JP6108335B2 - 柱梁接合構造 - Google Patents
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Description
また、本発明に係る柱梁接合構造は、コンクリート造の柱仕口部にコンクリート造の梁端部が接合された柱梁接合構造において、少なくとも前記柱仕口部及び前記梁端部の躯体の表面に、3面以上に亘って樹脂製の補強塗膜が被覆されてなり、前記補強塗膜は、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体に凹凸部を介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、前記躯体の変形が塑性域に達してコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記躯体を元の形状に戻す力が働き、前記躯体の変形後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられ、前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなすことを特徴としている。
しかも、補強塗膜は変形抵抗を有しているので、地震時に梁端部の躯体が撓み変形したときに、補強塗膜の変形抵抗力によって躯体を元の形状に戻す力が働く。その結果、躯体は、一旦大きく撓み変形した後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられる。
上記した補強塗膜3は、躯体2,20の表面に吹き付けやローラーなどで塗布される樹脂製の塗膜であって、イソシアネートと、ポリオール及びアミンのうちの少なくとも一方からなる硬化剤との化学反応により形成された化合物からなる。例えば、補強塗膜3としては、イソシアネートとアミンとの化学反応により形成された化合物であるポリウレア樹脂を用いることができる。
上述したように、本実施の形態では、補強塗膜3が、せん断付着力が高く、曲げ引張強度が高く、かつ伸び性能が高い力学的特性(強度、伸び)に優れた合成樹脂であるため、躯体2,20の変形が塑性域に達しても、補強塗膜3が躯体2,20の大変形に追従して伸び変形するので、補強塗膜3によって躯体2,20の変形に応じたエネルギー吸収性能が発揮される。したがって、せん断応力に対応することが可能な柱梁接合部を設けることができる。
実施例1では、矩形断面の鉄筋コンクリート製の梁材を試験体に使用し、その梁材の表面にポリウレア樹脂を塗布した試験体1、2、3と、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体4とに対して載荷装置を使用した衝撃曲げ試験を行い、ポリウレア樹脂の塗布状況を変えた試験体1〜4の変形状態(亀裂や剥離)を確認した。
各試験体1〜4の梁材は、縦100mm×横120mmで長さ寸法が1200mmの6面を有する構造体であり、4週強度で25N/mm2のコンクリートを使用している。さらに、試験体1〜4の内部にD13(芯被り35mm)、せん断補強筋D6を使用している。そして、載荷条件としては、試験体1〜4を長さ方向を水平方向に向けて配置し、試験体1〜4の長さ方向の中心部に対して30kNの荷重を準静的な0.0001m/sの速度で載荷を付与した。
図6に示すように、試験体4の場合には、変形量δが略40mmで破壊し、その破壊箇所においてコンクリート片が生じた。
上下2面にポリウレア樹脂2mmを塗布した試験体3の場合は、変形量δが略60mmで破壊しているが、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体4の場合よりはじん性が高い、つまり拘束効果(ラッピング効果)を有し、一定の形状保持効果があることが確認された。
また、梁材の表面全周(6面)にポリウレア樹脂を塗布した試験体1、2においては、降伏後(図6の降伏点P1より右側)でも30kNの荷重が維持されていることが確認できることから、ラッピング効果が大きく、形状保持効果が高いことがわかる。
次に、実施例2では、上記実施例1における梁材の6面に塗布厚2mmでポリウレア樹脂を塗布し、衝撃曲げ試験で載荷速度を変えた試験を行い、変形状態(亀裂や剥離)を確認した。
第1試験T1は4m/s(高速)の載荷速度とし、第2試験T2は0.5〜1m/s(中速)の載荷速度とし、第3試験T3は0.1〜0.5m/s(低速)の載荷速度とし、第4試験T4は0.0001m/s(準静的速度)の載荷速度とした。
図7に示すように、各試験T1〜T4ともに降伏後でも準静的最大荷重が維持されていることがわかる。このことから、ポリウレア樹脂を梁材の6面全体にわたって塗布する場合には、載荷速度にかかわらず、準静的最大荷重が維持されることを確認することができる。このとき、梁材の試験体は大きく変形し、約5度程度の角度で屈曲していたが、コンクリート片が生じることもなく、梁材としての形状が保持されていた。このように、ポリウレア樹脂を塗布した梁材は、衝撃や持続的な加力に対して有効であり、コンクリート片の発生を防ぐことができることが確認できた。
実施例3では、矩形断面の鉄筋コンクリート製の梁材を試験体に使用し、その梁材の表面にポリウレア樹脂を塗布した試験体1´、2´と、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体3´とに対して載荷装置を使用した衝撃曲げ試験を行い、ポリウレア樹脂の塗布状況を変えた試験体1´〜3´の変形状態(亀裂や剥離)を確認した。
各試験体1´〜3´の梁材は、縦150mm×横150mmで長さ寸法が450mmの6面を有する構造体であり、4週強度で25N/mm2のコンクリートを使用している。さらに、試験体1´〜3´の内部にD13(芯被り35mm)、せん断補強筋D6を使用している。そして、載荷条件としては、試験体1´〜3´を長さ方向を水平方向に向けて配置し、試験体1´〜3´の長さ方向の中心部に対して30kNの荷重を準静的な0.0001m/sの速度で載荷を付与した。
図8に示すように、試験体3´の場合には、変形量δが略0.65mmで破壊し、その破壊箇所においてコンクリート片が生じた。
上面以外の5面にポリウレア樹脂4mmを塗布した試験体2´の場合は、変形量δが略9mmで破壊しているが、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体3´の場合よりはじん性が高い、つまり拘束効果(ラッピング効果)を有し、一定の形状保持効果があることが確認された。
また、梁材の表面全周(6面)にポリウレア樹脂を塗布した試験体1´においては、変形量δが略30〜35mmで破壊しているが、5面にポリウレア樹脂を塗布した試験体2´の場合よりは更にじん性が高い、つまりラッピング効果が大きく、形状保持効果が高いことがわかる。
例えば、上記した実施の形態では、柱仕口部10の4面にそれぞれ梁端部50が接合された構成となっているが、本発明は、柱仕口部10の4面のうちのいずれか3面又は2面に梁端部50が接合された構成であってもよく、或いは、柱仕口部10の4面のうちのいずれか1つにだけ梁端部50が接合された構成であってもよい。
3・・・補強塗膜
10・・・柱仕口部
50・・・梁端部
Claims (3)
- コンクリート造の柱仕口部にコンクリート造の梁端部が接合された柱梁接合構造において、
少なくとも前記柱仕口部及び前記梁端部の躯体の表面に、3面以上に亘って樹脂製の補強塗膜が被覆されてなり、
前記補強塗膜は、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体の表面に塗布された接着性を有するプライマーを介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、
前記躯体の変形が塑性域に達してコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記躯体を元の形状に戻す力が働き、前記躯体の変形後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられ、前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなすことを特徴とする柱梁接合構造。 - コンクリート造の柱仕口部にコンクリート造の梁端部が接合された柱梁接合構造において、
少なくとも前記柱仕口部及び前記梁端部の躯体の表面に、3面以上に亘って樹脂製の補強塗膜が被覆されてなり、
前記補強塗膜は、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体に凹凸部を介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、
前記躯体の変形が塑性域に達してコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記躯体を元の形状に戻す力が働き、前記躯体の変形後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられ、前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなすことを特徴とする柱梁接合構造。 - 前記補強塗膜は、前記梁端部の躯体の下面及び両側の側面にそれぞれ設けられて断面視略コ字状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の柱梁接合構造。
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