JP6107030B2 - 成形体の製造方法、及び感光性樹脂組成物の硬化方法 - Google Patents
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Description
近年、硬化性樹脂組成物に対する要求特性は、益々多様かつ高度になってきているが、中でも、生産性を考慮した短時間硬化性、適用する部材の熱的ダメージを抑える低温硬化性が要求されている。
(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を含んでもよい炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、R1とR2が結合して環状構造を形成していてもよい。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子を表す。R7は、電子吸引性基であり、R5、R6、及びR8は、それぞれ独立に水素原子、又は電子吸引性基である。)
さらに本発明の成形体の製造方法に用いられる感光性樹脂組成物においては、酸と異なり塩基が金属の腐食を起こさないため、より信頼性の高い硬化膜を含む成形体を得ることが出来る。
なお、本発明において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
また、本発明において、電磁波とは、波長を特定した場合を除き、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。本明細書では、電磁波の照射を露光ともいう。なお、波長365nm、405nm、436nmの電磁波をそれぞれ、i線、h線、g線とも表記することがある。
以下、本発明に係る感光性樹脂組成物の硬化方法、及び成形体の製造方法の順に説明する。
本発明に係る感光性樹脂組成物の硬化方法は、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体と、下記化学式(1)で表され且つ電磁波の照射と加熱により塩基を発生する塩基発生剤を含む感光性樹脂組成物に、電磁波を照射し、照射後又は照射と同時に70℃以下で加熱して硬化することを特徴とする。
本発明で用いられる塩基発生剤は、上記特定構造を有するため、電磁波が照射されることにより、下記式で示されるように、化学式(1)中の(−CR4=CR3−C(=O)−)部分がトランス体からシス体へと異性化し、さらに加熱によって環化し、塩基(NHR1R2)を生成する。
上記桂皮酸型塩基発生剤の加熱による環化反応においては、フェノール性水酸基がアミド結合に含まれるカルボニル基を攻撃し、塩基(NHR1R2)が脱離する。芳香環のフェノール性水酸基に対してパラ位であるR7に、電子吸引性基を置換し、且つ、芳香環の他の置換基も水素原子又は電子吸引性基とすることにより、フェノール性水酸基の酸性度、すなわち求核性が大きくなって、フェノール性水酸基がカルボニル基に攻撃し易くなり環化反応が進行し易くなるため、塩基発生に必要な温度を低下させることが可能になると推定される。
そのため、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体と、上記特定の塩基発生剤とを組み合わせることにより、低温硬化が実現可能な、感光性樹脂組成物の硬化方法とすることができる。
低温硬化が実現可能であると、従来使用できなかった耐熱性の低い部材を使用できるようになる他、より簡易な装置で硬化が可能であったり、省エネルギー、省スペースに寄与し、生産効率を向上させることも可能である。
本発明において用いられる感光性樹脂組成物は、上記特定の高分子前駆体と上記特定の塩基発生剤を含むものである。本発明において特徴的な塩基発生剤から説明する。
(塩基発生剤)
前記化学式(1)で表され且つ電磁波の照射と加熱により塩基を発生する塩基発生剤において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を含んでもよい炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、R1とR2が結合して環状構造を形成していてもよいものである。
本発明に用いられる塩基発生剤は、上述の塩基発生機構により、塩基が発生する感度や加熱温度は、桂皮酸アミド骨格のベンゼン環、炭素炭素二重結合及びアミド結合までの構造に大きな影響を受け、R1及びR2は、水素原子、又は置換基を含んでもよい炭化水素基であれば、どのような構造であっても大きな影響を与えない。従って、本発明に用いられる塩基発生剤において、発生する塩基(NHR1R2)は、組み合わせて用いられる高分子前駆体や目的に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されない。
炭化水素基としては、不飽和結合を含んでいても良く、例えば、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基は、当該炭化水素基中に、置換基を含んでよい。
分岐鎖が結合した環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、縮合環、及び複素環、並びに当該脂環式炭化水素、縮合環、及び複素環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合わされてなる構造であっても良い。
R1及びR2における炭化水素基は、通常、1価の炭化水素基であるが、生成するNHR1R2がジアミン等のアミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する塩基性物質の場合等には、2価以上の炭化水素基となり得る。
上記置換基−XR9における、Xとしては、樹脂に対する相溶性や溶剤に対する溶解性が向上する点から、オキシ基、チオ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、オキシチオカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニルオキシ基、カルボニルチオ基が好ましく、オキシ基、チオ基がより好ましい。
ここで、本発明の塩基発生剤において、置換基として、塩基性を有するアミノ基を含まないことが好ましい。塩基性を有するアミノ基が含まれてしまうと、塩基発生剤自体が塩基性物質となり、反応を促進してしまう恐れがあるからである。
置換基を含んで良いアミノ基の好ましい例としては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基等が挙げられる。
一方、本発明において、特に化学式(1)中のR3及びR4のうち少なくとも1つが、水素ではなく、上記特定の官能基である場合には、R3及びR4の両方共が水素の場合と比べて、本発明の塩基発生剤は、有機溶剤に対する溶解性が更に向上したり、組み合わせて用いられる高分子前駆体との親和性が向上する。例えば、R3及びR4のうち少なくとも1つが、アルキル基やアリール基等の置換基を有してもよく、かつ不飽和結合を含んでもよい炭化水素基である場合、有機溶剤に対する溶解性が向上する。また、例えばR3及びR4のうち少なくとも1つがフッ素等のハロゲンである場合、フッ素等のハロゲンを含有する高分子前駆体との親和性が向上する。このように、R3及び/又はR4を所望の有機溶剤や組み合わせて用いられる高分子前駆体に合わせて適宜置換基を導入することにより、所望の有機溶剤に対する溶解性が向上したり、所望の高分子前駆体との親和性が向上する。
ここで、電子吸引性基とは、共鳴効果や誘起効果によって相手から電子をひきつける原子団をいう。化学式(1)において、R7に電子吸引性基が置換することにより、パラ位に存在するフェノール性水酸基の酸素の電子密度が小さくなり、フェノール性水酸基の酸性度が大きくなる。後述する比較例に示すように、R7に電子吸引性基が置換しても、R5、R6、及びR8のいずれかに電子供与性基が置換すると、フェノール性水酸基は当該電子供与性基の影響も受けるため、塩基発生温度は低下するとは限らない。一方、本発明においては、化学式(1)において、R5、R6、及びR8は、それぞれ独立に水素原子、又は電子吸引性基であるため、フェノール性水酸基の酸素の電子密度を大きくする要因はなく、R7に置換された電子吸引性基の影響により、フェノール性水酸基の酸素の電子密度が小さくなり、塩基発生温度が低下する。
本発明において用いられる高分子前駆体は、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される化合物である。
本発明の高分子前駆体としては、上記の様な塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下で、70℃以下での加熱によって最終生成物への反応が促進されるものであれば特に制限なく使用が可能であり、用途に合わせて適宜選択されれば良い。下記に代表的な例を挙げるが、これらに限定されるものではない。なお、高分子前駆体としては、1種単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良い。
前記化学式(1)で表される塩基発生剤は、上記特定の構造を有し、電磁波の照射、さらに70℃以下で加熱されることにより、塩基を発生する。そして、発生した塩基が触媒、硬化促進剤、硬化剤等となって、上記高分子前駆体を含む感光性樹脂組成物が硬化する。
本発明において用いられる高分子前駆体としては、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、又はチイラン基を有する化合物及び高分子、並びに、ポリシロキサン前駆体よりなる群から選択される1種以上を含む高分子前駆体が好適に用いられる。
上記1個以上のエポキシ基を有する化合物及び高分子としては、分子内に1個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限なく、従来公知のものを使用できる。
前記塩基発生剤は、一般的には分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物の硬化触媒としての機能も有する。
また、重量平均分子量3,000〜100,000のポリマー側鎖に上記官能基を導入したものを用いることが好ましい。3,000未満では膜強度の低下及び硬化膜表面にタック性が生じ、不純物等が付着しやすくなる恐れがある。また、100,000より大きいと粘度が増大する恐れがあり好ましくない。
また、エポキシ基を2個以上有する化合物は、短時間での硬化を実現するために、反応性が高く、かつ、エポキシ当量が低いことが好ましい。例えば、エポキシ当量が100〜800g/eq.の範囲内であることが好ましい。ここで、エポキシ当量とは、JIS K7236に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。本発明において、エポキシ基を2個以上有する化合物の少なくとも1種は、エポキシ当量が100〜800g/eq.の範囲内であることが好ましい。
より短時間で硬化する点からは、エポキシ当量が100〜800g/eq.のエポキシ基を2個以上有する化合物を、エポキシ基を2個以上有する化合物全量に対して、50質量%以上含有することが好ましい。また、より短時間で硬化する点からは、エポキシ基を2個以上有する化合物を2種以上用いた場合も、混合物の全体として、エポキシ当量が100〜800g/eq.の範囲内であることが好ましい。但し、硬化時間は、感光性樹脂組成物の用途により適宜選択されればよく、これらに限定されるものではない。
また、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物としては、末端にエポキシ基を有するフェノキシ樹脂であっても良い。フェノキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールM骨格(4,4’−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール骨格)を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールP骨格(4,4’−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール骨格)を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールZ骨格(4,4’−シクロヘキシィジエンビスフェノール骨格)を有するフェノキシ樹脂等、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ノボラック骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノキシ樹脂、ノルボルネン骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するフェノキシ樹脂等を挙げることができる。前記フェノキシ樹脂の分子量は、特に限定されないが、質量平均分子量が5000〜100000であることが好ましい。さらに好ましくは10000〜70000である。質量平均分子量が前記下限値以上であれば、製膜性を向上させる効果を十分に得ることができる。一方、前記上限値以下であれば、溶解性を維持することができて好適である。
上記フェノール性水酸基を有する化合物としては、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物全般が好適に用いられ、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂等が挙げられ、フェノール樹脂は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記メルカプト基(−SH基)を有する化合物としては、1分子内にメルカプト基を2個以上有する化合物が好適に用いられ、従来公知のものを使用できる。1分子内にメルカプト基を3個以上有するものがより好適である。なお、メルカプト基を有する化合物はチオールという名称で知られている。
メルカプト基を有する化合物としては、例えば、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、1,5−ナフタレンジチオール、トリチオグリセリン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールトリメルカプト−トリアジン)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、2,4,6−トリス(メルカプトメチル)メシチレン、トリス(メルカプトメチル)イソシアヌレート、トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレート、2,4,5−トリス(メルカプトメチル)−1,3−ジチオラン、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、テトラメルカプトブタン、ペンタエリトリチオールが挙げられる。
分子間で架橋反応をする高分子としては、例えば、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する高分子(イソシアネート樹脂)と分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する高分子(ポリオール)の組み合わせが挙げられる。
また、分子間で架橋反応をする化合物と高分子の組み合わせを用いても良い。例えば、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する高分子(イソシアネート樹脂)と分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物の組み合わせ、及び、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する高分子(ポリオール)の組み合わせ等が挙げられる。
イソシアネート基をもつ化合物及び高分子としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に制限なく、公知のものを使用できる。このような化合物としては、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等に代表される低分子化合物の他に、オリゴマー、重量平均分子量3,000以上のポリマーの側鎖又は末端にイソシアネート基が存在する高分子を用いてもよい。
前記イソシアネート基を持つ化合物及び高分子は、通常、分子内にヒドロキシル基を持つ化合物と組み合わせて用いられる。このようなヒドロキシル基を有する化合物としては、分子内に2個以上のヒドロキシル基を有するものであれば特に制限なく、公知のものを使用できる。このような化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子化合物の他に、重量平均分子量3,000以上のポリマーの側鎖又は末端にヒドロキシル基が存在する高分子を用いてもよい。
分子間で加水分解・重縮合する化合物としては、たとえばポリシロキサン前駆体が挙げられる。
ポリシロキサン前駆体としては、YnSiX(4−n)(ここで、Yは置換基を有していても良いアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、フェニル基、または水素を示し、Xはアルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、及びハロゲンよりなる群から選択される加水分解性基を示す。nは0〜3までの整数である。) で示される有機ケイ素化合物及び当該有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物が挙げられる。中でも、上記式においてnが0〜2であるものが好ましい。また、シリカ分散オリゴマー溶液の調製がし易く入手も容易な点から、上記加水分解性基としては、アルコキシ基であるものが好ましい。
上記有機ケイ素化合物としては、特に制限なく、公知のものを使用できる。例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、フッ素系シランカップリング剤として知られたフルオロアルキルシラン、および、それらの加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物;並びに、それらの混合物を挙げることができる。
本発明に用いられる感光性樹脂組成物は、前記化学式(1)で表される塩基発生剤と、高分子前駆体との単純な混合物であってもよいが、さらに、溶剤、その他の添加剤を配合して、感光性樹脂組成物を調製してもよい。本発明の塩基発生剤の補助的な役割として、光によって酸又は塩基を発生させる他の感光性成分を添加しても良いし、塩基増殖剤や光増感剤を添加してもよい。更に、光硬化性成分やラジカル開始剤を添加しても良い。
また、本発明の感光性樹脂組成物は、その用途に合わせて、更にその他の成分を含んでいても良い。例えば、粘着付与樹脂、熱可塑性高分子やその他の高分子;フィラー;顔料、染料等の着色剤;銀等の導電性粒子;難燃剤、保存性向上剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、カップリング剤等の密着向上剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤等の各種添加剤等を適宜含有してもよい。
感光性樹脂組成物を溶解、分散又は希釈する溶剤としては、各種の汎用溶剤を用いることが出来る。
使用可能な汎用溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、蓚酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類;γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホンなどのスルホン類、ヘキサメチルフォスホアミド等のリン酸アミド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。これらの溶媒は単独若しくは組み合わせて用いられる。
本発明に用いられる感光性樹脂組成物において、前記高分子前駆体の合計量(固形分)は、通常、感光性樹脂組成物の固形分全体に対し、50.0〜99.9質量%であることが好ましく、更に80.0〜99.0質量%であることが好ましい。また、前記化学式(1)で表される塩基発生剤は、通常、感光性樹脂組成物の固形分全体に対し、0.1〜50.0質量%であることが好ましく、更に1.0〜20.0質量%であることが好ましい。
なお、感光性樹脂組成物の固形分とは、溶剤以外の全成分であり、液状の高分子前駆体等の化合物も固形分に含まれる。
本発明における感光性樹脂組成物の硬化方法において、感光性樹脂組成物は通常、感光性樹脂組成物からなる塗膜又は成形体を形成し、その後、硬化工程が行われる。
本発明に用いられる上記感光性樹脂組成物を何らかの支持体上に塗布するなどして塗膜を形成したり、適した成形方法で成形体を形成する。塗布方法及び成形体の成形方法は、従来公知の方法を適宜採用することができる。
上記で得られた感光性樹脂組成物の塗膜又は成形体に電磁波を照射する方法としては、用途に応じて、従来公知の方法を適宜選択して用いればよい。電磁波照射工程に用いられる電磁波照射方法や露光装置は特に限定されることなく、密着露光でも間接露光でも良く、g線ステッパ、i線ステッパ、超高圧水銀灯を用いるコンタクト/プロキシミティ露光機、ミラープロジェクション露光機、又はその他の紫外線、可視光線、X線、電子線などを照射可能な投影機や線源を使用することができる。
本発明の感光性樹脂組成物の硬化方法においては、電磁波照射後又は照射と同時に70℃以下で加熱して硬化することを特徴とする。
上述のように、本発明に用いられる感光性樹脂組成物に含まれる前記化学式(1)で表される塩基発生剤は、特定の置換基を特定の置換位置に有することにより、70℃以下で塩基が発生する。そのため、本発明の感光性樹脂組成物の硬化方法においては、実質的に潜在性硬化促進剤として機能し、且つ、感度が高い桂皮酸型塩基発生剤を用いながら、70℃以下という低温での硬化を実現することが可能になる。
なお、加熱とは、前記化学式(1)で表される塩基発生剤が塩基を発生する温度以上の範囲で、且つ、用いられる高分子前駆体が硬化する温度が、塗膜に対して付与されていれば良い。電磁波照射と同時に上記温度が塗膜に対して付与されていれば、例えば70℃で加熱された状態で電磁波が照射され、その後70℃で温度が保持された場合も、電磁波照射と同時に70℃以下で加熱したことに包含される。
また、電磁波照射と加熱を交互に行ってもよい。最も効率が良い方法は、電磁波照射と同時に加熱する方法である。
本発明において用いられる感光性樹脂組成物は、電磁波の照射又は照射と同時に加熱することにより、露光部において、上記化学式(1)で表される塩基発生剤が異性化及び環化して塩基(NR1R2)が生成する。塩基は、電磁波照射部の高分子前駆体の最終生成物への反応を促進する触媒として作用し、高分子前駆体の反応が進行して樹脂組成物が硬化する。
例えば、印刷インキ、塗料、シール剤、接着剤、電子材料、光回路部品、成形材料、レジスト材料、建築材料、光造形、光学部材用途において、利用できる。
本発明に係る成形体の製造方法は、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体と、下記化学式(1)で表され且つ電磁波の照射と加熱により塩基を発生する塩基発生剤を含む感光性樹脂組成物を、基体上に塗布して塗膜を形成する工程と、当該塗膜に電磁波を照射し、照射後又は照射と同時に70℃以下で加熱して、前記塗膜を硬化する工程を含むことを特徴とする。
さらに本発明の成形体の製造方法は、感光性樹脂組成物の触媒として塩基を用いるため、酸を用いる場合と異なり金属の腐食を起こさず、硬化膜が金属と接触する用途において、より信頼性の高い硬化膜を含む成形体を得ることが出来る。
まず、前記特定の感光性樹脂組成物を準備する。当該特定の感光性樹脂組成物は、前述の感光性樹脂組成物の硬化方法で説明したものと同様であってよいので、ここでの説明を省略する。
(基体)
本発明では、基体は、上記特定の感光性樹脂組成物を塗布する被着体であって、支持体となれば良いものであり、特に限定されるものではない。基体の形状は、平板状に限られず、凹凸形状や曲面を有する成形体であっても良い。また、基体は、基材上に各種の構造物を有するものであっても良い。例えば、TFT素子等の回路が形成されていてもよく、フォトレジスト等の機能性材料が形成されていてもよい。
本発明においては、70℃以下という低温で硬化膜を作成することが可能なため、70℃を超えるような高温で加熱すると問題が生じる基体に対して好適に用いることができる。例えば、ガラス転移温度が100℃以下である樹脂を含む基体に対して好適に用いることができる。なお、樹脂のガラス転移温度は、JIS K7122(1987)に準拠して、示差走査熱量測定装置を用いて測定することができる。
なお、本発明の成形体の製造方法においては、低温で硬化反応を行うことが可能なため、樹脂基材に対して好適に用いられる。また、塩基発生剤は酸を発生しないため、アルミや銅といった金属箔基材の使用も可能である。
感光性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する方法としては、従来公知の方法を適宜用いることができる。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、ブレードコート法、スプレー法、凸版印刷法、凹版印刷法、平板印刷法、ディスペンス法およびインクジェット法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
感光性樹脂組成物を塗布して形成された塗膜の厚みも、各成形体における硬化膜の用途に応じて、適宜選択されれば良く、特に限定されない。
塗膜に電磁波を照射し、照射後又は照射と同時に70℃以下で加熱して、前記塗膜を硬化する工程は、前記感光性樹脂組成物の硬化方法で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明を省略する。
本発明の製造方法で製造される成形体としては、例えば、前記特定の感光性樹脂組成物の硬化膜が接着剤として用いられた各種積層体を含む成形体、硬化膜が絶縁膜として用いられた各種成形体、硬化膜が保護膜として用いられた各種成形体等が挙げられる。
成形体の具体例としては、例えば、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、配向膜等の表示装置用部材、半導体装置用部材、プリント配線基板等の電子部品部材、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品、反射防止膜等の光学部材、及び建築部材等を上げることができるがこれらに限定されるものではない。
また、以下に示す装置を用いて各測定、実験を行った。
1H NMR測定:日本電子(株)製、JEOL JNM−LA400WB
手動露光:大日本科研製、MA−1100
吸光度測定:(株)島津製作所製、紫外可視分光光度計UV−2550
5%質量減少温度測定:(株)島津製作所製、示差熱・熱質量同時測定装置DTG−60
アセチルクロリド(東京化成工業(株)製)3.53g(45.0mmol、1.1eq)をクロロホルム(50ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下で0℃に冷却した。無水塩化アルミニウム(関東化学(株)製)8.19g(61.4mmol、1.5eq)をゆっくり加え、混合物を15分撹拌した。サリチルアルデヒド(東京化成工業(株)製)4.3ml(40.9mmol、1.0eq)滴下し、30分撹拌後、室温に昇温して一晩撹拌した。反応終了後、混合物に氷水を添加し10分撹拌後、クロロホルムで三回抽出した。有機相をまとめ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別して、溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=3/1〜2/1(体積比))で精製し、5−アセチル−サリチルアルデヒドを得た。
100mLナスフラスコ中、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド(東京化成工業(株)製)730mg(1.70mmol、1.0eq)、5−アセチル−サリチルアルデヒド280mg(1.70mmol、1.0eq)をアセトニトリル10mLに溶解したのち、炭酸カリウム1.0gをゆっくり添加した。2.5時間撹拌した後、薄層クロマトグラフィーにより反応の終了を確認し、ろ過により炭酸カリウムを除去し、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を5mL加え終夜で撹拌した。反応終了後、クロロホルムにより洗浄し、濃塩酸を滴下し反応液を酸性にしたところ、沈殿が生成した。沈殿物をろ過により集め、乾燥することで(E)−3−(2−ヒドロキシ−5−アセチルフェニル)アクリル酸を得た。
アルゴン雰囲気下、100mL三口フラスコ中、(E)−3−(2−ヒドロキシ−5−アセチルフェニル)アクリル酸200mg(970μmmol、1.0eq)を脱水テトラヒドロキシフラン5mLに溶解し、氷浴下で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製)204mg(1.06mmol、1.1eq)を加えた。30分後、ピペリジン(東京化成(株)製)91μl(922μmol、0.95eq)を加えたのち終夜で攪拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。クロロホルムで抽出した後、炭酸水素水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥を行った。メタノールにて再結晶法により精製することにより下記化学式で示される塩基発生剤(1)を60mg得た。
500mLナスフラスコ中、4−シアノフェノール(東京化成工業(株)製)4.76g(40.0mmol、1.0eq)、ヘキサメチレンテトラミン(東京化成工業(株)製)11.2g(80mmol、2.0eq)をトリフルオロ酢酸(関東化学(株)製)32mlに溶解し、100℃で7.5時間撹拌した。反応終了後、氷浴下で1規定塩酸200mlを添加し15分間撹拌した。撹拌終了後、クロロホルムで抽出し、塩酸・飽和食塩水で洗浄を行うことにより5−シアノーサリチルアルデヒドを得た。
製造例1において、5−アセチル−サリチルアルデヒドの代わりに、5−シアノ−サリチルアルデヒドを等モル量用いた以外は、製造例1と同様にして、(E)−3−(2−ヒドロキシ−5−シアノフェニル)アクリル酸を得た。
製造例1において、(E)−3−(2−ヒドロキシ−5−アセチルフェニル)アクリル酸の代わりに(E)−3−(2−ヒドロキシ−5−シアノフェニル)アクリル酸を等モル量用いた以外は、製造例1と同様にして、下記化学式で示される塩基発生剤(2)を80mg得た。
アルゴン雰囲気下、100mLフラスコ中、アセチルピペリジン(東京化成工業(株)製) 950mg(7.47mmol、1.05eq)を脱水ジメチルホルムアミド(関東化学(株)製)5.0mLに溶解し、t−ブトキシカリウム(東京化成工業(株)製)3.36g(29.9mmol、4.2eq)を添加し、30分撹拌した。5−ニトロサリチルアルデヒド(東京化成工業(株)製)1.19g(7.13mmol、1.0eq)を添加し、80℃にて2h撹拌した。反応終了後、室温にまで冷ましたのち、蒸留水10mlを添加し、酢酸エチルを用い3回洗浄した。反応水溶液を、100mlフラスコに移し、氷浴下で濃塩酸をpHが1となるまで滴下したところ、沈殿が析出した。析出した沈殿をろ過により回収することで、下記化学式で示される塩基発生剤(3)を850mg得た。
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中、o−クマリン酸(東京化成工業(株)製)0.50g(3.1mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン40mLに溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製)0.59g(3.1mmol,1.0eq)を加えた。氷浴下で、ピペリジン(東京化成(株)製)0.3ml(3.1mmol,1.0eq)を加えた後、室温で一晩攪拌した。反応液を濃縮し、クロロホルムで抽出、希塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄し、ろ過することにより、下記化学式で表される比較塩基発生剤(1)を450mg得た。
100mLフラスコ中、炭酸カリウム2.00gをメタノール15mLに加えた。50mLフラスコ中、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム ブロミド2.67g(6.2mmol)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド945mg(6.2 mmol)をメタノール10mLに溶解し、よく撹拌した炭酸カリウム溶液にゆっくり滴下した。3時間撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認したうえでろ過を行い炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50mL加え1時間撹拌した。反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除いた後、濃塩酸を滴下し反応液を酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムにより洗浄することで2−ヒドロキシ−4−メトキシケイ皮酸を1.00g得た。続いて、100mL三口フラスコ中、2−ヒドロキシ−4−メトキシケイ皮酸500mg(3.0 mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン40mLに溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)0.586g(3.0mmol)を加えた。30分後、ピペリジン0.3ml(3.0mmol)を加えた。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。ジエチルエーテルで抽出した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄した。その後、シリカゲルカラムクマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール 100/1〜10/1)により精製することにより、下記化学式で表される比較塩基発生剤(2)を64mg得た。
製造例3において、5−ニトロサリチルアルデヒドの代わりに、2−ヒドロキシ−5−ニトロ−m−アニスアルデヒド(東京化成工業(株)製)を等モル量用いた以外は、製造例1と同様にして、下記化学式で示される比較塩基発生剤(3)を50mg得た。
合成した塩基発生剤(1)〜(3)、及び比較塩基発生剤(1)〜(3)について、以下の測定を行い、評価した。モル吸光係数及び塩基発生温度の結果を表1に示す。
(1)モル吸光係数
塩基発生剤(1)〜(3)、及び比較塩基発生剤(1)〜(3)をそれぞれ、アセトニトリルに1×10−4mol/Lの濃度で溶解し、石英セル(光路長10mm)に溶液を満たし、365nm及び405nmでの吸光度を測定した。なお、モル吸光係数εは、溶液の吸光度を吸収層の厚さと溶質のモル濃度で割った値である。
NMR測定を用いて塩基発生温度の評価を行った。
塩基発生剤(1)〜(3)、及び比較塩基発生剤(1)〜(3)について、1mgの試料を石英製NMR管中で重ジメチルスルホキシド0.5mLに溶解させた。
塩基発生剤(1)〜(3)、及び比較塩基発生剤(1)〜(3)について、350nm以下の光をカットするフィルタ(商品名:GG385、厚さ1mm、(株)渋谷光学製)と高圧水銀灯を用いて、断続的に光照射を行い、1H NMRを測定し、異性化反応が進行することを確認した。
異性化したサンプルを断続的に加熱し、塩基発生温度を評価した結果を表1に示した。
(1)感光性樹脂組成物(1)〜(3)及び比較感光性樹脂組成物(1)〜(3)の調製
本発明に用いられる前記化学式(1)で表される塩基発生剤(1)〜(3)を用いて、下記に示す組成の感光性樹脂組成物(1)〜(3)を調製した。同様に、比較塩基発生剤(1)〜(3)を用いて、下記に示す組成の比較感光性樹脂組成物(1)〜(3)を調製した。
・エポキシ基を2個有する化合物(商品名「jER 828」,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,固形分:100%,エポキシ当量:184〜194g/eq.,質量平均分子量:370,三菱化学社製):100質量部
・メルカプト基を4個有する化合物(ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、商品名「QX40」,粘度:400〜550mPa・s/25℃,アミン価:125〜137KOHmg/g,三菱化学社製):70質量部
・各塩基発生剤:5質量部
・メタノール:50質量部
感光性樹脂組成物(1)〜(3)及び比較感光性樹脂組成物(1)〜(3)をPETフィルム(東洋紡エステルフィルム、E5100)上に、塗布後の厚みが10μmになるようにアプリケーターを用いて塗布後、乾燥オーブンにて50℃で10分間乾燥させ、塗膜を形成した。
得られた塗膜に対し、手動露光機を用いて高圧水銀灯により1J/cm2全面露光を行った。
その後、それぞれの塗膜について、ホットプレートを用いて70℃で加熱した。塗膜表面で感光性樹脂組成物の糸が引かなくなり、表面が硬くなったことを目視で確認するまでに要した時間を測定し、硬化時間とした。硬化時間の結果を表2に示す。なお、90分加熱しても硬化しなかったものを“硬化せず”とした。
一方、塩基発生剤として、より高温でしか塩基が発生しない比較塩基発生剤(1)〜比較塩基発生剤(3)を用いた比較感光性樹脂組成物(1)〜(3)は、70℃の加熱では90分加熱しても硬化せず、70℃という低温で成形体を製造できなかった。
PETフィルム(東洋紡エステルフィルム、E5100)上に塗布後の厚みが100μmとなるように、アプリケーターを用いて、上記感光性樹脂組成物(1)を塗布した。塗布面にポリカーボネ−ト樹脂(パンライトシート、PC-1151)を貼り合わせ、PETフィルム側から手動露光機を用いて電磁波を照射した後、乾燥オーブンにて70℃で50分間加熱乾燥させることで、ゆがみのない積層体として成形体を製造することができた。
蒸着法を利用し、PETフィルム(東洋紡エステルフィルム、E5100)上に金配線を形成した。PETフィルム及び金配線上に、塗布後の厚みが100μmとなるように、アプリケーターを用いて、上記感光性樹脂組成物(1)を塗布した。手動露光機を用いて電磁波を照射した後、乾燥オーブンにて70℃で50分間加熱乾燥させることで、ゆがみのない積層体として成形体を製造することができた。
Claims (3)
- 塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体と、下記化学式(1)で表され且つ電磁波の照射と加熱により塩基を発生する塩基発生剤を含む感光性樹脂組成物を、基体上に塗布して塗膜を形成する工程と、当該塗膜に電磁波を照射し、照射後又は照射と同時に70℃以下で加熱して、前記塗膜を硬化する工程を含む、成形体の製造方法。
(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を含んでもよい炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、R1とR2が結合して環状構造を形成していてもよい。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子を表す。R7は、電子吸引性基であり、R5、R6、及びR8は、それぞれ独立に水素原子、又は電子吸引性基である。) - 前記基材が、樹脂基材である、請求項1に記載の成形体の製造方法。
- 塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体と、下記化学式(1)で表され且つ電磁波の照射と加熱により塩基を発生する塩基発生剤を含む感光性樹脂組成物に、電磁波を照射し、照射後又は照射と同時に70℃以下で加熱して硬化する、感光性樹脂組成物の硬化方法。
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