JP6086840B2 - ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents
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Description
ハードディスクは、コンパクト化と記憶容量の増大化という、相反する要求を満たすため、より高精度で高集積化が図られている。
そのため、ハードディスクのランプ部品も精密化が進み、より一層過酷な条件での成形が行われるようになってきており、より熱安定性の高い材料が求められている。
前記ハードディスク内部部品に対して要求されるようになってきている耐摩耗性とは、従来より行われている荷重の高い条件下での耐摩耗性ではなく、極めて低荷重の条件下での耐摩耗性である。
ポリアセタール樹脂に摺動性を付与する技術としては、ポリアセタール樹脂に潤滑剤としてポリオレフィンを添加する技術が開示されている(例えば、特許文献2、3参照。)。
また、ポリアセタール樹脂に酸化亜鉛のような亜鉛含有化合物を含有させた組成物が、耐酸性や耐塩化カルシウム性に優れ、自動車関連部品として有用であることが開示されている(例えば、特許文献4、5参照。)。
そこで本発明においては、上述した従来技術では解決できない高い要求特性、すなわち、過酷な成形条件下においても高い熱安定性を有し、低い荷重条件下で、従来にない極めて高い耐摩耗性を発現するポリアセタール樹脂組成物及び成形体を得ることを目的とする。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、
(B)酸化亜鉛0.1〜2質量部と、
(C)摺動性改良材0.1〜5質量部と、
を、含有し、
前記(B)酸化亜鉛の数平均一次粒子径が125〜500nmである、ポリアセタール樹脂組成物。
〔2〕
前記(B)酸化亜鉛は、当該酸化亜鉛を100質量%としたとき、鉛の含有量が、10
0ppm未満である、前記〔1〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔3〕
前記(C)摺動性改良材が、高級脂肪族アルコール、高級アミド、高級脂肪酸、1価又
は2価の脂肪族アミンと高級脂肪酸とからなるアミド化合物、1価又は2価の脂肪族アル
コールと高級脂肪酸とのエステル、及び平均重合度が10〜500であるオレフィン化合
物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、前記〔1〕又は〔2〕に記載
のポリアセタール樹脂組成物。
〔4〕
前記(A)ポリアセタール樹脂がブロックポリマーを含む、前記〔1〕乃至〔3〕のい
ずれか一に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔5〕
前記(A)ポリアセタール樹脂中のブロックポリマーの比率が、(A)ポリアセタール
樹脂を100質量%としたとき、50質量%以上である、前記〔4〕に記載のポリアセタ
ール樹脂組成物。
〔6〕
前記(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(D)ポリオレフィン樹脂0.
5〜5質量部をさらに含有する、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリアセタ
ール樹脂組成物。
〔7〕
前記(D)ポリオレフィン樹脂が、
ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、アクリル酸エステル単位の含有量が5〜30質量%であるエチレンアクリル酸エステル共重合体、ポリオレフィン(d1)のブロックと親水性ポリマー(d2)のブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合及びイミド結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合を介して、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー、並びにこれらの変性物からなる群より選ばれる一種以上である、前記〔6〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔8〕
前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のポリアセタール樹脂組成物を含有する成形
体。
(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、
(B)酸化亜鉛0.1〜2質量部と、
(C)摺動性改良材0.1〜5質量部と、
を、含有し、
前記(B)酸化亜鉛の数平均一次粒子径が70〜500nmである。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に含まれる(A)ポリアセタール樹脂について、詳細に説明する。
(A)ポリアセタール樹脂(本明細書中、(A)成分、(A)と記載する場合がある。)としては、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーが挙げられる。
具体的には、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる実質上オキシメチレン単位のみから成るポリアセタールホモポリマーや、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコールやジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル若しくは環状ホルマールと、を共重合させて得られるポリアセタールコポリマーが挙げられる。
また、ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルと、を共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー、並びに、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーを用いることもできる。
ブロックポリマーを含むポリアセタール樹脂を用いることにより、後述する(C)摺動性改良材の、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物内での分散性が良好となり、より高い耐摩耗性を有するポリアセタール樹脂組成物が得られる。
当該ブロックポリマーの比率を前記範囲内とすることで、後述する(C)摺動性改良材の、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物内での分散性が良好となり、より高い耐摩耗性を有するポリアセタール樹脂組成物が得られる。
なお、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、当該ブロックポリマーの比率は、1H−NMRや13C−NMR等により測定することができる。
上述したブロックポリマー中のブロック成分としては、下記一般式(1)、(2)又は(3)で表されるブロック成分が好ましい。
mは2〜6の整数を示し、2〜5の整数が好ましい。
nは1〜1000の整数を示し、10〜250の整数が好ましい。
上記一般式(1)で表される基は、アルコールのアルキレンオキシド付加物から水素原子を脱離した残基であり、上記一般式(2)で表される基は、カルボン酸のアルキレンオキシド付加物から水素原子を脱離した残基である。
前記ブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーは、例えば、特開昭57−31918号公報に記載の方法で調製できる。
また、pは2〜6の整数を示し、2つのpは各々同一であっても異なっていてもよい。
q、rはそれぞれ正の数を示し、qとrとの合計100モル%に対してqは2〜98モル%、rは2〜98モル%であり、−(CH(CH2CH3)CH2)−単位及び−(CH2CH2CH2CH2)−単位はそれぞれランダム又はブロックで存在する。
前記一般式(1)、式(2)又は式(3)で表されるブロック成分は、ヨウ素価20g−I2/100g以下の不飽和結合を有してもよい。不飽和結合としては、特に限定されないが、例えば炭素−炭素二重結合が挙げられる。
前記ブロック成分を有するポリアセタールコポリマーは、例えば、国際公開第01/09213号に開示されたポリオキシメチレンブロック共重合体が挙げられ、その公報に記載の方法により調製できる。
もちろんこれらを併用することもできる。
また、(A)ポリアセタール樹脂は、例えば、分子量の異なるポリアセタール樹脂や、コモノマー量の異なるポリアセタールコポリマー等を2種以上併用してもよい。
ブロックポリマー中のブロック成分を形成する化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、C18H37O(CH2CH2O)40C18H37、C11H23CO2(CH2CH2O)30H、C18H37O(CH2CH2O)70H、C18H37O(CH2CH2O)40Hや、水素添加ポリブタジエンなどが挙げられる。
ブロックポリマー中のブロック成分挿入量は、ブロックポリマーを100質量%としたとき、15質量%以下であることが好ましい。より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%である。ブロックポリマー中のブロック成分挿入量の下限は、少なくとも1質量%である。
ブロックポリマー中のブロック成分挿入量を上述の範囲内にすることにより、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、耐熱性や機械的強度を実用上十分に維持しつつ、高い耐摩耗性が得られる。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の機械的強度を維持するには、ブロック成分挿入量を、上記15質量%以下にすることが好ましい。
ブロックポリマー中のブロック成分の好ましい分子量は、ポリアセタール樹脂としての分子量により変化するため、一義的には言えないが、10000以下であることが好ましく、より好ましくは8000以下、さらに好ましくは5000以下である。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に含まれる(A)ポリアセタール樹脂としては、上述のポリアセタールホモポリマー及び上述のポリアセタールコポリマーのいずれも用いることができ、これらを併用することもできる。また、(A)ポリアセタール樹脂は、例えば、分子量の異なるポリアセタール樹脂や、コモノマー量の異なるポリアセタールコポリマー等を2種以上併用してもよい。
(A)ポリアセタール樹脂がブロックポリマーを含むことは、NMR解析を行うことにより検証することができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(B)酸化亜鉛(本明細書において、(B)成分、(B)と記載する場合がある。)を含有する。以下、(B)酸化亜鉛について詳細に説明する。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述した(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(B)酸化亜鉛を0.1〜2質量部含有している。
(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対する、(B)酸化亜鉛の下限量は、0.25質量部が好ましく、0.4質量部がより好ましく、0.6質量部がさらに好ましい。また、上限量は、1.5質量部が好ましく、1.2質量部がより好ましく、1.0質量部がさらに好ましい。
(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対する(B)酸化亜鉛の含有量が0.1〜2質量部であることにより、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、優れた耐摩耗性が得られる。
また、(B)酸化亜鉛としては、数平均一次粒子径が70〜500nmの範囲内の酸化亜鉛を用いる。前記範囲の数平均一次粒子径を有する(B)酸化亜鉛を用いることにより、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、優れた耐摩耗性が得られる。
(B)酸化亜鉛の平均一次粒子径の下限値は、100nmが好ましく、125nmがより好ましく、150nmがさらに好ましい。また上限値は、450nmが好ましく、400nmがより好ましく、350nmがさらに好ましい。
平均一次粒子径は、酸化亜鉛の製造メーカーからも開示がなされており、開示されている平均一次粒子径と、上記手法により測定される平均一次粒子径とは、概ね一致している。
(B)酸化亜鉛中の鉛量を100ppm未満とすることにより、過酷な条件下での成形時の熱安定性の悪化を大幅に抑制することが可能となる。
(B)酸化亜鉛中の鉛量の上限値は90ppmがより好ましく、80ppmがさらに好ましく、50ppmがさらにより好ましく、30ppmがよりさらに好ましい。下限値は0ppmであることが好ましい。
(B)酸化亜鉛中の鉛量は、JIS規格 K1410に準拠して測定することができ、酸化亜鉛の製造メーカーから開示されている。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(C)摺動性改良材(本明細書中、(C)成分、(C)と記載する場合がある。)を含有する。
以下、(C)摺動性改良材について詳細に説明する。
(C)摺動性改良材とは、添加することによってポリアセタール樹脂組成物の摺動性を向上させる機能を有する材料である。ここで摺動性とは、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物と他の部材とを摺動させたときの摩擦係数や摩耗量のことを指し、具体的には、後述する実施例や、公知の摩擦係数を測定することのできる方法により測定される。これら摩擦係数や摩耗量は、値が低いほど良い特性である。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(C)摺動性改良材を0.1〜5質量部含む。
(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対する、(C)摺動性改良材の含有量の下限値は、0.3質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、0.7質量部がさらに好ましい。また、前記(C)の含有量の上限値は、4質量部が好ましく、3質量部がより好ましく、2質量部がさらに好ましい。
(C)成分の含有量を上記数値範囲内とすることにより、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、優れた耐摩耗性が得られる。
前記高級脂肪族アルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、カプリルアルコール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルチミルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。これらの中では、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく使用可能であり、ベヘニルアルコール、トリエチレングリコールがより好ましく使用可能である。
前記高級アミドとしては、以下に限定されるものではないが、1級アミドとしては、例えば、ヘプタンアミド、オクタンアミド、ノナンアミド、デカンアミド、ウンデカンアミド、ラウリルアミド、ラウリルアミド、トリデシルアミド、ミリスチルアミド、ペンタデシルアミド、セチルアミド、ヘプタデシルアミド、ステアリルアミド、オレイルアミド、ノナデシルアミド、エイコシルアミド、セリルアミド、ベヘニルアミド、メリシルアミド、ヘキシルデシルアミド、オクチルドデシルアミド、ラウリン酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイドなどの飽和又は不飽和アミドが挙げられる。
2級アミドとしては、例えば、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミドなどの飽和又は不飽和アミドが挙げられる。
3級アミドとしては、例えば、N,N−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの飽和又は不飽和アミドが挙げられる。
これらの中でも、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、N−ステアリルステアリン酸アマイドが、低揮発性と、入手の容易性の観点から、より好ましく使用可能である。
前記高級脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸等の1価の飽和脂肪酸や、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの多価の飽和脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、ネルボン酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。
これらの中では、加工時の変色を抑制する観点から、飽和脂肪酸が好ましく、飽和脂肪酸の中でもパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、アジピン酸、セバシン酸等が、工業的にも容易に入手可能であり、より好ましい。
前記1価又は2価の脂肪族アミンと高級脂肪酸からなるアミド化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスエルカ酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アマイド等が挙げられる。
これらの中でも、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイドが、工業的にも容易に入手可能であるため、好ましく使用可能である。
前記1価又は2価の脂肪族アルコールと高級脂肪酸とのエステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、べへニン酸モノグリセライド
2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸コレステリル、ラウリン酸メチル、オレイン酸メチル、ステアリン酸メチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシルペンタエリスリトールモノオレエート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸イソトリデシル、2−エチルヘキサン酸トリグリセライド、アジピン酸ジイソデシル、エチレングリコールモノラウレート、エチレングリコールジラウレート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、トリエチレングリコールモノステアレート、トリエチレングリコールジステアレート、エチレングリコールモノオレエート、エチレングリコールジオレエート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート等が挙げられる。
これらの中でも、取扱い性と摺動性改良効果の観点から、ミリスチン酸セチル、アジピン酸ジイソデシル、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、トリエチレングリコールモノステアレート、トリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレートが好ましく使用可能であり、ミリスチン酸セチル、アジピン酸ジイソデシル、エチレングリコールジステアレートがより好ましく使用可能である。
また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を、ハードディスク内部部品として使用する場合、アウトガス(揮発成分)量を低減化させる工程として、通常、例えば、100℃以上で10時間以上の乾燥工程を実施する。このような、高温・長時間環境下にさらされたときに、ポリアセタール樹脂組成物の成形体において、変色を防止するために、(C)摺動改良材としては、高級脂肪族アルコール、1価又は2価の脂肪族アルコールと高級脂肪酸とのエステルを用いることがより好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(D)ポリオレフィン樹脂(本明細書中、(D)成分、(D)と記載する場合がある。)を0.5〜5質量部、さらに含有してもよい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物が、(D)ポリオレフィン系樹脂を0.5〜5質量部含有することにより、耐摩耗性を高めることが可能となる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の耐摩耗性を充分に高めるためには、(D)成分の含有量を0.5質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは2質量部以上である。また、成形体の表層剥離を防止する観点から、(D)成分の含有量は5質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは4質量部以下であり、さらに好ましくは3.5質量部以下である。
前記他のモノマーとしては、上述の一般式(4)で表されるオレフィン系化合物と重合可能なモノマーから適宜選択することが可能である。
前記ポリオレフィン(d1)の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等が挙げられる。また、親水性ポリマー(d2)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ乳酸等が挙げられる。
(D)ポリオレフィン樹脂としては、変性されたポリオレフィン樹脂(変性物)も使用できる。当該変性物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、オレフィン樹脂を形成している重合体とは異なる他のビニル化合物の一種以上をグラフトさせたグラフト共重合体;α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸等)又はその酸無水物で(必要により過酸化物を併用して)変性したもの;オレフィン系化合物と酸無水物とを共重合したものが挙げられる。
上述した(D)ポリオレフィン樹脂は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
(D)ポリオレフィン樹脂としては、摺動性改良効果の観点から、ポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体が好ましい。
(D)ポリオレフィン樹脂は、190℃,2.16kg荷重条件下におけるメルトフローレート(以下「MFR」とも記す。)が0.01〜50g/10分であることが好ましい。
(D)ポリオレフィン樹脂のMFRをこの範囲内とすることにより、優れた耐摩耗性が得られ、鳴き音発生も抑制することができる。
(D)ポリオレフィン樹脂のMFRの下限値は、より好ましくは0.02g/10分であり、さらに好ましくは0.05g/10分であり、さらにより好ましくは0.07g/10分である。また、MFRの上限値は、より好ましくは40g/10分であり、さらに好ましくは30g/10分であり、さらにより好ましくは2.5g/10分である。
また(D)ポリオレフィン樹脂の融点は、特に限定されるものではないが、30〜230℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜200℃の範囲であり、さらに好ましくは90〜170℃である。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述した(A)〜(D)成分の他、本発明の目的を損なわない範囲で、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種安定剤等を含有することができる。
前記安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記の酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)が挙げられる。
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミドも挙げられる。
上述したヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好ましい。
前記ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等のポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン、ポリアクリルアミドが挙げられる。これらの中では、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン及びポリアクリルアミドが好ましく、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンがより好ましい。
前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、カルシウム塩が好ましい。当該カルシウム塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が挙げられる。前記脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)がより好ましい。
上述したそれぞれの安定剤の添加量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、酸化防止剤、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.1〜2質量部、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤、例えばホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体が0.1〜3質量部、アルカリ土類金属の脂肪酸塩が0.1〜1質量部の範囲であると好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。
当該混練機としては、以下に限定されるものではないが、例えば、単軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機が特に好ましい。
溶融混練の順番は特に制限はなく、例えば、(A)ポリアセタール樹脂、(B)酸化亜鉛、(C)摺動性改良材を予め混合し押出する方法、(A)ポリアセタール樹脂と(B)酸化亜鉛、もしくは、(A)ポリアセタール樹脂と(C)摺動性改良材を予め溶融混練した後、残余の成分と溶融混練する方法等が挙げられるが、これらは本発明の効果を損なわない範囲であれば、適宜変更可能である。
本実施形態の成形体は、上述のポリアセタール樹脂組成物を含む。
本実施形態の成形体は、上述のポリアセタール樹脂組成物を成形することにより得られる。
ポリアセタール樹脂組成物を成形する方法については、特に限定されるものではなく、公知の成形方法を適用できる。
例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法のいずれかによって成形することができる。
上述のポリアセタール樹脂組成物から得られる本実施形態の成形体の用途としては、寸法精度と高い耐久性が要求される用途が好適である。
本実施形態の成形体の用途としては、以下に限定されるものではないが、例えば、一般的なポリアセタール樹脂の用途が挙げられる。このような用途の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、及びガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター、HDD内部部品(例えば、ランプ、ラッチ、等)、及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、及びデジタルカメラに代表されるカメラ又はビデオ機器用部品;カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray(登録商標) Disc、HD−DVD、その他光デイスクのドライブ;MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品等が挙げられる。
また、本実施形態の成形体は、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類等の部品;さらにシャープペンシルのペン先、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、及び排水栓開閉機構部品;自動販売機の開閉部ロック機構、商品排出機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、ボタン;散水用のノズル、散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、及び床材の支持具である建築用品;使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器、住宅設備機器に代表される工業部品としても好適に使用できる。
これらの中でも特に、HDD内部部品(例えば、ランプ、ラッチ、等)や時計内部部品(ギヤ、テンプ、アンクル、ガンギ車)に好適に使用できる。
〔物性評価方法〕
((1)摺動試験−1)
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度設定を205℃、金型温度120℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ISO294−1に準拠した多目的試験片を得た。
この試験片を80℃の雰囲気下で60分乾燥し、摺動試験測定用サンプルを得た。
前記摺動試験測定用サンプルについて、Nano tribometer2(CSM Instruments(株)製 TTX−NTR2型)を用いて、23℃、湿度50%の環境下で、荷重50mN、摺動速度150mm/sec、往復距離200μm、往復回数100万回、の条件で、摺動試験を実施した。相手材料としては、SUJ2試験片(直径1.5mmの球)を用いた。
前記摺動試験−1と同様に製造した摺動試験測定用サンプルについて、往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製AFT−15MS型)を用いて、荷重19.6N、線速度30mm/sec、往復距離20mm、往復回数10,000回、及び23℃、湿度50%で、摺動試験を実施した。相手材料としては、SUS304試験片(直径5mmの球)を用いた。
前記(1)及び(2)の各摺動試験後の摺動試験測定用サンプルの摩耗量(摩耗断面積)を、OPTELICS H1200(レーザーテック社製)を用いて、測定した。
摩耗断面積はn(サンプル数)=3で測定した数値の平均値とし、有効数字2桁で四捨五入した。
この値は、摩耗断面積なので、数値が低い方が摩耗特性に優れると判断した。
東芝機械(株)製EC−75NII成形機に0.5mm厚みの壁を有するハードディスクランプ形状の成形品(成形品長:30mm,幅:10mm、厚:3.5mm、内部に幅:2.5mm,高さ:2.5mm、奥行:10mmの穴が、1.5mmの壁を隔ててハーモニカ上に配置された成形品)が取得可能な金型を取り付け、後述する実施例及び比較例で製造したポリアセタール樹脂組成物を用いて、シリンダー内での成形機限界滞留時間を測定した。
先ず、シリンダー温度を210℃に設定し、射出速度はシリンダー前進速度を10mm/秒になるよう設定した。ポリアセタール樹脂組成物を前記金型内に射出し、その直後に、成形機を一旦停止した。所定時間経過した後、射出成形を再開した。ポリアセタールの分解ガスであるホルムアルデヒドガスによる、30mm×10mmの成形片表面に現れたシルバーストリークスの発生の状況を確認した。成形片にシルバーストリークスが発生し始めた時間を成形機限界滞留時間として評価した。当該限界滞留時間が長い方が熱安定性に優れると判断した。なお、40分間滞留させてもシルバーストリークスの発生が認められなかったものは試験を中断し、40分以上と表記した。
前記((4)成形機限界滞留時間測定)で得られたハードディスクランプ形状の成形品一個を450℃に加熱した電気炉中で3時間焼却した。次に、電源をOFFにし、12時間以上かけて徐冷した。
得られた灰分を走査型電子顕微鏡で観察し、酸化亜鉛の画像を取得し、画像解析装置を用いて、無作為に選んだ少なくとも200個の粒子の径を加算し、かつ算術平均値を求めて、ポリアセタール樹脂組成物中の酸化亜鉛の数平均一次粒子径を求めた。
後述する実施例及び比較例で得られたペレットを、140℃に設定したオーブンに入れ、20時間のエージング処理を行った。
エージング処理前後の色の違いにより、変色の有無を確認し、変色のあるペレットについては、変色度合いを以下の基準で評価した。
レベル1:若干、茶色がかった変色
レベル2:明らかな茶変色
レベル3:濃い茶色へ変色
〔(A)ポリアセタール樹脂〕
(ポリアセタール樹脂(POM−1))
ポリアセタール樹脂(POM−1)を下記のようにして調製した。
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8(L:重合機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:重合機の内径(m)。以下、同じ。))を80℃に調整した。
前記重合機に、トリオキサンを4kg/時間、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/時間、連鎖移動剤としてメチラールをトリオキサン1モルに対して0.25×10−3モルを連続的に添加した。
さらに、前記重合機に、重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1モルに対して1.5×10−5モルで連続的に添加し重合を行った。
重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行った。
失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後、120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、窒素量に換算して20質量ppmとした。水酸化コリン蟻酸塩の添加量の調整は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。
乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で、ポリアセタールコポリマーの不安定末端部分の分解除去を行った。
不安定末端部分の分解されたポリアセタールコポリマーに、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズし、ペレットを得た。
このようにして得られたポリアセタールコポリマーを、ポリアセタール樹脂(POM−1)とした。ポリアセタール樹脂(POM−1)は、メルトフローレートは30.0g/10分(ISO−1133条件D)であった。
ポリアセタール樹脂(POM−2)を下記のようにして調製した。
前記(POM−1)と同様の、熱媒を通すことのできるジャケット付きの2軸パドル型連続重合機を80℃に調整した。
水及び蟻酸を合わせて4ppmを含むトリオキサンを40モル/時間、同時に、環状ホルマールとして1,3−ジオキソランを2モル/時間、重合触媒としてシクロヘキサンに溶解させた三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートを、トリオキサン1モルに対し5×10−5モルとなる量、連鎖移動剤として下記式(5)で表される両末端ヒドロキシル基水素添加ポリブタジエン(数平均分子量Mn=2330)をトリオキサン1モルに対し1×10−3モルになる量で、前記重合機に連続的に供給し、重合を行った。
濾過洗浄後の粗ポリアセタール共重合体1質量部に対し、第4級アンモニウム化合物として、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩を窒素の量に換算して20質量ppmになるよう添加し、それらを均一に混合し、その後、120℃で乾燥し、ポリアセタールブロック共重合体を得た。
得られたポリアセタールブロック共重合体に、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズし、ペレットを得た。
このようにして得られたポリアセタールブロック共重合体を、ポリアセタール樹脂(POM−2)とした。ポリアセタール樹脂(POM−2)は、メルトフローレートが10.0g/10分(ISO−1133 条件D)であった。
(ZnO−1)
平均一次粒子径:250nm、酸化亜鉛中の鉛量:30ppm
(ZnO−2)
平均一次粒子径:600nm、酸化亜鉛中の鉛量:110ppm
(ZnO−3)
平均一次粒子径:30nm、酸化亜鉛中の鉛量:140ppm
(ZnO−4)
平均一次粒子径:250nm、酸化亜鉛中の鉛量:300ppm
(摺動性改良材(C−1))
エチレンビスステアリン酸アミド:分子量593 北広ケミカル社製
(摺動性改良材(C−2))
エチレングリコールジステアレート:分子量623 北広ケミカル社製
エチレンアクリル酸エステル共重合体(エチルアクリレート含有量:8質量%、融点:105℃、メルトフローレート(JIS K6922−2条件):0.8g/10分)(日本ユニカー株式会社製 NUC−6510)
2軸押出機を用いてポリアセタール樹脂組成物を製造した。
2軸押出機としては、東芝機械(株)製TEM−26SS押出機(L/D=48、ベント付き、を用いた。
シリンダー温度を200℃に設定し、原料の混合物を定量フィーダーより供給して、押出量15kg/時間、スクリュー回転数150rpmの条件で押出を行い、ポリアセタール樹脂組成物を得た。
各成分を下記表1及び表2に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。
押出されたポリアセタール樹脂組成物はストランドカッターでペレットとした。
得られたポリアセタール樹脂組成物ペレットを用いて、上述の方法により摺動試験−1、2とそれらの摩耗量、及び成形機滞留限界時間の測定を行った。
測定及び評価結果を表1及び表2に示す。
Claims (8)
- (A)ポリアセタール樹脂100質量部と、
(B)酸化亜鉛0.1〜2質量部と、
(C)摺動性改良材0.1〜5質量部と、
を、含有し、
前記(B)酸化亜鉛の数平均一次粒子径が125〜500nmである、ポリアセタール樹脂組成物。 - 前記(B)酸化亜鉛は、当該酸化亜鉛を100質量%としたとき、鉛の含有量が、10
0ppm未満である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。 - 前記(C)摺動性改良材が、高級脂肪族アルコール、高級アミド、高級脂肪酸、1価又
は2価の脂肪族アミンと高級脂肪酸とからなるアミド化合物、1価又は2価の脂肪族アル
コールと高級脂肪酸とのエステル、及び平均重合度が10〜500であるオレフィン化合
物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1又は2に記載のポリ
アセタール樹脂組成物。 - 前記(A)ポリアセタール樹脂がブロックポリマーを含む、請求項1乃至3のいずれか
一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。 - 前記(A)ポリアセタール樹脂中のブロックポリマーの比率が、(A)ポリアセタール
樹脂を100質量%としたとき、50質量%以上である、請求項4に記載のポリアセター
ル樹脂組成物。 - 前記(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(D)ポリオレフィン樹脂0.
5〜5質量部をさらに含有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリアセタール
樹脂組成物。 - 前記(D)ポリオレフィン樹脂が、
ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、アクリル酸エステル単位の含有量が5〜30質量%であるエチレンアクリル酸エステル共重合体、ポリオレフィン(d1)のブロックと親水性ポリマー(d2)のブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合及びイミド結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合を介して、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー、並びにこれらの変性物からなる群より選ばれる一種以上である、請求項6に記載のポリアセタール樹脂組成物。 - 請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物を含有する成形体。
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