JP6127598B2 - 膜電極接合体製造装置及び膜電極接合体製造方法 - Google Patents
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Description
アノード:H2 → 2H+ + 2e− ・・・(1)
カソード:1/2O2 + 2H+ + 2e− → H2O ・・・(2)
従来、膜電極接合体の製造方法としては、触媒を担持した炭素粒子、高分子電解質及び溶媒からなる触媒層用スラリーを製造して、触媒層用スラリーを高分子電解質膜に直接塗工して製造する方法や、転写基材またはガス拡散層に塗工して後、高分子電解質膜に熱圧着して製造する方法が知られている。
転写法は、転写基材に触媒層を形成し、乾燥後に高分子電解質膜へ触媒層を転写する方法である(例えば特許文献1)。したがって、高分子電解質膜が溶剤によって膨潤することはない。寸法を厳密に管理する場合に有効な製造方法である。
次に転写基材に形成した触媒層を高分子電解質膜に転写する。転写方法には熱ラミネート(laminate)法を採用する場合が多い。この際、アノード電極とカソード電極を位置合わせ(アライメント:alignment)し、ずれ無く貼り合せる。貼り合せた後は転写基材を剥離するため、転写基材は、触媒層との剥離性が良好な基材を選定する必要がある。
そこで考案されたのが、アライメントの段階で、転写基材と高分子電解質膜との双方を過熱する方法である。これら双方を熱ラミネート温度と同一温度に加熱し、アライメント実施の後に熱ラミネートすれば、変形することなく、アライメントされた状態で接合することができる。
上記アライメント作業を自動化することは難しい。転写基材と高分子電解質膜との双方を加熱しながらアライメントするプロセスは、事例が少ない。また、高分子電解質膜が薄膜であるため伸びやすく、テンションをかけられないという点も問題である。また、燃料電池のコア部材である膜電極接合体の製造方法の1つに、電解質膜へ触媒層を転写する方式がある。しかし、電解質膜は湿度や温度の影響を受けて変形するため、転写方式における基材のハンドリングが困難とされている。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記平面状ステージ(7)に前記転写基材(2),(4)を積層させることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の発明において、前記貼合手段(10)には、前記第一のステージ(7(6))と前記第二のステージ(6(7))との温度差を3℃以内に保持することが可能な温度管理手段を備えたことを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記平面状ステージ(7)に前記転写基材(2),(4)を積層させることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項6〜9の何れか1項に記載の発明において、前記貼合工程(S30)において用いる前記第一のステージ(7(6))と前記第二のステージ(6(7))との温度差を3℃以内に保持することを特徴とする。
1)基材の変形によるシワ、寸法変動、シートカールを生じない膜電極接合体を製造することができる。その理由は、電解質膜と転写基材とを加温しながら接触させて貼り合せるからである。特に、貼り合せ時の温度の差を原因とする基材の変形やシワの発生、寸法の変動を回避できる理由は、貼合手段及び貼合工程において用いる第一のステージと第二のステージとの温度差を3℃以内に保持するように温度管理するからである。
3)積層工程の次工程に移行する時にも膜電極接合体の温度を下がり難くすることができる。その理由は、円柱状ステージに転写基材を積層させるからである。例えば、熱ラミネート等の次の工程で、加温された平面状ステージに金属性プレートを載せておき、その金属性プレートへ、転写基材を円柱状ステージに積層させた状態の膜電極接合体を移載すれば、膜電極接合体の温度は下がり難い。
5)基材に剥離時の応力をかけることなく、円柱状または平面状ステージに転写基材を積層することができる。その理由は、円柱状ステージと平面状ステージとのうち転写基材を積層させない方のステージに対してのみ吸着解除もしくはブローを施すことにより転写基材を剥離するからである。
図1は、本発明の実施形態に係る膜電極接合体製造装置及び膜電極接合体製造方法において、転写基材を剥離する前の膜電極接合体の断面図である。図1に示すように、分子電解質膜1の一方の面に、アノード電極触媒層(以下、単に触媒層ともいう)3を介在して、アノード側(以下、転写基材、又は単に基材ともいう)2が積層されている。また、高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ともいう)1の他方の面に、カソード電極触媒層(以下、単に触媒層ともいう)5を介在して、カソード側転写基材(以下、転写基材、又は単に基材ともいう)4が積層されている。
このように、転写法によって膜電極接合体を製造した際の、転写基材2,4を剥離する前の状態を、図1に示している。この状態から転写基材2,4を剥離することによって、図2に示すような膜電極接合体を得ることができる。
なお、本発明でいう第一のステージ7(6)は、本実施形態における平面状ステージ7(又は円柱状ステージ6)を意味する。その場合、本発明でいう第二のステージ6(7)は、本実施形態における円柱状ステージ6(又は平面状ステージ7)を意味する。つまり、第一のステージと第二のステージとは、相互に読み替えても構わない。また、円柱状ステージ6では、その外周面に基材2,4を吸着させる。
吸着ステージに多孔質材を採用する理由は、基材2,4の全面を強固にステージ6,7へ吸着させるためである。これに対して、規則的に吸着孔が開口された、通常のステージ6,7では、基材2,4の全面を吸着することが難しく、特に高分子電解質膜1は吸着のムラにより変形、寸法変動を生じやすい。
また、図3には記載していないが、円柱状ステージ6、もしくは平面状ステージ7のどちらかは、X、Y,θ方向に対し稼動可能であることが望ましい。ここでX,Y,θ方向とは、平面状ステージ7の面内方向を意味する。これは転写基材2,4と高分子電解質膜1とを貼り合せる際に、貼り合せ位置を合わせるためである。
図4は、本発明の実施形態に係る膜電極接合体製造方法における全体工程のフロー図である。本実施形態においては、電解質膜固定工程(S10)と、転写基材固定工程(S20)と、貼合工程(S30)とを有する工程を実行することにより、膜電極接合体を製造する。先ず、電解質膜固定工程(S10)により、多孔質材から構成されて加温可能な第一のステージ7(6)に電解質膜1を固定する。次に、転写基材固定工程(S20)により、多孔質材から構成されて加温可能な第二のステージ6(7)に電極を設けた転写基材2,4を固定する。そして、貼合工程(S30)により、第一のステージ7(6)に固定された電解質膜1と第二のステージ6(7)に固定された転写基材2,4とを加温しながら接触させて貼り合せる。
なお、上記方法とは逆に、平面状ステージ7に基材2,4を積層させる装置及び方法もある。ただし、どちらの方法であっても、円柱状ステージ6と平面状ステージ7との何れか一方に転写基材2,4を積層させる。
特に、平面状ステージ7に転写基材2,4を積層させた場合は、膜電極接合体のシートカールが発生し難い。その理由は、円柱状ステージ6の外周面に積層させた場合に発生する曲面吸着による応力歪みも、平面状ステージ7に転写基材2,4を積層させることによって、応力歪みの発生を回避できるからである。
図5(a)は転写基材設置工程である。設置するのはアノード電極、カソード電極どちらでも構わない。貼り合せる際の温度に加温した多孔質の平面状ステージ7に、アノード電極触媒層3又はカソード電極触媒層5を形成したアノード側転写基材2又はカソード側転写基材4を設置する。設置の際は、十分に基材が加温された後に真空吸着する。
また、本実施形態に係る膜電極接合体製造装置及び膜電極接合体製造方法によれば、積層工程の次工程に移行する時にも膜電極接合体の温度を下がり難くすることができる。その理由は、円柱状ステージ7に転写基材2,4を積層させるからである。例えば、熱ラミネート等の次の工程で、加温された平面状ステージ7に金属性プレートを載せておき、その金属性プレートへ、転写基材2,4を円柱状ステージ6に積層させた状態の膜電極接合体1を移載すれば、膜電極接合体の温度は下がり難い。
図5(d)は高分子電解質膜設置工程である。電解質膜1は温度により変形しやすいため、設置の際は、十分に基材2,4を加温した後に真空吸着する。
図5(e)は積層貼合開始の工程である。既に転写基材が設置されている円柱状ステージ6を転がすことによって、平面状ステージ7に設置されている高分子電解質膜1を転写基材2,4の上に積層させる。貼り合せの際は、円柱状ステージ6と平面状ステージ7の接触した箇所から順に、平面状ステージ7の吸着を解除もしくはエアブローする。これによって、高分子電解質膜1に応力をかけることなく、円柱状ステージ6に移すことができる。
また、貼合工程(S30)では、円柱状ステージ6と平面状ステージ7とが最接近した箇所において、円柱状ステージ6と平面状ステージ7とのうち、転写基材2,4を積層させない方のステージに対してのみ、吸着解除もしくはブローを施すことにより転写基材2,4を剥離する。
図5(f)は積層貼合終了段階である。円柱状ステージ6の上に転写基材2,4と高分子電解質膜1が積層貼合された状態が示されている。
転写基材2,4には、厚さ100μmのテフロン(登録商標)フィルムを採用した。これを100mmに断裁し、触媒層3,5の塗工を実施した。また、電解質膜1には市販の厚さ50μmのものを使用し、同じく100mmに断裁した。
貼合装置10は図3に示すものとほぼ同等の試験的な装置を使用した。円柱状ステージ6は、ステンレス製の円柱状ヒーターにポリプロピレン樹脂からなる多孔質材を巻きつけることによって構成した。この多孔質材として、孔径が直径20μmの多孔質樹脂を採用した。
円柱状ステージ6、及び平面状ステージ7の温度は100℃とし、貼り合せの動作は手動にて円柱状ステージ6を転がすのみとした。したがって、貼り合せの動作において付与される圧力は、円柱状ステージ6の重さによって約5Kgに規定される。
以上説明したように、本実施例に係る膜電極接合体製造装置及び膜電極接合体製造方法において、図4及び図5に示した通りの工程フローにより、高分子電解質膜1と転写基材2,4との貼り合せを実施した。その結果、基材の変形やエア噛み、シワ発生の無い膜電極接合体を製造することができた。以上の結果より、本発明に係る膜電極接合体製造装置及び膜電極接合体製造方法が実用できると結論づけた。
2…アノード側転写基材
3…アノード電極触媒層
4…カソード側転写基材
5…カソード電極触媒層
6…円柱状ステージ(第二のステージ、又は第一のステージ)
7…平面状ステージ(第一のステージ、又は第二のステージ)
8…円柱状ステージの回転方向
10…貼合装置(貼合手段)
(a)…転写基材設置工程
(b)…貼合開始段階
(c)…貼合終了段階
(d)…高分子電解質膜設置工程
(e)…積層貼合開始段階
(f)…積層貼合終了段階
Claims (10)
- 電解質膜と電極とを有する膜電極接合体を製造するための膜電極接合体製造装置であって、
前記電解質膜を固定して加温可能な第一のステージと、
前記電極を設けた転写基材を固定して加温可能な第二のステージと、
前記第一のステージに固定された前記電解質膜と前記第二のステージに固定された前記転写基材とを加温しながら接触させて貼り合せる貼合手段とを備え、
前記第一のステージ及び前記第二のステージは多孔質材で構成されており、
前記第一のステージ及び前記第二のステージのうち、一方は円柱状ステージで構成され、他方は平面状ステージで構成され、前記円柱状ステージを前記平面状ステージの上で転がしながら貼り合せるように構成されていることを特徴とする膜電極接合体製造装置。 - 前記円柱状ステージに前記転写基材を積層させることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体製造装置。
- 前記平面状ステージに前記転写基材を積層させることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体製造装置。
- 前記貼合手段は、前記円柱状ステージと前記平面状ステージとが最接近した箇所において、前記円柱状ステージと前記平面状ステージとのうち前記転写基材を積層させない方のステージに対してのみ吸着解除もしくはブローを施すことにより前記転写基材を剥離する機構を具備したことを特徴とする請求項2又は3に記載の膜電極接合体製造装置。
- 前記貼合手段には、前記第一のステージと前記第二のステージとの温度差を3℃以内に保持することが可能な温度管理手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の膜電極接合体製造装置。
- 電解質膜と電極とを有する膜電極接合体を製造する膜電極接合体製造方法であって、
多孔質材から構成されて加温可能な第一のステージに前記電解質膜を固定する電解質膜固定工程と、
多孔質材から構成されて加温可能な第二のステージに前記電極を設けた転写基材を固定する転写基材固定工程と、
前記第一のステージに固定された前記電解質膜と前記第二のステージに固定された前記転写基材とを加温しながら接触させて貼り合せる貼合工程とを有し、
前記貼合工程では、前記第一のステージ及び前記第二のステージのうち、一方には円柱状ステージを用い、他方には平面状ステージを用い、前記円柱状ステージを前記平面状ステージの上で転がしながら貼り合せることを特徴とする膜電極接合体製造方法。 - 前記円柱状ステージに前記転写基材を積層させることを特徴とする請求項6に記載の膜電極接合体製造方法。
- 前記平面状ステージに前記転写基材を積層させることを特徴とする請求項6に記載の膜電極接合体製造方法。
- 前記貼合工程は、前記円柱状ステージと前記平面状ステージとが最接近した箇所において、前記円柱状ステージと前記平面状ステージとのうち前記転写基材を積層させない方のステージに対してのみ吸着解除もしくはブローを施すことにより前記転写基材を剥離することを特徴とする請求項7又は8に記載の膜電極接合体製造方法。
- 前記貼合工程において用いる前記第一のステージと前記第二のステージとの温度差を3℃以内に保持することを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載の膜電極接合体製造方法。
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