JP6079381B2 - 膜電極接合体の製造方法、及び膜電極接合体の製造装置 - Google Patents
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Description
燃料電池は、電解質の種類によって、アルカリ形、リン酸形、高分子形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形などに分類される。高分子形燃料電池(PEFC)は、低温作動、高出力密度であり、小型化・軽量化が可能であることから、携帯用電源、家庭用電源、車載用動力源としての応用が期待されている。
アノード:H2 → 2H+ + 2e− ・・・(1)
カソード:1/2O2 + 2H+ + 2e− → H2O ・・・(2)
転写法は、転写基材に触媒層を形成し、乾燥後に高分子電解質膜へ触媒層を転写する方法である(例えば、特許文献1参照。)。従って、高分子電解質膜が溶剤によって膨潤することはない。寸法を厳密に管理する場合に有効な製造方法である。
次に転写基材に形成した触媒層を高分子電解質膜に転写する。転写方法には熱ラミネート法を採用する場合が多い。この際、アノード電極とカソード電極をアライメントし、ずれ無く貼合する。貼合後は転写基材を剥離するため、転写基材は、触媒層との剥離性が良好な基材を選定する必要がある。
そこで考案されたのが、アライメントの段階で、転写基材と高分子電解質膜の双方を過熱する方法である。双方を熱ラミネート温度と同一温度に加熱し、アライメント実施の後に熱ラミネートすれば、変形することなく、アライメントされた状態で接合することができる。
上記作業を自動化することは難しい。基材を双方加熱しながらアライメントするプロセスは、事例が少ない。また、高分子電解質膜が薄膜で伸びやすく、テンションをかけられないという点も問題である。
また、上記の膜電極接合体の製造方法において、前記第一のステージ及び前記第二のステージの一方は円柱状ステージであり、前記第一のステージ及び前記第二のステージの他方は平板状ステージであり、前記第三の工程では、前記円柱状ステージを前記平板状ステージ上で転動させることにより、前記第一の電極触媒層を前記電解質膜の一方の面に貼付し、前記第五の工程では、前記円柱状ステージを前記平板状ステージ上で転動させることにより、前記第二の電極触媒層を前記電解質膜の他方の面に貼付することを特徴としてもよい。
また、上記の膜電極接合体の製造方法において、前記第五の工程では、前記円柱状ステージ及び前記平板状ステージの一方が、前記円柱状ステージと前記平板状ステージとが前記第二の転写基材を介して接触した箇所から順に、該第二の転写基材を支持する状態を解除することを特徴としてもよい。
また、上記の膜電極接合体の製造方法において、平面視で、前記第一の転写基材の面積は前記電解質膜の面積の90%以下であり、前記第二の転写基材の面積は前記電解質膜の面積の110%以上であることを特徴としてもよい。
また、上記の膜電極接合体の製造方法において、前記第三の工程及び前記第五の工程では、前記第一のステージと前記第二のステージの温度差を3℃以下に設定することを特徴としてもよい。
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る膜電極接合体の構成例を示す断面図である。
図1は、転写法によって膜電極接合体を作製した際の、転写基材を剥離する前の状態を示している。また、図2は、転写基材を剥離した後の状態を示している。
吸着ステージに多孔質材を採用する理由は、フィルム基材全面を強固にステージに吸着させるためである。通常の規則的に吸着孔が開口されたステージでは、基材全面を吸着することが難しく、特に高分子電解質膜は吸着のムラにより変形、寸法変動を生じやすい。
また、図3には記載していないが、円柱状ステージ6及び平板状ステージ7の少なくとも一方は、X、Y、θ方向に対し稼動可能であることが望ましい。ここでX,Y、θ方向とは、平板状ステージの面内方向を意味する。これは転写基材と高分子電解質膜を貼合する際に、貼合位置を合わせるためである。また、アノード側転写基材2とカソード側転写基材4をアライメント貼合する際にも使われる。
図4(a)〜(k)は、本発明の実施形態に係る膜電極接合体の製造方法を工程順に示す概念図である。
図4(a)はフィルム基材を設置する前の状態である。まず、平板状ステージ7を所望の温度まで加温する。次に、図4(b)は、貼合温度まで加温した平板状ステージ7上に、例えばカソード側転写基材4を設置する工程である。カソード側転写基材4は、そのカソード電極触媒層5を有する面(即ち、一方の面)を平板状ステージ7の側に向けた状態で平板状ステージ7上に配置する。そして、カソード側転写基材4が十分に加温された後に、カソード側転写基材4を平板状ステージ7上に真空吸着する。
図4(c)は貼合開始工程である。平板状ステージ7上で円柱状ステージ6を転がす(転動させる)ことによって、平板状ステージ7に設置した転写基材(例えば、アノード側転写基材2)を円柱状ステージ6に移すことを目的とする。貼合の際は、円柱状ステージ6と平板状ステージ7の接触した箇所から順に、平板状ステージ7の吸着を解除もしくはエアブローする。これによって、転写基材に過度に応力をかけることなく、これを円柱状ステージ6に移すことができる。
図4(c)の貼合工程においては、円柱状ステージ6と平板状ステージ7の接触の際に、応力を調整できる機構があることが好ましい。特に、後に述べる積層貼合の際には応力調整が必須となる。応力が強すぎると基材が変形し、弱すぎるとエア噛みや貼合不良が起こる。
図4(e)は高分子電解質膜1を設置する工程である。高分子電解質膜1は温度により変形しやすいため、平板状ステージ7等に設置する際は、高分子電解質膜1を十分に加温した後で真空吸着する。
ここでは、平面視で、カソード側転写基材4を相似状に拡大した形と大きさの高分子電解質膜1を採用している。相似状に拡大することで、高分子電解質膜1の外周4辺を円柱状ステージ6の表面に吸着することができる。タック性の高い基材を扱う場合は、形状を一方向だけ伸ばすことにより外周2辺を吸着する方法もとれる。
図4(h)はアノード側転写基材2の設置工程である。アノード側転写基材2は、そのアノード電極触媒層3を有する面(即ち、一方の面)を上側に向けた状態で平板状ステージ7上に配置する。そして、アノード側転写基材2が十分に加温された後に、アノード側転写基材2を平板状ステージ7上に真空吸着する。
この実施形態では、高分子電解質膜1が本発明の「電解質膜」に対応し、カソード電極触媒層5が本発明の「第一の電極触媒層」に対応し、アノード電極触媒層3が本発明の「第二の電極触媒層」に対応している。また、カソード側転写基材4が本発明の「第一の転写基材」に対応し、アノード側転写基材2が本発明の「第二の転写基材」に対応している。
本発明の実施形態は、以下の効果を奏する。
(1)高分子電解質膜1と、アノード側転写基材2及びカソード側転写基材4をそれぞれ加温しながら貼合する。例えば、高分子電解質膜1や、アノード側転写基材2及びカソード側転写基材4に、横方向に搬送するための張力を与える必要はない。これにより、高分子電解質膜1と、アノード側転写基材2及びカソード側転写基材4のそれぞれにおいて、変形によるシワ、寸法変動、シートカールの発生等を抑制することができ、アノード電極触媒層3とカソード電極触媒層5のずれを防止した膜電極接合体を製造することができる。
なお、カソード側転写基材4の面積は高分子電解質膜1の面積の90%以下であり、アノード側転写基材2の面積は高分子電解質膜1の面積の110%以上であることが好ましい。これにより、アライメントされた状態の積層基材を、円柱状ステージ6から剥がれることなく十分なマージンをもって保持することができる。
(6)また、フィルム基材を積層する際は、円柱状ステージ6と平板状ステージ7の温度差を3℃以下に設定することが好ましい。これにより、貼合時の温度の差によって生じるフィルム基材の変形やシワの発生、寸法の変動を回避することができる。
上記の実施形態では、平板状ステージ7上からフィルム基材を順次剥離して、これを円柱状ステージ6上に積層する場合について説明した。しかしながら、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、円柱状ステージ6上からフィルム基材を順次剥離して、これを平板状ステージ7上に積層してもよい。
また、円柱状ステージ6上にフィルム基材を積層させる場合は曲面への吸着による応力歪みが発生し易いが、平板状ステージ7上にフィルム基材を積層させる場合は、フィルム基材での応力歪みの発生をさらに回避することができる。従って、膜電極接合体のシートカールがさらに発生しにくくなるという効果を奏する。
カソード側転写基材4には、厚さ100μmテフロン(登録商標)フィルムをそれぞれ採用した。これを120mm□に断裁し、カソード電極触媒層5の塗工を実施した。また、高分子電解質膜1には市販の厚さ50μmのものを使用し、120×140mmに断裁した。アノード側転写基材2は120×160mmに断裁し、これによって外周2辺を吸着する方法を採用した。
貼合装置は図3に示すものとほぼ同等の試験的な装置を使用した。円柱状ステージ6は、ステンレス製の円柱状ヒーターにポリプロピレン樹脂からなる多孔質材を巻きつけることによって作製した。孔径は直径20μmの多孔質樹脂を採用した。
円柱状ステージ6、及び平板状ステージ7の温度は100℃とし、貼合の動作は手動にて円柱状ステージ6を転がすのみとした。つまり圧力は円柱状ステージ6の重さ約5kgによって決まる。
アライメントカメラ9は平板状ステージ7の上に1箇所設置し、大視野により電極パターン全域を画像認識させた。カソード側転写基材4の電極パターンを画像モニター上に記録し、これにアノード側転写基材2の端部を合わせることでアライメント動作とした。
2 アノード側転写基材
3 アノード電極触媒層
4 カソード側転写基材
5 カソード電極触媒層
6 円柱状ステージ
7 平板状ステージ
9 アライメントカメラ
Claims (9)
- 電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に設けられた第一の電極触媒層と、前記電解質膜の他方の面に設けられた第二の電極触媒層と、を備える膜電極接合体の製造方法であって、
前記第一の電極触媒層を一方の面に有する第一の転写基材を用意し、該第一の転写基材の他方の面を加温可能な第一のステージで支持する第一の工程と、
前記電解質膜を加温可能な第二のステージで支持する第二の工程と、
前記第一のステージと前記第二のステージを互いに対向させて、前記第一の電極触媒層と前記電解質膜とを加熱しながら接触させることにより、前記第一の電極触媒層を前記電解質膜の一方の面に貼付すると共に、前記電解質膜を前記第二のステージから前記第一のステージに移動させる第三の工程と、
前記第二の電極触媒層を一方の面に有する第二の転写基材を用意し、該第二の転写基材の他方の面を、前記電解質膜が前記第一のステージに移動することにより空いた前記第二のステージで支持する第四の工程と、
前記第一のステージと前記第二のステージとを対向させて、前記第二の電極触媒層と前記電解質膜とを加熱しながら接触させることにより、前記第二の電極触媒層を前記電解質膜の他方の面に貼付すると共に、前記第二の電極触媒層を有する前記第二の転写基材を前記第二のステージから前記第一のステージに移動させる第五の工程と、を備え、
前記第五の工程では、前記第二の電極触媒層が前記第一の電極触媒層と平面視で重なるように、前記第二の転写基材を前記第一の転写基材に対して相対的に位置合わせすることを特徴とする膜電極接合体の製造方法。 - 前記第一のステージと前記第二のステージは多孔質材からなることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体の製造方法。
- 前記第一のステージ及び前記第二のステージの一方は円柱状ステージであり、
前記第一のステージ及び前記第二のステージの他方は平板状ステージであり、
前記第三の工程では、前記円柱状ステージを前記平板状ステージ上で転動させることにより、前記第一の電極触媒層を前記電解質膜の一方の面に貼付し、
前記第五の工程では、前記円柱状ステージを前記平板状ステージ上で転動させることにより、前記第二の電極触媒層を前記電解質膜の他方の面に貼付することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の膜電極接合体の製造方法。 - 前記第三の工程では、前記円柱状ステージ及び前記平板状ステージの一方が、前記円柱状ステージと前記平板状ステージとが前記電解質膜を介して接触した箇所から順に、該電解質膜の支持を解除することを特徴とする請求項3に記載の膜電極接合体の製造方法。
- 前記第五の工程では、前記円柱状ステージ及び前記平板状ステージの一方が、前記円柱状ステージと前記平板状ステージとが前記第二の転写基材を介して接触した箇所から順に、該第二の転写基材を支持する状態を解除することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の膜電極接合体の製造方法。
- 平面視で、前記第二の転写基材は前記電解質膜を相似状に拡大した形と大きさを有し、前記電解質膜は前記第一の転写基材を相似状に拡大した形と大きさを有することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の膜電極接合体の製造方法。
- 平面視で、前記第一の転写基材の面積は前記電解質膜の面積の90%以下であり、前記第二の転写基材の面積は前記電解質膜の面積の110%以上であることを特徴とする請求項6に記載の膜電極接合体の製造方法。
- 前記第三の工程及び前記第五の工程では、
前記第一のステージと前記第二のステージの温度差を3℃以下に設定することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載の膜電極接合体の製造方法。 - 電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に設けられた第一の電極触媒層と、前記電解質膜の他方の面に設けられた第二の電極触媒層と、を備える膜電極接合体を製造するための、膜電極接合体の製造装置であって、
加熱可能な第一のステージと、
加熱可能な第二のステージと、を備え、
前記第一のステージは、前記第一の電極触媒層を一方の面に有する第一の転写基材の他方の面を支持し、
前記第二のステージは前記電解質膜を支持し、
前記第一のステージと前記第二のステージは互いに対向して、前記第一の電極触媒層と前記電解質膜とを加熱しながら接触させることにより、前記第一の電極触媒層を前記電解質膜の一方の面に貼付すると共に、前記電解質膜を前記第二のステージから前記第一のステージに移動させ、
前記電解質膜が前記第一のステージに移動することにより空いた前記第二のステージが、前記第二の電極触媒層を一方の面に有する第二の転写基材の他方の面を支持し、
前記第一のステージと前記第二のステージは互いに対向して、前記第二の電極触媒層と前記電解質膜とを加熱しながら接触させることにより、前記第二の電極触媒層を前記電解質膜の他方の面に貼付すると共に、前記第二の転写基材を前記第二のステージから前記第一のステージに移動させることを特徴とする膜電極接合体の製造装置。
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