JP5391585B2 - 推進薬、及びその製造方法 - Google Patents
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例えば、アジドメチルメチルオキセタン(以下、AMMOと略記)、AP、可塑剤、硬化剤、架橋剤及び硬化触媒からなる組成物を真空混和後、注型し、さらに硬化させる推進薬が開示されている(特許文献1参照)。
この対策として、バインダとAPの結合力を強化するために結合剤を使用してみたが、十分な効果は得られなかった。また、推進薬の弾性率を高くすることで、推進薬内部での気泡生成を軽減する方法もあるが、その方法では推進薬の伸張比が低下するという新たな問題点が発生した。
本発明の第1の発明及び第4の発明は、高温負荷時にAPから放出される水分量を減らし、炭酸ガス発生量を低減することで、長時間の高温負荷時の気泡発生が抑制される。しかも、AP表面の水分量を低減することで、バインダ原料成分中に含有される結合剤とAPとの反応が活性化し、バインダとAPの結合力が向上する。このため、低温領域での伸張比が向上し、幅広い温度領域で高い燃焼性能が求められるロケットモータ設計においては極めて有効である。
推進薬の代表的な製造方法は以下の第1〜第3工程が含まれている。
第1工程は、AP、及びメチルアジド基を有する末端水酸基ポリエーテルを主成分とするバインダ原料成分をそれぞれ適宜計りとり、所定温度、所定時間で真空混合して組成物1を得る。
第2工程は、前記組成物1中に硬化剤をさらに添加した後、所定温度、所定時間で真空混合して組成物2を得る。
第3工程は、組成物2を所定形状に真空注型した後、所定温度、所定時間で硬化させて推進薬を得る。
なお、硬化した推進薬内部には気泡等の空隙がないことが重要であり、推進薬中に常圧の気泡を巻き込ませないため、推進薬の混和及び注型は真空条件下で実施する。
本発明で用いられるAPは、推進薬中の酸化剤として用いられるものであって、水分量が0.05質量%以下、好ましくは0.03質量%以下となるように調整されたAP粒子を用いる。
APの代表的な調製方法は、反応→結晶化→濾過→乾燥であり、一般的な市販のAPの水分量は0.10質量%以下のものがほとんどであり、おおよそ0.07質量%程度に過ぎない。また、APの水分量は、AP表面にある表面水分とAP内部にある内部水分に分けられ、表面水分は乾燥条件等で低減可能であるが、APの結晶内部に存在する水分は、乾燥工程で低減できる量には限度がある。そこで、APの結晶化工程における結晶化条件を調整してその水分量を0.05質量%以下とするが、近年水分量が0.05質量%以下のAPが市場に提供されているので、それを用いてもよい。
使用した原材料は次の通りである。バインダ原料成分としてはグリシジルアジドポリマー(以下、GAPと略記)、トリメチロールプロパン(以下、TMPと略記)、ジブチルチンジラウレート(以下、DBTDLと略記)、テトラエチレンペンタミンとアクリロニトリルとグリシドールとの反応生成物(以下、TEPANOLと略記)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)を用い、酸化剤としては過塩素酸アンモニウム(以下、APと略記)を使用した。なお、GAPは自社製、TMP及びDBTDLは和光純薬工業(株)製、TEPANOLは3M社製、HDIは日本ポリウレタン工業(株)製、水分量0.01質量%のAPはSNPE社製、それ以外のAPは日本カーリット(株)製である。
実施例及び比較例中における機械的特性の評価は以下に示す測定方法に従って行った。
気泡評価用ブロック用の推進薬の寸法を計測し、初期寸法とした。その後、71℃で20日間温度負荷をかけた後に、再度、推進薬寸法を計測し、その差を寸法変化量とした。この寸法変化量を推進薬内部の気泡発生量の指標とした。
機械的特性評価用ブロック用の推進薬から、ダンベル型引張試験片を作製し、引張速度50mm/minの条件で、2条件の試験温度(20℃、−35℃)にて引張試験を行った。試験結果から、最大応力[抗張力σm(N/cm2)]、最大応力時の伸張比[または歪みεm(%)]および弾性率[E(MPa)]を求めた。なお、ダンベル型引張試験片は全長が127mmのつかみ部の中央に、長さ50mm、幅10mmの中央直線部がある厚さ10mmの試験片である。
水分量が0.01質量%のAPを使用し、平均粒子経15μmの小粒APと平均粒子経200μmの中粒APとの配合割合を表1の組成として準備した。
GAP100部、TMP1.1部、DBTDL0.005部、TEPANOL2.0部からなるGAPバインダに前記2種類のAPを仕込み、60℃に加温し、真空混和した。
次に、硬化剤であるHDIを仕込み、さらに真空混和を行ってスラリー状の混和物を得た。この混和物を100mm角の気泡評価用ブロック用および140mm角の機械的特性評価用ブロック用にそれぞれ真空注型し、60℃×7日間硬化して推進薬を得た。その推進薬を使用して、気泡発生量及び機械的特性の評価試験を行った。
表1に原料組成、気泡発生量評価結果および機械的特性評価結果を示した。
水分量が0.01質量%のAPを使用し、小粒APと中粒APの配合比を30質量%/70質量%で、前記実施例1と同様の手順で推進薬を作製した。
水分量が0.01質量%のAPを使用し、小粒APと中粒APの配合比を40質量%/60質量%で、前記実施例1と同様の手順で推進薬を作製した。
水分量が0.05質量%のAPを使用し、小粒APと中粒APの配合比を40質量%/60質量%で、前記実施例1と同様の手順で推進薬を作製した。
水分量が0.05質量%のAPを使用し、小粒APと中粒APの配合比を50質量%/50質量%で、前記実施例1と同様の手順で推進薬を作製した。
水分量が0.01質量%のAPを使用し、小粒APと中粒APの配合比を30質量%/70質量%とした。また、APを仕込む時期を2回に分け、1回目に15μm小粒APを全量仕込み、真空混和した後、2回目に200μm中粒APを全量仕込み、その後真空混和し、推進薬を作製した。
AP配合比を表1の組成とし、水分量が0.10質量%のAPを使用し、前記実施例1と同様の手順で推進薬を作製した。
また、小粒APと中粒APの配合比率が30/70〜60/40の範囲である実施例2〜5では、実施例1と比較して、ブロック寸法変化量が大幅に低下しており、より長期間の高温負荷時の気泡発生が抑制されている。小粒APと中粒APの配合比率が同一で、AP水分量が異なる実施例3と実施例4を比較すると、AP水分量の低減により、低温の伸張比が増加しており、AP水分量が低温領域の物性向上に寄与していることが分かる。
さらに、小粒APを先に添加した実施例6では、実施例1と比較して、ブロック寸法変化量が低下しており、より長期間の高温負荷においても気泡発生が抑制されている。
Claims (5)
- 過塩素酸アンモニウムを60〜90質量%及びメチルアジド基を有する末端水酸基ポリエーテルを主成分とするバインダ原料成分10〜40質量%を含む推進薬の製造方法において、前記過塩素酸アンモニウム中に含有している水分量が0.05質量%以下である過塩素酸アンモニウム粒子を用いることを特徴とする推進薬の製造方法。
- 前記過塩素酸アンモニウムが10〜50μm及び100〜400μmの範囲にそれぞれ平均粒径を持つ2種類の粒子で構成され、かつ平均粒子経10〜50μmと平均粒子経100〜400μmの配合比率が30質量%:70質量%〜60質量%:40質量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の推進薬の製造方法。
- 前記過塩素酸アンモニウムを仕込む際、平均粒子経10〜50μmの過塩素酸アンモニウム粒子を平均粒子径100〜400μmの過塩素酸アンモニウム粒子よりも先に添加して、バインダ成分と混合することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の推進薬の製造方法。
- 過塩素酸アンモニウムを60〜90質量%及びメチルアジド基を有する末端水酸基ポリエーテルを主成分とするバインダ原料成分10〜40質量%を含む推進薬において、前記過塩素酸アンモニウム中に含有している水分量は0.05質量%以下である過塩素酸アンモニウム粒子を用いることを特徴とする推進薬。
- 前記過塩素酸アンモニウムは10〜50μm及び100〜400μmの範囲にそれぞれ平均粒径を持つ2種類の粒子で構成され、かつ平均粒子経10〜50μmと平均粒子経100〜400μmの配合比率が30質量%:70質量%〜60質量%:40質量%の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の推進薬。
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