JP6108335B2 - 柱梁接合構造 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート造の柱とコンクリート造の梁とを接合する柱梁接合構造に関する。
コンクリート造の柱梁接合部には、地震によるせん断応力によってひび割れが生じるおそれがある。そこで、従来、例えば下記特許文献1に示されているような柱梁接合構造が提案されている。この構造では、梁が接合される柱仕口部内に円形スパイラルフープ筋が配筋されると共に十字形鋼板が埋設され、梁の上主筋が十字形鋼板に対してナットで締結された構成からなる。これにより、柱梁接合部の耐力及び靭性を増大させることができる。
特開平8−49292号公報
しかしながら、上記した従来の技術では、柱仕口部内に円形スパイラルフープ筋や十字形鋼板を配置しなければならないが、柱仕口部内には柱主筋や梁主筋も配筋されており、十分なスペースが無い。このため、円形スパイラルフープ筋や十字形鋼板を配置する作業が容易でなく、場合によっては配置することができない場合もあり得る。
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、容易に柱梁接合部の靭性能の確保又は向上を図ることができる柱梁接合構造を提供することを目的としている。
本発明に係る柱梁接合構造は、コンクリート造の柱仕口部にコンクリート造の梁端部が接合された柱梁接合構造において、少なくとも前記柱仕口部及び前記梁端部の躯体の表面に、3面以上に亘って樹脂製の補強塗膜が被覆されてなり、前記補強塗膜は、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体の表面に塗布された接着性を有するプライマーを介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、前記躯体の変形が塑性域に達してコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記躯体を元の形状に戻す力が働き、前記躯体の変形後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられ、前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなすことを特徴としている。
また、本発明に係る柱梁接合構造は、コンクリート造の柱仕口部にコンクリート造の梁端部が接合された柱梁接合構造において、少なくとも前記柱仕口部及び前記梁端部の躯体の表面に、3面以上に亘って樹脂製の補強塗膜が被覆されてなり、前記補強塗膜は、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体に凹凸部を介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、前記躯体の変形が塑性域に達してコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記躯体を元の形状に戻す力が働き、前記躯体の変形後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられ、前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなすことを特徴としている。
本発明では、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなる補強塗膜が、せん断付着力が高く、曲げ引張強度が高く、かつ伸び性能が高い力学的特性(強度、伸び)に優れた合成樹脂であり、例えば10〜25MPa程度の高強度と例えば200%以上の大きな破断伸び(伸び変形性能)を有する。このため、躯体の変形が塑性域に達しても、補強塗膜が躯体の大変形に追従して伸び変形するので、補強塗膜によって躯体の変形に応じたエネルギー吸収性能が発揮される。したがって、せん断応力に対応することが可能な柱梁接合部を設けることができる。
仮に、せん断応力を受けることにより躯体の変形が塑性域に達してコンクリートが破壊されても、補強塗膜は伸びることはあっても破断せず、補強塗膜によって躯体の表面が被覆された状態が維持される。これにより、躯体のコンクリート片の散逸が防止され、また、躯体が崩壊したりせずに自立した形状が保持される。例えば、大地震時にせん断応力を受けることによって破壊が生じたコンクリート片が散乱して避難の障害となったり、そのコンクリート片が周囲に飛散したりするといった被害の増大を防止することができる。
しかも、補強塗膜は変形抵抗を有しているので、地震時に梁端部の躯体が撓み変形したときに、補強塗膜の変形抵抗力によって躯体を元の形状に戻す力が働く。その結果、躯体は、一旦大きく撓み変形した後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられる。
また、本発明の柱梁接合構造によれば、躯体に補強塗膜を吹き付けや塗布することによって形成されるので、従来技術のように円形スパイラルフープ筋や十字形鋼板を柱仕口部内に配置する場合に比べて、容易に且つ安価に施工することができ、既設の躯体においても容易に施工できる。
また、本発明の柱梁接合構造によれば、躯体の3面以上が補強塗膜によって包み込まれた状態となり、その効果(ラッピング効果)により、上記した形状保持がより効果的に発揮される。
また、本発明に係る柱梁接合構造は、前記補強塗膜は、前記梁端部の躯体の下面及び両側の側面にそれぞれ設けられて断面視略コ字状に形成されていることがより好ましい。
これにより、U字溝状に形成された補強塗膜の内側に躯体が収容された状態となり、上記したラッピング効果が大きくなり、高い形状保持が発揮される。
本発明に係る柱梁接合構造によれば、容易に柱梁接合部の靭性能の確保又は向上を図ることができ、それによって建物全体の耐震性能の向上を図ることができる。
本発明の実施の形態による柱梁接合構造の概略構成を示す斜視図である。 本発明の実施の形態による柱梁接合構造の概略構成を示す平断面図である。 図2に示すA−A間の断面図である。 ポリウレア樹脂の力学的特性を示すためのグラフであり、各材料の応力ひずみ関係を示すグラフである。 躯体の一部分を拡大した断面図である。 実施例1による試験結果を示す図である。 実施例2による試験結果を示す図である。 実施例3による試験結果を示す図である。 本発明の変形例を説明するための柱梁接合構造の斜視図である。
以下、本発明に係る柱梁接合構造の実施の形態について、図面に基いて説明する。
図1から図3を参照して、本発明に係る柱梁接合構造の実施の形態の構成を説明する。なお、図1から図3では図面を簡略化するために鉄筋の図示を省略している。
図1には、鉄筋コンクリート造の柱1と、鉄筋コンクリート造の梁5と、鉄筋コンクリート造のスラブ9と、が示されており、特に、柱仕口部10に梁端部50が接合された柱梁接合構造が示されている。本実施の形態における柱梁接合構造は、柱仕口部10の4面の全てに梁端部50がそれぞれ接合されている。
図1から図3に示すように、柱仕口部10の躯体2の表面及び梁端部50の躯体20の表面には、樹脂製の補強塗膜3が被覆されている。柱仕口部10における補強塗膜3は、柱仕口部10の躯体2の表面の全てに設けられている。すなわち、本実施の形態では、柱仕口部10の躯体2の四つの出隅部分の表面にそれぞれ補強塗膜3が設けられている。また、柱仕口部10の補強塗膜3は、柱仕口部10の直ぐ下に位置する柱端部の躯体の表面にまで延ばして設けられ、このような補強塗膜3の延長部分が、柱1の躯体の全周に亘って設けられていることが好ましい。さらに、図3に示すように、この補強塗膜3の延長部分の長さhは例えば柱幅W以上であることが好ましい。また、図3に示すように、梁端部50における補強塗膜3は、梁端部50の躯体20の下面20a及び両側の側面20b,20bにそれぞれ設けられている。つまり、本実施の形態における補強塗膜3は、横断面視の形状が略コ字状、すなわちU字溝状に形成されている。また、この梁端部50の補強塗膜3の長さlは例えば梁成D以上であることが好ましい。なお、図1及び図3に示すように、補強塗膜3の上端部はスラブ9の下面に沿って屈曲した形状となっており、補強塗膜3の端部はスラブ9の下面まで延びている。
[補強塗膜]
上記した補強塗膜3は、躯体2,20の表面に吹き付けやローラーなどで塗布される樹脂製の塗膜であって、イソシアネートと、ポリオール及びアミンのうちの少なくとも一方からなる硬化剤との化学反応により形成された化合物からなる。例えば、補強塗膜3としては、イソシアネートとアミンとの化学反応により形成された化合物であるポリウレア樹脂を用いることができる。
補強塗膜3は、せん断付着力が高く、曲げ引張強度が高く、かつ伸び性能が高い力学的特性(強度、伸び)に優れた合成樹脂からなり、例えばポリウレア樹脂の場合は、図4に示す応力ひずみ特性を有する。補強塗膜3を構成する合成樹脂としては、例えば引張強度が鉄筋の十分の一程度の20MPa程度(10〜25MPa)であって、破断伸びが200%以上の物性を有する樹脂からなる。ポリウレア樹脂としては、例えば「スワエールAR−100(登録商標:三井化学産資株式会社製)」が用いられる。なお、補強塗膜3の厚さ寸法Dは、2mm以上であることが好ましい。
ここで、躯体2,20に補強塗膜3を被覆する施工方法としては、塗布するコンクリート表面を十分に清掃して塵等を取り除いた後、プライマーを塗布し、その後、補強塗膜材料を躯体2,20の表面に所定厚さだけ塗布する。これにより、躯体2,20の表面に補強塗膜3が形成される。なお、プライマーの塗布は省略することも可能であり、或いは、補強塗膜3と躯体2,20との付着性を高めるために躯体2,20の表面を斫って凸凹に加工してもよい。
次に、上記した構成からなる柱梁接合構造の作用について、具体的に説明する。
上述したように、本実施の形態では、補強塗膜3が、せん断付着力が高く、曲げ引張強度が高く、かつ伸び性能が高い力学的特性(強度、伸び)に優れた合成樹脂であるため、躯体2,20の変形が塑性域に達しても、補強塗膜3が躯体2,20の大変形に追従して伸び変形するので、補強塗膜3によって躯体2,20の変形に応じたエネルギー吸収性能が発揮される。したがって、せん断応力に対応することが可能な柱梁接合部を設けることができる。
仮に、せん断応力を受けることにより躯体2,20の変形が塑性域に達してコンクリートが破壊されても、補強塗膜3は伸びることはあっても破断せず、補強塗膜3によって躯体2,20の表面が被覆された状態が維持される。これにより、躯体2,20のコンクリート片の散逸が防止され、また、躯体2,20が崩壊したりせずに自立した形状を保持される(形状保持)。例えば、大地震時にせん断応力を受けることによって破壊が生じたコンクリート片が散乱して避難の障害となったり、そのコンクリート片が周囲に飛散したりするといった被害の増大を防止することができる。
また、補強塗膜3は変形抵抗を有しているので、地震時に梁端部50の躯体20が撓み変形したときに、補強塗膜3の変形抵抗力によって躯体20を元の形状に戻す力が働く。その結果、躯体20は、一旦大きく撓み変形した後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられる。
また、補強塗膜3を躯体2,20の表面に吹き付けたり塗布したりするだけなので、容易に且つ安価に施工することができ、既設の躯体2,20に対しても容易に施工できる。
また、図5に示すように、躯体2(20)にクラックC(ひび割れ)が生じても、補強塗膜3はその伸縮性によって破断しない。この場合、補強塗膜3は伸び変形しているので、補強塗膜3の弾性力によって戻る方向の力Eが作用する。この力は、クラックCの幅を拡げる力Sに抵抗する方向に作用するため、結果的に、クラックCの開き量dが小さく抑えられる。
また、本実施の形態の柱梁接合構造では、補強塗膜3が躯体2,20のうち3面以上に設けられているので、躯体2,20が補強塗膜3によって包み込まれた状態となり、そのようなラッピング効果により、上記した形状保持がより効果的に発揮される。
特に、本実施の形態の柱梁接合構造では、補強塗膜3が柱仕口部10の躯体2の表面の全てに設けられているので、上記したラッピング効果が大きくなり、高い形状保持が発揮される。
また、特に、本実施の形態の柱梁接合構造では、補強塗膜3が梁端部50の躯体20の下面20a及び両側の側面20b,20bにそれぞれ設けられて断面視略コ字状に形成されているので、U字溝状に形成された補強塗膜3の内側に梁端部50の躯体20が収容された状態となり、上記したラッピング効果が大きくなり、高い形状保持が発揮される。
上述したように、本実施の形態の柱梁接合構造によれば、容易に柱梁接合部の靭性能の確保又は向上を図ることができ、それによって建物全体の耐震性能の向上を図ることができる。
次に、上述した実施の形態による柱梁接合構造の効果を裏付けるために行った試験例(実施例1、2、3)について以下説明する。
(実施例1)
実施例1では、矩形断面の鉄筋コンクリート製の梁材を試験体に使用し、その梁材の表面にポリウレア樹脂を塗布した試験体1、2、3と、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体4とに対して載荷装置を使用した衝撃曲げ試験を行い、ポリウレア樹脂の塗布状況を変えた試験体1〜4の変形状態(亀裂や剥離)を確認した。
各試験体1〜4の梁材は、縦100mm×横120mmで長さ寸法が1200mmの6面を有する構造体であり、4週強度で25N/mm2のコンクリートを使用している。さらに、試験体1〜4の内部にD13(芯被り35mm)、せん断補強筋D6を使用している。そして、載荷条件としては、試験体1〜4を長さ方向を水平方向に向けて配置し、試験体1〜4の長さ方向の中心部に対して30kNの荷重を準静的な0.0001m/sの速度で載荷を付与した。
ここで、試験体1は梁材の6面に塗布厚4mmのポリウレア樹脂を塗布したものであり、試験体2は梁材の6面に塗布厚2mmのポリウレア樹脂を塗布したものであり、試験体3は梁材のうち長さ方向を水平方向に向けた状態で上面および下面の2面のみに塗布厚2mmのポリウレア樹脂を塗布したもの(4側面にポリウレア樹脂を塗布しない場合)であり、試験体4はポリウレア樹脂を施していないものである。
図6は、上記試験体1〜4において、横軸を載荷点の変形量δ(mm)とし、縦軸を荷重P(kN)とした曲げ試験結果を示している。
図6に示すように、試験体4の場合には、変形量δが略40mmで破壊し、その破壊箇所においてコンクリート片が生じた。
上下2面にポリウレア樹脂2mmを塗布した試験体3の場合は、変形量δが略60mmで破壊しているが、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体4の場合よりはじん性が高い、つまり拘束効果(ラッピング効果)を有し、一定の形状保持効果があることが確認された。
また、梁材の表面全周(6面)にポリウレア樹脂を塗布した試験体1、2においては、降伏後(図6の降伏点P1より右側)でも30kNの荷重が維持されていることが確認できることから、ラッピング効果が大きく、形状保持効果が高いことがわかる。
(実施例2)
次に、実施例2では、上記実施例1における梁材の6面に塗布厚2mmでポリウレア樹脂を塗布し、衝撃曲げ試験で載荷速度を変えた試験を行い、変形状態(亀裂や剥離)を確認した。
第1試験T1は4m/s(高速)の載荷速度とし、第2試験T2は0.5〜1m/s(中速)の載荷速度とし、第3試験T3は0.1〜0.5m/s(低速)の載荷速度とし、第4試験T4は0.0001m/s(準静的速度)の載荷速度とした。
図7は、上記第1試験T1〜第4試験T4において、横軸を載荷点の変形量δ(mm)とし、縦軸を荷重P(kN)とした曲げ試験結果を示している。
図7に示すように、各試験T1〜T4ともに降伏後でも準静的最大荷重が維持されていることがわかる。このことから、ポリウレア樹脂を梁材の6面全体にわたって塗布する場合には、載荷速度にかかわらず、準静的最大荷重が維持されることを確認することができる。このとき、梁材の試験体は大きく変形し、約5度程度の角度で屈曲していたが、コンクリート片が生じることもなく、梁材としての形状が保持されていた。このように、ポリウレア樹脂を塗布した梁材は、衝撃や持続的な加力に対して有効であり、コンクリート片の発生を防ぐことができることが確認できた。
(実施例3)
実施例3では、矩形断面の鉄筋コンクリート製の梁材を試験体に使用し、その梁材の表面にポリウレア樹脂を塗布した試験体1´、2´と、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体3´とに対して載荷装置を使用した衝撃曲げ試験を行い、ポリウレア樹脂の塗布状況を変えた試験体1´〜3´の変形状態(亀裂や剥離)を確認した。
各試験体1´〜3´の梁材は、縦150mm×横150mmで長さ寸法が450mmの6面を有する構造体であり、4週強度で25N/mm2のコンクリートを使用している。さらに、試験体1´〜3´の内部にD13(芯被り35mm)、せん断補強筋D6を使用している。そして、載荷条件としては、試験体1´〜3´を長さ方向を水平方向に向けて配置し、試験体1´〜3´の長さ方向の中心部に対して30kNの荷重を準静的な0.0001m/sの速度で載荷を付与した。
ここで、試験体1´は梁材の6面に塗布厚4mmのポリウレア樹脂を塗布したものであり、試験体2´は梁材の上面以外の5面に塗布厚4mmのポリウレア樹脂を塗布したものであり、試験体3´はポリウレア樹脂を施していないものである。
図8は、上記試験体1´〜3´において、横軸を載荷点の変形量δ(mm)とし、縦軸を荷重P(kN)とした曲げ試験結果を示している。
図8に示すように、試験体3´の場合には、変形量δが略0.65mmで破壊し、その破壊箇所においてコンクリート片が生じた。
上面以外の5面にポリウレア樹脂4mmを塗布した試験体2´の場合は、変形量δが略9mmで破壊しているが、ポリウレア樹脂を塗布しない試験体3´の場合よりはじん性が高い、つまり拘束効果(ラッピング効果)を有し、一定の形状保持効果があることが確認された。
また、梁材の表面全周(6面)にポリウレア樹脂を塗布した試験体1´においては、変形量δが略30〜35mmで破壊しているが、5面にポリウレア樹脂を塗布した試験体2´の場合よりは更にじん性が高い、つまりラッピング効果が大きく、形状保持効果が高いことがわかる。
以上、本発明に係る柱梁接合構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、柱仕口部10の4面にそれぞれ梁端部50が接合された構成となっているが、本発明は、柱仕口部10の4面のうちのいずれか3面又は2面に梁端部50が接合された構成であってもよく、或いは、柱仕口部10の4面のうちのいずれか1つにだけ梁端部50が接合された構成であってもよい。
また、上記した実施の形態では、補強塗膜3が、柱仕口部10の直ぐ下に位置する柱端部の躯体の表面にも例えば柱幅W以上の長さhだけ延ばして設けられているが、本発明は、柱1の補強塗膜3が例えば図9に示すように柱仕口部10の区間にのみ、つまり、概ね梁端部50の下面の位置まで設けられた構成であってもよい。ただし、この場合、図9に示すように梁端部50の下面に設けられる補強塗膜3の柱1側の端部は、柱1の表面に沿って屈曲した形状となっており、梁端部50の下面の補強塗膜3の柱1側の端部は柱1の表面まで延びており、そして、この補強塗膜3の柱1の表面での下縁の位置まで、柱仕口部10の補強塗膜3の下端が延びていることが好ましい。
また、上記した実施の形態では、梁端部50における補強塗膜3が梁端部50の躯体20の下面20a及び両側の側面20b,20bに被覆されているが、本発明に係る柱梁接合構造は、補強塗膜3が梁端部50の躯体20の下面20a及び両側の側面20b,20bのうちの2面或いは1面だけを被覆している構成であってよく、この場合であっても、上記したラッピング効果が発揮されないが、上記した形状保持の効果を奏することができる。
さらに、補強塗膜3において、例えばガラス片やガラス繊維、ガラスフリット等を分散させてなる不燃性を有する混入材を、ポリウレア樹脂に混入させることも可能である。あるいは混入材として、例えばコンクリート、煉瓦、瓦、石綿スレート、鉄鋼、アルミニウム、モルタル、漆喰等のガラス以外の不燃材料であっても良い。
また、上記した実施の形態では、補強塗膜3として、イソシアネートとアミンとの化学反応により形成された化合物からなるポリウレア樹脂が用いられているが、本発明は、イソシアネートとポリオールとの化学反応により形成された化合物からなるポリウレタン樹脂を補強塗膜として用いることも可能であり、また、イソシアネートとポリオールとアミンとの化学反応により形成された化合物からなる樹脂を補強塗膜として用いることも可能である。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
2,20・・・躯体
3・・・補強塗膜
10・・・柱仕口部
50・・・梁端部

Claims (3)

  1. コンクリート造の柱仕口部にコンクリート造の梁端部が接合された柱梁接合構造において、
    少なくとも前記柱仕口部及び前記梁端部の躯体の表面に、3面以上に亘って樹脂製の補強塗膜が被覆されてなり、
    前記補強塗膜は、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体の表面に塗布された接着性を有するプライマーを介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、
    前記躯体の変形が塑性域に達してコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記躯体を元の形状に戻す力が働き、前記躯体の変形後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられ、前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなすことを特徴とする柱梁接合構造。
  2. コンクリート造の柱仕口部にコンクリート造の梁端部が接合された柱梁接合構造において、
    少なくとも前記柱仕口部及び前記梁端部の躯体の表面に、3面以上に亘って樹脂製の補強塗膜が被覆されてなり、
    前記補強塗膜は、引張強度が10〜25MPa、破断伸びが200%以上の物性を有するポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、又はウレアウレタン樹脂からなり、前記躯体に凹凸部を介して2〜4mmの塗布厚で被覆されてなり、
    前記躯体の変形が塑性域に達してコンクリートが破壊されても、前記補強塗膜の変形抵抗力によって前記躯体を元の形状に戻す力が働き、前記躯体の変形後に若干戻され、最終的な変形量が小さく抑えられ、前記補強塗膜によって被覆された前記躯体の形状が保持された状態をなすことを特徴とする柱梁接合構造。
  3. 前記補強塗膜は、前記梁端部の躯体の下面及び両側の側面にそれぞれ設けられて断面視略コ字状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の柱梁接合構造。
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