JP6115040B2 - 炸薬組成物の製造方法及び該製造方法で製造した炸薬組成物 - Google Patents

炸薬組成物の製造方法及び該製造方法で製造した炸薬組成物 Download PDF

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Description

本発明は、炸薬組成物の製造方法及び該製造方法で製造した炸薬組成物に関する。本発明の炸薬組成物は、有害性の低い原料からなる注型に適した炸薬組成物であり、ミサイル弾頭用炸薬として有用である。
従来、主成分として高爆速の粉状爆薬を含有し、バインダー成分としてニトロ可塑剤と、ポリウレタン樹脂としてポリオール及び硬化剤(イソシアネート)とを含有する炸薬組成物及びその製造方法が知られている。
また、ミサイル弾頭用炸薬では、ミサイル発射時の機械的特性のため、厳しい物性(弾性率、伸び等)基準を満足する必要がある。
特許文献1には、爆薬主成分としてシクロテトラメチレンテトラニトロアミン(HMX)及び、またはトリメチレントリニトロアミン(RDX)と、ニトロ可塑剤と、ポリオールとしてポリエチレングリコール(PEG)及びトリメチロールプロパン(TMP)と、硬化剤と、を含有する炸薬組成物が記載されている。硬化剤としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)等のイソシアネートであることが記載されている。その製造方法としては、先ず、ニトロ可塑剤、PEGとTMP、及び必要に応じて硬化触媒を添加して混合し、次に爆薬主成分であるHMX及び、又はRDXを混合し、しかる後に、硬化剤が混合される。このように、炸薬組成物の製造方法においては、従来一般に爆薬主成分を混合した後、最後に硬化剤が混合される。これは、硬化が進行している状態で爆薬主成分を混合すると爆薬主成分に機械的負荷が掛り、万一発火した際に爆轟に至ることを懸念し、爆薬主成分を混合した後に硬化を開始させるのが技術常識となっているためである。
特許文献1では、このように最後に硬化剤を混合する製造方法において、ニトロ可塑剤の配合量を10〜30重量部と規定することで、注型可能であり、且つ、厳しい物性基準を満たすことができるとされている。具体的実施例には、硬化剤としてTDIを使用した具体例が記載されている。しかし、TDIは、労働安全衛生法の規定する特定化学物質であり、作業環境が規制される。したがって、硬化剤としては、より有害性の低いMDI、HDI又はIPDIを用いるのが好ましい。ところが、TDIに替えてMDI、HDI又はIPDIを用いた場合、いずれもTDIに比べると硬化速度が遅いため、これらを最後に添加する製造方法では、爆薬主成分及びニトロ可塑剤がポリウレタンの硬化過程において分離してしまい硬化しない場合があった。
これに対し、特許文献2には、硬化剤としてIPDIを用いた炸薬組成物の製造方法が具体的に記載されている。特許文献2でもやはり硬化剤は最後に混合される。特許文献2では、より製造過程をより単純化することを目的とし、ポリオールとして、引用文献1とは異なるポリイソブチレンポリオールなどの粘性のある液体を用い、先ず、硬化剤以外の全ての成分を混合してペースト状の成分を調整し、そのペースト状の成分と硬化剤(IPDI)とをスタチックミキサーで連続的に混合し、スタチックミキサーの出口から型に直接充填して硬化させる。そうすると、分離することなく炸薬を得ることができる。
特開平2−271986 特開2004−35390
ところで、炸薬組成物の粘度は低いのが望ましい。というのは、粘度が高いと注型時に気泡を生じやすく、ミサイル弾頭用炸薬に気泡が混入すると、ミサイルの発射時の加速の際に気泡がホットスポットとなり起爆してしまう可能性があるため、製品としての安全性が確保できなくなるからである。これに対し、引用文献2では、硬化剤としてIPDIを用いた場合でも、特定の組成とすることで、分離しない炸薬組成物を得ることはできるものの、混合終了後の粘度が580Pa・sと高いため、注型時に気泡が混入する可能性がある。そこで、特許文献2では、それ以上粘度が高まる前に注型するために、スタチックミキサーの出口から型に直接充填し、該充填を真空下で行うことで気泡の混入を防いでいる。つまり、組成のみを調整しても、従来のように硬化剤を最後に投入している限り、粘度の低い炸薬組成物を得ることはできなかった。
そこで、本発明は、硬化剤としてより有害性の低いIPDIを用いて製造作業の安全性を高め、且つ、より粘度の低い炸薬組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、(1)〜(4)である。
(1)爆薬主成分(A)と、ニトロ可塑剤(B)と、ポリオール(C)と、硬化剤(D)と、硬化触媒(E)と、を含有し、前記硬化剤(D)がイソフォロンジイソシアネート(IPDI)である炸薬組成物の製造方法であって、ニトロ可塑剤(B)にポリオール(C)と硬化触媒(E)とを50℃〜60℃で混合してポリオール(C)を溶解する第1の工程と、前記第1の工程の後に前記硬化剤(D)を混合し、ポリウレタン(Y)とする工程と、前記ポリウレタン(Y)に爆薬主成分(A)を混合する第3の工程と、を有する炸薬組成物の製造方法。
(2)前記硬化触媒(E)は、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)であり、前記爆薬主成分(A)、前記ニトロ可塑剤(B)、ポリオール(C)および硬化剤(D)の総和100重量部に対して0.0005重量部以上0.0015重量部以下であることを特徴とする(1)に記載の炸薬組成物の製造方法。
(3)爆薬主成分(A)として、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、トリメチレントリニトロアミン(RDX)、ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタンとからなる群から選ばれた少なくとも1種を70.0重量部以上83.0重量部以下と、ニトロ可塑剤(B)を13.5重量部以上15.5重量部以下と、ポリオール(C)として、ポリエチレングリコール(PEG)2.72重量部以上8.53重量部以下と、トリメチロールプロパン(TMP)0.28重量部以上1.17重量部以下と、硬化剤(D)としてのイソフォロンジイソシアネート(IPDI)を0.87重量部以上3.45重量部以下と、を含むことを特徴とする(2)に記載の炸薬組成物の製造方法。
(4)(1)から(3)のうちいずれか1項に記載の製造方法で製造した炸薬組成物。
本発明によれば、硬化剤(D)としてより有害性の低いIPDIを用いて製造作業の安全性を高めることができ、第1〜第3の工程を順に経ることで、より粘度の低い炸薬組成物を製造することができる。すなわち、硬化速度が比較的遅いIPDIを硬化剤(D)として用いるにあたり、ポリオール(C)と爆薬主成分(A)とを混合する第3の工程に先立って、第2の工程でポリオール(C)にIPDIを混合して硬化を開始することでポリオール(C)と爆薬主成分(A)とを分離することなく混合することができる。一方、第1の工程でポリオール(C)にIPDIを混合する際に予めポリオール(C)を溶解しておくことで、ポリオール(C)とIPDIとの反応が緩やかに進行するため、爆薬主成分(A)の混合する前にポリウレタン(Y)が硬くなり過ぎるのを抑制することができ、粘度の低い炸薬組成物を製造することができる。この製造方法によれば、適度に分子量が伸長したポリウレタン(Y)に対して、第3の工程で爆薬主成分(A)が混合されると、爆薬主成分(A)の表面がポリウレタン(Y)にコーティングされることで、爆薬主成分(A)の摩擦感度が一時的に低下する。それにより、爆薬主成分(A)と混合機との機械的摩擦が低減され、摩擦による発火の可能性が低減した状態で、安全に混合することができ、爆薬主成分(A)の混合に先立ちIPDIを混合することが実現可能となっている。
<炸薬組成物>
本発明に係る炸薬組成物は、爆薬主成分(A)、ニトロ可塑剤(B)、ポリオール(C)、硬化剤(D)及び硬化触媒(E)を含む。
〔爆薬主成分(A)〕
爆薬主成分(A)は、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、トリメチレントリニトロアミン(RDX)、ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタンとからなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。爆薬主成分(A)は、好ましくは70.0重量部以上83.0重量部以下であり、より好ましくは、75.0重量部以上80.0重量部以下とする。70.0重量部より少ないとミサイル用炸薬としては、爆速が低すぎることで必要とされる性能が得にくい。83.0重量部より多いと粉体成分が多すぎて、製造時における爆薬成分が摩擦により発火する可能性が高まる。また、混合後スラリー状態にならなくなるため、注型できない問題が生じ、製造に適さなくなる場合がある。
〔ニトロ可塑剤(B)〕
ニトロ可塑剤(B)は、例えば、ビス(2,2−ジニトロプロピル)アセタール、2,2,8,8−テトラニトロ−4,6−ジオキサデカン、ビス(2,2−ジニトロブチル)ホルマール、5−メチル−2,2,8,8−テトラニトロ−4,6−ジオキサデカン、ビス(2,2−ジニトロブチル)アセタールのうち1種以上を混合した混合物または、2,4−ジニトロエチルベンゼンとトリニトロエチルベンゼンの混合物とし、好ましくは、ビス(2,2−ジニトロプロピル)アセタール、2,2,8,8−テトラニトロ−4,6−ジオキサデカン、ビス(2,2−ジニトロブチル)ホルマール、5−メチル−2,2,8,8−テトラニトロ−4,6−ジオキサデカン、ビス(2,2−ジニトロブチル)アセタールのうち1種以上を混合した混合物である。ニトロ可塑剤(B)として2,4−ジニトロエチルベンゼンとトリニトロエチルベンゼンの混合物を使用しても性能上は問題ないが、前記ニトロ可塑剤に比べ、毒性が高いので使用しない方が好ましい。
また、ニトロ可塑剤(B)の混合量は、好ましくは13.5重量部以上15.5重量部以下であり、より好ましくは、14.0重量部以上15.0重量部以下で混合する。13.5重量部未満であると可塑性が低く、製造終了時の粘度が高くなるため、注型しにくくなる。また、可塑剤の混合量が15.5重量部より多いとポリウレタン樹脂成分(ポリオール(C)、硬化剤(D)、)が相対的に少なくなり、炸薬組成物として必要な樹脂成分が不足し、硬化せずに爆薬主成分(A)とニトロ可塑剤(B)が分離しやすくなる。
〔ポリオール(C)〕
ポリオール(C)は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、トリメチロールプロパン(TMP)などが挙げられ、これらを単独ないし2種以上組み合わせて用いることができる。好ましくは、PEG2.5重量部以上7.5重量部以下、TMP0.35重量部以上1.5重量部以下の範囲で混合する。この場合、PEGとTMPとは、いずれも硬化剤(D)とウレタン反応してポリウレタンを形成するが、3官能であるTMPは架橋剤としての役割も担う。ここで、PEGが、2.5重量部未満であると、TMPが相対的に多くなり、製造後の粘度が高くなる。また、PEGが7.5重量部より多いと相対的にTMPが少なくなり、爆薬主成分との相溶性が悪くなり硬化中に分離しやすくなる。一方、TMPが0.35重量部より少ないとPEGが多い時と同様に爆薬主成分(A)との相溶性が悪くなり、硬化中に分離しやすくなる。また、TMPが1.5重量部より多いと、ウレタン結合による硬化が早すぎて、製造終了時の粘度が高くなり、注型に適さなくなる場合がある。
〔硬化剤(D)〕
硬化剤(D)は、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)である。硬化剤(D)は、0.87重量部以上3.45重量部以下の範囲とするのが好ましい。0.87重量部未満であると、ポリオール(C)がIPDI中のイソシアネート基と反応してウレタン結合する前に爆薬主成分(A)が分離しやすくなり、3.45重量部より多いとウレタン結合による硬化が早すぎて、製造終了時の粘度が高くなり、注型に適さなくなる場合がある。
〔硬化触媒(E)〕
硬化触媒(E)は、好ましくは、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)である。爆薬主成分(A)、ニトロ可塑剤(B)、ポリオール(C)、硬化剤(D)の総和を100重量部としたとき、硬化触媒(E)は、0.0005重量部以上0.0015重量部以下とするのが好ましい。0.0005重量部未満であるとウレタン結合する前に爆薬主成分(A)が分離しやすく、0.0015重量部より多いとウレタン結合による硬化が早すぎて、製造終了時の粘度が高くなり、注型に適さなくなる場合がある。
<炸薬組成物の製造方法>
炸薬組成物は、以下の第1〜第3の工程を順に経て製造することができる。
〔第1の工程〕
第1の工程では、ニトロ可塑剤(B)にポリオール(C)と硬化触媒(E)とを50℃〜60℃で混合し、ポリオール(C)を溶解する。加熱温度が50℃より低いと、次の第2の工程におけるポリオール(C)と硬化剤(D)との反応(ポリウレタン反応)が極めて緩やかとなり、注型時に気泡がほとんど生じない程度に粘度の低い炸薬組成物を得ることはできる。しかし、ポリウレタン反応が不十分であるために、ポリウレタンが十分なバインダー機能を発揮することができず、注型した炸薬組成物が硬化する段階で分離し、炸薬が得られない。一方、加熱温度が60℃を超えると、第2の工程におけるポリウレタン反応が速く進行してポリウレタンが硬くなり、炸薬組成物の粘度が高くなるため注型に適さない。
この第1の工程でポリオール(C)を加熱することは、ポリオール(C)の表面の水分を蒸発させることにも寄与し、次の第2工程における硬化剤(D)との反応(ポリウレタン反応)における発泡の抑制することができる。さらに積極的に水分の蒸発させるためには、減圧下で加熱するのが好ましい。例えば、圧力10mmHg以下とすると、効率よく水分を蒸発させることができる。その際には、粉体のポリオール(C)が舞い上がるのを避けるため、はじめは常圧で混合し、溶解したら減圧するのが望ましい。例えば、常圧で30分程度混合し、その後減圧して30分程度混合すると、ポリオール(C)を溶解することができるとともに、十分に水分を蒸発させることができる。
〔第2の工程〕
第2の工程では、硬化剤(D)を混合し、ポリウレタン(Y)とする。第2の工程は、硬化剤(D)がよく混ざったら混合を終了すればよい。混合は、好ましくは、第1の工程と同様に50〜60℃で行う。また、圧力10mmHg以下とするのが好ましい。
〔第3の工程〕
第3の工程では、ポリウレタン(Y)に爆薬主成分(A)を混合し、炸薬組成物を得る。第3の工程は、少なくとも、ポリウレタン(Y)と爆薬主成分(A)とがよく混ざるまで混合する。その際、粉体の爆薬主成分(A)を2回以上に分けて投入すると、爆発しにくいので好ましい。混合は、好ましくは、第1の工程と同様に50〜60℃で行う。また、圧力10mmHg以下とするのが好ましいが、爆薬主成分(A)が舞い上がるのを防ぐため、はじめは常圧で混合し、その後、減圧するのが好ましい。
この炸薬組成物の製造方法において、爆薬主成分(A)を混合する第3の工程に先立って、第2の工程にて硬化剤(D)としてのIPDIを混合することは、硬化剤(D)として、TDIよりも硬化速度の遅いIPDIを使用する上で、ポリウレタン(Y)の硬化過程で成分が分離してしまうのを防ぐために必要である。というのは、ポリウレタン(Y)が硬化する際に形成される網目構造の中に爆薬主成分(A)やニトロ可塑剤(D)が取り込まれることで、ポリウレタン(Y)がバインダーとして作用して各成分がまとまる。しかし、ポリオール(C)に爆薬主成分(A)を混合した後に、硬化剤(D)を混合すると、ポリウレタン(Y)の硬化が進行して十分な網目構造が形成される前にポリウレタン(Y)からニトロ可塑剤(B)と爆薬主成分(A)とが分離し、硬化が妨げられる不都合が生じる場合があるからである。そこで、爆薬主成分(A)を混合する前に、IPDIを混合してポリウレタン反応を開始させることで、ポリウレタン(Y)の硬化過程で成分が分離するのを防ぐことができる。
その一方で、第1の工程と第2の工程を分け、まず、第1の工程で固体であるポリオール(C)を加温(50〜60℃)することにより溶解し、溶解したポリオール(C)に対して、第2の工程で硬化剤(D)であるIPDIを混合することで、ポリオール(C)の硬化を緩やかに進行させる。これにより、ポリオール(C)がウレタン結合によって適度に分子量伸長したポリウレタン(Y)が得られる。そして、そこへ第3の工程として爆薬主成分(A)を混合することで、分離しないが硬すぎず、注型時に気泡がほとんど混入しない程度に粘度の低い炸薬組成物が得られる。すなわち、第3工程での混合を終了してから、50℃〜60℃環境下にて2時間後の粘度が450Pa・s以下の炸薬組成物が得られる。
なお、この炸薬組成物の製造方法によれば、第1の工程でポリオール(C)を加温することで水分も除去されているので、第2の工程でのポリオール(C)と硬化剤(D)であるIPDIとのウレタン反応を、発泡させることなく進行させることもできる。また、第2の工程で、適度に分子量が伸長したポリウレタン(Y)に対して、第3の工程で爆薬主成分(A)が混合されると、爆薬主成分(A)の表面がポリウレタン(Y)にコーティングされることで、爆薬主成分(A)の摩擦感度が一時的に低下する。それにより、爆薬主成分(A)と混合機との機械的摩擦が低減され、摩擦による発火の可能性が低減した状態で、安全に混合することができる。
得られた炸薬組成物を、注型し、硬化させることで炸薬が得られる。注型は、例えば、50〜60℃で加熱しながら行うのが好ましい。また、減圧注型したり、あるいは常圧で注型してから減圧振動させることで、脱泡させるのが好ましい。硬化は、例えば、50〜60℃の高温室内に静置することで進行させることができる。その場合の硬化時間の目安は、4日以上である。4日以上経過すると、引っ張り物性が安定するからである。一方、長期間加温し続けるとかえって劣化し、弾性率が低下したり、クラックが発生するなど、物性が悪くなることがあるので、硬化時間は、例えば、4日以上7日以下を目安とし、硬化状況に応じて適宜延長すればよい。
<実施例1〜19>
表1、2に記載の組成にて、下記第1〜第3の工程を圧力10mmHg及び表に記載の温度条件下で順に経て炸薬組成物を得た。得られた炸薬組成物を下記注型・硬化工程にて硬化させ炸薬を得た。なお、表中の略号は、次の意味を示す。
(HMX)シクロテトラメトレンテトラニトラミン
(RDX)シクロトリメトレントリニトラミン
(a−1)ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン
(PEG)ポリエチレングリコール
(TMP)トリメチロールプロパン
(IPDI)イソフォロンジイソシアネート
(MDI)4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
(HDI)ヘキサメチレンジイソシアネート
(DBTDL)ジブチル錫ジラウレート
(BDNPA/F)ビス(2,2−ジニトロプロピル)アセタールとビス(2,2−ジニトロプロピル)ホルマールの混合物
(BDNPA)ビス(2,2−ジニトロプロピル)アセタール
(b−1)ビス(2,2−ジニトロプロピル)アセタール、2,2,8,8−テトラニトロ−4,6−ジオキサデカン、ビス(2,2−ジニトロブチル)ホルマールの混合物
(b−2)ビス(2,2−ジニトロプロピル)アセタールとビス(2,4−ジニトロプロピル)ホルマール、2,2,8,8−テトラニトロ−4,6−ジオキサデカンの混合物
(b−3)ビス(2,2−ジニトロプロピル)アセタールとビス(2,5−ジニトロプロピル)ホルマール、2,2,8,8−テトラニトロ−4,6−ジオキサデカン、ビス(2,2−ジニトロブチル)ホルマールの混合物
(b−4)2,4−ジニトロエチルベンゼンとトリニトロエチルベンゼンの混合物
〔第1の工程〕
ニトロ可塑剤(B)、ポリオール(C)、硬化触媒(E)を10分混合する。
〔第2の工程〕
硬化剤(D)を加え、10分混合し、ポリウレタン(Y)とする。
〔第3の工程〕
ポリウレタン(Y)に、爆薬主成分(A)を2回に分けて加え、30分混合し、炸薬組成物を得る。
〔注型・硬化工程〕
炸薬組成物を注型し、60℃で6日間硬化させることにより炸薬を得る。
Figure 0006115040

Figure 0006115040

実施例1〜19において、第3の工程での混合終了後の炸薬組成物の硬化状態及び2時間後の粘度、硬化した炸薬の硬化状態を、以下の方法にて評価した。その結果を表1、2に示す。
〔混合終了後の炸薬組成物の硬化状態〕
第3の工程での混合終了後の炸薬組成物について、粘度を測定し、その結果から判定した。
注型可能 ○
注型できない或いは注型できても気泡が混入 ×
〔2時間後の炸薬組成物の粘度〕
第3の工程での混合終了後2時間経過した炸薬組成物について、60℃にて、TOKIMEC製E型粘度計を用いて測定した。
〔炸薬の硬化状態〕
炸薬組成物を60℃で5日間硬化させて得られた炸薬について、JANNAF片に加工し、引張試験機にて引張試験を実施し、その結果から判定した。
ミサイル弾頭用炸薬として十分な強度及び弾性を備え、特に強度及び弾性が良好である ◎
ミサイル弾頭用炸薬として十分な強度及び弾性を備える ○
<比較例1、2>
硬化剤(D)としてIPDIを用い、各々表3に記載の組成で60℃にて、ニトロ可塑剤(B)、ポリオール(C)、硬化触媒(E)を混合する第1の工程の後に、爆薬主成分(A)を混合する工程(第3の工程)、硬化剤(D)を混合する工程(第2の工程)を順に経て炸薬組成物及び炸薬の製造を試みた。
<比較例3>
硬化剤(D)としてIPDIを用い、表3に記載の組成で60℃にて、まず、ニトロ可塑剤(B)、ポリオール(C)、硬化触媒(E)及び硬化剤(D)を圧力10mmHg以下で40分混合し、その後、爆薬主成分(A)を1回で加え、圧力10mmHg以下で30分混合し、炸薬組成物及び炸薬の製造を試みた。
<比較例4、5>
硬化剤(D)としてIPDIを用い、各々表3に記載の組成で、比較例4は40℃にて、比較例5は65℃にて、実施例1〜19と同様の製造手順にて炸薬組成物及び炸薬の製造を試みた。
<比較例6〜10>
硬化剤(D)としてIPDIを用い、各々表3に記載の組成で60℃にて、実施例1〜19と同様の製造手順にて炸薬組成物及び炸薬の製造を試みた。
<比較例11〜14>
硬化剤(D)として、比較例11、12ではMDIを、比較例13、14ではHDIを用い、各々表4に記載の組成で、60℃にて、ニトロ可塑剤(B)、ポリオール(C)、硬化触媒(E)を混合する第1の工程の後に、爆薬主成分(A)を混合する工程(第3の工程)、硬化剤(D)を混合する工程(第2の工程)を順に経て炸薬組成物及び炸薬の製造を試みた。
<比較例15、16>
硬化剤(D)として、比較例15ではMDIを、比較例16ではHDIを用い、各々表4に記載の組成で60℃にて、実施例1〜19と同様の製造手順にて炸薬組成物及び炸薬の製造を試みた。
比較例1〜16にて得られた炸薬組成物及び炸薬について実施例1〜19と同様に評価し、その結果を表3、4に併記した。なお、表中の、2時間後の炸薬組成物の粘度の項目の「−」の表示は、第3の工程終了時には既に硬化が進行し過ぎて注型できなかったことを表す。また、炸薬の硬化状態の項目の「分離」の表示は、注型・硬化工程での硬化中にウレタン結合が十分に進む前に爆薬主成分(A)とニトロ可塑剤(B)とが分離してしまい硬化に至らなかったことを表し、「−」の表示は、第3の工程終了時に明らかに硬く気泡が内部に混在して抜けない状態となっていたので、あるいは、パサパサでスラリーにならず硬化しないことが目視観察によって明らかであったので、硬化させなかったことを表す。
Figure 0006115040

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実施例1と比較例1の結果を参照すると、比較例1のようにポリオール(C)に爆薬主成分(A)を混合した後、最後に硬化剤(D)であるIPDIを混合すると、ウレタン反応が十分に進む前に爆薬主成分(A)及びニトロ可塑剤(B)が分離してしまうのに対し、実施例1のように爆薬主成分(A)を混合する前にIPDIを混合することで、気泡の発生を抑制しながら注型することができ、且つ分離することなく硬化させることができる炸薬組成物が得られることがわかる。併せて比較例2を参照すると、最後にIPDIを混合する場合には、硬化触媒(E)を若干量増しただけでもウレタン反応が速くなりすぎ、製造終了2時間後の粘度は580Pa・sと高くなり、注型時に気泡が発生し易い炸薬組成物となり、硬化触媒(E)の配合量により炸薬組成物の粘度をコントロールすることは困難であることがわかる。更に、比較例3の結果も参照すると、爆薬主成分(A)を混合するよりも前にIPDIを混合する場合であっても、予めポリオール(C)を溶解することなく、いきなりIPDIを混合すると、ウレタン反応の進行が速く、爆薬主成分(A)の混合後、スラリーにならず(粉状)、炸薬組成物とすることができなかった。このことから、予め溶解したポリオール(C)に対してIPDIを混合し、その後、爆薬主成分(A)を混合することによってこそ、気泡を生じることなく注型可能であり、且つ分離せずに硬化して炸薬とすることができることが明らかとなった。さらに、併せて実施例19及び比較例4、5の結果も参照すると、その際の混合温度が50℃よりも低いと、反応が遅すぎたのが原因と推定できるが、硬化途中で分離し、60℃よりも高いと、逆に硬化速度が早く、混合終了時に硬化してしまい、炸薬組成物とならなかった。このことから混合温度は50〜60℃とすることが明らかとなった。
また、実施例13と比較例6の結果から、硬化剤(D)としてのIPDIの配合量が0.87重量部をより少ないと、ポリウレタンと爆薬主成分(A)とが分離して硬化しない場合があることがわかった。一方、実施例10と比較例7の結果から、IPDIが3.45重量部を超えると、気泡が混入し、ミサイル弾頭用炸薬としては、使用できないものとなることがわかった。これにより、ミサイル弾頭用では、IPDIの配合量を0.87〜3.45重量部とするのが望ましいことが明らかとなった。また、気泡が混入した比較例7では2時間後の炸薬組成物の粘度が460Pa・sであったのに対し、430Pa・sであった実施例12では気泡の混入がなかったことから、2時間後の炸薬組成物の粘度を450Pa・s以下に保つことが望ましいことが明らかとなった。
また、実施例1、3、4と比較例8、9との結果を参照すると、硬化触媒(E)を配合しない場合には、硬化に至らないことがわかる。これは、ウレタン結合が十分に進む前に爆薬主成分(A)及びニトロ可塑剤(B)が分離してしまったからである。また、硬化触媒(E)を配合した場合でも、配合量が0.0020重量部以上であると、混合終了後の硬化が早く、製造終了時には既に粘度測定できない程度まで硬化が進行して炸薬を成形できない場合があり、硬化触媒(E)の配合量を0.0005〜0.0015重量部とすることで、より確実に気泡を生じることなく注型可能であり、且つ分離せずに硬化して炸薬とすることができることが明らかとなった。
実施例13と比較例10の結果から、架橋剤として作用するTMPの量が0.28よりも少ないと、製造終了2時間後の粘度が低すぎて硬化途中で分離する場合があり、他の実施例の結果も併せて参照すると、TMPは0.28重量部以上1.17重量部以下、PEGは2.72重量部以上8.53重量部以下とし、爆薬主成分(A)は70.0重量部以上83.0重量部以下、ニトロ可塑剤(B)は13.5重量部以上15.5重量部以下とすることが好ましいことがわかった。
ちなみに、比較例11〜14では、硬化剤(D)として、IPDIではなくMDIまたはHDIを用い、硬化速度がIPDIよりも速いことを考慮し、硬化速度を抑えるべく組成を調整したうえで、特許文献1のように最後に硬化剤(D)を添加する手順で炸薬組成物の製造を試みた。すなわち、比較例11、12では、MDIを下限1.07重量部とし、架橋剤下限であるPEG3.62重量部、TMP0.31重量部、ニトロ可塑剤15.0重量部とした。比較例13、14では、HDIの下限0.79重量部とし、架橋剤下限であるPEG3.80重量部、TMP0.41重量部、ニトロ可塑剤15.0重量部とした。そして、硬化触媒(E)の量を微調整したが、やはり硬化触媒(E)の量で硬化状態をコントロールすることはできず、分離したり、或いは逆に硬くなりすぎたりして、目的の炸薬組成物を得ることはできなかった。また、比較例15、16では、MDIまたはHDIを用い、第1の工程、第2の工程、第3の工程を順に経る製造方法にて、爆薬主成分(A)を混合する前に硬化剤(D)を混合して炸薬組成物の製造を試みたが、いずれも混合途中で硬化してしまい、製造を中断せざるを得なかった。

Claims (1)

  1. 爆薬主成分(A)と、ニトロ可塑剤(B)と、ポリオール(C)と、硬化剤(D)と、硬化触媒(E)と、を含有し、前記硬化剤(D)がイソフォロンジイソシアネート(IPDI)である炸薬組成物の製造方法であって、
    ニトロ可塑剤(B)にポリオール(C)と硬化触媒(E)とを50℃〜60℃で混合してポリオール(C)を溶解する第1の工程と、
    前記第1の工程の後に前記硬化剤(D)を混合し、ポリウレタン(Y)とする工程と、
    前記ポリウレタン(Y)に爆薬主成分(A)を混合する第3の工程と、を有し、
    前記硬化触媒(E)は、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)であり、前記爆薬主成分(A)、前記ニトロ可塑剤(B)、ポリオール(C)および硬化剤(D)の総和100重量部に対して0.0005重量部以上0.0015重量部以下であり、
    爆薬主成分(A)として、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、トリメチレントリニトロアミン(RDX)、ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタンとからなる群から選ばれた少なくとも1種を70.0重量部以上83.0重量部以下と、
    ニトロ可塑剤(B)を13.5重量部以上15.5重量部以下と、
    ポリオール(C)として、ポリエチレングリコール(PEG)2.72重量部以上8.53重量部以下と、トリメチロールプロパン(TMP)0.28重量部以上1.17重量部以下と、
    硬化剤(D)としてのイソフォロンジイソシアネート(IPDI)を0.87重量部以上3.45重量部以下と、
    を含むことを特徴とする、炸薬組成物の製造方法。

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