以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。
実施例1は、3D(3次元)表示の印刷物のプレビューや印刷物の表示を、ディスプレイなどの表示装置上で実行できる画像処理装置に係る実施例である。図2は、本発明の実施例1における画像処理装置の構成を示す。表示装置102は、印刷プレビュー画像や印刷画像のほかにUI(ユーザーインタフェース)などを表示する。実施例1の表示装置102は液晶ディスプレイであるが、それ以外のCRTなどでもかまわない。入力装置101は、ユーザーからの指示や必要なデータ値をこの入力装置101を介して入力する。実施例1の入力装置101は、キーボードおよびマウスであるが、それ以外の入力装置が接続されていてもよい。処理装置104を構成するCPU105およびRAM106は、画像処理装置全体を制御する。記憶装置103は、CPU105が実行するプログラム、およびCPU105が利用するデータを記憶する。
実施例1では、処理装置104は、入力装置101を介してユーザーから指示された内容に応じて、記憶装置103に記憶されているデータを、同じく記憶装置103に記憶されているプログラムによって処理し、その処理結果を表示装置102に表示する、といった方法によって、印刷物の質感(光沢感)をディスプレイ上で表示(再現)することを実現する。つまり、印刷物プレビュー(または印刷物表示)を3D表示によってディスプレイ上で行うことができる。
実施例1において、入力装置101を介してユーザーから指示される内容は、具体的には、下記の通りである。1.印刷物プレビューの対象となる印刷物の原稿データ、2.印刷時に使用する用紙の種類である。これ以外のものを対象としてもよいが、これら以外の項目は本発明の主眼ではないため、ここでは入力装置101を介して指示される内容をこれらに限定して、以下説明する。ここで、印刷物は、用紙と原稿データからなる。
実施例1では、原稿データはBMP形式のデータファイルであるが、これ以外のファイル形式でもかまわない。BMPのようなラスタイメージではなく、PDFなどのベクターイメージでもかまわない。また、実施例1では、用紙の種類は3種類(キャストコート紙、グロスコート紙、マットコート紙)から選択可能となるようにしている。この3種類の用紙は、印刷用紙の質感を特徴づける代表的な用紙であり、この3種類の用紙の質感を3D表示の印刷物プレビューにおいて表示(再現)することができれば、この3種類以外の様々な用紙の質感を再現することも比較的容易であると予想している。実施例1では、選択可能な用紙の出力3種類に限定しているが、これらの3種以外の用紙選択(より多くの用紙種からの選択)が可能であっても何ら問題はない。
実施例1では、原稿データのほかに、(1)用紙部拡散反射データと、(2)用紙部正反射データと、(3)用紙部正反射適用領域データと、(4)用紙部正反射適用比率データと、(5)画像部正反射データと、(6)画像部正反射適用領域データと、(7)画像部正反射適用比率データとを使用して、プレビュー用データを算出する構成を採っている。実施例1では、上記した(1)〜(7)のデータは予め作成され、記憶装置103に記憶されている(なお、(1)〜(7)は、図において丸付き数字で表記する)。
実施例1における、(1)用紙部拡散反射データについて説明する。実施例1の用紙部拡散反射データは、実物のキャストコート紙(ミラーコートプラチナ紙、王子製紙)を、デジタルカメラで撮影して作成したものである。撮影の際には、用紙表面からの拡散反射画像が撮影できるように、用紙の配置および照明装置の配置、撮影装置(デジタルカメラ)の配置位置、を決定して撮影している。より具体的には、照明装置から用紙への入射光角度が45度、撮影装置位置を0度に配置して撮影した。
また、実際の用紙のサイズに対して解像度が400dpiとなるように撮影条件を調整している。また、撮影した画像の明るさを調整し、平均値が235(8ビット)となるように調整した(0を黒、255を白とする)。さらに、撮影画像は、プレビューを行う印刷物のサイズ(原稿データのサイズ)に比べて小さいため、画像を連結して印刷物のサイズと同じとなるサイズにまで拡大した。実施例1ではこのようにして生成した画像データを、(1)用紙部拡散反射データとして使用している。
実施例1では、実物の用紙の拡散反射画像をデジタルカメラで撮影することにより、用紙表面での拡散反射が用紙表面の各位置で細かく変化している特性(用紙表面における拡散反射において知覚されるテクスチャ)を、用紙拡散反射データに反映することができる。つまり、このようにして生成した用紙拡散反射データは各位置(各画素)でデータ値が変化しており、こうしたデータ値の変化が用紙表面での拡散反射が細かく変化している特性を反映したものとなっている。
実施例1における、(2)用紙部正反射データについて説明する。実施例1の用紙部正反射データは、実物のキャストコート紙(ミラーコートプラチナ紙、王子製紙)を、デジタルカメラで撮影して作成したものである。撮影の際には、用紙表面からの正反射画像が撮影できるように、用紙の配置および照明装置の配置、撮影装置(デジタルカメラ)の配置位置、を決定して撮影することで、採取したものである。より具体的には、照明装置から用紙への入射光角度が20度、撮影装置位置を20度に配置して撮影した。デジタルカメラ撮影時には、実際の用紙のサイズに対して解像度が400dpiとなるように撮影条件を調整している。また、撮影した画像は暗い画像であったため、平均値が253(8ビット)となるように明るさを調整している。さらに、撮影画像は、プレビューを行う印刷物のサイズ(原稿データのサイズ)に比べて小さいため、画像を連結して印刷物のサイズと同じとなるサイズにまで拡大した。実施例1ではこのようにして生成した画像データを、(2)用紙部正反射データとして使用している。
実施例1では、実物の用紙の正反射画像をデジタルカメラで撮影することにより、用紙表面での正反射が用紙表面の各位置で細かく変化している特性(用紙表面における正反射において知覚されるテクスチャ)を、用紙正反射データに反映することができる。つまり、このようにして生成した用紙正反射データは各位置(各画素)でデータ値が変化しており、こうしたデータ値の変化が用紙表面での正反射が細かく変化している特性を反映したものとなっている。
実施例1では、キャストコート紙のほか、グロスコート紙、マットコート紙についても、同様の方法で、(1)用紙部拡散反射データ、および(2)用紙部正反射データを作成して、記憶装置103に記憶する。そして、前述した入力装置101で選択された用紙に応じて、記憶装置103に記憶されている(1)用紙部拡散反射データ、および(2)用紙部正反射データの中から対応するものを選択して読み出す。
実施例1における、(3)用紙部正反射適用領域データについて説明する。実施例1では、(3)用紙部正反射適用領域データは、原稿データに対して、用紙部の正反射を適用する領域と用紙部の正反射を適用しない領域との区分を指示する役割を持っている。実施例1では、(3)用紙部正反射適用領域データは、BMP形式のデータファイルである。また、(3)用紙部正反射適用領域データのサイズは原稿データと同サイズである。実施例1では、(3)用紙部正反射適用領域データも前述した3種類の用紙それぞれに対応したものが作成されて、記憶装置103に記憶されている。
図3(a)〜(c)は、実施例1の(3)用紙部正反射適用領域データの概略を示す。なお、図3(a)〜(c)は、参考として付記した原稿データ(d)の場合における(3)用紙部正反射適用領域データである。図3(a)〜(c)における濃淡が用紙部正反射の適用比率のデータ値に対応しており、白部が用紙部の正反射を適用する画像領域(用紙部正反射データの適用比率が1.0となる)に対応し、黒部が用紙部の正反射を適用しない画像領域(用紙部正反射データの適用比率が0.0となる)に対応している。なお、原稿データ(d)は、グレーデータ(上半分の16個のパッチ画像)とカラーデータ(下半分の16個のパッチ画像)から構成されている。
実施例1の(3)用紙部正反射適用領域データは、各画素が0.0〜1.0の値に対応するように作成してある。実施例1では、各画素の値として0.0〜1.0の間の中間値も使用しており、中間値をとる場合には、(2)用紙部正反射データに適用比率をこの中間値として適用する領域となる(後述の計算式で説明するが、この際の残りの適用比率は(1)用紙部拡散反射データなどから補てんされることになる)。
実施例1では、(3)用紙部正反射適用領域データを次のように作成している。データ作成の前に、実物のキャストコート紙(ミラーコートプラチナ紙、王子製紙)に、パッチ画像を形成した実物の印刷画像を作成する。そして、この印刷画像を目視で確認しながら、用紙の光沢感が観察された領域に対しては、用紙部正反射データの適用比率が1.0となるように値を設定し、用紙の光沢感とは異なる光沢感が観察された領域に対しては、用紙部正反射データの適用比率が0.0となるように値を設定した。また、用紙の光沢感が弱い状態となって観察された領域に対しては、中間値を設定した。
実施例1では、(3)用紙部正反射適用領域データをキャストコート紙のほか、グロスコート紙、マットコート紙についても同様の方法で作成し、記憶装置103に記憶する。そして、前述した入力装置101で選択された用紙に応じて、記憶装置103に記憶されている、(3)用紙部拡散反射データの中から対応するものを選択して読み出す。
実施例1における、(4)用紙部正反射適用比率データについて説明する。(4)用紙部正反射適用比率データによって、印刷物の用紙部分の表面に写り込む正反射部分を再現することができるようになる(照明が写り込んで見えるようになる)。
実施例1では、(4)用紙部正反射適用比率データは、位置によって用紙部の正反射テクスチャを適用する比率が異なるように作成したデータである。実施例1では、(4)用紙部正反射適用比率データは、BMP形式のデータファイルである。実施例1では、(4)用紙部正反射適用比率データも前述した3種類の用紙それぞれに対応した3種類が記憶装置103に記憶されている。
図4(a)〜(c)は、実施例1の(4)用紙部正反射適用比率データの概略を示す。図4(a)〜(c)における濃淡が(4)用紙部正反射適用比率データのデータ値に対応しており、白部が、(4)用紙部正反射適用比率データの値が1.0に対応し、黒部が、(4)用紙部正反射適用比率データの値が0.0に対応している。
実施例1では、(4)用紙部正反射適用比率データを次のように作成している。はじめに、極大値の位置のみを記した画像データを前述の適用比率データと同じ画像サイズで作成する。図4(d)は、極大値の位置のみを記した画像データの概要を示す。中心の細く白い箇所が、極大値の位置(x0、y0)に対応している。次に、この極大値のみを記した画像データ(図4(d))に対して、黒部分の各画素(各位置)について最近接の極大値箇所までの距離(r)を算出する。このrを用いて式(1)から注目画素の(4)用紙部正反射適用比率データの値を算出する。
式(1)におけるパラメータbの大きさによって、パラメータbの値が小さい場合には、キャストコート紙用途(図4(a)の急激に減衰する特性を、適用比率データに持たせ、また、反対にパラメータbの値が大きな場合には、マットコート紙用途(図4(c))のゆるやかに減衰する特性を、適用比率データに持たせることができる。
ここで、パラメータa,b,cは適当に設定するパラメータであるが、実際に図4(a)〜(c)に示したデータを算出する際に使用したパラメータa,b,cの値を図21に示す。なお、パラメータbは、(4)用紙部正反射適用比率データの画像サイズに依存する。このため、実施例1と異なる画像サイズの(4)用紙部正反射適用比率データを作成する場合には、相対関係を維持して値を調整する必要がある。図21におけるパラメータbの値は、(4)用紙部正反射適用比率データの画像サイズの一辺の長さを1.0とした場合における値である。
実施例1における、(5)画像部正反射データについて説明する。この画像部正反射データは、画像部(トナー付着部分)における光沢感(質感)を付与する役割を果たす。実施例1では、原稿データを加工することで(5)画像部正反射データを生成している。式(2)は、実施例1における(5)画像部正反射データの計算式である。
ここで、Dataは原稿データの各画素におけるRGB値の各成分に対応する。実施例1では、rrは用紙毎に値が変化し、キャストコート紙の場合には、rr=0.55という値を用いて(5)画像部正反射データを計算した。原稿データは、RGBの各色が8ビットのデータを想定しているため、式(2)の第2項は白色に対応する255を使用している。この第2項を付加することで、原稿データが明るく変換される。このため、画像部において正反射の写り込みが明るく観察される状態を再現することができるようになる。なお、実施例1における、キャストコート紙以外の用紙での、式(2)におけるrr値は図22に記載したとおりである。
実施例1における、(6)画像部正反射適用領域データについて説明する。(6)画像部正反射適用領域データは、前述した(3)用紙部正反射適用領域データの対象が画像部になったものに相当する。
実施例1では、この(6)画像部正反射適用領域データは、画像部の正反射を適用したい領域と画像部の正反射を適用しない領域との区分を指示する役割を持っている。実施例1では、(6)画像部正反射適用領域データは、BMP形式のデータファイルである。また、(6)画像部正反射適用領域データのサイズは原稿データと同サイズである。実施例1では、(6)画像部正反射適用領域データも前述した3種類の用紙それぞれに対応した3種類が記憶装置103に記憶されている。
図5(a)〜(c)は、実施例1の(6)画像部正反射適用領域データの概略を示す。図5(a)〜(c)における濃淡が画像部正反射の適用比率のデータ値に対応しており、白部が画像部の正反射を適用する画像領域(用紙部正反射データの適用比率が1.0となる)に対応し、黒部が画像部の正反射を適用しない画像領域(画像部正反射データの適用比率が0.0となる)に対応している。実施例1の(6)画像部正反射適用領域データは、各画素が0.0〜1.0の値に対応するように作成している。各画素の値は0.0〜1.0の間の中間値も使用しており、中間値をとる場合には、(6)画像部正反射データに適用比率をこの中間値として適用する領域となる(後述の計算式で説明するが、この際の残りの適用比率は(1)用紙部拡散反射データなどから補てんされることになる)。
実施例1では、(6)画像部正反射適用領域データを次のように作成している。データ作成の前に、実物のキャストコート紙(ミラーコートプラチナ紙、王子製紙)に、パッチ画像を印刷した実物の印刷画像を作成する。そして、この印刷画像を目視で確認しながら、画像部特有の光沢感が観察された領域には、画像部正反射データの適用比率が1.0となるように値を設定し、画像の光沢感とは異なる光沢感が観察された領域には画像部正反射データの適用比率が0.0となるように値を設定した。
実施例1では、(6)画像部正反射適用領域データをキャストコート紙のほか、グロスコート紙、マットコート紙についても、同様の方法で作成し、記憶装置103に記憶する。そして、前述した入力装置101で選択された用紙に応じて、記憶装置103に記憶されている(6)画像部正反射適用領域データの中から対応する用紙種のものを選択して読み出す。
実施例1における、(7)画像部正反射適用比率データについて説明する。実施例1における(7)画像部正反射適用比率データは、前述した(4)用紙部正反射適用比率データと類似のデータである。この(7)画像部正反射適用比率データによって、印刷物の画像部分の表面に写り込む正反射部分を再現することができるようになる(照明が写り込んで見えるようになる)。
実施例1では、この(7)画像部正反射適用比率データは、位置によって画像部の正反射テクスチャを適用する比率が異なるように作成したデータである。実施例1では、(7)画像部正反射適用比率データは、BMP形式のデータファイルである。実施例1では、(7)画像部正反射適用比率データも前述した3種類の用紙それぞれに対応した3種類が記憶装置103に記憶されている。
図6(a)〜(c)は、実施例1の(7)画像部正反射適用比率データの概略を示す。図6(a)〜(c)における濃淡が(7)画像部正反射適用比率データのデータ値に対応していて、白部が画像正反射特性データの比率が1.0に対応し、黒部が画像部正反射適用比率データの比率が0.0に対応している。
実施例1における、(7)画像部正反射適用比率データの作成方法は、(4)用紙部正反射適用比率データの作成方法と同じであるので説明を省略する。実際に、図6(a)〜(c)に示したデータを算出する際に使用した、式(1)におけるパラメータa,b,cの値は図23に記載したとおりである。
実施例1では、記憶装置103には上記した各データを処理する手順を記述したプログラムが記憶されている。図1は、本発明の画像処理方法の処理フローチャートを示す。
ステップS1において、入力装置101を介して、原稿データ、用紙の種類が指定される。
ステップS2において、CPU105は、記憶装置103に記憶されている、(1)用紙部拡散反射データ、(2)用紙部正反射データ、(3)用紙部正反射適用領域データ、(4)用紙部正反射適用比率データ、(5)画像部正反射データ、(6)画像部正反射適用領域データ、(7)画像部正反射適用比率データ、の7種のデータのそれぞれについて、ステップS1で指定された用紙種類に対応したものをそれぞれRAM106に読み出す。
ステップS3において、原稿データの各座標位置の配置位置S(x,y,z)、(1)用紙部拡散反射データの各座標位置の配置位置PD(x,y,z)、(2)用紙部正反射データの各座標位置の配置位置PS(x,y,z)、(3)用紙部正反射適用領域データの各座標位置の配置位置PAA(x,y,z)、(5)画像部正反射データの各座標位置の配置位置IS(x,y,z)、(6)画像部正反射適用領域データの各座標位置の配置位置IAA(x,y,z)を、順次、決定する(これは、仮想3次元空間内に原稿データ、および質感(光沢感)表現に必要なデータを配置することに対応する)。
実施例1では、原稿データの中心点が仮想3次元空間の原点と一致するように配置した。そして、原稿データと同じ位置に上記した(4)(7)を除く、(1)〜(7)のデータを配置する。また、実施例1では、原稿データが単純な平面となるように原稿データの各座標位置を配置した。これに伴い(1)〜(7)((4)(7)を除く)のデータの各座標位置も原稿位置と同じ位置なるように配置した。このとき、この原稿データおよび(1)〜(7)((4)(7)を除く)のデータを配置した平面の法線ベクトルがZ軸方向を向くように配置した(実施例1では、原稿データおよび(1)〜(7)((4)(7)を除く)のデータは、すべての座標位置で、法線ベクトルn(x,y,z)が(0,0,1.0)となるように配置されることになる)。
ステップS4においては、前述の(4)用紙部正反射適用比率データの配置位置PAR(x,y,z)と(7)画像部正反射適用比率データの配置位置IAR(x,y,z)とを決定する(このことは、仮想3次元空間内での照明位置を決定することに対応する)。
実施例1では、仮想3次元空間における座標点(0,0,1.0)に(4)用紙部正反射適用比率データおよび(7)画像部正反射適用比率データの中心が一致するように配置している。
図7は、ステップS3、S4により処理された、仮想3次元空間における原稿データと、上記(1)〜(7)のデータの配置の様子を示す。図7では、原稿データ200、(1)用紙部拡散反射データ201、(2)用紙部正反射データ202、(3)用紙部正反射適用領域データ203、(5)画像部正反射データ205、(6)画像部正反射適用領域データ206は、同じ位置に中心点が仮想3次元空間の原点Oとなるように配置され、(4)用紙部正反射適用比率データ204、(7)画像部正反射適用比率データ207は、同じ位置であるZ=1.0の位置に配置されている。
また、原稿データ200および(1)〜(7)((4)(7)を除く)のデータ201、202、203、205、206と、(4)(7)のデータ204、207が平行に配置される。図8は、図7の原稿データとして実際の原稿データを用いた場合の、仮想3次元空間における原稿データと、上記(1)〜(7)のデータの配置の様子を示す。
ステップS5において、視点位置E(=(x,y,z))を決定する(仮想3次元空間内での目視位置を決定することに対応する)。実施例1では、座標点(0,0,1.0)を視点位置とした。
ステップS6において、反射ベクトルr(x,y,z)を算出する。この反射ベクトルは、視点位置E、原稿データの各座標位置の配置位置S(x,y,z)、原稿データの各座標位置における法線ベクトルn(x,y,z)=(0,0,1)とから、図9の式により算出する。この反射ベクトルは、原稿データの各座標位置について、視点位置Eからこの原稿データの注目位置へと向かうベクトルに対して、法線ベクトルで規定される面において正反射する方向を表したベクトルのことである。
図9は、視点位置E、視点方向の視線ベクトル、原稿データの各座標位置の配置位置S(x,y,z)、法線ベクトルn(x,y,z)、反射ベクトルr(x,y,z)の関係を示す。
ステップS7において、原稿データと(1)用紙部拡散反射データを使用して、プレビュー用データにおける拡散反射成分を算出する。実施例1では、この拡散反射成分を、仮想3次元空間での配置位置毎(各画素毎)に原稿データと(1)用紙部拡散反射データのRGB値を規格化して掛け合わせることで算出する。つまり、拡散反射成分Cdiffの値は、仮想3次元空間における同じ配置位置での原稿データ値Sと(1)用紙部拡散反射データ値Pdiffとの値から、式(3)のように算出する。なお、式(3)における255は、各データが8ビットデータであり、これを規格化して積算し、元の8ビットデータに戻すためのものである(各データが8ビットでなければ、適宜変更される)。
ステップS8において、(3)用紙部正反射適用領域データと(4)用紙部正反射適用比率データを使用して、(2)用紙部正反射データを適用する比率を決定する。この適用比率の値は、原稿データの各座標位置における(3)用紙部正反射適用領域データと、原稿データの各座標位置で算出されている前述の反射ベクトルr(x,y,z)が指し示す方向における(4)用紙部正反射適用比率データとの積算値である。
つまり、(3)用紙部正反射適用領域データについては、原稿データの注目位置の値を使用する。そして、(4)用紙部正反射適用比率データについては、原稿データの注目位置における反射ベクトルが指し示す方向と、仮想3次元空間内に配置されている(4)用紙部正反射適用比率データとが交わる位置での値を使用することになる。そして、両者の積算値が、原稿データの注目する位置における用紙部正反射データを適用する比率の値となる。
なお、実施例1では、反射ベクトルと(4)用紙部正反射適用比率データが交わらないような場合には、(4)用紙部正反射適用比率データの値が0.0となるようにしている。
ステップS8において算出される原稿データの注目位置における用紙部正反射データを適用する比率の値をRpa、原稿データの注目位置における(3)用紙部正反射適用領域データの値をPaa、反射ベクトルが指示する位置における(4)用紙部正反射適用比率データの値をParとすると、式(4)の計算式となる。
ステップS9において、ステップS8の計算結果と、(2)用紙部正反射データとを使用して、プレビュー用データにおける用紙部正反射成分を算出する。実施例1では、この用紙部正反射成分を、原稿データの注目位置毎(各画素毎)に、ステップS8で算出した適用比率値を(2)用紙部正反射データの各RGB値に積算することで算出する。
つまり、用紙正反射成分CPspeの値は、仮想3次元空間に配置された原稿データの注目位置に対応する適用比率値Rpa(ステップS8で算出)と、当該注目位置における(2)用紙部正反射データ値Pspecから、式(5)のように算出する。
図10は、視点位置301、原稿データの注目位置302、計算に使用する(2)用紙部正反射データの位置、計算に使用する(3)用紙部正反射適用領域データの位置、計算に使用する(4)用紙部正反射適用比率データ304の位置関係(配置関係)を示す。
ステップS10において、(6)画像部正反射適用領域データと(7)画像部正反射適用比率データを使用して、(5)画像部正反射データを適用する比率を決定する。この適用比率の値は、原稿データの各座標位置における(6)画像部正反射適用領域データと、原稿データの各座標位置で算出されている前述の反射ベクトルr(x,y,z)303が指示する位置における(7)画像部正反射適用比率データとの積算値である。
つまり、(6)画像部正反射適用領域データについては、原稿データの注目位置の値を使用する。そして、(7)画像部正反射適用比率データについては、原稿データの注目位置における反射ベクトルが指し示す方向と、仮想3次元空間内に配置されている(7)画像部正反射適用比率データとが交わる位置での値を使用することになる。そして、両者の積算値が、原稿データの注目する位置における画像部正反射データを適用する比率の値となる。
なお、実施例1では、反射ベクトルと(7)画像部正反射適用比率データが交わらないような場合には、(7)画像部正反射適用比率データの値を0.0となるようにしている。
ステップS10において算出される原稿データの注目位置における画像部正反射データを適用する比率の値をRia、原稿データの注目位置における(6)画像部正反射適用領域データの値をIaa、反射ベクトルが指示する位置における(7)画像部正反射適用比率データの値をIarとすると、式(6)の計算式となる。
ステップS11において、ステップS10の計算結果と、(5)画像部正反射データとを使用して、プレビュー用データにおける画像部正反射成分を算出する。実施例1では、この画像部正反射成分を、原稿データの注目位置毎(各画素毎)に、ステップS10で算出した適用比率値(Ria)を(5)画像部正反射データの各RGB値に積算することで算出する。
つまり、画像正反射成分CIspeの値は、仮想3次元空間に配置された原稿データの注目位置に対応するRiaと、当該注目位置における(5)画像部正反射データ値Ispecから、式(7)のように算出する
ステップS12において、ステップS7で算出した拡散反射成分Cdiff、ステップS8で算出した用紙部正反射データを適用する比率Rpa、ステップS9で算出した用紙正反射成分CPspe、ステップS10で算出した画像部正反射データを適用する比率Ria、ステップS11で算出した画像正反射成分CIspeから、原稿データの注目位置におけるプレビュー用のデータ値を算出する。
具体的には、式(8)により、プレビュー用のデータ値を算出する。式(8)から分かるように、プレビューデータは、通常、拡散反射成分Cdiffとして、部分的(正反射成分を写り込ませる部分に)に、この拡散反射成分Cdiffを用紙正反射成分CPspeまたは画像正反射成分CIspeで置き換えることで、印刷物の質感(光沢感)を表現している。
実施例1では、ステップS1〜S12の処理により算出したプレビュー用のデータ値を表示装置102であるディスプレイにレンダリングする。これにより、印刷物の質感(光沢感)を再現して、“本物らしい”印刷物質感をディスプレイ上に再現することができる。
実施例1の構成により、特に印刷物の用紙部分と画像部分(インクやトナーが付着している部分)における、写り込む照明幅が異なるといった質感(光沢感)の差異までを再現することができる。なお、実施例1では、上述したように特許文献2よりも計算負荷の小さな手法で、この“本物らしい”印刷物質感をディスプレイ上で再現することができる。
実施例1の構成について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されず、例えば、図21〜23に記載した各種パラメータ値は、図21〜23に記載した以外の値でもかまわない。また、上述した(1)〜(7)のデータについての作成方法や仮想3次元空間への貼り付け方法についても、実施例で説明した以外の方法を用いてもかまわない。
この他に、印刷物をプレビューなどにより表示する場合には、照明の色温度を反映することがしばしば行われる。実施例1でもこのような機能を持たせてもかまわない。その場合には、原稿データ、(1)用紙部拡散反射データ、(2)用紙部正反射データ、(5)画像部正反射データなどの必要データに対して、反映したい照明色温度に合わせて色変換した画像を算出し、この色変換後のデータを使用してプレビュー画像用のデータ値を上述の方法と同様に計算する。これにより、照明の色温度を反映した、印刷物プレビューを行うことができる。
また、上述した印刷物プレビュー用のデータ算出方法を、OpenGLやDirectXなどの3次元グラフィックスAPIを用いてプログラムに実装することにより、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
比較実験
実施例1では、(4)用紙部正反射適用比率データは下記の特性を反映していた(bの値は用紙毎に異なるが、どの用紙の場合も式(9)の関係を満たす)。 つまり、(4)用紙部正反射適用比率データPR(x,y)は、(4)用紙部正反射適用比率データの極大値を示す位置を(x0,y0)とした場合に、式(9)で表される減衰特性を有するような、(4)用紙部正反射適用比率データとなっていた。
ここで、パラメータa,b,cは適宜設定される定数
本発明者らは、これ以外の減衰特性についても試行し、印刷物プレビューを行った際に、用紙へ写り込む照明形状として、より本物らしく視認することができる減衰特性の検討を行ったので、この検討結果を説明する。
この検討では、実施例1の構成に基づいて、(4)用紙部正反射適用比率データのみを変更して印刷物プレビューを行った。評価方法は、ディスプレイ上での印刷物プレビュー画像の目視評価であり、より本物の照明形状の写り込みのように見える状態であるか否かといった観点で評価したものである。
実施例1は、式(9)の減衰特性である(計算式の詳細は図24に記載)。比較例1は、式(9)のr項の乗数を2→1とした減衰特性である(詳細は図24に記載)。比較例2は、式(9)のr項の乗数を2→3とした減衰特性である(詳細は図24に記載)。比較例3は、いわゆるガウス分布の減衰特性である(詳細は図24に記載)。
目視評価の結果を図25に示す。図25に示すように、実施例1で使用している減衰特性を用いて、適用比率データを作成した場合に、減衰特性が適正であり、本物の写り込みのように見える、といった結果となった。これに対して、比較例1〜3では、減衰が緩やかすぎたり、あるいは急峻であったりして、やや本物の写り込みのようには見えないという目視評価結果となった。なお、図25の順位の項目は、より写り込みが本物らしくみえるといった観点で順位付けした結果である。
本発明者による比較実験の結果から、実施例1で使用した減衰特性により、3D表示の印刷物プレビューにおいて、用紙部分への照明の写りこみといった観点での照明中心からその周辺部への減衰の態様といった観点では、“本物らしい”用紙の質感を再現することができるようになる。
なお、この比較実験では、(4)用紙部正反射適用比率データに対して行った比較実験の結果を説明したが、本発明者は(7)画像部正反射適用比率データに対しても同様の比較実験を行っている。(7)画像部正反射適用比率データに対する比較実験の結果もやはり同様であり、式(9)の関数(IR(x、y))で表現される減衰特性を用いて、(7)画像部正反射適用比率データを作成した場合に、減衰特性が適正であり、画像部分に対する照明の写り込みが本物の写り込みのように見える、といった結果となった。これに対して、それ以外の減衰特性では、減衰が緩やかすぎたり、あるいは急峻であったりして、やや本物の写り込みのようには見えないという目視評価結果となった。
この(7)画像部正反射適用比率データに関する比較実験のこれ以上の詳細な説明は、(4)用紙部正反射適用比率データと同様であるので省略するが、この前述の比較実験の結果が画像部の照明映り込みにおいても踏襲されており、実施例1で使用した減衰特性により、3D表示の印刷物プレビューにおいて、画像部分(トナー付着部分)への照明の写りこみといった観点での照明中心からその周辺部への減衰の態様といった観点では、“本物らしい”画像部の質感を再現することができるようになる。
実施例2は、画像部正反射適用領域データを原稿データから生成する実施例である。実施例2の構成は、実施例1の構成と大部分と同じである。実施例1との相違点は、実施例1のように(6)画像部正反射適用領域データを実際に印刷した画像を確認しながら、直接手作業で生成するのではなく、原稿データから(6)画像部紙正反射適用領域データを生成する、画像部正反射適用領域データ生成手段を有する構成を採っている点にある。
実施例2における、画像部正反射適用領域データ生成手段について説明する。図11は、実施例2の画像部正反射適用領域データ生成手段の構成を示す。図11に示すように、画像部正反射適用領域データ生成手段400は、トナー総付着量算出部401と、変換データに従ってトナー総付着量を変換する変換部402から構成される。
トナー総付着量算出部401では、原稿データを受けて、原稿データの各画素についてトナー総付着量に相当するデータ値を算出する。実施例2では、原稿データは、1画素当たりRGB各色8ビットのBMPデータであるとして説明する。トナー総付着量算出部401では、原稿データの各画素について、RGB値からCMYKデータ値へと変換する。これは、画像部の正反射の特性が画像形成時に使用するトナーの総付着量との関連が大きいため、トナーの総付着量との対応をとることができるCMYKデータ値へ変換する。
実施例2では、RGB値からCt、Mt、Yt、Min_cmy、を算出する。Min(Ct,Mt,Yt)は括弧内の3つの値の最小値を表したものである。
次に、Ct2、Mt2、Yt2、Kt2、を算出する。ここでの計算は墨生成(K成分生成)に相当する。
次に、式(13)によりTot_cmykを算出する。
次に、Max_cmyk=2.6×255として、式(14)に従ってrを計算する。Max_cmykとしてこの値を使用することは、以下で行ういわゆる総量規制を260%に設定することを意味する。実施例1では、総量規制を260%としたが、それ以外の値であってもかまわない。
このrを使用して、C、M、Y、Kを算出する。
ここまでの計算により、墨生成および総量規制を行ったCMYK値が算出される。
次に、CMYK各色のデータ値を合計して、総量規制値Max_cmykで規格化することで、トナー総量に相当するT(総量規制値に対する総量値)を計算する。
以上が、実施例2のトナー総付着量算出部401における計算過程の説明である。図12は、参考として付記した原稿データから、上述の方法により算出したトナー総付着量に相当するTを示す。図12では、白部がT=1.0に、黒部がT=0.0に、対応するように表示している。
実施例2の変換部402では、このTの値を変換して(6)画像部正反射適用領域データを生成している。図13は、実施例2におけるトナー総付着量Tを変換する際に使用した変換特性(変換データ)を示す。この変換データは、実施例2の画像部正反射適用領域データ生成手段400で使用できるように、予め作成して記憶されたものである。実施例2では、この変換データを読み出し、変換部402で使用することで、トナー総付着量算出部401で算出される結果を変換して、(6)画像部正反射適用領域データを生成する。また、この変換データは、実施例1で対象としている3種類の用紙に対応して3種類必要となる。図13は、この用紙3種に対応する変換データを表している。
実施例2における変換データの生成方法を説明する。はじめに、実物のキャストコート紙(ミラーコートプラチナ紙、王子製紙)に、パッチ画像を印刷した実物の印刷画像を作成する。プレビューデータは、トナー総付着量に相当するTの値をそのまま(6)画像部正反射適用領域データとして使用して、プレビューを行う(図12のデータをそのまま(6)画像部正反射適用領域データとする)。
そして、この印刷画像とプレビュー画像とを目視で確認しながら、実物の画像のほうが画像部特有の光沢感が強く視認されるトナー付着領域に対しては、Tの値が大きくなるような変換特性を変換データに記述し、反対に、実物の画像のほうが画像部特有の光沢感が弱く視認されるトナー付着領域に対しては、Tの値が小さくなるような変換特性を変換データに記述する。
実施例2は、この変換データをキャストコート紙のほか、グロスコート紙、マットコート紙についても、同様の方法で作成して、プレビューで選択された用紙に対応した変換データを使用する構成を採っている。
実施例2では、このようにして生成した(6)画像部正反射適用領域データを使用して、実施例1と同様にプレビュー用データを算出する。(6)画像部正反射領域データそのものは、原稿データに依存するため原稿データが変わる度に、再度生成しなくてはならないが、上述の図13(a)〜(c)に示した変換データはトナー総付着量と画像部の質感を適用するトナー付着量範囲との対応を表すものである。このため、異なる原稿データに対しても同じ変換データを使用することができる。
つまり、上述の変換データは、一度作成しておけば原稿が別のものに変わった場合でも、そのまま適用することができる。これにより、実施例2の構成では、原稿データの変更に伴ってユーザーが新たに実施しなくてはならない作業が発生しないといった利点を有する。
実施例3は、用紙部正反射適用領域データを原稿データから生成する実施例である。実施例3の構成は、実施例1の構成と大部分と同じである。実施例1との相違点は、実施例1のように(3)用紙部正反射適用領域データそのものを実際に印刷した画像を確認しながら直接手作業で生成するのではなく、原稿データから(3)用紙部正反射適用領域データを生成する、用紙部正反射適用領域データ生成手段を有する構成を採っている点にある。
実施例3における、用紙部正反射適用領域データ生成手段について説明する。図14は、実施例2の用紙部正反射適用領域データ生成手段の構成を示す。図14に示すように、実施例3の用紙部正反射適用領域データ生成手段500は、トナー総付着量算出部501、付着量データ反転部502、変換部503から構成される。実施例3におけるトナー総付着量算出部501の機能は、実施例2と同様である。原稿データを受けてトナー総量に相当するTを算出して、次工程である反転部502に引き継ぐ。
反転部502では、次式により付着量を反転させたデータT’を作成する。
T’=1.0−T (17)
付着量データTは、式(17)の計算式から明らかなように、0.0〜1.0の値をとるデータである。このため上式によって算出される反転データT’は、トナー総付着量の大小関係が反転したデータとなる。付着量データ反転部502は、T’を次工程である変換部503へと引き継ぐ。
図15は、参考として付記した原稿データから、上述の方法により算出したトナー総付着量の反転データに相当するT’を表す。図15では、白部がT’=1.0に対応し、黒部がT’=0.0に対応するように表示している。
実施例3の変換部503は、実施例2のそれと類似した機能を持つ。実施例3の変換部503では、このT’の値を変換して(3)用紙部正反射適用領域データを生成している。
図16は、実施例3における反転データT’の変換で使用した変換特性を記述した変換データを表したものである。この変換データは、用紙部正反射適用領域データ生成手段で使用できるように、予め作成して記憶されたものである。実施例3では、この変換データを読み出し、変換部で使用することで、付着量データ反転部502での結果を変換して、(3)用紙部正反射適用領域データを生成する。また、この変換データは、実施例1で対象としている3種類の用紙に対応して3種類必要となる。図16は、この用紙3種に対応する変換データを表す。
実施例3における変換データの生成方法は、はじめに、実物のキャストコート紙(ミラーコートプラチナ紙、王子製紙)に、パッチ画像を印刷した実物の印刷画像を作成する。プレビューデータは、上述の反転データT’の値(図15)を(3)用紙部正反射適用領域データとして使用して、プレビューする。そして、この印刷画像とプレビュー画像とを目視で確認しながら、実物の画像のほうが用紙部特有の光沢感が強く視認されるトナー付着領域に対しては、T’の値が大きくなるような変換特性を変換データに記述し、反対に、実物の画像のほうが用紙部特有の光沢感が弱く視認されるトナー付着領域に対しては、T’の値が小さくなるような変換特性を変換データに記述することで、変換データを作成した。
実施例3では、変換データをキャストコート紙のほか、グロスコート紙、マットコート紙についても、同様の方法で作成して、プレビューで選択された用紙に対応した変換データを使用する構成を採っている。
実施例3ではこのようにして生成した(3)用紙正反射適用領域データを使用して、実施例1と同様にプレビュー用データを算出する。(3)用紙正反射適用領域データそのものは、原稿データに依存するため原稿データが変わる度に、再度生成しなくてはならないが、上述の変換データはトナー付着量と画像部の質感を適用するトナー付着量範囲との対応を表すものであるための、異なる原稿データに対しても同じ変換データを使用することができる。つまり、上述の変換データは一度作成しておけば原稿が別のものに変わった場合でも、そのまま適用することができる。これにより、実施例3の構成では、原稿データの変更に伴ってユーザーが新たに実施しなくてはならない作業が発生しないといった利点を有する。
実施例4は、画像部正反射データを原稿データから生成する実施例である。実施例4の構成は、実施例1の構成と大部分と同じである。実施例1との相違点は、実施例1の(5)画像部正反射データを自動生成する画像部正反射データ生成手段を有する構成を採っている点にある。
実施例4の画像部正反射データ生成手段について説明する。図17は、実施例4における画像部正反射データ生成手段の構成を示す。図17に示すように、実施例4の画像部正反射データ生成手段600は、原稿データ加工部601から構成される。この原稿データ加工部601では、実施例1の式(2)と同じ計算方法で、原稿データを加工したデータを生成する。実施例4の画像部正反射データ生成手段600は、このようにして加工されたデータを、(5)原稿部正反射データとして利用することで、プレビュー用データの算出に利用している。
画像部正反射データ生成手段600では、図23に示すように、3種類の用紙のそれぞれに異なるパラメータを適用して、(5)原稿部正反射データを生成する。実施例4の画像部正反射データ生成手段600では、原稿データが明るく変換される。このため、画像部において正反射が写り込み、明るく観察される状態を再現することができるようになる。
実施例5は、法線ベクトルが印刷物の位置によって変化する実施例である。実施例5の構成は、大部分は実施例1の構成と同じである。実施例1との相違点は、原稿データおよびその他のデータの配置位置を決定する工程(実施例1のステップS3)において、実施例1のように法線ベクトルが一定であるように原稿データを配置するのではなく、原稿データの法線ベクトルが原稿データの各位置で異なるように配置してある点である。
実施例1では、ステップS3の工程において原稿データの各位置での法線ベクトルが一定の値となるように設定している。
n(x,y,z)=(0,0,1) (18)
これに対して、実施例5では、原稿データの各位置での法線ベクトルが下式の値となるように設定した。
ここで、xは原稿データの配置位置を表す仮想3次元空間の座標である。パラメータaはxの値のとり方に依存するが、実施例5では、原稿データが−1.0<x<1.0に丁度配置されるように、x座標を設定しているので、実施例5ではa=0.1としている。
実施例5により設定した法線ベクトルは、原稿データの配置位置S(x,y,z)を次式のように配置した場合の原稿面の法線ベクトルとなっている。
式(20)で規定された配置位置に原稿データを配置すると、原稿面をz方向に対して、下に凸に変形させたような形で配置することになる(このとき、x方向には原稿面のz座標値が変化するが、y方向にはz座標値は変化しない)。
実施例5では、このようにして決定した原稿データの各位置での法線ベクトルを使用して、これ以降の処理を行う。原稿データの各位置の配置位置と法線ベクトルが異なる点を除けば、実施例5で行う処理は、実施例1と同様である。
実施例5でも実施例1と同様に、プレビュー用のデータ値を算出し、算出したプレビュー用のデータ値を表示装置であるディスプレイにレンダリングする。これにより、実施例1と同じように、印刷物における用紙部および画像部の質感(光沢感)を再現して、“本物らしい”印刷物質感をディスプレイ上に再現することができるようになる。
実施例5では、これに加えて、原稿データの各位置における法線ベクトルが原稿データの位置によって変化するように設定されているため、3D表示のプレビューにおける印刷物の表面には、用紙部および画像部の正反射部分が複雑な形状として表示されるようになる(法線ベクトルが原稿データの各位置で同じであると、用紙部および画像部の正反射部分が単調な形状となる、あるいは単調な変化となってしまう)。
これにより、実施例5では、3D表示のプレビューにおいて、印刷物の表面に写りこむ照明形状の複雑さといった観点で、より“本物らしい”質感(光沢感)を再現することができる。
実施例6は、プレビュー表示の際に、印刷画像を撓ませて表示する実施例である。図18は、用紙が撓んでいる状態を示す例である。図18の罫線は、紙面の撓みの様子を明示するために付与したものであり、実際のプレビュー時には表示しない。
プレビュー表示の際に、印刷画像を図18のように撓ませて表示することにより、通常の方法では原稿データの各位置における法線ベクトルの向きが原稿データの各位置によって変化するようになる(法線ベクトルの向きが一様ではなくなる)。
実施例6(図18)のような印刷画像の撓ませ方によって、3D表示のプレビューにおける印刷物の表面には、用紙部および画像部の正反射部分が複雑な形状として表示されるようになり、印刷物の表面に写りこむ照明形状の複雑さといった観点で、より“本物らしい”質感(光沢感)を再現することができるようになる。
実施例7は、視点位置入力装置を有する実施例である。実施例7の構成は、大部分は実施例1の構成と同じである。実施例1との相違点は、実施例1の構成に加えて、目視(視点)位置を変更することを可能とする目視位置入力装置を有する構成を採っている点である。
実施例7では、表示装置102であるディスプレイ上に、図19に示すような十字キーが表示され、入力装置101であるマウスで、この十字キーをクリックすることで、左右上下に視点を移動させることができる。また、実施例7では、マウスのスクロール操作によって前後に視点を移動させることができる(マウスでの十字キーの操作を仮想3次元空間における視点位置のx座標およびy座標に換算し、スクロール操作を仮想3次元空間におけるz座標に換算して、視点位置を決定する)。
そして、プレビュー用のデータ算出を、このようにして新たに設定された視点に対して行う。これにより、ユーザーは、3D表示のプレビューにおいて、印刷物を観察する視点位置を変更しながらプレビュー画像を確認することができるようになる。
本発明は上記した構成に限定されず、種々の変更が可能である。すなわち、視点位置入力装置を有し、視点位置入力装置からの情報を用いてプレビュー画像を生成する構成であれば、どのようなものでもかまわない。既に、こうした視点位置入力の機構を備えた機器が数多く提案されていて、これらの構成を本発明に適用してもかまわない。
実施例8は、印刷物位置入力装置を有する実施例である。実施例8の構成は、大部分は実施例1の構成と同じである。実施例1との相違点は、実施例1の構成に加えて、原稿データ位置を変更することを可能とする原稿データ位置入力装置を有する構成を採っている点である。
実施例8では、マウスカーソルを左右に動かすことに対応して、用紙が左右方向に回転(y軸を回転中心とした回転)するように、仮想3次元空間における原稿データの配置位置を設定する。同様に、マウスカーソルを上下方向に動かすことに対応して、印刷物が上下方向に回転(x軸を回転中心とした回転)するように、仮想3次元空間における原稿データの配置位置を設定する。
このようにして、マウスカーソルに対応して原稿データ位置を変更・決定した後に、新たに設定された原稿データの位置に対して、プレビュー用のデータを算出する。これにより、ユーザーは、3D表示のプレビューにおいて、原稿データ位置を変更しながらプレビュー画像を確認することができるようになる。
実施例9は、折り曲げ操作を反映して原稿データ位置を決定する実施例である。実施例9の構成は、大部分は実施例1の構成と同じである。実施例1との相違点は、実施例1の構成に加えて、予め定められた折り曲げ操作を反映して原稿データ位置を決定する原稿データ位置決定手段を有する構成を採っている点である。
実施例9では、予め定められた折り曲げ操作を反映した原稿データ位置を決定する機構を有する構成を採り、実施例8では、原稿データの位置が前掲した式(20)で決定される配置位置S(x,y,z)に配置される。
実施例9では、式(20)の定数aが値を変えながら、原稿データの配置位置を決定、プレビュー用データ値の算出、ディスプレイへのプレビュー表示を繰り返す構成になっている。つまり、仮想3次元空間での印刷物配置位置が変化するアニメーション表示を行う構成となっている。
実施例9では、定数aが−0.1〜0.1の範囲を、0.005のステップで往復運動を行うように設定している。このことは、仮想3次元空間において、印刷物が「上に凸」と「下に凸」とを繰り返して変形する状態に相当する。
実施例9では、このように予め定められた折り曲げ操作を反映した原稿データ位置を決定する原稿データ位置決定手段を有する構成を採ることにより、3次元表示のプレビュー内において、印刷物の様々な折り曲げられた状態が表示されることになる。
このような印刷物の折り曲げられた状態を表示することは、印刷物の“本物らしさ”を表現する上で非常に重要である。これは、印刷物は厚みの薄い用紙からできているため、通常の観察条件で、いずれかの折り曲げ状態で観察されることが非常に多い、ということが原因であると考える(印刷物を観察するときには、完全な平面な場所に配置して観察する、というケースばかりではない)。
また、実施例9では、この折り曲げ状態が静止した状態ではなく動作する(用紙の折り曲げ状態が変化する動画として表示する)ことで、この“本物らしさ”がさらに向上した用紙質感の表現を実現している。
本発明は上記した構成に限定されず、例えば、式(20)以外の原稿データ配置の決定方法を適用してもかまわない。原稿データの配置位置を平面以外の折り曲げ状態として提示する、そしてこれらの折り曲げ状態を静止した状態ではなく、動作するようにして表示することができれば、どのような原稿データ位置の決定方法であってもかまわない。
実施例10は、複雑な照明形状へ対応する実施例である。図20は、実施例10の(4)用紙部正反射適用比率データおよび(7)画像部正反射適用比率データを示す。
これらのデータとして、図20のような複雑な形状にすることにより、3D表示のプレビューなどの表示において印刷物の表面に反映される照明形状用をより複雑なものとすることができる。実際の印刷物表面に写りこむ照明形状は、実際の照明条件を反映して複雑な形状となるため、図20のような(4)用紙部正反射適用比率データや(7)画像部正反射適用比率データを使用することにより、照明形状の複雑さといった観点で、より“本物らしい”印刷物質感を再現することができるようになる。
以上、説明したように、本発明の画像処理装置は、印刷物を表示する画像処理装置であって、印刷物の質感(光沢感)に関して、いわゆる“本物らしさ”を3D表示の印刷物プレビューとして高いレベルで再現している。
従来技術で説明したように、従来技術では、用紙部分(トナー非付着部分)と画像部分(トナー付着部分)とで、質感が異なる(特に、写り込む照明幅が異なる)といった現象を再現することができない問題があった。このため、従来技術では、印刷物の“本物らしさ”を表現することができず、また、サンプル画像を出力して、大量のパッチ画像について計測する必要があり、それによって作成されるLUTも大規模となる結果、プレビュー用データ値を算出するまでに必要となる計算負荷も大きい。
本発明の画像処理装置は、印刷物を表示する画像処理装置において、前記印刷物の原稿データと、前記印刷物の用紙部拡散反射データと、前記印刷物の用紙部正反射の質感を付与するデータと、前記印刷物の画像部正反射の質感を付与するデータに基づいて、表示用のデータを算出する算出手段を有する。
本発明の画像処理装置は、(1)用紙部拡散反射データ、(2)用紙部正反射データ、(3)用紙部正反射適用領域データ、(4)用紙部正反射適用比率データ、(5)画像部正反射データ、(6)画像部正反射適用領域データ、(7)画像部正反射適用比率データを使用する。そして、これらのデータからプレビュー用のデータ値を算出するプレビューデータ算出手段を有する。
上述した構成によって、(3)用紙部正反射適用領域データと(4)用紙部正反射適用比率データから決定した適用比率に従って、(2)用紙部正反射データを反映することで、用紙部(トナーが付着していない部分)に正反射部分(照明の写り込み)を形成する。一方、(6)画像部正反射領域データと(7)画像部正反射適用比率データから決定した適用比率に従って、(5)画像部正反射データを反映することで、画像部(トナーが付着している部分)には、用紙部とは別の状態の正反射部分(照明の写り込み)を形成する。
これにより、印刷画像の用紙部分と画像部分とのそれぞれに特有の質感(光沢感)を付与することを実現することができる。つまり、本発明の構成により、用紙部分(トナー非付着部分)と画像部分(トナー付着部分)とで、質感が異なる(写り込む照明幅が異なる)といった現象を再現することができるようになり、印刷物の“本物らしさ”を表現することができる。こうした本発明の構成によって得られる効果は、従来技術では得ることができない効果である。
また、本発明の画像処理装置では、上述の構成により、プレビュー用のデータ算出を行う工程において、用紙部分の正反射部分(照明の写り込み)、および画像部分の正反射部分(照明の写り込み)、におけるプレビュー用データの算出についても、大規模なLUT(3次元データである色毎のLUT)にアクセスする必要はなく、比較的簡単なデータアクセスのみで決定することができる。つまり、プレビュー用データ値の算出に要する処理負荷を小さくすることができる。
これに対して、従来技術では、視線ベクトルの反射ベクトル(R)から、さらに反射ベクトルと光源ベクトルとの角度差を算出する。そして、この角度差とプレビュー画像の注目する画素の色から、反射光の広がりLUTを参照して、注目する画素の色に対応する反射光の広がりパラメータ(n)を決定する。しかしながら、この反射光の広がりLUTはすべての色をカバーするため3次元の膨大なLUTとなってしまう。LUTの規模を小さくして補間によって反射光の広がり(n)を算出する方法も考えられるが、この場合にも、補間演算を行う必要がある。
また、従来技術では、このようにして導出した反射光の広がり(n)を用いて所定の計算式により鏡面反射色を算出する。そして、従来技術では、この鏡面反射色を求めた後も、鏡面反射色の圧縮、鏡面反射色の最大値の算出を経ることで、鏡面反射色と拡散反射色との合成比率が決定される。つまり、従来技術は、プレビュー用のデータ算出に必要となる計算量が大きく、処理負荷が大きい手法である。
本発明の画像処理装置は、従来技術に比べて、プレビュー用データ値の算出までに必要となる計算負荷が小さい。本発明の構成では、印刷画像の質感再現と関係する、用紙部分における正反射部分および画像部分における正反射部分の反映を行う上で、大規模なLUTへのデータアクセスが不要であり、計算負荷が小さな算出方法を実現することができる。このため、小さな計算負荷で、3D表示の印刷物プレビューにおいて印刷物の質感を良好に再現したプレビューを行うことができる。
本発明では、(6)画像部正反射適用領域データを原稿データから生成する画像部正反射適用領域データ生成手段を有する。従来技術で説明したように、従来技術では、プレビュー用のデータ値を算出する際に使用する照明データが1つであることなどの要因によって、用紙部分(トナー非付着部分)と画像部分(トナー付着部分)とで写り込む照明幅(照明のボケ具合)が、同じになるという問題があった。つまり、従来技術では、用紙部分と画像部分とで異なる光沢感(質感)を持たせることができないという問題があった。
本発明者の検討によれば、実際の印刷物では、用紙部分と画像部分とでは異なる質感(光沢感)となる場合が多い。このため、印刷物のプレビューにおいて“本物らしさ”を向上させて再現するためには、用紙部分と画像部分とで異なる質感(光沢感)を再現することが必要である。
こうした問題に対して、本発明の画像処理装置では、用紙部分と画像部分とで、質感が異なる(写り込む照明幅が異なる)といった現象を再現することができるようになり、印刷物の“本物らしさ”を表現することができる。
本発明ではこれに加えて、上記した(6)画像部正反射適用領域データを、原稿データから生成する画像部正反射適用領域データ生成手段を有する構成により、ユーザーが(6)画像部正反射適用領域データを準備するといった作業が不要となるという利点を有する。この(6)画像部正反射適用領域データは、画像部正反射の特性を付与する領域を規定するデータであるため、原稿データが変わる度に、原稿データに適したデータを用意することが必要である。しかしながら、ユーザーが(6)画像部正反射適用領域データを直接作成することは、負担が大きい。
本発明の構成では、ユーザーは原稿データを指定するだけで、必要となる(6)画像部正反射適用領域データを画像処理装置内部で生成して、これをプレビュー用データ値の算出時に使用することができる。
このように、本発明では、画像部分(トナー付着部分)に特有な光沢感、つまり、用紙部分(トナー非付着部分)とは異なる光沢感、を画像部分のみに反映するために必要となる、(6)画像部正反射適用領域データを、原稿データから生成することを可能とする。これにより、ユーザーは、(6)画像部正反射適用領域データを作成するといった面倒な作業をしなくて済む。
本発明では、(3)用紙部正反射適用領域データを原稿データから生成する用紙部正反射適用領域データ生成手段を有する構成により、ユーザーが(3)用紙部正反射適用領域データを準備するといった作業が不要となる利点を有する。本発明の構成では、ユーザーは、原稿データを指定するだけで必要となる(3)用紙部正反射適用領域データを画像処理内部で生成して、これをプレビュー用データ値の算出時に使用できるようになる。
このように、本発明では、用紙部分(トナー非付着部分)に特有な光沢感、つまり、画像部分(トナー付着部分)とは異なる光沢感、を用紙部分のみに反映してプレビューで再現するために必要となる、(3)用紙部正反射適用領域データを、原稿データから生成することを可能とする。これにより、ユーザーは、(3)用紙部正反射適用領域データを作成するといった面倒な作業をしなくて済む。
本発明では、(5)画像部正反射データを原稿データから生成する画像部正反射データ生成手段を有する構成により、ユーザーが(5)画像部正反射データを準備するといった作業が不要となる利点を有する。本発明の構成では、ユーザーは、原稿データを指定するだけで必要となる(5)画像部正反射データを画像処理内部で生成して、これをプレビュー用データ値の算出時に使用できるようになる。
(5)画像部正反射データは、画像部(トナー付着部分)の光沢感を再現するために必要となるデータであるが、画像部(トナー付着部分)は原稿データによって変化するため、画像部正反射データは原稿データ毎に準備することが必要である(原稿データに依存して、画像部正反射データは変化する)。しかしながら、原稿データが変わる度に、ユーザーが画像部正反射データを直接作成することは、負担が大きい。
本発明では、画像部分(トナー付着部分)に特有な光沢感、これは用紙部分(トナー非付着部分)とは異なる光沢感、を反映してプレビューで再現するために必要となる、画像部正反射データを、原稿データから生成することができるように構成している。これにより、ユーザーは、画像部正反射データを作成するといった面倒な作業をしなくて済む。
本発明では、画像部正反射適用領域データ生成手段が、原稿データをトナー付着量データに換算した後に、このトナー付着量データから(6)画像部正反射適用領域データを生成する。
(6)画像部正反射適用領域データは、印刷物プレビューにおいて画像部の光沢感(質感)を適用する領域を指定する機能を持っている。一般的には、印刷物における画像部の光沢感は色毎に異なるものであるが、多くの場合においてトナー総付着量(使用する各色のトナーの合計)との大きな相関を持つ。つまり、注目する位置におけるトナー総付着量からその位置における光沢感を予測することが可能である、ことを意味している。
印刷物における画像部の光沢感がトナー総付着量と大きな相関を持つ理由については、以下のように説明することができる。印刷物が1色のトナーで形成される場合には、用紙上にトナーが配置され、さらにトナー付着量が増加する様子を、用紙およびトナー表面の平滑性といった観点で捉えると次のようになる。
トナー量が小さい場合には用紙の表面性の影響が強く現れ、トナー量が大きい場合にはトナー自体の表面性の影響が強く現れる。トナー量が中間的な場合には、用紙の表面性とトナー自体の表面性の影響を受けるほかに、トナーの配置状態などの影響を受ける。このとき、用紙とトナーとの様々な特性によって画像部の光沢感が決定されるため、トナー付着量に依存して光沢感が単調に変化するとは限らないが、用紙、トナー、および付着量が決定されることで、ほぼ一義的に光沢感が決定される。つまり、用紙、トナー、および付着量が同じであれば、そこで得られる画像の光沢感はおよそ同じになる。
また、印刷物はCMYKの4色のトナーを用いて画像形成される。CMYK4色のトナーを使用した印刷物に対しても、注目した位置における光沢感はその位置におけるトナー総付着量(各色トナー付着量の合計値)と大きな相関を持つ。CMYK各色トナーの光沢に関する特性が互いに全く異なっていれば各色トナーの合計値からだけでは、光沢感は予測できないと思われる。
しかしながら、各色トナーの光沢感が互いに異なっている場合には、そもそもユーザーが画像に対して違和感を持ってしまう。このため、商用目的の印刷物では、各色のトナーの光沢感は一致するようにトナー特性が決定されている。このため、各色トナーの光沢感はお互いに一致しており、4色のトナーを用いて画像形成が行われる場合であっても、各色トナーの合計値であるトナー総付着量から光沢感を推定することが可能である。
本発明の構成のように、原稿データからトナー総付着量データ(各色の合計値)を算出して、このトナー総付着量データを光沢感の基準として、画像部正反射適用領域データを生成する構成としても、画像部分に適した光沢感を付与したプレビューデータを生成することができるようになる。
本発明の構成によって得られる効果を、次のように考えることができる。原稿データは一般的にはRGBの各色データから構成される。これに対して、ユーザーが実際の印刷物を目視確認しながら(6)画像部正反射適用領域データを作成するような場合には、各色(3次元データ)に対して画像部正反射適用領域データの値を指定することになる。しかしながら、手作業で3次元データの合わせ込みを行うことは作業量の膨大さや複雑さから現実的ではない。
このような手作業によって、(6)画像部正反射適用領域データを調整するような状況においては、原稿データから生成した付着量データ(1次元)を介して、この付着量データを基準として画像部正反射適用領域データを生成することは、作業が単純化され簡素化される。また、上述したように、各色トナーの合計値であるトナー総付着量から光沢感を推定できるため、これに伴う品質の低下も発生しない。
本発明の構成では、画像部の光沢感を実際の印刷物に一致するように、ユーザーが(6)画像部正反射適用領域データを調整する工程を実現可能なものとすることができる。これにより、3D表示の印刷物プレビューにおいて、ユーザーが希望する画像部の光沢感を反映することができる。
本発明では、(3)用紙部正反射適用領域データ生成手段が、原稿データをトナー総付着量データに一度換算した後に、このトナー付着量データから(3)用紙部正反射適用領域データを生成する。
(3)用紙部正反射適用領域データは、印刷物プレビューにおいて用紙部の質感(光沢感)を適用する領域を指定する機能をもっている。前述したように、一般的には、印刷物における画像部(ただし、トナー付着量が小さく用紙の光沢感が強く反映された部分)の光沢感は色毎に異なるものであるが、多くの場合においてトナー総付着量(使用する各色のトナーの合計)と大きな相関を持つ。つまり、注目する位置におけるトナー総付着量からその位置における光沢感を予測することが可能である、ことを意味している。
(3)用紙部正反射適用領域データでは、用紙の光沢感を反映した領域を指定することになるが、これは、どの程度のトナー総付着量まで、用紙の光沢感が強く反映された光沢感となっているか、ということを指定することに相当する。
印刷物における光沢感がトナー総付着量と大きな相関を持つ理由については、前述した通りである。そして、このような現象は、本発明において着目している、トナー付着量が少なく用紙の光沢感の寄与が大きな箇所においても、成立する。また、本発明においても、CMYK各色のトナーの光沢感が一致するようにトナー特性が決定されることが、多くの印刷物に当てはまることを想定している。このため、各色トナーの光沢感はお互いに一致しており、各色トナーの合計値であるトナー総付着量から光沢感を推定することが可能である。
つまり、本発明の構成のように、原稿データからトナー総付着量データ(各色の合計値)を算出して、このトナー像付着量データを光沢感の基準として、(3)用紙部正反射適用領域データを生成する構成としても、トナー付着量が少なく用紙光沢の影響を強く受けた画像部分に対して、これに適した光沢感を付与したプレビューデータを生成することができる。
本発明の構成によって得られる効果を、次のように考えることができる。原稿データは一般的にはRGBの各色データから構成される。これに対して、ユーザーが実際の印刷物の目視確認しながら(3)用紙部正反射適用領域データを作成するような場合には、各色(3次元データ)に対して(3)用紙部正反射適用領域データ値を指定することになる。しかしながら、手作業で3次元データの合わせ込みを行うことは作業量の膨大さや複雑さから現実的ではない。
このような手作業によって、(3)用紙部正反射適用領域データを調整するような状況においては、原稿データから生成したトナー総付着量データ(1次元)を介して、このトナー総付着量データを基準として(3)用紙部正反射適用領域データを生成することは、作業が単純化され簡素化される。また、上述したように、各色トナーの合計値であるトナー総付着量から光沢感を推定することができるため、これに伴う品質の低下も発生しない。
つまり、本発明の構成では、トナー総付着量が小さい画像部の光沢感を実際の印刷物に一致するように、ユーザーが(3)用紙部正反射領域データを調整する工程を実現可能なものとすることができる。これにより、3D表示の印刷物プレビューにおいて、ユーザーが希望する光沢感をトナー付着量が小さい画像部に反映することができる。
本発明では、(4)用紙部正反射適用比率データと(7)画像部正反射適用比率データは、位置に応じて異なるデータである。従来技術で説明したように、従来技術では、プレビュー用のデータ値を算出する際に使用する照明データが1つであることを主たる要因として、用紙部分(トナー非付着部分)と画像部分(トナー付着部分)とで写り込む照明幅(照明のボケ具合)が、同じになるという問題があり、つまり、従来技術では、用紙部分と画像部分とで異なる光沢感(質感)を持たせることができないという問題があった。
前述したように、印刷物のプレビューにおいて“本物らしさ”向上させた再現を行うには、こうした用紙部分と画像部分とで異なる光沢感(質感)を再現することが必要である。
本発明では、(4)用紙部正反射適用比率データと(7)画像部正反射適用比率データが、位置に応じて異なるデータであるように構成しているため、3D表示のプレビューにおいて、用紙部分と画像部分とで写り込む照明幅が異なる状態で印刷物の光沢感を表現することができる。
本発明の構成では、例えば、用紙部分が高光沢で画像部分が低光沢であるような印刷物や、反対に、用紙部分が低光沢で画像部分が高光沢であるような印刷物であっても、3D表示のプレビュー装置において表現することが可能である。
さらに、本発明では、従来技術で説明した、中濃度領域において用紙部分や画像部分よりも光沢が低下する(照明の写り込みが大きく広がる)といった現象までを、3D表示のプレビューにおいて再現することができるようになる。
本発明の構成では、用紙部分と画像部分とで異なる質感(光沢感)を付与することができるようになるため、3D表示の印刷物プレビューにおいて、実際の印刷物に対して、“本物らしさ”向上させたプレビューを行うことができるようになる。
本発明では、(4)用紙部正反射適用比率データおよび(7)画像部正反射適用比率データは、ともに位置によって正反射適用比率データ値が異なるように作成した正反射適用比率データであって、この正反射適用比率データが式(9)を満たすように構成されている。
本発明者の検討(実施例1の比較実験)によると、式(9)を満足するように、(4)用紙部正反射適用比率データおよび(7)画像部正反射適用比率データを作成することで、3D表示のプレビューにおいて用紙表面に現れる正反射領域と拡散反射領域との切り替わりの態様が、実際の印刷物において発生する印刷物表面に写りこむ照明形状に見えるようになり、より“本物らしい”印刷物質感を再現することに寄与する、ことが判明した。
この検討では、式(9)のほかに、類似した形状を持つ関係式(ガウス関数など)を適用することを試みた。これらの似たような形状をもつ関係式の場合も結果は悪くはないが、式(9)ほどには、印刷物表面に写り込む照明形状を“本物らしく”再現することができなかった。
式(9)は、適用比率データが極大となる位置から遠ざかるにしたがって、2つの正反射適用比率データが共に、極大値からの距離の2乗の関数として小さくなることを示している。上述の2つの正反射適用比率データが極大となる位置とは、実際の用紙における照明の写り込みでは、照明中心に相当する位置である。このため、式(9)で表される特性を持つ両正反射適用比率データを使用することで、実際の用紙での照明の写り込みにおける、照明中心からその周辺部への減衰の態様を適切に反映することが可能となる。
これにより、本発明では3D表示の印刷物プレビューにおいて、照明の写り込みにおける照明中心からその周辺部への減衰の態様といった観点で、“本物らしい”印刷物質感を再現することができる。
本発明では、原稿データの表面位置における法線ベクトルが原稿データの表面位置によって変化するように、原稿データの位置における法線ベクトルを決定する、法線ベクトル決定手段を有するように構成されている。
本発明者の検討によれば、原稿データ表面の各位置における法線ベクトルが原稿データの各位置によって異なるように設定することで、用紙部の正反射部分と画像部の正反射部分とが複雑な形状となって印刷物表面に現れるようになる。実際の印刷物の場合を、印刷物そのものの剛性はそれほど大きくないため、印刷物を手で持ったり、平面ではない場所に配置した場合には、印刷物が完全な平面となっているわけではない。むしろ印刷物が平面でない状態で印刷物を観察することの方が多いといっても過言ではない。印刷物を平面ではない状態で観察した場合には、印刷物表面の照明が複雑な形状となって写り込む。また、こうした印刷物表面への照明の写り込みが複雑な形状となっている方が、印刷物のプレビューを自然と感じるといった側面がある。
本発明はこうした状況を鑑みたものであり、原稿データの位置における法線ベクトルが原稿データの表面位置によって変化するように設定されるため、3D表示のプレビューにおいて印刷物表面に反映される用紙部正反射領域と画像部正反射領域とを複雑な形状することができる、あるいはこれらが複雑に変化するようになる(法線ベクトルが原稿データの各位置で同じであると、用紙部正反射領域と画像部正反射領域とが単調な形状となる、あるいは単調な変化となってしまう)。
これにより、本発明では3D表示のプレビューにおいて、印刷物表面に写り込む照明形状の複雑さや複雑に変化するといった観点で“本物らしい”印刷物質感を再現することができるようになる。
本発明では、目視(視認)位置を変更することを可能とする目視位置入力装置とを有するように構成されている。本発明は、目視位置を変更することを可能とする目視位置入力装置を有するため、ユーザーが希望する目視位置から印刷物を観察した状態を再現して、3D表示のプレビューに表示することができる。このことは、ユーザーが様々な目視位置から印刷物の質感(光沢感)を確認できるため、印刷物の本来の質感である3次元的な質感を確認することに役立つ。
本発明では、3D表示のプレビューにおいて、ユーザーが希望する目視位置からの印刷物の質感を確認すること実現することができる。これにより、印刷物の備える3次元的な質感をプレビューに再現して確認することができる。
本発明では、印刷物位置を変更することを可能とする印刷物位置入力装置と有するように構成されている。本発明は、印刷物位置を変更することを可能とする印刷物位置入力装置を有するため、ユーザーが希望する位置に印刷物を配置した状態を再現して、3D表示のプレビューに表示することができる。このことは、ユーザーが、様々な配置位置における印刷物からの反射光を確認できるため、印刷物の本来の質感である3次元的な質感を確認することに役立つ。
本発明では、3D表示のプレビューにおいて、ユーザーが希望する位置に印刷物を配置した状態を再現することで、印刷物の質感を確認すること実現する。これにより、印刷物の備える3次元的な質感をプレビューに再現して確認することができる。
本発明では、印刷物位置を予め定められ折り曲げ動作を反映して印刷物位置を決定する印刷物位置決定手段を有するように構成されている。
本発明者の検討によれば、印刷物の“本物らしさ”の表現には、本発明で説明した質感(光沢感)である照明の写り込みに加えて、印刷物(用紙)の折り曲げの状態も重要である。印刷物の用紙部正反射・画像部正反射と、印刷物が平面ではなく折り曲げられた状態とを組み合わせることで、3D表示のプレビューにおいて、印刷物の“本物らしさ”が向上する。さらに、この折り曲げ状態が静止した状態ではなく変化・動作する(用紙の折り曲げ状態が変化する動画として表示する)ことで、この“本物らしさ”がさらに向上した“本物らしい”質感の表現が可能となる。
本発明はこうした状況を鑑みたものであり、予め定められ折り曲げ動作を反映して印刷物位置を決定する印刷物位置決定手段を有することで、3D表示のプレビューにおいて、印刷物の折り曲げ状態が変化する動画として表示することができる。これにより、“本物らしさ”がさらに向上した質感の表現が可能となる。