JP6137876B2 - 冷凍機用スクロール圧縮機 - Google Patents

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Description

この発明は、油枯渇による摺動部磨耗を防止するようにした冷凍機用スクロール圧縮機に関するものである。
従来、冷凍サイクル装置に用いられるスクロール圧縮機は、冷凍能力により小型から大型のものまで多種の容量のものが使い分けられている。また、近年のインバータ式モータの採用により、機器の小型化や圧縮機能力による使用幅の拡大化が進んでいる。一般に、空調機用スクロール圧縮機においてはインバータ式モータの使用により低速から高速までの運転幅が拡がり、比較的小型の圧縮機でも高能力域までカバ−できるようになった。この傾向は冷凍機用スクロール圧縮機においても同様であるが、小型の空調機用スクロール圧縮機を用いる能力域での市場需要はさほど大きくなく、現状ほどのインバータ化は進んでいなかった。しかし、省エネ需要が高まるにつれて、この分野においても、圧縮機の小型化、高能力化の要望が高まり、インバータによる高速運転が必要となった。そして、スクロール圧縮機の密閉容器内の底部には潤滑油が貯留されており、密閉容器内に配備されたポンプを利用して潤滑油を汲み上げ、圧縮機駆動軸に軸方向に設けられた給油穴を通して圧縮機内の各摺動部に潤滑油を供給するようになっている。潤滑油は、摺動部を潤滑した後に再び油溜めに戻されるようになっている。
一方で、下記の特許文献1に記載されているように、潤滑油が圧縮機外に流出しないよう圧縮機内だけを循環させているものも知られている。この場合、渦巻歯を有する圧縮部では、圧縮過程における圧縮室からの漏れを少なくして圧縮効率を上げるために、渦巻同士の幾何隙間を潤滑油によって封止させている。そのため、一般的には必要最小限の潤滑油を圧縮室内に取り込ませる構造にされている。密閉容器内では底部の潤滑油を吸い上げて各軸受へ常に循環させている。他方、モータ等の回転による油の攪拌や吸入ガスによる内部の油の巻上げが起こるため、潤滑油が吸入ガスと共に圧縮室に取り込まれてしまう。圧縮室に取り込まれる量は潤滑油の保有量・粘度、吸入ガスの流速・密度、圧縮室までの流入経路、密閉容器内空間容積など、様々な要因により変化する。そのため、必要分の潤滑油量を如何に調整して圧縮部に供給するかが、従来からの大きな課題であった。油上り量を抑えるため、冷凍サイクルを循環して戻ってきた吸入ガスに含まれる油の分離と、吸入ガスによる新たな潤滑油の巻上げ防止により、圧縮室に取り込まれる油量を低下させる様々な方法が用いられている。例えば、吸入ガスを壁面に衝突させたり吸入ガスの流速を一気に低下させたりして、油分離を誘発させているものや、モータ部品等の回転体を覆って巻上げを防止するようにしたものがある。
特開平11−287191号公報
ところで、冷凍機用スクロール圧縮機は、吸込み圧が空調用スクロール圧縮機と比べて低いため、圧縮室内において軸方向にかかる荷重が小さくなる。この荷重が小さくなると、摺動部側の空間と圧縮室内とを封止している揺動スクロールの下面とフレーム上面のスラスト支持面との隙間から油が流入しやすくなり、空調用スクロール圧縮機ではさほど問題とならなかった油漏れによる油上り量の増加が、冷凍機用スクロール圧縮機では大きくクローズアップされる。一方で、昨今では圧縮機の更なる使用用途の拡大や高速化による能力増大、小型化が求められている。圧縮機を小型化しようとする場合、圧縮機内での流路が短くなることや、冷媒と潤滑油とを分離する機構を収めることが困難となるため、冷媒とともに潤滑油が圧縮機外に流出しやすくなる。また、圧縮機外に油分離装置を装着しようとすると、コストアップや装置の大型化につながる。圧縮機を高速回転化させようする場合、圧縮機回転軸とポンプとが連結されて同じ回転数で回っているため、潤滑油の循環量が増加するとともに、高速回転による油の巻上げ量が増加するため、小型化の場合と同様に高速になるほど油上がり量が増加につながる。また、運転範囲拡大により蒸発温度を−20℃→−45℃→−60℃と低くしようとする場合、吸入圧力が下がり冷媒循環量が落ちる。しかしながら、回転数は変わらず油の巻上げ量は同じであることから、結果的に油上り率は上がってしまう。
以上のような問題点により、油上り率が大きくなって冷凍サイクル内の潤滑油循環量が増加すれば、圧縮機内の潤滑油量が減少する。これにより、最悪の場合は圧縮機内の潤滑油が枯渇する問題が生じる。結果として摺動部に異常磨耗が生じたり焼付きによりロックしたりして、圧縮機の運転が不能となってしまう。また、圧縮室の渦巻歯のシール性、耐磨耗性などの信頼性を確保するためにはある程度の潤滑油の供給が必要となる。しかしながら、圧縮された冷媒と共に潤滑油も密閉容器の吐出管から冷凍サイクルの構成配管に流出し、その冷凍サイクルを循環してしまう。この油上りにより冷凍サイクルの潤滑油循環量が増加すると、放熱器や蒸発器での熱交換率が低下し、冷凍サイクル効率が低下するという問題が生じる。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、小型化、高速化に対応した圧縮機で幅広い運転条件においても、摺動部への給油が不安定になることなく規定範囲内の油上り率を得るものであって、且つ規定範囲内の油上り率を確保しつつ、圧縮室の信頼性を確保するために必要な量の潤滑油を供給することのできる冷凍機用スクロール圧縮機の提供を目的とする。
この発明に係る冷凍機用スクロール圧縮機は、本体シェルと、前記本体シェル内の上部に固定され、下面に渦巻歯が形成された台板を有する固定スクロールと、前記固定スクロールの渦巻歯とともに圧縮室を構成する渦巻歯が上面に形成された台板を有する揺動スクロールと、前記揺動スクロールの下面を支持して旋回させる回転駆動軸と、前記揺動スクロールを摺動自在に載置するスラスト支持面、および前記回転駆動軸を回動自在に軸支する軸受部を有していて前記本体シェルの内周面に固定されたフレームと、を備え、前記回転駆動軸は、前記本体シェル内の下部に設けられた油溜めの潤滑油を前記圧縮室、前記スラスト支持面および前記軸受部に供給する回転駆動軸給油穴を有し、前記渦巻歯の歯先端部は、装着用溝を備え、前記装着用溝にはチップシールが配置され、前記揺動スクロールの前記渦巻歯または前記固定スクロールの前記渦巻歯において、最外周部分の少なくとも一部の歯高は、前記最外周部分より内周側の前記渦巻歯よりも高く設定され、前記揺動スクロールの前記フレームに対する傾きθが0.00070よりも小さくなるように構成されているものである。
この発明の冷凍機用スクロール圧縮機は、フレームのスラスト支持面に対する揺動スクロールのシール面の傾きを規制する傾き規制構造を備えているので、固定スクロールの渦巻歯または揺動スクロールの渦巻歯と、これらと摺接する相方スクロールの台板の歯受面との隙間を適切に設定することができる。これにより、適量の潤滑油を圧縮室に供給することができ、その結果として摺動部側の空間と圧縮室内とのシール性を高めつつ、圧縮室を形成している渦巻歯の磨耗防止を図ることができる。また、幅広い運転範囲における油上り率を、好適とされる規定油上り率以下にできるので、油枯渇による摺動部や圧縮室内の異常磨耗を防止できるという効果も得られる。
この発明の実施の形態1における冷凍機用スクロール圧縮機の縦断面図である。 前記冷凍機用スクロール圧縮機の要部を示す部分縦断面図である。 前記冷凍機用スクロール圧縮機の要部を示す図であって、(a)は揺動スクロールとフレームを示す縦断面図、(b)は(a)に対応した平面図である。 前記冷凍機用スクロール圧縮機の固定スクロールの渦巻歯と揺動スクロールの渦巻歯との組み合わせ状態を示す平面図である。 前記冷凍機用スクロール圧縮機において主軸の回転数とこの主軸にかかるモーメントとの関係を示すグラフの図である。 前記冷凍機用スクロール圧縮機において主軸の回転数一定での蒸発温度と主軸にかかるモーメントとの関係を示すグラフの図である。 前記冷凍機用スクロール圧縮機において主軸の回転数一定での吐出容量と油上がり率との関係を示すグラフの図である。 前記冷凍機用スクロール圧縮機において主軸の回転数最大値での揺動スクロールの傾きとスラスト支持面での油もれ量との関係を示すグラフの図である。 前記冷凍機用スクロール圧縮機において主軸の回転数最大値での、揺動スクロールの台板の外径に対するシール幅の割合とスラスト支持面での油もれ量との関係を示すグラフの図である。 この発明の実施の形態2における冷凍機用スクロール圧縮機の要部を示す部分縦断面図である。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における冷凍機用スクロール圧縮機の縦断面図、図2は摺動部と圧縮室の断面図で潤滑油と冷媒の流れを示すものである。
各図において、この実施形態に係る冷凍機用スクロール圧縮機は、密閉容器である本体シェル1と、本体シェル1内の上部に固定された固定スクロール2と、固定スクロール2の軸心Cに対して偏心した公転中心を有し固定スクロール2との間で圧縮室15を形成する揺動スクロール3と、電動機14を構成する固定子4および回転子5と、回転子5が取り付けられて回転駆動される主軸6と、揺動スクロール3を公転運動させるために主軸6の上端面6Aにおける軸心Cから偏心した位置に立設された偏心軸部8と、本体シェル1内に冷媒ガスを導入するための吸入管10と、圧縮室15で圧縮された冷媒ガスを外部に吐出するための吐出管11と、固定スクロール2の内周面にボルト等で固定されて揺動スクロール3の台板3Aを摺動自在にスラスト支持するフレーム12と、本体シェル1底部の油溜め22に溜まった潤滑用の油Yを主軸6内および偏心軸部8内に形成された給油穴20を通して主軸16や軸受17,18などの各摺動部に吸い上げるポンプ13と、本体シェル1内の下部に固定されたサブフレーム16と、を有している。
ポンプ13はサブフレーム16に取り付けられており、サブフレーム16の平面中央部は主軸6の下端を回動自在にスラスト支持する下部軸受部17となっている。前記のフレーム12は、揺動スクロール3を摺動自在に載置するスラスト支持面12A、および回転駆動軸6の上部を回動自在に軸支する上部軸受部(本発明の軸受部の例)18を有している。前記した固定スクロール2と揺動スクロール3は、それぞれ、ほぼ同形状の渦巻歯2B,3Bを有しており、互いに180度位相がずれた位置となるように組み合わせられる。これらの揺動スクロール3および固定スクロール2はいずれも、重くて強度が高い鉄系材料で構成されている。また、固定スクロール2と揺動スクロール3の渦巻歯2B,3Bの中心は、互いに偏心した位置に配置されている。揺動スクロール3の台板3Aにおける下面3Eには、下向きに突出して平面視円環状に形成されたシール面3Dが形成されている。このシール面3Dは、フレーム12のスラスト支持面12Aに摺動自在に支持される。
固定スクロール2の台板2Aの歯受面と揺動スクロール3の渦巻歯3Bの歯先端部3Cとの間、または固定スクロール2の渦巻歯2Bの歯先端部2Cと揺動スクロール3の台板3Aの歯受面との間には、隙間δが形成される。この隙間δの存在により、熱膨張による台板2A,3Aの歯受面と歯先端部3C,2Cとの干渉や歯先端部2C,3Cの異常磨耗が防止されるようになっている。また、圧縮室15の内圧とスラスト荷重による、揺動スクロール3の台板3A下面の外周部寄りにあるシール面3Dとフレーム12のスラスト支持面12Aとの摺動により、摺動部側の空間19と圧縮室15内との間を液封するように構成されている。斯かる構成により、潤滑油が圧縮室15内に流入することが極力防止され、且つ、揺動スクロール3が台板3A下面の外周部寄りでフレーム12上を摺動するようになっている。
また、傾き規制構造24は、揺動スクロール3の渦巻歯3Bの歯先端部3C、および揺動スクロール3の歯先端部3Cが摺動可能に接する固定スクロール2の台板2Aから構成されていて、前記揺動スクロールまたは固定スクロールの各渦巻歯における、少なくとも最外周部分の一部または全部の渦巻歯の歯高が、前記最外周部分から内周側の渦巻歯よりも高く設定されているそして、図3に示すように、揺動スクロール3のシール面3Dには、給油溝31が形成されている。フレーム12のスラスト支持面12Aには、揺動スクロール3の旋回により給油溝31と間欠的に対向する給油穴30が形成されている。これらの給油穴30および給油溝31は、揺動スクロール3の旋回により圧縮室15内と摺動部側の空間19とを間欠的に連通させて圧縮室15内へ適当量の油Yを供給するものであり、渦巻歯2B,3Bの歯先端部2C,3Cの異常磨耗等を防止して圧縮機信頼性を確保することができる。
次に動作について説明する。上記のように構成された冷凍機用スクロール圧縮機において、電動機14が通電されると、回転子5にトルクが発生して主軸6が回転する。これにより、主軸6の偏心軸部8に支持された揺動スクロール3が回転運動を始め、オルダムリング(図示省略)により回転運動が公転運動に変わる。そして、図4に示すように、揺動スクロール3と固定スクロール2とからなる圧縮室15が外周側から中央部に移動しながら圧縮室容積が次第に小さくなる。これにより、吸入管10から取り込まれた冷媒ガスは圧縮され、中央部の吐出ポート9から吐出管11を経て本体シェル1外へ吐出される。
一方、油Yは本体シェル1底部の油溜め22からポンプ13を介して主軸6内の給油穴20を流れて各軸受17,18、摺動部側の空間19などへ供給され、フレーム12内に形成されている排油孔(図示省略)から油溜め22に戻るようになっている。また、摺動部側の空間19に溜まった油Yは、渦巻歯3Bにかかるスラスト荷重によって、摺動部側の空間19と圧縮室15との隙間からの漏れが防止されている。更に、揺動スクロール3の台板3Aの歯受面に形成された給油溝31の公転運動およびフレーム12の給油穴31の存在によって、摺動部側の空間19が圧縮室15と間欠的に連通し、圧縮室15内に適量の油Yを供給して潤滑させるようになっている。
そして、渦巻部3Bを有する揺動スクロール3は圧縮室15の内圧によって下向き(スラスト方向)へ押し付けられながら公転している。但し、1回転中のトルク変動および荷重中心の変化により、揺動スクロール3のシール面3Dとフレーム12のスラスト支持面12Aとの間には、これらの撓みや加工精度の平面度差などにより、微小な隙間が発生し、その隙間に油が入り込むことによっても潤滑性が保たれている。ところで、揺動スクロール3の運転中の公転挙動を測定した文献等は少ない。そのために、揺動スクロール3下面のシール面3Dにおいてスラスト荷重とつり合うように発生する油膜の反力については、油膜の形成状態が複雑であるために実験的検証に頼らざるを得ない。
本体シェル1内を吸入圧力雰囲気とする低圧シェル方式の圧縮機の場合、油溜め22や主軸6を駆動する電動機14が吸入圧雰囲気にあり、油Yや電動機14が高温の冷媒に曝されないという利点がある。しかしながら、圧縮室15内に供給された油Yは、その全量が吐出圧まで昇圧された冷媒ガスとともに本体シェル1外の冷凍サイクルへ流出してしまう。そのために、油上りによる冷凍サイクルの潤滑油循環量が非常に多くなり、本体シェル1内での潤滑油枯渇を招きやすくなる。要するに、摺動部側の空間19と圧縮室15内との間の油漏れ防止には、シール性と潤滑油供給性といった、相反する性能同士を両立させる必要がある。
圧縮機の信頼性を持つためには、定常運転中に、揺動スクロール3のバランスが悪くなって水平な姿勢を維持できない所謂「転覆状態」にさせないよう、スラスト負荷面積と、転覆状態を引き起こし得る負荷を発生させる要因となる揺動スクロール3自身の重量と、公転半径と、歯高とを制限した設計が必要となる。また、INJ機種(インジェクション口付き機種)では、スラスト荷重を増大させて転覆しないような設計を行う必要がある。
従来、隙間の設定として、渦巻歯2B,3Bの中心部の温度が上がることと、圧力によって渦巻歯2B,3B同士が変形することとの和をもって、渦巻歯の中心部にのみ段差が設けられている。渦巻歯2B,3Bの歯先端部2C,3Cと、対面する台板3A,2Aの各歯受面との隙間については、歯先端部2C,3Cの装着用溝にチップシール(シール材)が配されてチップシールが運転中に圧力差によって装着用溝から浮き上がって洩れ隙間を埋めるため、特に規定されていなかった。前記構成のスクロール圧縮機が冷凍機用として用いられる場合、蒸発温度が−45℃、−60℃近傍で使用されるために吸入圧力が低くなる。そのため、容積形圧縮機であるスクロール圧縮機は、外周部にある圧縮室の圧力が低くなり、スラスト荷重が空調用スクロール圧縮機として使用する場合よりも小さくなってしまう。
このような状態で高速運転して揺動スクロール自体の遠心力が増加しても、空調用スクロール圧縮機では揺動スクロールと固定スクロールとの隙間が大きくても問題とならない。しかしながら、そのような場合、この実施形態の冷凍機用スクロール圧縮機は既述の「転覆状態」になることがあった。その結果、揺動スクロール3とフレーム12との摺動部分における隙間が大きくなり、摺動部側の空間19に溜まっていた油Yが圧縮室15内へ流入して油上り率が増加したり、揺動スクロール3が傾いたりすることで、歯先端部3Cに偏磨耗が発生してしまうおそれがあった。また、油上り率が増加して圧縮室15内の油Yが枯渇すると、最悪の場合に圧縮機が運転不能となる恐れがあった。その一方で、固定スクロール2の台板2Aの歯受面と揺動スクロール3における渦巻歯3Bの歯先端部3Cのうち、特に外周部にある歯先端部3Cとの隙間δを管理することで、この問題を解決できることがわかった。これらの知見は、以下に示す実験により確認された。
まず、図5のグラフに示すように、圧力一定の条件下で主軸6の回転数を上げていくと、揺動スクロール3自体にかかる遠心力とガス荷重によるモ−メントとの和が増加する。そして。その和がスラスト荷重を超えたところで、揺動スクロール3が転覆状態となり、油上り率が増加することがわかった。
他方で、図6のグラフに示すように、主軸6の回転数が一定の条件下において、揺動スクロール3自体の遠心力は一定であるが、蒸発温度の低下に伴いガス荷重による遠心力も減少する。しかしながら、運転範囲を拡大するために蒸発温度を下げていくと、揺動スクロール3自体の遠心力とガス荷重による遠心力との和が、スラスト荷重よりも大きくなる領域があった。そして、この領域に蒸発温度が入ったときに、揺動スクロール3が転覆状態になることが判明した。
そして、図7のグラフに示すように、圧縮機の吐出容量が小さくなると、高速運転で増大傾向となる油巻上げによる油上り率は下がった。しかしながら、スラスト支持面12Aでの油漏れによる油上り率が増加し、規定油上り率を超えてしまった。逆に、吐出容量が大きくなるにつれてスラスト支持面12Aの油漏れによる油上り率は下がるが、巻上げによる油上り率が増加するので、こちらも規定油上り率を超えるという結果となった。
これらの実験結果より、油上りの要因と考えていた油の巻上げ量を抑えていくと、揺動スクロール3の台板3Aとフレーム12のスラスト支持面12Aとの隙間からの油もれ量が大きくなってくることが判明した。
一方、図8に示すように、主軸6の回転数を最大値にして、転覆条件におけるスラスト支持面12Aでの油漏れ量を観察した。油漏れ量はフレーム12に対する揺動スクロール3の傾きθに比例すると考えていたが、図8のグラフに示すように、傾きθが0.0007radよりも小さくなるあたりから、スラスト支持面12Aでの油漏れ量が一気に下がることが判明した。
また、図9のグラフに示すように、揺動スクロール3の台板3Aの外径φAに対するシール幅L2の割合と、油漏れ量との関係について実験してみると、その割合L2/φAが0.10より大きくなると、スラスト支持面12Aでの油漏れ量は少量となって安定することがわかった。
これらの実験より、揺動スクロール3の傾きθを抑える事で、目標とする規定油上り率以下に油上り率を収めることができる。また、揺動スクロール3の転覆状態を抑える手段として隙間δを狭くする方法を採ることにより、従来よりも小型化、高能力化、高速運転の各限界条件を見いだすことが可能となる。
すなわち、このスクロール圧縮機は、前記した隙間δの調整が、渦巻歯3B,2Bの全面の歯高を調整するのではなく、渦巻歯3B,2Bの外周部のみ中央部よりも歯高を高くするという簡素な構成だけで、揺動スクロール3の転覆を抑制することができる。このように渦巻歯3B,2Bの歯高を外周部のみ高くしても、渦巻歯3B,2Bはいずれも中央部が高温となり熱膨張率も大きくなるので、揺動スクロール3の渦巻歯3Bと固定スクロール2の渦巻歯2Bとの接触が外周部に偏ることはない。従って、渦巻歯3B,2Bの歯先端部3C,2Cの磨耗に対しても有利な構成となり得る。
また、前記の作用、効果に伴って、この冷凍機用スクロール圧縮機は、吸入ガスに含まれる油を分離するための衝突板や流路を長くするなどの別個新たな油分離機構が不要であるから、製造コストの増加につながることがなく、簡便な隙間調整のみで油上り量を低減できる。そして、この冷凍機用スクロール圧縮機は、油上り量を変えることなく主軸6の回転数の上限値を高めることができる。従って、使用範囲の拡大が可能になるのである。
実施の形態2.
次に、最適な隙間を設定する例を示す。すなわち、図10に示すように、隙間をδとし、揺動スクロール3の台板3Aの外径をφAとし、揺動スクロール3の中心Cから渦巻き外周までの距離をL1とし、摺動部側の空間19と圧縮室15内の空間とを封止するシール面3Dの径方向のシール幅をL2とし、固定スクロール2に対する揺動スクロール3の傾きをθとする。更に、揺動スクロール3の台板3Aの外径φAをφA=100mm以上130mm以下にし 、かつ、台板3Aの外径φAに対するシール幅の割合:L2/φAを0.1以上0.2以下にすると、傾きθは次の式(1)で表される。
θ=δ/(φA/2 + L1) ・・・(1)
式(1)から、隙間δは次の式(2)のように変形される。
δ=θ×(φA/2 + L1) ・・・(2)
ここで、揺動スクロール3の傾きθを適切な0.00070rad以下の値に設定すると、隙間δは次の式(3)となる。
δ≦0.00070×(φA/2 + L1) ・・・(3)
以上のように、この冷凍機用スクロール圧縮機は、揺動スクロール3の渦巻歯3Bの歯先端部3Cと固定スクロール2の台板2Aとの隙間δ、または、固定スクロール2の渦巻歯2Bの歯先端部2Cと揺動スクロール3の台板3Aとの隙間δが、台板3Aの半径φA/2と、揺動スクロール3の中心部Cから渦巻歯3Bの最外周までの距離L1との和に、0.0007を乗じた値以下に設定されている。このように、揺動スクロール3の歯先端部3Cと固定スクロール2の台板2Aの歯受面との隙間δが適宜に設定されているので、油上り率を調整することができる。 また、揺動スクロール3および固定スクロール2はいずれも鉄系材料で構成されているので、重くて強度が高いという利点を有している反面、アルミニウムなどのように軽い材料で構成した場合よりも元々傾きを生じやすい。しかしながら、本発明を適用したことにより、鉄系材料で構成されていたとしても、傾きθを抑えて規定油上り率未満にすることができている。
尚、上記では、揺動スクロール3の渦巻歯3Bの歯先端部3C、およびその歯先端部3Cが摺動可能に接する固定スクロール2の台板2Aから、傾き規制構造24を構成したが、本発明はそれに限られない。例えば、固定スクロール2の渦巻歯2Bの歯先端部2C、およびその歯先端部2Cが摺動可能に接する揺動スクロール3の台板3Aから、本発明の傾き規制構造を構成することも可能である。その場合、固定スクロール2の渦巻歯2Bにおける、少なくとも最外周部分の一部または全部の渦巻歯の歯高は、最外周部分から内周側の渦巻歯よりも高く設定される。
1 本体シェル
2 固定スクロール
2A 台板
3A 台板
2B 渦巻歯
2C 歯先端部
3 揺動スクロール
3B 渦巻歯
3C 歯先端部
3D シール面
3E 下面
4 固定子
5 回転子
6 主軸
6A 上端面
8 偏心軸部
9 吐出ポート
10 吸入管
11 吐出管
12 フレーム
12A スラスト支持面
13 ポンプ
14 電動機
15 圧縮室
16 サブフレーム
17 下部軸受部
18 上部軸受部
19 摺動部側の空間
20 給油穴
21 シール部
22 油溜め
23 給油機構
24 傾き規制構造
C 軸心
Y 油
φA 外径
L1 距離
L2 シール幅
δ 隙間
θ 傾き

Claims (6)

  1. 本体シェルと、
    前記本体シェル内の上部に固定され、下面に渦巻歯が形成された台板を有する固定スクロールと、
    前記固定スクロールの渦巻歯とともに圧縮室を構成する渦巻歯が上面に形成された台板を有する揺動スクロールと、
    前記揺動スクロールの下面を支持して旋回させる回転駆動軸と、
    前記揺動スクロールを摺動自在に載置するスラスト支持面、および前記回転駆動軸を回動自在に軸支する軸受部を有していて前記本体シェルの内周面に固定されたフレームと、を備え、
    前記回転駆動軸は、
    前記本体シェル内の下部に設けられた油溜めの潤滑油を前記圧縮室、前記スラスト支持面および前記軸受部に供給する回転駆動軸給油穴を有し、
    前記渦巻歯の歯先端部は、
    装着用溝を備え、前記装着用溝にはチップシールが配置され、
    前記揺動スクロールの前記渦巻歯または前記固定スクロールの前記渦巻歯において、最外周部分の少なくとも一部の歯高は、
    前記最外周部分より内周側の前記渦巻歯よりも高く設定され
    前記揺動スクロールの前記フレームに対する傾きθが0.00070よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする冷凍機用スクロール圧縮機。
  2. 前記揺動スクロールの前記台板における下面に、下向きに突出した平面視円環状に形成されていて前記フレームの前記スラスト支持面に摺動自在に支持されるシール面を、備えている請求項1に記載の冷凍機用スクロール圧縮機。
  3. 前記シール面は、
    前記回転駆動軸の前記給油穴から供給される前記潤滑油を通す給油溝を備え、
    前記スラスト支持面は、
    前記揺動スクロールの旋回により前記給油溝と間欠的に連通する給油穴を備える、請求項2に記載の冷凍機用スクロール圧縮機。
  4. 前記揺動スクロールの前記台板の外径φAは、
    100mm以上130mm以下に設定され、
    前記シール面は、
    前記揺動スクロールの前記台板の外径φAに対する前記揺動スクロールにおける径方向のシール幅L2の割合L2/φAが0.1以上0.2以下に設定されている請求項1から請求項のいずれか一項に記載の冷凍機用スクロール圧縮機。
  5. 前記揺動スクロールおよび前記固定スクロールが、鉄系材料で構成されている請求項1から請求項のいずれか一項に記載の冷凍機用スクロール圧縮機。
  6. 前記本体シェル内に冷媒ガスを導入するための吸入管と、
    前記固定スクロールの中央部に吐出ポートと、を備え、
    前記吸入管から前記本体シェル内に導入された前記冷媒ガスが前記圧縮室で圧縮され前記吐出ポートから吐出される低圧シェル構造である、請求項1から請求項の何れか一項に記載の冷凍機用スクロール圧縮機。
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