以下、本発明の好ましい実施形態について、シート型ヒートパイプを搭載した携帯情報端末の例を第1実施例〜第4実施例で説明し、扁平型ヒートパイプを搭載した携帯情報端末の例を第5実施例で説明する。なお、各実施例において、共通する箇所には共通の符号を付し、同一の構成や作用効果については、重複する説明を極力省略する。
図1〜図7は、本発明の第1実施例におけるシート型ヒートパイプ1を示している。これらの各図において、シート型ヒートパイプ1は、2枚の銅箔シートである第1シート体11と第2シート体12を拡散接合した容器15により構成される。これらのシート体11,12は、例えばアルミニウムのように、熱伝導性が良好でエッチング加工が可能な他の金属シートを利用してもよい。図1に示すように、完成状態のシート型ヒートパイプ1は略矩形平板状で、後述するスマートフォンなどの携帯情報端末51(図31を参照)の筐体内部形状に合せた外形を有し、その四隅にはR形状の面取部16が形成される。また、容器15の内部に真空状態で純水などの作動液(図示せず)を封入するために、容器15には溶接のための筒状の封止部17が形成される。封止部17により密閉された容器15ひいてはシート型ヒートパイプ1の厚さt1は、0.4mmである。
図2と図3は、第1シート体11と第2シート体12をそれぞれ示している。シート体11,12の厚さt2は何れも0.2mmであり、最終的に容器15の内面となる片側面にのみ、ハーフエッチング加工によりシート体11,12の厚みの途中までエッチングが施されて、受熱部で作動液が蒸発した蒸気を放熱部に輸送する蒸気通路20と、放熱部で凝縮した作動液を受熱部に還流するウィック22を形成している。また、シート体11,12の片側面には、蒸気通路20やウィック22の他に、シート体11,12の外周に沿って、エッチング加工でエッチングされない側壁23が形成される。この側壁23は、シート体11,12の片側面を向い合せたときに重なる位置にあり、最終的に拡散接合により容器15の外周部の一部を形成する。なお、図2や図3ではウィック22の部位を斜線で示している。
フォトエッチング加工でシート体11,12に蒸気通路20やウィック22を形成する場合、シート体11,12は0.05mm以上の厚さt2を必要とする。また、シート体11,12の厚さt2が0.3mmを超え、容器15ひいてはシート型ヒートパイプ1の厚さt1が0.5mmを超えると、限られた携帯情報端末51の形状にシート型ヒートパイプ1を設置しにくくなる。したがって、0.05mm〜0.3mmの厚さt2を有するシート体11,12の表面にエッチング加工を施し、完成したシート型ヒートパイプ1の厚さt1を0.5mm以下とすることで、容器15の内面に十分な熱輸送能力を有する微細な蒸気通路20とウィック22を形成でき、且つ携帯情報端末51などの薄い筐体内にもシート型ヒートパイプ1を無理なく設置できる。
第1実施例における蒸気通路20は、密閉された容器15の内部において、シート型ヒートパイプ1の長手方向に沿って複数並んで形成された凹状の第1通路部21Aと、それぞれの第1通路部21Aを横切って、複数の第1通路部21Aと連通して形成された一つの凹状の第2通路部21Bとにより構成される。第1通路部21Aと第2通路部21Bは何れも直線状で、シート型ヒートパイプ1の中央部で第1通路部21Aと第2通路部21Bが直交しているが、これらはどのような形状でどの位置で連通していても構わない。本実施例では、シート体11,12の片側面を向い合せて積み重ねたときに、シート体11,12の第1通路部21Aどうしが向かい合うことで、中空筒状の第1蒸気通路20Aが形成され、シート体11,12の第2通路部21Bどうしが向かい合うことで、中空筒状の第2蒸気通路20Bが形成される。このとき容器15の内部には、第1蒸気通路20Aと第2蒸気通路20Bとによる蒸気通路20が配設され、シート型ヒートパイプ1の長手方向に沿って複数形成された第1蒸気通路20Aが、ヒートパイプ1の短手方向に沿って一つに形成された第2蒸気通路20Bと連通する。またウィック22は、容器15の内部において、蒸気通路20や側壁23を除く部位に形成される。
図4は、図2における第1シート体11のA,C,Eの各部を拡大したものである。また図5は、図3における第2シート体12のB,D,Fの各部を拡大したものである。これらの各図において、ウィック22は、エッチング加工でエッチングされた凹状の溝26と、エッチング加工でエッチングされない壁27とにより構成され、ウィック22の領域内には作動液の通路となる多数の溝26が、壁27により所望の形状に形成される。
溝26は、蒸気通路20の両側部や端部に沿って位置しており、その蒸気通路20の方向と直交して一定間隔毎に配置される複数の第1溝26Aと、第1の溝26Aよりも蒸気通路20から離れて配置され、第1溝26Aよりも少ない広い一定間隔毎に配置される複数の第2溝26Bと、これらの第1溝26Aや第2溝26Bを、蒸気通路20の方向に沿って互いに連通させる第3溝26Cとを有する。また、溝26の深さは0.1mm〜0.13mmで、溝26の幅d1は、第1溝26A,第2溝26B,第3溝26Cの何れも0.12mmである。ここでは、溝26の幅d1が0.05mm〜0.3mmの範囲であれば、ウィック22による毛細管力を高めることができる。さらに、第1溝26Aの数は第2溝26Bの数よりも多く、第2溝26Bよりも微細な第1溝26Aが、蒸気通路20の両側部に位置して、この蒸気通路20と直接連通している。
一方、溝26の間に形成される壁27は、第2溝26Bよりも細かな間隔で第1溝26Aを形成するために、蒸気通路20と直交する方向に沿った幅d2が0.1mmに形成される複数の第1壁27Aと、第2溝26Bを形成するために、第1壁27Aとは異なる形状の複数の第2壁27Bとを少なくとも有する。第2の壁27Bの一部は、蒸気通路20と直交する方向に沿った幅d3が、第1壁27Aの幅d2よりも広い0.3mmに形成される。本実施例では、蒸気通路20の方向と直交して、複数の第1壁27Aや複数の第2壁27Bを並設し、またウィック22の外側に側壁23を設けることで、それらの間に複数の第3溝26Cが一定間隔で形成される。好ましくは、第1壁27Aの幅d2を0.25mm未満とし、第2壁27Bの幅d3を0.25mm以上とすることで、シート体11,12の重ね合う第2壁27Bを利用して、ウィック22の部分での拡散接合が可能になる。
側壁23の幅d4は、シート体11,12の全周にわたり1mmに形成される。最終的に容器15の外周部となるシート体11,12の側壁23の幅d4は、少なくとも0.3mm以上とするのが好ましく、それによりシート体11,12を側壁23の部分で良好に拡散接合することができ、容器15の密閉に関して信頼性の高いシート型ヒートパイプ1が得られる。
図6は、図2,3におけるシート体11,12のG部を拡大したものである。また、図7は、図2,3におけるシート体11,12のH部を拡大したものである。これらの各図において、シート型ヒートパイプ1の面取り部16や封止部17の近傍では、上述したウィック22の構造が、蒸気通路20と側壁23との間に同様に設けられている。ここでも溝26の幅d1は、0.12mmに形成される。
図8〜図12は、本発明の第2実施例におけるシート型ヒートパイプ2を示している。これらの各図において、本実施例のシート型ヒートパイプ2は、第1実施例と同様に、2枚の銅箔シートである第1シート体11と第2シート体12を拡散接合した容器15により構成されるが、図8に示すように、第1実施例のシート型ヒートパイプ1よりも細長い平板棒状にスリム化されており、また携帯情報端末51の筐体内部構造を考慮して、必要に応じて2箇所の曲げ部18が形成される。この曲げ部18の数や曲げ角度は限定されず、また曲げ部18を設けない直線状にシート型ヒートパイプ2を形成してもよい。また、容器15の一端には筒状の封止部17が形成され、容器15の内部に真空状態で純水などの作動液を封入できる構成になっている。封止部17により密閉された容器15ひいてはシート型ヒートパイプ2の厚さt1は、0.4mmである。
図9と図10は、第1シート体11と第2シート体12をそれぞれ示している。シート体11,12の厚さt2は何れも0.2mmであり、ここでもハーフエッチング加工により、シート体11,12の片側面にのみ蒸気通路20とウィック22と側壁23がそれぞれ形成される。本実施例では、シート型ヒートパイプ2の外形形状に沿って一方向に延びる蒸気通路20の両側にウィック22が設けられ、そのウィック22の外側に側壁23が配置される。側壁23は、シート体11,12の片側面を向い合せたときに重なる位置にあり、最終的に拡散接合により容器15の外周部を形成する。なお、図9や図10ではウィック22の部位を斜線で示している。
フォトエッチング加工でシート体11,12に蒸気通路20やウィック22を形成する場合には、0.05mm〜0.3mmの厚さt2を有するシート体11,12の表面にエッチング加工を施し、完成したシート型ヒートパイプ1の厚さt1を0.5mm以下とすることで、容器15の内面に十分な熱輸送能力を有する微細な蒸気通路20とウィック22を形成でき、且つ携帯情報端末51などの薄い筐体内にもシート型ヒートパイプ2を無理なく設置できる。
第2実施例における蒸気通路20は、密閉された容器15の内部において、シート型ヒートパイプ2の長手方向に沿って形成された凹状の通路部21により構成される。そして、シート体11,12の片側面を向い合せて積み重ねたときに、シート体11,12の通路部21どうしが向かい合うことで、一つの中空筒状の蒸気通路20が形成される。またウィック22は、容器15の内部において、蒸気通路20や側壁23を除く部位に形成される。
図11は、図9における第1シート体11のA部と、図10における第2シート体12のB部をそれぞれ拡大したものである。ここでもウィック22は、エッチング加工でエッチングされた凹状の溝26と、エッチング加工でエッチングされない壁27とにより構成され、ウィック22の領域内には作動液の通路となる多数の溝26が、壁27により所望の形状に形成される。
溝26は、蒸気通路20の両側部や端部に沿って位置しており、第1実施例と同様に、第1溝26Aと、第2溝26Bと、第3溝26Cとを有して構成される。溝26の深さは0.1mm〜0.13mmで、溝26の幅d1は、第1溝26A,第2溝26B,第3溝26Cの何れも0.12mmである。第1溝26Aの数は第2溝26Bの数よりも多く、第2溝26Bよりも微細な第1溝26Aが、蒸気通路20の両側部に位置して、この蒸気通路20と直接連通している。
側壁23の幅d4は、シート体11,12の全周にわたり0.4mmに形成される。そのため、シート体11,12を側壁23の部分で良好に拡散接合することができ、容器15の密閉に関して信頼性の高いシート型ヒートパイプ2が得られる。
図12は、図9,10におけるシート体11,12のC部を拡大したものである。同図において、シート型ヒートパイプ2の曲げ部18には、上述したウィック22の構造が、蒸気通路20と側壁23との間に同様に設けられている。ここでも溝26の幅d1は、0.12mmに形成される。
図13〜図18は、本発明の第3実施例におけるシート型ヒートパイプ3を示している。これらの各図において、本実施例のシート型ヒートパイプ3は、第2実施例と同様に、2枚の銅箔シートである第1シート体11と第2シート体12を拡散接合した容器15により構成され、第1実施例のシート型ヒートパイプ1よりも細長い平板棒状にスリム化されているが、シート型ヒートパイプ3の他端には、熱源となる例えばCPUからの受熱性能を最適化させるために、そのCPUの外形形状に合せた受熱部19が形成される。ここでの受熱部19は、シート型ヒートパイプ3の他の部位よりも平面視で広い幅を有する。また、容器15の途中には曲げ部18が一箇所だけ形成され、シート型ヒートパイプ3は平面視で略L字形に形成される。曲げ部18の数や曲げ角度は限定されず、また曲げ部18を設けない直線状にシート型ヒートパイプ3を形成してもよい。同様に、受熱部19の数や形状も限定されない。容器15の一端には筒状の封止部17が形成され、容器15の内部に真空状態で純水などの作動液を封入できる構成になっている。封止部17により密閉された容器15ひいてはシート型ヒートパイプ3の厚さt1は、0.4mmである。
図14と図15は、第1シート体11と第2シート体12をそれぞれ示している。シート体11,12の厚さt2は何れも0.2mmであり、ここでもハーフエッチング加工により、シート体11,12の片側面にのみ蒸気通路20とウィック22がと側壁23がそれぞれ形成される。本実施例では、シート型ヒートパイプ3の外形形状に沿って一方向に延びる蒸気通路20の両側にウィック22が設けられ、そのウィック22の外側に側壁23が配置される。側壁23は、シート体11,12の片側面を向い合せたときに重なる位置にあり、最終的に拡散接合により容器15の外周部を形成する。なお、図14や図15ではウィック22の部位を斜線で示している。
フォトエッチング加工でシート体11,12に蒸気通路20やウィック22を形成する場合には、0.05mm〜0.3mmの厚さt2を有するシート体11,12の表面にエッチング加工を施し、完成したシート型ヒートパイプ3の厚さt1を0.5mm以下とすることで、容器15の内面に十分な熱輸送能力を有する微細な蒸気通路20とウィック22を形成でき、且つ携帯情報端末51などの薄い筐体内にもシート型ヒートパイプ3を無理なく設置できる。
第3実施例における蒸気通路20は、密閉された容器15の内部において、幅広な受熱部19の一方向に沿って複数並んで形成された凹状の第1通路部21Aと、その受熱部19において、それぞれの第1通路部21Aを横切って、複数の第1通路部21Aと連通して形成された一つの凹状の第2通路部21Bと、受熱部19と封止部17との間の線状部に形成され、第2通路部21Bに連通する一つの凹状の第3通路部21Cとにより構成される。第1通路部21Aと第2通路部21Bは何れも直線状で、受熱部19の一端側で第1通路部21Aと第2通路部21Bが直交しているが、これらはどのような形状でどの位置で連通していても構わない。本実施例では、シート体11,12の片側面を向い合せて積み重ねたときに、シート体11,12の第1通路部21Aどうしが向かい合うことで、中空筒状の第1蒸気通路20Aが形成され、シート体11,12の第2通路部21Bどうしが向かい合うことで、中空筒状の第2蒸気通路20Bが形成され、シート体11,12の第3通路部21Cどうしが向かい合うことで、中空筒状の第3蒸気通路20Cが形成される。このとき容器15の内部には、互いに連通した第1蒸気通路20Aと第2蒸気通路20Bと第3蒸気通路20Cとによる蒸気通路20が配設される。またウィック22は、容器15の内部において、蒸気通路20や側壁23を除く部位に形成される。
図16は、図14における第1シート体11のA,Cの各部をそれぞれ拡大したものである。また図17は、図15における第2シート体12のB,Dの各部をそれぞれ拡大したものである。ここでもウィック22は、エッチング加工でエッチングされた凹状の溝26と、エッチング加工でエッチングされない壁27とにより構成され、ウィック22の領域内には作動液の通路となる多数の溝26が、壁27により所望の形状に形成される。
溝26は、蒸気通路20の両側部や端部に沿って位置しており、第1実施例と同様に、第1溝26Aと、第2溝26Bと、第3溝26Cとを有して構成される。溝26の深さは0.1mm〜0.13mmで、溝26の幅d1は、第1溝26A,第2溝26B,第3溝26Cの何れも0.12mmである。第1溝26Aの数は第2溝26Bの数よりも多く、第2溝26Bよりも微細な第1溝26Aが、蒸気通路20の両側部に位置して、この蒸気通路20と直接連通している。
側壁23の幅d4は、シート体11,12の全周にわたり1mmに形成される。そのため、シート体11,12を側壁23の部分で良好に拡散接合することができ、容器15の密閉に関して信頼性の高いシート型ヒートパイプ3が得られる。
図18は、図14,15におけるシート体11,12のE部を拡大したものである。同図において、シート型ヒートパイプ3の曲げ部18には、上述したウィック22の構造が、蒸気通路20と側壁23との間に同様に設けられている。ここでも溝26の幅d1は、0.12mmに形成される。
図19〜図26は、本発明の第4実施例におけるシート型ヒートパイプ4を示している。これらの各図において、本実施例のシート型ヒートパイプ4は、前述した第1シート体11や第2シート体12の他に、シート体11,12の間に積層される別の第3シート体13を拡散接合した3枚の銅箔シートからなる容器15により構成される。シート体11,12,13は2枚以上であればその数を限定しないが、容器の一側面と他側面を形成する最外層の第1シート体11と第2シート体12は、片側面のみのハーフエッチング加工を施し、それ以外の中間層となる第3シート体13は、両側面のフルエッチング加工を施す。
図19に示すように、本実施例のシート型ヒートパイプ4は、第2実施例のシート型ヒートパイプ2と概ね同一の外形形状を有する。すなわち、第1実施例のシート型ヒートパイプ1よりも細長い平板棒状にスリム化されており、また携帯情報端末51の筐体内部構造を考慮して、必要に応じて2箇所の曲げ部18が形成される。容器15の一端には筒状の封止部17が形成され、容器15の内部に真空状態で純水などの作動液を封入できる構成になっている。封止部17により密閉された容器15ひいてはシート型ヒートパイプ4の厚さt1は、0.5mmである。
図20と図21は、第1シート体11と第2シート体12をそれぞれ示している。シート体11,12の厚さt2は何れも0.2mmであり、何れもハーフエッチング加工により、シート体11,12の片側面にのみ蒸気通路20とウィック22がと側壁23がそれぞれ形成される。本実施例では、シート型ヒートパイプ4の外形形状に沿って一方向に延びる蒸気通路20の両側にウィック22が設けられ、そのウィック22の外側に側壁23が配置される。
図22は、第3シート体13を示している。第3シート体13の厚さt3は0.1mmであり、フルエッチング加工により、何れも第3シート体13の表裏を貫通する貫通部28と貫通溝29が形成される。貫通部28は、第3シート体13の一端から他端にかけて連続して設けられ、他のシート体11,12と重ね合わせたときに、蒸気通路20の一部を形成するものである。また、スリット状の貫通溝29は、第3シート体13の一端から他端にかけて、貫通部28の両側にそれぞれ形成され、他のシート体11,12と重ね合わせたときに、ウィック22の一部を形成するものである。貫通溝29の外側には、エッチング加工でエッチングされない側壁23が形成される。各シート体11,12,13の側壁23は、第3シート体13を挟んだ状態で他のシート体11,13の片側面を向い合せたときに重なる位置にあり、最終的に拡散接合により容器15の外周部を形成する。なお、図20〜図22ではウィック22の部位を斜線で示している。
フォトエッチング加工でシート体11,12,13に蒸気通路20やウィック22を形成する場合には、0.05mm〜0.3mmの厚さt2を有するシート体11,12の表面にハーフエッチング加工を施すと共に、0.05mm〜0.3mmの厚さt3を有する第3シート体13の表面にフルエッチング加工を施し、完成したシート型ヒートパイプ1の厚さt1を0.5mm以下とすることで、容器15の内面に十分な熱輸送能力を有する微細な蒸気通路20とウィック22を形成でき、且つ携帯情報端末51などの薄い筐体内にもシート型ヒートパイプ4を無理なく設置できる。
第4実施例における蒸気通路20は、密閉された容器15の内部において、シート型ヒートパイプ2の長手方向に沿って、シート体11,12にそれぞれ形成された凹状の通路部21と、第3シート体13に形成された貫通部28とにより構成される。そして、シート体11,12、13を積み重ねたときに、貫通部28の両側でシート体11,12の通路部21どうしが向かい合うことで、一つの中空筒状の蒸気通路20が形成される。またウィック22は、容器15の内部において、蒸気通路20や側壁23を除く部位に形成される。
図23は、図20における第1シート体11のA部と、図21における第2シート体12のB部をそれぞれ拡大したものである。ここでもウィック22は、エッチング加工でエッチングされた凹状の溝26と、エッチング加工でエッチングされない壁27とにより構成され、ウィック22の領域内には作動液の通路となる多数の溝26が、壁27により所望の形状に形成される。
溝26は、蒸気通路20の両側部や端部に沿って位置しており、第1実施例と同様に、第1溝26Aと、第2溝26Bと、第3溝26Cとを有して構成される。溝26の深さは0.1mm〜0.13mmで、溝26の幅d1は、第1溝26A,第2溝26B,第3溝26Cの何れも0.12mmである。第1溝26Aの数は第2溝26Bの数よりも多く、第2溝26Bよりも微細な第1溝26Aが、蒸気通路20の両側部に位置して、この蒸気通路20と直接連通している。
側壁23の幅d4は、シート体11,12,13の全周にわたり0.4mmに形成される。そのため、シート体11,12、13を側壁23の部分で良好に拡散接合することができ、容器15の密閉に関して信頼性の高いシート型ヒートパイプ4が得られる。
図24は、図20,21におけるシート体11,12のC部を拡大したものである。同図において、シート型ヒートパイプ4の曲げ部18には、上述したウィック22の構造が、蒸気通路20と側壁23との間に同様に設けられている。ここでも溝26の幅d1は、0.12mmに形成される。
図25は、図22における第3シート体13のD部を拡大したものである。また図26は、図23における第3シート体13のE部を拡大したものである。第3シート体13には、蒸気通路20の一部をなす貫通部28と、貫通部28の両側で一列に並んだ貫通溝29がそれぞれ貫通形成される。
次に、上記第1実施例〜第4実施例におけるシート型ヒートパイプの動作原理を、図27に基づき説明する。図27では、第2実施例のシート型ヒートパイプ2を代表で示しているが、他の実施例のシート型ヒートパイプ1,3,4も基本的な動作原理は共通である。
シート型ヒートパイプ2は、熱源と熱接続する部位が受熱部31となり、受熱部31で受けた熱を外部に放出する部位が放熱部32となる。第3実施例のシート型ヒートパイプ3は、受熱部19の部位がシート型ヒートパイプ3の他端に規定され、シート型ヒートパイプ3の一端に放熱部32が自ずと配置されるが、それ以外のシート型ヒートパイプ1,2,4は、どの部位で熱源と熱接続されるのかによって、受熱部31と放熱部32の各位置が変わってくる。ここでは説明のために、シート型ヒートパイプ2の他端に受熱部31が位置し、シート型ヒートパイプ2の一端に受熱部31が位置するものとする。
シート型ヒートパイプ2の動作原理は、次の通りである。受熱部31では、熱源からの熱を受けて容器15の内部で作動液が蒸発し、蒸気に蒸発潜熱が蓄えられて圧力が上昇する。この蒸気は、容器15の内部の蒸気通路20を通して受熱部31から放熱部32に流れ、熱を受熱部31から離れた放熱部32に運ぶ。放熱部32では、容器15の内部で蒸気が凝縮し、凝縮潜熱をシート型ヒートパイプ2の外部に放出する。放熱部32に溜まる作動液は、ウィック22を通して受熱部31に戻される。
図27には、空間すなわち蒸気通路20を通過する受熱部31から放熱部32への蒸気流路と、ウィック22を通過する放熱部32から受熱部31への作動液の還流を、それぞれ矢印で示している。本実施例のシート型ヒートパイプ2は、その動作方式からウィック型(毛細管型)と呼ばれ、放熱部32に溜まる作動液を、ウィック22の毛細管力により受熱部31に戻す内部構造を有している。
図28は、熱輸送時における放熱部32の状態を模式的に示している。シート型ヒートパイプ2ひいては容器15の厚さを0.5mm以下、特に0.4mm以下の極薄状にすると、蒸気通路20が狭くなって、受熱部31で蒸発した蒸気流が、蒸気通路20を通過する際の流動抵抗(圧損)と温度低下により凝縮し、水滴が蒸気流路20を閉塞して、シート型ヒートパイプ2としての性能が著しく低下する。つまり、シート型ヒートパイプ2を薄型化するには、蒸気通路20内の水滴を素早く吸収できるウィック22の構造が重要であり、ウィック22の構造を工夫して、蒸気通路20の閉塞を防止する必要がある。
そこで上記各実施例では、シート体11,12にウィック22として形成される溝26を、蒸気通路20の両側部に隣接して配置される第1溝26Aと、第1溝26Aよりも蒸気通路20から離れて配置される第2溝26Bとにより構成し、第1溝26Aの配置間隔を第2溝26Bの配置間隔よりも狭くして、第1溝26Aの数が第2の溝26Bの数よりも多くなるように、ウィック22の構造を工夫している。このように、ウィック22を蒸気通路20の両側に配置したり、蒸気通路20に隣接する部分で、ウィック22の微細化を図ったりすることで、蒸気通路20内の水滴を素早くウィック22に吸収させている。図28では、放熱部32側において、蒸気通路20からその両側に配置したウィック22への水滴Wの流れを、矢印で示している。
次に、ウィック22のより詳細な構造を説明すると、図29は、前述の図11において、蒸気通路20の方向に沿ったA方向で、シート体11,12を重ね合わせたシート型ヒートパイプ2の断面図を示し、また図30は、同じく図11において、蒸気通路20の方向に直交するB方向で、シート体11,12を重ね合わせたシート型ヒートパイプ2の断面図を示している。
図29において、蒸気通路20の方向に沿ったA方向では、シート体11,12を重ね合わせた状態で、第1シート体11に形成した第1溝26Aと、第2シート体12に形成した第1溝26Aが互い違いに配置されており、第1シート体11における第1溝26Aの開口部を、第2シート体12における第1壁27Aで塞いだ液通路35Aと、第2シート体12における第1溝26Aの開口部を、第1シート体11における第1壁27Aで塞いだ液通路35Bが、シート体11,12のそれぞれの側で互い違いに配設される。これにより、蒸気通路20に隣接するウィック22の部位では、厚さt2が0.2mmのシート体11,12に、エッチング加工の限界まで微細化した第1溝26Aをそれぞれ形成し、さらには裏表のシート体11,12でその第1溝26Aの位置を互い違いに反転させ、シート体11,12に形成した第1溝26Aの開口部を対向するシート体12、11で塞いで、それぞれに液通路35A、35Bを配設することで、極薄状のシート型ヒートパイプ2でありながら、ウィック22の構造に関して最大限の微細化を実現することが可能になる。
一方、図30において、蒸気通路20の方向に直交するB方向では、シート体11,12を重ね合わせた状態で、第1シート体11に形成した第3溝26Cと、第2シート体12に形成した第3溝26Cが対向しており、第1シート体11における第3溝26Cの開口部を、第2シート体12における第3溝26Cで塞ぐことで、シート体11,12に跨る液通路35が配設される。この液通路35の断面積は、シート体11,12のそれぞれの側で互い違いに配置された液通路35A、35Bの断面積よりも大きく、液通路35A,35Bを通してウィック22に取り込まれた水滴を、液通路35によって受熱部31に円滑に還流させることが可能になる。
また前述のように、シート型ヒートパイプ1,2,4は、どの部位で熱源と熱接続されるのかによって、受熱部31と放熱部32の各位置が変わってくるが、第1実施例のシート型ヒートパイプ1のように、容器15の内部に複数形成された第1蒸気通路20Aが、一つに形成された第2蒸気通路20Bと連通していることで、シート型ヒートパイプ1のどの部位に受熱部31と放熱部32が位置したとしても、それぞれの蒸気通路20A,20Bが互いに連通することで、シート型ヒートパイプ1の全面を均熱化できる。
次に、上記実施例のシート型ヒートパイプ1,2,3,4を、薄型の携帯情報端末51に実装する場合の構成や作用効果を説明する。
図31は、シート型ヒートパイプ1,2,3,4が搭載される携帯情報端末51の外観を示し、また図32は、第1実施例のシート型ヒートパイプ1を内部に搭載した携帯情報端末51の内部構成を示している。図31や図32に示す携帯情報端末51は、タブレット端末よりも小型で、手で持てる程度の外形寸法を有するスマートフォンであり、縦長略矩形状の背面カバー52を、平板状のタッチパネル53の背面側に配設することで、携帯情報端末51としての扁平状をなす外郭(筐体)が形成される。携帯情報端末51の筐体内部には、携帯情報端末51の制御部となるCPU(中央処理装置)54や、その他の図示しない各種電子部品が、基板であるマザーボード56に実装した状態で収容されると共に、これらのCPU54や電子部品に必要な電力を供給するための充電可能な扁平略矩形状の充電手段たる電池パック57が、携帯情報端末51に対し着脱可能に収容される。また、タッチパネル53の正面側には、入力装置と表示装置を一体化した操作表示部58が配設される一方で、背面カバー52の正面側開口に対向するタッチパネル53の背面は、凹凸のない平坦なアルミニウムなどの金属板59で構成される。操作表示部58は、ユーザの指で触れることが可能なように、携帯情報端末51の正面に露出して配置される。
図32に示すように、第1実施例のシート型ヒートパイプ1は、携帯情報端末51の筐体内部形状に合せた外形を有しており、そのまま単体で携帯情報端末51の筐体内部に設置される。ここでは、タッチパネル53の背面の50%以上を占める領域に、シート型ヒートパイプ1を設置するのが好ましい。シート型ヒートパイプ1の一側面は、その一部が受熱部として熱源となるCPU54を含むマザーボード56と接触して熱接続され、また別な一部が放熱部として電池パック57と接触して熱接続されると共に、シート型ヒートパイプ1の他側面は、その全面がタッチパネル53の背面となる金属板59と接触して熱接続され、特にCPU54から離れた部位で放熱部が形成される。つまり、シート型ヒートパイプ1は、タッチパネル53の背面とマザーボード56や電池パック57との間に設置される。
図33は、携帯情報端末51に搭載される直前のシート型ヒートパイプ1を示している。図1に示す完成状態のシート型ヒートパイプ1は、容器15の密閉状態を維持しつつ、容器15の下方から突出する封止部17が切断される。図33は、封止部17の先端を切断した状態のシート型ヒートパイプ1を示しており、封止部17が邪魔になることなく、携帯情報端末51の筐体内部にシート型ヒートパイプ1を設置できる。
上記図32に示す携帯情報端末51は、筐体の内部でCPU54などが発熱して温度が上昇すると、そのCPU54からの熱がシート型ヒートパイプ1の一側面の受熱部に伝わり、受熱部では作動液が蒸発して、蒸気通路20を通して受熱部から温度の低い放熱部に向かって蒸気が流れ、シート型ヒートパイプ1の内部で熱輸送が行われる。この放熱部に輸送された熱はシート型ヒートパイプ1の広い平面状の領域に熱拡散され、シート型ヒートパイプ1の裏表すなわち一側と他側の両面から、タッチパネル53の背面をなす金属板59と、電池パック57にそれぞれ放熱される。これにより携帯情報端末51は、CPU54などに発生する熱を広い領域に熱拡散することができるため、タッチパネル53などの外郭表面に生ずるヒートスポットが緩和され、CPU54の温度上昇も抑制することができる。
一方、シート型ヒートパイプ1の放熱部では、蒸気が凝縮して作動液が溜まるが、シート型ヒートパイプ1の内部で、蒸気通路20の両側に形成されたグルーブ22の強い毛細管力により、作動液が蒸気通路20に直交する液通路35A,35Bから、蒸気通路20に沿った液通路35を伝わって放熱部から受熱部へと戻される。したがって、受熱部で作動液が無くなることはなく、ここで蒸発した作動液がグルーブ22を伝わり毛細管力で放熱部に導かれることで蒸発が継続し、シート型ヒートパイプ1としての本来の性能が発揮される。
また、シート型ヒートパイプ1そのものの厚さt1は0.5mm以下であり、特にスマートフォンなどの携帯情報端末51で、使いやすさを追求した筐体の厚さ制限に対応でき、グラファイトシートに比べて熱伝導率が極めて良好なシート型ヒートパイプ1の特徴を活かしつつ、CPU54などの熱を広い領域に速やかに熱拡散することが可能になる。
図34は、第1実施例のシート型ヒートパイプ1を内部に搭載した携帯情報端末51の別な内部構成を示している。ここでのシート型ヒートパイプ1は、携帯情報端末51の筐体と干渉する部位として、電池パック57を逃げた干渉防止用の逃げ部76を設けている。これにより、電池パック57にシート型ヒートパイプ1が接触しないように、シート型ヒートパイプ1を携帯情報端末51の筐体内部に配設することができ、シート型ヒートパイプ1から電池パック57への熱影響も緩和できる。こうした逃げ部76は、電池パック57に限らず、携帯情報端末51の筐体内部に組み込まれる各種機能部品と干渉する部位に設けてもよい。
図34において、シート型ヒートパイプ1の一側面は、その一部が受熱部として熱源となるCPU54を含むマザーボード56と接触して熱接続されると共に、シート型ヒートパイプ1の他側面は、その一部が筐体の背面カバー52と接触して熱接続され、特にCPU54から離れた部位で放熱部が形成される。つまり、ここでのシート型ヒートパイプ1は、携帯情報端末51の筐体内部で、背面カバー52とCPU54を搭載するマザーボード56との間に設置される。
そして、上記図34に示す携帯情報端末51は、筐体の内部でCPU54などが発熱して温度が上昇すると、そのCPU54からの熱がシート型ヒートパイプ1の一側面の受熱部に伝わり、受熱部では作動液が蒸発して、蒸気通路20を通して受熱部から温度の低い放熱部に向かって蒸気が流れ、シート型ヒートパイプ1の内部で熱輸送が行われる。この放熱部に輸送された熱はシート型ヒートパイプ1の広い平面状の領域に熱拡散され、シート型ヒートパイプ1の他側面から、筐体の背面カバー52に放熱される。これにより携帯情報端末51は、CPU54などに発生する熱を広い領域に熱拡散することができるため、背面カバー52などの外郭表面に生ずるヒートスポットが緩和され、CPU54の温度上昇も抑制することができる。
一方、シート型ヒートパイプ1の放熱部では、蒸気が凝縮して作動液が溜まるが、シート型ヒートパイプ1の内部で、蒸気通路20の両側に形成されたグルーブ22の強い毛細管力により、作動液が蒸気通路20に直交する液通路35A,35Bから、蒸気通路20に沿った液通路35を伝わって放熱部から受熱部へと戻される。したがって、受熱部で作動液が無くなることはなく、ここで蒸発した作動液がグルーブ22を伝わり毛細管力で放熱部に導かれることで蒸発が継続し、シート型ヒートパイプ1としての本来の性能が発揮される。
図35は、上述した携帯情報端末51の筐体内部に設置されるシート型ヒートパイプ1の変形例を示している。ここでは、容器15の四隅に面取部16に代わる取付け部75が配設される。取付け部75は貫通孔として形成され、携帯情報端末51の筐体への取付けを可能にするもので、例えばタッチパネル53の背面部に形成したねじ孔(図示せず)に取付け部75を一致させ、図示しない止着部材としてのねじを取付け部75に貫通させて、ねじ孔に螺着することで、シート型ヒートパイプ1を携帯情報端末51の筐体に対して所望の位置に容易に取付け固定することができる。
また、携帯情報端末51の筐体内部には、シート型ヒートパイプ1に限らず、別な形状のシート型ヒートパイプ2,3,4を設置してもよい。図36は、第3実施例のシート型ヒートパイプ3の変形例を示している。ここでは、受熱部19の四隅に図35で示したものと同様の取付け部75が配設される。この場合、特に取付け部75を利用して、シート型ヒートパイプ3の受熱部19を熱源であるCPU54に密着させることが可能になる。
取付け部75は図35や図36に示す貫通孔に限らず、携帯情報端末51の筐体への取付け固定を容易に可能にするものならば、どのような構成でどの位置に設けても構わない。
特に、図36に示すシート型ヒートパイプ3は、その一端に放熱部32を有すると共に、他端にCPU54と熱接続する受熱部19を有しており、受熱部19はCPU54の外形形状に合せて、シート型ヒートパイプ3のその他の部分である放熱部32や、放熱部32と受熱部19とを繋ぐ連結部よりも、平面視で大きく形成されている。このように、受熱部19をシート型ヒートパイプ3のその他の部分よりも大きくすれば、受熱部19と熱部品であるCPU54との熱接続が確実なものとなり、CPU54から発生する熱を効率よく受熱部19に導いて、CPU54などの熱部品の性能をより十分に発揮させることが可能になる。
また、シート型ヒートパイプ3のさらに別な変形例として、図37には放熱部32をシート型ヒートパイプ3のその他の部分よりも、平面視で大きく形成したものが示されている。同図において、ここでは受熱部19の四隅だけでなく、放熱部32の四隅にも取付け部75が配設される。放熱部32は、電池パック57の外形形状に合せて、受熱部19や、受熱部19と放熱部32とを繋ぐ連結部よりも大きく形成される。したがってこの場合は、取付け部75を利用して、受熱部19を熱源であるCPU54に密着させたり、放熱部32を電池パック57に密着させたりすることが可能になる。また、シート型ヒートパイプ3の放熱部32を、シート型ヒートパイプ3のその他の部分も大きくすれば、放熱部32に輸送された熱を電池パック57などの広い領域に放散して、CPU54などの熱部品の性能をより十分に発揮させることが可能になる。
図38は、携帯情報端末51に搭載される第2実施例のシート型ヒートパイプ2を示している。ここでのシート型ヒートパイプ2は、容器15の途中で曲げ部18を1箇所だけ設けた略L字形状に形成される。また図39に示すように、第2実施例のようなスリム化されたシート型ヒートパイプ2は、これを放熱プレート60に熱接続した冷却ユニットが携帯情報端末51の筐体内部に組み込まれる。放熱プレート60は熱伝導率が15W/m・k以上で、厚さが0.3mm以下のアルミニウム合金などの金属からなる。そして、この放熱プレート60は、ニッケルや錫などのメッキ層(図示せず)を表面に施してから、接合部材として融点が160℃以下の低温半田63により、シート型ヒートパイプ2と接合される。この低温半田63を用いた半田付けにより、シート型ヒートパイプ2と放熱プレート60が良好な熱接続となり、且つ半田付けの際に、シート型ヒートパイプ2が熱による変形で膨れる虞も一掃できる。なお、シート型ヒートパイプ2に代わり、他のスリム化されたシート型ヒートパイプ3,4を放熱プレート60に熱接続してもよく、これも同様の作用効果が得られる。
上述したL字状のシート型ヒートパイプ2を熱接続した矩形板状の放熱プレート60は、図32に示すシート型ヒートパイプ1の代わりに設置される。シート型ヒートパイプ2は放熱プレート60の背面側にあって、矩形箱状をなす電池パック57の側面に沿って配置される。また、CPU54はマザーボード56の正面側にあって、CPU54の近傍にシート型ヒートパイプ2の一部が位置するように配設される。放熱プレート60は、携帯情報端末51の筐体内部形状に合せた外形を有している。
そしてこの場合は、携帯情報端末51の筐体の内部でCPU54などが発熱して温度が上昇すると、そのCPU54からの熱が放熱プレート60を経由してシート型ヒートパイプ2の受熱部に伝わり、受熱部では作動液が蒸発して、蒸気通路20を通して受熱部から温度の低い放熱部に向かって蒸気が流れ、シート型ヒートパイプ2の内部で熱輸送が行われる。この放熱部に輸送された熱は放熱プレート60の広い平面状の領域に熱拡散され、放熱プレート60の裏表両面から、タッチパネル53の背面をなす金属板59と、電池パック57にそれぞれ放熱される。これにより携帯情報端末51は、CPU54などに発生する熱を広い領域に熱拡散することができるため、タッチパネル53などの外郭表面に生ずるヒートスポットが緩和され、CPU54の温度上昇も抑制することができる。
一方、シート型ヒートパイプ2の放熱部では、蒸気が凝縮して作動液が溜まるが、シート型ヒートパイプ2の内部で、蒸気通路20の両側に形成されたグルーブ22の強い毛細管力により、作動液が蒸気通路20に直交する液通路35A,35Bから、蒸気通路20に沿った液通路35を伝わって放熱部から受熱部へと戻される。したがって、受熱部で作動液が無くなることはなく、ここで蒸発した作動液がグルーブ22を伝わり毛細管力で放熱部に導かれることで蒸発が継続し、シート型ヒートパイプ2としての本来の性能が発揮される。
また、シート型ヒートパイプ2そのものの厚さt1は0.5mm以下であり、また放熱プレート60を利用することで、シート型ヒートパイプ2をCPU54や電池パック57に重ねて配置する必要がなく、特にスマートフォンなどの携帯情報端末51で、使いやすさを追求した筐体の厚さ制限に対応でき、グラファイトシートに比べて熱伝導率が極めて良好なシート型ヒートパイプ2の特徴を活かしつつ、CPU54などの熱を広い領域に速やかに熱拡散することが可能になる。
次に、上述した各実施例1〜4について、細部の構成や関連する変形例を説明する。
図40は、前記図11で示した第1シート体11のA部におけるD−D線断面図と、第2シート体12のB部におけるE−E線断面図である。同図において、シート体11,12にハーフエッチング加工を施す際に、蒸気通路20を形成する通路部21の掘り込み深さL1は、シート体11,12の厚さt2の50%以上とする。このような深さL1の掘り込み部を、エッチング加工により蒸気通路20の通路部21として形成すれば、薄いシート型ヒートパイプ2であっても、容器15の内部で十分な蒸気通路を確保できる。また、エッチング加工の場合は、製造時にウィック22を形成する溝26の掘り込み深さL2が、通路部21の掘り込み深さL1よりも自ずと浅くなる(L1>L2)が、溝26の掘り込み深さL2が浅い分、ウィック22で強い毛細管力が得られ、製造上の困難さを伴うことなくシート型ヒートパイプ2の性能を向上させることができる。
図41は、シート型ヒートパイプ2の変形例を示している。この図に示すウィック22は、第1シート体11に溝26や壁27を形成する一方で、第2シート体12には壁27を設けず、溝26だけを形成して構成される。そして、ハーフエッチング加工を施したシート体11,12の片側面を向い合せて、側壁23を拡散接合することにより、蒸気通路20の両側に所望のウィック22を形成したシート型ヒートパイプ2を得る。このように、溝26や壁27を工夫することで、様々な構成のウィック22を得ることができる。
図42は、第1実施例のシート型ヒートパイプ1の変形例を示しており、上述した電池パック57を逃げた干渉防止用の逃げ部76を設けている。図43は、逃げ部76が切欠きまたは薄肉部である場合の、図42のF−F線断面図を示している。また図44は、逃げ部76が貫通孔である場合の、図42のF−F線断面図を示している。このように、逃げ部76は機能部品や電池パック57の形状に合せて、例えば凹状の切欠きまたは薄肉状に形成したり、貫通した孔に形成したりすることができる。また、逃げ部76は必要に応じてシート型ヒートパイプ1の適所に形成される。
図45は、第3実施例のシート型ヒートパイプ3において、受熱部19とCPU54との位置関係を示したものである。CPU54の外形は矩形に形成され、その形状に合せて受熱部19が形成される。受熱部19は、CPU54の全面が接触するような形状とするのが好ましい。
図46は、第3実施例のシート型ヒートパイプ3における受熱部19の変形例を示している。ここでの受熱部19は、熱源であるCPU54に対して、その周囲の50%を占める領域を取り囲むように、CPU54の側部に配置される。このように、携帯情報端末51の筐体の厚さに制限があり、受熱部19とCPU54を上下に重ねて配置できない場合であっても、CPU54の周囲の少なくとも50%を占める領域にわたって、シート型ヒートパイプ3の受熱部19をCPU54の側部に配置すれば、シート型ヒートパイプ3を携帯情報端末51の薄い筐体内部に収容できるだけでなく、CPU54からの熱を効果的にシート型ヒートパイプ3で熱輸送させることができる。
図47は、第3実施例のシート型ヒートパイプ3において、受熱部19となる容器15の一部に、シート状の不織布37を装填した状態を示している。不織布37は容器15の内部にあって、シート体11,12の間に配設され、受熱部19に形成されたウィック22が、その内部に装填した不織布37によりさらに微細化される。図48は、図47に示す不織布37を拡大したもので、不織布37は金属繊維38の集合体からなり、受熱部19におけるウィック22の毛細管力を高めるために、30μm以下の隙間を有している。これにより、受熱部19では、蒸気通路20の両側に形成されたグルーブ22に加えて、金属繊維38からなる不織布37の毛細管力が作用することで、受熱部31に素早く作動液を還流させて、CPU54からの熱を効率よく奪うことが可能になり、シート型ヒートパイプ3の性能を向上させることができる。
図49〜図68は、本発明の第5実施例を示すもので、ここでは様々な形状の扁平型ヒートパイプ6,7,10が、放熱プレート60と熱接続した状態で、上述した携帯情報端末51の筐体内部に搭載される。
図49は、U字状の扁平型ヒートパイプ6を放熱プレート60に熱接続した冷却ユニット単体の外観を示し、図50は、L字状の扁平型ヒートパイプ7を放熱プレート60に熱接続した冷却ユニット単体の外観を示している。これらの各図において、放熱プレート60は熱伝導率が15W/m・k以上で、厚さが0.3mm以下のアルミニウム合金などの金属からなる。そして、この放熱プレート60は、ニッケルや錫などのメッキ層(図示せず)を表面に施してから、接合部材として融点が160℃以下の低温半田63により、扁平型ヒートパイプ6または扁平型ヒートパイプ7と接合される。この低温半田63を用いた半田付けにより、扁平型ヒートパイプ6または扁平型ヒートパイプ7と放熱プレート60が良好な熱接続となり、且つ半田付けの際に、扁平型ヒートパイプ6や扁平型ヒートパイプ7が熱による変形で膨れる虞も一掃できる。
図51〜図55は、L字状の扁平型ヒートパイプ7を放熱プレート60に熱接続した冷却ユニットの様々な例を示している。図51や図52に示す例では、放熱プレート60の四隅に位置する角部に、携帯情報端末51の筐体への取付け部75がそれぞれ設けられる。ここでの取付け部75は貫通孔として形成され、例えばタッチパネル53の背面部に形成したねじ孔(図示せず)に取付け部75を一致させ、図示しない止着部材としてのねじを取付け部75に貫通させて、ねじ孔に螺着することで、放熱プレート60を携帯情報端末51の筐体に対して所望の位置に容易に取付け固定することができる。
図53に示す例では、放熱プレート60が取付け部75の他に、携帯情報端末51の筐体と干渉する部位77を逃げた干渉防止用の切欠き78を設けている。ここでは、放熱プレート60の下部左右両側に2箇所の切欠き78を設けており、筐体と干渉する部位77に放熱プレート60が接触しないように、取付け部75を利用して放熱プレート60を携帯情報端末51の筐体に取付け固定することができ、放熱プレート60から携帯情報端末51の筐体と干渉する部位77の熱影響も緩和できる。同様に、図54に示す例でも、放熱プレート60は取付け部75の他に、その右側に1箇所の切欠き78を設けている。
また、図55に示す放熱プレート60は、携帯情報端末51の筐体と干渉する部位として、電池パック57を逃げた干渉防止用の孔79を設けている。これにより、電池パック57に放熱プレート60が接触しないように、取付け部75を利用して放熱プレート60を携帯情報端末51の筐体に取付け固定することができ、放熱プレート60から電池パック57への熱影響も緩和できる。
逃げ部としての切欠き78や孔79は、図51〜図55に示したものに限らず、必要に応じて放熱プレート60の適所に形成される。また、切欠き78や孔79を放熱プレート60に設けた場合でも、扁平型ヒートパイプ7はその全体が放熱プレート60に熱接続するように配置される。
次に、本実施形態で使用するヒートパイプについて、図56〜図65を参照しながら説明する。
図58は、本実施形態で使用する扁平加工を施していない直線状のヒートパイプ8を示している。ここでのヒートパイプ8は非扁平な円管状で、その外径がΦ2mmからΦ6mmであり、内壁にグルーブ41が形成された材質が純銅などからなる内面溝付き銅管42の両端を、Tig溶接などにより封止して構成される。何れの場合も、その内部は真空状態で純水などの作動液(図示せず)が封入される。
ヒートパイプ8の本体部をなす管体としては、熱伝導性が特に優れた純銅製の銅管42に代わって、加工性を高めた銅合金管などを用いてもよく、その場合も、内壁に複数のグルーブ41が形成され、中空円筒状の長手方向に延びる管体の両端に、Tig溶接などの適宜手段による封止部43をそれぞれ形成することで、管体の内部を真空状態に密閉したヒートパイプ8が得られる。この場合、グルーブ41は銅管42の内面全周に、且つ長手方向に沿って設けられ、作動液の液体流路44を形成する。また、このグルーブ41に囲まれた中空な部分は、作動液の気体流路45を形成する。
ヒートパイプ8は曲げを施すことなく、携帯情報端末51の筐体の設置スペースに合わせた厚さに扁平加工を施すことで、図56に示すように、銅管42の一部若しくは全体に潰し部を形成したI字状の扁平型ヒートパイプ10が得られる。
代わりに、ヒートパイプ8は銅管42の途中に一ヶ所または数ヶ所の曲げが施され、図57に示すように、コの字状やL字状あるいはU字状に形成されることもある。その後で、携帯情報端末51の筐体の設置スペースに合わせた厚さに扁平加工を施すことで、上述したような銅管42の一部若しくは全体に潰し部を形成した扁平型ヒートパイプ6,7が構成される。
U字状の扁平型ヒートパイプ6の外形は、銅管42の途中2箇所に約90°の曲げが施されて、その部位に湾曲した曲げ部46を各々形成しており、直線状の基部47の両端に曲げ部46を介して直線状の腕部48を繋げた形状となっている。これは図示しないが、I字状の扁平型ヒートパイプでも同じことがいえる。ここでの扁平型ヒートパイプ6は、基部47に対応するその一部が受熱部49として、放熱プレート60を介してCPU54と熱伝達が可能な状態に配置され、腕部48に対応する別な一部が放熱部50として、携帯情報端末51の筐体の外周部の一部に沿った状態で、放熱プレート60の両側に熱接続される。
また、L字状の扁平型ヒートパイプ7の外形は、銅管42の途中1箇所に約90°の曲げが施されて、その部位に湾曲した曲げ部46を形成しており、直線状の基部47の一端に曲げ部46を介して直線状の腕部48を繋げた形状となっている。ここでの扁平型ヒートパイプ7は、基部47に対応するその一部が受熱部49として、放熱プレート60を介してCPU54と熱伝達が可能な状態に配置され、腕部48に対応する別な一部が放熱部50として、携帯情報端末51の筐体の外周部の一部に沿った状態で、放熱プレート60の一側に熱接続される。
図59は、扁平型ヒートパイプ6,7,10の断面を示している。扁平型ヒートパイプ6,7,10の厚さは、携帯情報端末51の筐体の設置スペースに合わせて、0.4mmから2mmの範囲が好ましい。ヒートパイプ8を扁平加工した扁平型ヒートパイプ6,7,10も、グルーブ11は銅管42の内面全周に、且つ長手方向に沿って設けられ、作動液の液体流路44を形成する。また、このグルーブ41に囲まれた中空な部分は、作動液の気体流路45を形成する。
扁平型ヒートパイプ6,7,10の断面形状は、図59で示したものに限らず、種々の変形が可能である。それらの変形例を説明すると、図60〜図63に示す扁平型ヒートパイプ6,7,10は、何れも銅管42の内面全周ではなく内面の一部に、長手方向に沿って複数のグルーブ41が設けられ、このグルーブ41が作動液の液体流路44を形成する一方で、グルーブ41を形成していない部分で、作動液の気体流路45を形成している。
より具体的には、図60に示す扁平型ヒートパイプ6,7,10は、その幅方向一側に作動液の液体流路44が形成され、幅方向他側に作動液の気体流路45が形成される。これにより、作動液の液体流路44と気体流路45を、扁平型ヒートパイプ6,7,10の幅方向の一側と他側にそれぞれ分けて配置できる。
図61に示す扁平型ヒートパイプ6,7,10は、その幅方向の両側に作動液の液体流路44が形成され、幅方向の中央部に作動液の気体流路45が形成される。これにより、作動液の液体流路44と気体流路45を、扁平型ヒートパイプ6,7,10の幅方向の両側と中央部にそれぞれ分けて配置できる。
図62や図63に示す扁平型ヒートパイプ6,7,10は、図60や図61に示すものよりも、より幅方向を拡げた略平面形状を有している。この場合の扁平型ヒートパイプ6,7,10の幅は、放熱プレート60の幅にほぼ一致したものとなり、放熱プレート60全体に熱を速やかに拡散させることができる。
別な変形例として、図64に示す扁平型ヒートパイプ6,7,10のように、銅管42に対して異なる扁平率で扁平加工を施してもよく、この場合は扁平率が大きく厚さの薄い第1の部位64と、扁平率が小さく厚さの厚い第2の部位65を形成して、放熱プレート60に熱接続することにより、ヒートパイプとしての性能と携帯情報端末51の筐体への設置性の両立が容易となり、有利である。
こうして完成した扁平型ヒートパイプ6,7,10は、前述のように取付け部75や、必要に応じて切欠き78や孔79を設けた放熱プレート60と、低温半田63を用いて半田付け接続される。図65と図66は、扁平型ヒートパイプ6,7,10と放熱プレート60との接合構造を示しているが、放熱プレート60には、扁平型ヒートパイプ6,7,10が入り込む形状の肉厚を薄くした凹状の窪み部66が形成される。この場合、放熱プレート60に形成した窪み部66を利用して、その窪み部66に扁平型ヒートパイプ6,7,10を設置することで、携帯情報機器51の薄い筐体内にも放熱プレート60付きの扁平型ヒートパイプ6,7,10を設置することができる。また、図65に示すように、窪み部66を形成していない部位で、扁平型ヒートパイプ6,7,10の厚さよりも放熱プレート60の厚さが薄い場合には、扁平型ヒートパイプ6,7,10の一部が放熱プレート60の一側面よりも外方に突出するが、図66に示すように、窪み部66を形成していない部位で、扁平型ヒートパイプ6,7,10の厚さよりも放熱プレート60の厚さが厚い場合には、放熱プレート60の一側面から突出しないように扁平型ヒートパイプ6,7,10を設置することができ、携帯情報機器51への設置が一層容易になる。
図67に示すように、扁平型ヒートパイプ6,7,10を熱接続した放熱プレート60は、タッチパネル53の背面を形成する金属板59と電池パック57との間に、可能な限り密着させながら設置される。また、CPU54が実装されたマザーボード56も、CPU54と放熱プレート60が可能な限り密着するように、携帯情報端末51の筐体内部に設置される。このとき、CPU54と放熱プレート60との間には、必要に応じてCPU54のカバーが設置されることもある。つまり、扁平型ヒートパイプ6,7,10を熱接続した放熱プレート60は、タッチパネル53の背面とマザーボード56や電池パック57との間に設置される。
上記図67に示す携帯情報端末51は、筐体の内部でCPU54などが発熱して温度が上昇すると、そのCPU54からの熱が放熱プレート60を経由して扁平型ヒートパイプ6,7,10の受熱部49に伝わり、受熱部49では作動液が蒸発して、受熱部49から温度の低い放熱部50に向かって蒸気が流れ、扁平型ヒートパイプ6,7,10内で熱輸送が行われる。この放熱部50に輸送された熱は放熱プレート60の広い平面状の領域に熱拡散され、放熱プレート60の裏表両面から、タッチパネル53の背面をなす金属板59と、電池パック57にそれぞれ放熱されるものである。これにより携帯情報端末51は、CPU54などに発生する熱を広い領域に熱拡散することができるため、タッチパネル53などの外郭表面に生ずるヒートスポットが緩和され、CPU54の温度上昇も抑制することができる。
一方、扁平型ヒートパイプ6,7,10の放熱部50は、蒸気が凝縮して作動液が溜まるが、扁平型ヒートパイプ6,7,10の内壁に形成されたグルーブ41の毛細管力により、作動液が液体流路44を伝わって放熱部50から受熱部49へと戻される。したがって、受熱部49で作動液が無くなることはなく、ここで蒸発した作動液が気体流路45を伝わり放熱部50に導かれることで蒸発が継続し、扁平型ヒートパイプ6,7,10本来の性能が発揮される。
また、扁平型ヒートパイプ6,7,10をCPU54に重ねて配置する必要がなく、特にスマートフォンなどの携帯情報端末51で、使いやすさを追求した筐体の厚さ制限に対応でき、グラファイトシートに比べて熱伝導率が極めて良好な扁平型ヒートパイプ6,7,10の特徴を活かしつつ、放熱プレート60を介してCPU54などの熱を広い領域に速やかに熱拡散することが可能になる。
図68は、扁平型ヒートパイプ6,7,10を熱接続した放熱プレート60を、背面カバー52とマザーボード56との間に設置した別な例を示している。ここでの放熱プレート60は、携帯情報端末51の筐体と干渉する部位として、電池パック57を逃げた干渉防止用の逃げ部76を設けている。これにより、電池パック57に放熱プレート60が接触しないように、放熱プレート60を携帯情報端末51の筐体内部に配設することができ、放熱プレート60から電池パック57への熱影響も緩和できる。こうした逃げ部76は、電池パック57に限らず、携帯情報端末51の筐体内部に組み込まれる各種機能部品と干渉する部位に設けてもよい。
図68において、扁平型ヒートパイプ6,7,10を熱接続した放熱プレート60は、携帯情報端末51の筐体内部で、筐体の背面を形成する背面カバー52とCPU54を含むマザーボード56との間に、可能な限り密着させながら設置される。
そして、上記図68に示す携帯情報端末51は、筐体の内部でCPU54などが発熱して温度が上昇すると、そのCPU54からの熱が放熱プレート60を経由して扁平型ヒートパイプ6,7,10の受熱部49に伝わり、受熱部49では作動液が蒸発して、受熱部49から温度の低い放熱部50に向かって蒸気が流れ、扁平型ヒートパイプ6,7,10内で熱輸送が行われる。この放熱部50に輸送された熱は放熱プレート60の広い平面状の領域に熱拡散され、放熱プレート60の他側面から、筐体の背面カバー52に放熱される。これにより携帯情報端末51は、CPU54などに発生する熱を広い領域に熱拡散することができるため、背面カバー52などの外郭表面に生ずるヒートスポットが緩和され、CPU54の温度上昇も抑制することができる。
一方、扁平型ヒートパイプ6,7,10の放熱部50は、蒸気が凝縮して作動液が溜まるが、扁平型ヒートパイプ6,7,10の内壁に形成されたグルーブ41の毛細管力により、作動液が液体流路44を伝わって放熱部50から受熱部49へと戻される。したがって、受熱部49で作動液が無くなることはなく、ここで蒸発した作動液が気体流路45を伝わり放熱部50に導かれることで蒸発が継続し、扁平型ヒートパイプ6,7,10本来の性能が発揮される。
また、扁平型ヒートパイプ6,7,10をCPU54に重ねて配置する必要がなく、特にスマートフォンなどの携帯情報端末51で、使いやすさを追求した筐体の厚さ制限に対応でき、グラファイトシートに比べて熱伝導率が極めて良好な扁平型ヒートパイプ6,7,10の特徴を活かしつつ、放熱プレート60を介してCPU54などの熱を広い領域に速やかに熱拡散することが可能になる。
図69は、冷却構成の違いによる携帯情報端末51の温度上昇を比較した試験結果を示したものである。同図(A)は、第1実施例のシート型ヒートパイプ1を、タッチパネル53の背面とマザーボード56や電池パック57との間に設置した場合のタッチパネル53の表面温度を示し、(B)は、第5実施例の扁平型ヒートパイプ6を熱接続した放熱プレート60を、タッチパネル53の背面とマザーボード56や電池パック57との間に設置した場合のタッチパネル53の表面温度を示し、(C)は、従来のグラファイトシートを、タッチパネル53の背面とマザーボード56や電池パック57との間に設置した場合のタッチパネル53の表面温度を示している。
試験ではCPU54の代わりとして、熱源ヒータ(図示せず)を携帯情報端末51であるスマートフォンに装着して行なった。試験条件として、周囲温度は25℃であり、熱源ヒータの発熱量は5Wであり、20分経過した後の温度を測定した。また、試験で使用したシート型ヒートパイプ1の厚さは0.5mmであり、扁平型ヒートパイプ6は一方の腕部48を受熱部49として熱源ヒータの近傍に配置する一方で、他方の腕部48を放熱部50として電池パック57の側部に沿わせた形状で、受熱部49と放熱部50の厚さはそれぞれ0.5mmと0.8mmであり、扁平型ヒートパイプ6と熱接続した放熱プレート60は銅製で、その厚さは0.2mmであり、グラファイトシートの厚さは0.017mmであった。
上記試験結果から、従来のグラファイトシートの冷却構成と比べて、本実施例で採用するシート型ヒートパイプ1を使用した冷却構成や、扁平型ヒートパイプ6を設置した放熱プレート60の冷却構成では、熱源ヒータの発熱がシート型ヒートパイプ1や放熱プレート60の全体に広く拡散され、タッチパネル53表面のヒートスポットが大きく緩和されることがわかる。
また図69では、タッチパネル53の表面全体の温度分布を画像として示しているが、特に携帯情報端末51の筐体内部において、電池パック57が設置される領域である「電池パックエリア」と、マザーボード56が設置される領域である「マザーボードエリア」の温度分布に着目すると、(A)のシート型ヒートパイプ1を使用した冷却構成では、「電池パックエリア」と「マザーボードエリア」との温度差が3K以内となっており、シート型ヒートパイプ1からタッチパネル53の背面に対して、均一で良好な熱拡散が図られていることがわかる。
ところで、実際に携帯情報端末51の制御処理部として組み込まれるCPU54は、CPU54自体の温度上昇を制限するために、所定の温度に上昇するとクロックダウンが働く構成となっている。しかし、クロックダウンが働いた状態では、CPU54としての処理能力が低下するため、携帯情報端末51の筐体内部でCPU54がクロックダウンを生じないような状態に温度管理を行なうことが重要となる。
この点、特に図69(A)のシート型ヒートパイプ1を使用した冷却構成では、CPU54のクロックダウンが生じない状態で、タッチパネル53表面の温度上昇が最大になって飽和したときの「電池パックエリア」と「マザーボードエリア」との温度差が10K以内となる。そのため、CPU54本来の処理能力を落とさずに、シート型ヒートパイプ1からタッチパネル53の背面に対して、均一で良好な熱拡散を図ることが可能になる。
以上のように、上記各実施例で説明した携帯情報端末51は、図32や図67で示したように、シート型ヒートパイプ1,2,3,4または扁平型ヒートパイプ6,7,10を、タッチパネル53の背面と基板であるマザーボード56または電池パック57との間に設置している。
この場合、シート型ヒートパイプ1,2,3,4または扁平型ヒートパイプ6,7,10を、携帯情報端末51の筐体の一部をなすタッチパネル53の背面に対向して配置したので、こうしたシート型ヒートパイプ1,2,3,4または扁平型ヒートパイプ6,7,10を介して、CPU54などの熱部品から筐体の広い領域に良好な熱拡散が行なれ、CPU54などの熱部品の性能を十分に発揮させることが可能になる。
また、上記各実施例で説明した携帯情報端末51は、図34や図68で示したように、シート型ヒートパイプ1,2,3,4または扁平型ヒートパイプ6,7,10を、背面カバー52と基板であるマザーボード56との間に設置している。
この場合、シート型ヒートパイプ1,2,3,4または扁平型ヒートパイプ6,7,10を、携帯情報端末51筐体の一部をなす背面カバー52の裏面に対向して配置したので、こうしたシート型ヒートパイプ1,2,3,4または扁平型ヒートパイプ6,7,10を介して、CPU54などの熱部品から筐体の広い領域に良好な熱拡散が行なれ、CPU54などの熱部品の性能を十分に発揮させることが可能になる。
また、第5実施例に示す扁平型ヒートパイプ6,7,10を用いた冷却構成では、図65や図66で示したように、銅などの金属や、熱伝導性の良い成形材料(プラスチック)などからなる放熱プレート60に、その肉厚を薄くした窪み部66を形成し、当該窪み部66に扁平型ヒートパイプ6,7,10を設置するのが好ましい。
こうすると、放熱プレート60に形成した窪み部66を利用して、その窪み部66に扁平型ヒートパイプ6,7,10を設置することで、携帯情報機器51の薄い筐体内にも放熱プレート60付きの扁平型ヒートパイプ6,7,10が無理なく設置可能となり、放熱プレート60により筐体のより広い領域に良好な熱拡散を行なえるので、CPU54などの熱部品の性能をより十分に発揮させることが可能になる。
また、図36や図37で示したように、上述のシート型ヒートパイプ1,2,3,4は受熱部19と放熱部32を有し、こうした受熱部19または放熱部32を、同じシート型ヒートパイプ1,2,3,4のその他の部分よりも大きく形成している。
この場合、受熱部19をその他の部分よりも大きくすれば、受熱部19と熱部品である例えばCPU54との熱接続が確実になり、また放熱部32をその他の部分も大きくすれば、広い領域に放熱できることから、CPU54などの熱部品の性能をより十分に発揮させることが可能になる。
また、図69で示したように、タッチパネル53の背面を、マザーボード56が設置される第1領域と電池パック57が設置される第2領域に区別した場合に、タッチパネル53の表面の温度上昇が最大になったときの第1領域と第2領域との温度差が3K以内となるように、シート型ヒートパイプ1を携帯情報端末51の筐体内部に設置した構成を有している。
このように、タッチパネル53の温度上昇が最大になった場合に、タッチパネル53を局部的に高温にさせないことで、タッチパネル53の背面に対して均一で良好な熱拡散を図ることができ、CPU54などの熱部品の性能をより十分に発揮させることが可能になる。
また、熱部品であるCPU54のクロックダウンが生じない状態で、タッチパネル53の表面の温度上昇が最大になったときの第1領域と第2領域との温度差が10K以内となるように、シート型ヒートパイプ1を携帯情報端末51の筐体内部に設置した構成を有している。
このように、熱部品であるCPU54などのクロックダウンが生じない状態で、タッチパネル53の温度上昇が最大になった場合に、タッチパネル53の背面を局部的に高温にさせないことで、CPU54本来の処理能力を落とさずに、タッチパネル53の背面に対して均一で良好な熱拡散を図ることができ、CPU54などの熱部品の性能をより十分に発揮させることが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、シート型ヒートパイプ1,2,3,4や扁平型ヒートパイプ6,7,10の形状は、上記実施例で示したものに限定されず、所望の性能が得られるものならばどのような形状であっても構わない。また、シート型ヒートパイプ1,2,3,4や扁平型ヒートパイプ6,7,10は、タッチパネル53の背面とマザーボード56または電池パック57の何れか一方との間に設置されていればよい。