以下本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置の代表例として示されるCMOSイメージセンサ5の全体構成を説明する概略ブロック図である。
図1を参照して、CMOSイメージセンサ5は、画素アレイ6に行列状に配置された複数の受光素子10と、制御回路20と、受光素子10の列毎に配置された定電流源30およびアナログデジタルコンバータ(ADC)40とを備える。
図1に示した構成例では、選択された行の受光素子から、各列において並列に、受光素子への受光量に応じた出力信号がADC40から読み出される。
図1では、各列において2行分の受光素子10によって出力回路が共有される構成を例示する。図1の例では、2×(n+1)行および(m+1)列にわたって行列状に受光素子10が配列されている。各受光素子10は、代表的にはフォトダイオード(PD)によって構成される。受光素子は、受光量に応じた電荷を生成する。受光素子が生成した電荷は、当該受光素子によって形成される容量によって蓄積される。
制御回路20は、出力回路を共有する2行に共通するリセット信号RSTおよび選択信号SELと、当該2行間での行選択信号TX0,TX1とを出力する。画素アレイ6の2×(n+1)行全体では、RST(0)〜RST(n),TX0(0)〜TX0(n),TX1(0)〜TX1(n),SEL(0)〜SEL(n)が制御回路20から出力される。
各信号は、2値信号であり、論理ローレベル(以下、単にLレベルと表記する)および論理ハイレベル(以下、単に「Hレベル」とも表記する)とを有する。行を順次走査するように、所定周期で各信号のHレベル期間が定められる。
列にそれぞれ対応して設けられた(m+1)本のデータ線200には、選択された行の受光素子10から、図示しない第1の出力回路を介して、当該受光素子10に蓄積された電荷量(すなわち、受光量)に応じた電圧がそれぞれ出力される。
本実施の形態1による固体撮像装置では、列毎に第2の出力回路205が追加的に設けられる。(m+1)個の第2の出力回路205は、データ線200と接続されて、出力電圧VOUT(0)〜VOUT(m)をそれぞれ出力する。
ADC40は、第2の出力回路205からの出力電圧VOUT(0)〜VOUT(m)をデジタル信号に変換して出力する。これにより、CMOSイメージセンサ5全体では、行が順次選択される毎に、1行分の(m+1)個の受光素子10の受光量に応じた出力信号がADC40から出力される。
本実施の形態1による固体撮像装置は、一般的な構成に対して、第2の出力回路205を付加したものである。まず、第2の出力回路205の配置が省略された構成を比較例として説明する。
(比較例での問題点の説明)
図2は、比較例に従う受光素子からの出力回路構成を説明する回路図である。以下では、比較例および本実施の形態を通じて、2個の受光素子10について1つの出力段を有する2.5トランジスタ型と呼ばれる構成が示される。
図2を参照して、2個の受光素子10a,10bにそれぞれ対応して転送トランジスタ120a,120bが設けられる。さらに、2個の受光素子10a,10bによって共有される、リセットトランジスタ110、フローティングディフュージョン(以下、単にFDとも記載する)130、増幅トランジスタ140、および選択トランジスタ150が配置される。
各トランジスタは、代表的にはMOSトランジスタで構成される。CMOSイメージセンサでは、受光素子(フォトダイオード)の開口率を大きくするため、素子構造上PMOSトランジスタの配置は不利である。このため、各トランジスタは、NMOSトランジスタによって構成されることが好ましい。
転送トランジスタ120aは、受光素子10aおよびFD130の間に電気的に接続される。同様に、転送トランジスタ120bは、受光素子10bおよびFD130の間に電気的に接続される。転送トランジスタ120aのゲートには、行選択信号TX0が入力される。同様に、転送トランジスタ120bのゲートには、行選択信号TX1が入力される。なお、図1に示したCMOSイメージセンサ5内で、出力段を共有する2個の受光素子に対する信号出力構成は共通である。したがって、以下では、図1に示した各信号について、(0)〜(n)および(0)〜(m)の添字を省略して包括的に表記する。
電源配線100は、電源電圧VDDを供給する。電源電圧VDDは、通常、CMOSイメージセンサ5の外部から入力される。以下では、電源配線100との接続によって生じる電位についてもVDDと表記する。
リセットトランジスタ110は、電源配線100およびFD130との間に電気的に接続される。リセットトランジスタ110のゲートには、リセット信号RSTが入力される。
増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150は、電源配線100およびデータ線200の間に直列に、電気的に接続される。図2の例では、増幅トランジスタ140は、電源配線100および選択トランジスタ150の間に接続され、選択トランジスタ150は、増幅トランジスタ140およびデータ線200の間に接続される。増幅トランジスタ140のゲートはFD130と接続される。選択トランジスタ150のゲートには、選択信号SELが入力される。選択信号SELは、TX0またはTX1に対応する行の選択時に一定期間Hレベルに活性化される。選択信号SELがHレベルに設定されると、対応するFD130が読み出し対象に選択される。
選択信号SELによって選択トランジスタ150がオンされると、電流源30によって、電源配線100から、増幅トランジスタ140、オン状態の選択トランジスタ150、データ線200への経路に、定電流Icが流される。なお、図中のVSSは一般的には接地電圧である。
これにより、FD130の電位(以下、単にFD電位とも称する)に従った電圧を、データ線200に出力するソースフォロワ回路が、増幅トランジスタ140、選択トランジスタ150および、電流源30によって構成される。このソースフォロワ回路は、図1で図示を省略した「第1の出力回路」に相当する。比較例(図2)の構成では、図1に示した第2の出力回路は配置されておらず、当該第1の出力回路のみによって、FD130の電位に応じた出力電圧VOUTが生成される。
同一のデータ線200に対して、図2に示した信号出力構成が複数個接続されている。図1の例では、(n+1)個の信号出力構成が、共通のデータ線200に接続される。選択信号SEL(0)〜SEL(n)によって、共通のデータ線200に対応する(n+1)個のFD130から、読み出し対象となるFD130が選択される。選択信号SEL(0)〜SEL(n)を選択的にHレベルに活性化することにより、オンされた選択トランジスタ150を含む第1の出力回路(ソースフォロワ回路)が、選択されたFD130の電位に応じた出力電圧VOUTをデータ線200に出力する。
このように、行選択信号TX0(0)〜TX0(n),TX1(0)〜TX1(n)および選択信号SEL(0)〜SEL(n)の組み合わせによって、同一の列を構成する2×(n+1)個の受光素子10を順次選択するとともに、選択された受光素子10に蓄積された電荷量に応じた出力電圧VOUTを、共通のデータ線200に順次出力することができる。
受光素子10a,10bは、露光されることにより、それぞれの受光量に応じた電荷を発生する。これらの電荷は、受光素子10a,10bに蓄えられている。一例として、受光素子10aに蓄えられた電荷を読み出すときの動作について説明する。
受光素子10aまたは10bからの電荷を読み出す前に、リセット信号RSTをHレベルに設定してリセットトランジスタ110をオンすることにより、FD130の電位が、VDDにリセットされる。
受光素子10aの電荷を読み出す場合には、リセットトランジスタ110をオフにした後、行選択信号TX0を一定期間Hレベルに設定することにより、転送トランジスタ120aがオンされる。これにより、受光素子10aに蓄積された電荷がFD130へ転送される。
これにより、FD電位は、リセット電位(VDD)から転送された電荷量に応じた電位だけ低下する。電荷の転送後におけるFD電位は、選択信号SELのHレベル時に、増幅トランジスタ140、選択トランジスタ150および電流源30によって構成されるソースフォロワ回路(第1の出力回路)によって、データ線200に出力される。選択信号SELのLレベル時は、選択トランジスタ150がオフすることによって電流経路が遮断されるので、ソースフォロワ回路(第1の出力回路)は非作動となる。
受光素子10bから電荷を読み出す動作も、同様に、リセット信号RST、行選択信号TX1および選択信号SELを順に所定期間Hレベルに活性化することによって実行できる。このように、リセット信号RSTに基づくリセット動作と、行選択信号TX0,TX1による転送動作と、選択信号SELに応じた選択的な出力回路の動作によって、所望の受光素子10に蓄積された電荷量(すなわち受光量)に応じた出力電圧VOUTをデータ線200に出力することができる。
しかしながら、図2に示した信号出力構成では、以下のような問題点がある。
通常、CMOSイメージセンサ5では、受光素子の開口面積を大きく取りたいため、NMOSトランジスタのバックゲートを共通化して接地している。したがって、FD電位が異なると、出力動作時における、増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150のソース・基板間電圧が異なってくる。このため、基板バイアス効果により、FD電位に応じてトランジスタのしきい値電圧Vthに差が生じるという現象が発生する。具体的には、FD電位が高い(受光量が小)のときとFD電位が低いとき(受光量が大)のときとで、増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150のしきい値電圧Vthに差が生じる。すなわち、FD電位が高いとき(低照度)にVthが高く、FD電位が低いとき(高照度)にVthが低くなるので、等価的にFD電位からみたソースフォロワ回路の利得が低下してしまう。このように、FD電位が不安定となるとソースフォロワ回路の利得にばらつきが生じてしまう。
また、リセットが不十分であった場合にも、FD電位が不安定となる虞があり、これによって利得にばらつきが生じることが懸念される。具体的には、リセットトランジスタ110が十分にオンされないことにより、リセット前のFD電位に依存してリセット後のFD電位が変動することによって、利得のばらつきが生じる虞がある。リセットが不十分となる問題を解消するためには、リセットトランジスタ110のゲート電圧(接地電位とゲート電位との電位差)、すなわち、リセット信号RSTのHレベル電位を、画素の電源電圧VDDよりも十分高くする必要がある。しかしながら、電源電圧VDDの昇圧電圧を用いる回路構成では、上述のように、回路規模の増大や素子寿命の低下を招くことが懸念される。
MOSトランジスタのしきい値電圧Vthは、ソース・基板間電圧Vsbを用いて、下記(1)式のように示される。
Vth=Vt0+γ(√(2φf+Vsb)−√(2φf)) …(1)
φf=(kT/q)ln(N/ni)
(1)式において、Vt0は、Vsb=0のときのしきい値電圧である。また、γは、Vsbの変化に対するVthの感度を表す係数(基板効果係数)である。また、φfは、ボルツマン係数k、基板温度T、電子の電荷量q、基板の不純物濃度Nおよび、シリコンの真性キャリア濃度niによって決まる定数である。
(1)式から理解されるとおり、基板バイアス効果により、ソース・基板間電圧(Vsb)の平方根がしきい値電圧に影響するため、FD電位と出力電圧VOUTとの間の線形性も損なわれる。
また、選択トランジスタ150をオンするための選択信号SELのHレベル電位は、通常固定電位である。このため、FD電位が異なると、選択トランジスタ150は、ゲート・ソース間電圧(Vgs)が変化することにより、オン抵抗も変化する。具体的には、Vgsが高いほどオン抵抗が小さくなるため、受光素子10の受光量が大きくFD電位が低くなるときにVgsが小さくなることにより、オン抵抗が上昇する。
このように、FD電位に応じて選択トランジスタ150のオン抵抗が変化する現象によっても、上述の基板バイアス効果と同様に、線形性および利得も低下する。
また、受光素子10の受光量が小さくFD電位が高くなると、選択信号SELのHレベル電位との電位差が十分でない場合には、選択トランジスタ150が飽和領域に近付くことにより、線形性が大きく損なわれる。MOSトランジスタのドレイン・ソース電圧(Vds)が小さいときのオン抵抗Ronは、MOSトランジスタの利得係数β、しきい値電圧(Vth)、およびゲート・ソース間電圧(Vgs)を用いて、下記(2)式で示される。(2)式より、MOSトランジスタのオン抵抗は、Vgsに反比例することが理解される。
Ron=1/(β・(Vgs−Vth)) …(2)
このように、FD電位の違いに応じて、基板バイアス効果およびオン抵抗差によって、FD電位をデータ線200に読み出す際の出力特性、すなわち、FD電位に対する出力電圧VOUTの線形性および利得が低下することが問題となる。
ここで、基板バイアス効果を回避するには、各トランジスタのソース電位と基板電位とを同じとすることが考えられるが、これにはトランジスタ間の素子分離が必要となるため、受光素子(フォトダイオード)の開口率が低下する点が新たに問題となる。また、オン抵抗の変動については、選択信号SELのHレベル電位を上げることで軽減できる可能性があるが、Hレベル電位の上昇量には限界がある。また、昇圧電圧を新たに用意することは、リセットトランジスタ110のゲート電圧の場合と同様に、回路規模の増大や素子寿命の低下を招くことが懸念される。
(実施の形態1に従う回路構成の説明)
図3は、本発明の実施の形態1に従う固体撮像装置における受光素子からの信号出力構成を説明するための回路図である。図3についても、図2と同様に、2個の受光素子10a,10bに対応する構成が示される。
図3を図2と比較して、受光素子10a,10bに対して、図2と同様に、リセットトランジスタ110、転送トランジスタ120a,120b、FD130、増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150が設けられる。図2で説明したように、電流源30、増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150により、電源電圧VDDによって駆動されてFD電位に応じた電圧をデータ線200に出力するためのソースフォロワ回路(第1の出力回路)が構成される。
さらに、実施の形態1に従う固体撮像装置では、データ線200に接続された第2の出力回路205が設けられる。第2の出力回路205は、電流源135と、出力トランジスタ160,170と、出力ノード210とを含む。たとえば、図1に示したように、第2の出力回路205は、画素アレイ6の外部にデータ線200毎に設けられる。
出力トランジスタ160,170は、データ線200および出力ノード210の間に直列に電気的に接続される。出力トランジスタ160は、増幅トランジスタ140と同一サイズおよび同一形状で設けられる。出力トランジスタ160のゲートは、出力ノード210と電気的に接続される。
出力トランジスタ170は、選択トランジスタ150と同一サイズおよび同一形状で設けられる。出力トランジスタ170のゲートは、選択信号SELのHレベル電位を供給するための電圧源165と接続されている。電流源35は、出力ノード210および出力トランジスタ160,170を経由してデータ線200へ至る経路に、定電流Icを供給する。たとえば、電流源35は、データ線200を電源電圧VDDによって駆動することで、定電流Icを供給する。
一方で、実施の形態1では、電流源30は、定電流2・Icを供給するように構成される。すなわち、電流源35は、電流源30の半分の電流量を供給するように構成されている。この結果、第1の出力回路にも電流量Icが流れることになる。これにより、増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150を流れる電流量と、出力トランジスタ160,170を流れる電流量とが同等となる。さらに、ソース同士がデータ線200を介して同電位に接続された選択トランジスタ150および出力トランジスタ170の間でゲート電位が同等である。また、上述のように、CMOSイメージセンサ5では、各NMOSトランジスタのバックゲートを共通化して接地している。
したがって、選択トランジスタ150および出力トランジスタ170の間では、基板電位、ソース電位およびゲート電位の関係(すなわち、VsbおよびVgs)が同等であり、かつ、同等の電流量Icが流れている。この結果、選択トランジスタ150および出力トランジスタ170は同じバイアス状態となる。
これにより、選択トランジスタ150および出力トランジスタ170のソース・ドレイン間電圧は一致するので、増幅トランジスタ140および出力トランジスタ160のソース電位も同等となる。また、増幅トランジスタ140および出力トランジスタ160の電流量(Ic)も同等であるので、増幅トランジスタ140および出力トランジスタ160のゲート・ソース間電圧(Vgs)も一致する。この結果、出力トランジスタ160のゲート接続された出力ノード210の電位は、FD電位と略一致する。
この際に、FD130とデータ線200との間には、増幅トランジスタ140のVgsおよび選択トランジスタ150のVdsの和に相当する電位差ΔVが生じる一方で、データ線200および出力ノード210の間にも、出力トランジスタ160,170によって同等の電位差ΔVが生じることが理解される。したがって、増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150による電位差ΔVがFD電位に依存して変化しても、第2の出力回路205は、電位差ΔVを逆方向に補正して、FD電位に従った出力電圧VOUTを出力ノード210に出力することができる。
これにより、FD電位に対する出力電圧VOUTの特性は、FD電位に対するデータ線200の電圧の特性とは異なり、FD電位に依存した変化が解消されたものとなる。したがって、第2の出力回路205を備えた実施の形態1に従う信号出力構成では、FD電位をデータ線200に読み出す際の出力特性(線形性および利得)を、比較例よりも改善することができる。
特に、電流源35についても1個のPMOSトランジスタによって構成可能であるので、第2の出力回路205は、3個のMOSトランジスタによって、簡易かつ小型に構成することが可能である。したがって、特許文献1と比較して、CMOSイメージセンサ5の大型化を回避できる。
また、線形性の悪化の他、図2および図3に示されるように、単一のFD130が2個の受光素子10a,10bによって共有される回路構成では、制御電圧(ゲート電圧)が低いこと等によってリセットトランジスタ110の電流駆動能力が不十分な場合、一方の受光素子10aの出力が、他方の受光素子10bの出力に影響を及ぼす現象が発生してしまう。
たとえば、受光素子10aからの電荷をFD130に転送して読出動作を実行した後、FD130をリセットして、その後に受光素子10bからの電荷をFD130に転送する読出動作を考える。この際に、リセットが不十分なために、受光素子10aからの出力に依存してリセット後のFD電位(リセット電位)が変動することにより、受光素子10bからの読出動作における出力が変動することが懸念される。
図15は、実施の形態1による効果、すなわち、第2の出力回路の効果を説明するための回路シミュレーション結果を示すグラフである。図15では、上述のように、共通のFD130を共有する2個の受光素子10a,10bからの読出動作を、リセット動作を挟んで実行したときにおける、FD電位および出力電圧VOUTの挙動を、各トランジスタの素子定数を設定して回路シミュレータによって求めた。
図15には、受光素子10aの受光レベルに対する受光素子10bからの読出動作における出力レベルの変化の特性が示される。
まず、受光素子10aの受光レベル(受光量)を設定して、受光素子10aから当該受光レベルに相当する電荷量がFD130へ出力されたときの回路動作(各部電圧変化)が回路シミュレータによって求められる。この状態から、リセットトランジスタ110の制御電圧(ゲート電圧)Vgを印加することによってFD電位をリセットし、さらに、受光素子10bからの読出動作を実行した際の回路動作(各部電圧変化)がさらにシミュレーションされる。ここでは、受光素子10bの受光レベルを一定値に固定した下で、受光素子10aの受光レベルを変化させて、受光素子10bからの当該一定値の読出動作における出力変化をシミュレーションした。
図15(a)には、図2の構成(比較例)、すなわち、第2の出力回路が配置されていない回路構成におけるシミュレーション結果が示される。一方で、図15(b)には、第2の出力回路が配置された図3の構成(実施の形態1)におけるシミュレーション結果が示される。
図15のシミュレーションでは、受光素子10aからの読出後、リセットトランジスタ110をオンさせてFD電位をリセットした後に、受光素子10bから同一量の電荷がFD130へ出力された読出動作における出力レベルVLが評価される。出力レベルVLは、リセット後(リセットトランジスタ110のオフ時点)における受光素子10bからの読出動作前における出力電圧VOUTから、受光素子10bからFD130への電荷転送後における出力電圧VOUTを減算した電圧変化量に相当する。
図15(a),(b)の横軸は、受光素子10aの受光レベルを示す。図15(a),(b)には、受光素子10aの受光レベルが最小(Pmin)である場合の読出動作における出力レベルVLを基準値として、受光素子10aの受光レベルが変化したときの当該基準値からの出力レベルVLの変化量ΔVLが示される。
受光素子10aの受光レベルが最小(Pmin)である場合には、受光素子10aからの読出後におけるFD電位はリセット電位のままであるので、リセットトランジスタ110によるリセット後のFD電位は、リセット電位となる。すなわち、FD130は完全にリセットされる。完全なリセット後における受光素子10bからの読出動作における出力レベルVLが上記基準値とされる。
図15(a),(b)とも、リセットトランジスタ110のオン時における制御電圧(ゲート電圧)をパラメータとして、各制御電圧における、受光素子10aの受光レベルの変化に対する受光素子10bからの読出時における出力レベルの基準値からの変化量ΔVLの特性が示される。
図15(a)を参照して、受光素子10aの受光レベルが最小(Pmin)である場合には、上記の定義からΔVL=0である。受光素子10aの受光量が増加すると、これに応じて、読出時のFD電位が低下する。したがって、受光素子10aからの読出後、リセットトランジスタ110によってFD電位をリセットする際に、制御電圧Vg(ゲート電圧)の不足によりリセットが不十分であると、リセット後のFD電位が本来のFD電位(VDD)よりも低下する。この低下量は、リセット前のFD電位が低い程(すなわち、受光素子10aの受光量が大きいほど)大きくなる。
リセット電位が低い状態から受光素子10bからの読出を行なうと、同一の出力電荷に対してFD電位が低下する。上述のように増幅トランジスタ140のチャネル長変調効果や選択トランジスタ150のオン抵抗等には電圧依存性があるため、ソースフォロワ回路の利得は、入力される電位、すなわち、FD電位に依存して変化する虞がある。これにより、同一光量の読出(すなわち、同一電荷量の転送)に対しては本来一定となるべき出力レベルVLが、リセット動作前に受光素子10aから読出された電荷量(すなわち、受光素子10aの受光量)に依存して変動する現象が生じる可能性がある。図15(a),(b)には、この現象のシミュレーション結果が示される。
制御電圧がVDD≦Vg<V1の範囲では、上記のようにリセットトランジスタ110の電流駆動能力が不十分となるため、リセット後のFD電位が受光素子10aの受光レベルに応じて変動し、この結果、出力レベルVLにも変動が生じるというシミュレーション結果が得られた。具体的には、受光素子10aの受光量が大きくリセット動作後のFD電位が低下するほど、出力レベルVLは大きくなる(すなわち、ΔVLが増加する)というシミュレーション結果が得られた。すなわち、受光素子10aの受光レベルが、受光素子10bからの読出動作に影響を及ぼしている。
一方で、リセットトランジスタ110のゲート電圧を上昇させることにより、リセット後のFD電位の変動は解消できる。図15(a)の例では、Vg>V1に昇圧することにより、受光素子10aの受光レベルに依存することなく、受光素子10bからの同一光量の読出動作時における出力レベルVLをほぼ一定(すなわち、ΔVL=0)とできるというシミュレーション結果が得られた。
図15(a)のシミュレーション結果より、図2(比較例)の構成では、受光素子10aの受光レベルに依存することなく受光素子10bの受光量を正確に読出すためには、電源電圧VDDを昇圧してリセットトランジスタ110の制御電圧(ゲート電圧)Vgを生成することが必要となることが理解される。
図15(b)を参照して、図3の構成では、第2の出力回路の効果により、リセットトランジスタ110の制御電圧がV1よりも低い範囲であっても、図15(a)でのVg>V1の場合と同様に、受光素子10aの受光レベルに依存することなく、出力レベルVLが変動しない(すなわち、ΔVL=0)というシミュレーション結果が得られた。
このシミュレーション結果からも理解されるように、実施の形態1によれば、リセット後のFD電位の変動による増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150でのバイアス状態の変動を、第2の出力回路の出力トランジスタ160,170のバイアス状態に反映することができる。したがって、リセットトランジスタ110の制御電圧(ゲート電圧)Vgを昇圧しなくても、受光素子10aの受光レベルに依存することなく受光素子10bの受光量を正確に読出すことができる。
このように、実施の形態1に従う構成では、第2の出力回路の効果によって、リセットトランジスタ110の制御電圧Vgに昇圧電圧を用いることなく、各受光素子単位での出力特性(線形性および利得)の改善のみならず、同一のFD130を供給する複数の受光素子10a,10bからの読出精度を向上させることができる。
[実施の形態1の変形例1]
図4は、本実施の形態1の変形例1に従う受光素子からの信号出力構成を説明する回路図である。
図4を図3と比較して、実施の形態1の変形例1では、選択トランジスタ150に対応する出力トランジスタ170のゲートに、制御信号CSが入力される点が異なる。制御信号CSは、Hレベル時に、選択信号SELのHレベル電位と同等に設定される。図4のその他の部分の構成は図3と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
図5には、制御信号CSの活性化タイミングを説明するための信号波形図が示される。
図5を参照して、図4に示した信号出力構成において、選択信号TX0またはTX1の活性化によって、FD130に受光素子10aまたは10bから電荷が転送された状態で、時刻t1において選択信号SELがHレベルに活性化される。
これにより、選択信号SELに対応するFD130の電位を読み出すために、増幅トランジスタ140、選択信号SELによってオンされた選択トランジスタ150、および電流源30(2・Is)によって構成されるソースフォロワ回路が動作する。この結果、データ線200の電圧が、FD電位に応じた電圧、より正確には、上述のように、FD電位に対して増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150による電位差ΔVを有するレベルに向けて変化する。
このとき、データ線200の電圧は、電流源30による電流量2・Icによって駆動される。このため、データ線200の電圧が安定するまでの整定時間が、図3の様に電流量Icによってデータ線200を駆動する場合と比較して短縮される。
そして、時刻t2で、制御信号CSをHレベルに設定するとによって、第2の出力回路205が実施の形態1と同様の動作を開始する。これにより、電位差ΔVがキャンセルされた、FD電位に従った出力電圧VOUTが出力ノード210に出力される。データ線200の電圧が安定した後に第2の出力回路205を動作させるように時刻t2、すなわち、選択信号SELおよび制御信号CS間の活性化タイミングの時間差を設定することにより、出力電圧VOUTを早期に安定化することができる。したがって、時刻t3において、出力電圧VOUTをADC40に取り込むための読出信号RDをHレベルに設定することができる。
これに対して、制御信号CSがHレベルに固定された実施の形態1と同様の状態では、選択信号SELをHレベルに設定することにより、データ線200および出力ノード210の各々が、電流量Ic(2Ic−Ic)で駆動されることになる。したがって、データ線200の電圧および出力電圧VOUTは一緒に変化する。データ線200は、画素アレイ6を縦断する列毎の配線であるため、寄生容量が大きくなる傾向にある。このため、データ線200の電圧が安定化するまでに時間を要することによって、出力電圧VOUTが安定化するタイミングが遅れる虞がある。たとえば、図5中の時刻t4まで、読出信号RDをHレベルに設定するタイミングを遅らせる必要が生じる可能性がある。
このように、実施の形態1の変形例に従う信号出力構成では、実施の形態1と同様の出力特性の改善効果に加えて、データ線200の寄生容量が大きい場合にも、出力電圧VOUTを速やかに安定化させることにより、受光素子からの信号出力動作を高速化することが可能となる。
[実施の形態1の変形例2]
図6は、本実施の形態1の変形例2に従う受光素子からの信号出力構成を説明する回路図である。
図6を図3と比較して、実施の形態1の変形例2では、第2の出力回路205を構成する出力トランジスタ160,170が、画素アレイ6内に配置される点で異なる。これにより、出力トランジスタ160,170は、増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150と近接して配置される。すなわち、出力トランジスタ160,170は、各列において、第1の出力回路の各々に対応して2つの行毎に配置される。出力トランジスタ170のゲートには、選択トランジスタ150と共通の選択信号SELが入力される。図6のその他の部分の構成は図3と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
実施の形態1の変形例2による構成では、出力トランジスタ160および増幅トランジスタ140、ならびに、出力トランジスタ170および選択トランジスタ150のそれぞれを近接して配置することができるので、製造時ばらつきによる両トランジスタ間での素子特性差を抑制することができる。
したがって、増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150によって生じる電位差と、出力トランジスタ160および170によって生じる電位差とをさらに同一化することができる。これにより、出力トランジスタ160,170の配置個数が増加する一方で、実施の形態1に従う構成による出力特性の改善効果をさらに高めることが可能となる。
なお、実施の形態1の変形例2に従う構成では、第2の出力回路205間の選択も必要となるため、出力トランジスタ170のオンオフを制御することが必要である。なお、図6の構成において、実施の形態1の変形例1と同様の制御信号CSを出力トランジスタ170のゲートに入力するようにしてもよい。この場合には、選択信号SELを所定時間(図4における時刻t1〜t2の時間差相当)遅延させることによって、制御信号CSを生成することが可能である。
また、実施の形態1およびその変形例1,2では、同一列の2個(2行)の受光素子10によって、FD130、増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150が共有される、2.5トランジスタ型の構成を例示したが、各受光素子10に対して、FD130、増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150が配置される構成に対しても、本実施の形態1およびその変形例による第2の出力回路205をデータ線200に対して接続することによって、同等の作用効果を発揮することが可能である点について確認的に記載する。
また、増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150によって構成された出力段(第1の出力回路)の構成についても、図3、図4および図6の各々での例示に限定されるものではない。すなわち、第1の出力回路によって生じるFD130およびデータ線200の間の電位差ΔVと同等の電位差がデータ線200および出力ノード210の間に生じるように、第1の出力回路と同等のバイアス状態のトランジスタがデータ線200および出力ノード210の間に接続されるように第2の出力回路205を構成することによって、第1の出力回路の構成を限定することなく、実施の形態1およびその変形例で説明した出力特性の改善効果を同様に享受することが可能である。
[実施の形態2]
(リセット電位の変動について)
CMOSイメージセンサにおける出力特性を悪化させる他の要因として、リセット電位のばらつきが挙げられる。この問題点について、図2に示した比較例を再び用いて説明する。
図2を再び参照して、FD電位は、リセット信号RSTのHレベル時に、リセットトランジスタ110がオンすることによって、VDDへリセットされる。
この際に、リセットトランジスタ110はNMOSトランジスタで構成されているため、リセット信号RSTのHレベル電位がVDDと同等であると、FD電位が(VDD−Vth)付近まで上昇したときに、リセットトランジスタ110が電源配線100からFD130へ供給する電流が大幅に減少する。したがって、FD電位が完全に収束するまでには長時間を要することになる。一方で、高速動作の要請のためにリセット時間を制限すると、リセット終了時のFD電位にばらつきが生じる。この結果、リセット前のFD電位に依存して、リセット動作後のFD電位(リセット電位)が変動する虞がある。
特に、図2のような2.5トランジスタ型の構成では、2個の受光素子10a,10bによって共通のFD130を共有するので、受光素子10aからFD130へ転送された電荷量に応じた出力電圧VOUTの出力動作後、直ちにFD電位をリセットして、受光素子10bからFD130へ転送動作が実行される。このとき、リセット前のFD電位は、受光素子10aでの受光量に応じて異なる。さらに、通常、FD130の容量成分は、トランジスタの寄生容量成分を含むため、電圧依存性を有する。このため、リセット前のFD電位の違いによって容量値が変化している。
また、増幅トランジスタ140、選択トランジスタ150および電流源30によって構成されるソースフォロワ回路にも、出力電圧に依存して利得が変化する特性がある。この電圧依存性は、実施の形態1でも説明したように、基板バイアス効果によるしきい値電圧の変動、選択トランジスタ150のオン抵抗の変動等が原因である。
これらの電圧依存性を考慮すると、FD電位を完全にリセットすることができなければ、リセット電位の変動によって、受光素子10での同一の受光量に対して同一の出力電圧VOUTが生成できない虞がある。特に、FD電位がVDD近傍である場合には、リセット時間が十分確保できたとしても、出力動作時に選択トランジスタ150のゲート・ソース間電圧が十分確保できなくなるため、オン抵抗が上昇することによって、データ線200への出力電圧が低下する。これにより、リセット電位の違いによってFD電位に対する出力電圧VOUTの利得が変化するとともに、出力の線形性が低下する。
このような問題点を回避するために、リセット信号RSTのHレベル電位を、電源電圧VDDの昇圧電圧によって発生する対策が考えられる。しかしながら、昇圧に対応する構成を設けることによって回路規模の増大が懸念される。
また、図2の構成では、増幅トランジスタ140、選択トランジスタ150および電流源30によるソースフォロワ回路(第1の出力回路)の電源と、リセット用電源とが、電源配線100を共有することによって共通化されている。したがって、電源配線100での電圧降下の影響で、画素アレイ6内での位置に依存して、受光素子10間でリセット電位が変動する虞もある。画像の高精細化のために画素アレイ6内での受光素子数を増加させることにより、この問題はさらに大きくなる。
このような電圧降下に対しては、図7に示すように、電源配線100をメッシュ状にすることによってVDDの電源インピーダンスを下げる対策が講じられるが、物理的な限界が存在する。また、VDDのインピーダンスが十分に低くないと、ソースフォロワ回路の動作時に生じるVDDの電圧降下によって、増幅トランジスタ140が、ゲート・ドレイン間電圧の低下により非飽和領域に入って動作することが懸念される。この場合には、FD電位に対する出力電圧VOUT線形性が大幅に低下してしまう。
ソースフォロワ回路の電流源30による電流量を小さくすることによっても電圧降下を抑制できるが、電流量を小さくすると出力電圧VOUTが整定するまでの期間が長くなることによって動作の高速化が阻害されるという問題が新たに生じる。
このように、リセット電位が変動すると出力特性の低下を招くため、回路規模の増大や高速化の阻害を回避して、リセット電位の安定化を図る必要がある。
(実施の形態2に従う回路構成の説明)
図8は、本実施の形態2に従う受光素子からの信号出力構成を説明する回路図である。
図8を図2と比較して、実施の形態2に従う構成では、図2に示した比較例の構成に対して、リセット電圧生成回路300が新たに設けられる点と、リセットトランジスタ110が、リセット電圧配線305およびFD130の間に接続される点が異なる。リセット電圧配線305には、リセット電圧生成回路300からリセット電圧VDD♯が出力される。図8のその他の部分の回路構成は図2と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。以下では、リセット電圧配線305との接続によって生じる電位についてもVDD♯と表記する。
リセット電圧生成回路300は、電源配線100と接地ノード(VSS)との間に接続された、NMOSトランジスタ310および電流源320を有する。トランジスタ310は、電源配線100およびリセット電圧配線305との間に電気的に接続される。トランジスタ310のゲートは、電源配線100と接続されている。
これにより、リセット電圧配線305に出力されるリセット電圧VDD♯は、電源電圧VDDからトランジスタ310のしきい値電圧Vth分降圧された電圧(VDD−Vth)となる。リセット電圧生成回路300により、リセットトランジスタ110の電源となるリセット電圧VDD♯と、増幅トランジスタ140を含むソースフォロワ回路(第1の出力回路)の電源電圧VDDとが分離される。すなわち、トランジスタ310は、「降圧トランジスタ」に対応する。
リセットトランジスタ110には、リセット信号RSTのHレベル期間に過渡的な電流が流れるのみであるから、定常的なDC電流は流れない。したがって、リセット動作に伴うリセット電圧VDD♯の電圧降下は、DC成分を持たない。このため、各FD130の順次のリセット間隔を適切に確保すれば、リセット電圧配線305での電圧降下によって、画素アレイ6内の位置に依存した受光素子10間でのリセット電位の変動を抑制することができる。
さらに、リセット電圧VDD♯=VDD−Vthであるため、リセットトランジスタ110のゲートに入力されるリセット信号RSTのHレベル電位を電源電圧VDDによって生成しても、リセットトランジスタ110のVgsをVth以上とすることができる。この結果、リセットトランジスタ110がオンしてから、リセット電圧VDD♯によるFD電位のリセットが終了するまでの期間を通じて、リセットトランジスタ110によって電流を十分に供給できる。したがって、電源電圧VDDを昇圧する機構を設けることなく、リセット時間を短縮するとともに、リセット前のFD電位に依存したリセット電位のばらつきを抑制することができる。
リセット電圧VDD♯によって、FD電位の範囲もVDD−Vthよりも低電位側となる。したがって、選択トランジスタ150のゲートに入力される選択信号SELのHレベル電位を電源電圧VDDによって生成しても、選択トランジスタ150を十分にオンすることができる。さらに、増幅トランジスタ140のゲート・ドレイン電圧が広がるため、電源電圧VDDの電圧降下に対して増幅トランジスタ140の飽和領域での動作を維持するためのマージンも上昇する。この結果、電源配線100に要求される低インピーダンス性をある程度緩和できる。
このように、実施の形態2に従う信号出力構成では、CMOSイメージセンサ5の内部に簡易な構成の降圧回路(リセット電圧生成回路300)を設けることによって、昇圧のための構成を設けることなく、FD130のリセット電位の変動を抑制することができる。この結果、CMOSイメージセンサ5の回路規模の増大や高速化の阻害を招くことなく、リセット電位の安定化によって出力特性の変動を抑制することが可能となる。
特に、リセット電圧VDD♯は、NMOSトランジスタ310のしきい値電圧Vthに追従して変化する。このため、ウェハプロセスのばらつきや温度によって、NMOSトランジスタ310を含む各NMOSトランジスタのVthが変動しても、VDD♯(VDD−Vth)と各MOSトランジスタのVthとの電圧差は確保できるので、安定的な出力特性を得ることができる。
図16は、実施の形態2による効果を説明するためのシミュレーション結果を示すグラフである。
図16においても、単一のFD130を共有する2個の受光素子10a,10bからの読出を、リセット動作を挟んで実行したときにおけるFD電位および出力電圧VOUTの挙動を、各トランジスタの素子定数を設定して回路シミュレータによって求めた。具体的には、受光素子10a,10bの受光レベルを同一に設定した下で、図15と同様に定義される出力レベルVLを、受光素子10aからの読出時および受光素子10aからの読出時のそれぞれにおいてシミュレーションした。
図16の縦軸には、受光素子10aからの読出時における出力レベルVL(a)と、受光素子10bからの読出時における出力レベルVL(b)の差分である出力レベル差ΔVLab(ΔVLab=VLa−VLb)が示される。受光素子10a,10bの受光レベルを同一に設定しているので、本来は、ΔVLab=0となる。図16の横軸には、受光素子10a,10bの受光レベルが示される。
図16のシミュレーションでは、比較例(図2)および実施の形態2(図8)の各々において、リセットトランジスタ10の制御電圧Vg(リセット信号RSTのHレベル電位)をVDDとした時の上記読出動作をシミュレーションしている。点線で示された特性線500は、比較例(図2)の構成におけるシミュレーション結果を示し、実線で示された特性線505は、実施の形態2(図8)の構成によるシミュレーション結果を示す。
比較例(図2)では、リセット電圧とリセットトランジスタ110の制御電圧Vgとが同レベル(VDD)であるので、受光量が大きくなるのに従って受光素子10aからの読出後におけるFD電位が低くなると、FD電位を十分にリセットできなくなる。この結果、特性線500(点線)に示されるように、受光量が大きい領域では、リセット後の受光素子10bからの読出動作での出力レベルVLが、受光量が小さい領域よりも大きくなる。すなわち、受光量が大きくなるにつれて、ΔVLabが負方向に拡大する。すなわち、受光量に依存してリセット後の受光素子10bからの読出動作に誤差が生じてしまう。
これに対して、実施の形態2(図8)では、リセットトランジスタ110の制御電圧Vg(Vg=VDD)がリセット電圧VDD♯よりも高いので、受光素子10aの受光量が大きくてもFD電位を十分にリセットすることができる。この結果、特性線505(実線)に示されるように、受光量に依存せず出力レベルVLをほぼ一定(すなわち、ΔVLabをほぼ0)にすることができる。すなわち、図16に示したシミュレーション結果から、リセット後の受光素子10bからの読出動作の誤差が解消されることが理解できる。
[実施の形態2の変形例1]
図9は、本実施の形態2の変形例1に従う受光素子からの信号出力構成を説明する回路図である。
図9を図8と比較して、実施の形態2の変形例1に従う構成では、図8に示したリセット電圧生成回路300に代えて、リセット電圧生成回路301が設けられる点が異なる。
リセット電圧生成回路301は、可変電流源330と、抵抗素子340と、バッファ350とを有する。可変電流源330および抵抗素子340は、ノードNaを介して直列に接続される。バッファ350は、ノードNaの電圧に従って、リセット電圧VDD♯をリセット電圧配線305に供給する。図9のその他の部分の回路構成は図8と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
ノードNaの電圧、すなわち、リセット電圧VDD♯は、可変電流源330による電流量をIvとし、抵抗素子340の抵抗値をRとすると、VDD♯=VDD−Iv・Rで示される。すなわち、リセット電圧生成回路301は、可変電流源330による電流量Ivを変化させることにより、リセット電圧VDD♯を可変に設定することができる。すなわち、可変電流源330および抵抗素子340により、リセット電圧VDD♯を可変に制御するための「電圧制御回路」が構成される。
リセット電圧VDD♯を可変に設定するための構成は、図9の例示に限定されるものではなく、種々の構成を適用できる。たとえば、上述のように、リセットトランジスタ110には定常電流が流れないため、リセット電圧生成回路301の出力インピーダンスはあまり小さくしなくてもよい。このため、バッファ350の配置は省略することも可能である。
実施の形態2の変形例1に従う構成では、リセット電圧VDD♯を、CMOSイメージセンサ5の機種や適用用途に応じて、製造時に調整することができる。このようにすると、リセット電圧VDD♯を発生するための回路設計を複数の機種間で共通化することが可能となる。
あるいは、CMOSイメージセンサ5の使用状況に応じて、リセット電圧VDD♯を変更することも可能である。たとえば、ISO感度に連動させて、リセット電圧VDD♯を変化させることが可能である。具体的には、ISO感度が低いときには、リセット電圧VDD♯を高くしてダイナミックレンジの拡大を図る一方で、ISO感度が高いときには、リセット電圧VDD♯を低くして出力特性の安定化を図るように、リセット電圧VDD♯を動的に変化させることができる。
[実施の形態2の変形例2]
図10は、本実施の形態2の変形例2に従う受光素子からの信号出力構成を説明する回路図である。
図10を図8と比較して、実施の形態2の変形例2に従う構成では、図8に示したリセット電圧生成回路300に代えて、リセット電圧生成回路302が設けられる点が異なる。リセット電圧生成回路302は、NMOSトランジスタ310と、電流源320と、可変電流源330と、抵抗素子340とを有する。リセット電圧生成回路302は、リセット電圧生成回路300および301の構成を組合せたものである。トランジスタ310のゲートは、可変電流源330および抵抗素子340の接続ノードNaと接続されている。図10のその他の部分の回路構成は図8と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
実施の形態2の変形例2に従う構成では、リセット電圧配線305に出力されるリセット電圧VDD♯は、実施の形態2の変形例1(図9)と同様に、可変電流源330の電流量に応じて変化することが可能である。さらに、実施の形態2に従う構成(図8)と同様に、ウェハプロセスのばらつきや温度によって各MOSトランジスタのVthが変動しても、VDD♯(VDD−Vth)と各MOSトランジスタのVthとの電圧差は確保できるので、安定的な出力特性を得ることができる。すなわち、実施の形態2およびその変形例1による効果の両方を享受することが可能となる。
[実施の形態2の変形例3]
図11は、本実施の形態2の変形例3に従う受光素子からの信号出力構成を説明する回路図である。
図11を図8と比較して、実施の形態2の変形例3に従う構成では、リセット電圧VDD♯を発生するためのリセット電圧生成回路300の構成が、画素アレイ6内に設けられる。
図11に示されるように、リセット電圧生成回路300を構成するNMOSトランジスタ310および電流源320が、各列に対応して配置されている。そして、リセット電圧配線305は、列に沿った方向に延在して配置される。リセット電圧生成回路300の構成および動作については、実施の形態2で説明したのと同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
実施の形態2の変形例2に従う構成では、リセット電圧配線305を列方向に沿って配置するので、行方向に沿った配線を増加させる必要がない。したがって、列に沿った方向の寸法が制約される場合でも、実施の形態2による効果を享受することが可能である。
[実施の形態3]
実施の形態3では、実施の形態1およびその変形例と、実施の形態2およびその変形例と組合せた場合の構成について説明する。
図12は、本実施の形態3に従う受光素子からの信号出力構成を説明する回路図である。
図12を図3と比較して、実施の形態3では、図3に示した実施の形態1に従う信号出力構成において、リセットトランジスタ110が、リセット電圧配線305とFD130との間に設けられている。リセット電圧配線305に対しては、実施の形態2およびその変形例で説明したリセット電圧生成回路300♯によって生成されたリセット電圧VDD♯が供給される。なお、実施の形態3でのリセット電圧生成回路300♯は、実施の形態2およびその変形例で説明したリセット電圧生成回路300、301および302を包括的に表記するものである。すなわち、リセット電圧生成回路300♯としては、リセット電圧生成回路300、301および302のいずれかを適用することができる。
このような構成とすることにより、実施の形態3では、実施の形態1に従う信号出力回路の構成によって享受される効果に加えて、電源電圧VDDを昇圧する機構を設けることなく、FD130のリセット電位の変動を抑制して、出力特性を向上することができる。
さらに、リセット電圧VDD♯を用いてFD電位をリセットすることにより、第2の出力回路205からの出力電圧VOUT、すなわち、出力ノード210に出力される電位の上限をVDD−Vthに抑えることができる。この結果、第2の出力回路205の出力特性を改善できる。
第2の出力回路205の電源電圧がVDDであるときに、出力ノード210の電位がVDDに近付き、電流源35を構成するトランジスタが非飽和領域に達すると、電流源35の電流が下がり始める。電流源35の電流が下がると、第1の出力回路を構成する増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150(第1の出力回路)に流れる電流が増加する。この結果、第1の出力回路と、第2の出力回路との間で電流量に差が生じてしまうため、実施の形態1で説明した効果が薄まってしまい、出力特性の改善に悪影響を及ぼす可能性がある。すなわち、受光素子10の受光量が小さい領域(すなわち、低照度での撮像時)での出力特性が低下することが懸念される。したがって、実施の形態1に従う構成では、第2の出力回路205については、電源電圧VDDよりも高い電圧によって駆動することが好ましい。
これに対して、実施の形態3に従う構成では、出力ノード210の上限電位もVDD−Vthに止まるので、受光素子10の受光量によらず出力トランジスタ170の電流量を確保できる。したがって、電源電圧VDDを昇圧する機構を設けることなく、実施の形態1に従う信号出力構成における低照度での撮像時の出力特性を改善することが可能となる。
図17は、実施の形態3による効果を説明するためのシミュレーション結果を示すグラフである。
図17においても、単一のFD130を共有する2個の受光素子10a,10bからの読出を、リセット動作を挟んで実行したときにおけるFD電位および出力電圧VOUTの挙動を、各トランジスタの素子定数を設定して回路シミュレータによって求めた。そして、図16と同様に、受光素子10a,10bの受光レベルを同一に設定して、図15,16と同様に定義される出力レベルVLを、受光素子10aからの読出時および受光素子10aからの読出時のそれぞれにおいてシミュレーションした。
さらに、受光素子10bについて、入力(受光量)および出力レベルVLのA/D換算値間の積分リニアリティ(INL:積分非直線性)を算出した。INLはLSB(Least Significant Bit)を単位として表される。
図17の横軸には、受光素子10a,10bの受光レベルが示され、縦軸には、受光素子10bの入力/出力間すなわち、リセット動作後の受光素子10bの読出動作における受光量および出力レベルVLの間のINLが示される。INL=0のとき入力/出力は完全に線形であり、線形性が低下すると|INL|が大きくなる。
比較例(図2)および実施の形態3(図12)の各々において、リセットトランジスタ10の制御電圧Vg(リセット信号RSTのHレベル電位)をVDDとした時の上記読出動作がシミュレーションされる。点線で示された特性線510は、比較例(図2)の構成におけるシミュレーション結果を示し、実線で示された特性線515は、実施の形態3(図12)の構成によるシミュレーション結果を示す。
比較例(図2)では、図16と同様に、受光素子10aの受光量に応じてリセット後のFD電位が変動する。FD電位が変わると増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150のバイアス状態も変動するため、FD電位に対する出力レベルVLの線形性も低下する。この結果、入力/出力間の線形性は低下する。特に、中程度の受光量の領域において、INL=−30〜−35(LSB)程度まで線形性が低下している。
これに対して、実施の形態3(図12)では、リセットトランジスタ110の制御電圧Vg(Vg=VDD)がリセット電圧VDD♯よりも高いので、受光素子10aの受光量が大きくてもFD電位を十分にリセットすることができる。さらに、第2の出力回路(出力トランジスタ160,170)によって、増幅トランジスタ140および選択トランジスタ150のバイアス状態の変化を出力電圧VOUTに反映することができる。
この結果、実施の形態3(図12)では、入力/出力間の線形性は改善される。特に、中程度の受光量の領域においても、INLを−5(LSB)以下とできており、INLを約1/6に低減することができる。
図18には、比較例(図2)および実施の形態3(図12)の間での増幅トランジスタ140によるソースフォロワ回路のゲイン(利得)の比較が示される。
図18のシミュレーションでは、比較例(図2)および実施の形態3(図12)の各々において、図17と同様に読出動作をシミュレーションした際の、増幅トランジスタ140のゲート電圧(FD電位)の変化に対するソース電圧の変化の比率を、ソースフォロワ回路のゲインとして求めた。
図18から理解されるように、比較例(図2)ではソースフォロワ回路のゲインが85%に止まるのに対し、実施の形態3(図12)では、リセット後のFD電位が安定するためゲインが97%まで上昇する。これにより、ソースフォロワ回路のゲイン理論値(1.0=100%)に近い状態で、各受光素子10a,10bからの読出動作を実行できることが理解される。
[実施の形態3の変形例1]
実施の形態1の変形例に従う信号出力構成についても実施の形態2およびその変形例と組合せることが可能である。
図13には、本実施の形態3の変形例1に従う受光素子からの信号出力構成を説明する回路図である。
図13を図4と比較して、実施の形態3の変形例1では、図4に示した実施の形態1の変形例1に従う信号出力構成において、リセットトランジスタ110が、リセット電圧配線305とFD130との間に設けられている。リセット電圧配線305に対しては、リセット電圧生成回路300♯によって生成されたリセット電圧VDD♯が供給される。
このような構成とすることにより、実施の形態3の変形例1では、実施の形態1の変形例1に従う信号出力回路の構成によって享受される効果に加えて、電源電圧VDDを昇圧する機構を設けることなく、FD130のリセット電位の変動を抑制して、出力特性を向上することができる。
さらに、実施の形態3と同様に、電源電圧VDDを昇圧する機構を設けることなく、実施の形態1の変形例1に従う信号出力構成における低照度での撮像時の出力特性を改善することが可能となる。
[実施の形態3の変形例2]
図14には、本実施の形態3の変形例2に従う受光素子からの信号出力構成を説明する回路図である。
図14を図5と比較して、実施の形態3の変形例2では、図5に示した実施の形態1の変形例2に従う信号出力構成において、リセットトランジスタ110が、リセット電圧配線305とFD130との間に設けられている。リセット電圧配線305に対しては、リセット電圧生成回路300♯によって生成されたリセット電圧VDD♯が供給される。
このような構成とすることにより、実施の形態3の変形例2では、実施の形態1の変形例2に従う信号出力回路の構成によって享受される効果に加えて、電源電圧VDDを昇圧する機構を設けることなく、FD130のリセット電位の変動を抑制して、出力特性を向上することができる。
さらに、実施の形態3と同様に、電源電圧VDDを昇圧する機構を設けることなく、実施の形態1の変形例2に従う信号出力回路における低照度での撮像時の出力特性を改善することが可能となる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。