JP6065199B2 - 橋梁 - Google Patents
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Description
なお、本願では、「橋梁」という用語を、河川や湖、海等の水面上を通過するための架空構造物だけでなく、陸上部を通過するための架空構造物である高架橋も含む広義の意味で使用する。
また、本発明に係る橋梁は、高軸圧縮力、曲げ応力及びせん断応力を受けることにより橋脚及び橋桁のうちの少なくとも一方のコンクリート造の躯体の表面に3面以上に亘って包み込まれた状態で樹脂製の補強塗膜が被覆されてなり、高軸圧縮力、曲げ応力及びせん断応力を受けることにより前記躯体の変形が塑性域に達して前記躯体のコンクリートが破壊される橋梁において、前記補強塗膜は、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体に凹凸部を介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、前記躯体のコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなしていることを特徴としている。
しかも、補強塗膜は変形抵抗を有しているので、地震時に橋脚や橋桁の躯体が撓み変形したときに、補強塗膜の変形抵抗力によって躯体を元の形状に戻す力が働く。その結果、躯体は、一旦大きく撓み変形した後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられる。
そして、躯体の3面以上に補強塗膜を設けることによって躯体が包み込まれた状態となり、上記したラッピング効果が大きくなり、高い形状保持が発揮される。
図3に示すように、橋脚1は、横断面視円形の柱状体であり、この橋脚1の躯体2の表面には、樹脂製の補強塗膜3が被覆されている。この補強塗膜3は、躯体2の全周に亘って設けられている。つまり、本実施の形態における補強塗膜3は、横断面視の形状が環状(閉じられた形状)、すなわち筒形状に形成されている。また、図1及び図2に示すように、本実施の形態における補強塗膜3は、橋脚1のうち、橋桁10との接合部7の区間には設けられてなく、前記接合部7以外の区間全体に亘って被覆されている。ただし、本発明に係る橋梁では、前記接合部7の区間にも補強塗膜3が被覆されていてもよく、また、接合部7以外の区間のうち、コンクリートのひび割れや破壊が生じやすい区間にだけ補強塗膜3が被覆されていてもよい。
図4に示すように、橋桁10の躯体20の表面には、樹脂製の補強塗膜30が被覆されている。この補強塗膜30は、躯体20の下面20a及び両側の側面20b,20bにそれぞれ設けられている。つまり、本実施の形態における補強塗膜30は、横断面視の形状が略コ字状、すなわちU字溝状に形成されている。また、補強塗膜30の上端部はスラブ11の下面に沿って屈曲した形状となっており、補強塗膜30の端部はスラブ11の下面まで延びている。また、図1及び図2に示すように、本実施の形態における補強塗膜30は、橋桁10の全長に亘って設けられている。ただし、本発明に係る橋梁では、橋桁10のうち、コンクリートのひび割れや破壊が生じやすい区間にだけ補強塗膜30が被覆されていてもよい。
上記した補強塗膜3,30は、躯体2,20の表面に吹き付けやローラーなどで塗布される樹脂製の塗膜であって、イソシアネートと、ポリオール及びアミンのうちの少なくとも一方からなる硬化剤との化学反応により形成された化合物からなる。例えば、補強塗膜3,30としては、イソシアネートとアミンとの化学反応により形成された化合物であるポリウレア樹脂を用いることができる。
上述したように、本実施の形態では、補強塗膜3,30が、せん断付着力が高く、曲げ引張強度が高く、かつ伸び性能が高い力学的特性(強度、伸び)に優れた合成樹脂であるため、躯体2,20の変形が塑性域に達しても、補強塗膜3,30が躯体2,20の大変形に追従して伸び変形するので、補強塗膜3,30によって躯体2,20の変形に応じたエネルギー吸収性能が発揮される。したがって、高い軸圧縮力、曲げ応力及びせん断応力に対応することが可能な橋脚1や橋桁10を設けることができる。
実施例1では、矩形断面の鉄筋コンクリート製の梁材を試験体に使用し、その梁材の表面にポリウレア樹脂を塗布した試験体1、2、3と、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体4とに対して載荷装置を使用した衝撃曲げ試験を行い、ポリウレア樹脂の塗布状況を変えた試験体1〜4の変形状態(亀裂や剥離)を確認した。
各試験体1〜4の梁材は、縦100mm×横120mmで長さ寸法が1200mmの6面を有する構造体であり、4週強度で25N/mm2のコンクリートを使用している。さらに、試験体1〜4の内部にD13(芯被り35mm)、せん断補強筋D6を使用している。そして、載荷条件としては、試験体1〜4を長さ方向を水平方向に向けて配置し、試験体1〜4の長さ方向の中心部に対して30kNの荷重を準静的な0.0001m/sの速度で載荷を付与した。
図7に示すように、試験体4の場合には、変形量δが略40mmで破壊し、その破壊箇所においてコンクリート片が生じた。
上下2面にポリウレア樹脂2mmを塗布した試験体3の場合は、変形量δが略60mmで破壊しているが、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体4の場合よりはじん性が高い、つまり拘束効果(ラッピング効果)を有し、一定の形状保持効果があることが確認された。
また、梁材の表面全周(6面)にポリウレア樹脂を塗布した試験体1、2においては、降伏後(図7の降伏点P1より右側)でも30kNの荷重が維持されていることが確認できることから、ラッピング効果が大きく、形状保持効果が高いことがわかる。
次に、実施例2では、上記実施例1における梁材の6面に塗布厚2mmでポリウレア樹脂を塗布し、衝撃曲げ試験で載荷速度を変えた試験を行い、変形状態(亀裂や剥離)を確認した。
第1試験T1は4m/s(高速)の載荷速度とし、第2試験T2は0.5〜1m/s(中速)の載荷速度とし、第3試験T3は0.1〜0.5m/s(低速)の載荷速度とし、第4試験T4は0.0001m/s(準静的速度)の載荷速度とした。
図8に示すように、各試験T1〜T4ともに降伏後でも準静的最大荷重が維持されていることがわかる。このことから、ポリウレア樹脂を梁材の6面全体にわたって塗布する場合には、載荷速度にかかわらず、準静的最大荷重が維持されることを確認することができる。このとき、梁材の試験体は大きく変形し、約5度程度の角度で屈曲していたが、コンクリート片が生じることもなく、梁材としての形状が保持されていた。このように、ポリウレア樹脂を塗布した梁材は、衝撃や持続的な加力に対して有効であり、コンクリート片の発生を防ぐことができることが確認できた。
実施例3では、矩形断面の鉄筋コンクリート製の梁材を試験体に使用し、その梁材の表面にポリウレア樹脂を塗布した試験体1´、2´と、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体3´とに対して載荷装置を使用した衝撃曲げ試験を行い、ポリウレア樹脂の塗布状況を変えた試験体1´〜3´の変形状態(亀裂や剥離)を確認した。
各試験体1´〜3´の梁材は、縦150mm×横150mmで長さ寸法が450mmの6面を有する構造体であり、4週強度で25N/mm2のコンクリートを使用している。さらに、試験体1´〜3´の内部にD13(芯被り35mm)、せん断補強筋D6を使用している。そして、載荷条件としては、試験体1´〜3´を長さ方向を水平方向に向けて配置し、試験体1´〜3´の長さ方向の中心部に対して30kNの荷重を準静的な0.0001m/sの速度で載荷を付与した。
図9に示すように、試験体3´の場合には、変形量δが略0.65mmで破壊し、その破壊箇所においてコンクリート片が生じた。
上面以外の5面にポリウレア樹脂4mmを塗布した試験体2´の場合は、変形量δが略9mmで破壊しているが、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体3´の場合よりはじん性が高い、つまり拘束効果(ラッピング効果)を有し、一定の形状保持効果があることが確認された。
また、梁材の表面全周(6面)にポリウレア樹脂を塗布した試験体1´においては、変形量δが略30〜35mmで破壊しているが、5面にポリウレア樹脂を塗布した試験体2´の場合よりは更にじん性が高い、つまりラッピング効果が大きく、形状保持効果が高いことがわかる。
例えば、上記した実施の形態では、橋脚1及び橋桁10の両方の躯体2,20の表面に補強塗膜3,30が被覆された橋梁100について説明しているが、本発明は、橋脚1及び橋桁10の両方の躯体2,20の表面に補強塗膜3,30が被覆されているが、本発明は、橋脚1の躯体2の表面にのみ補強塗膜3が被覆されて橋桁10の躯体20の表面に補強塗膜30が塗布されていない構成であってもよく、或いは、反対に、橋桁10の躯体20の表面にのみ補強塗膜30が被覆されて橋脚1の躯体2の表面に補強塗膜3が塗布されていない構成であってもよい。さらに、本発明は、張り出し梁部の躯体に補強塗膜30を被覆させてもよい。
2,20・・・躯体
3,30・・・補強塗膜
10・・・橋桁
100・・・橋梁
Claims (2)
- 高軸圧縮力、曲げ応力及びせん断応力を受けることにより橋脚及び橋桁のうちの少なくとも一方のコンクリート造の躯体の表面に3面以上に亘って包み込まれた状態で樹脂製の補強塗膜が被覆されてなり、高軸圧縮力、曲げ応力及びせん断応力を受けることにより前記躯体の変形が塑性域に達して前記躯体のコンクリートが破壊される橋梁において、
前記補強塗膜は、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体の表面に塗布された接着性を有するプライマーを介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、
前記躯体のコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなしていることを特徴とする橋梁。 - 高軸圧縮力、曲げ応力及びせん断応力を受けることにより橋脚及び橋桁のうちの少なくとも一方のコンクリート造の躯体の表面に3面以上に亘って包み込まれた状態で樹脂製の補強塗膜が被覆されてなり、高軸圧縮力、曲げ応力及びせん断応力を受けることにより前記躯体の変形が塑性域に達して前記躯体のコンクリートが破壊される橋梁において、
前記補強塗膜は、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体に凹凸部を介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、
前記躯体のコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなしていることを特徴とする橋梁。
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