以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置である複写機に適用した一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態の画像形成装置に限らず、例えばインクジェット方式の画像形成装置などにも適用することができることは言うまでもない。
図1は、本実施形態に係る複写機100を示す模式図である。
この複写機100は、自動原稿搬送装置59や、原稿読取部58や画像形成部50や給紙部52などを備えている。自動原稿搬送装置59は、原稿トレイ59aに載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して原稿読取部58上のコンタクトガラスに自動給紙するものである。原稿読取部58は、自動原稿搬送装置59によってコンタクトガラス上に搬送された原稿を読み取るものである。画像形成部50は、給紙部52から給紙された記録材であるシートに対して、原稿読取部58によって読み取った原稿画像に基づいて画像を形成する画像形成手段である。給紙部52は、複数枚のシートが積層されたシート束1を収容していて、このシート束1からその最上位に位置する最上位シート1aを画像形成部50に給紙する。
画像形成部50は、潜像担持体として感光体61のまわりに、帯電装置62、現像装置64、転写装置54、感光体クリーニング装置65等を備えている。また、画像形成部50は、感光体61にレーザー光63を照射するための光書込ユニット(不図示)、シート上のトナー画像を定着する定着装置55等を備えている。
上記構成の画像形成部50では、感光体61の回転とともに、まず帯電装置62で感光体61の表面を一様に帯電する。次いで、パーソナルコンピュータやワードプロセッサ等から入力される画像データや、原稿読取部58によって読み取った原稿の画像データに基づく光書込ユニット(不図示)からのレーザー光63を照射して感光体61上に静電潜像を形成する。その後、現像装置64によりトナーを付着させ静電潜像を可視像化することで感光体61上にトナー画像を形成する。
一方、給紙部52は、シートを1枚づつ分離して搬送して、レジストローラ53に突き当てて止める。そして、画像形成部50のトナー画像形成のタイミングに合わせて、レジストローラ53に突き当てて止めたシートを、感光体61と転写装置54とが対向する転写部に送り出す。転写部では、感光体61上のトナー画像が供給されたシートに転写される。トナー画像が転写されたシートは、定着装置55によりトナー画像を定着後、排紙ローラ対56により排紙トレイ57へ排出される。一方、トナー画像転写後の感光体61の表面は、感光体クリーニング装置65で残留トナーを除去して清掃して再度の画像形成に備える。
図2は、給紙部52の概略構成を示す斜視図であり、図3は、給紙部52を示す模式図であり、図4は、吸着分離ユニット110の要部構成を示す図である。
給紙部52は、複数枚のシートを積載して収容するシート材収容部としての給紙カセット11と、給紙カセット11上の複数枚のシートからなるシート束1から最上位に位置する最上位シート1aを分離して搬送するシート搬送装置200とを含んで構成されている。
図3に示すように、給紙カセット11には、積層された複数枚のシート束1を積載する底板7を有している。給紙カセット11の底部と底板7との間には、底板7を支持する支持部材8が回動自在に取り付けられている。また、図2に示すように、給紙部52には、シート束1の最上位シート1aが、所定の位置に到達したことを検知するシート検知手段140が設けられている。
シート検知手段140は、装置本体に設けられた軸142に回転自在に支持されたフィラー144と、透過型光学センサ143とで構成されている。支持部材8を不図示の駆動モータにより回動させ、底板7を上昇させると、底板7に積載されたシート束1が上昇し、最上位シート1aがフィラー144と当接する。このとき、透過型光学センサ143の受光部143aは、発光部143bからの光を受光している。さらに、底板7を上昇させると、フィラー144が、発光部143bの光を遮り、受光部143aが光を受光しなくなる。これにより、シート束1の最上位シート1aが、所定の位置に到達したことが検知され、支持部材8の回転を停止する。
シート搬送装置200は、吸着分離ユニット110、この吸着分離ユニット110を揺動させる揺動手段たる揺動機構120、及び、吸着ベルト2を無端移動させる駆動機構130などを備えている。吸着分離ユニット110は、図4に示すように、下流側張架ローラ5と上流側張架ローラ6とに張架される吸着ベルト2を備えている。
吸着ベルト2は、108[Ω・cm]以上の抵抗を有する50[μm]程度の厚さのポリエチレンテレフタレートからなる表層と、アルミ蒸着により形成された106[Ω・cm]以下の抵抗を有する導電層とを有する2層構造となっている。
吸着ベルト2を上記のような2層構造とすることで、導電層を接地された対向電極として使用することができ、吸着ベルト2に電荷を与える帯電手段としての帯電部材3を、吸着ベルト2の表層に接した位置であればどこでも設けることができる。また、吸着ベルト2の幅方向両側端縁の内側には、寄止め用のリブ23が設けられており、下流側張架ローラ5や上流側張架ローラ6の両側端面とリブ23とが係合し、吸着ベルト2の寄りを防止している。
下流側張架ローラ5は、抵抗値が106[Ω・cm]の導電性ゴム層が表面に設けられ、上流側張架ローラ6は金属ローラである。下流側張架ローラ5及び上流側張架ローラ6は、ともに接地されている。
下流側張架ローラ5は、吸着ベルト2からシートを曲率により分離するのに適した小径にされている。すなわち、下流側張架ローラ5の径を小さく設定して曲率を大きくすることにより、吸着ベルト2に吸着されて搬送されたシートが、下流側張架ローラ5から離れて搬送方向下流側のガイド部材10により形成される搬送路Hに入ることができるようになっている。
また、図4に示すように、下流側張架ローラ5の軸5aは、ハウジング20に回転自在に支持されている。上流側張架ローラ6の軸6aは、ハウジング20のハウジング本体部20aに対してシート搬送方向に摺動可能に保持された軸受22に回転支持されている。軸受22は、スプリング21によりシート搬送方向上流側へ付勢されている。これにより、上流側張架ローラ6が、シート搬送方向上流側に付勢され、吸着ベルト2に張力を付与している。
図5は、ハウジング20の分解図である。ハウジング20に設けられた下流側張架ローラ5の軸5aを軸支する軸孔を有する2つの軸孔部20bのうち一方は、ハウジング20のハウジング本体部20aとは別体で設けられている。この別体の軸孔部20bは、固定用ビス20cによって、その一方の軸孔部20bをハウジング本体部に取り付けている。
下流側張架ローラ5の軸5aにハウジング20を組み付け時には、ハウジング本体部に対して一方の軸孔部20bを取り外し、他方の軸孔部20bに下流側張架ローラ5の軸5aを軸支させる。その後、取り外している一方の軸孔部20bに下流側張架ローラ5の軸5aを軸支させつつ、前記一方の軸孔部20bをハウジング本体部20aに固定用ビス20cで取り付け固定する。
図2、図3に示すように、吸着分離ユニット110は、吸着ベルト2を揺動自在に保持するためのブラケット12がベルト幅方向両端に設けられている。各ブラケット12は、上流側張架ローラ6よりもシート搬送方向上流側に設けられた支持軸14に回転自在に支持されている。これにより、吸着分離ユニット110は、後述する揺動機構120により、吸着位置と搬送位置との間を、支持軸14を支点にして揺動することができる。
なお、吸着位置とはシート束1の最上位シート1aを吸着ベルト2に吸着させる位置であり、搬送位置とは吸着ベルト2に吸着した最上位シート1aを搬送する位置である。
各ブラケット12には、長穴12aが設けられており、この長穴12aに上流側張架ローラ6の軸6aが貫通している。これにより、上流側張架ローラ6は、ブラケット12に対して移動可能に保持される。一方、下流側張架ローラ5の軸5aは、ブラケット12に設けられた不図示の孔に貫通し、下流側張架ローラ5は、ブラケット12に対して移動不能に保持される。図3に示すように、吸着分離ユニット110が搬送位置にあるとき、上流側張架ローラ6の軸6aは、長穴12aの下端面41aに突き当たっている。
ブラケット12に設けられた長穴12aは、上流側張架ローラ6の軸6aが長穴12a内を移動しても、上流側張架ローラ6の回転中心と下流側張架ローラ5の回転中心との距離が変化しないように、下流側張架ローラ5の回転中心を中心とする円弧形状となっている。その結果、上流側張架ローラ6が、長穴12a内を移動しても、吸着ベルト2の張力が変化することがない。
通常、吸着ベルト2の張力は、5[N]以下でも下流側張架ローラ5及び上流側張架ローラ6と吸着ベルト2との間でスリップすることなく、吸着ベルト2を回転駆動して、吸着ベルト2に吸着した最上位シート1aを搬送することが可能である。
一方で、密着力の高いシートなど、特殊な条件のシートを搬送する場合には、下流側張架ローラ5及び上流側張架ローラ6と吸着ベルト2との間にてスリップが起こることが考えられる。そのため、上流側張架ローラ6の表面や下流側張架ローラ5の表面の吸着ベルト2に対する摩擦係数を高くして、スリップを生じにくくしておくことが好ましい。
図6は、吸着ベルト2を回転駆動する駆動機構130の概略構成図である。
各ブラケット12を回転自在に支持する支持軸14の一端には、従動第1プーリ26aと、駆動第2プーリ26bとが固定されている。下流側張架ローラ5の一端には従動第2プーリ25が固定されており、従動第1プーリ26aと従動第2プーリ25とには、従動タイミングベルト28が巻き掛けられている。
また、支持軸14よりもシート搬送方向上流側には、駆動モータ24が設けられており、駆動モータ24のモータ軸24aには、駆動第1プーリ27が固定されている。駆動第1プーリ27と駆動第2プーリ26bとには、駆動タイミングベルト29が巻き掛けられている。
駆動モータ24が駆動すると、駆動タイミングベルト29及び従動タイミングベルト28を介して下流側張架ローラ5が回転駆動する。これにより、吸着ベルト2が回転駆動し、上流側張架ローラ6が、吸着ベルト2の内周面の摩擦により従動回転する。
また、本実施形態においては、ブラケット12を支持する支持軸14を中継して、下流側張架ローラ5に駆動モータ24の駆動力が伝達されるようになっている。このように構成することにより、後述するように、吸着分離ユニット110は、支持軸14を支点にして揺動するため、吸着分離ユニット110が揺動しても、下流側張架ローラ5と支持軸14との距離が変動しない。よって、従動タイミングベルト28の張りは維持されて良好に下流側張架ローラ5に駆動力を伝達することができる。
なお、駆動モータ24から上流側張架ローラ6に駆動力が伝達されるように駆動機構130を構成し、吸着ベルト2を回転させる駆動ローラとして上流側張架ローラ6を用いても良い。
また、図2、図3に示すように、給紙部52のシート搬送方向下流側には、ブラケット12を揺動させる揺動手段としての揺動機構120が設けられている。揺動機構120は、各ブラケット12のシート搬送方向下流側端部に形成された第1駆動伝達部としてのラックギヤ部13と、回転軸16に固定され、ラックギヤ部13にそれぞれ噛み合う第2駆動伝達部材たるピニオンギヤ15とを有している。また、揺動機構120は、揺動モータ30を備えている。回転軸16の一端には、揺動モータ30のモータ軸30aに固定されたモータギヤ31と噛み合う従動ギヤ32が設けられている。
また、各ブラケット12に対応させて設けられた各ピニオンギヤ15を、同一の軸部材である回転軸16に固定することにより、揺動モータ30で回転軸16を回転させることで、各ピニオンギヤ15を回転させることができる。これにより、一つの揺動モータ30で、ベルト幅方向両端に設けられた2つのピニオンギヤ15を回転駆動することができ、部品点数を削減することができ、装置を安価にすることができる。また、簡単な構成で、ベルト幅方向両端に設けられたラックアンドピニオンの駆動を同期することができる。
ラックギヤ部13は、支持軸14を中心としたR形状となっている。ブラケット12に形成されたラックギヤ部13は、吸着分離ユニット110の揺動時、支持軸14を中心にして揺動する。よって、ラックギヤ部13を、支持軸14を中心としたR形状とすることにより、吸着分離ユニット110の揺動時もラックギヤ部13とピニオンギヤ15との噛み合いを維持することができる。また、ブラケット12のシート搬送方向下流側端部にラックギヤ部を形成することにより、ブラケット12と別体のラックギヤをブラケット12に取り付ける場合に比べて、部品点数を削減でき、構成を簡素化することができる。また、揺動機構120のラックアンドピニオンのうち、装置側にピニオンを設けることにより、ピニオンへ駆動を伝達するための構成を、ピニオンを吸着分離ユニット110に設けた場合に比べて、簡単にすることができる。
このような構成の揺動機構120では、揺動モータ30を駆動することにより、各ピニオンギヤ15が回転し、ラックギヤ部13が、シート束1に対して接離する方向へ移動する。これにより、各ブラケット12が、支持軸14を支点にして揺動する。
また、各ブラケット12は、補強部材70により連結固定されている。各ブラケット12を、補強部材70により連結固定することにより、一方のブラケット12と他方のブラケット12とを一体的に揺動させることができる。これにより、ブラケット揺動時に各ブラケット12に保持された吸着ベルト2が、捩れてしまうのを抑えて、吸着ベルト2に吸着した最上位シート1aが、吸着ベルト2から分離するのを抑制することができる。
図7に示すように、吸着ベルト2の表面には、吸着ベルト2の表面を帯電させる帯電手段としてのローラ状の帯電部材3が当接している。帯電部材3は吸着分離ユニット110に回転可能に設けられており、吸着ベルト2に対する位置は一意的に決定している。また、帯電部材3は、交流を発生する帯電電源4に接続されている。
なお、本実施形態では、帯電手段としてローラ状の帯電部材3を用いているが、図8に示すようなブレード状の電極部材103を用いてもよい。電極部材103をブレード状にすることで、ローラ状の帯電部材3に比べ、ピッチ幅の小さい電荷パターンを形成することが可能となる。これにより、積載されたシート束の最上位シート1aに対する吸着力増加が早く、また、2枚目以降のシートに作用する吸着力の減少が早くなる。そのため、分離動作に要する時間の短縮が図れる点で有利である。また、交番した帯電間隔を小ピッチ化しやすく、吸着ベルト2に微小な波うちなどがあっても、安定した帯電を行えなうことができる。
次に、本実施形態のシート搬送装置200を用いた基本的なシート搬送動作について、図9を用いて説明する。
図9(a)に示すように、通常、底板7は下降位置にあり、吸着分離ユニット110は吸着位置にある。まず、給紙信号が入ると、揺動モータ30(図2参照)を駆動して、ピニオンギヤ15を図中時計回りに回転駆動させ、支持軸14を支点して図中反時計回り(シート束1から離れる方向)に吸着分離ユニット110を揺動させる。そして、吸着分離ユニット110が搬送位置まで揺動したら、揺動モータ30の駆動を停止する。
図9(b)に示すように、吸着分離ユニット110が搬送位置で停止したら、駆動モータ24(図2参照)を駆動させて、吸着ベルト2を無端移動させる。次に、無端移動する吸着ベルト2に帯電部材3を介して帯電電源4により交番電圧を印加する。そして、吸着ベルト2の表面に交流電源周波数と吸着ベルト2の周動速度に応じたピッチ(ピッチは5[mm]〜15[mm]程度とするのがよい)で交番する電荷パターンを形成する。帯電電源4は交流の他、直流を高低交互の電位に変化させたものでもよく、矩形波、正弦波などが考えられる。本実施形態では、吸着ベルト2の表面に対して4[kV]の振幅を持った矩形波を印加している。
吸着ベルト2への帯電が完了したら、図9(c)に示すように、吸着ベルト2の回転を停止するとともに、下降位置で待機していた底板7の上昇を開始する。また、これと前後して、揺動モータ30を逆回転させ、ピニオンギヤ15を図中反時計回りに回転させて、支持軸14を支点にして図中時計回り(シート束1に近接する方向)に吸着分離ユニット110を揺動させる。
底板7が上昇し、吸着分離ユニット110が下降していくと、シート束1の最上位シート1aが、吸着ベルト2を介して上流側張架ローラ6に当接する。さらに、底板7を上昇させ、吸着分離ユニット110を下降させていくと、上流側張架ローラ6が、シート束1により押し上げられ、長穴12aの下端面41aに突き当たっていた上流側張架ローラ6は、長穴12aに案内されながら、上方へ移動していく。また、底板7の上昇に伴い、フィラー144が図中反時計回りに回転する。シート束1の最上位シート1aが所定の位置にくると、このフィラー144が、透過型光学センサ143の発光部143bの光を遮る。これにより、透過型光学センサ143がシート束1の最上位シート1aが所定の位置に到達したことを検知し、底板7の上昇を停止する。
また、吸着分離ユニット110が、吸着位置に到達したら、揺動モータ30の回転を停止する。揺動モータ30がステッピングモータの場合は、回転角度(パルス数)に基づいて揺動モータ30を制御することにより、吸着分離ユニット110を吸着位置に精度よく停止することができる。揺動モータ30がDCモータの場合は、駆動時間に基づいて揺動モータ30を制御することにより、吸着分離ユニット110を吸着位置に精度よく停止することができる。
図9(d)に示すように、底板7の上昇が停止し、吸着分離ユニット110の下降(揺動)が停止すると、吸着ベルト2のシート束1と対向する領域が、シート束1の最上位シート1aと当接する。吸着ベルト2が最上位シート1aと当接すると、誘電体であるシートには吸着ベルト2の表面の電荷パターンにより形成される不平等電界により、Maxwellの応力が働き、シート束1の最上位シート1aが吸着ベルト2に吸着する。
図9(d)に示す状態にて所定時間待機し、吸着ベルト2に最上位シート1aが吸着したら、揺動モータ30を駆動して、ピニオンギヤ15を時計回りに回転駆動させ、吸着分離ユニット110を、支持軸14を支点にして図中反時計回りに揺動させる。すると、下流側張架ローラ5は、ブラケット12とともにシート束1から離間する方向へ移動する。
一方、上流側張架ローラ6は、自重により、シート束1の上面から動かず、ブラケット12に対して相対的にシート束方向へ移動する。これにより、シート束上面に接触させた吸着ベルト2の表面部分がシート束上面に対して傾斜するように、その表面部分がシート束上面から離間する。これにより、シートが曲げられて、吸着ベルト2の表面部分に吸着している最上位シート1aの部分が、吸着ベルト2の揺動動作に伴ってシート束上面からめくられる。この際、吸着ベルト2に吸着したシートに復元力が働き、最上位シート1aのみを吸着ベルト2に吸着させ、二番目のシート1bをシートの復元力により分離させることができる。
吸着分離ユニット110が、支持軸14を支点にしてさらに図中反時計回りに回動すると、上流側張架ローラ6の軸6aが、長穴12aの下端面41aに突き当たる。このように、上流側張架ローラ6が、長穴12aの下端面41aに突き当たった状態から、さらに吸着分離ユニット110を回動させると、上流側張架ローラ6もブラケット12とともに移動し、上流側張架ローラ6が、シート束1の上面から離間する。
図9(e)に示すように、吸着分離ユニット110がシートを搬送する搬送位置に到達すると、揺動モータ30の駆動を停止する。そして、駆動モータ24を駆動して、吸着ベルト2を無端移動させて、吸着ベルト2に吸着している最上位シート1aを、搬送ローラ対9へ向けて搬送する。吸着ベルト2に静電吸着した最上位シート1aの先端が、吸着ベルト2の下流側張架ローラ5の巻き回し部分に到達すると、曲率分離により吸着ベルト2から分離し、ガイド部材10に案内されながら、搬送ローラ対9へ向けて移動する(図9(e)参照)。
搬送ローラ対9と吸着ベルト2との線速は同一にされており、搬送ローラ対9がタイミングを取って間欠駆動されているような場合は、吸着ベルト2も間欠駆動されるように駆動モータ24を制御する。また、駆動機構130に電磁クラッチを設け、電磁クラッチを制御することにより、吸着ベルト2の駆動を制御してもよい。
また、吸着ベルト2の帯電は、吸着ベルト2のシートの分離位置から、搬送ローラ対9の長さ分だけ行うようにして、それ以降は、帯電部材3で吸着ベルト2を除電するようにしてもよい。これによりシートは、搬送ローラ対9へ搬送された後は吸着ベルト2の影響を受けずに、搬送ローラ対9の搬送力のみによって搬送される。また、吸着ベルト2を除電することによって、2番目のシート1bが、離間した吸着ベルト2に静電吸着するのを抑制することができる。
また、本実施形態においては、ブラケット12に長穴12aを設けて、この長穴12aに上流側張架ローラ6の軸6aを保持しているが、以下の構成であればよい。すなわち、上流側張架ローラ6が、ブラケット12に対して、下流側張架ローラ5を中心にして揺動可能に保持されている構成であること。また、吸着分離ユニット110が給送位置にあるとき、吸着ベルト2のシート束の上面に対する傾斜角度が、所定の角度となるよう、上流側張架ローラ6を支持する構成であること。この2つの構成を備えていればよい。
電荷パターンによる用紙吸着力は最上位シート1aにのみ作用し、二番目のシート1b以下の紙には作用しない。本給紙方式ではピックアップ手段と用紙との間の摩擦力を利用しないので、吸着ベルト2とシート束1との接触圧は充分小さくすることができるので、摩擦による重送を起こさない。
吸着ベルト2は、最上位シート1aの後端が上流側張架ローラ6の対向位置に達する前に、シート束1より離間され二番目のシート1bが吸着ベルト2に吸着されないようにしている。
また、本実施形態においては、ピニオンギヤ15とラックギヤ部13とのギヤの噛み合いにより、吸着分離ユニット110を揺動させる。よって、吸着位置から給送位置への揺動および給送位置から吸着位置の揺動いずれも、揺動モータ30の駆動力により行うことができる。これにより、吸着分離ユニット110の自由落下の速度よりも早く、吸着分離ユニットを、吸着位置まで下降させることができる。よって、1枚目のシート搬送後、すばやく、次のシートの吸着動作を開始することができ、シート間隔を短くすることができる。これにより、生産性を高めることができる。
また、本実施形態においては、揺動機構120を、吸着分離ユニット110の揺動の支点である支持軸14から離れたシート搬送方向下流側に設けている。よって、吸着分離ユニット110のシート搬送方向下流側を、ピニオンギヤ15とラックギヤ部13との噛み合いにより支持することができる。その結果、吸着分離ユニット110が、支持軸14と、揺動機構120とにより両持ち支持され、吸着分離ユニット110を片持ち支持する場合に比べて、吸着分離ユニット110の振動を抑制することができる。これにより、吸着ベルト2に吸着した最上位シート1aが、吸着分離ユニット110の振動により、吸着ベルト2から分離してしまうのを抑制することができる。また、吸着分離ユニット110の揺動の支点である支持軸14から最も離れたシート搬送方向下流側端部で、吸着分離ユニット110に駆動力を伝達して、吸着分離ユニット110を揺動させている。このように、駆動力を伝達する箇所を、支持軸14から離すことで、てこの原理により支持軸側(吸着分離ユニット110のシート搬送方向上流側)で駆動力を伝達する場合に比べて、小さい負荷で、吸着分離ユニット110の揺動を行うことができる。これにより、揺動モータ30の大型化を回避することができ、装置の大型化を抑制することができる。また、ピニオンギヤ15とラックギヤ部13との噛み合い部の磨耗を抑制することができる。
また、吸着分離ユニット110のシート搬送方向下流端部にピニオンギヤ15とラックギヤ部13を設けることで、以下の利点も得ることができる。すなわち、図10に示すように、吸着分離ユニット110の重心Pよりも、ピニオンギヤ15とラックギヤ部13との噛み合い位置Kをシート搬送方向下流側に設けることができるという利点である。噛み合い位置Kが、吸着分離ユニット110の重心Pよりもシート搬送方向上流側にあると、支持軸14と揺動機構の噛み合いにより支持されていない自由端側(噛み合い位置よりもシート搬送方向下流側)に吸着分離ユニット110の重心Pが位置してしまう。その結果、吸着分離ユニット110を揺動させたとき、吸着分離ユニット自身のイナーシャの影響などにより、吸着分離ユニット110の自由端(シート搬送方向下流側端部)が、噛み合い位置Kから重心位置Pの距離に応じて弾性振動してしまう。また、重心位置Pが自由端側にあるため、吸着分離ユニット110が弾性振動した際の振幅も大きくなり、振動の収束も遅くなってしまう。
しかし、本実施形態のように、噛み合い位置Kを吸着分離ユニット110の重心Pよりもシート搬送方向下流側に設けることにより、吸着分離ユニット110の弾性振動を、両端支持の弾性振動にでき、振動の振幅を小さく、かつ収束を早くすることができる。
また、ピニオンギヤ15のラックギヤ部13との噛み合いにより吸着分離ユニット110の位置が保持されるので、揺動モータ30を精度よく制御することにより、吸着分離ユニットの位置を精度よく制御することができる。これにより、吸着分離ユニット110を給送位置に精度よく位置させることができる。特に、本実施形態においては、揺動機構120をシート搬送方向下流側に設けて、揺動の支点である支持軸14から離れた位置に設けている。よって、支持軸14側(シート搬送方向上流側)に設けた場合に比べて、1ピッチあたりの吸着分離ユニット110の移動量を少なくすることができる。これにより、より高精度な吸着分離ユニット110の位置制御を行うことができる。その結果、吸着分離ユニット110を狙いの給送位置に精度よく位置させることができ、搬送ローラ対9のニップにスムーズに最上位シート1aを搬送することができる。これにより、最上位シート1aの先端が、搬送ローラ対9に突き当って、そのときの振動などにより吸着ベルトから分離してしまうのを防止することができる。
また、ラックギヤ部13と、ピニオンギヤ15とをベルト幅方向両端に設けることにより、吸着分離ユニット110のベルと幅方向両端が、ラックギヤ部13とピニオンギヤ15との噛み合いにより支持される。これにより、吸着分離ユニット110の捩れを抑制することができる。また、図11に示すように、ベルト幅方向一端側にのみ、ラックアンドピニオン機構を設けた構成であってもよい。
なお、吸着分離ユニット110を揺動させる揺動機構としては、図12や図13に示すような構成を採用してもよい。図13は、吸着ベルト2などは、図示を省略している。
図12、図13に示す揺動機構120は、ラックアンドピニオンのうち、ピニオンギヤ145を、ブラケット12に設け、ラックギヤ146を装置本体に設けている。図13に示すように、ピニオンギヤ145は、下流側張架ローラ5の軸5aに回転自在に支持されている。ピニオンギヤ145には、プーリ部145aが設けられており、このプーリ部145aと、支持軸14に設けられた従動プーリ47とに第1タイミングベルト48が巻きつけられている。また、この従動プーリ47と、揺動モータ30のモータ軸に設けられた駆動プーリ310とに第2タイミングベルト49が巻きつけられている。これにより、揺動モータ30の駆動力が支持軸14を中継して、ピニオンギヤ145に伝達することができる。よって、上述した駆動機構130と同様、吸着分離ユニット110の揺動によって、第1タイミングベルト48が弛むことなくなり、ピニオンギヤ145に揺動モータ30の駆動力を良好に伝達することができる。
ピニオンギヤ145を吸着分離ユニット110に設ける構成は、吸着分離ユニットの揺動量が多い場合に有利な構成である。これは、ラックギヤは、吸着分離ユニットの揺動量に応じて大きくする必要があるが、ピニオンギヤは、吸着分離ユニットの揺動量に関係なく一定の大きさにすることができる。よって、吸着分離ユニットの大型化を回避することができ、吸着分離ユニットの重量増加による揺動時の負荷の増大を抑制することができる。よって、揺動量が多い場合には、図12、図13に示す揺動機構を採用することで、吸着分離ユニット110の揺動スピードを高速化することができ、生産性を高めることができる。
また、揺動機構120を、図14、図15に示すような構成としてもよい。すなわち、吸着分離ユニット110が給送位置にあるとき、シート搬送方向における吸着分離ユニット110の重心の位置Pと、揺動機構120のラックギヤ部13とピニオンギヤ15との噛み合い位置Kとを同じ位置となる構成である。この構成にするため、図15に示すように、ブラケット12のシート搬送方向下流端部に段差部を設け、この段差部にラックギヤ部13を形成している。
吸着分離ユニット110が給送位置で停止したとき、吸着分離ユニット110のイナーシャにより弾性振動する。特に、生産性を高めるために、吸着分離ユニット110を高速で揺動させた場合、吸着分離ユニット110のイナーシャの影響が大きくなり、弾性振動が大きくなりやすい。吸着分離ユニット110が給送位置で弾性振動すると、吸着ベルト2に吸着した最上位シート1aが、吸着ベルト2から分離するおそれがある。
一方、この図14、図15に示す構成では、吸着分離ユニット110が給送位置にあるとき、吸着分離ユニット110の重心の位置Pと、揺動機構120のラックギヤ部13とピニオンギヤ15との噛み合い位置Kとを同じ位置にしている。従って、吸着分離ユニット110が給送位置で停止したときの弾性振動を最も効果的に抑制することができ、最上位シート1aが吸着ベルト2から分離するのを抑制することができる。
さらには、図16や図17に示すような構成を採用してもよい。
図16、図17において、吸着分離ユニット110を揺動させる揺動機構は、ブラケット112、回転ギヤ113、回動軸114、回転ギヤ115及び回転モータ117などを有している。
下流側張架ローラ5と上流側張架ローラ6とのローラ軸と平行で、且つ、繰り出し方向とは反対側の位置に回動軸114を設ける。そして、下流側張架ローラ5と上流側張架ローラ6との両端部を回転可能に支持するブラケット112により、吸着分離ユニット110を上下に揺動させる。回動軸114の軸方向一端側には、回転モータ117のモータ軸116に設けられた回転ギヤ115と噛み合う、回転ギヤ113が設けられている。そして、回転モータ117の回転駆動方向に応じてブラケット112を上下方向に回動させる。
また、図18に示すように、上流側張架ローラ6を、ブラケット12に対して移動不能し、シートの厚みなどの条件に応じて、吸着分離ユニットの給送位置を変更してもよい。
上流側張架ローラ6を、ブラケット12に対して、下流側張架ローラ5を中心にして揺動可能に保持し、給送位置に吸着分離ユニット110があるとき、上流側張架ローラ6を長穴12aの下端41に突き当てた構成においては、次の不具合がある。すなわち、給送時の吸着ベルト2のシート束1に対する傾斜角度が常に一定となってしまうという不具合である。そのため、例えば、厚紙など、シートのコシが強い場合などのとき、最上位シート1aが、吸着ベルト2から剥がれるおそれがある。
一方、図18においては、上流側張架ローラ6を、ブラケット12に対して移動不能に支持している。これにより、紙厚などの条件に応じて、吸着分離ユニット110の揺動範囲を異ならせて吸着分離ユニット110の給送位置を異ならせることができる。この場合、ピニオンギヤ15を固定する回転軸16が、吸着分離ユニット110の揺動範囲(図18の囲われた範囲)内にあると、給送位置によっては、回転軸16が、給送の邪魔となる。よって、この場合は、図18に示すように、回転軸16を、吸着分離ユニット110の揺動範囲外に設けるのが好ましい。また、図19に示すように、揺動モータ30をベルト幅方向両端に設けてもよい。このように構成しても、揺動機構120が、給送の邪魔となるようなことはない。
なお、揺動機構120は、上記構成に限らず、ブラケット12の下流側端部に係合するワイヤーと、このワイヤーを巻き上げる巻上げ装置とで揺動機構120を構成してもよい。
また、図20に示すように、上流側張架ローラ6と下流側張架ローラ5とを、各ブラケット12にシート束上面に対して垂直方向に移動可能に保持するよう構成してもよい。具体的には、図20に示すように、各ブラケット12に上流側長穴12aと、下流側長穴45とを設ける。上流側長穴12aに上流側張架ローラ6の軸6aを貫通させ、下流側長穴45に下流側張架ローラ5の軸5aを貫通させる。また、下流側張架ローラ5は、バネ46によりシート束側へ付勢する。図20に示すように、吸着分離ユニット110が給送位置にあるとき、上流側張架ローラ6の軸6aは、上流側長穴12aの下端41に突き当っており、下流側張架ローラ5の軸5aは、下流側長穴45の下端に突き当っている。また、上流側張架ローラ6が突き当る上流側長穴12aの下端41は、下流側張架ローラ5が突き当る下流側長穴45の下端よりもシート束1側に設けられている。
図21は、図20に示すシート搬送装置200のシート搬送動作について説明する図である。
図21(a)に示すように、通常、底板7は下降位置にあり、吸着分離ユニット110は、吸着位置にあり、給紙信号が入ると、揺動モータ30を駆動して、ピニオンギヤ15を図中時計回りに回転駆動させ、吸着分離ユニット110が、給送位置まで揺動させる。
次に、図21(b)に示すように、駆動モータ24を駆動させて、吸着ベルト2を無端移動させて、吸着ベルト2を帯電させる。帯電が完了したら、図21(c)に示すように、吸着ベルト2の回転を停止するとともに、下降位置で待機していた底板7の上昇を開始する。また、これと前後して、揺動モータ30を逆回転させ、ピニオンギヤ15を図中反時計回りに回転させて、吸着分離ユニット110を、支持軸14を支点にして図中時計回り(シート束に近接する方向)へ揺動させる。底板7が上昇し、吸着分離ユニット110が下降していくと、シート束1の最上位シート1aが、吸着ベルト2を介して上流側張架ローラ6に当接する。さらに、底板7を上昇させ、吸着分離ユニット110を下降させていくと、上流側張架ローラ6が、シート束1により押し上げられ、上流側長穴12aの下端41に突き当っていた上流側張架ローラ6は、上流側長穴12aに案内されながら、上方へ移動していく。また、底板7の上昇に伴い、フィラー144が図中反時計回りに回転する。そして、シート束1の最上位シート1aが所定の位置にくると、このフィラー144が、透過型光学センサ143の発光部143bの光を遮り、シート検知手段140がシート束1の最上位シート1aが所定の位置にきたことを検知し、底板7の上昇を停止する。
また、吸着分離ユニット110を、さらに図中時計回り(シート束に近接する方向)へ揺動させると、下流側張架ローラ5が吸着ベルト2を介してシート束1の最上位シート1aと当接する。この状態から、吸着分離ユニット110を、さらに図中時計回り(シート束に近接する方向)へ揺動させると、図21(d)に示すように、下流側張架ローラ5が、バネ46の付勢力に抗してシート束1により押し上げられる。その結果、下流側長穴45の下端に突き当っていた下流側張架ローラ5は、下流側長穴45に案内されながら、上方へ移動する。そして、揺動モータ30の回転を停止し、吸着分離ユニット110の揺動が停止する。
図21(d)に示すように、吸着分離ユニット110の下降(揺動)が停止すると、上流側張架ローラ6、下流側張架ローラ5いずれも、長穴12a,45の下端から離間する。これにより、各張架ローラ5、6の支持が解除され、各張架ローラ5、6は、シート束に載るような状態となり、吸着分離ユニットに支持されていた吸着ベルト2は、シート束1に支持される形となる。これにより、シート束1の最上位シート1aの高さ方向(図中上下方向)の位置が多少ずれていたり、シート束1が、傾いていたりしても、吸着ベルト2のシート束1と対向する領域を、確実にシート束1の最上位シート1aと当接させることができる。吸着ベルト2が最上位シート1aと当接すると、上述と同様、誘電体であるシートには吸着ベルト2の表面の電荷パターンにより形成される不平等電界により、Maxwellの応力が働き、シート束1の最上位シート1aが吸着ベルト2に吸着する。
上述と同様、図21(d)に示す状態にて所定時間待機し、吸着ベルト2に最上位シート1aが吸着させる。吸着ベルト2に最上位シート1aが吸着したら、揺動モータ30を駆動して、ピニオンギヤ15を時計回りに回転駆動させ、吸着分離ユニット110を、支持軸14を支点にして図中反時計回りに揺動させる。すると、シート束に載っていた下流側張架ローラ5は、下流側長穴45の下端に突き当って、ブラケット12に支持され、ブラケット12とともにシート束1から離間する方向へ移動する。上流側長穴12aの下端41は、下流側長穴45よりもシート束側にあるので、このとき、上流側張架ローラ6は、自重によりシート束1の上面から動かず、ブラケット12に対して相対的にシート束1方向へ移動する。これにより、シートが曲げられて、吸着ベルト2の表面部分に吸着している最上位シート1aの部分が、吸着ベルト2の揺動動作に伴ってシート束上面からめくられ、二番目のシート1bをシートの復元力により分離させる。
吸着分離ユニット110が、支持軸14を支点にしてさらに図中反時計回りに回動すると、上流側張架ローラ6が、長穴12aの下端41に突き当たる。このように、上流側張架ローラ6が、長穴12aの下端41に突き当たった状態から、さらに吸着分離ユニット110を回動させると、上流側張架ローラ6もブラケット12に支持される。そして、ブラケット12とともに移動し、上流側張架ローラ6が、シート束1の上面から離間する。図21(e)に示すように、吸着分離ユニット110がシートを搬送する給送位置に到達すると、揺動モータ30の駆動を停止する。そして、駆動モータ24を駆動して、吸着ベルト2を無端移動させて、吸着ベルト2に吸着している最上位シート1aを、搬送ローラ対9へ向けて搬送する。吸着ベルト2に静電吸着した最上位シート1aの先端が、吸着ベルト2の下流側張架ローラ5の巻き回し部分に到達すると、曲率分離により吸着ベルト2から分離し、ガイド部材10に案内されながら、搬送ローラ9対へ向けて移動する(図21(e)参照)。
図20に示すシート搬送装置においては、吸着ベルト2がシート束の上面に支持された状態で、シート束1の最上位シート1aを吸着ベルト2に吸着することができる。これにより、シート束1の最上位シート1aの高さ方向(図中上下方向)の位置が多少ずれていたり、シート束1が、傾いていたりしても、吸着ベルト2のシート束1と対向する領域を、シート束1の最上位シート1aと確実に当接させることができる。従って、吸着ベルト2のシート束1と対向する領域を、シート束1の最上位シート1aと確実に当接させた状態で、最上位シート1aを吸着ベルト2に吸着させることができる。その結果、確実に最上位シート1aを吸着ベルト2に吸着させることができる。さらに、下流側張架ローラ5を、バネ46によりシート束1側に付勢しているので、下流側張架ローラ5を所定の圧力でシート束1の最上位シート1aに当接させることができる。よって、さらに確実に最上位シート1aを吸着ベルト2に吸着させることができる。
また、通常、吸着ベルト2が、シート束1の最上位シート1aと当接する位置から、吸着分離ユニット110を所定量、図中時計回り(シート束側)へ揺動させるだけで、吸着ベルト2を、シート束1の最上位シート1aと確実に当接させることができる。これにより、吸着ベルト2がシート束1の最上位シート1aに当接したことを検知する手段を設けて、その検知手段の検知結果に基づいて、吸着分離ユニットの揺動を制御する必要がない。従って、簡単な制御で吸着ベルト2のシート束1と対向する領域をシート束1の最上位シート1aに当接させることができる。よって、シート搬送装置200の部品点数を削減することができ、シート搬送装置200のコストダウンを図ることができ、かつ、揺動の制御を簡素化することができる。
また、上述では、ブラケット12に下流側長穴45を設けて、下流側長穴45に下流側張架ローラ5の軸5aを保持しているが、以下の構成であればよい。すなわち、シート束1の上面から離間しているとき、下流側張架ローラ5の軸5aが支持され、かつ、下流側張架ローラ5が、ブラケット12に対して、シート束の上面の垂直方向に移動可能な構成である。
また、図20に示す構成では、下流側張架ローラ5を、バネ46によりシート束1側へ付勢しているが、図22に示すように、バネ46は無くてもよい。図22に示すように、バネ46を無くした構成でも、吸着分離ユニット110が、吸着位置にあるとき、吸着ベルト2は、シート束1に支持され、吸着ベルト2のシート束1と対向する領域を確実にシート束1の最上位シートに当接させることができる。
また、図23に示すように、下流側長穴45を、吸着分離ユニット110の揺動の支点である支持軸14を中心とした円弧形状にしてもよい。このように、下流側長穴45を円弧形状にすることにより、以下の利点を得ることができる。すなわち、下流側張架ローラ5がシート束に当接して、ブラケット12に対して相対的にシート束から離間する方向へ移動するとき、下流側長穴45に軸5aが引っ掛かることない。従って、下流側長穴45に軸5aが、下流側長穴45をスムーズに移動させることができるという利点である。また、下流側張架ローラ5がシート束1の最上位シート1aに当接した状態からブラケット12を、図中時計回りに揺動させても、軸5aが、長穴の短手方向側の面に押されて、下流側張架ローラ5のシート搬送方向の位置が変化することがない。これにより、下流側張架ローラの軸5aと、支持軸14との位置関係を一定に維持することができ、従動タイミングベルト28が撓んだり、伸びたりすることがない。
また、図24に示すように、下流側長穴45の上端が、下端に対してシート搬送方向上流側となるよう、下流側長穴45を傾かせてもよい。これにより、下流側張架ローラの軸5aと下流側長穴45の下端との接触点が、下流側張架ローラ5の中心よりも下流側となる。下流側張架ローラの軸5aは、下流側長穴の下端に向けて付勢されているので、吸着分離ユニット110が、給送位置から吸着位置へ揺動するとき、下流側張架ローラ5が、バネによりシート搬送方向下流側に向けて付勢される。吸着分離ユニットの揺動により、下流側張架ローラ5には遠心力が加わり、下流側張架ローラ5をシート搬送方向下流側へ移動しようとする。しかし、バネにより下流側張架ローラ5は、下流側張架ローラ5の中心よりもシート搬送方向下流側の下流側長穴の下端に既に突き当てられているので、移動することがない。その結果、シート束に当接して、下流側張架ローラ5のブラケット12への支持が解除されて、下流側張架ローラに加わっていた遠心力が無くなっても、下流側張架ローラ5が、シート搬送方向上流側へ移動することがない。これにより、下流側張架ローラ5に振動が生じるのを抑制することができる。
また、図25に示すように、吸着分離ユニット110を吸着位置で停止したとき、下流側長穴45が、シート束に対して垂直方向に延びるように構成してもよい。このように構成することにより、下流側張架ローラ5が、バネ46によりシート束1の上面に対して、垂直方向に真直ぐ付勢される。よって、バネ46で良好に吸着ベルト2をシート束側へ付勢することができ、最上位シート1aを良好に吸着ベルト2に吸着させることができる。
図26(a)は吸着分離ユニット110が吸着位置に位置する状態を示す模式図である。図26(b)は吸着分離ユニット110のシート搬送方向と直交するシート幅方向の一端側を上方から見た場合の模式図である。
図26(a)に示すように、吸着位置で吸着ベルト2をシート束1に向かって押す押し部材35A及び押し部材35Bを、吸着ベルト2の内側にシート搬送方向に沿って設けている。押し部材35Aは吸着ベルト2内のシート搬送方向下流側に設けられており、押し部材35Bは吸着ベルト2内のシート搬送方向上流側に設けられている。また、押し部材35A及び押し部材35Bそれぞれの吸着ベルト2との接触面35Af及び接触面35Bfは曲面形状となっている。
図26(b)に示すように、押し部材35A,35Bは、下流側張架ローラ5の軸5aに軸孔部35Ad,35Bdを介して回転可能に設けられている。シート吸着時、押し部材35A,35Bは、押し部材自身の自重と圧縮スプリング36A,36Bの付勢力とにより、吸着ベルト2の内側から外側に向かって吸着ベルト2を押し、吸着ベルト2を最上位シート1aの上面に押し付ける。これにより、吸着ベルト2や最上位シート1aのうねりなどによる隙間が、吸着ベルト2と最上位シート1aとの間に生じるのを抑えて、吸着ベルト2と最上位シート1aとの接触性を確保することができる。
また、吸着ベルト2の内側にシート搬送方向に沿って複数の押し部材35A,35Bを設けることで、次のような効果が得られる。すなわち、従来のような押し部材としてローラ部材を1つ設けた場合よりも、シート搬送方向において押し部材35A及び押し部材35Bによる吸着ベルト2を押す面積を大きくすることができる。よって、押し部材としてローラ部材を1つだけ設けた場合よりもシート搬送方向における吸着ベルト2と最上位シート1aとの接触面積を確保できるので、その分、吸着ベルト2と最上位シート1aとの吸着性を高めることができる。
シート搬送方向における押し部材35A,35Bの吸着ベルト2を押す幅をできるだけ広くとるのが好ましい。例えば、シート搬送方向における押し部材35Aと押し部材35Bとの吸着ベルト2とのシート搬送方向の幅の合計を、下流側張架ローラ5と上流側張架ローラ6とによる吸着ベルト2の張架領域の7割から8割程度にするのが良い。本実施形態の押し部材35A,35Bを板状にしている。これにより、押し部材としてローラ部材を用いた場合よりも、押し部材35による吸着ベルト2を押す面積を、容易に、上記張架領域の7割から8割程度にすることができる。
図27は、押し部材35Aの各種構成やブラケット12への組み付けについて説明する図である。なお、押し部材35Bの各種構成やブラケット12への組み付け方も押し部材35Aと同様であるため、その説明は省略する。
図27に示すように押し部材35Aは、吸着ベルト2に接触させる板状の押し部材本体部35Aaと、押し部材本体部35Aaのシート幅方向両端部に設けられ、ブラケット12の長孔12bで保持される2つの保持部35Abを有している。この2つの保持部35Abそれぞれの上面には、押し部材35Aを弾性的に付勢する弾性部材である圧縮スプリング36Aが設置される、凸形状の圧縮スプリング設置部35Acが設けられている。また、押し部材本体部35Aaのシート搬送方向下流側には、下流側張架ローラ5の軸5aが挿入される軸孔が開けられた2つの軸孔部35Adが設けられている。
軸孔部35Adのうち一方は、押し部材本体部35Aaとは別体で設けられており、固定用ビス35Aeによって、その一方の軸孔部35Adを押し部材本体部35Aaに取り付けている。下流側張架ローラ5の軸5aに押し部材35Aを組み付け時には、押し部材本体部35Aaに対して一方の軸孔部35Adを取り外し、他方の軸孔部35Adに下流側張架ローラ5の軸5aを軸支させる。その後、取り外した一方の軸孔部35Adに下流側張架ローラ5の軸5aを軸支させつつ、押し部材本体部35Aaに前記一方の軸孔部35Adを固定用ビス35Aeで取り付け固定する。
圧縮スプリング36Aの一端は押し部材35Aの凸形状をなす圧縮スプリング設置部35Acに嵌り込んで接続され、圧縮スプリング36Aの他端は吸着分離ユニット110のブラケット12に設けられた長孔12b内の上端面に接続されている。
図28は、ブラケット12の位置に圧縮スプリング36A,36Bを設けた場合の吸着分離ユニット110を上方から見た図である。図28に示すように、吸着分離ユニット110のシート幅方向両端部、言い換えれば、ブラケット12の位置に設けられた圧縮スプリング36A,36Bにより押し部材35A,35Bが付勢される構成となっている。
押し部材35A,35Bのシート幅方向における長さは、シート幅以上であることが好ましい。そのため、本実施形態では、シート幅方向における押し部材35A,35Bの幅は、シート搬送装置200が対応する最大シート幅よりも大きくしている。シート幅方向における押し部材35A,35Bの幅を、シート搬送装置200が対応する最大シート幅よりも大きくすることで、シート搬送装置対応の全サイズのシートに対して、押し部材35A,35Bの効果を発揮することができる。
図29は、各ブラケット12よりもシート幅方向内側で、吸着ベルト2の内側に位置するハウジング20の部分に圧縮スプリング36A,36Bを設けて、圧縮スプリング36A,36Bにより押し部材35A,35Bを押す構成となっている。
圧縮スプリング36A,36Bの設置位置は、図28などに示したように、吸着分離ユニット110のブラケット12などに設ける構成が最も組立てや交換には向いている。しかしながら、シート幅が297[mm]ある、A4ヨコシートやA3タテシートのようなカット紙を吸着しようとする場合、前記カット紙のシート幅方向両端部あるいはその付近を押し可能なように圧縮スプリング36A,36Bを設けたほうが良い。すなわち、吸着ベルト2の内側に位置するハウジング20の部分に圧縮スプリング36A,36Bを設ける。これにより、吸着分離ユニット110のシート幅方向両端部のブラケット12に圧縮スプリング36A,36Bを設けて押すよりも、吸着性確保の効果が高くなる。
押し部材35Aと押し部材35Bとの下降量は、押し部材35Aのほうが押し部材35Bよりも大きい。これは、押し部材35Aと押し部材35Bとのブラケット12に対する突き当て部を、同一または近い高さにすることで可能である。
図30に、吸着時から搬送時まで吸着分離ユニット110の動作について示す。
また、図31においては、吸着分離ユニット110で押し部材35A,35Bや圧縮スプリング36などの図示を省略し、ハウジング20に着目した場合の模式図を示している。詳しくは、図31(a)は吸着分離ユニット110が吸着位置に位置する状態を示す模式図である。図31(b)は吸着分離ユニット110が搬送位置に位置する状態を示す模式図である。
図32においては、吸着分離ユニット110で上流側張架ローラ6やハウジング20や吸着ベルト2などの図示を省略して、押し部材35A,35Bや圧縮スプリング36A,36Bに着目した場合の模式図を示している。詳しくは、図32(a)は吸着分離ユニット110が吸着位置に位置する状態を示す模式図である。図32(b)は吸着分離ユニット110が搬送位置に位置する状態を示す模式図である。
図30(a)に示すように、吸着位置では、押し部材35A,35Bによって吸着ベルト2が最上位シート1aに押し当てられている。このとき、上流側張架ローラ6の軸6a及び押し部材35A,35Bの保持部35Ab,35Bbは、ブラケット12に設けられた長孔12a,12b,12cそれぞれの下端面41a,41b,41cから離間している。
吸着分離ユニット110を吸着位置から搬送位置へ揺動させ持ち上げていくと、下流側張架ローラ5が持上げられ、シート束1の上面から離間していく。一方、上流側張架ローラ6の軸6aと押し部材35A,35Bの保持部35Ab,35Bbがそれぞれ、長孔12a,12b,12c内を下方に移動していく。そのため、吸着ベルト2は、押し部材35A,35Bによりシート束側へ押し込まれ、押し部材35Aの押し位置よりもシート搬送方向上流側は、シート束の上面に接触した状態が維持される。一方、吸着ベルト2の押し部材35Aの押し位置よりも下流側は、シート束上面から浮き上がる。このため、吸着ベルト2に吸着したシートは、押し部材35Aの押し位置より上流側が吸着ベルト2に押さえられながら、押し部材35Aの押し位置より下流側(シート先端側)が吸着ベルト2の吸着力により持上げられるような形となる。その結果、吸着ベルト2に吸着したシートが押し部材35Aの押し位置を支点にして曲げられ、シート束の2番目のシートが分離する。
さらに、吸着分離ユニット110を揺動させていくと、図30(b)に示すように、上流側張架ローラ6の軸6aよりも先に押し部材35A,35Bの保持部35Ab,35Bbが長孔12b,12cの下端面41b,41cに突き当たって保持される。
さらに、吸着分離ユニット110を搬送位置に向けて揺動させ、吸着分離ユニット110が上昇すると、それとともに押し部材35A,35Bが圧縮スプリング36A,36Bの付勢力に抗して上方に移動する。また、このような押し部材35A,35Bの移動とともに、図30(c)に示すように、上流側張架ローラ6の軸6aが、長孔12a内を下方に移動し下端面41aに突き当たって保持されることで、吸着ベルト2の内周面から押し部材35A,35Bが離間する。
本構成例では、吸着位置から搬送位置への吸着分離ユニット110の揺動動作による、上流側張架ローラ6の上方への移動量が押し部材35A,35Bの上方への移動量よりも小さくなっている。そして、このような移動量の差を設けて、上流側張架ローラ6の軸6aと長孔12aの下端面41aとの接触タイミングと、押し部材35A,35Bの保持部35Ab,35Bbと長孔12b,12cの下端面41b,41cとの接触タイミングとを異ならせている。これにより、吸着ベルト2の内周面に対して押し部材35A,35Bが離間するように構成している。つまり、吸着分離ユニット110が吸着位置から搬送位置まで移動する間で、上流側張架ローラ6よりも押し部材35A,35Bが、相対位置で上方に移動することにより、吸着ベルト2の内周面から押し部材35A,35Bが離間する。
吸着ベルト2が回転する際に吸着ベルト内側と押し部材35A,35Bとが接触していると、吸着ベルト2の内周面が押し部材35A,35Bに接触しながらが移動する。このとき、吸着ベルト2−押し部材35A,35B間の摩擦力が、吸着ベルト2−下流側張架ローラ5間の摩擦力よりも大きいと次のような問題が生じ得る。すなわち、吸着ベルト2と押し部材35A,35Bとの間に生じる摩擦力によって吸着ベルト2に回転負荷がかかり、吸着ベルト2と駆動ローラである下流側張架ローラ5との間でスリップが発生して、吸着ベルト2が回転不良を起こしてしまう。
そのため、「押し部材35A,35Bに摺動抵抗が小さい素材を用いる」、「吸着ベルト2に対する押し部材35A,35Bの接触面積を小さくする」、「吸着ベルト2への押し部材35A,35Bの押し力を小さくする」等の対策を施すことが考えられる。しかしながら、この場合、採用可能な構成に制限が発生してしまう。このような制限があると、押し部材35A,35Bで吸着ベルト2を押すことによる、吸着ベルト2と最上位シート1aとの接触性の確保が実現困難になってしまう。
一方、本構成例においては、押し部材35A,35Bの吸着ベルト2に対する接触状態と離間状態とを切り替え可能に構成している。すなわち、吸着分離ユニット110が吸着位置に位置するときには、吸着ベルト2に押し部材35A,35Bを接触させて押し、吸着分離ユニット110が搬送位置に位置するときには、吸着ベルト2から押し部材35A,35Bを離間させる。
これにより、搬送位置で最上位シート1aを搬送するときに、押し部材35A,35Bを吸着ベルト2から離間させた状態で吸着ベルト2を回転させることができる。よって、吸着ベルト2と押し部材35A,35Bとの間で生じる摩擦力の影響を受けず、吸着ベルト2に回転負荷がかからないようにし、吸着ベルト2と下流側張架ローラ5との間でスリップが発生して吸着ベルト2の回転不良が生じてしまうのを抑制できる。したがって、上記制限の発生を起こすことなく、吸着ベルト2と最上位シート1aとの接触性の確保に必要な押し部材35A,35Bの面積と圧力とが設定可能となる。ゆえに、吸着ベルト2の回転不良を抑えつつ、吸着ベルト2と最上位シート1aとの接触性を確保することができる。
ここで、吸着位置から搬送位置へ吸着分離ユニット110を揺動させて、最上位シート1aをシート束1からめくる際、押し部材35A,35Bが吸着ベルト2の内周面から離間するまでの間は、押し部材35A,35Bと吸着ベルト2の内周面との間で擦れが生じる。そして、この擦れにより吸着ベルト2を回転させようとする回転力が発生する。
このとき、吸着ベルト2の内周面と押し部材35A,35Bと摩擦力よりも、吸着ベルト2の内周面と張架ローラ5,6の外周面との摩擦力が低いと、回転力により張架ローラ5,6に対して吸着ベルト2が滑ってしまう。これにより、吸着ベルト2が少し回転する虞がある。このように、吸着ベルト2が回転してしまうと、吸着ベルト2に吸着した最上位シート1aの先端位置が適切な位置からズレてしまい、搬送不良の原因となってしまう。
そのため、本構成例においては、吸着ベルト2の内周面と押し部材35A,35Bとの摩擦力よりも、吸着ベルト2の内周面と下流側張架ローラ5の外周面との摩擦力を高くしている。これにより、吸着ベルト2に回転力が発生したとしても、下流側張架ローラ5に対して吸着ベルト2が滑らず、吸着ベルト2が回転するのを抑制することができる。よって、吸着ベルト2に吸着した最上位シート1aの先端位置が適切な位置からズレてしまい、搬送不良が生じるのを抑制することができる。なお、吸着ベルト2の内周面と上流側張架ローラ6の外周面との摩擦力を、吸着ベルト2の内周面と押し部材35との摩擦力よりも高くしてもよい。また、下流側張架ローラ5、上流側張架ローラ6の両方の吸着ベルト2との摩擦力を、押し部材35の吸着ベルト2との摩擦力よりも高くしてもよい。
押し部材35A,35Bにより吸着ベルト2に吸着した最上位シート1aを曲げながら、シート束の2番目のシートから分離させる構成の場合、シートの剛性によって、良好な分離性が得られるシートの曲がる位置(屈曲点)およびシートの屈曲量が異なる。
図33は、最上位シート1aの屈曲位置と曲率半径について説明する図である。
図33に示すように、シート吸着後に吸着分離ユニット110が上昇することで、押し部材35が吸着ベルト2を押し、吸着ベルト2が、押し部材35の押し位置を支点にして屈曲する。このとき、吸着ベルト2に吸着している最上位シート1aも吸着ベルト2の屈曲に倣って屈曲する。図33(b)に示すように、このときのシートの曲率半径をR、シート先端から押し位置(屈曲位置)までの距離をL、シートのヤング率をE、シートの断面2次モーメントをIとすると、シートの剥がし力は、2EI/(R×L2)で定義される。この剥がし力が、最上位シートと2番目のシートとの紙間密着力Faより大きければ、2番目のシートを最上位シートから剥がすことができる。また、最上位シートの吸着ベルト2との吸着力FNよりも剥がし力が小さければ、最上位シートが吸着ベルト2から剥がれることはない。
厚紙などの剛性が高いシートにおいては、剥がし力=2EI/(R×L2)の分子の値(2EIの値)が大きい。よって、曲率半径Rや分離する部分の長さをLを大きくして、分母の値を大きくしないと、剥がし力が、ベルト吸着力FNよりも大きくなる。従って、最上位シート1aが、吸着ベルト2から剥がれるおそれがある。一方、薄紙などの剛性の低いシートにおいては、上記式の分子値(2EIの値)が小さい。よって、曲率半径Rや分離する部分の長さLを小さくして、分母の値を小さくしないと、剥がし力が、紙間吸着力Faよりも小さくなり、2番目のシート1bが最上位シートから剥がれない。このようにシートの剛性が高なるにつれ、曲率半径Rを大きくしシートを軽く曲げるようにしたり、シートの先端から離れた位置でシートを屈曲させたりする必要がある。
このため、本実施形態では、薄紙などの剛性が低いときと、厚紙などの剛性が高いときとで、上記距離Lを互いに異ならせている。
図34(a)は剛性の低い薄紙を用いた場合での吸着分離ユニット110が吸着位置に位置する状態を示す模式図である。図34(b)は薄紙を用いた場合での吸着分離ユニット110が吸着位置から搬送位置に向かって揺動しているときの状態を示す模式図である。
吸着分離ユニット110を吸着位置から搬送位置に向けて揺動させ、吸着ベルト2を上昇させたとき、最上位シート1aが薄紙の場合、最上位シート1aは押し部材35Aにより屈曲される。このように、薄紙においては、シートの先端付近が、屈曲せしめられ、2番目のシートを良好に最上位シートから剥がすことができる。その後、押し部材35Aがシート束1の上面から離間すると、押し部材35Bの押し位置で吸着ベルト2が屈曲し、吸着ベルト2に吸着している最上位シート1aが、吸着ベルト2の屈曲に倣って屈曲する。しかし、このときの屈曲位置は、押し部材35Aによる屈曲位置よりも、シート先端側から離れた位置であり、薄紙である最上位シート1aにとって、影響はない。すなわち、押し部材35Bの押し位置を支店に薄紙の最上位シートが屈曲しても、最上位シートが、吸着ベルト2から分離することがないのである。なお、ここでいう薄紙とは、画像形成装置で主に使われる範囲の内、坪量が60[g/m2]以下の用紙を想定している。
図35(a)は剛性の高い厚紙を用いた場合での吸着分離ユニット110が吸着位置に位置する状態を示す模式図である。図35(b)は厚紙を用いた場合での吸着分離ユニット110が吸着位置から搬送位置に向かって揺動しているときの状態を示す模式図である。
吸着分離ユニット110を吸着位置から搬送位置に向けて揺動させ、吸着ベルト2を上昇させたときに、最上位シート1aが厚紙の場合、押し部材35Aによって最上位シート1aは屈曲されず、押し部材35Bによって屈曲されるように構成している。具体的には、押し部材35Aを付勢する圧縮スプリング36Aのバネ圧(付勢力)を、厚紙である最上位シート1aが押し部材35Aからの押し力に対して耐える力よりも弱くしている。そのため、吸着ベルト2に吸着するシートが厚紙の場合、押し部材35Aにより吸着ベルトが屈曲しない。従って、厚紙においては、押し部材35Aは、吸着分離ユニット110を吸着位置から搬送位置に向けて揺動するとき、下流側張架ローラ5と同時に持上げられる。よって、この場合は、押し部材35Bの押し位置を支点にして吸着ベルト2が屈曲する。その結果、厚紙の場合においては、シート先端からの距離が離れた位置でシートが屈曲する。これにより、最上位シート1aが吸着ベルト2から分離することなく、2番目のシート1bを最上位シート1aから分離することができる。
なお、最上位シート1aが押し部材35Aからの押し力に対して耐える力は、用紙間の密着力f、用紙剛性E、用紙断面形状(断面2次モーメント)I、分離する部分の長さ(シート先端から屈曲位置までの長さ)Lの関係式にて決定されるものである。また、密着力fとしては、予め装置本体で用いられる用紙や使用環境などを想定した実験を行い、その実験結果から求めることができる。
また、図36に示すように、押し部材35Bの吸着ベルト2との接触面35Bfの曲率半径を、押し部材35Aの接触面35Afの曲率半径よりも大きくしてもよい。押し部材35Bを支点して吸着ベルト2が曲げられたとき、押し部材の接触面35Bfに沿って吸着ベルト2が曲がる。従って、押し部材35Bの接触面35Bfの曲率半径を大きくすることにより、吸着ベルト2に吸着したシートを軽くに曲げることができる。そのため、最上位シート1aが厚紙の場合に、押し部材35Bによって最上位シート1aがきつく曲げられるのがより抑えられ、吸着ベルト2から最上位シート1aが剥れるのをより抑制することができる。
一方、薄紙を分離する際に、吸着ベルト2を屈曲させる押し部材35Aの接触面35Afの曲率半径は、押し部材35Bよりも小さい。吸着ベルト2を屈曲させる押し部材35Aの接触面35Afの曲率半径を小さくすることで、吸着ベルトに吸着しているシートをきつく曲げることができる。これにより、分離し難い薄紙において、2番目シート1bを最上位シート1aから分離することができる。
また、押し部材35Aと押し部材35Bとを別々に、シートに最適な押し力や接触面35Af,35Bfの曲率に設計することが可能である。
次に、本実施形態に係る複写機100に設けられたシート搬送装置200の特徴部について説明する。
吸着ベルト2は押し部材35Aと押し部材35Bとにシート束に押し付けられている。押し部材35Bは、上述したように、厚紙を屈曲させるために、かなり強い押し力で吸着ベルト2を押している。その結果、最上位シートと2番目のシートとの密着力が高まってしまう。厚紙などの剛性の高いシートにおいては、多少、密着力が高くてもシートのコシにより2番目のシート1bを最上位シート1aから離間させることができる。しかし、2番目のシートが分離し難い薄紙においては、最上位シートと2番目のシートとの密着力が高いと、上述したようにシートの先端部で曲げても、2番目のシートが分離しないおそれがある。この場合、押し部材35Aの吸着ベルトに対する押し込み量を増やして、さらに、吸着ベルトをきつく屈曲させることも考えられる。しかし、そうすると、押し部材35Aの押し力が、厚紙の剛性よりも大きくなってしまい、厚紙を分離する際に、押し部材35Aにより最上位シートの先端付近が屈曲して、最上位シートが吸着ベルトから剥がれるおそれがある。
また、2番目のシートの先端部が最上位シートから分離すると、その間に空気が入り込むことで、2番目のシートの先端部以降が、最上位シートから分離していく。しかし、押し部材35Aが、シート束から離間後、押し部材35Bにより最上位シートを2番目のシートに押し付けている。従って、仮に、押し部材35Aの屈曲により2番目のシートの先端付近が、最上位シートから剥がれたとしても、押し部材35Bよりもシート搬送方向下流側に、空気が入り込んで行かない。そのため、押し部材35Aの屈曲により2番目のシートの先端付近が、最上位シートから剥がれたとしても、押し部材35Bよりもシート搬送方向下流側は、最上位シートから分離しないおそれがあった。吸着ベルト2をゆっくりと搬送位置へ移動させていけば、押し部材35Bの押し力が徐々に解除されていく。これにより、最上位シートと2番目のシートとの間に空気が入り込み、2番目のシートの押し部材35Bよりもシート搬送方向下流側も、最上位シートから分離させることができる。しかし、この場合、生産性が低下するという課題が生じる。
そこで、シートの剛性により、吸着ベルト2に接触させる押し部材を切り替えできるように構成し、シート束のシートの剛性が低いときは、複数の押し部材のうち、シート搬送方向下流側の押し部材のみが、吸着ベルトと接触できるようにした。
図37は、本実施形態の特徴部を備えたシート搬送装置200の模式図である。図38は、本実施形態の特徴部を備えたシート搬送装置200の要部平面図であり、図39は、本実施形態の特徴部を備えたシート搬送装置200の要部斜視図である。
このシート搬送装置200は、3つの押し部材35A,35B,35Cを備えており、押し部材35Aは、上述同様、薄紙のときに吸着ベルトを屈曲させるものであり、押し部材35Bは、上述と同様、厚紙のときに吸着ベルトを屈曲させるものである。また、押し部材35Cは、普通紙のとき吸着ベルトを屈曲させるものである。従って、このシート搬送装置200においては、押し部材35Aの押し力を、薄紙は屈曲し、普通紙は屈曲しないような押し力にしている。また、押し部材35Cの押し力を、普通紙は屈曲し、厚紙は屈曲しないような押し力にしている。
また、図37に示すシート搬送装置200においては、各押し部材35A,35B,35Cには、ストッパ355により留められる被留め部351A,351B,351Cがそれぞれ設けられている。被留め部351A,351B,351Cは、それぞれ、押し部材のシート幅方向の両端部付近に設けられている。各被留め部351A,351B,351Cには、ストッパ355の留めピン355aが差し込まれる差し込み穴352A,352B,352Cが設けられている。
また、図39に示すように、押し部材35Bのアーム部353Bは、押し部材35A,押し部材35Bの上方(シート束から離間した側)に設けられており、押し部材35Cのアーム部353Cは、押し部材35Aの上方に設けられている。
ストッパ355は、シート幅方向の両端付近に設けられた留め部355bと、これら留め部355bを連結する連結部355cとを有している。ストッパ355の連結部355cは、ハウジング20上に載置される形で設けられている。留め部355bに設けられた不図示の穴に留めピン355aを貫通させて、押し部材の被留め部の差し込み穴に留めピンを差し込むことで、押し部材35の回動が規制される。
図38、図39に示すように、押し部材35Cの被留め部351Cの差し込み穴352Cに留めピン355aが差し込まれると、押し部材35Cの回動が、規制される。これにより、押し部材35Cが、吸着ベルト2に接触しない。また、押し部材35Bのアーム部353Bは、押し部材35Cの上方に設けられている。従って、押し部材35Cの回動が規制されると、押し部材35Cのアーム部353Bが、押し部材35Cに突き当たる。これにより、押し部材35Bの回動も規制され、押し部材35も、吸着ベルト2に接触しない。従って、この場合、吸着ベルト2は、押し部材35Aのみに押される。押し部材35Aの被留め部351Aの差し込み穴352Aに留めピン355aが差し込まれたときは、押し部材35Aの回動が規制される。また、押し部材35Cのアーム部353Cは、押し部材35Aの上方に設けられているため、このアーム部353Cが押し部材35Aに突き当たることで、押し部材35Cの回動も規制される。また、押し部材35Cの回動が規制されることで、押し部材35Bの回動も規制される。従って、この場合は、3つの押し部材いずれも、吸着ベルトに接触しない。また、押し部材35Bの被留め部351Bの差し込み穴352Bに留めピン355aが差し込まれた場合、押し部材35Bのみ回動が規制される。これにより、押し部材35Bのみ、吸着ベルト2に接触しない。
図40は、特徴部を備えたシート搬送装置200におけるシート束のシートが薄紙の場合の分離動作について説明する図である。
図40に示すように、シート束のシートが薄紙のときは、押し部材35Cがストッパ355により留められ、押し部材35Cと、押し部材35Bとの回動が規制される。よって、この場合は、図40(a)に示すように、吸着ベルト2がシート束の上面に接触する吸着位置においては、押し部材35Aのみ吸着ベルト2をシート束側へ押す。これにより、3つの押し部材で、吸着ベルトをシート束側に押す場合に比べて、吸着ベルト2のシート束への押し付け力が弱くなり、最上位シートと2番目のシートとの密着力が増加するのを抑制することができる。これにより、図40(b)に示すように、押し部材35Aを支点にしてシートを屈曲させた際に、2番目のシートを最上位シートから良好に分離させることができる。また、押し部材35Aがシート束から離間すると、吸着ベルト2は、上流側張架ローラとの巻き付き箇所まで一気にシート束から離間する。従って、押し部材35Aによる屈曲で2番目のシートが最上位シートから離間した後、最上位と2番目のシートとの間に入り込んだ空気が途中で堰き止められることなく、上流側張架ローラとの巻き付き箇所まで一気に流れ込む。従って、2番目のシートは、先端部以降も良好に最上位シートから分離させることができる。これにより、吸着ベルト2の搬送位置への移動を速めても、良好に2番目のシートを最上位シートから分離することができ、生産性を高めることができる。
図41は、特徴部を備えたシート搬送装置200におけるシート束のシートが普通紙の場合の分離動作について説明する図である。
図41に示すように、シート束のシートが普通紙のときは、押し部材35Bがストッパ355により留められ、押し部材35Bの回動が規制される。よって、この場合は、吸着ベルト2がシート束の上面に接触する吸着位置において、押し部材35Aと35Cが着ベルト2をシート束側へ押す。この場合、押し部材35Aのみで吸着ベルト2をシート束に押し付ける場合に比べて、押し付け力が強くなり、最上位シートと2番目のシートとの密着力が上がる。しかし、普通紙は、薄紙よりも剛性が高く、コシがあるため、多少密着力が薄紙の場合に比べて増加しても、2番目のシートは、最上位シートから良好に分離する。また、押し部材35Aをシート束側へ押す圧縮スプリングのバネ圧は、普通紙の剛性よりも弱くしているので、押し部材の押し力によりシートが屈曲せず、押し部材35Cの押し力によりシートが屈曲する。これにより、薄紙のときよりも、シート先端から離れた位置でシートが屈曲し、最上位シート1aが吸着ベルト2から剥がれるの抑制することができる。また、押し部材35Cがシート束1から離間すると、吸着ベルト2が上流側張架ローラ6の巻き付き箇所まで一気にシート束から離間する。従って、2番目のシートの先端部分が最上位シートが分離して、最上位シートの2番目のシートとの間に入り込んだ空気が、途中で堰き止められることなく、上流側張架ローラ6の巻き付き箇所まで一気に流れ込む。これにより、2番目のシートを、確実に、最上位シートから分離させることができる。
図42は、特徴部を備えたシート搬送装置200におけるシート束のシートが厚紙の場合の分離動作について説明する図である。
図42に示すように、シート束のシートが厚紙のときは、ストッパ355は、いずれの押し部材も留めていない。よって、この場合は、吸着ベルト2がシート束の上面に接触する吸着位置において、押し部材35A、35B、35Cが着ベルト2をシート束側へ押す。この場合、押し部材35A,35Cで吸着ベルト2をシート束に押し付ける場合に比べて、押し付け力が強くなり、最上位シートと2番目のシートとの密着力が上がる。しかし、厚紙は、普通紙よりも剛性が高く、コシがあるため、多少密着力が普通紙の場合に比べて増加しても、2番目のシートは、最上位シートから良好に分離する。また、押し部材35Aをシート束側へ押す圧縮スプリング36Aのバネ圧および押し部材35Cをシート束側へ押す圧縮スプリング36Cのバネ圧は、いずれも厚紙の剛性よりも弱い。よって、押し部材35A,35Cの押し力によりシートが屈曲せず、押し部材35Bの押し力によりシートが屈曲する。これにより、普通紙のときよりも、シート先端から離れた位置でシートが屈曲し、最上位シート1aが吸着ベルト2から剥がれるの抑制することができる。
このように、本実施形態においては、ストッパ355によりシートの剛性に応じて吸着ベルト2を押す押し部材を切り替えることができ、最適な分離性能が得られる押し部材で、分離動作を行うことができる。
また、上述では、普通紙のときは、押し部材35Cと押し部材35Aとで吸着ベルト2を押す構成である。この場合、圧縮スプリング36Aの寸法誤差などにより押し部材35Aの押し力が、普通紙の剛性よりも大きくなるおそれがある。その結果、押し部材35Aの押し位置でシートが屈曲し、最上位シート1aが吸着ベルト2から剥がれるおそれがある。従って、普通紙の場合、押し部材35Cのみで押し部材を押すように構成してもよい。このように構成することで、普通紙のときに、最上位シートが剥がれるのをより一層抑制することができる。また、同様に、厚紙のときは、押し部材35Bのみ吸着ベルト2を押すように構成してもよい。これにより、押し部材35Cの押し位置でシートが屈曲したり、押し部材35Aの押し位置でシートが屈曲したりするのを防止することができる。これにより、厚紙のときに、最上位シートが剥がれるのをより一層抑制することができる。また、かかる構成とすることで、押し部材35Aの押し力に、普通紙の剛性以下とするという制限がなくなり、設計の自由度を高めることができる。同様に、押し部材35Cの押し力に、厚紙の剛性以下とするという制限がなくなり、設計の自由度を高めることができる。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、以下の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
積載されたシート束1の上面に対向配置された回転可能な無端状の吸着ベルト2と、シート束1の最上位シート1aを吸着ベルト2に吸着させる帯電部材3などの吸着手段とを備えたシート搬送装置200において、吸着ベルト2の内周面に押し当てて吸着ベルト2の最上位シート1aが吸着する吸着領域を屈曲させる押し部材35などの屈曲手段を、シート搬送方向に沿って複数設け、吸着ベルトに押し当てる屈曲手段を切り替えるストッパ255などの切り替え手段を備えた。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、シートの剛性に応じて、切り替え手段により吸着ベルトに押し当てる屈曲手段を切り替えることができる。これにより、シートの剛性に応じて、シートの屈曲位置を変更することが可能となる。従って、薄紙などの剛性の低いシートにおいては、複数の屈曲手段うち、シート搬送方向最下流に配置された押し部材35などの屈曲手段を吸着ベルトに押し当てる。これにより、吸着ベルトに吸着しているシートの先端部付近を曲げることができ、良好に2番目のシート1bを最上位シート1aから分離させることができる。また、厚紙などの剛性の高いシートにおいては、複数の屈曲手段うち、シート搬送方向最上流に配置された屈曲手段を吸着ベルトに押し当てる。これにより、吸着ベルトに吸着しているシートの先端部から離れた箇所を曲げることができ、最上位シート1aが吸着ベルト2から分離するのを抑制することができる。これにより、シートの剛性によらず、良好な分離性を得ることができる。
(態様2)
(態様1)において、複数の押し部材などの屈曲手段は、吸着ベルト2を張架する複数の張架ローラのいずれかの回転軸に回動自在に支持されており、切り替え手段は、屈曲手段の回転を規制するストッパ355などの規制部材である。
このように、ストッパ355などの規制部材で押し部材などの屈曲手段の回動を規制することにより、規制部材で規制された屈曲手段は、吸着ベルト2に押し当たらない。従って、規制部材により回動を規制する屈曲手段を切り替えることで、吸着ベルト2に押し当てる屈曲手段を切り替えることができる。
(態様3)
(態様1)または(態様2)において、押し部材などの各屈曲手段は異なる押し力で吸着ベルト2を押すように構成されており、シート搬送方向上流側にある屈曲手段ほど押し力が大きい。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、押し部材などの屈曲手段が対応する剛性のシートを良好屈曲させることができ、良好な分離性を得ることができる。また、屈曲手段の押し力を、シート搬送方向上流側に隣接する屈曲手段に対応するシートの剛性よりも弱くすれば、この屈曲手段よりも上流側の屈曲手段でシートを屈曲させる際に、この屈曲手段で吸着ベルトを押してもシートが屈曲しない。従って、規制部材で回動を規制する屈曲手段が、シートを屈曲させる屈曲手段よりもシート搬送方向上流側の屈曲手段のみにすることができる。
(態様4)
(態様3)において、押し部材などの各屈曲手段の吸着ベルト2との接触面は曲面形状となっており、曲面形状の曲率はシート搬送方向上流側にある屈曲手段ほど小さい。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、押し部材などの屈曲手段が対応する剛性のシートの分離性が良好となる曲率半径Rで、シートを屈曲させることができる。
(態様5)
また、(態様1)乃至(態様4)いずれかにおいて、シート束1の最上位シート1aを吸着ベルト2に接触させ吸着させる吸着位置と、吸着ベルト2に吸着した最上位シートを搬送する、吸着位置よりもシート束1から離れた搬送位置とを吸着ベルト2が取りうるように、吸着ベルト2およびシート束1の少なくとも一方を移動させる揺動機構120などの移動手段を備えた。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、シート束1の最上位シート1aを良好に吸着ベルト2に吸着させることができる。また、吸着ベルト2に吸着した最上位シートを搬送する際、2番目のシートに搬送力が加わることがない。
また、かかる構成において、切り替え手段により吸着させるシートの剛性が低いとき、シート搬送方向最下流に設けられた屈曲手段のみ、吸着ベルトに押し当たるように切り替えることで、以下の効果を得ることができる。すなわち、実施形態で説明したように、シート束の上面に吸着ベルトを押し付けた際の押し力を、すべての屈曲手段を吸着ベルトに押し当てる場合に比べて低減することができる。これにより、最上位シートと2番目のシートとの密着力が増加するのを抑制することができ、2番目のシートを良好に最上位シートから分離させることができる。
(態様6)
また、(態様5)において、吸着ベルト2を張架する下流側張架ローラ5などの第1張架ローラと、第1張架ローラのシート搬送方向上流側に位置する上流側張架ローラ6などの第2張架ローラとを有する吸着分離ユニット110を備え、揺動機構120などの移動手段は、第2張架ローラよりもシート搬送方向上流側に設けられた支点を中心にして吸着分離ユニット110を揺動させることで、吸着ベルト2を、吸着位置と搬送位置との間を往復移動させる。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、シート束上面に接触させた吸着ベルト2の表面部分がシート束上面に対して傾斜するように、その表面部分がシート束上面から離間させることができる。これにより、シートが曲げられて、吸着ベルト2の表面部分に吸着している最上位シート1aの部分が、吸着ベルト2の揺動動作に伴ってシート束上面からめくることができ、2番目のシート1bをシートの復元力により分離させることができる。また、揺動動作により吸着ベルトを、シート束の上面から離間させることができる。
また、かかる構成において、切り替え手段により吸着させるシートの剛性が低いとき、シート搬送方向最下流に設けられた屈曲手段のみ、吸着ベルトに押し当たるように切り替えることで、以下の効果を得ることができる。すなわち、実施形態で説明したように、揺動動作の速度を速めても良好に、2番目のシートを最上位シートから分離させることができ、生産性を高めることができる。
(態様7)
(態様6)において、揺動機構120などの移動手段は、吸着分離ユニット110のシート搬送方向下流側端部に取り付けられた第1駆動伝達部と、装置本体に取り付けられた第1駆動伝達部と噛み合う第2駆動伝達部とを備え、第1駆動伝達部と、第2駆動伝達部との噛み合いにより吸着分離ユニット110を揺動させる。
かかる構成を備えることにより、上述したように、吸着分離ユニット110の揺動時に吸着分離ユニット110を両持ち支持することができ、吸着分離ユニット110の振動を抑制することができる。また、第1駆動伝達部と第2駆動伝達部との噛み合い位置を、吸着分離ユニット110の揺動の支点から離すことができるので、揺動機構120にかかる負荷を低減することができる。これにより、揺動モータ30の大型化を回避することができ、かつ、第1駆動伝達部と第2駆動伝達部との噛み合い部の磨耗を抑制することができる。
(態様8)
また、(態様1)乃至(態様7)いずれかにおいて、吸着ベルト2を張架する下流側張架ローラ5などの第1張架ローラと、第1張架ローラのシート搬送方向上流側に位置する上流側張架ローラ6などの第2張架ローラとを有する吸着分離ユニット110を備え、吸着分離ユニット110は、第1張架ローラおよび第2張架ローラが、シート束1の最上位シート1aに吸着ベルト2を介して当接すると、第1張架ローラおよび第2張架ローラの支持が解除されるように、各張架ローラを支持した。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、シート束1の最上位シート1aの高さ方向(図中上下方向)の位置が多少ずれていたり、シート束1が、傾いていたりしても、吸着ベルト2を、シート束1の最上位シート1aと確実に当接させることができる。
(態様9)
(態様5)乃至(態様8)いずれかにおいて、吸着ベルト2を張架する下流側張架ローラ5などの第1張架ローラと、第1張架ローラのシート搬送方向上流側に位置する上流側張架ローラ6などの第2張架ローラとを有する吸着分離ユニット110を備え、吸着分離ユニット110は、第2張架ローラを、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持した。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、シートの復元力を利用した分離を行えることができ、良好な分離性能を得ることができる。また、吸着分離ユニット110を揺動させるだけで、吸着ベルト2をシート束1の上面から離間させることができる。
(態様10)
シートに画像を形成する画像形成部50などの画像形成手段と、積載されたシート束から最上位シートを分離し、前記画像形成手段へ最上位シートを搬送するシート搬送装置200などのシート搬送手段とを備えた複写機100などの画像形成装置において、シート搬送手段として、(態様1)乃至(態様9)いずれかのシート搬送装置を有する。
これによれば、上記実施形態について説明したように、高剛性のシートを用いた場合に吸着ベルトに吸着したシートが剥がれてしまうのを抑制することができ、良好なシート搬送を行って画像形成を行うことができる。また、低剛性のシートを用いた場合でも重送が生じるのを抑制することができ、ジャムが発生するのを抑制することができる。