以下に図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。ただしこの実施形態に記載されている構成要素は例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
以下の実施形態では、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置を例に挙げて説明する。なお、本発明のインクジェット記録装置は、これに限定されない。本発明は、複写機能やスキャン機能を持った複合機、いわゆるマルチファンクションプリンタにも適用可能である。また、インクジェット方式としては、発熱体を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式など、さまざまな方式を用いることができる。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るインクジェット記録装置(以下、記録装置とも言うものとする)100における、キャリッジ付近の主要部の構成を示す正面図である。キャリッジ101は、記録ヘッド102を搭載可能であり、キャリッジ101に対して記録ヘッド102が着脱可能に構成されている。インクタンク(不図示)は、各色のインクをそれぞれの記録ヘッド102に個別に供給する。キャリッジ101はシャフト103で案内して、キャリッジモータ104によって回転するキャリッジ搬送ベルト105によって、プラテン106上を主走査方向(X方向)に往復移動する。インクジェット記録装置100は、主走査方向(第一の方向)へキャリッジ101を移動させるキャリッジ移動手段としてのキャリッジモータ104及びキャリッジ搬送ベルト105を有している。
シート状の記録媒体は、搬送ローラ(不図示)によってプラテン106上を主走査方向と直交する副走査方向(Y方向)に搬送される。このように、インクジェット記録装置100は、記録媒体を搬送方向(第二の方向)に搬送する搬送手段を有している。インクジェット記録装置100は、記録媒体を搬送する搬送動作と、記録媒体の搬送方向に交差する方向へ記録ヘッド102を走査させながら吐出口から記録媒体に向けてインクを吐出する記録動作とを行う。これらの動作が交互に行われることで、インクジェット記録装置100により、記録媒体に記録が行われる。本実施形態では、記録媒体の搬送される搬送方向に直交する方向へ記録ヘッド102が走査を行う。
記録ヘッド102に対向する位置には、プラテン106が配置されている。プラテン106上に記録媒体が載置された状態で、記録ヘッド102により記録媒体に対してインクが吐出されることで記録が行われる。プラテン106に隣り合う部分には、通過するインク滴を光学的に検出する検出器(検出手段)107が設けられている。さらに検出器107に隣り合う部分には、回復ユニット109が設けられている。回復ユニット109は、記録ヘッド102の非使用時に記録ヘッド102のインクが乾燥しないように記録ヘッド102の吐出口をキャップで覆う機構を有している。また、回復ユニット109は、吐出口の外から記録ヘッド102内部に負圧を与えて吐出口を通して記録ヘッド102内部のインクを吸引する吸引機構を有している。回復ユニット109の吸引機構によって記録ヘッド102内部のインクが吸引されることで、記録ヘッド102内部で増粘したインクや記録ヘッド内部のゴミが回収される。これにより、記録ヘッドにおける吐出口の目詰まりや、着弾位置の精度の低下が解消される。また、回復ユニット109は、記録ヘッド102内にインクを充填するインク充填機構を備えている。
図2は、記録ヘッド102の吐出口面の吐出口配列を示す。図2に示されるように、記録ヘッド102には、インクを吐出する吐出口が複数形成されている。記録ヘッド102における吐出口の形成された吐出口形成面は、記録の際に記録媒体と対面する面である。吐出口形成面には、複数(本実施形態では6個)のチップ201が主走査方向(X方向)に沿って配列されている。各チップ201には、2列の吐出口列が配置されている。それぞれの吐出口列202には、副走査方向(Y方向)に沿って640個の吐出口が600dpiの密度で配列されている。2列の吐出口列202は、互いに副走査方向に半ピッチだけずれている。そのため、一度の主走査方向への走査当たり、副走査方向に1200dpiの記録解像度によって記録を行うことができる。各チップ201には、それぞれ異なった色のインクが供給される。本実施形態では、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(淡シアン)、LM(淡マゼンタ)、K(ブラック)の6色のインクが、それぞれのチップ201に供給される。このように、記録ヘッド102は、6つのチップ201を有し、それぞれのチップ201に各2列吐出口列202が形成されて、計12列の吐出口列を有している。なお、各色のチップ201で2列ずつ形成された吐出口列202を、それぞれEVEN列(偶数列)、ODD列(奇数列)と言うものとする。
図3に、検出器107及び検出器107を移動させることが可能なステージ108の斜視図を示す。検出器107は、光源であるLED301、受光器であるフォトダイオード302、インク吸収体303及び検出回路304を有して構成されている。LED301とフォトダイオード302は、それぞれが対向した位置に配置されている。
LED301は、光を照射することができ、発光手段として機能することが可能である。フォトダイオード302は、LED301から発せられた光を受光する受光手段として機能することが可能である。LED301から発生する検出光束の中心の光軸の高さ方向(Z方向)における位置は、プラテン106に載置したメディアの記録面とほぼ同等の高さとなっている。本実施形態では、LED301とフォトダイオード302との間の間隔は、記録ヘッド102における吐出口列202の副走査方向(搬送方向)に沿う長さよりも僅かに大きい程度に形成されている。
検査対象の吐出口についてのインク吐出状態の検査を行う際には、検査対象の吐出口から吐出されたインクがLED301とフォトダイオード302との間を通過するように、検出器107を配置させる。LED301とフォトダイオード302との間に検査対象の吐出口から吐出されたインク滴を通過させたときのフォトダイオード302の出力変化が検出される。このときのフォトダイオード302の出力変化に基づいて、検査対象の吐出口からのインクの吐出状態の検査を行うことが可能である。このように、吐出口列202に含まれる吐出口の全てについてインク滴が正常に吐出されているかどうかの検出を行う。各吐出口から吐出されたインクは、検出光束が通過する領域の直下に配置された廃インク受け内部に備えられているインク吸収体303に吸収される。このように、インクジェット記録装置は、検査対象の吐出口からのインクの吐出状態の検査が行われる際に検査対象の吐出口から吐出され、インクの吐出状態の検査を行う検査位置を通過した後のインクを回収する廃インク受け(回収手段)を有している。LED301とフォトダイオード302は、LED301から光を照射し、またフォトダイオード302で受光された光による信号を送るために、それぞれ検出回路304に接続されている。
ステージ108は、検出器107を固定するためのテーブル305とネジ軸306及びステージ駆動モータ307を有して構成されている。テーブル305は、ネジ軸306に螺合されている。ステージ駆動モータ307はステッピングモータであり、モータの駆動軸の回転によってネジ軸306を回転させることが可能である。また、ネジ軸306が回転することで、ネジ軸306に螺合されているテーブル305が、ネジ軸306の延びる方向と平行なX軸方向に移動する。このように、ステージ駆動モータ307を駆動させることで、テーブル305に取り付けられた検出器107を移動させることが可能である。このように、検出器107を主走査方向に移動させ、検出器107によってインクの吐出状態の検査を行う検査位置を移動させることが可能である。本実施形態では、テーブル305、ステージ駆動モータ307及びネジ軸306が、検出器107を移動させる検査位置移動手段として機能する。このときのテーブル305の移動量は、モータの回転角によって線形に変化する。本実施形態では、テーブル305の移動により、検出器107はX軸方向に±2mmの移動が可能である。検出器107を搭載したステージ108がこのように構成されているので、検出器107を後述する検査対象の吐出口に対応する位置に正確に位置させることができる。ここでは、検出器107の可動範囲の中心位置をデフォルトの待機位置とし、その位置を基準位置と呼ぶこととする。
図4に、インクジェット記録装置100における検出器107を中心とする制御系のブロック図を示す。検出器ブロック401は、検出器107に搭載された基板の検出回路304についてのブロックを示しており、本体ブロック402は、インクジェット記録装置の本体側に搭載された検出回路のブロックを示している。また、モータブロック403は、記録装置に搭載され、本体ブロック402に接続されたステージ駆動モータ307及びキャリッジモータ104のそれぞれを駆動させるためのブロックを示している。
LED301は、CPU404の指令に基づいて、LED駆動回路405が駆動することによって発光する。フォトダイオード302は、LED301から照射された光を受け、その結果得られた信号を出力する。フォトダイオード302からの出力は、I/V変換回路406で電流信号から電圧信号に変換される。LED駆動回路405は、I/V変換回路406にて変換された出力が一定値となるようにLED301の駆動電流を自動調整する。これにより、経時的なLED301の特性変化が起きても、一定の出力を維持することができる。I/V変換回路406の出力はフィルタ回路407で変動成分のみが抽出され、増幅回路408によってそのレベルが増幅される。比較回路409は増幅された信号と基準電圧との比較を行う。吐出状態検出動作時において、検出光の通過する領域をインク滴が横切ると、フォトダイオード302が受光する検出光の光量が減少する。このとき、フォトダイオード302の出力に変動が生じ、増幅回路408から出力される信号レベルが低下する。ここでインク滴が検出光を遮ることで信号レベルが設定した基準電圧を下回ると、比較回路409はインク滴が検出されたことを示す検出信号をCPU404に出力する。CPU404はこれを受けて吐出動作を行った吐出口の番号に対応したメモリ410の記憶領域に結果を記録する。検出によって基準値を超えるレベル変化の生じた信号が得られた吐出口は正常な吐出口として記録される。一方、吐出動作を行ったにもかかわらず検出信号が出力されない吐出口は、吐出不良の生じた吐出口として記録される。このように、LED301から発せられた光がフォトダイオード302で受光されたかどうかを検出することで、吐出口からのインク吐出が正常に行われているかどうかが検出される。本体ブロック402には記録装置に接続された各種モータを駆動するためのモータドライバ411が備えられている。それぞれのモータドライバ411は、キャリッジモータ104及びステージ駆動モータ307を駆動させるために、これらに接続されている。本実施形態では、CPU404が、モータドライバ411を介してキャリッジモータ104の駆動を制御している。このとき、CPU404が、キャリッジモータ104の駆動によるキャリッジ101の移動を制御するキャリッジ移動制御手段として機能する。
(記録ヘッドと検出器の位置合わせ補正値検出動作)
次に、図5のフローチャートを用いて、記録ヘッド102と検出器107の位置合わせ補正値検出動作(以下補正値検出動作)について説明する。図5は、インクジェット記録装置100において、検出器107の検出部と検出対象の吐出口との間のお互いの位置合わせを行う際のフローを示したフローチャートである。位置合わせは、検出器107の検出部を、記録ヘッド102における検出対象の吐出口からのインクの吐出について検出できる位置に近づけていくことで行われる。
補正値検出動作とは、吐出口の吐出状態検出動作において、検出対象の吐出口から吐出されたインク滴が検出器107の光軸上を通過するように検出器107の位置を調整するための、検出器107と吐出口との間の位置関係に関する補正値を得るための動作である。この補正値検出動作は頻繁に行うものではないが、少なくとも記録装置本体の初期設置時や記録ヘッド102の交換時に行うことが望ましい。本実施形態では、検出器107がインク滴の通過を検出できるX方向の範囲は、基準位置を中心に幅1.5mm程度の長さと狭い範囲である。そのため、記録ヘッド102と検出器107の位置合わせ補正を行うことが求められる。仮に、記録ヘッド102と検出器107の位置合わせ補正が行われない場合には、検出器107と検査対象吐出口との間の位置関係がずれ、吐出口から吐出されたインク滴が検出器107の検出領域中心付近を通過できなくなる。これにより、検出器107による検出結果が不安定になる可能性がある。
本実施形態では、検出器107と吐出口との間の位置合わせ補正が行われることで、吐出口から吐出されたインク滴が検出器107における検出領域の中心を通過させるために、検出器107の位置を初期位置からどの程度移動させれば良いかを決定する。このように、検査対象の吐出口に対応する位置についての位置情報が予め取得される。本実施形態では、CPU404が予め検査対象の吐出口に対応する位置についての位置情報を取得する位置情報取得手段(位置取得手段)として機能する。
補正値検出動作では、まず、最初に検査する吐出口列202に対応した位置(目標位置)付近へキャリッジ101を移動させる(S501)。ここでは、検出器107と検査対象の吐出口との間の位置関係について、精密な微調整は行われずに、おおまかな位置合わせが行われる。
例えば最初に検査する吐出口列202がシアンのEVEN列である場合、それに対応したキャリッジ目標位置をメモリより参照し、キャリッジモータ104を駆動させて、キャリッジ101を目標位置付近まで移動させる。キャリッジ101にはリニアエンコーダを読み取るセンサ(不図示)が取り付けられており、移動しながらその読み取り値がカウントされる。これにより、キャリッジ101の移動に伴う位置情報を得ることができる。キャリッジ101が目標位置付近で停止すると、正確な位置情報をセンサの読み取り値で取得し、メモリ410に記憶する(S502)。このとき、キャリッジ101が移動して目標位置付近へのおおまかな移動が行われるだけであり、そこで検出器107が検出対象の吐出口の吐出状態を検査できるような位置へキャリッジ101が正確に移動するわけではない。
キャリッジ101が目標位置付近へのおおまかな移動を行って停止した後、ステージ駆動モータ307を駆動させて検出器107を、検査対象の吐出口の位置に対応した位置のうち、最初の検査位置へと移動させる(S503)。ここでは、検出器107を移動させることにより、検出器107の検出部と検査対象の吐出口との間の精密な位置合わせが行われる。補正値検出動作では、一旦キャリッジ101を目標位置付近で停止させた後に、検出器107のみを検査対象の吐出口のそれぞれに対応した複数の検査位置に正確に且つ細かく移動させて検査を行う。このとき、CPU404が、モータドライバ411を介してステージ駆動モータ307の駆動を制御することにより、検出器107による検査位置が、検査対象の吐出口に対応する位置となるように、検出器107の移動が制御される。このように、本実施形態では、CPU404が、検出器107の移動を制御する検査位置移動制御手段として機能する。
検出器107が検査のために移動する範囲は、基準位置(設計上の検査目標位置)を中心に±2.0mmの範囲で、移動する間隔は0.2mmピッチである。ここでいうマイナス(−)は、基準位置から回復ユニット109へ向かう方向(X軸マイナス方向)を表しており、プラス(+)は、基準位置からプラテン106へ向かう方向(X軸プラス方向)を表す。最初の検査位置は、この基準位置から−2.0mmの位置であり、0.2mmずつプラテン106方向へ移動しながら検査を行う。
このように、検出器107と検査対象の吐出口との間で、おおまかな位置調整を終えた後に細かで精密な位置調整を行う際には、まずステージ駆動モータ307の駆動軸に接続されているネジ軸306を回転させる。そして、ネジ軸306に螺合されたテーブル305を移動させることによって、検出器107の移動が行われている。従って、検出器107の移動を細かく調節することができ、検出器107の位置の微小な調節が可能となる。また、検出器107の移動を正確に調節することができる。つまり、本実施形態では、検出器107を移動させる検査位置移動手段が、キャリッジ101を移動させるキャリッジ移動手段(走査手段)よりも高い位置精度を有している。また、検出器107を移動させるために必要な負荷が小さくて済み、検出器107を所定位置に容易に精度良く停止させることができる。また、少ない時間で検出器107を所定位置へ精度良く移動させることができ、インクの吐出状態の検査を行うのにかかる時間を短縮化させることができる。
検出器107が検査対象の吐出口に対応する検査位置に位置し、そこで停止すると、記録ヘッド102では検査対象の吐出口列の所定の吐出口によって吐出動作が行われる。検出器107におけるインク検出の有無を検査する(S504)。本実施形態では、吐出を行わせる吐出口は、検査対象吐出口列の両端部からそれぞれ20吐出口ずつであり、計40個の吐出口が用いられる。まず検出器107のLED301側にある20個の吐出口において、1個ずつ順次吐出動作を行わせる。CPU404は、吐出口からの吐出タイミングをトリガとして検出器107の検出信号を記録する。これにより、LED301側の吐出口列において、それぞれの吐出口におけるインクの吐出状態が検査される。
続いてフォトダイオード302側にある20個の吐出口からも同様に1個ずつ吐出口からの吐出動作を行わせ、検出器107におけるそれぞれの吐出口での検出信号を記録する。吐出口列202の両端の20吐出口全ての吐出動作が完了すると、メモリ410に記録された検出結果から、その検査位置での検出状態を判定する。もし、検出対象の、片側につき20個の吐出口のうち、15個以上の吐出口からの吐出が検出できていた場合は、その位置は検出可能位置であると判定される。一方、検出された吐出口の数が15に満たない場合は、その位置は検出不可能位置と判定する。この判定は、LED301側と、フォトダイオード302側とで、それぞれ別々に行う。
一つの吐出口についての吐出状態の判定終了後、検出器107の検査位置で検査を行っていない位置が残っている場合は、直前に検査した検出器107の位置より0.2mmプラテン106方向に検出器107を移動させ、同様に吐出検査が行われる。
本実施形態では、複数の吐出口列に対してインクの吐出状態が正常であるかどうかの検出が行われる。吐出口列が記録ヘッドに複数形成されている場合には、それぞれの吐出口列ごとに検出の際の基準位置が設定される。そして、吐出口列ごとに順次検出器107と吐出口列との間の位置合わせが行われる。
本実施形態では、検出器107がインクの通過を検出可能なX方向に関しての範囲が1.5mm前後の長さの領域に設定されている。このような検出器107が用いられて、検査対象の吐出口列に対し、プラテン側から検出器107を徐々に近づけてインク吐出を検出する場合には、最初の検査位置の設定によってはインク滴の吐出が検出できないことがある。例えば、基準位置から2.0mmプラテン106側に離れたような位置に最初の検査位置が設定された場合には、検出器107は、そこでインク滴の吐出を検出することができない。そのような位置では、そこの位置でのLED301側、フォトダイオード302側のどちらにおいても検出吐出口数が20個の吐出口中0個となり、その位置は検出不可能位置と判断される。そのような吐出口列から離間した位置から、吐出口列に近付いていくように検出器107を移動させる過程で、ある程度検出器107が吐出口列の中心に近付いた位置でインクの吐出を検査できるようになる。すなわち、検出器107が基準位置付近に近づいたところで、吐出されたインク滴の一部が検出器107の検出光束を通過するようになる。さらに検出器107を基準位置へ近づけると、20個の検査対象の吐出口中ほぼ全ての吐出口でインク吐出状態の検出が可能になる。ここで、本実施形態では、検査の行われている位置が検出可能位置かどうかを判定するために、インク吐出状態を検出することが可能な吐出口についての閾値を15個の吐出口としている。検出器107によってインクの吐出状態を検出することが可能な吐出口数が15個よりも少なければ、その位置は検出不可能位置であると判断される。逆に、検出器107によってインクの吐出状態を検出することが可能な吐出口数が15個以上であれば、その位置は検出可能位置であると判断される。このように、閾値が15個に設定されているのは、検査対象となる吐出口の中に不良吐出口が含まれている可能性があることを考慮しているためである。LED301側、フォトダイオード302側のどちらも検査可能位置であると判定された検出器107の位置は、その位置で検査対象の吐出口列における他の吐出口に対しても検査可能であることを意味している。このような検査を、それぞれの吐出口列ごとに設定されている検査対象位置ごとに行い、全ての検査位置で行った検査の結果をメモリ410に記録する。
全ての検査位置での検査が終わると(S505)、補正値が決定される(S506)。具体的には、それぞれの吐出口列に対応した各検査位置での判定結果を参照する。検出器107の移動可能な範囲内において0.2mm間隔で検査可能位置であるかどうかを検出した結果、全ての検査位置の中で連続した複数の位置が検出可能位置として判定される。その範囲の中心位置を計算によってLED301側、フォトダイオード302側それぞれについて求める。
本実施形態では、検出器107における基準位置を中心に、±0.6mm程度の範囲が検出可能位置となる。検出器107では、キャリッジ101の停止精度やメカ的な寸法交差などの影響により、その中心位置がプラス方向もしくはマイナス方向に移動する場合がある。また、記録ヘッド102と検出器107の相対的な傾き(XY平面上での傾き)によって、LED301側の吐出口での検出可能位置範囲とフォトダイオード302側の吐出口での検出可能位置範囲にずれが生じる可能性もある。そのため、本実施形態では、LED301側の中心位置とフォトダイオード302側の中心位置が得られた後に、さらにLED301側の中心位置とフォトダイオード302側の中心位置同士の中間位置が求められる。そして、それぞれの中心位置と、それらの中間位置から、検出器107の基準位置からのずれ量と、キャリッジ停止位置の目標位置からのずれ量を元に記録ヘッド102と検出器107の位置合わせ補正値を決定する。
例えば、キャリッジ101の目標位置と実際に停止した位置との差がX軸方向で−0.1mm、検出器107の基準位置と算出された中間位置との差がX軸方向で+0.2mmであった場合には、これらの間の相対値が+0.3mmとなる。そのため、補正値を+0.3mmとして、その値がメモリ410に記録される。
1つの吐出口列202の検査が終了し、まだ検査されていない吐出口列202が残っている場合には(S507)、次の吐出口列202に対応した目標位置付近へキャリッジ101を移動させ、そのときのキャリッジ位置情報を取得する。その後検出器107を移動させて順次吐出検査を行い、補正値を決定する。このようにして全ての検査対象吐出口列でインク吐出状態の検出を行うことで、補正値検出動作が完了する。
以上のように、本実施形態における、複数の吐出口列202に対して補正値検出動作を行う手順について説明を行ったが、補正値検出動作は全ての吐出口列202で行う必要はない。例えば、代表する1つの吐出口列202に対して同一の記録ヘッド102内の他の吐出口列202のばらつきが無視できるレベルであれば、1つの記録ヘッド102に対し1つの吐出口列202による検査だけでよい。記録ヘッド102が複数搭載される記録装置であれば、その記録ヘッド102ごとに代表する吐出口列202の補正値を決定するように、記録ヘッドごとにインク吐出状態の検出を行えばよい。
(吐出状態検査)
次に、図6のフローチャート図を用いて、吐出口の吐出状態検査方法について説明する。インク吐出状態の検出は初期設置時や記録ヘッド102交換直後に行われる他、所定のページ数を記録後、所定の発数のインク滴吐出が行われた後、または記録ヘッド102のクリーニング動作直後などに行われるのが一般的である。まず、最初に検査を行う吐出口列202に対応したキャリッジ目標位置へキャリッジ101を移動させる(S601)。キャリッジ101が目標位置付近で停止すると、リニアエンコーダの読み取り値から、位置取得手段としてのCPU404が、キャリッジ101の正確な位置情報を取得する(S602)。このときには、検出器107は正確に目標位置に位置する必要はなく、おおまかな目標位置に位置しておけば良い。最低限、検出器107の移動可能な範囲内で、検査対象の吐出口についてのインク吐出状態の検査が可能な領域に検査対象の吐出口が位置するように、キャリッジ101を目標位置付近へ移動させる。すなわち、検査対象の吐出口から吐出されたインクが、検出器107の移動可能な範囲内を通過するように、キャリッジ101を目標位置付近へ移動させる。
そこでキャリッジ101の正確な位置情報が得られると、補正値検出動作によってメモリ410に記録された補正値を参照し、検出器107の位置を正確な目標位置へ補正する(S603)。例えば、リニアエンコーダの読み取り値から、キャリッジ101の実際の停止位置が目標位置より+0.2mmの位置に停止しており、メモリに記録された補正値が+0.3mmであるとする。このとき、検出器107の目標位置は、基準位置からX軸方向で+0.5mmの位置に補正して移動させる。キャリッジ101の停止位置が目標位置から−0.5mmの位置であった場合、検出器107の目標位置は基準位置から−0.2mmの位置に補正して移動させる。
検出器107の目標位置が補正されると、その情報を基にステージ駆動モータ307を駆動して検出器107を移動させる(S604)。吐出状態検出動作を行う前の検出器107の位置は、検出器107の基準位置もしくは補正値を適用後の位置としておくことで、実際の移動量は補正値分だけとすることができる。ここで、補正値が−0.2mmの場合でも検出器107を移動させるとの説明を行ったが、補正値が検出器107の検出可能範囲に対して十分に小さい場合、例えば所定値以下であった場合は検出器107を移動させることなく吐出動作を開始するようにしても良い。このようにすることで検出器107の移動時間分を短縮化することが可能となる。
このように本実施形態では、検出器107による検査位置が予め取得されている検査対象の吐出口に対応する位置となるように、検出器107が移動する。このとき、CPU404が、検出器107による検査位置の移動を制御する。
検出器107を目標位置まで移動させると、検査対象の吐出口列の吐出口からインク滴の吐出を行わせる。ここで、吐出口は1個ずつ順次吐出させ、最終的には吐出口列における全ての吐出口について吐出させる。このインク吐出により検出器107によってインク滴の通過の有無を吐出口ごとに順次判断していく(S605)。本実施形態では1つの吐出口列202が640個の吐出口で構成されており、これらの吐出口の検査が1回の検出器107の移動によって行われる。このインク吐出状態の検査において、吐出口からインク滴が吐出されたときに、検出器107によりインク滴が通過して検査されたときの検出信号が出力されると、その吐出口は正常吐出口と判定される。吐出動作を行ったにもかかわらずインク吐出が検出されたときの検出信号が出力されない場合には、その吐出口については吐出不良の吐出口と判定される。なお、ここで用いられる吐出不良とは、吐出口周辺のインクが固化して吐出口が目詰まりを起こして吐出口からインクが吐出されない状態だけでなく、吐出されたインクの着弾精度が低下し、所定位置にインクが着弾しない状態も含むものとする。吐出口の周辺にインクミストやゴミ等が付着することにより、これがインクの吐出に影響を与え、吐出されたインク滴が所定の着弾位置に着弾しないような状態が起こり得る。このようにインクの着弾精度が低下したときには、検出器107が検査対象の吐出口に対応した位置に配置されたとしても、吐出されたインクが検出器107による検査位置を通過しない場合が起こり得る。そのような場合にも、吐出動作を行ったにもかかわらずインク吐出が検出されたときの検出信号が出力されずに、その吐出口については吐出不良の吐出口と判定される。吐出口列202における640個の全ての吐出口でインク吐出の正常な吐出口か、あるいは吐出不良の吐出口であるかの判定が行われると、その結果がメモリに記録される。記録された情報は、記録動作の際に参照し、不良吐出口と判定された吐出口は記録動作では使わないようマスクをかける。マスクがかけられた吐出口は他の吐出口によって補完して記録を行う。これによって記録ヘッド102に不良吐出口が発生した場合でも、白スジや色むらの発生しない高品質の記録が維持することができる。
吐出口列202の640個の吐出口について、インク吐出状態の検査が終了すると、他にもインク吐出状態の検査を行う吐出口列202が残っているか判定する(S606)。インク吐出状態の検査対象の吐出口列202がまだ他に残っている場合には、そのインク吐出状態の検査対象の吐出口列に対応した目標位置付近へキャリッジ101を移動させる。そこから同様にキャリッジ位置情報を取得し、検出器107の位置を正確な目標位置へ補正を行って検出器107を正確な目標位置に移動させる。検出器107が正確な目標位置へ移動すると、そこで検出器107がその吐出口列における吐出口について、一つずつ順次インク吐出状態の検出を行う。このようにして、他の吐出口列についてもインク吐出状態の検出を行い、記録ヘッド内の全ての検査対象の吐出口列についてインク吐出状態の検査を行う。
このように、本実施形態では、検出器107と検査対象の吐出口との間の位置合わせを行う際に、まず吐出口の形成された記録ヘッド102の搭載されたキャリッジ101を移動させることによってキャリッジ101が検出器107に近付く。このときの位置合わせは、比較的おおまかに行われ、検出器107が検査対象の吐出口付近に位置するように、キャリッジが移動すれば良い。次に、検出器107をステージ108上で移動させ、検出器107と検査対象の吐出口との間の細かな位置合わせが行われる。このときはステージ108上で検出器107が細かく移動することで、検出器107が検査対象の吐出口に対応する位置に正確に位置するように移動を行う。このようにキャリッジ101及び検出器107が移動することによって、検出器107と検査対象の吐出口との間の位置合わせが行われるので、最終的に細かい位置合わせを行う際に移動する部分の重量を小さくすることができる。
特に、大型の記録媒体に対応したインクジェット記録装置で比較的大きなキャリッジが用いられている場合には、重量の大きなキャリッジが用いられている場合がある。このように重量の大きなキャリッジを目標位置で正確に停止させようとしたとしても、キャリッジの移動に大きな負荷が必要になり、所定の位置に正確に停止させることは難しい。また、このように所定の位置への正確な移動を高速に行おうとする場合には、キャリッジの移動の際の負荷がさらに大きくなり、所定の位置に正確に停止させることはさらに難しい。このような要求に答えるためにはキャリッジの移動の際に駆動させるモータを大型化させることが考えられる。しかしながら、モータを大型化させることは、その分インクジェット記録装置のコストアップにつながる。
また、従来では、キャリッジが目標位置から許容値を超えた位置に停止してしまった場合、再びキャリッジを移動させてキャリッジを目標位置へ移動させていた。このとき、キャリッジに100μm単位の微小な移動を行わせることは困難であるので、一度別の位置へキャリッジ101を待避させ、改めて目標位置へ移動させることになる。しかしながら、このような動作を検査対象の吐出口列を変更する度に行うことになると、結果として吐出状態検出動作にかかる時間が長くなってしまう。
本発明によれば、検出器107が取り付けられたステージ108を移動させるための負荷が軽く、検出器107を移動させるために必要な負荷が小さくて済む。従って、検出器107の移動の際のステッピングモータによる駆動力が小さくて済み、ステッピングモータの回転による変位を高精度に調整することができる。従って、検出器107による位置合わせを容易に精度良く行うことができる。また、少ない時間で検出器107を所定位置へ精度良く移動させることができるので、インクの吐出状態の検査を行うのにかかる時間を短縮化させることができる。また、モータを小型化させることができるので、インクジェット記録装置の製造コストを低く抑えることができる。
なお、本実施形態では、検出器107を搭載したステージ108の構成をネジ軸306とステッピングモータの組み合わせで説明したが、本発明はこれに限ったことではない。モータにDCモータを用いることも可能であり、この場合はモータの回転角検出のためにエンコーダを用いることで同等の動作が期待できる。また、検出器107を移動させるための機構として、ステージに螺合されたネジ軸を用いたが、本発明はこれに限定されず、ベルトによりステージを駆動させる構成でも良い。また、検出器107を精度良く移動させることができるのであれば他の構成でも良く、これらの構成は目標となる精度や速度、コスト等の面から総合的に決めれば良い。
(第2実施形態)
次に、本発明を実施するための第2実施形態について説明する。上記の第1実施形態と同様の構成の部分については説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
第2実施形態では、記録ヘッド102における検査対象の吐出口が複数配置されることで、比較的長い検査対象の吐出口列が形成されている。このように、記録速度の高速化のために図2、3に示すY軸方向に長尺化された記録ヘッド102を用いる場合や、Y軸方向に複数の記録ヘッドを並べることで記録ヘッドからインクの吐出される範囲が拡大される場合がある。そのような場合には、インク吐出可能な範囲の両端部で、補正値が異なり易くなる。記録ヘッドの配置の際には、記録ヘッドの取り付けの誤差によって、記録ヘッドの吐出口列の延びる方向がY軸に対して傾くように配置されることがある。記録ヘッドの長さが長くなると、記録ヘッドがわずかに傾いて取り付けられるだけで、吐出口列の両端部の間で補正値が大きく異なるようになる。インク吐出可能な範囲の両端部で補正値が異なる場合、インク吐出状態の検査を検出器107の一回の移動の調節で行うことは難しい。
例えば、2インチ(50.8mm)の記録ヘッド102と検出器107がXY平面上で1度(1deg)傾きを持っている場合について説明する。この場合、光軸をY軸とすると、LED301側とフォトダイオード302側で、吐出口の位置がX軸方向に相対的に約0.9mmずれていることになる。このとき、吐出口列の両端部でインク吐出状態を検出するには、LED301側の端部の吐出口でインク吐出状態を検査した後にフォトダイオード302側の端部の吐出口でインク吐出状態を検査するために、検出器107が0.9mm移動する必要がある。ところが、検出器107の検出可能範囲が約1.0mmである場合、一つの吐出口列を検査するために、検出器107の移動可能な範囲のうちの大部分が用いられる。そのため、キャリッジ101をまず検出器107付近に大まかに近づける際に、キャリッジ101を検出器107の検出位置に正確に停止させることが求められる。すなわち、検出器107の移動において、検査対象の吐出口と検出器107の検出部との間の位置関係の調節のためのマージンが少なくなってしまうことになる。
このための対策としては、まず、吐出口列202を複数のエリアに分割し、そのエリア毎にキャリッジ101の目標位置が決められる。そして、1つのエリアごとに吐出状態の検出が終了すると、キャリッジ101を再び移動させて次のエリアの目標位置に合わせるといった方法が考えられる。しかしながら、毎回キャリッジを移動させる上記の方法では、補正値検出回数も増加してしまい、その分吐出状態の検出を最初から行わなければならないために全体の吐出状態検出にかかる時間が増加することになる。
本実施形態では、このような記録ヘッド102の傾きに対し、次のように検査対象の吐出口のインク吐出状態を検査することでインクジェット記録装置が対応を行っている。ここで、第1実施形態では記録ヘッド102の長さを1インチとして説明したが、本実施形態では記録ヘッドの長さを2インチとする。また、それに対応して、検出器のLED301とフォトダイオード302の間隔も、2インチの記録ヘッドに対応した大きさとして説明する。
まず、補正値を決める動作において、第2実施形態では、吐出口列におけるLED301側の複数の吐出口についての検出可能位置の中心位置について補正値の算出が行われる。また、フォトダイオード302側の複数の吐出口についての検出可能位置の中心位置それぞれについて補正値の算出が行われる。この点において、第2実施形態が、第1実施形態と異なる。つまり、第2実施形態では、吐出口列におけるLED301側の吐出口と、フォトダイオード302側の吐出口とで、別々に目標位置が設定される。
例えば、2インチの記録ヘッドと検出器107との相対的な傾きが1度であった場合、LED301側が−0.4mmの補正値、フォトダイオード302側が+0.5mmの補正値として算出された場合に、この2つの値をそれぞれメモリに記録する。このように、検査対象の吐出口列の両端部に形成されている複数の吐出口についてのそれぞれの位置情報が取得される。本実施形態では、CPU404が、検査対象の吐出口列の両端部に形成されている複数の吐出口についてのそれぞれの位置情報を取得するための位置情報取得手段として機能する。
図7に本実施形態にて説明される吐出状態検出動作のフローチャートを示す。吐出状態検出動作では、LED301側の吐出口における位置合わせ補正値で目標位置を補正する(S703)。キャリッジ停止位置が基準位置と一致したとして、LED301側吐出口の補正値はそこから−0.4mmの位置であるので、検出器107の位置を基準位置より−0.4mmの位置に補正する。
次にフォトダイオード302側の吐出口における位置合わせ補正値で検出器107の位置を補正する(S704)。フォトダイオード302側の吐出口についての検出器107の補正値は+0.5mmであるので、検出器107の目標位置を基準位置より+0.5mmの位置に補正する。
次に吐出状態を検査する際のステージ駆動モータ307の駆動速度を決定する。1つの吐出口列202のインク吐出状態の検出を行う時間はそれぞれの吐出口で固定値である。従って、LED301側吐出口の検出器目標位置とフォトダイオード302側吐出口の検出器目標位置との差0.9mmを複数の吐出口の合計の検出時間で割って、ステージ108の移動速度を算出する。そのステージ108の移動速度を基に、ステージ駆動モータ307の駆動速度が決定される(S705)。このように、本実施形態では、取得された検出器107による停止位置と傾き量とに基づいて、インクの吐出状態を検査する際の、ステージ108の移動速度が決定される。このとき、CPU404が、ステージ108の移動速度を決定する速度決定手段として機能する。
続いてLED301側吐出口に対応して補正された目標位置に検出器107を移動させる(S706)。検出器107がLED側の吐出口に対応した目標位置に達すると、吐出口から吐出を行わせてインク吐出状態の検査を開始する。また、検出器107によって記録装置がインク吐出状態の検査をそれぞれの吐出口ごとに行いながら、ステージ駆動モータ307を決定した駆動速度で駆動させる(S707)。このとき検出器107はフォトダイオード302側の吐出口に対応した目標位置へ向かって移動する。このようにインク吐出状態の検査を行いながら、検出器107を移動させていく。その後、インク吐出状態の検査を行う吐出口がフォトダイオード302側の最後の吐出口になるとき、ステージ108は、ちょうどフォトダイオード302側における吐出口の目標位置となる。すなわち、検査対象の吐出口列の一端に位置する複数の吐出口に対応する位置から他端に位置する複数の吐出口に対応する位置へ検出器107を移動させながら、検出器107が、検査対象の吐出口列からのインクの吐出状態の検査を順次行っていく。
このように、本実施形態の構成では吐出口列202の吐出検査動作中に記録ヘッド102と検出器107の相対的な位置を変化させながらインク吐出状態の検査を行うことが可能である。そのため、記録ヘッドの両端部の吐出口に対応したそれぞれの位置にキャリッジを移動させる必要がなくなるので、全体の吐出口に対しインク吐出状態の検出を行う時間を短縮化させることができる。
従来の構成では、キャリッジ101を移動させるための負荷が重いため、キャリッジ101を微小な距離だけ一定の速度で移動させることが困難である。そのため、両端部が離れた吐出口列の端部でそれぞれインク吐出状態の検査を行う場合には、一旦吐出口列の一端の吐出口のインク吐出状態が検査される。その後に、キャリッジ101を一度別の場所に移動させ、そこから反対側の端部の吐出口に対応した目標位置へキャリッジ101を移動させる手順が必要となってくる。この場合、移動の度に検査動作を一時停止しなければならないので、全ての吐出口の検査を行うのに多くの時間がかかってしまう。
本実施形態によれば、検出器107を高精度に移動させることが可能であるため、検査中に少しずつ検出器107の位置を変化させるといった動作が可能になる。従って、記録ヘッド102や検出器107の傾きなどに柔軟に対応することができる。
なお、本実施形態では吐出口列202のLED301側からフォトダイオード302側へ検査対象が変わっていくに従って、連続的にステージ駆動モータ307を動作させながら、検出器107を移動させる方法について説明を行った。しかしながら、本発明はこれに限ったことではない。例えば、インク吐出状態の検査対象の吐出口に対応して段階的に検出器107を移動させることでも同様の効果が期待できる。この方法でもキャリッジ101単体での位置合わせの場合とは異なり、ステージ108の微小な駆動が可能であるので、一度ステージ108を大きく動かすといった動作は必要なく、吐出検査動作に必要な時間はそれほど増加しない。この場合、取得された検出器107による停止位置と吐出口列の傾き量とに基づいて、インクの吐出状態を検査する際に検出器107を停止させる複数の検査位置が決定される。本実施形態では、CPU404が、インクの吐出状態を検査する際に検出器107を停止させる複数の検査位置を決定する検査位置決定手段として機能する。
また、この場合の検出器107を段階的に移動させる場合の移動回数は、記録ヘッド102と検出器107の相対的な傾きの量に応じて変化させても良い。相対的な傾きが大きい場合には、検出器107による一つの目標位置当たりの検出される吐出口の数を減らし、検出器107の移動回数を増やす。逆に、記録ヘッド102と検出器107の相対的な傾きが少ない場合には、検出器107による一つの目標位置当たりの検出される吐出口の数を多くとることで、検出器107の移動回数を少なくする。このように記録ヘッド102と検出器107の相対的な傾きの量に応じて、検出器107の移動回数を変化させることで、検出器側の移動に要する時間を少なく抑えることが可能となる。検出器107を移動させる期間中は、検査用のインクの吐出を停止させても良いが、検査に要する時間の短縮のために検出器107の移動中も検査用のインクの吐出を行わせることも可能である。
(第3実施形態)
次に、本発明を実施するための第3実施形態について説明する。上記の第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成の部分については説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
第3実施形態では、二つの吐出口列について、一回の目標位置の設定と、そこからの位置の補正によって検出器107と検査対象としての吐出口との間の位置合わせを行う点で第1実施形態及び第2実施形態と異なる。第3実施形態では、記録ヘッド102に検査対象の吐出口が複数配置された検査対象の吐出口列が複数形成されている。
図8に本実施形態にて説明される補正値検出補正値検出動作のフローチャートを示し、図9に吐出状態検出動作のフローチャートを示す。まず、補正値検出動作ではキャリッジ101を移動させるステップ(S801)において、第1の検査対象吐出口列と第2の検査対象吐出口列の中心位置にキャリッジ101の目標位置が設定される。ここでの目標位置は、目標位置と、検出器107の移動可能な範囲の中心位置とが一致するように、キャリッジ101の目標位置が設定される。ここでいう第2の検査対象吐出口列とは、第1の検査対象吐出口列とセットとなる吐出口列202のことを指している。このように、それぞれの検査対象の吐出口列についての位置情報が取得される。
本実施形態では、例えば、第1の検査対象吐出口列がシアンのEVEN列である場合に、第2の検査対象吐出口がシアンのODD列となる。このように、同一の記録ヘッド内で隣接した二つの吐出口列が、第1の検査対象吐出口列及び第2の検査対象吐出口列となる。本実施形態では、2つの吐出口列202は互いに近い位置関係にあり、その間隔はX軸方向で0.25mmである。そのため、第1の検査対象吐出口列及び第2の検査対象吐出口列との間の間隔は、検出器107の移動可能な範囲に対して小さい。従って、本実施形態では、第1の検査対象吐出口列と第2の検査対象吐出口列の両方が検出器107の移動だけで検査可能となる。
次に、目標位置からそれぞれの検査対象吐出口列の位置までの位置の補正値を検出する。キャリッジ101が二つの吐出口列の中間の目標位置付近で停止すると、検出器107が第1の検査対象吐出口列に対応した検査位置に位置するよう検出器107を移動させる(S803)。検出器107が検査位置に配置されると、そこでインク吐出検査が行われる(S804)。第1の検査対象吐出口列において吐出状態を検査する際の検出器107の移動させる範囲を基準位置から±2.0mmの範囲とした場合、基準位置−2.0mmの位置から検査を開始し、0.2mm間隔で検査位置を移動させる。
第1の検査対象吐出口列についての検査が終了すると、第1の検査対象吐出口列に対する補正値の決定とメモリ401への補正値の記録が行われる(S806)。
続いて第2の検査対象吐出口に対応した位置に検出器107を移動し(S807)、同様にインク吐出状態の検査を行う(S808)。第2の検査対象吐出口列に対するインク吐出状態の検査の終了後、位置合わせの補正値を決定し、補正値をメモリ410に記録する(S810)。
次に、取得した補正値を基に、第1の検査対象吐出口列及び第2の検査対象吐出口列に対応した位置に移動させて、それぞれの吐出口列についてのインク吐出状態についての検査が行われる。吐出状態検出動作の際、キャリッジ101は第1の検査対象吐出口列及び第2の検査対象吐出口列に対応した目標位置付近へキャリッジ101を移動させる(S901)。キャリッジ101の停止後、リニアエンコーダによる正確なキャリッジ停止位置を読み取り、検出器107の目標位置を補正する(S903)。まず第1の検査対象吐出口列についてインク吐出状態を検査するために補正された目標位置へ検出器107を移動させる。検出器107が補正された目標位置に位置すると、そこで第1の検査対象吐出口列における吐出口からのインク吐出について、吐出状態の検査が行われる(S905)。検査終了後、キャリッジ101は停止した状態で、検出器107を第2の検査対象吐出口列に対応した補正された目標位置へ移動させる。検出器107が第2の検査対象吐出口列に対応した補正された目標位置に位置すると、そこで第2の検査対象吐出口列における吐出口からのインク吐出について、吐出状態の検査が行われる(S907)。第1及び第2の検査対象吐出口列のインク吐出状態の検査が終了すると、次の検査対象吐出口列に対応した目標位置へキャリッジ101を移動させる。キャリッジ101が次の目標位置に移動すると、そこで再び第1の検査対象吐出口列及び第2の検査対象吐出口列の吐出検査が行われる。これらの動作が繰り返され、全ての検査対象吐出口列についてのインク吐出状態の検出を行う(S908)。このように、本実施形態では、検出器107による検査位置が、予め取得されているそれぞれの検査対象の吐出口列に対応する位置となるように、検出器107による検査位置の移動が制御される。
以上が本実施形態の吐出状態検出動作の流れとなる。上記のように、本実施形態では、第1及び第2の検査対象吐出口列が同一のキャリッジ停止位置で検出器107の位置のみを変更して行われる。従来、検査対象吐出口列として間隔の狭いEVEN列及びODD列を切り替える場合でも、キャリッジ101を吐出口列ごとに移動させていた。そのため、検査対象の吐出口列を変えるごとにキャリッジの移動が必要になり、インク吐出状態の検出にかかる時間が長くなっていた。これに対し、本実施形態では、EVEN列とODD列のような、検出器107の可動範囲に対して狭い間隔の吐出口列202に対してキャリッジ位置を変えずに検出器107の位置を変えて検査を行う。これにより、検査対象吐出口列を変える度にキャリッジを移動させる形態と比べて、キャリッジ移動の工程を少なくすることができる。記録ヘッド内の全体の吐出口についてのインク吐出状態の検査を行うのに必要な時間が短縮され、インク吐出状態の検査を高速に行うことが可能となる。
なお、本実施形態では、2つの検査対象吐出口をキャリッジ101の移動なく検出器107の移動のみで検査するよう説明を行った。しかしながら、検出器107の可動範囲の中に三つ以上の複数の吐出口列が収まっているのであれば、三つ以上の数の検査対象吐出口列を検出器の移動だけで検出することも可能である。
また、本実施形態では補正値検出動作において、第1の検査対象吐出口列と第2の検査対象吐出口列それぞれについて補正値の検出を行うための検査を行うよう説明した。しかしながら、いずれも同一の記録ヘッド102内の吐出口列202である場合、2つの吐出口列202の相対的なずれは無視できるものとして、片側の吐出口列202のみの補正値の検出としても良い。この場合は、検査を行った吐出口列202からの相対的な位置関係が予め検出され、その位置関係が参照されて、吐出状態検出動作時の検出位置を決めることしても良い。
(第4実施形態)
次に、本発明を実施するための第4実施形態について説明する。上記の第1実施形態ないし第3実施形態と同様の構成の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
第3実施形態で説明したように、同一の記録ヘッド102に複数の吐出口列202が配置される場合、その吐出口列202間の距離を短く構成することが可能である。このため、記録ヘッド102の吐出口列の配列される方向と検出器107による検出光束の通過する領域の延びる方向とが相対的に傾いているときには、隣り合った吐出口列のそれぞれ一部の区間が検出器107による同一の検査対象範囲内に位置する場合がある。本実施形態ではそのような状態に対し、隣り合った吐出口列に対して検出器107による同一の走査でまとめて検査を行うことで、効率的に検査を行うことが可能な方法について説明する。
図10に本実施形態にて説明される吐出口列202と、検出器107の検査可能範囲との関係を示す。ここでは吐出口列202AをEVEN列、吐出口列202BをODD列として説明する。吐出口列のEVEN列202AとODD列202Bは、それぞれ図10のY方向に沿って2インチの長さを持ち、X方向に沿って互いにL(0.25mm)離れて配置される。また、図10中の点線で囲まれた領域は、吐出されたインク滴を検出器107が検出可能な範囲を示している。ここでは、X方向への検出可能範囲を1.0mmとする。
例えば、Y方向への長さが2インチの記録ヘッド201と、検出器107との間で相対的に1度傾いている場合について説明する。この場合には、吐出口列202におけるLED301側の端部の吐出口を光軸に揃えたときに、フォトダイオード302側では、LED301側の端部の吐出口からのフォトダイオード302側の端部の吐出口のX方向のずれ量Dが約0.9mmとなる。検出器107の検出可能範囲は1.0mmであるのでキャリッジ101の停止精度を考慮し、第2実施形態のように検出器107を駆動しながら検査を行う必要がある。しかし、本実施形態では隣り合った吐出口列202Aおよび202Bの位置関係を踏まえて検出動作をさせることが第2実施形態と異なる。
検出口列202Aに対してLED301側とフォトダイオード302側でそれぞれ位置合わせ補正値を取得する方法に関しては第2実施形態と同様であるので省略する。位置合わせ補正値を取得すると、続いて検査を行う吐出口の順序が決められる。第1実施形態及び第2実施形態では1つの吐出口列202毎に検査が行われていたため、検査はその吐出口列のLED301側もしくはフォトダイオード302側から並び順に実施すれば良かった。しかし、本実施形態ではEVEN側の吐出口列202AとODD側の吐出口列202Bを合わせて検査を行う順番を決定する。吐出口列202Aの最もLED301寄りの吐出口を最初の検査吐出口として、位置合わせ補正値から算出される記録ヘッド201と検出器107の相対的な傾きである約1度の値を参考に次に検出器107の光軸中心に近い吐出口を決定する。1つの吐出口列202中の吐出口の間隔は600分の1インチ(0.04mm)であるのでEVEN側の吐出口列202Aについて、LED301側から数えて1番目の吐出口からのN番目の吐出口の、X方向への位置のずれは、
0.73×N (μm)
となり、ODD側の吐出口列202BにおけるLED301側の端部の吐出口から数えてN番目の吐出口についての、基準となる、EVEN側の吐出口列202AのLED301側の1番目の検査吐出口からのX方向への位置のずれは、
250+0.73×(N−1) (μm)
となる。ここで、0.73は吐出口列が光軸に対して1度の傾きを持ったときの、N番目の吐出口と、N+1番目の吐出口との間のX方向のずれ量である。すなわち、吐出口列におけるY方向に隣接する吐出口同士の間隔の長さが600分の1インチである場合に、吐出口列が光軸に対して1度の傾きを持ったときの、Y方向に隣接する吐出口同士の間のX方向のずれ量である。また、250(μm)は、EVEN側吐出口列202AのLED301側の端部の吐出口とODD側吐出口列202BのLED301側の端部の吐出口との間のX方向のずれ量Lを意味する。
上記計算をEVEN側吐出口列202AとODD側吐出口列202Bの吐出口それぞれで行い、値の少ない吐出口番号(光軸中心に近い吐出口番号)から順に検査順序を決めていく。本実施形態で説明される条件の場合、ODD側吐出口列202BのLED301側から数えて1番目の吐出口の検査を行うのはEVEN側吐出口列202AのLED301側から数えて341番目のノズルの次になる。その後は、EVEN側吐出口列202Aにおけるフォトダイオード302側の端部の吐出口までEVEN側とODD側の吐出口が交互に検査されることになる。EVEN側の吐出口列について検査の行われる順番としての検査番号が決められると、残りのODD側の吐出口列について、LED301側からフォトダイオード302側の端部の吐出口に向かうように、吐出口列の並び通りに検査順序が決められる。
吐出口の検査順序が決められるとステージ駆動モータ307の駆動による検出器107の移動の速度を決定する。第2実施形態では1つの吐出口列202のLED301側とフォトダイオード302側それぞれの位置合わせ補正値を元にステージ駆動モータ307の駆動による検出器107の移動の速度を決定する。本実施形態では、EVEN側とODD側両方の吐出口列202A、202Bが、同時に検査される。EVEN側の吐出口列202AのLED301側の吐出口を最初の検査吐出口とすると、ODD側の吐出口列202Bにおけるフォトダイオード302側の端部の吐出口まで検出器107が移動して検査が行われる。このように行われる検査について、ステージ駆動モータ307の駆動による検出器107の移動速度と、移動の範囲が決定される。EVEN側またはODD側の吐出口202が連続的に検査の行われる区間のうち、EVEN側とODD側の吐出口が交互に検査の行われる区間に関しては、単位時間当たりに検出器107の光軸中心を通過する吐出口の数が倍になる。従って、その区間では、検出器107の移動速度が半分となるように検査の行われる際の検出器107の移動速度が決められる。
記録ヘッド102と検出器107が相対的に傾いている場合に、吐出口列毎に検査を行う方式であれば、まずEVEN側の吐出口列202Aについて検査を行うために検出器107をX軸に沿って正方向に移動させる。その後、検出器107の位置をLED301側の端部の吐出口の位置に戻すために、検出器107をX軸に沿って逆方向に移動させる。それからODD側の吐出口列202Bについて検査を行うために検出器107をX軸に沿って正方向に移動させる。このように、検出器107を、X軸に沿って、正方向→逆方向→正方向という順番で駆動させる必要がある。これに対し、本実施形態では、隣接した吐出口列202A、202Bについて、検出器107の正方向への1回の駆動で検査することが可能となる。従って、吐出状態検査のために必要な時間を削減することが可能となる。
本実施形態も第2実施形態と同じように検出器107を連続的に駆動するだけでなく、傾きに応じて吐出口をいくつかのブロックに分割し、それに合わせて段階的にステージ駆動モータ307を駆動させて検出器107を移動させることも可能である。
(第5実施形態)
次に、本発明を実施するための第5実施形態について説明する。上記の第1実施形態ないし第4実施形態と同様の構成の部分については説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
図11に、本実施形態で説明される検出器107及びステージ108周辺の斜視図を示す。本実施形態では、記録ヘッド102は、複数種類のインクを吐出することが可能である。また、本実施形態の検出器107及びステージ108は、吐出状態検出動作が行われる際に吐出されるインク滴を回収するための第1の廃インク受け(第一の回収手段)1001及び第2の廃インク受け(第二の回収手段)1002を備えている。2つの廃インク受け1001、1002は側板1003に取り付けられて固定されている。インクジェット記録装置100側に取り付けられた側板1003は移動しないので、廃インク受け1001、1002は移動しない。これに対して、検出器107は、ステージ108の移動と共に移動する。このとき、検出器107におけるLED301及びフォトダイオード302の下方に形成された通路1004の内部に廃インク受け1001、1002が位置しながら、その外側を検出器107が移動するように、検出器107が構成されている。すなわち、検出器107が移動する際には、廃インク受け1001、1002が側板1003に固定されたまま通路1004の内部を通過する。このように、廃インク受け1001、1002は、主走査方向に沿って複数配置されている。
検出器107のインク検出領域は空洞になっており、吐出口から吐出されたインク滴は、検出領域を通過した後、廃インク受け1001、1002のいずれかに着弾して回収される。廃インク受け1001、1002のどちらの廃インク受けに回収されるかは、そのときの検出器107と、廃インク受け1001、1002との間の相対的な位置関係によって決まる。第1及び第2の廃インク受け1001、1002それぞれの中には、インク吸収体303が備わっている。廃インク受け1001、1002によって回収されたインク滴は、インク吸収体303に吸収される構成となっている。
本実施形態の吐出状態検出動作では、どの色のインクの吐出状態を検査するかによって検出器107の基準位置が変更される。例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、淡シアン(LC)、淡マゼンタ(LM)は第1の廃インク受け1001に回収されるとする。その場合、ブラック(K)は第2の廃インク受け1002に回収されるように、キャリッジ101の目標位置及び検出器107の基準位置が決められる。このように、本実施形態では、検出器107によってインクの吐出状態の検査の行われるインクの種類に応じて、インクを回収する廃インク受け1001、1002を異ならせている。
インクジェット記録装置の種類によっては、インクを早く記録媒体に定着させるために、例えばシアンとブラックのインクが互いに混ざり合わさったときに急速に固着する成分がそれぞれのインクに加えられているものがある。そのような記録装置では、同一の廃インク受けにそれぞれのインクを吐出させると、そこでインクが固着し、廃インク受け上に堆積する場合がある。堆積したインクが過度に高くなってしまうと、検出器107によるインク滴の検出の性能に影響を与えてしまう可能性がある。
検出器107の検出部分に対して1つの廃インク受けが配置されている場合、インクが固着して堆積しても影響のないように、廃インク受けを深くしておくことが考えられる。また、それぞれのインクが混ざらないように、記録装置が複数の検出器107を備え、シアンインクとブラックインクとで別々の検出器107に吐出させることが考えられる。しかしながら、そのような方法を取った場合、インクジェット記録装置の大型化を招いてしまう。また、インクジェット記録装置の製造コストが上昇してしまう。
これに対し、本実施形態では、キャリッジ101と検出器107の目標位置をインクの種類と廃インク受けに対応して切り替えている。従って、単純な構成によって、同一の廃インク受けの内部でインク同士が混ざり合ってインク滴が固着し、それによるインクの過度の堆積を抑えることができる。
(第6実施形態)
次に、本発明を実施するための第6実施形態について説明する。上記の第1実施形態ないし第5実施形態と同様の構成の部分については説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
第6実施形態では、吐出状態検出動作を記録動作の途中に行う。記録動作は、キャリッジ101に搭載された記録ヘッドを記録媒体上で主走査方向に往復移動させながら記録ヘッドからインクを吐出することで行う。そのときに、キャリッジ101は、検出器107による検査位置を移動させることが可能な範囲に対応する領域(検査手段移動領域)を通過するように走査を行う。本実施形態では、キャリッジ101が検出器107における検査位置の移動可能な範囲に対応する領域を通過するタイミングで検出器107による吐出状態検査が行われる。また、本実施形態では、記録動作の合間には、記録ヘッド内における吐出口周辺のインクが増粘することで吐出不良を起こさないように、記録に関与しないインク滴を吐出する予備吐出が行われる。キャリッジ101による往復移動の間に、キャリッジ101が回復ユニット109上に移動し、そこで予備吐出による吐出動作を行わせる。このキャリッジ101による移動の際に、キャリッジ101が検出器107上を通過する。本実施形態では、そのタイミングでも、検出器107による吐出状態検査が行われる。
記録動作中の吐出状態検査を行うために、まずキャリッジ101が検出器107の移動可能な可動領域に対応する領域に入るときのキャリッジ101の速度が、リニアエンコーダの読み取り値から算出される。また、キャリッジ101が可動領域に対応する領域から出るときのキャリッジ101の速度が、リニアエンコーダの読み取り値から算出される。本実施形態では、検出器107の可動領域上はキャリッジ101の加減速区間である。そのため、可動領域に入るときキャリッジ101の速度と可動領域から出るときのキャリッジ101の速度は異なる。キャリッジ101による加速時(往路動作時)及び減速時(復路動作時)の両方で、それぞれの動作の際のキャリッジ101による加速度または減速度が求められる。また、求められたキャリッジ101による加速度、減速度を基に、それぞれのときのキャリッジ101の速度の計算が行われる。本実施形態では、回復ユニット109から記録媒体の配置されている領域へ移動する方向の移動を往路動作と言うものとし、記録媒体の配置されている領域から回復ユニット109へ移動する方向の移動を復路動作と言うものとする。
キャリッジ101の往路動作で吐出口についてのインク吐出状態の検査が行われる際には、あらかじめ検出器107は回復ユニット109側の可動範囲端部に移動させておく。このときの検出器107の位置を、初期位置とする。吐出状態の検査の際には、キャリッジ101が回復ユニット109から走査を開始したとき、またはキャリッジ101が回復ユニット109まで移動せずに走査方向を反転させるときに、検査対象の吐出口列が検出器107の初期位置を通過する。
キャリッジ101が検出器107の初期位置を通過するタイミングで、検査対象の吐出口からインク滴の吐出動作が行われる。また、それと同時に、検出器107がキャリッジ101と同じ速度で同じ方向に移動する。このとき、ステージ駆動モータ307は、検出器107がキャリッジ101と同じ速度で移動するように駆動される。検査対象の吐出口列の吐出口からは順次吐出状態の検査を行うためのインク滴の吐出を行わせ、そこでインク吐出状態の検査を行う。キャリッジ101が検出器107の可動範囲を通過している間に所定数の吐出口の吐出状態の検査を行ったら、吐出動作を停止させ、検出器107を記録媒体の配置されたプラテン側の可動範囲端部に移動させた後、検出器107を停止させる。このときの検出器107の位置が、キャリッジ101の復路動作中の吐出状態検査における検出器107の初期位置となる。
本実施形態では、キャリッジ101が検出器107による検査位置を移動させることが可能な範囲に対応する領域を通過する際に、キャリッジ101の移動に合わせて、検出器107による検査位置を移動させる。そして、検出器107による検査位置が、検査対象の吐出口に対応する位置となるように、検出器107の移動が制御される。
一般に、キャリッジ101が検出器107の可動範囲を通過する時間は非常に短い。そのため、通常、1回の走査で対象吐出口列の全ての吐出口についての吐出状態の検出を行うことはできない。そのため、本実施形態では、1つの吐出口列が複数のエリアに分割され、複数回の走査毎に検査対象エリアを変更する。このブロックの決定方法については全ての吐出口について等しく吐出状態の検査が行われるように検査の際に吐出口ごとに番号が割り振られても良い。また、記録する画像によって影響の大きいブロックについて、優先的に吐出状態の検査が行われるように吐出口ごとに番号が割り振られ、検出の際のブロックが決定されても良い。
このように、本実施形態によれば、記録媒体の配置されたプラテン側の領域と回復ユニット109との間の移動及び記録動作におけるキャリッジ101による走査の際に、キャリッジ101が検出器107上を通過する。そして、その際に検査対象の吐出口についてのインク吐出状態の検査が行われる。従って、検査対象の吐出口についてのインク吐出状態の検査を行う際に、記録動作を止めて吐出状態検出動作を行う必要が無くなる。これにより、インク吐出状態の検査を行うための時間を短縮化させることができ、効率的に記録を行えるようになる。また、本実施形態によれば、キャリッジ101の移動に合わせて検出器107を移動させる構成としているため、検出範囲の広い検出器107を用意する必要が無く、記録装置を小型化させることができる。