末等のガラス原料を溶融して、例えば棒状、球状、フレーク状、鱗片状等の所定の形状に成形したガラスである。また、ガラス製品がガラス繊維であって、所謂ダイレクトメルト方式により生産され、製造装置100をブッシングに適用する場合は、製造装置100に投入されるガラス材料として、流動可能な溶融状態の溶融ガラスとすることもできる。
上記ガラス材料を構成するガラス組成物としては、公知のガラス組成物が使用でき、例えば、Eガラス、Tガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Lガラス、Cガラス、ARガラス等が挙げられ、溶融温度がより高温となるという観点から、Tガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラスが好ましく挙げられる。具体的には、例えば、質量%で表示して、56≦SiO2≦66、16≦Al23≦26、10≦MgO≦20を含むガラス組成物、または、質量%で表示して、45≦SiO2≦60、20≦B23≦30、10≦Al23≦20を含むガラス組成物が挙げられる。
(6)ガラス繊維の製造方法
次に、投入口10からガラス材料が投入されてから、ノズル41からガラス繊維が吐出されるまでの流れについて説明する。
まず、ガラス溶融炉20の第1領域21には、投入口10から次々とガラス材料が投入され、ガラス材料が溶融される。そのため、第1領域21は、ガラス材料、溶融途中のガラス材料及び溶融ガラスにより満たされている。なお、第1領域21は、ガラス材料を溶融するために、ガラス材料の溶融点以上の高温に加熱されている。ただし、第1領域21において、投入口10付近においてガラスが次々と投入されている部分は、温度が低くなりやすく、ガラス材料の種類等によって異なるが、例えば、約1400℃となっている。
第1領域21で溶融された溶融ガラスは、第1領域21の下部の、図4に示す第1部材50と接触して受け止められる。そして、溶融ガラスは、例えば、溶融ガラスの自重に逆らいながら、第1部材50の上り傾斜に沿って中央部51から開口53a、53b側に徐々に流れていく。このように溶融ガラスが徐々に流れていくことで、単に開口53a、53bから溶融ガラスが第2領域23に流れ出る場合よりも、第1部材50上での溶融ガラスの滞留時間が長くなる。これにより、溶融ガラス内の固形ガラスを溶融させるための時間を確保でき、溶融ガラス内の固形ガラスを完全に溶解できる。そして、固形ガラスが排出された溶融ガラスが、各開口53a、53bを介して第2領域23に供給される。
前述の通り、第1領域21は、ガラス材料の溶融点以上の高温に加熱されている。そして、第1部材50の開口53(53a、53b)は、第1部材50の左右方向の端部に設けられており、加熱手段70(70a、70b)に隣接しているため、最も大きい電流が流れ、中央部51よりも高い温度となっている。これらのことから、本実施形態では、ガラス溶融炉20内の開口53付近が、製造装置100内で溶融ガラスが最高溶融温度となる高温領域となっている。最高溶融温度は、ガラス材料の種類等によって異なるが、例えば、約1650℃である。
次に、第1領域21の溶融ガラスは、第2領域23に次々と供給されるため、第2領域23は溶融ガラスで満たされている。そして、第1部材50の各開口53a、53bを介して第2領域23に溶融ガラスが供給される流れに従って、溶融ガラスは第2部材60の両端部62a、62bに流れる。さらに、溶融ガラスは、第2部材60の傾斜に沿って、両端部62a、62bから中央部61側に流れていく。溶融ガラスは、第2部材60上を伝わって流れる過程で混ざり合いながら、所定間隔に配置された複数の開口63から第3領域25に流れ出る。これにより、概ね均質な溶融ガラスが、概ね均一に第3領域25に流れ出て、第3領域25を満たしている。
前述の通り、第2部材60は、中央部61から右端部62a及び左端部62bに向かって上方に傾斜しており、これにより、ノズル部材40全体の温度を概ね均一に保つことができる。つまり、ノズル部材40の左右方向の中央部は、ノズル部材40の左右方向の両端部よりも加熱手段70から離れており、電圧降下の影響により、両端部よりも温度が低くなりやすい。第2部材60の中央部61は、右端部62a及び左端部62bよりも下に位置しており、ノズル部材40に近い。よって、第2部材60の中央部61の熱がノズル部材40の中央部に伝わりやすく、ノズル部材40の中央部の温度低下を補償することができる。
次に、第3領域25に流れ出た溶融ガラスは、開口63に対応して配置された冷却手段80に供給される。冷却手段80は、V字の先端部81が下を向いているため、傾斜部82aと傾斜部82bとによって囲まれた空間によって溶融ガラスを一時的に受容する。つまり、溶融ガラスは、傾斜部82a、82bによって受容されて接触するが、次々と溶融ガラスが供給されるため、冷却手段80から溢れ出る。
前述の通り、冷却手段80は、最高溶融温度よりも低い温度に調整されている。よって、冷却手段80に一時的に受容された溶融ガラスは、冷却手段80との接触により最高溶融温度よりも低い温度に冷却される。これにより、溶融ガラス内に溶融している不純物、例えばガラス材料とともに溶融される耐火材料の一部などを析出させることができる。析出した不純物は、冷却手段80に付着して回収される。
さらに、第2部材60の開口63から冷却手段80に供給された溶融ガラスは、傾斜部82a、82bからの跳ね返り、傾斜部82a、82bと接触している溶融ガラスと、接触していない溶融ガラスとの温度差等によって、冷却手段80内において対流する。そのため、冷却手段80との接触により溶融ガラスが冷却されるだけでなく、冷却手段80内での対流によって溶融ガラスが混ざり合うことによって、冷却される溶融ガラスの量が多くなり、また冷却スピードも向上する。これにより、効率的に溶融ガラスを冷却し、溶融ガラス内に溶融している不純物を析出させることができる。
なお、前述した、溶融ガラスが最高溶融温度よりも低い温度に冷却されるとの意味には、溶融ガラスを最高溶融度よりも低い温度に冷却するとの意味と、最高溶融温度よりも低い冷却手段80に溶融ガラスを供給することで、溶融ガラスを冷却手段80の温度に近づけるように冷却する意味とを含む。後者の場合、溶融ガラスは冷却手段80に接触することで冷却されるが、必ずしも冷却手段80の温度に冷却されるとは限らず、例えば冷却手段80に近い温度にまで冷却される場合を含む。
また、冷却手段80の温度は、溶融ガラスの液相温度よりも高い温度に調整することができる。溶融ガラスは、液相温度よりも低くなると、結晶化が進行し、結晶粒へと変化する失透の状態となる。失透するとガラス繊維を製造できなくなるため、冷却手段80の温度はガラス材料の液相温度よりも高くすることが好ましい。
次に、冷却手段80によって少なくとも一部の不純物が回収された溶融ガラスは、第3領域25の下部のノズル部材40に供給される。よって、不純物の少ない溶融ガラスからなるガラス繊維を、ノズル部材40のノズル41から吐出することができる。このノズル部材40の温度は、加熱手段70により調整され、ガラス材料等によって異なるが、例えば、約1400℃である。
また、前述の通り、溶融ガラスは、第1部材50において溶融ガラス内の固形成分が十分に少なくなってノズル部材40に供給される。よって、固形成分の少ない溶融ガラスをノズル41から吐出でき、ガラス製品の強度の低下等を抑制できる。さらに、第2部材60の傾斜によってノズル部材40全体の温度が概ね均一であるため、ノズル41から概ね均一なガラス繊維を吐出できる。
<2.特徴>
本発明のガラス製品の製造装置100によれば、冷却手段80に付着した不純物(ガラス材料とともに溶融される耐火材料の一部など)を回収することができ、不純物の少ない溶融ガラスからなるガラス製品をノズル41から吐出することができる。そして、従来、ガラス溶融温度が高いほど溶融ガラス内に溶融する不純物量が多くなる傾向にあることから、上記効果はガラス溶融温度が高くなるほどより一層顕著となる。溶融温度が高くなるガラス材料としては、例えば、液相温度が800〜1400℃、ガラスを成形しやすくなる温度、例えばガラス製品がガラス繊維である場合に紡糸しやすくなる温度である1000ポイズ温度が1000〜1400℃のガラス材料が挙げられ、液相温度が900〜1400℃、1000ポイズ温度が1100〜1400℃のガラス材料が好ましく挙げられる。なお、液相温度及び1000ポイズ温度は以下のようにして測定する。
(1)1000ポイズ温度:白金ルツボ中でガラス材料を溶融した後、回転式B型粘度計を用いて、溶融温度を変化させながら連続的に溶融ガラスの粘度を測定し、粘度が1000ポイズのときに対応する温度を1000ポイズ温度とする。測定には、高温回転粘度計(芝浦システム社製)を用い、JIS Z 8803−1991に準じて行う。
(2)液相温度:ガラス材料を粉砕し、白金ボート中に入れて、1000℃から1500℃の温度勾配を設けた管状電気炉で8時間以上加熱する。電気炉から取り出した試料を偏光顕微鏡で観察し、結晶が析出し始めた温度を液相温度とする。
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
<3−1>
(1)冷却手段の変形例1
上記実施形態では、冷却手段80は、側面視において先端部81が尖ったV字状である。しかし、冷却手段80は、溶融ガラスを冷却できればよく、上記実施形態とは異なる形状であってもよい。図9は、別の例の冷却手段を用いたガラス繊維の製造装置の側面図である。図10は、図9のガラス繊維の製造装置の上面図である。図9、図10に示すように、冷却手段800は、前後方向に延びる棒状部材であってもよい。冷却手段800は、上記実施形態と同様に、溶融ガラスを最高溶融温度より低い温度に冷却する手段である。
この冷却手段800は中実の棒状部材であってもよい。この場合、溶融ガラスは、冷却手段800の外周面と接触することで冷却される。これにより溶融ガラス内の不純物が析出し、冷却手段800の外周面に付着して回収される。また、冷却手段800は、中央部が空洞の棒状部材であってもよい。この場合、冷却効率を高めるために、空洞に空気及び液体の少なくともいずれかを流してもよい。
さらに、冷却手段800は、上下方向又は左右方向に延びる棒状部材であってもよいし、上下方向、前後方向及び左右方向の少なくとも2つの組み合わせの方向に延びる棒状部材であってもよい。この棒状部材の形状としては、円柱状及び楕円形状であってもよい。また、棒状部材の外周面から複数のフィンが突出するように形成されていてもよい。
(2)冷却手段の変形例2
上記実施形態では、冷却手段80は、側面視において先端部81が尖ったV字状である。しかし、V字状には、側面視において先端部81が緩い角度で曲がったU字状も含まれる。さらには、第2部材60から流れ出た溶融ガラスを一時的に受容可能であれば、冷却手段80はV字状に限定されない。例えば、冷却手段80は、上方に開放する凹部を有する形状であってもよく、例えば側面視が矩形のコップ状であってもよい。例えば、冷却手段80は、上記実施形態の冷却手段80のような段部86a、86b、87a、87bを有しておらず、単にV字状、U字状、コップ状等の形状を有することで、溶融ガラスを一時的に受容して溢れ出るように構成されていてもよい。
(3)冷却手段の変形例3
上記実施形態と異なり、側壁側面85a2〜85d2は、板状面85a1〜85d1に対して折れ曲がっていてもよい。図11は、他の例の冷却手段を示す模式図である。図11に示すように、側壁側面85a2〜85d2は、板状面85a1〜85d1に対して概ね直角に折れ曲がっている。側壁側面85a2〜85d2は、ガラス溶融炉20の側壁101c、101dと接触する部分であり、側壁側面85a2〜85d2の面積を大きくすることで側壁101c、101dとの接触面積を大きくできる。これにより、例えば溶接等により、冷却手段80を側壁101c、101dにしっかりと固定できる。
また、上記実施形態では、取付部85a、85bは、連結部84a、84bに対して所定の角度で折り曲げられている。しかし、取付部85a、85bは、連結部84a、84bと同様にV字の傾斜に沿っており、連結部84a、84bと同一方向に延びていてもよい。
また、上記実施形態では、冷却手段80は、図6に示すように4つの取付部85a、85b、85c、85dを有している。しかし、いずれかの取付部を一体としてもよい。例えば、図6の取付部85a、85cを一体として取付部とし、図6の取付部85b、85dを一体として取付部としてもよい。
(4)冷却手段の変形例4
図12は、他の例の冷却手段を示す模式図である。図12に示すように、上記実施形態の冷却手段80において、傾斜部82a、82bを貫通する複数の貫通孔88が形成されていてもよい。図12の冷却手段80では、第2部材60からの溶融ガラスは、傾斜部82a、82bにより一時的に受容されて冷却手段80から溢れ出るだけでなく、貫通孔88からも流れ出る。これにより、溶融ガラスを傾斜部82a、82bと接触させて冷却させるとともに、貫通孔88の内壁と接触させることでも冷却できる。
(5)冷却手段の変形例5
上記実施形態では、冷却手段80は板状部材から形成されているが、この板状部材の内部に空間が形成されていてもよい。また、板状部材の内部の空間に、空気及び液体の少なくともいずれかを流通させてもよい。
<3−2>
上記実施形態の製造装置100では、1つの第2部材60のみが設けられている。しかし、第2部材は2つ以上設けられていてもよい。図13は、2つの第2部材が設けられているガラス繊維の製造装置の側面図である。図13に示すように、製造装置100は、2つの第2部材60、65を有している。第2部材65は、第2部材60とノズル部材40との間に設けられている。第2部材65の構成は、第2部材60と概ね同様である。そして、第2部材60から離隔した下方に対応した冷却手段80と、第2部材65から離隔した下方に対応した冷却手段180とは、左右方向の位置関係がずれるように配置されている。これにより、例えば上方の第2部材60から流れ出て冷却手段80により冷却されずに下方に流れた溶融ガラスを、下方の第2部材65に対応した冷却手段180によって冷却できる。
ただし、上記とは異なり、第2部材60に対応した冷却手段80と、第2部材65に対応した冷却手段180とが、左右方向において同一の位置に配置されていてもよい。例えば、溶融ガラスを2つの冷却手段80、180の両方と接触させて冷却できる。
<3−3>
上記実施形態では、冷却手段80の温度は、最高溶融温度よりも低い温度に調整されている。しかし、冷却手段80の温度を、ノズル部材40の温度又はノズル部材40での溶融ガラスの温度以下にするとさらに好ましい。溶融ガラスが吐出されるノズル部材40の手前において、ノズル部材40の温度以下又はノズル部材40での溶融ガラスの温度以下に溶融ガラスを冷却することで、溶融ガラス内に含まれる不純物の析出を促進できる。そのため、ノズル部材40が不純物によって詰まるなどの不具合を抑制できる。また、不純物の少ない溶融ガラスからなるガラス繊維をノズル部材40を介して製造できる。
ただし、冷却手段80の温度は、ガラス溶融炉20内での溶融ガラスの最高溶融温度より低い温度であればよく、ノズル部材40の温度又はノズル部材40での溶融ガラスの温度よりも高くてもよい。
<3−4>
上記実施形態では、第1部材50は、側面視においてV字状の板状部材である。しかし、V字状には、側面視において緩い角度で曲がったU字状も含まれる。その他、第1部材50は、その平面が一方向にのみ傾斜しており、下方に位置する端部に開口が形成されている部材であってもよい。つまり、第1部材50は、例えば左方向の端部から右方向の端部に向かって下方に傾斜しており、右方向の端部が開口していてもよい。
また、上記実施形態では、第1部材50の平面形状はガラス溶融炉20の形状に合わせて長方形状であるが、これに限定されない。例えば、円形状、楕円形状及び円錐形状等であってもよい。また、第1部材50の開口53(53a1、53a2、53b1、53b2)の数は上記実施形態の4つに限定されず、4つよりも多くてもよいし、4つより少なくてもよい。この開口53a、53bの大きさ及び形状等は、第1部材50を徐々に流れた溶融ガラスを徐々に下方に流すことが可能であれば特に限定されない。
同様に、上記実施形態では、第2部材60は側面視において中央部に向かって凹むV字状であるが、第2部材60は側面視においてU字状であってもよいし、平面状であってもよい。また、上記実施形態では、第2部材60の平面形状は長方形状であるが、これに限定されず、例えば、円形状、楕円形状であってもよい。また、第2部材60の開口63は、ノズル部材40に概ね均一に溶融ガラスを提供できればよく、その大きさ及び形状は特に限定されない。
<3−5>
上記実施形態では、第2部材60が設けられているが、第2部材60は省略されてもよい。図14は、別の形態のガラス繊維の製造装置の斜視図である。図15は、図14のガラス繊維の製造装置の側面図である。図16は、冷却手段が側壁に取り付けられている様子を示す斜視図である。図13〜図16に示すように、製造装置100では、上記実施形態の第2部材60が省略されており、ガラス溶融炉20は第1部材50により第1領域21及び第2領域27に分かれている。また、冷却手段80は、図16に示すように、ガラス溶融炉20の側壁101c、101dに取り付けられている。具体的には、冷却手段80は、取付部85a〜85dの側壁側面85a2〜85d2がガラス溶融炉20の左右方向に延びる側壁101c、101dと接触し、例えば溶接等により接着されている。なお、冷却手段80は、側面視において、図13に示すように左右方向に延びる円弧に沿った配置に限定されず、例えば左右方向の一直線上に配置されてもよいし、ランダムに配置されてもよい。
<3−6>
上記実施形態では、冷却手段80を有するガラス繊維の製造装置100について説明した。しかし、冷却手段80は、粉末等のガラス原料から、ガラス繊維の原料となる固形ガラスを製造する固形ガラスの製造装置に適用してもよい。図17は、固形ガラスの製造装置の側面図である。固形ガラスの製造装置200は、上記実施形態のガラス繊維の製造装置100とは、第1部材50が設けられていない点において異なり、その他の点は同様である。固形ガラスの製造装置200は、第2部材60により第1領域28及び第2領域29に分かれている。なお、ガラス繊維の製造装置100においては、溶融ガラス内の固形成分を十分に少なくするために第1部材50を設けている。しかし、固形ガラスの製造装置200から製造される固形ガラスは、後工程でのガラス繊維の製造装置100において十分に溶解されればよく、固形成分が含まれていてもよい。よって、図17の固形ガラスの製造装置200では、第1部材が設けられていない。しかし、固形ガラスの製造装置200においても第1部材が設けられていてもよい。
<3−7>
本実施形態では、投入口10は、製造装置100の一番上に設けられている。しかし、ガラス溶融炉20の側壁に投入口10が設けられていてもよい。また、ガラス溶融炉20に直接にガラス材料を投入する場合には、投入口10は設けられていなくてもよい。
<3−8>
上記実施形態では、冷却手段80は、側壁101c、101dに取り付けられているが、冷却手段80の取付けはこれに限られない。図18は、冷却手段が第2部材及び側壁に取り付けられている様子を示す模式図である。図19は、図18のBの部分の拡大図であり、冷却手段が、第2部材に取り付けられている様子を示す模式図である。図20は、図18の側面図である。例えば、冷却手段80は、第2部材60及び側壁101c、101dに取り付けられていてもよい。この場合、図6、図19、図20に示すように、取付部85a〜85dの板状面85a1〜85d1が第2部材60の下面に沿って接触し、例えば溶接等により接着されている。さらに、取付部85a〜85dの側壁側面85a2〜85d2が側壁101c、101dと接触し、例えば溶接等により接着されている。
上記の通り、冷却手段80は、側壁101c、101dに対してだけでなく、第2部材60に対しても接着されている。この場合、第2部材60を左右方向に流れる電流の方向と、冷却手段80の先端部81が延びる長手方向とが交差している。よって、冷却手段80には電流が流れにくいか又は流れないため、冷却手段80は、発熱しにくいか又は発熱せず、ガラス溶融炉20での最高溶融温度より低い温度に調整される。
図19に示すように冷却手段80が取り付けられると、冷却手段80は、段部87a、87bを有しているので、第2部材60の下面と傾斜部82a、82bとの間には、概ね長方形状の隙間が形成される。また、冷却手段80は、段部86a(図19、図6(a))、86b(図6(a))を有しているので、第2部材60の下面と傾斜部82a、82bとの間には、概ねV字状の隙間が形成される。この場合、第2部材60の開口63から冷却手段80に溶融ガラスが供給されると、溶融ガラスは傾斜部82a、82bによって受容されるが、段部86a、86b、87a、87bによる隙間を介して、冷却手段80から流れ出る。その他の点については、上記実施形態と同様である。
なお、上記とは異なり、冷却手段80は、側壁101c、101dに取り付けられず、第2部材60にのみ取り付けられていてもよい。また、冷却手段80は、ガラス繊維製造においては、フォアハースやブッシングにも適用することもできる。
<3−9>
本発明の製造装置100において製造されるガラス製品としては特に限定されない。例えば、ガラス繊維、ガラスロービング、ガラスフレーク、ガラスペレット、ガラスビーズ、ガラスフィラー又はガラスマーブルが挙げられる。中でも、析出させる不純物が金属化合物である場合、金属化合物の除去が好ましい用途、例えば、電子材料用(プリント配線板用を含む。)のガラス製品であると、本発明による効果が特に顕著となり、より好ましい。
本発明の製造装置100において、例えば、ガラスフレーク、ガラスペレット、ガラスビーズ、ガラスフィラー又はガラスマーブルを製造する際には、製造装置100に加え、ノズル41から吐出された溶融ガラスを所定の大きさにするサイズ調整手段(図示しない)や所定の形に成形する成形手段(図示しない)を備えることができる。サイズ調整手段や成形手段は公知のものでよく、ガラスマーブルの場合は、例えば、サイズ調整手段として、ノズル41から吐出された溶融ガラスを所定の大きさに切断し、コブ(溶融ガラスの塊)とするカッター装置と、成形手段として、回転可能な近接する2本のスパイラルロールを備え、回転する2本のスパイラルロールの間に得られたコブを配置し、コブを回転させながら該スパイラルロールの長手方向に搬送しながら室温まで冷却してマーブル状に成形する成形装置とを備えることができる。また、ガラスペレットの場合は、例えば、サイズ調整手段として、ノズル41から吐出された溶融ガラスを所定の大きさに切断し、コブ(溶融ガラスの塊)とするカッター装置と、コブを冷却する水冷装置と、を備えることができる。
<3−10>
本発明の白金族金属の回収方法は、本発明のガラス製品製造装置100を用いて実現できる。この回収方法は、耐火材料が白金族金属を含む場合、上記ガラス製品の製造装置100を準備する工程と、冷却手段80に析出した前記白金族金属を回収する工程とを含む。例えば、ガラス製品がガラス繊維の場合、ガラス繊維製造装置としての耐用日数を終えた後、ガラス溶融炉内の溶融ガラスを除去し、冷却手段80に析出した白金族金属を回収することができる。これにより、高価な白金族金属の減耗を低減させることが可能となる。冷却手段80からの白金族金属の回収は、公知の手段でおこなわれる。
10 :投入口
20 :ガラス溶融炉
40 :ノズル部材
41 :ノズル
50 :第1部材
60 :第2部材
70 :加熱手段
80 :冷却手段
100 :製造装置

Claims (9)

  1. ガラス材料が投入される投入口と、
    少なくとも内壁面が耐火材料から形成されており、前記投入口に連続し、投入されたガラス材料を溶融して溶融ガラスを生成するガラス溶融炉と、
    前記ガラス溶融炉の下部に設けられ、前記溶融ガラスを吐出する少なくとも1つのノズルと、
    前記ガラス溶融炉及び前記ノズルを加熱する加熱手段と、
    前記ガラス溶融炉において前記溶融ガラスが最高溶融温度となる高温領域と、前記ノズルとの間に配置され、前記溶融ガラスを、前記溶融ガラスの最高溶融温度より低い温度に冷却する少なくとも1つの冷却手段と、
    を備え
    前記加熱手段は、前記ガラス溶融炉に電圧を印加して所定方向に電流を流す端子を有しており、
    前記冷却手段は、前記電流が流れる導電部材により構成され、前記導電部材は、前記電流の流れる前記所定方向と交差する方向に延びるように配置されており、
    前記電流の流れる前記所定方向と交差する方向の前記導電部材の両端部が前記ガラス溶融炉の側壁と接触している、ガラス製品の製造装置。
  2. 前記高温領域を含む領域に設けられ、前記ガラス溶融炉を上下方向に仕切る仕切り部材をさらに備えており、
    前記仕切り部材は、中央部から端部にいくほど、上方に向かって傾斜するように形成されるとともに、前記端部に開口を有している、請求項1に記載のガラス製品の製造装置。
  3. 前記冷却手段は、前記溶融ガラスを、前記ノズルでの溶融ガラスに近い温度、あるいは前記ノズルでの溶融ガラスの温度以下に冷却する、請求項1又は2に記載のガラス製品の製造装置。
  4. 前記冷却手段は、上方に開放する凹部を有するように構成されている、請求項1〜3のいずれかに記載のガラス製品の製造装置。
  5. 前記耐火材料は、白金元素単体からなる金属;ロジウム元素単体からなる金属;パラジウム元素単体からなる金属;金元素単体からなる金属;白金元素を含む金属化合物;ロジウム元素を含む金属化合物;パラジウム元素を含む金属化合物;金元素を含む金属化合物;白金元素、ロジウム元素、パラジウム元素及び金元素からなる群より選ばれる2種以上からなる合金;並びに耐火煉瓦;からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1〜のいずれかに記載のガラス製品の製造装置。
  6. 前記ノズルは、前記溶融ガラスを通過させて冷却固化して吐出可能に構成されている、請求項1〜のいずれかに記載のガラス製品の製造装置。
  7. 前記ガラス製品が、ガラス繊維、ガラスロービング、ガラスフレーク、ガラスペレット、ガラスビーズ、ガラスフィラー又はガラスマーブルである、請求項1〜のいずれかに記載のガラス製品の製造装置。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載のガラス製品の製造装置を用いる、ガラス製品の製造方法。
  9. 白金族金属の回収方法であって、
    請求項1〜のいずれか1項に記載のガラス製品の製造装置を準備する工程であって、前記耐火材料に白金族金属が含まれている、工程と、
    前記冷却手段に析出した前記白金族金属を回収する工程と、
    を備えている、白金族金属の回収方法。
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