JP6126957B2 - 空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents

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本発明は、ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアの外周側に配置されたビードフィラーとを備える空気入りタイヤの製造方法に関する。
従来、空気入りタイヤでは、図6に例示するように、ビード部1に環状のビードコア11とビードフィラー12が配設されており、カーカスプライ4がビードコア11の内周側で折り返してタイヤ幅方向の内側から外側に向かって巻き上げられている。
このような空気入りタイヤの製造において、タイヤ成形の過程でビードコア11とビードフィラー12との間に隙間が生じてエア入り不良となることがある。特に、ビードフィラー12の底面12aのタイヤ幅方向両端部付近に隙間が生じやすくなっている。また、ビードコア11とビードフィラー12との間に隙間が生じると、ビードコア11を中心としたビードフィラー12の角度(以下、ビードフィラー角度と称することもある。)が不安定となり、タイヤ成形時にビードフィラー12の側面とカーカスプライ4との間にエアが入り込み、エア入り不良となることがある。
ところで、下記特許文献1には、ビードコアの外周面に、ビードフィラーの底部に形成した薄肉突出部を貼付けながら円筒状に巻き、このビードフィラーを所定の長さで切断した後、ビードフィラーの端末部と先端とを圧着し、前記ビードフィラーの先端をブラダーにより拡張立ち上がらせると共に、ビードフィラーの底面と薄肉突出部とを接着して円盤状に形成するビード部材の製造方法が記載されている。
また、下記特許文献2には、ビードコアの外周面に、ビードフィラーの底部に連結された突起部を貼付け、フィラーを起立させてフィラーの底部と突起部を貼付けてビードフィラーを成形するビード部材の製造方法が記載されている。
しかし、特許文献1と特許文献2に記載のビード部材の製造方法は、いずれもビードコアに対してビードフィラーの貼付け精度を向上させることを目的としており、エア入り不良の低減を目的としたものではない。
特開昭62−46634号公報 特開平4−255335号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エア入り不良を低減できる空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアの外周側に配置されたビードフィラーとを備える空気入りタイヤの製造方法であって、前記ビードコアの外周面に前記ビードフィラーの底面を圧着して前記ビードコアと前記ビードフィラーを一体化する工程を備え、圧着前の前記ビードフィラーの底面は、タイヤ幅方向の中央部が両端部よりも前記ビードコアに向かって突出する凸部を有するものである。
本発明の空気入りタイヤの製造方法は、ビードコアの外周面にビードフィラーの底面を圧着してビードコアとビードフィラーを一体化する工程を備えており、ビードコアの外周面に圧着されるビードフィラーの底面は、タイヤ幅方向の中央部が両端部よりもビードコアに向かって突出する凸部を有する。この構成によれば、ビードコアの外周面にビードフィラーの底面を圧着する際、ビードフィラーの底面の中央部に大きな圧力がかかることでビードフィラーのゴムが両端部に分散するため、ビードフィラーの底面の両端部に生じる隙間を埋めることができる。これにより、ビードフィラーの底面をビードコアの外周面に対して隙間なく圧着することができるため、ビードフィラーの底面とビードコアの外周面との間のエア入り不良を低減できる。さらに、ビードフィラーの底面とビードコアの外周面との間に隙間を無くすことでビードフィラー角度が安定するため、タイヤ成形時のエア入り不良を低減できる。
本発明の空気入りタイヤの製造方法において、前記両端部を基準とした前記中央部の突出高さは、0.5〜1.0mmであることが好ましい。中央部の突出高さがこの範囲であれば、ビードフィラーの底面をビードコアの外周面に対して隙間なく圧着することができるため、ビードフィラーの底面とビードコアの外周面との間のエア入り不良を低減し、さらに、ビードフィラー角度を安定させてタイヤ成形時のエア入り不良を低減できる。
本発明の空気入りタイヤの製造方法において、前記ビードフィラーの底面の幅は、前記ビードコアの外周面の幅の0.9〜1.2倍であることが好ましい。ビードフィラーの底面の幅とビードコアの外周面の幅の関係がこの範囲であれば、ビードフィラーの底面をビードコアの外周面に対して隙間なく圧着することができるため、ビードフィラーの底面とビードコアの外周面との間のエア入り不良を低減し、さらに、ビードフィラー角度を安定させてタイヤ成形時のエア入り不良を低減できる。
本発明の空気入りタイヤの製造方法において、前記ビードフィラーには、前記底面の両端部よりも外側に前記ビードコアの側面を覆う薄肉突出部が設けられていることが好ましい。ビードフィラーに薄肉突出部を設けることで、ビードフィラー角度をさらに安定させてタイヤ成形時のエア入り不良を適切に低減できる。
本発明の空気入りタイヤの製造方法において、前記凸部の断面は、円弧状であることが好ましい。凸部の断面が円弧状であれば、ビードフィラーの底面の中央部に適切に圧力がかかるため、ビードフィラーのゴムが両端部にスムーズに分散し、ビードフィラーの底面の両端部に生じる隙間を確実に埋めることができる。
空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図 ビードコアとビードフィラーの一例を示す断面図 ビードフィラーの要部を示す部分拡大図 ビードコアとビードフィラーを組み立てるための組立装置の一例を示す模式図 ビードコアとビードフィラーを組み立てるための組立装置の一例を示す模式図 別実施形態におけるビードフィラーの部分拡大図 別実施形態におけるビードフィラーの部分拡大図 別実施形態におけるビードフィラーの部分拡大図 従来の空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法により製造される空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図である。
空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、そのビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3とを備えている。ビード部1には、環状のビードコア11が埋設され、ビードコア11の外周側には、ビードフィラー12が配設されている。
一対のビード部1の間にはトロイド状のカーカスプライ4が配され、その端部がビードコア11を介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカスプライ4は、少なくとも1枚設けられ、カーカスプライ4は、タイヤ周方向に対して略90°の角度で延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成されている。
カーカスプライ4の内周側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム5が配されている。また、カーカスプライ4のトレッド部3外周には、たが効果による補強を行うためのベルト6が配設されている。ベルト6は、積層された2枚のベルトプライにより構成されている。ベルト6の外周側には、必要に応じて補強ベルトを適宜に配設してもよい。また、トレッド部3の外周面にはトレッドゴム7が配設されており、トレッドパターンが形成されている。
図2は、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法に用いるビードコア11とビードフィラー12の一例を示す断面図である。図3は、ビードフィラー12の一部を拡大した図である。
ビードコア11は、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状の部材である。本実施形態のビードコア11の断面は、略六角形状となっている。ビーフィラー12は、硬質ゴムからなり、断面略三角形状に形成された環状の部材である。ビードコア11とビードフィラー12は、ビードコア11の外周面11aにビードフィラー12の底面12aを圧着することで一体化される。
図2及び図3に示すように、圧着前のビードフィラー12の底面12aは、タイヤ幅方向の中央部121が両端部122よりもビードコア11に向かって突出する凸部120を有している。この構成によれば、ビードコア11の外周面11aにビードフィラー12の底面12aを圧着する際、ビードフィラー12の底面12aは、中央部121が両端部122よりも先にビードコア11の外周面11aに接触するため、ビードフィラー12の底面12aの中央部121に大きな圧力がかかり、ビードフィラー12のゴムが中央部121から両端部122に分散する。これにより、ビードフィラー12の底面12aのタイヤ幅方向両端部付近に生じやすい隙間を埋めることができる。その結果、ビードフィラー12の底面12aをビードコア11の外周面11aに対して隙間なく圧着することができるため、ビードフィラー12の底面12aとビードコア11の外周面11aとの間のエア入り不良を低減できる。さらに、ビードフィラー12の底面12aとビードコア11の外周面11aとの間に隙間を無くすことでビードフィラー角度が安定するため、タイヤ成形時のエア入り不良を低減できる。
なお、ビードフィラー12の底面12aのタイヤ幅方向両端部付近に生じやすい隙間を埋める方法として、本発明とは反対に、圧着前のビードフィラー12の底面12aが、タイヤ幅方向の両端部122が中央部121よりもビードコア11に向かって突出する凹部を有するように構成することが考えられる。しかし、このようにビードフィラー12の底面12aの中央部121を凹ますと、ビードコア11の外周面11aにビードフィラー12の底面12aを圧着する際、ビードフィラー12の底面12aは、両端部122が中央部121よりも先にビードコア11の外周面11aに接触して、中央部121付近にエアが溜まりやすくなるため好ましくない。
本実施形態の凸部120の断面は、円弧状をしている。凸部120の断面が円弧状であれば、ビードフィラー12の底面12aの中央部121に適切に圧力がかかるため、ビードフィラー12のゴムが両端部122にスムーズに分散し、ビードフィラー12の底面12aの両端部122に生じる隙間を確実に埋めることができる。
ビードフィラー12の底面12aについて、両端部122を基準とした中央部121の突出高さhは、0.5〜1.0mmであることが好ましく、0.5〜0.8mmであることがより好ましい。突出高さhが0.5mmよりも小さいと、ビードフィラー12のゴムが両端部122に分散する効果を得られず、中央部121にエア入りが発生する可能性がある。一方、突出高さhが1.0mよりも大きいと、突出高さhが大きすぎるため、ビードフィラー12底面12aの両端部122にエア入りが発生する可能性がある。
ビードフィラー12の底面12aの幅w2は、ビードコア11の外周面11aの幅w1の0.9〜1.2倍であることが好ましく、1.0〜1.1倍であることがより好ましい。幅w2が幅w1の0.9倍よりも小さいと、ビードフィラー12の底面12aの中央部121にエア入りが発生する可能性があり、ビードフィラー角度が不安定となる。一方、幅w2が幅w1の1.2倍よりも大きいと、ビードフィラー12の底面12aの両端部122にエア入りが発生する可能性がある。
ビードフィラー12には、底面12aの両端部122よりも外側にビードコア11の側面11bを覆う薄肉突出部123が設けられている。薄肉突出部123の突出端123aは、ビードコア11の外周面11aを越えて、ビードコア11の最大幅位置11cを超えない範囲に位置することが好ましい。薄肉突出部123の突出端123aがビードコア11の外周面11aを超えない場合、ビードフィラー12の底面12aの両端部122にエア入りが発生する可能性があり、ビードフィラー角度も不安定となる。一方、薄肉突出部123の突出端123aがビードコア11の最大幅位置11cを超える場合、薄肉突出部123の突出端123a付近にエア入りが発生する可能性があり、ビードフィラー角度も不安定となる。
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法により製造される空気入りタイヤは、ビードフィラー12の底面12aを上記の如く構成すること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造、製法などが何れも本発明に採用することができる。
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、ビードコア11の外周面11aにビードフィラー12の底面12aを圧着してビードコア11とビードフィラー12を一体化する工程を備えている。図4Aは、ビードコア11とビードフィラー12を組み立てるための組立装置の一例を示す模式図である。組立装置9は、ロックリング(ビードコア固定装置)91と、このロックリング91と同軸上に配置されるブラダー92とを備える。ロックリング91は、略円筒状をしており、ビードコア11を所定位置に固定することができる。ブラダー92は、ゴム袋状の部材であり、内部に圧縮空気を導入することでブラダー92は膨張する。ブラダー92の膨張前の外径は、ロックリング91の外径よりわずかに大きくなっている。
初めに、環状のビードコア11をロックリング91の周囲であってブラダー92に近い側の端部に固定する。また、ビードフィラー12をブラダー92の周囲であってロックリング91に近い側の端部に配置する。このとき、ビードフィラー12は、底面12aがビードコア11の側面に対向するように倒れ込んだ姿勢となっており、全体として円筒状となっている。
その後、図4Bのように、ブラダー92を膨張させて拡径することで、ビードフィラー12をターンアップさせて、ビードコア11の外周面11aに載せる。これにより、ビードコア11の外周面11aにビードフィラー12の底面12aを圧着してビードコア11とビードフィラー12を一体化することができる。なお、ブラダー92の代わりに、メカニカル機構を用いてビードフィラー12をターンアップさせるようにしてもよい。
<別実施形態>
(1)前述の実施形態では、ビードコア11の断面形状が略六角形となっているが、四角形や平行四辺形などでもよい。
(2)ビードフィラー12の底面12aにおいて、凸部120の断面は、円弧状に限定されず、その他の形状であってもよい。例えば、凸部120の断面は、図5Aに示すような三角形状、図5Bに示すような台形状、図5Cに示すような多角形状などであってもよい。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。底面12aを表1に示す形状としたビードフィラー12を用いて空気入りタイヤを製造し、エア入り不良率を調べた。比較例1を100として指数評価し、数値が小さいほどエア入り不良が少ないことを示す。
比較例1は、凸部120を設けなかった。実施例1は、凸部120の断面形状を三角形状とした(図5A参照)。実施例2〜9は、凸部120の断面形状を円弧状とした(図3参照)。
Figure 0006126957
表1に示すとおり、実施例1〜9に係る空気入りタイヤは、比較例1に比べ、エア入り不良を低減できた。また、実施例2は、凸部120の断面形状を円弧状とすることで、実施例1に比べ、エア入り不良をさらに低減できた。実施例2及び実施例3は、突出高さhを0.5〜1.0mmとすることで、実施例6及び7に比べてエア入り不良を低減できた。実施例4及び5は、ビードフィラー12の底面12aの幅w2をビードコア11の外周面11aの幅w1の0.9〜1.2倍とすることで、実施例8及び9に比べてエア入り不良を低減できた。
1 ビード部
4 カーカスプライ
11 ビードコア
11a ビードコアの外周面
12 ビードフィラー
12a ビードフィラーの底面
120 凸部
121 中央部
122 両端部
123 薄肉突出部
h 突出高さ
w1 ビードコアの外周面の幅
w2 ビードフィラーの底面の幅
T 空気入りタイヤ

Claims (4)

  1. ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアの外周側に配置されたビードフィラーとを備える空気入りタイヤの製造方法であって、
    前記ビードコアの外周面に前記ビードフィラーの底面を圧着して前記ビードコアと前記ビードフィラーを一体化する工程を備え、
    圧着前の前記ビードフィラーの底面は、タイヤ幅方向の中央部が両端部よりも前記ビードコアに向かって突出する凸部を有し、
    前記凸部の断面は、円弧状であることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
  2. 前記両端部を基準とした前記中央部の突出高さは、0.5〜1.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
  3. 前記ビードフィラーの底面の幅は、前記ビードコアの外周面の幅の0.9〜1.2倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
  4. 前記ビードフィラーには、前記底面の両端部よりも外側に前記ビードコアの側面を覆う薄肉突出部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
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