JP2012130906A - 光硬化性樹脂組成物の硬化方法、及びレリーフパターンの製造方法 - Google Patents

光硬化性樹脂組成物の硬化方法、及びレリーフパターンの製造方法 Download PDF

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俊治 福田
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浩司 川口
Katsuya Sakayori
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Abstract

【課題】硬化状態を所望の状態に段階的且つ安定的に制御可能で、プロセスマージンを取りやすい光硬化性樹脂組成物の硬化方法、及びレリーフパターンの製造方法を提供する。
【解決手段】光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤、及び、特定の高分子前駆体を含有する光硬化性樹脂組成物を利用し、下記工程1〜工程4により、所定温度での前記樹脂組成物の貯蔵弾性率を段階的に変化させる光硬化性樹脂組成物の硬化方法、並びに、レリーフパターンの製造方法である。
工程1:基材に前記光硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する
工程2:上記塗膜を基材側及び/又は塗膜表面側から光照射する
工程3:塗膜を加熱し、塗膜の少なくとも一部を硬化させる
工程4:上記工程2及び工程3を繰り返し、前記塗膜を硬化させる
【選択図】なし

Description

本発明は、電磁波の照射及び加熱により塩基を発生する塩基発生剤を含む光硬化性樹脂組成物を利用した硬化状態を段階的に制御可能な硬化方法、及び、レリーフパターンの製造方法に関するものである。
光硬化性樹脂組成物は、例えば、電子部品、光学製品、光学部品の成形材料、層形成材料又は接着剤などに好適に利用されてきている。
硬化性樹脂組成物の用途には、最終製品時には、ほぼ完全に硬化していることが要求されるが、中間体として使用する時には、敢えて不完全な硬化状態が求められるものがある。このような用途としては、例えば、粘着剤や接着剤等、工程の途中で貼り合わせや貼り直しが必要とされる用途や、一度被着体と貼り合わせた後に材料を硬化させ剥離する用途や、ホログラム、インプリント材料や工程離型紙等、工程の途中でエンボス加工が必要とされる用途等がある。
硬化性樹脂組成物の硬化状態を調整する方法として、熱硬化性樹脂組成物の場合は、加熱時間を調整することで、半硬化の状態を作ることができる。しかし、熱硬化性樹脂の場合、反応を途中で止めるために加熱をやめても、樹脂が冷えるまで反応が進行する恐れがあるなどプロセスマージンがとりにくいという問題がある。また、熱硬化性樹脂組成物はポットライフが悪いという問題もある。
そこで、ポットライフが比較的長い光硬化性樹脂組成物を用いた硬化状態を調整する方法が望まれる。光硬化性樹脂組成物の硬化状態を調整する方法としては、光開始剤や光硬化剤等の感光剤の添加量の調整、加熱温度の調整などが考えられる。感光剤を利用し、光硬化性樹脂組成物の硬化状態を調整する例として、特許文献1では、露光波長の異なる2種類以上のラジカル開始剤を利用し、それぞれに応じた光源を使用することで、硬化状態の調整を行っている。また、特許文献2においては、1種のラジカル発生剤を利用し、異なる露光波長で2回光照射を行っている。
従来、必要となる感光剤や光源を多く必要とし、調合や効果のプロセスが煩雑になると共に、硬化状態の調整が困難であった。また、1種類の感光剤を利用し、硬化状態を段階的に調整しようと考えた場合、反応を途中で止めることになるため、プロセスマージンをとりにくく、実質的な制御が困難であった。
特開2005−514476号公報 特開2009−114451号公報
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、その主目的は、実質的に1種類の光塩基発生剤を用い、且つ、光照射において同一の光源を用いたとしても、硬化状態を所望の状態に段階的且つ安定的に制御可能で、プロセスマージンを取りやすい光硬化性樹脂組成物の硬化方法、及び当該光硬化性樹脂組成物の硬化方法を用いたレリーフパターンの製造方法を提供することにある。
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化方法は、光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤、及び、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体を含有する光硬化性樹脂組成物を利用し、下記工程1〜工程4により、所定温度での前記樹脂組成物の貯蔵弾性率を段階的に変化させることを特徴とする。
工程1:基材に前記光硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する工程
工程2:上記塗膜を基材側及び/又は塗膜表面側から光照射する工程
工程3:上記光照射後又は光照射と同時に、塗膜を加熱し、塗膜の少なくとも一部を硬化させる工程
工程4:上記工程2及び工程3を繰り返し、前記塗膜を硬化させる工程。
本発明によれば、光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤と上記特定の高分子前駆体を含有する光硬化性樹脂組成物を用い、光照射工程及び光照射後の加熱工程を2回以上繰り返すことにより、所定温度での貯蔵弾性率を段階的に変化させることができ、実質的に1種類の光塩基発生剤を用い、且つ、光照射において同一の光源を用いたとしても、硬化状態を所望の状態に段階的且つ安定的に制御可能で、プロセスマージンを取りやすい光硬化性樹脂組成物の硬化方法を提供できる。
また、本発明のレリーフパターンの製造方法は、光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤、及び、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体を含有する光硬化性樹脂組成物を利用し、下記工程1〜工程4により、所定温度での前記樹脂組成物の貯蔵弾性率を段階的に変化させ、更に現像工程又はエンボス工程を有する。
工程1:基材に前記光硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する
工程2:上記塗膜を基材側及び/又は塗膜表面側から光照射する
工程3:上記光照射後又は光照射と同時に、塗膜を加熱し、塗膜の少なくとも一部を硬化させる
工程4:上記工程2及び工程3を繰り返し、前記塗膜を硬化させる。
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化方法及びレリーフパターンの製造方法においては、前記塩基発生剤が、下記化学式(1)で表わされ且つ電磁波の照射と加熱により、ポリアミンを発生する塩基発生剤であることが好ましい。
(式(1)中、Rは水素原子又は有機基であり、Rは、n価の直鎖及び/又は分岐、及び/又は環状の飽和、不飽和の多価アルキル基、アリール基から選ばれる有機基であって、且つ、その内部に、式(1)の括弧内に含まれる桂皮酸アミド結合、当該桂皮酸アミド結合以外のアミド結合、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオカルバメート結合、カルボジイミド結合、カーボネート結合より選択される結合を1つ以上有しても良い。nは2以上の整数である。R及びRは、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R、R、R及びRは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。Rは、水素原子、或いは、加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能な保護基である。)
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化方法及びレリーフパターンの製造方法においては、前記工程3の加熱温度が200℃以下であることが、樹脂組成物に含まれる原料、及び基材の熱分解を抑制し、結果的に得られる硬化物の物性が良好となる点から好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化方法及びレリーフパターンの製造方法においては、前記高分子前駆体が、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、又はチイラン基を有する化合物及び高分子よりなる群から選択される1種以上であることが、硬化状態を所望の状態に段階的且つ安定的に制御可能で、プロセスマージンを取りやすくなる点から好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化方法及びレリーフパターンの製造方法においては、発生する塩基が1級アミノ基を分子内に2つ以上有するポリアミンであることが、硬化状態を所望の状態に段階的且つ安定的に制御可能で、プロセスマージンを取りやすくなる点から好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化方法及びレリーフパターンの製造方法においては、前記工程3と工程4の間、又は、工程4に含まれる2回目以降の光照射と2回目以降の加熱工程の間に、下記工程3’を更に含む態様も好適に用いられる。
工程3’:前記工程3によって少なくとも一部が硬化された状態で、前記塗膜の表面に他の物体を接触させる工程。
本発明によれば、実質的に1種類の光塩基発生剤を用い、且つ、光照射において同一の光源を用いたとしても、硬化状態を所望の状態に段階的且つ安定的に制御可能で、プロセスマージンを取りやすい光硬化性樹脂組成物の硬化方法、及び当該光硬化性樹脂組成物の硬化方法を用いたレリーフパターンの製造方法を提供することができる。
光塩基発生剤(1)の露光量に対するシス体への異性化率を示すグラフである。 光照射前、1回目〜3回目の光照射後及び加熱後における、光塩基発生剤(1)由来の化合物の割合を示すグラフである。 光塩基発生剤(2)及び光塩基発生剤(1)の露光量に対するシス体への異性化率を示すグラフである。
以下、本発明について詳しく説明する。
なお、本発明において(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
また、本発明において、有機基とは、少なくとも1つの炭素原子を含む官能基の総称を表す。
また、本発明において、光とは、波長を特定した場合を除き、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。本明細書では、光の照射を露光ともいう。なお、波長365nm、405nm、436nmの電磁波をそれぞれ、i線、h線、g線とも表記することがある。
I.光硬化性樹脂組成物の硬化方法
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化方法は、光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤、及び、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体を含有する光硬化性樹脂組成物を利用し、下記工程1〜工程4により、所定温度での前記樹脂組成物の貯蔵弾性率を段階的に変化させることを特徴とする。
工程1:基材に前記光硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する工程
工程2:上記塗膜を基材側及び/又は塗膜表面側から光照射する工程
工程3:上記光照射後又は光照射と同時に、塗膜を加熱し、塗膜の少なくとも一部を硬化させる工程
工程4:上記工程2及び工程3を繰り返し、前記塗膜を硬化させる工程。
本発明によれば、光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤と上記特定の高分子前駆体を含有する光硬化性樹脂組成物を用い、光照射工程及び光照射後の加熱工程を2回以上繰り返すことにより、所定温度での貯蔵弾性率を段階的に変化させることができ、実質的に1種類の光塩基発生剤を用い、且つ、光照射において同一の光源を用いたとしても、硬化状態を所望の状態に段階的且つ安定的に制御可能で、プロセスマージンを取りやすい光硬化性樹脂組成物の硬化方法を提供できる。
光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経て塩基を発生する塩基発生剤は、ある一定量光照射すると光異性化反応が平衡に達し、それ以上光異性化反応は進行せず、光異性化された化合物のみが加熱により分子内環化反応を経て塩基を発生する。そのため、光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経て塩基を発生する塩基発生剤を利用すると、1回の光照射につき光異性化反応が平衡に達する割合で塩基発生剤から発生する塩基の量を安定的に制限できるため、高分子前駆体の架橋密度を一旦途中の所望の段階に安定して止めることが可能である。また、光異性化した化合物を加熱して塩基を発生させた後、更に光照射を行うと、光異性化反応が進行せずに残留していた塩基発生剤において、また新たに光異性化反応が進行し、新たに光異性化反応が進行した分だけ塩基を発生させることができる。このように、上記塩基発生剤は、一定量の塩基を安定して段階的に発生することが可能なため、発生する塩基を架橋剤として用いる場合には、組み合わせて用いられる上記高分子前駆体の架橋密度を安定して段階的に高くすることが可能である。光塩基発生剤は構造により光異性化率が異なるため、光塩基発生剤を適宜選択し、光照射及び加熱の回数を適宜調整し、高分子前駆体と組み合わせることにより、実質的に1種類の光塩基発生剤を用い、且つ、光照射において同一の光源を用いたとしても、硬化状態を所望の状態に段階的且つ安定的に制御可能になり、プロセスマージンを取りやすいものとなる。
また、光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤を用いた光硬化性樹脂組成物では、光異性化の結果得られる塩基発生に寄与する異性体の存在比が、小さければ小さいほど、1回のみ光照射を行う方法を用いると、未反応物が系内に残存し、硬化不良の状態となる恐れがある。しかしながら、本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化方法を用いると、光照射及び加熱を繰り返し行うことで、全ての塩基発生剤から塩基を発生することが可能になり、硬化不良の問題が解消されるというメリットもある。
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化方法は、少なくとも、上記工程1〜工程4を有し、必要に応じて更に別の工程を有していても良いものである。
以下各工程を順に説明する。
(1)工程1:基材に前記光硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する工程
<光硬化性樹脂組成物>
本発明で用いられる光硬化性樹脂組成物は、光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤、及び、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体を少なくとも含有し、更に他の成分を含んでいても良いものである。
[塩基発生剤]
光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤において、光異性化反応は可逆反応で順方向の反応と逆方向の反応が平衡状態に達する反応であり、代表的にはオレフィンやアゾベンゼンのシス−トランス異性化反応等が挙げられる。加熱による分子内環化反応を経て塩基を発生する反応としては、例えば、o−ヒドロキシ桂皮酸アミドがクマリンとなる反応等が挙げられる。
光異性化は平衡反応であるので、平衡状態にある化合物が、分子内環化などの反応により別な化合物へ変化し、その存在比が平衡状態と異なった状態を形成した後に、再度光照射を行うことで、材料中に残存する異性化可能な化合物の中で再度平衡状態とすることができる。
また、本発明において、塩基発生剤からはポリアミンが発生する。ポリアミンは、1級アミノ基(−NH)及び/又は2級アミノ基(イミノ基;=NH)を1分子中に2つ以上有する化合物である。本発明においては、塩基発生剤から発生したポリアミンが、前記高分子前駆体の硬化剤として有効に機能し、ポリアミンの発生量に応じて、前記高分子前駆体の架橋密度が高まり、硬化状態を段階的に高めていくことができる。
本発明において、光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤としては、下記化学式(1)で表わされ且つ電磁波の照射と加熱により、ポリアミンを発生する塩基発生剤であることが好ましい。
(式(1)中、Rは水素原子又は有機基であり、Rは、n価の直鎖及び/又は分岐、及び/又は環状の飽和、不飽和の多価アルキル基、アリール基から選ばれる有機基であって、且つ、その内部に、式(1)の括弧内に含まれる桂皮酸アミド結合、当該桂皮酸アミド結合以外のアミド結合、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオカルバメート結合、カルボジイミド結合、カーボネート結合より選択される結合を1つ以上有しても良い。nは2以上の整数である。R及びRは、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R、R、R及びRは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。Rは、水素原子、或いは、加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能な保護基である。)
上記化学式(1)で表わされ且つ電磁波の照射と加熱により、ポリアミンを発生する塩基発生剤は、発生するポリアミンに含まれる1級アミノ基(−NH)及び/又は2級アミノ基(イミノ基;=NH)が、式(1)の括弧内に含まれる桂皮酸アミド結合によって潜在化された構造を有する。
o−ヒドロキシ桂皮酸アミド構造を有する塩基発生剤は、下記に示すように、光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経て塩基を発生する。そのため、光異性化反応が平衡に達する割合で、一定量の塩基を安定して段階的に発生することが可能である。
(上記式中、R’は水素原子又は有機基であり及びR”は有機基である。R〜Rは、式(1)と同じである。)
は水素原子又は有機基である。Rの有機基としては、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも環状でも良い。
有機基としては、置換基を含んで良く、不飽和結合を含んで良く、ヘテロ原子の結合を含んで良い、直鎖、分岐又は環状の炭化水素基が好ましい。
前記Rの有機基中の炭化水素基以外の結合としては、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されず、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオカルバメート結合、カルボジイミド結合、カーボネート結合等が挙げられる。
は、n価の直鎖及び/又は分岐、及び/又は環状の飽和、不飽和の多価アルキル基、アリール基から選ばれる有機基であって、且つ、その内部に、式(1)の括弧内に含まれる桂皮酸アミド結合、当該桂皮酸アミド結合以外のアミド結合、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオカルバメート結合、カルボジイミド結合、カーボネート結合より選択される結合を1つ以上有しても良い。
nは2以上の整数なので、Rは、2価以上の有機基であって、1分子中に2つ以上の式(1)の括弧内に含まれる桂皮酸アミド結合を含む。なお、例えば、発生するポリアミンが、ジエチレントリアミンのようなアルキル基の内部に2級アミノ基(イミノ基;=NH)が含まれるポリアミンの場合、当該2級アミノ基を介して、アルキル基の内部に式(1)の括弧内に含まれる桂皮酸アミド結合を更に有する構造であることが好ましい。
また、R及びRは、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。
環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。
前記R及びRの有機基中の炭化水素基以外の置換基、すなわち、有機基に包含される置換基において炭化水素基とは異なる置換基、及び炭化水素基に置換されていても良い置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が挙げられる。
また、発生する塩基が1級アミノ基を分子内に2つ以上有するポリアミンである場合には、高い架橋密度の硬化物が得られる点から好ましい。これは、塩基が硬化剤として機能する場合、1級アミノ基であると、2級アミノ基と比べて、反応部位が2倍になるからである。
また、発生する塩基の熱物性、及び塩基性度の点から、R及びRの有機基は、それぞれ独立に炭素数1〜20が好ましく、更に炭素数1〜12が好ましく、特に炭素数1〜8であることが好ましい。
本発明の塩基発生剤から発生するポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の直鎖状脂肪族アルキレンジアミン;N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ジメチル−1,5−ペンタンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、N,N’−1,8−オクタンジアミン等の脂肪族アルキレンジアミン;1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン等の分岐状脂肪族アルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の一般式NH(CHCHNH)Hで示されるポリエチレンアミン類;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン、メンセンジアミン等の脂環式ジアミン;ビス(2−メチルアミノエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メチルアミノエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メチルアミノエトキシ)エチル]エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,4−ブタンジオールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,1,1−ジアミノ−3,6,9−トリオキサウンデカン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン等のエーテル基を含むジアミン類;1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン等の複素環式アミンを含むジアミン類;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ジアミン;ベンゼントリアミン、メラミン、2,4,6−トリアミノピリミジン等のトリアミン;2,4,5,6−テトラアミノピリミジン等のテトラアミンを挙げることができる。
また、化学式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基であり、同一であっても異なっていても良い。
及びRとしては、高感度を達成しやすい点から、いずれも水素原子であることが好ましい。
ハロゲン原子、有機基としては、本発明の効果が損なわれない限り、特に制限がなく、後述するR、R、R及びRに挙げたものと同様のものを用いることができる。
また、化学式(1)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R、R、R及びRは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。
本発明においては置換基R〜Rに、置換基を1つ以上導入することが好ましい。カルボニル結合のα位およびβ位に位置するα炭素−β炭素間の二重結合がトランス体からシス体への異性化反応を効率よく進める要因としてはいくつかあり、例えば上記炭素−炭素二重結合周囲の立体障害の大きさ、上記炭素−炭素二重結合周囲に広がる共役鎖の電子状態等が挙げられるが、置換基R〜Rに、上記のような置換基を少なくとも1つ導入することにより、上記炭素−炭素二重結合周囲の共役鎖が拡張し、塩基発生の感度を向上することができる。また、置換基R〜Rに、上記のような置換基を少なくとも1つ導入することにより、吸収する光の波長を調整することが可能であり、置換基を導入することで所望の波長を吸収させるようにすることもできる。芳香族環の共役鎖を伸ばすような置換基を導入することにより、吸収波長を長波長にシフトすることができる。また、溶解性や組み合わせる高分子前駆体との相溶性が向上するようにすることもできる。これにより、組み合わせる高分子前駆体の吸収波長も考慮しながら、光硬化性樹脂組成物の感度を向上させることが可能である。
所望の波長に対して吸収波長をシフトさせる為に、どのような置換基を導入したら良いかという指針として、Interpretation of the Ultraviolet Spectra of Natural Products(A.I.Scott 1964)や、有機化合物のスペクトルによる同定法第5版(R.M.Silverstein 1993)に記載の表を参考にすることができる。これらを参考とすることで、化合物の極大吸収波長がどの程度長波長化するかの目安を知ることができる。
置換基R〜Rにおいて、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
有機基としては、例えば、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも環状でも良い。R〜Rの有機基中の炭化水素基以外の結合としては、前記R及びRの炭化水素基以外の結合と同様のものを用いることができる。また、R〜Rの有機基は、炭化水素基以外の結合を介してベンゼン環に結合してもよい。また、R〜Rの有機基において炭化水素基以外の置換基(有機基に包含される置換基において炭化水素基とは異なる置換基、及び炭化水素基に置換されていても良い置換基)としては、前記R及びRの炭化水素基以外の置換基と同様のものを用いることができる。
有機基としては、本発明の効果が損なわれない限り、特に制限がなく、例えば、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基等が挙げられる。
〜Rにおける有機基は、通常、1価の有機基であるが、後述する環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
また、R〜Rは、それらのうち2つ以上が結合して環状構造になっていても良い。
環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。例えば、R〜Rは、それらの2つ以上が結合して、R〜Rが結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成していても良い。
〜Rとしては、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜20のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数4〜23のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数4〜23のシクロアルケニル基;フェノキシメチル基、2−フェノキシエチル基、4−フェノキシブチル基等の炭素数7〜26のアリールオキシアルキル基(−ROAr基);ベンジル基、3−フェニルプロピル基等の炭素数7〜20のアラルキル基;シアノメチル基、β−シアノエチル基等のシアノ基をもつ炭素数2〜21のアルキル基;ヒドロキシメチル基等の水酸基をもつ炭素数1〜20のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、等の炭素数1〜20のアリール基で置換されていても良いアルキルエーテル基;フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールエーテル基、;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜20のアルキルチオ基(−SR基);ベンジルチオ基、ナフチルチオ基等のアリールチオエーテル基;アセトアミド基、ベンゼンスルホナミド基(CHSONH−)等の炭素数2〜21のアミド基;アセチル基、ベンゾイル基等の炭素数1〜20のアシル基;チオアシル基;アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基等のアシルチオ基;メトキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンジルオキシカルボニル基等の炭素数2〜21のエステル基(−COOR基及び−OCOR基)、及び、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基;カルバモイル基;カルバモイルオキシ基;シアノオキシ基(シアナト基);シアノチオ基(チオシアナト基);ホルミル基であることが好ましい。また、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐状でも環状でも良い。
また、R〜Rとしては、それらの2つ以上が結合して、R〜Rが結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も、吸収波長が長波長化する点から好ましい。
なお、R、R、R、R、R及びRのいずれかは、加熱及び/又は電磁波の照射により後述する高分子前駆体と共有結合を形成可能な官能基であってもよい。
また、式(1)においてRは、水素原子、或いは、加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能な保護基である。ここで、“脱保護可能な”とは、−ORから−OHに変化する可能性があることを表す。Rが水素原子の場合には、本発明に係る塩基発生剤は、環化することで、フェノール性水酸基を消失し、溶解性が変化し、塩基性水溶液等の場合には溶解性が低下する。
また、Rが加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能な保護基である場合、加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護されて、水酸基を生成する。加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能な保護基でフェノール性水酸基を保護することにより、当該保護基を適宜選択することによって、組み合わせる化合物、例えば高分子前駆体との相溶性が向上し、組み合わせ可能な化合物の範囲が増える。例えば、フェノール性水酸基と共存することが好ましくない高分子前駆体に対しても、樹脂組成物中に共存させて用いることが可能になる。Rは、本発明で用いられる塩基発生剤において式(1)中に存在するアミド基が分解しない条件下で、加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能なフェノール性水酸基の保護基であれば、特に限定されず用いることができる。例えば、アミド結合は、三臭化ホウ素や三塩化アルミニウム等の強ルイス酸や硫酸、塩酸、硝酸等の強酸等が存在する強酸性下における加熱や、水酸化ナトリウム等の強塩基が存在する強塩基性下における加熱により分解する。従って、このような強酸性又は強塩基性条件下での加熱でしか脱保護されない保護基は、本発明の塩基発生剤に用いられる保護基としては不適切である。Rは、溶解性や相溶性の向上或いは合成時の反応性の変化などを目的として、当該塩基発生剤と組み合わせて用いられる化合物の種類や、塩基発生剤の適用方法や合成方法により適宜選択されるものである。
としては、シリル基、シラノール基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、又は有機基から選択することができる。Rにおける有機基は、通常、1価の有機基である。
としては、下記式(2−1)〜下記式(2−6)で表わされる有機基よりなる群から選択される1種以上であることが、上記式(1)中に存在するアミド基が分解しない条件下で、加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能な点から好ましい。
(式(2−1)中、R30、R31、R32はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または有機基であり、R33は有機基であり、R30、R31、R32、R33はそれぞれ互いに結合して環状構造を示していても良い。式(2−2)中、R34は、有機基である。式(2−3)中、R35、R36、R37はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または有機基である。式(2−4)中、R38は、有機基である。式(2−5)中、R39は、置換基を有していても良い芳香環である。式(2−6)中、R40は、有機基である。)
上記式(2−1)〜下記式(2−6)の導入の方法、及び、上記桂皮酸アミド構造を有する塩基発生剤の製造方法は、国際公開第2010/055431号パンフレットを参照することによってここに組み込まれる。
上記化学式(1)で表される構造は、幾何異性体が存在するが、トランス体のみを用いることが好ましい。しかし、合成および精製工程および保管時などにおいて幾何異性体であるシス体が混ざる可能性もあり、この場合トランス体とシス体の混合物を用いても良いが、溶解性コントラストを高められる点から、シス体の割合が10%未満であることが好ましい。
[高分子前駆体]
本発明の光硬化性樹脂組成物に用いられる高分子前駆体とは、反応により最終的に目的の物性を示す高分子となる物質を意味し、当該反応には分子間反応及び分子内反応がある。高分子前駆体自体は、比較的低分子の化合物であっても高分子化合物であってもよい。
また、本発明に用いられる高分子前駆体は、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される化合物である。
塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される化合物としては、例えば、エポキシ基、イソシアナト基、オキセタン基、又はチイラン基を有する化合物及び高分子、ポリシロキサン前駆体、ポリイミド前駆体、並びにポリベンゾオキサゾール前駆体等を挙げることができる。
本発明においては、塩基を硬化剤として用いて硬化状態を調整しやすい点から、分子間反応により高分子となる高分子前駆体が好適に用いられる。
分子間反応により目的の高分子となる高分子前駆体としては、反応性置換基を有し重合反応をする化合物及び高分子、又は、分子間に結合を形成する反応(架橋反応)をする化合物及び高分子がある。当該反応性置換基としては、エポキシ基、オキセタン基、チイラン基、イソシアナト基、ヒドロキシル基、シラノール基等が挙げられる。また、高分子前駆体には、分子間で加水分解・重縮合する化合物も含まれ、反応性置換基には、ポリシロキサン前駆体の−SiX(ここで、Xはアルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、及びハロゲン原子よりなる群から選択される加水分解性基)も挙げられる。
本発明においては、塩基を硬化剤として用いて硬化状態を調整しやすい点から、前記高分子前駆体としては、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、又はチイラン基を有する化合物及び高分子よりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
反応性置換基を有し重合反応をする化合物としては、例えば、1個以上のエポキシ基を有する化合物、1個以上のオキセタン基を有する化合物、及び1個以上のチイラン基を有する化合物が挙げられる。
反応性置換基を有し重合反応をする高分子としては、例えば、2個以上のエポキシ基を有する高分子(エポキシ樹脂)、2個以上のオキセタン基を有する高分子、及び2個以上のチイラン基を有する高分子が挙げられる。下記に特にエポキシ基を有する化合物及び高分子について具体的に説明するが、オキセタン基、チイラン基を有する化合物及び高分子についても同様に用いることが可能である。
(エポキシ基を有する化合物及び高分子)
上記1個以上のエポキシ基を有する化合物及び高分子としては、分子内に1個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限なく、従来公知のものを使用できる。
前記塩基発生剤は、一般的には分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物の硬化触媒としての機能も有する。
分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物又は分子内に2個以上のエポキシ基を有する高分子(エポキシ樹脂)を用いる場合は、エポキシ基との反応性を有する官能基を分子内に二つ以上有する化合物を併用してもよい。ここでエポキシ基との反応性を有する官能基とは、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、メルカプト基、1級又は2級の芳香族アミノ基等が挙げられる。これらの官能基は、3次元硬化性を考慮して、一分子中に2つ以上有することが特に好ましい。
また、重量平均分子量3,000〜100,000のポリマー側鎖に上記官能基を導入したものを用いることが好ましい。3,000未満では膜強度の低下及び硬化膜表面にタック性が生じ、不純物等が付着しやすくなる恐れがある。また、100,000より大きいと粘度が増大する恐れがあり好ましくない。
分子内に1個以上のエポキシ基を有する高分子としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられ、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから誘導されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンから誘導されるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂や4官能型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等があり、これらのエポキシ樹脂はハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよい。市販されているエポキシ樹脂製品としては、例えばジャパンエポキシレジン株式会社製のJERコート828、1001、801N、806、807、152、604、630、871、YX8000、YX8034、YX4000、DIC株式会社製のエピクロン830、EXA835LV、HP4032D、HP820、株式会社ADEKA製のEP4100シリーズ、EP4000シリーズ、EPUシリーズ、ダイセル化学株式会社製のセロキサイドシリーズ(2021、2021P、2083、2085、3000等)、エポリードシリーズ、EHPEシリーズ、新日鐵化学社製のYDシリーズ、YDFシリーズ、YDCNシリーズ、YDBシリーズ、フェノキシ樹脂(ビスフェノール類とエピクロルヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテルで両末端にエポキシ基を有する;YPシリーズ等)、ナガセケムテックス社製のデナタイトシリーズ、デナコールシリーズ、共栄社化学社製のエポライトシリーズ、日油株式会社製のエピオールシリーズ、マープルーフシリーズ等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は、2種以上を併用してもよい。これらの中で、他の各種のエポキシ化合物と比較すると分子量の異なるグレードが広く入手可能で、接着性や反応性等を任意に設定できる点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
一方、分子間で架橋反応をする化合物としては、例えば、分子内に2個以上のイソシアナト基を有する化合物及び分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物の組み合わせが挙げられ、当該イソシアナト基とヒドロキシル基との反応により、分子間にウレタン結合が形成され高分子となり得る。
分子間で架橋反応をする高分子としては、例えば、分子内に2個以上のイソシアナト基を有する高分子(イソシアネート樹脂)と分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する高分子(ポリオール)の組み合わせが挙げられる。
また、分子間で架橋反応をする化合物と高分子の組み合わせを用いても良い。例えば、分子内に2個以上のイソシアナト基を有する高分子(イソシアネート樹脂)と分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物の組み合わせ、及び、分子内に2個以上のイソシアナト基を有する化合物と分子内に2個以上のヒドロキシル基を有する高分子(ポリオール)の組み合わせ等が挙げられる。
(イソシアナト基を有する化合物及び高分子)
イソシアナト基をもつ化合物及び高分子としては、分子内に2個以上のイソシアナト基を有するものであれば特に制限なく、公知のものを使用できる。このような化合物としては、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等に代表される低分子化合物の他に、オリゴマー、重量平均分子量3,000以上のポリマーの側鎖又は末端にイソシアナト基が存在する高分子を用いてもよい。これらジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート等がある。
(ヒドロキシル基を有する化合物及び高分子)
前記イソシアナト基を持つ化合物及び高分子は、通常、分子内にヒドロキシル基を持つ化合物と組み合わせて用いられる。このようなヒドロキシル基を有する化合物としては、分子内に2個以上のヒドロキシル基を有するものであれば特に制限なく、公知のものを使用できる。このような化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子化合物の他に、重量平均分子量3,000以上のポリマーの側鎖又は末端にヒドロキシル基が存在する高分子を用いてもよい。高分子量のヒドロキシル基を有する化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロパンジオール)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールがある。
[その他の成分]
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、前記塩基発生剤と、1種類以上の高分子前駆体と、溶媒の単純な混合物であってもよいが、さらに、光又は熱硬化性成分、高分子前駆体以外の非重合性バインダー樹脂、その他の成分を配合して、光硬化性樹脂組成物を調製してもよい。また、本発明の塩基発生剤の補助的な役割として、光によって酸又は塩基を発生させる他の感光性成分を加えても良い。また、塩基発生剤から発生した少量の塩基の作用によって、分解や転位反応して塩基を発生させる塩基増殖剤を併用しても良いし、増感剤を加えてもよい。
光硬化性樹脂組成物を溶解、分散又は希釈する溶剤としては、各種の汎用溶剤を用いることが出来る。
使用可能な汎用溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、蓚酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類;γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホンなどのスルホン類、ヘキサメチルフォスホアミド等のリン酸アミド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。これらの溶媒は単独若しくは組み合わせて用いられる。
中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等の極性溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素類、及び、これらの溶媒からなる混合溶媒が好適なものとして挙げられる。
また、本発明に係る樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
本発明に係る塩基発生剤は、硬化の程度にもよるが、光硬化性樹脂組成物の固形分全体に対し、通常、0.1〜80重量%、好ましくは0.5〜60重量%の範囲内で含有させる。0.1重量%未満であると露光部と未露光部の溶解性コントラストを十分に大きくできない恐れがあり、80重量%を超えると最終的に得られる樹脂硬化物の特性が最終生成物に反映されにくい。
本発明に係る光硬化性樹脂組成物において、前記高分子前駆体(固形分)は、得られる膜物性、特に膜強度や耐熱性の点から適宜選択され、光硬化性樹脂組成物の固形分全体に対し、1重量%〜99.9重量%、5重量%〜70重量%含有することが好ましい。なお、本発明において固形分は、上述した溶媒以外のもの全てであり、室温で液体のモノマー等も含まれる。
また、その他の溶剤以外の任意成分の配合割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分全体に対し、0.1重量%〜40重量%の範囲が好ましい。0.1重量%未満だと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、40重量%を超えると、最終的に得られる樹脂硬化物の特性が最終生成物に反映されにくい。
<基材に前記光硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する工程>
塗膜を形成する際の基材としては、特に限定されず、例えば、樹脂製基板、金属基板、ガラス基板、シリコンウエハ、セラミック基板、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維強化プラスチック基板等を挙げることができる。塗膜を形成する際の基材としては、所謂フィルム状やシート状に限られず、凹凸を有する物体であっても良い。樹脂製基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの直鎖又は環状ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンなどの塩ビ系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、液晶ポリマー、ポリアリレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂などからなるフィルム又はシート等が例示される。
例えば、前記光硬化性樹脂組成物が粘着剤乃至接着剤等に用いられる場合、塗膜を形成する際の基材としては、樹脂性基板や、シリコーン樹脂又はフッ素系樹脂が塗布されたポリエチレンテレフタレート(PET)等の離型フィルムや、被着体が好適に用いられる。例えば、前記光硬化性樹脂組成物が封止剤に用いられる場合、塗膜を形成する際の基材としては、金属箔などの金属基板等が好適に用いられる。
塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷、インクジェット法など公知の印刷技術を用いた方法を用いることができる。この際の塗布は、基材表面の全面にわたって行ってもよいし、一部分の表面のみに行ってもよい。
光硬化性樹脂組成物を塗布した後は、乾燥、すなわち加熱して溶剤の大部分を除くことにより、塗膜を形成することができる。塗膜の厚みや形状には特に制限はなく、用途に合わせて適宜調整されればよい。乾燥後の膜厚としては、例えば、0.05μm〜1000μmであることが好ましく、0.1μm〜500μmであることがさらに好ましく、0.2μm〜300μmであることがより好ましい。膜厚が、厚ければ厚いほど、光の透過性が低下し、光塩基発生剤を十分に異性化させるための露光時間が長くなり生産性が低下する。膜厚が0.05μmより小さいと、露光時間は短くなるが、材料の対磨耗性などが低下する。
塗布した塗膜の乾燥条件としては、当該樹脂組成物の成分、使用割合、有機溶剤の種類等により適宜決めればよく、通常、30〜250℃、好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは70〜150℃である。また、プリベーク時間は、通常、30秒〜60分程度である。
乾燥時に用いられる手法としては、オーブンやホットプレート、搬送型加熱炉など公知の加熱手段を用いることができる。
(2)工程2:上記塗膜を基材側及び/又は塗膜表面側から光照射する工程
工程1により得られた塗膜を基材側及び/又は塗膜表面側から光照射する。基材側から塗膜に光照射する場合には、基材は光透過性基材を用いるようにする。光透過性基材としては、光照射に用いられる光を10%以上透過するものであればよく、30%以上透過するものであることが好ましい。ただし、塗膜表面側から照射する場合にはこの限りではない。
光照射は、必要に応じて、所定のパターンを有するマスクを通して行っても良い。
光照射工程に用いられる露光方法や露光装置は特に限定されることなく、密着露光でも間接露光でも良く、g線ステッパ、i線ステッパ、超高圧水銀灯を用いるコンタクト/プロキシミティ露光機、ミラープロジェクション露光機、又はその他の紫外線、可視光線、X線、電子線などを照射可能な投影機や線源を使用することができる。
本発明に用いられる塩基発生剤は、光照射により光異性化反応を行い、光異性化反応が行われた化合物だけ、後述する加熱工程において分子内環化反応を経て塩基を発生する。
そのため、光照射量は、後述する工程3を経た後に必要な硬化状態に合わせて、1回の光照射及び加熱につき必要な塩基が発生するだけの量を適宜調整すればよい。前述のように光異性化反応は可逆反応であるため、少なくとも、前記塩基発生剤の光異性化反応が平衡状態に達するまでの光照射量とすることが好ましい。このような光照射量とすることにより、工程3における塩基発生量を安定化させることができ、その結果、架橋密度乃至硬化状態を一定に安定化させることができ、プロセスマージンを取りやすくなる。
塗膜の膜厚にもよるが、光として、365nmの波長の光を用いる場合には、光照射量は、例えば、0.1mJ/cm〜200000mJ/cmの範囲で設定することが挙げられる。
この場合、高圧水銀灯や、低圧水銀灯、発光ダイオードなど公知の光源を用いることができる。
(3)工程3:上記光照射後又は光照射と同時に、塗膜を加熱し、塗膜の少なくとも一部を硬化させる工程
上記光照射後又は光照射と同時に、塗膜を加熱することにより、塩基発生剤は、前記工程2において光異性化反応が行われた化合物だけ、分子内環化反応を経て塩基を発生し、当該塩基によって高分子前駆体の最終生成物への反応が促進され、塗膜の少なくとも一部が硬化する。
必要に応じて塩基発生剤に含まれる保護基を脱保護させ、分子内環化反応を経て塩基を発生させ、更に高分子前駆体の反応を促進するための加熱温度としては、組み合わせる高分子前駆体や目的により適宜選択され、特に限定されない。光硬化性樹脂組成物が置かれた環境の温度(例えば、室温)による加熱であっても良く、その場合、徐々に塩基が発生する。また、電磁波の照射時に副生される熱によっても塩基が発生するため、電磁波の照射時に副生される熱により実質的に加熱が同時に行われても良い。反応速度を高くし、効率よく塩基を発生させる点から、塩基を発生させるための加熱温度としては、30℃以上であることが好ましく、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは100℃以上である。しかしながら、組み合わせて用いられる高分子前駆体によっては、例えば60℃以上の加熱で未露光部についても硬化するものもあるので、好適な加熱温度は、上記に限定されない。また、本発明に係る塩基発生剤の塩基発生以外の分解を防ぐために、230℃以下で加熱することが好ましく、更に200℃以下で加熱することが好ましい。
例えば、エポキシ樹脂の場合、好ましい熱処理の温度の範囲は、エポキシ樹脂の種類により適宜選択されるが、通常100℃〜150℃程度である。
加熱時間としては、膜厚や光硬化性樹脂組成物中の硬化性成分により適宜選択されればよいが、通常、30秒〜1時間、好ましくは1分〜45分である。
加熱方法は、公知の方法であれば適宜選択して用いることができる。具体的に例示すると、空気、又は窒素雰囲気下の循環オーブン、又はホットプレートによる加熱等が挙げられるが、特に限定されない。
(4)工程4:上記工程2及び工程3を繰り返し、前記塗膜を硬化させる工程
1回の上記工程2及び工程3を経ると、工程2で光異性化した塩基発生剤の量に応じて、前記光硬化性樹脂組成物中で高分子前駆体の反応が進行し、硬化が進行する。上述のように上記光異性化反応が平衡反応のため、1回の上記工程2及び工程3を経た後では、まだ未反応の塩基発生剤が塗膜中に残留することになる。当該未反応の塩基発生剤は、当該塗膜中で、更に塗膜の架橋密度を高くするために塩基を発生する能力を潜在的に有する。そのため、工程4において、上記工程2及び工程3を更にもう1回繰り返すことにより、塗膜中に残存している未反応の塩基発生剤のうち、光照射工程で光異性化した塩基発生剤の量に応じて更に塩基を発生させ、当該塩基発生量に応じて、塗膜の架橋密度をより高くすることができる。上記工程2及び工程3を何回か繰り返すことにより、塗膜中に残留していた全ての未反応の塩基発生剤を分解し、塩基を発生することが可能になる。
2回目以降の上記工程2及び工程3の光照射条件や加熱条件は、1回目の工程2及び工程3の光照射条件や加熱条件と同一であっても異なっていても良い。
上記工程2及び工程3を繰り返す回数は、最終的に得られる塗膜に要求される硬化状態や、塩基発生剤の残留量等に合わせて、適宜選択されれば良い。上記工程2及び工程3は、2回以上繰り返されるが、通常20回未満、好ましくは10回未満繰り返される。
(5)貯蔵弾性率
本発明においては、上記工程1〜工程4により、所定温度での前記樹脂組成物の貯蔵弾性率を段階的に変化させることができる。上記工程4において説明したように、1回の上記工程2及び工程3を経ると、所定量の塩基発生に伴い、高分子前駆体の架橋密度を所定量増加することが可能になるからである。
なお、本発明における貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により得られるものである。所定温度での前記樹脂組成物の貯蔵弾性率は、例えば、膜厚50μm±5μmの前記光硬化性樹脂組成物の塗膜を動的粘弾性測定(DMA)装置(例えば、ティー・エイ・インスツルメントジャパン社製、製品名「RSAIII」)を用い、昇温速度5℃/分、上記所定温度を含む測定温度範囲(例えば25〜200℃)、周波数1Hz(引張モード)の条件にて測定した時の所定の温度での貯蔵弾性率の値をいう。所定温度での前記樹脂組成物の貯蔵弾性率は、例えば、室温(25℃)での前記樹脂組成物の貯蔵弾性率を目安とすることができる。
本発明において、前記樹脂組成物の貯蔵弾性率は、少なくとも1回目の工程2及び工程3を経て樹脂組成物の一部が所望の状態に半ば硬化された一部硬化体、及び少なくとも2回以上の工程2及び工程3を経て架橋密度が高くなった硬化体が用いられる用途により、適宜調整されれば良い。
例えば、樹脂組成物の少なくとも一部が硬化された状態で、粘着剤乃至接着剤として用いられる場合、少なくとも1回の上記工程2及び工程3を経た前記樹脂組成物の一部硬化体の貯蔵弾性率は、25℃で、1.0×10Pa以上5.0×10Pa未満であることが好ましく、5.0×10Pa以上1.0×10Pa未満であることがより好ましく、1.0×10Pa以上5.0×10Pa未満であることが更に好ましい。
さらに、当該一部硬化体が更に上記工程2及び工程3を経て架橋密度が高くなった前記樹脂組成物の硬化体の貯蔵弾性率は、25℃で、5.0×10Pa以上1.0×1011Pa未満であることが好ましく、1.0×10Pa以上2.0×1010Pa未満であることが更に好ましい。
また、例えば、樹脂組成物の少なくとも一部が硬化された状態で、ホログラムや工程離型紙として用いられる場合、少なくとも1回の上記工程2及び工程3を経た前記樹脂組成物の一部硬化体の貯蔵弾性率は、そのエンボス加工を行う温度で、1.0×10Pa以上5.0×10Pa未満であることが好ましく1.0×10Pa以上1.0×10Pa未満であることがより好ましく、5.0×10Pa以上5.0×10Pa未満であることが更に好ましい。さらに、当該一部硬化体が更に上記工程2及び工程3を経て架橋密度が高くなった前記樹脂組成物の硬化体の貯蔵弾性率は、少なくとも25℃の時、好ましくは100℃の時に5.0×10Pa以上1.0×1011Pa未満であることが好ましく、1.0×10Pa以上2.0×1010Pa未満であることが更に好ましい。
(6)工程3’:前記工程3によって少なくとも一部が硬化された状態で、前記塗膜の表面に他の物体を接触させる工程
本発明においては、前記工程3と工程4の間、又は、工程4に含まれる、2回目以降の光照射と、2回目以降の加熱工程の間に、前記工程3によって少なくとも一部が硬化された状態で、前記塗膜の表面に他の物体を接触させる工程を含んでいても良い。
他の物体としては、前記樹脂組成物を介して接着させたい被着体、具体的には、上記基材として例示された物体や、各種電子部品、自動車などの輸送機器のボディーやそれに搭載される部品、ディスプレイ部材などが例示される。
本発明に用いられる光塩基発生剤は、露光しても直ちに塩基を発生せず、塩基の発生に加熱を要するものが多いので、被着体に貼り合わせる前に、塗膜側から露光を行い、貼り合わせた後に、加熱をすることでも、硬化が可能である。そのため、被着体や基材が透明でなくても、硬化が行える。
少なくとも一部が硬化された状態で、前記塗膜の表面に他の物体を接触させる態様としては、例えば、少なくとも一部が硬化された状態の塗膜を粘着剤乃至接着剤として機能させ、他の物体に塗膜を転写したり、塗膜を第一の他の物体に付着させて当該塗膜の基材を適宜剥離し、当該塗膜の剥離面に更に第二の他の物体を付着して、当該塗膜を介して第一の他の物体と第二他の物体とを貼り合わせる態様等が挙げられる。
また、少なくとも一部が硬化された状態で、前記塗膜の表面に他の物体を接触させる態様としては、例えば、少なくとも一部が硬化された状態の塗膜に、エンボス版を押し付けて、エンボス加工をする態様が挙げられる。
(6)その他の工程
本発明に係る光硬化性樹脂組成物の硬化方法においては、その他の工程を更に含んでいても良い。その他の工程としては、例えば、後述するレリーフパターンの製造方法において詳述するが、現像工程を含んでいても良い。現像工程は、上記工程2及び工程3が行われた後に行われることが好ましく、上記工程2及び工程3が行われた後であって、少なくとも一部が硬化された状態で、前記塗膜の表面に他の物体を接触させた後に行われても良い。
また、その他の工程としては、塗膜を耐熱性のあるものとするために、更に最終加熱を行っても良い。最終加熱工程における加熱温度としては、例えば、120〜250℃、好ましくは140〜230℃の温度で数十分から数時間加熱することにより行われる。
また、用途に合わせて、適宜公知の工程を含んでいても良い。
(7)用途
本発明に係る光硬化性樹脂組成物の硬化方法は、例えば、粘着剤乃至接着剤の製造方法、ホログラムや工程離型紙の製造方法、ナノインプリンティング等に用いることができる。
II. レリーフパターンの製造方法
本発明に係るレリーフパターンの製造方法は、光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤、及び、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体を含有する光硬化性樹脂組成物を利用し、下記工程1〜工程4により、所定温度での前記樹脂組成物の貯蔵弾性率を段階的に変化させ、更に現像工程又はエンボス工程を有することを特徴とする。
工程1:基材に前記光硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する
工程2:上記塗膜を基材側及び/又は塗膜表面側から光照射する
工程3:上記光照射後又は光照射と同時に、塗膜を加熱し、塗膜の少なくとも一部を硬化させる
工程4:上記工程2及び工程3を繰り返し、前記塗膜を硬化させる。
本発明に係るレリーフパターンの製造方法は、前記光硬化性樹脂組成物の硬化方法を用いることにより、実質的に1種類の光塩基発生剤を用い、且つ、光照射において同一の光源を用いたとしても、硬化状態を所望の状態に段階的且つ安定的に制御可能で、プロセスマージンを取りやすいレリーフパターンの製造方法である。
本発明に係るレリーフパターンの製造方法のうち、上記工程1〜工程4は、上記本発明に係る光硬化性樹脂組成物の硬化方法と同様であって良いので、ここでの説明を省略する。また、本発明に係るレリーフパターンの製造方法は、上記本発明に係る光硬化性樹脂組成物の硬化方法において更に有していても良い工程を、同様に、更に有していても良い。
本発明に係るレリーフパターンの製造方法は、パターンを形成するための工程として、現像工程、又は、エンボス工程を有する。現像工程、又は、エンボス工程は、1回目の工程2及び工程3を経た後であって、工程4の前に行われることが好ましい。工程2及び工程3及び現像工程又はエンボス工程をセットの工程にして繰り返し行っても良い。
ここでは、レリーフパターンの製造方法に特徴的な現像工程及びエンボス工程について更に説明する。
(1)現像工程
本発明に係るレリーフパターンの製造方法において、現像工程は、上記工程2及び工程3が行われた後に行われることが好ましく、上記工程2及び工程3が行われた後であって、少なくとも一部が硬化された状態で、前記塗膜の表面に他の物体を接触させた後に行われても良い。
現像工程に用いられる現像液としては、前記光照射部位の溶解性が変化する溶剤を現像液として用いれば、特に限定されず、塩基性水溶液、有機溶剤など、用いられる高分子前駆体に合わせて適宜選択することが可能である。
塩基性水溶液としては、特に限定されないが、例えば、濃度が、0.01重量%〜10重量%、好ましくは、0.05重量%〜5重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の他、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムなどの水溶液等が挙げられる。
溶質は、1種類でも2種類以上でも良く、全体の重量の50%以上、さらに好ましくは70%以上、水が含まれていれば有機溶媒等を含んでいても良い。
また、有機溶剤としては、特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクロン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、その他テトラヒドロフラン、クロロホルム、アセトニトリルなどを、単独であるいは2種類以上を組み合わせて添加してもよい。現像後は水または貧溶媒にて洗浄を行う。この場合においてもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えても良い。
現像方法としては、スプレー法、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法等が挙げられる。
(2)エンボス工程
エンボス加工は、表面に凹凸模様を付加できる一般的工程を用いることができる。例えば、加熱したエンボスローラやエンボスプレートを塗膜表面側から加熱押圧し、表面に凹凸形状を付加し、レリーフパターンを形成することができる。
(3)その他の工程
現像後は必要に応じて水または貧溶媒でリンスを行い、80〜100℃で乾燥しパターンを安定なものとしてよい。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。尚、実施例中、部は特に特定しない限り重量部を表す。
また、以下に示す装置を用いて各測定、実験を行った。
(製造例1:光塩基発生剤(1)の合成)
200 mL三口フラスコ中窒素雰囲気下で、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(東京化成工業(株)製)3.00g(21.7mmol)、水酸化カリウム1.43g(21.7mmol)を脱水エタノール(関東化学(株)製)30mLに溶解し、そこへp−トルエンスルホン酸−2−メトキシエチル(東京化成工業(株)製)4.13mL(21.7mmol)をゆっくり滴下した。その後反応温度60℃で終夜撹拌した。反応終了後、ろ過を行い、減圧濃縮によりエタノールを除去し、1 N塩酸を加えた。酢酸エチルで抽出した後、1 N塩酸、純水、飽和食塩水で洗浄した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:へキサン/酢酸エチル 10/1〜0/1(体積比))により精製し、アルデヒド誘導体Aを1.01g得た。
100mLフラスコ中、炭酸カリウム(関東化学(株)製)1.00gをメタノール(関東化学(株)製)15mLに加えた。50mLフラスコ中、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム ブロミド(東京化成工業(株)製)2.18g(5.09mmol)、及び上記で得られたアルデヒド誘導体A 996mg(5.09 mmol)をメタノール10mLに溶解し、よく撹拌した炭酸カリウム溶液にゆっくり滴下した。3時間撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認したうえでろ過を行い炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を12mL加え3時間撹拌した。反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除いた後、濃塩酸を滴下し反応液を酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムにより洗浄することで桂皮酸誘導体Bを850mg得た。
続いて、窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中、桂皮酸誘導体B 760mg(3.19mmol)を脱水テトラヒドロフラン10mLに溶解し、氷浴下で1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製)0.73g(3.83mmol、1.2eq)を加えた。30分後、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン(東京化成工業(株)製)268mg(1.52mmol、0.95eq)を加えたのち終夜で攪拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。クロロホルムで抽出した後、炭酸水素水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥を行ったのち、濃縮することで、下記化学式(3)で表される光塩基発生剤(1)を得た。
(製造例2:光塩基発生剤(2)の合成)
製造例1において、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタンの代わりに、1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン(東京化成工業(株)製)を等モル量用いた以外は、製造例1と同様にして、下記化学式(4)で表される塩基発生剤(2)を得た。
(製造例3:塩基発生剤(3)の合成)
アルゴン気流下、200 mL 四つ口フラスコに3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(東京化成工業(株)製)8.85g(64.1mmol)、1−ブロモ−2−エチルへキシル(東京化成工業(株)製)25.0ml(141mmol)、アセトニトリル(関東化学(株)製)100mlを入れて撹拌し、炭酸水素カリウム(関東化学(株)製)14.1g(141mmol)を加え、65℃で72 時間撹拌した。反応液を放冷後、減圧濾過し、濾別した固体を酢酸エチルで洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル 20/1〜10/1(体積比))により精製することで化合物Cを20.6g得た。
1Lナスフラスコに化合物C14.3g(39.5mmol)、クロロホルム(関東化学(株)製)360mlを入れて撹拌し、メタノール(関東化学(株)製)145ml、過酸化水素水溶液(関東化学(株)製)8.6ml(98mmol)、濃硫酸(関東化学(株)製)0.86ml(16.1mmol)を加え60℃で1 時間撹拌した。反応液を濃縮し、クロロホルム、水を加えて抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル 20/1〜10/1(体積比))により精製することで化合物Dを12.6g得た。
300 mlナスフラスコに化合物D12.1g(34.5mmol)、トリフルオロ酢酸(関東化学(株)製)34.5ml(450mmol)を入れて撹拌し、ヘキサメチレンテトラミン(東京化成工業(株)製)4.99g(35.5mmol)を徐々に加え、100℃で11時間撹拌した。反応液を放冷後、氷冷し15%塩酸 80ml(380mmol)を加え、16時間撹拌した。反応液を放冷後、濃縮し、クロロホルム、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル 20/1〜10/1(体積比))により精製することでアルデヒド誘導体Eを3.2g得た。
製造例1において、アルデヒド誘導体Aの代わりに、上記アルデヒド誘導体Eを用いた以外は製造例1と同様にして、桂皮酸誘導体Fを得た。更に、製造例1において桂皮酸誘導体Bの代わりに、上記桂皮酸誘導体Fを用いた以外は製造例1と同様にして、下記化学式(5)で表される塩基発生剤(3)を得た。
[参考例]
(1)塩基発生確認−1
光塩基発生剤(1)について、1mgの試料を2つ用意し、それぞれを石英製NMR管中で2mg/mlの濃度で重ジメチルスルホキシドに溶解させた。そのサンプルに360nmより小さい波長の光をカットするフィルターを介して、高圧水銀灯を用いて、所定の照射量で光照射を行った。露光前後の各サンプルのH NMRを測定し、トランス体からシス体への異性化の有無を確認した。
また、更に異性化が飽和に達した6000mJ/cm露光(1回目露光)後のサンプルを160℃で10分加熱(1回目加熱)した。その結果、H−NMRスペクトルにより異性化した化合物がほぼ全て環化したことを確認した。
そのサンプルを、更に360nmより小さい波長の光をカットするフィルターを介して異性化が飽和に達するまで露光(2回目露光)を行い、更に、その後、そのサンプルを160℃で10分加熱(2回目加熱)し、H−NMRスペクトルにより異性化した化合物がほぼ全て環化したことを確認した。
そのサンプルを、更に360nmより小さい波長の光をカットするフィルターを介して異性化が飽和に達するまで露光(3回目露光)を行い、更に、その後、そのサンプルを160℃で10分加熱(3回目加熱)し、H−NMRスペクトルにより異性化した化合物がほぼ全て環化したことを確認した。
図1に、光塩基発生剤(1)の露光量に対するシス体への異性化率を示す。
また、図2に、光照射前、1回目〜3回目の光照射後及び加熱後における、光塩基発生剤(1)由来の化合物の割合を示す。
この結果より、1回目の紫外線照射及び加熱により約52%の光塩基発生剤(1)が分解してアミンを発生させ、2回目の紫外線照射及び加熱により、合計で約79%の光塩基発生剤(1)が分解してアミンを発生させることがわかる。
光異性化反応が平衡に達したのち、加熱を行うとcis体になったもののみが、アミンを発生し、その後、更に光照射すると、再度光異性化反応が平衡に達し、加熱によりcis体のみがアミンを発生することが確認できた。
(2)塩基発生確認−2
光塩基発生剤(2)について、石英製NMR管中で2mg/mlの濃度で重ジメチルスルホキシドに溶解させた。そのサンプルに360nmより小さい波長の光をカットするフィルターを介して、高圧水銀灯を用いて、所定の照射量で光照射を行った。露光前後の各サンプルのH NMRを測定し、トランス体からシス体への異性化の有無を確認した。
また、更に異性化が飽和に達した1200mJ/cm露光後のサンプルを160℃で10分加熱した。その結果、H−NMRスペクトルにより異性化した化合物がほぼ全て環化したことを確認した。
図3に、光塩基発生剤(2)及び光塩基発生剤(1)の露光量に対するシス体への異性化率を示す。
以上の結果より、2級アミンを発生する光塩基発生剤(2)は少ない露光量で異性化が飽和に達し、且つ、異性化率も約90%と高いことがわかる。一方、1級アミンを発生させる光塩基発生剤(1)は、異性化が飽和に達するまでの露光量は多いものの、一回目の照射での異性化率が50%程度である。この場合、一回目の露光によって約半分のアミンを発生させるため、2回目以降との硬化物の架橋度の違いが大きくなり、貯蔵弾性率のような特性を段階的に大きく変化させることが出来る。
一方、2級アミンを発生させる光塩基発生剤は感度が高いという特徴があることがわかる。
(3)塩基発生確認−3
光塩基発生剤(3)について、石英製NMR管中で2mg/mlの濃度で重ジメチルスルホキシドに溶解させた。そのサンプルに360nmより小さい波長の光をカットするフィルターを介して、高圧水銀灯を用いて、所定の照射量で光照射を行った。露光前後の各サンプルのH NMRを測定し、トランス体からシス体への異性化の有無を確認した。
また、更に異性化が飽和に達した5000mJ/cm露光後のサンプルを160℃で10分加熱した。その結果、H−NMRスペクトルにより異性化した化合物がほぼ全て環化したことを確認した。
光塩基発生剤(3)においては、1回目の紫外線照射及び加熱により約58%の光塩基発生剤(3)が分解してアミンを発生させ、2回目の紫外線照射及び加熱により、合計で約81%の光塩基発生剤(3)が分解してアミンを発生させた。
(製造例4:感光性樹脂組成物1の調製)
2回目の光照射及び加熱工程によって発生するアミンが80%と見積もった際に、発生するアミンがエポキシ当量と1:1となるように、EPICLON835LV(DIC製、ビスフェノールFジグリシジルエーテル:エポキシ当量 165)100gと、光塩基発生剤(1)193gとを、メチルエチルケトン 300gに溶解させ、感光性樹脂組成物1を調製した。
(実施例1)
感光性樹脂組成物1を環状ポリオレフィンフィルム(ゼオノア:日本ゼオン株式会社製)上に塗布し、80℃のオーブンで10分間乾燥させた。
その塗膜上に、更に環状ポリオレフィンフィルム(ゼオノア:日本ゼオン株式会社製)を貼り合わせ、高圧水銀灯で積算光量が10J/cm2となるように露光した後、150℃で、1時間、オーブンで加熱した。当初、粘ちょうな液状だったサンプルが、室温ではゲル状へと変化した。
その後、上記塗膜の片側の環状ポリオレフィンフィルムを剥離した後、冷蔵庫で5℃に冷却した状態で、上記塗膜をもう一方の環状ポリオレフィンフィルムから剥離し、塗膜(サンプル1)の膜厚を測定したところ、50μmであった。
上記サンプル1を、動的粘弾性測定(DMA)装置(製品名「RSAIII」,ティー・エイ・インスツルメントジャパン社製)を用い、昇温速度5℃/分、測定温度範囲0〜200℃、周波数1Hz(引張モード)の条件にて測定した。そのときの25℃における貯蔵弾性率は1.09×10Paであった。
次に、上記サンプル1を再度上記環状ポリオレフィンフィルム上に載せて、さらに高圧水銀灯で積算光量が10J/cm2となるように露光した後、150℃で、1時間、オーブンで加熱した。
その後、サンプルを上記フィルムから剥離し、塗膜(サンプル2)の膜厚を測定したところ、47μmであった。
上記サンプル2を同様に上記の条件で貯蔵弾性率を測定したところ、そのときの25℃における貯蔵弾性率は2.64×10Paであった。
発生する塩基が1級アミノ基を分子内に2つ以上有するポリアミンである場合には、一回目の露光によって約半分のアミンを発生させるため、2回目以降との硬化物の架橋度の違いが大きくなり、貯蔵弾性率のような特性を段階的に大きく変化させることが出来ることが明らかにされた。
(実施例2)
感光性樹脂組成物1をクロムめっきされた無アルカリガラスのクロム面上に塗布し、80℃のオーブンで10分間乾燥させた。
その塗膜を、高圧水銀灯で積算光量が10J/cm2となるように露光した後、150℃で、1時間、オーブンで加熱した。
その後、サンプルの塗膜面側から高圧水銀灯で積算光量が10J/cm2となるように露光した後、無アルカリガラスをサンプルの塗膜面に密着させ、150℃で、1時間、オーブンで加熱した。
その結果、クロムめっきした無アルカリガラスと無アルカリガラスは、感光性樹脂組成物1の硬化物によって完全に接着され、剥離することは不可能であった。
(実施例3)
感光性樹脂組成物1をクロムめっきされた無アルカリガラスのクロム面上に塗布し、80℃のオーブンで10分間乾燥させた。
その塗膜を、高圧水銀灯で積算光量が10J/cm2となるようにパターン状に露光した後、150℃で、1時間、オーブンで加熱した。加熱した塗膜をイソプロパノールとクロロホルムの混合溶液(イソプロパノール:クロロホルム=4:1(体積比))に室温で10分間浸漬したところ、露光後加熱した箇所については上記混合溶液に溶解せず、エポキシ樹脂が硬化した。
その後、サンプルの塗膜面側から高圧水銀灯で積算光量が10J/cm2となるように露光した後、無アルカリガラスをサンプルの塗膜面に密着させ、150℃で、1時間、オーブンで加熱した。
その結果、クロムめっきした無アルカリガラスと無アルカリガラスは、感光性樹脂組成物1の硬化物によって完全に接着され、剥離することは不可能であった。
(製造例5:感光性樹脂組成物2の調製)
2回目の光照射及び加熱工程によって発生するアミンが80%と見積もった際に、発生するアミンがエポキシ当量と1:1となるように、EPICLON850−S(DIC製、ビスフェノールAジグリシジルエーテル:エポキシ当量 188)100gと、光塩基発生剤(3)205gとを、メチルエチルケトン 100gに溶解させ、感光性樹脂組成物2を調製した。
(実施例4)
感光性樹脂組成物2を環状ポリオレフィンフィルム(ゼオノア:日本ゼオン株式会社製)上に塗布し、80℃のオーブンで10分間乾燥させた。
その塗膜上に、更に環状ポリオレフィンフィルム(ゼオノア:日本ゼオン株式会社製)を貼り合わせ、高圧水銀灯で積算光量が10J/cm2となるように露光した後、150℃で、1時間、オーブンで加熱した。当初、粘ちょうな液状だったサンプルが、室温ではゲル状へと変化した。
その後、上記塗膜の片側の環状ポリオレフィンフィルムを剥離した後、冷蔵庫で5℃に冷却した状態で、上記塗膜をもう一方の環状ポリオレフィンフィルムから剥離し、塗膜(サンプル3)の膜厚を測定したところ、50μmであった。
上記サンプル3を、動的粘弾性測定(DMA)装置(製品名「RSAIII」,ティー・エイ・インスツルメントジャパン社製)を用い、昇温速度5℃/分、測定温度範囲0〜200℃、周波数1Hz(引張モード)の条件にて測定した。そのときの25℃における貯蔵弾性率は1.03×10Paであった。
次に、上記サンプル3を再度上記環状ポリオレフィンフィルム上に載せて、さらに高圧水銀灯で積算光量が10J/cm2となるように露光した後、150℃で、1時間、オーブンで加熱した。
その後、サンプルを上記フィルムから剥離し、塗膜(サンプル4)の膜厚を測定したところ、47μmであった。
上記サンプル4を同様に上記の条件で貯蔵弾性率を測定したところ、そのときの25℃における貯蔵弾性率は2.72×10Paであった。
発生する塩基が1級アミノ基を分子内に2つ以上有するポリアミンである場合には、一回目の露光によって約半分のアミンを発生させるため、2回目以降との硬化物の架橋度の違いが大きくなり、貯蔵弾性率のような特性を段階的に大きく変化させることが出来ることが明らかにされた。

Claims (12)

  1. 光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤、及び、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体を含有する光硬化性樹脂組成物を利用し、下記工程1〜工程4により、所定温度での前記樹脂組成物の貯蔵弾性率を段階的に変化させる光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
    工程1:基材に前記光硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する工程
    工程2:上記塗膜を基材側及び/又は塗膜表面側から光照射する工程
    工程3:上記光照射後又は光照射と同時に、塗膜を加熱し、塗膜の少なくとも一部を硬化させる工程
    工程4:上記工程2及び工程3を繰り返し、前記塗膜を硬化させる工程。
  2. 前記塩基発生剤が、下記化学式(1)で表わされ且つ電磁波の照射と加熱により、ポリアミンを発生する塩基発生剤である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
    (式(1)中、Rは水素原子又は有機基であり、Rは、n価の直鎖及び/又は分岐、及び/又は環状の飽和、不飽和の多価アルキル基、アリール基から選ばれる有機基であって、且つ、その内部に、式(1)の括弧内に含まれる桂皮酸アミド結合、当該桂皮酸アミド結合以外のアミド結合、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオカルバメート結合、カルボジイミド結合、カーボネート結合より選択される結合を1つ以上有しても良い。nは2以上の整数である。R及びRは、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R、R、R及びRは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。Rは、水素原子、或いは、加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能な保護基である。)
  3. 前記工程3の加熱温度が200℃以下である、請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
  4. 前記高分子前駆体が、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、又はチイラン基を有する化合物及び高分子よりなる群から選択される1種以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
  5. 発生する塩基が1級アミノ基を分子内に2つ以上有するポリアミンであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
  6. 前記工程3と工程4の間、又は、工程4に含まれる2回目以降の光照射と2回目以降の加熱工程の間に、下記工程3’を更に含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物の硬化方法。
    工程3’:前記工程3によって少なくとも一部が硬化された状態で、前記塗膜の表面に他の物体を接触させる工程。
  7. 光異性化反応及び加熱による分子内環化反応を経てポリアミンを発生する塩基発生剤、及び、塩基性物質によって又は塩基性物質の存在下での加熱によって最終生成物への反応が促進される高分子前駆体を含有する光硬化性樹脂組成物を利用し、下記工程1〜工程4により、所定温度での前記樹脂組成物の貯蔵弾性率を段階的に変化させ、更に現像工程又はエンボス工程を有する、レリーフパターンの製造方法。
    工程1:基材に前記光硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する
    工程2:上記塗膜を基材側及び/又は塗膜表面側から光照射する
    工程3:上記光照射後又は光照射と同時に、塗膜を加熱し、塗膜の少なくとも一部を硬化させる
    工程4:上記工程2及び工程3を繰り返し、前記塗膜を硬化させる。
  8. 前記塩基発生剤が、下記化学式(1)で表わされ且つ電磁波の照射と加熱により、ポリアミンを発生する塩基発生剤である、請求項7に記載のレリーフパターンの製造方法。
    (式(1)中、Rは水素原子又は有機基であり、Rは、n価の直鎖及び/又は分岐、及び/又は環状の飽和、不飽和の多価アルキル基、アリール基から選ばれる有機基であって、且つ、その内部に、式(1)の括弧内に含まれる桂皮酸アミド結合、当該桂皮酸アミド結合以外のアミド結合、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオカルバメート結合、カルボジイミド結合、カーボネート結合より選択される結合を1つ以上有しても良い。nは2以上の整数である。R及びRは、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R、R、R及びRは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。Rは、水素原子、或いは、加熱及び/又は電磁波の照射により脱保護可能な保護基である。)
  9. 前記工程3の加熱温度が200℃以下である、請求項7又は8に記載のレリーフパターンの製造方法。
  10. 前記高分子前駆体が、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、又はチイラン基を有する化合物及び高分子よりなる群から選択される1種以上である、請求項7乃至9のいずれか一項に記載のレリーフパターンの製造方法。
  11. 発生する塩基が1級アミノ基を分子内に2つ以上有するポリアミンであることを特徴とする、請求項7乃至10のいずれか一項に記載のレリーフパターンの製造方法。
  12. 前記工程3と工程4の間、又は、工程4に含まれる2回目以降の光照射と2回目以降の加熱工程の間に、下記工程3’を更に含む、請求項7乃至11のいずれか一項に記載のレリーフパターンの製造方法。
    工程3’:前記工程3によって少なくとも一部が硬化された状態で、前記塗膜の表面に他の物体を接触させる工程。
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