JP6108336B2 - 耐震補強構造 - Google Patents
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Description
また、本発明に係る耐震補強構造は、隣り合う柱と該柱間に架設された上下の梁とからなるコンクリート造の架構の構面に、該架構の躯体に接合された耐震補強部材が設置されてなる耐震補強構造において、前記躯体の表面に、3面以上に亘って樹脂製の補強塗膜が被覆されており、前記補強塗膜が、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体に凹凸部を介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、前記躯体の変形が塑性域に達してコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記躯体を元の形状に戻す力が働き、前記躯体の変形後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられ、前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなすことを特徴としている。
しかも、補強塗膜は変形抵抗を有しているので、地震時に柱や梁の躯体が撓み変形したときに、補強塗膜の変形抵抗力によって躯体を元の形状に戻す力が働く。その結果、躯体は、一旦大きく撓み変形した後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられる。
また、本発明の耐震補強構造によれば、躯体の3面以上が補強塗膜によって包み込まれた状態となり、その効果(ラッピング効果)により、上記した形状保持がより効果的に発揮される。
図2に示すように、柱1の躯体2の表面には、補強繊維シート5が貼り付けられ、さらにその上に樹脂製の補強塗膜3が被覆されている。これら補強繊維シート5及び補強塗膜3は、躯体2の略全周に亘って(厳密に言えば、枠体201の縦架材210が接合された範囲は除いて)設けられている。つまり、本実施の形態における補強繊維シート5及び補強塗膜3は、断面視の形状が略環状(閉じられた形状、厳密に言えば縦架材210の部分が開いている)、すなわち筒形状に形成されている。また、図1に示すように、本実施の形態における補強繊維シート5及び補強塗膜3は、柱1のうちの上側の梁10Aと下側の梁10Bとの間の区間Hにおける上端部及び下端部にのみ設けられており、柱1の中間部分、及び、梁10A,10Bが接合される仕口部分には補強繊維シート5及び補強塗膜3が設けられていない。なお、補強繊維シート5及び補強塗膜3が設けられた区間の長さhは、柱幅W以上であることが好ましい。
図3に示すように、上側の梁10Aの躯体20の表面には、補強繊維シート50が貼り付けられ、さらにその上に樹脂製の補強塗膜30が被覆されている。これら補強繊維シート50及び補強塗膜30は、躯体20の下面20a(ただし、枠体201の横架材211が接合された範囲は除く)及び両側の側面20b,20bにそれぞれ設けられている。つまり、上側の梁10Aの補強繊維シート50及び補強塗膜30は、断面視において2つの略L字形のものが線対称に配置された構成となっている。また、補強繊維シート50及び補強塗膜30の上端部はスラブ4の下面に沿って屈曲した形状となっており、補強繊維シート50及び補強塗膜30の端部はスラブ4の下面まで延びている。
図4に示すように、下側の梁10Bの躯体20の表面には、補強繊維シート50が貼り付けられ、さらにその上に樹脂製の補強塗膜30が被覆されている。これら補強繊維シート50及び補強塗膜30は、躯体20の下面20a及び両側の側面20b,20bにそれぞれ設けられている。つまり、下側の梁10Bの補強繊維シート50及び補強塗膜30は、断面視の形状が略コ字状、すなわちU字溝状に形成されている。また、補強繊維シート50及び補強塗膜30の上端部はスラブ4の下面に沿って屈曲した形状となっており、補強繊維シート50及び補強塗膜30の端部はスラブ4の下面まで延びている。
上記した補強繊維シート5,50は、躯体2,20の表面に巻き付けるように貼り付けられる可撓性を有するシートであり、例えば炭素繊維シートやアラミド繊維シートを使用することができる。この補強繊維シート5,50は、躯体2,20の表面に対してエポキシ樹脂を用いて補強繊維シート5,50に樹脂を含浸させながら接着し、CFRP(強化プラスチック)化され、構造体1の耐力を増強させるものである。なお、補強繊維シート5,50を2層以上重ねて貼り付けてもよい。
上記した補強塗膜3,30は、補強繊維シート5,50の表面に吹き付けやローラーなどで塗布される樹脂製の塗膜であって、イソシアネートと、ポリオール及びアミンのうちの少なくとも一方からなる硬化剤との化学反応により形成された化合物からなる。例えば、補強塗膜3,30としては、イソシアネートとアミンとの化学反応により形成された化合物であるポリウレア樹脂を用いることができる。
上述したように、本実施の形態では、補強塗膜3,30が、せん断付着力が高く、曲げ引張強度が高く、かつ伸び性能が高い力学的特性(強度、伸び)に優れた合成樹脂であるため、躯体2,20の変形が塑性域に達しても、補強塗膜3,30が躯体2,20の大変形に追従して伸び変形するので、補強塗膜3,30によって躯体2,20の変形に応じたエネルギー吸収性能が発揮される。したがって、架構100がパンチングシアーに対応することが可能となる。
実施例1では、矩形断面の鉄筋コンクリート製の梁材を試験体に使用し、その梁材の表面にポリウレア樹脂を塗布した試験体1、2、3と、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体4とに対して載荷装置を使用した衝撃曲げ試験を行い、ポリウレア樹脂の塗布状況を変えた試験体1〜4の変形状態(亀裂や剥離)を確認した。
各試験体1〜4の梁材は、縦100mm×横120mmで長さ寸法が1200mmの6面を有する構造体であり、4週強度で25N/mm2のコンクリートを使用している。さらに、試験体1〜4の内部にD13(芯被り35mm)、せん断補強筋D6を使用している。そして、載荷条件としては、試験体1〜4を長さ方向を水平方向に向けて配置し、試験体1〜4の長さ方向の中心部に対して30kNの荷重を準静的な0.0001m/sの速度で載荷を付与した。
図7に示すように、試験体4の場合には、変形量δが略40mmで破壊し、その破壊箇所においてコンクリート片が生じた。
上下2面にポリウレア樹脂2mmを塗布した試験体3の場合は、変形量δが略60mmで破壊しているが、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体4の場合よりはじん性が高い、つまり拘束効果(ラッピング効果)を有し、一定の形状保持効果があることが確認された。
また、梁材の表面全周(6面)にポリウレア樹脂を塗布した試験体1、2においては、降伏後(図7の降伏点P1より右側)でも30kNの荷重が維持されていることが確認できることから、ラッピング効果が大きく、形状保持効果が高いことがわかる。
次に、実施例2では、上記実施例1における梁材の6面に塗布厚2mmでポリウレア樹脂を塗布し、衝撃曲げ試験で載荷速度を変えた試験を行い、変形状態(亀裂や剥離)を確認した。
第1試験T1は4m/s(高速)の載荷速度とし、第2試験T2は0.5〜1m/s(中速)の載荷速度とし、第3試験T3は0.1〜0.5m/s(低速)の載荷速度とし、第4試験T4は0.0001m/s(準静的速度)の載荷速度とした。
図8に示すように、各試験T1〜T4ともに降伏後でも準静的最大荷重が維持されていることがわかる。このことから、ポリウレア樹脂を梁材の6面全体にわたって塗布する場合には、載荷速度にかかわらず、準静的最大荷重が維持されることを確認することができる。このとき、梁材の試験体は大きく変形し、約5度程度の角度で屈曲していたが、コンクリート片が生じることもなく、梁材としての形状が保持されていた。このように、ポリウレア樹脂を塗布した梁材は、衝撃や持続的な加力に対して有効であり、コンクリート片の発生を防ぐことができることが確認できた。
実施例3では、矩形断面の鉄筋コンクリート製の梁材を試験体に使用し、その梁材の表面にポリウレア樹脂を塗布した試験体1´、2´と、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体3´とに対して載荷装置を使用した衝撃曲げ試験を行い、ポリウレア樹脂の塗布状況を変えた試験体1´〜3´の変形状態(亀裂や剥離)を確認した。
各試験体1´〜3´の梁材は、縦150mm×横150mmで長さ寸法が450mmの6面を有する構造体であり、4週強度で25N/mm2のコンクリートを使用している。さらに、試験体1´〜3´の内部にD13(芯被り35mm)、せん断補強筋D6を使用している。そして、載荷条件としては、試験体1´〜3´を長さ方向を水平方向に向けて配置し、試験体1´〜3´の長さ方向の中心部に対して30kNの荷重を準静的な0.0001m/sの速度で載荷を付与した。
図9に示すように、試験体3´の場合には、変形量δが略0.65mmで破壊し、その破壊箇所においてコンクリート片が生じた。
上面以外の5面にポリウレア樹脂4mmを塗布した試験体2´の場合は、変形量δが略9mmで破壊しているが、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体3´の場合よりはじん性が高い、つまり拘束効果(ラッピング効果)を有し、一定の形状保持効果があることが確認された。
また、梁材の表面全周(6面)にポリウレア樹脂を塗布した試験体1´においては、変形量δが略30〜35mmで破壊しているが、5面にポリウレア樹脂を塗布した試験体2´の場合よりは更にじん性が高い、つまりラッピング効果が大きく、形状保持効果が高いことがわかる。
例えば、上記した実施の形態では、架構100の内側に耐震補強部材200が設置された構成となっているが、本発明は、架構100の外面に耐震補強部材200が取り付けられた構成であってもよい。また、上記した実施の形態では、耐震補強部材200として、枠体201と鉄骨ブレース202,202とを備えた耐震補強枠が使用されているが、本発明は、鉄骨ブレース202,202に代えてダンパーブレースを設置することも可能であり、或いは、耐震補強枠に代えて、架構100の構面に沿って配設された耐震補強壁を設置することも可能である。なお、耐震補強壁の一例としては、鋼板の外縁にフランジが設けられた鋼製パネルを架構100の内側に複数並設させた構成などが考えられるが、耐震補強壁の構成は適宜変更可能である。
2,20・・・躯体
3,30・・・補強塗膜
5,50・・・補強繊維シート
10A,10B・・・梁
100・・・架構
200・・・耐震補強部材
Claims (6)
- 隣り合う柱と該柱間に架設された上下の梁とからなるコンクリート造の架構の構面に、該架構の躯体に接合された耐震補強部材が設置されてなる耐震補強構造において、
前記躯体の表面に、3面以上に亘って樹脂製の補強塗膜が被覆されており、
前記補強塗膜が、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体の表面に塗布された接着性を有するプライマーを介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、
前記躯体の変形が塑性域に達してコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記躯体を元の形状に戻す力が働き、前記躯体の変形後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられ、前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなすことを特徴とする耐震補強構造。 - 隣り合う柱と該柱間に架設された上下の梁とからなるコンクリート造の架構の構面に、該架構の躯体に接合された耐震補強部材が設置されてなる耐震補強構造において、
前記躯体の表面に、3面以上に亘って樹脂製の補強塗膜が被覆されており、
前記補強塗膜が、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体に凹凸部を介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、
前記躯体の変形が塑性域に達してコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記躯体を元の形状に戻す力が働き、前記躯体の変形後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられ、前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなすことを特徴とする耐震補強構造。 - 前記耐震補強部材が、前記躯体に接合された枠体を備える耐震補強枠、又は、前記架構の構面に沿って配設された耐震補強壁であり、
前記柱のうちの上側の前記梁と下側の前記梁との間の区間における上端部及び下端部に前記補強塗膜がそれぞれ設けられ、
前記梁のうちの両側の梁端部に前記補強塗膜がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐震補強構造。 - 前記補強塗膜と合わせて補強繊維シートが前記躯体の表面に貼り付けられていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の耐震補強構造。
- 前記耐震補強部材と前記柱の躯体とが接合されており、
前記補強塗膜は、前記柱の躯体の全周に亘って設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の耐震補強構造。 - 前記耐震補強部材と前記梁の躯体とが接合されており、
前記補強塗膜は、前記梁の躯体の下面及び両側の側面にそれぞれ設けられて断面視略コ字状に形成されていることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の耐震補強構造。
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