JP7283953B2 - ハードディスク用ランプ部品 - Google Patents
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Description
特に、様々な製品に搭載されているハードディスクドライブ(HDD)においては、ビッグデータ時代の到来により、更なる高度化、高信頼性が要求されてきている。例えば、ハードディスクドライブ内部にヘリウムガスを充填し密閉状態とすることで、空気に比べ分子構造が小さいヘリウムの特性を活かして、ハードディスク内部での気体抵抗を低減させ、内蔵されるディスクが回転する際のふらつきを抑制する技術が知られている。これにより、搭載されるディスク枚数の多層化を実現し、膨大なデータの取り扱うことが可能となってきている。また、ハードディスクを密閉することにより、内部への水分、及びゴミなどの侵入を防ぎ、リードエラーなどの故障を回避することができるため、低温下、気圧変動の大きい場所など、従来では使用が困難とされてきた過酷な環境下での使用も可能となってきている。
〔1〕(A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)脂肪酸金属塩0.01~1質量部と、(C)酸化亜鉛0.1~3質量部とを含み、メルトフローレート(ISO1133準拠、190℃、2.16kg荷重)が26~35g/10分である、樹脂組成物からなるハードディスク用ランプ部品。
〔2〕前記(B)脂肪酸金属塩の前記(C)酸化亜鉛に対する質量割合が0.053~1.000である、前記〔1〕に記載のハードディスク用ランプ部品。
〔3〕前記(B)脂肪酸金属塩の前記(C)酸化亜鉛に対する質量割合が0.250~1.000である、前記〔2〕に記載のハードディスク用ランプ部品。
〔4〕前記(B)脂肪酸金属塩がステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のハードディスク用ランプ部品。
〔5〕前記(C)酸化亜鉛の平均一次粒径が0.07~1.0μmである、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のハードディスク用ランプ部品。
〔6〕前記(B)脂肪酸金属塩と前記(C)酸化亜鉛との合計量が、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.6~1.4質量部である、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のハードディスク用ランプ部品。
本実施形態のハードディスク用ランプ部品に用いる樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂、(B)脂肪酸金属塩、(C)酸化亜鉛を含む樹脂組成物である。
本実施形態に係る(A)ポリアセタール樹脂としては、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーが挙げられ、公知のものを用いてもよい。
ポリアセタールホモポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)及び4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られるものである。したがって、ポリアセタールホモポリマーは、実質的にオキシメチレン単位からなる。
ポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)及び4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3-ジオキソラン、1,4-ブタンジオールホルマール等のグリコール又はジグリコールの環状ホルマール等の、環状エーテル又は環状ホルマールとを共重合させて得られるものである。また、ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー、並びに、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーを用いることもできる。
また、これら(A)ポリアセタール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。この場合、(A)ポリアセタール樹脂は、ポリアセタールコポリマーを50質量%以上含むものが好ましく、80質量%以上含むものがより好ましく、実質的にほぼすべて(95質量%以上)がポリアセタールコポリマーであることが最も好ましい。なお、ここでのパーセンテージは、(A)ポリアセタール樹脂の全体量を100質量%としたものに基づく。
本実施形態に係る(B)脂肪族金属塩としては、炭素数10~35の飽和若しくは不飽和の脂肪酸又は水酸基で置換されている脂肪酸と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物又は塩化物から得られた脂肪酸金属塩を用いることができる。
具体的な(B)脂肪酸金属塩の例としては、ミリスチン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸-パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸-ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸-ステアリン酸)カルシウムである。中でも好ましくは、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムである。
具体的な(B)脂肪酸金属塩の例としては、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛(ミリスチン酸-パルミチン酸)亜鉛、(ミリスチン酸-ステアリン酸)亜鉛、(パルミチン酸-ステアリン酸)亜鉛である。中でも好ましくは、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛である。
本実施形態における(C)酸化亜鉛としては、製造方法に限定されないが、工業的には乾式法または湿式法で製造される粉末を用いることができる。
なお、(C)酸化亜鉛の平均一次粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津株式会社製、型番:SALD-2300)で測定できる。
本実施形態のハードディスク用ランプ部品に用いる樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、従来のポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種安定剤を含むことができる。安定剤として、具体的には、下記の酸化防止剤、ホルムアルデヒド又はギ酸の捕捉剤等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態のハードディスク用ランプ部品に用いる樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、かつ所望の特性に応じて、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種添加剤を含むことができる。添加剤として、具体的には、下記の無機充填剤、結晶核剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、顔料等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
繊維状充填剤として、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維;ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維等が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類等;芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質等も挙げられる。
粉粒子状充填剤として、具体的には、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイトのような珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナのような金属酸化物((C)酸化亜鉛を除く)、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属硫酸塩、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
板状充填剤として、具体的には、マイカ、フレーク状ガラス、各種金属箔等が挙げられる。
中空状の充填剤として、具体的には、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等が挙げられる。
これらの無機充填剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの無機充填剤は表面処理されたもの、未表面処理のもの、何れも使用可能であるが、ポリアセタール樹脂組成物を含む成形体の表面の平滑性、機械的特性の観点から、表面処理の施されたものが好ましい場合がある。
表面処理剤としては従来公知のものが使用可能であり、具体的には、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤等が挙げられる。カップリング処理剤として、具体的には、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n-ブチルジルコネート等が挙げられる。
無機充填剤は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上50質量部以下であることがさらに好ましい。
本実施形態において、摩擦係数の変動を抑制する観点から、ポリアセタール樹脂組成物のメルトフローレート(ISO1133準拠、190℃、2.16kg荷重)は、26~35g/10分であり、好ましくは27~34g/10分であり、より好ましくは27~33g/10分である。
なお、本実施形態において、ポリアセタール樹脂組成物のメルトフローレートは、樹脂組成物に含有される(A)ポリアセタール樹脂のメルトフローレートを調整する等により調整することができる。
なお、摩擦係数変動値は、下記式で算出されてよい。
摩擦係数変動値=最大摩擦係数/最少摩擦係数
また、摩擦係数変動値は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
また、可塑化時間安定性は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述した(A)ポリアセタール樹脂、(B)脂肪酸金属塩、(C)酸化亜鉛と、必要に応じてその他の成分とを溶融混練することにより製造できる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。当該混練機として、具体的には、単軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。これらの中でも、単軸押出機、2軸押出機が好ましい。
溶融混練の方法として、具体的には、すべての成分のブレンド物を押出機トップのフィーダー(以下、トップフィーダーと呼ぶ)から連続的にフィードして溶融混練させる方法、(C)酸化亜鉛以外の成分のブレンド物を押出機トップフィーダーから連続的にフィードして溶融混練させた後、押出機のサイドに設けられたフィーダー(以下、サイドフィーダーと呼ぶ)から(C)酸化亜鉛を連続的にフィードしてさらに溶融混練させる方法等が挙げられるが、これらはいずれも問題なく利用可能である。
本実施形態のハードディスク用ランプ部品は、特に制限されるものではなく、例えば上記の樹脂組成物を公知の成形方法を適用して得ることができる。具体的には、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。
本実施形態のハードディスク用ランプ部品を成形する際の金型温度としては、50~140℃が好ましく、80~130℃であることがより好ましく、100~130℃であることがさらに好ましい。金型温度を上記範囲とすることで、表面平滑性、及び摺動性に優れた成形体を得ることができる。
本実施形態のハードディスク用ランプ部品は、ハードディスク用ランプ中に、一体的な部品として、または分離可能な部品として用いることができる。また、当該ハードディスク用ランプは、従来では使用が困難であった、低温低湿条件下や、物性バランスが重要視されるハードディスク、例えば、IoT、AIに関連する自動車、家電分野、ロボット分野等に搭載されるハードディスクに好適に用いられる。
ポリアセタール樹脂組成物のMFR(g/10分)は、当該樹脂組成物のペレットを用い、ISO1133準拠して、190℃、2.16kg荷重で測定した。
ポリアセタール樹脂組成物ペレットを、東芝機械(株)製EC-75NII成形機を用いて、シリンダー温度205℃、金型温度120℃の射出成形条件で射出成形し、4mm厚みのISO試験片を得た。往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製、商品名「AFT-15MS型」)により荷重500g、線速度30mm/sec、往復距離20mmの条件下、23℃、湿度50%環境下で5000回の往復試験を行った。相手材料としては、SUS球(SUS304、直径5mm)を用いた。摺動開始から摺動終了までの期間の摩擦係数の変動比(摩擦係数変動値)は、下記式で算出した。
摩擦係数変動値=最大摩擦係数/最少摩擦係数
ポリアセタール樹脂組成物ペレットをシリンダー温度205℃、金型温度120℃の射出成形条件で射出成形し、長さ90mm×幅70mm×高さ35mmの箱型の成形品を成形した。当該成形品の長さ方向の両端を持ち、高さ方向に屈曲変形させたときの剛性感を評価した。評価は、屈曲変形を加えたとき、成形品中心部を基準とし両端の変位量(mm)より、次の判断基準で行った。
+++:変位量0以上5mm未満
++:変位量5以上10mm未満
+:変位量10mm以上
ポリアセタール樹脂組成物のペレットを、東芝機械(株)製EC-75NII成形機を用いて、シリンダー温度205℃、金型温度120℃の射出成形条件で射出成形し、4mm厚みのISO試験片に50ショット成形した。その際、射出及び保圧時間30秒、冷却時間15秒に設定し、可塑化時間安定性を標準偏差で評価した。可塑化時間安定性は、具体的には、金型内への射出が完了し、ISO試験片を冷却している間、次に射出する溶融樹脂が成形機シリンダー内で計量されるのが完了するまでの時間を計測し、その50ショット分の可塑化時間から標準偏差を算出して求めた。
(A-1)ポリアセタール樹脂
トリオキサン100mol%に対して、1,3-ジオキソラン1.5mol%を共重合成分として含む、MFR(条件:ISO1133準拠、190℃、2.16kg荷重)が30g/10分のポリアセタールコポリマー
トリオキサン100mol%に対して、1,3-ジオキソラン1.5mol%を共重合成分として含む、MFR(条件:ISO1133準拠、190℃、2.16kg荷重)が20g/10分のポリアセタールコポリマー
トリオキサン100mol%に対して、1,3-ジオキソラン1.5mol%を共重合成分として含む、MFR(条件:ISO1133準拠、190℃、2.16kg荷重)が25g/10分のポリアセタールコポリマー
トリオキサン100mol%に対して、1,3-ジオキソラン1.5mol%を共重合成分として含む、MFR(条件:ISO1133準拠、190℃、2.16kg荷重)が40g/10分のポリアセタールコポリマー
トリオキサン100mol%に対して、1,3-ジオキソラン1.5mol%を共重合成分として含む、MFR(条件:ISO1133準拠、190℃、2.16kg荷重)が27g/10分のポリアセタールコポリマー
トリオキサン100mol%に対して、1,3-ジオキソラン1.5mol%を共重合成分として含む、MFR(条件:ISO1133準拠、190℃、2.16kg荷重)が34g/10分のポリアセタールコポリマー
(B-1)ステアリン酸カルシウム
(C-1)酸化亜鉛(平均一次粒径:0.53μm)
(C-2)酸化亜鉛(平均一次粒径:0.17μm)
本実施例では、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM-26SS)を用いて、シリンダー温度を全て200℃に設定し、(A)~(C)成分を押出機メインスロート部より定量フィーダーより供給して、押出量15kg/時間、スクリュー回転数150rpmの条件で樹脂混練物をストランド状に押出し、ストランドバスにて急冷し、ストランドカッターで切断しペレットを得た。得られた樹脂組成物の各物性を評価した。これらの評価結果を表1に記載した。
各成分を表1、2に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。得られたペレットを用いて、上述の方法により評価を行った。測定及び評価結果を表1、2に示す。
表1に示したように、実施例1~11で得られたポリアセタール樹脂組成物ペレットは成形時の可塑化安定性に優れていた。また、該ポリアセタール樹脂組成物ペレットを成形して得られた成形体は、摩擦係数の変動が少なく、摺動安定性に優れ、且つ、剛性も良好であった。
一方、表2に示したように、比較例1~9で得られたポリアセタール樹脂組成物ペレットは、成形時の可塑化安定性が低く、摩擦係数の変動が大きく、摺動安定性と剛性のバランスが劣った。
Claims (6)
- (A)ポリアセタール樹脂100質量部と、(B)脂肪酸金属塩0.01~1質量部と、(C)酸化亜鉛0.1~3質量部とを含み、メルトフローレート(ISO1133準拠、190℃、2.16kg荷重)が26~35g/10分である樹脂組成物からなるハードディスク用ランプ部品であって、
但し、前記樹脂組成物からポリオレフィンのブロックと、親水性ポリマーのブロックとがエステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合およびイミド結合から選ばれる少なくとも一種の結合を介して、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマーを除く。 - 前記(B)脂肪酸金属塩の前記(C)酸化亜鉛に対する質量割合が0.053~1.000である、請求項1に記載のハードディスク用ランプ部品。
- 前記(B)脂肪酸金属塩の前記(C)酸化亜鉛に対する質量割合が0.250~1.000である、請求項2に記載のハードディスク用ランプ部品。
- 前記(B)脂肪酸金属塩がステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載のハードディスク用ランプ部品。
- 前記(C)酸化亜鉛の平均一次粒径が0.07~1.0μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のハードディスク用ランプ部品。
- 前記(B)脂肪酸金属塩と前記(C)酸化亜鉛との合計量が、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.6~1.4質量部である、請求項1~5のいずれか一項に記載のハードディスク用ランプ部品。
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