従来における二重成形で製造されたRFタグについては、以下のような構成であった。図13は、従来におけるRFタグの一部を示す概略断面図である。なお、理解の容易の観点から、図13中の矢印A1で示す紙面上方向を上側とする。図13を参照して、RFタグ101は、回路部品としてのIC102が上側に実装された回路基板103と、回路基板103がその上側に取り付けられた薄板状の樹脂製の一次成形体104と、IC102、回路基板103、および一次成形体104の全体の上側の領域を覆うようにして形成される樹脂製の二次成形体105とを備える。IC102の上面106および側面107は、樹脂製の二次成形体105に覆われている構成である。また、このような二次成形体105は、回路基板103が取り付けられた一次成形体104を金型内の所定の箇所にセットし、溶融した高温の樹脂を所定の圧力で金型内の一次成形体の上側部分に投入して形成する射出成形を行って形成される。
しかし、このような構成によると、射出成形による熱が、IC102に対して悪影響を及ぼすことになる。すなわち、このような構成によると、二次成形体105を形成するために金型内に投入される溶融された高温の樹脂に直接IC102が曝されることになり、熱に弱い構造のIC102の損傷を引き起こすおそれがある。
しかし、本願発明者らは、このような問題を解消するには以下に示す構成とすればよいと考えた。図14は、この場合におけるRFタグ111の一部を示す概略断面図である。図14は、図13に示す断面に相当する。
図14を参照して、RFタグ111は、IC112が実装された回路基板113と、回路基板113が取り付けられた樹脂製の一次成形体114と、回路基板113および一次成形体114を覆う樹脂製の二次成形体115とを備える。一次成形体114には、IC112をその内部に収容可能にして板厚方向、この場合、図14中の矢印A1で示す方向と逆の方向である紙面下側に凹む凹部116が設けられている。回路基板113は、IC112を凹部116に収容するようにして、一次成形体114に取り付けられている。また、IC112を収容した凹部116のうちの残りの空間は、予め凹部116内に注入された熱硬化性樹脂、具体的には、エポキシ樹脂から構成される封止剤117によって埋められ、封止されている。
このような構成によると、射出成形により二次成形体115を形成する際に、IC112が溶融された高温の樹脂に直接曝されず、回路基板113を介して熱が伝わるのみであるため、熱によるIC112の損傷のおそれを低減することができる。また、凹部116の空間が封止剤117により封止されているため、射出成形時において溶融された樹脂の投入時の圧力によって、IC112や回路基板113の損傷や変形のおそれを低減することができる。なお、射出成形における樹脂としてPPS(Poly Phenylene Sulfide(ポリフェニレンサルファイド))樹脂を用いた場合、300kg/cm2程度の圧力がかかることになる。
しかし、図14に示すような二重成形の積層構造を有するRFタグ111によっても、以下の問題が生ずるおそれがあることを本願発明者らは見出した。図15は、図14中のXVで示す凹部116の近傍を拡大して示す断面図である。
図15を参照して、回路基板113は、凹部116内に封止剤117を注入した後にIC112を収容するようにして一次成形体114に取り付けられる。しかし、ここで、一次成形体114の上に回路基板113を配置した際に、凹部116内に予め注入された封止剤117が、いわゆる毛細管現象により、回路基板113と一次成形体114との間に形成された微小なすき間118から図14の矢印A2で示すように這い上がってしまう。すなわち、毛細管現象により、凹部116内に注入された封止材117が凹部116の外部へ流出してしまう。なお、理解の容易の観点から、図15において、微小のすき間118を誇張して大きく図示している。
そうすると、凹部116のうちのIC112の回りに存在する空間119が封止剤117によって封止されず、凹部116内に空間119が存在することになる。射出成形時においては、溶融された樹脂を金型内に投入する際に、図15中の矢印A3で示す方向に大きな圧力が発生する。この圧力については、凹部116内を封止する封止剤117の反力で受けることとしていたが、凹部116内に封止材が存在せず、空間119が存在することになれば、射出成形による圧力を受けきれない場合がある。その結果、IC112および凹部116に対応する領域における回路基板113の損傷や変形が生ずるおそれがある。
この場合、図16に示す構成とすれば、この問題は解消できる。図16は、IC122を実装した回路基板123と一次成形体124との間に封止材125を構成する樹脂127を介在させたRFタグ121の一部を示す概略断面図である。図16を参照して、RFタグ121において、予め回路基板123と一次成形体124との板厚方向の間の全域に亘って樹脂127を介在させるようにすれば、このような毛細管現象に基づくと考えられる封止剤125の這い上がりは抑制される。そうすると、凹部126内に注入された封止剤125が適切に凹部126内で硬化される。そして、凹部126内が適切に封止されることになり、凹部126内に空間が存在することに起因するIC122および回路基板123の損傷の問題が解消される。しかし、このような方策は、結果として樹脂127を多量に使用することになり、生産性、およびコストの観点から好ましくない。なお、特許文献1や特許文献2に示すように、凹部から離れた位置において、環状溝等を設けることにより、這い上がった樹脂を止めることはできる。しかし、凹部内からの樹脂の這い上がり自体の防止や抑制をすることができない。
この発明の目的は、生産性を向上させることができるRFタグを提供することである。
この発明の他の目的は、生産性を向上させることができるRFタグの製造方法を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、生産性を向上させることができるRFタグ用一次成形体を提供することである。
この発明の一つの局面においては、RFタグは、板厚方向の一方面に回路部品が実装される回路基板と、板状であって、回路基板に実装された回路部品を収容可能に板厚方向の内方側に凹む凹部が設けられており、凹部に回路部品が収容され、回路基板の一方面に板厚方向の一方面を対向させるようにして回路基板が配置される一次成形体と、回路部品が収容された凹部内の空間を封止する樹脂製の封止材と、回路基板および一次成形体の外方側を覆うようにして設けられる二次成形体とを含む。一次成形体には、凹部を構成する壁面のうちの少なくとも一部から連なるようにして、一次成形体の一方面から板厚方向の内方側に凹む樹脂逃げ部が設けられている。
このようなRFタグによると、一次成形体には、凹部を構成する壁面のうちの少なくとも一部から連なるようにして、一次成形体の一方面から板厚方向の内方側に凹む樹脂逃げ部が設けられているため、封止剤を構成する樹脂を凹部内に注入し、回路部品を凹部内に収容させ、樹脂を固めて封止する際に、回路基板と一次成形体との間への樹脂の這い上がりによる流出を抑制することができる。そうすると、凹部内を封止材によって空間を存在させないように適切に封止することができる。したがって、二次成形体を形成する際に、回路基板や回路部品が損傷するおそれを大きく低減することができ、RFタグの生産性を向上させることができる。
また、樹脂逃げ部を構成し、回路基板の一方面に対向する壁面は、凹部を構成する壁面側から一次成形体の一方面に向かって近づくようにテーパ状に設けられているよう構成してもよい。
また、樹脂逃げ部は、凹部を構成する壁面のうちの少なくとも一部から凹部の外方側に延びるスリット状であるよう構成してもよい。
また、凹部は、一次成形体の一方面側から見た場合に角部が設けられている形状であり、樹脂逃げ部は、角部に設けられているよう構成してもよい。
また、樹脂逃げ部は、凹部の開口の全域に亘って設けられているよう構成してもよい。
また、記RFタグを板厚方向に沿う平面で切断した場合の断面において、一次成形体の一方面を構成する線と樹脂逃げ部を構成する壁面を構成する線とのなす角度のうち鋭角の方の角度は、5度以上45度以下であるよう構成してもよい。
また、樹脂逃げ部を構成する壁面のうちの少なくとも一つの壁面は、曲面で構成されているよう構成してもよい。
また、回路部品は、FeRAMまたはEEPROMであるよう構成してもよい。
また、一次成形体の材質は、磁性体を含む材質であるよう構成してもよい。
この発明の他の局面においては、RFタグの製造方法は、板厚方向の一方面に回路部品が実装される回路基板と、板状であって、回路基板に実装された回路部品を収容可能に板厚方向の内方側に凹む凹部が設けられており、凹部に回路部品が収容され、回路基板の一方面に板厚方向の一方面を対向させるようにして回路基板が配置される一次成形体と、回路部品が収容された凹部内の空間を封止する樹脂製の封止材と、回路基板および一次成形体の外方側を覆うようにして設けられる二次成形体とを含み、一次成形体には、凹部を構成する壁面のうちの少なくとも一部から連なるようにして、一次成形体の一方面から板厚方向の内方側に凹む樹脂逃げ部が設けられているRFタグの製造方法である。RFタグの製造方法は、回路部品が実装された回路基板と、凹部、および樹脂逃げ部が形成された一次成形体を準備する工程と、一次成形体に設けられた凹部内に樹脂製の封止剤を注入する工程と、封止剤が注入された凹部内に回路部品を収容して、一次成形体に回路基板を配置させる工程と、射出成形により、回路基板および一次成形体の少なくとも一部および回路基板を覆うようにして、二次成形体を形成する工程とを含む。
このようなRFタグの製造方法によると、一次成形体には、凹部を構成する壁面のうちの少なくとも一部から連なるようにして、一次成形体の一方面から板厚方向の内方側に凹む樹脂逃げ部が設けられているため、封止剤を構成する樹脂を凹部内に注入し、回路部品を凹部内に収容させ、樹脂を固めて封止する際に、回路基板と一次成形体との間への樹脂の這い上がりによる流出を抑制することができる。そうすると、凹部内を封止材によって空間を存在させないように適切に封止することができる。したがって、二次成形体を形成する際に、回路基板や回路部品が損傷するおそれを大きく低減することができ、RFタグの生産性を向上させることができる。
この発明のさらに他の局面においては、RFタグ用一次成形体は、板厚方向の一方面に回路部品が実装される回路基板を備えるRFタグに備えられ、板状であって、回路基板に実装された回路部品を収容可能に板厚方向の内方側に凹む凹部が設けられており、凹部に回路部品が収容され、回路基板の一方面に板厚方向の一方面を対向させるようにして回路基板が配置される。ここで、一次成形体には、凹部を構成する壁面のうちの少なくとも一部から連なるようにして、一次成形体の一方面から板厚方向の内方側に凹む樹脂逃げ部が設けられている。
このようなRFタグ用一次成形体によると、凹部を構成する壁面のうちの少なくとも一部から連なるようにして、一次成形体の一方面から板厚方向の内方側に凹む樹脂逃げ部が設けられているため、封止剤を構成する樹脂を凹部内に注入し、回路部品を凹部内に収容させ、樹脂を固めて封止する際に、回路基板と一次成形体との間への樹脂の這い上がりによる流出を抑制することができる。そうすると、凹部内を封止材によって空間を存在させないように適切に封止することができる。したがって、二次成形体を形成する際に、回路基板や回路部品が損傷するおそれを大きく低減することができ、RFタグの生産性を向上させることができる。
このような構成によると、一次成形体には、凹部を構成する壁面のうちの少なくとも一部から連なるようにして、一次成形体の一方面から板厚方向の内方側に凹む樹脂逃げ部が設けられているため、封止剤を構成する樹脂を凹部内に注入し、回路部品を凹部内に収容させ、樹脂を固めて封止する際に、回路基板と一次成形体との間への樹脂の這い上がりによる流出を抑制することができる。そうすると、凹部内を封止材によって空間を存在させないように適切に封止することができる。したがって、二次成形体を形成する際に、回路基板や回路部品が損傷するおそれを大きく低減することができ、RFタグの生産性を向上させることができる。
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、この発明の一実施形態に係るRFタグの構造について、簡単に説明する。この発明の一実施形態に係るRFタグは、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)タグとして利用される。そして、工場のラインや物流において、物品を収納した収納容器やパレットに取り付けられ、繰り返し使用されるタグとして用いられる。なお、このようなRFタグは、HF(High Frequency)帯やUHF(Ultra High Frequency)帯域で使用される。
図1は、この発明の一実施形態に係るRFタグを示す分解斜視図である。具体的には、図1は、RFタグを構成部品が積層される積層方向に分解した図である。図2および図3はそれぞれ、この発明の一実施形態に係るRFタグの一部を示す概略断面図である。図2および図3は、RFタグの板厚方向に沿う平面で切断した場合に相当する。図2は、図1中のII−IIで示す後述の樹脂逃げ部を含まない平面で切断した場合である。図3は、図1中のIII−IIIで示す樹脂逃げ部を含む平面で切断した場合である。なお、図1〜図3において、矢印A1で示す方向を、積層方向の上方向とする。
図1〜図3を参照して、この発明の一実施形態に係るRFタグ11は、回路部品としてのIC12と、IC12を実装する回路基板13と、板状であって、回路基板13が取り付けられる樹脂製の一次成形体21と、回路基板および一次成形体の外方側を覆うようにして設けられる二次成形体31とを含む。RFタグ11のおおよその構成については、図1〜図3に示す場合において、下層側から順に一次成形体21、回路基板13、二次成形体31が積層された構成である。
上記した用途に用いられるRFタグ11に備えられるIC12としては、リユースが前提となる観点、書き換え回数の制限がない観点、およびリードとライトで必要な電力が同じであり、交信距離に差異が生じない観点から、例えば、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)が用いられる。なお、必要に応じて、IC12として、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)を用いることにしてもよい。IC12は、薄板状であって、所定の肉厚を有する。
回路基板13は、略平板状であって、積層方向となる板厚方向から見た場合に、略矩形状である。具体的には、板厚方向から見た場合において、回路基板13は、矩形を構成する四つの角のうちの対角線上に位置する二つの角が切り取られた形状である。なお、この切り取られた角の領域については、後述する一次成形体21および二次成形体31に設けられる取り付け孔が位置する領域と重なる。なお、回路基板13は、薄板状であって、所定の板厚を有する。回路基板13の板厚については、図2中の長さL1で示す回路基板13の一方面14aと他方面14bとの間の板厚方向の長さで示される。また、図1における紙面表裏方向となる回路基板13の縦方向の長さL2については、回路基板13の側面15aと側面15bとの間の長さで示され、図1および図2における紙面左右方向となる回路基板13の横方向の長さL3については、回路基板13の側面15cと側面15dとの間の長さで示される。
回路基板13には、IC12が実装されている。具体的には、回路基板13を構成する板厚方向の下側の面となる一方面14aにIC12が取り付けられ、固定されている。この場合、回路基板13に実装されたIC12は、一方面14aから突出した構成となる。この場合、IC12は、回路基板13のほぼ中央に実装されている。
回路基板13は、パターンコイル基板である。すなわち、所定のパターンコイル(図示せず)が、回路基板13を構成する板厚方向のいずれかの面に形成されている。この場合、板厚方向の上側の面となる他方面14bにパターンコイルが形成されている。パターンコイルが形成された他方面14bが、RFタグ11における外部との通信時の交信面となる。このように構成することにより、外部との交信距離を長くすることができる。
一次成形体21は、略平板状であって、板厚方向から見た場合に、略矩形状である。一次成形体21は、所定の肉厚を有する。一次成形体21には、板厚方向に貫通する取り付け孔22a、22bが二つ設けられている。二つの取り付け孔22a、22bは、矩形状の一次成形体21において、対角線上に位置する角部に近い領域に設けられている。一次成形体21の板厚については、図2中の長さL4で示す一方面23aから他方面23bまでの長さで示される。また、図1における紙面表裏方向となる一次成形体21の縦方向の長さL5については、一次成形体21の側面24aと側面24bとの間の長さで示され、図1および図2における紙面左右方向となる一次成形体21の横方向の長さL6については、一次成形体21の側面24cと側面24dとの間の長さで示される。一次成形体21の縦方向の長さL5、および横方向の長さL6はそれぞれ、回路基板13の縦方向の長さL2、および横方向の長さL3よりも長く構成されている。なお、一次成形体21は、樹脂製である。一次成形体21の材質としては、例えば、PPS樹脂が採用される。
一次成形体21は、回路基板13の一方面14aと板厚方向の一方面23aを対向させるようにして配置される。この場合、一次成形体21には、回路基板13が取り付けられる。具体的には、一次成形体21のうちの上側に向く板厚方向の一方面23aが、回路基板13のうちの下側に向く板厚方向の一方面14aと当接するようにして取り付けられる。この場合、一次成形体21および回路基板13のいずれも略平板状であり、長さL5が長さL2より長く、長さL6が長さL3よりも長いため、回路基板13の一方面14aの領域のほとんどが、一次成形体21の一方面23aに当接する。回路基板13は、一次成形体21のほぼ中央の領域に取り付けられる。この場合、極薄の接着剤等を介して回路基板13を一次成形体21に取り付けることにしてもよいし、回路基板13と一次成形体21との間に何も介在させず、IC12と後述する封止材との固着により回路基板13を一次成形体21に取り付けることにしてもよい。
一次成形体21には、回路基板13を一方面23aに取り付けた際に、IC12を収容可能な凹部26が設けられている。凹部26は、一方面23aから板厚方向の内方側に略矩形状に凹んだ形状である。すなわち、凹部26は、それぞれ二つずつ対向し、いずれも板厚方向に真直ぐに延びる合計四つの側壁面27a、27b、27c、27dと、凹部26の最も凹んだ部分となる底壁面28とから構成されている。ここで、凹部26の凹み量、すなわち、一方面23aと底壁面28との板厚方向の長さは、図2中の長さL7で示される。凹部26は、一次成形体21のおおよそ中央の領域、すなわち、回路基板13を一次成形体21に取り付けた際に、IC12が位置する領域に対応する領域に設けられる。
また、図1において図示はしないが、図2および図3に示すように、凹部26内には、樹脂製の封止材29が充填されている。この封止材29によって、IC12が収容された凹部26内の空間を封止する。樹脂製の封止材29の材質については、例えば、熱硬化性樹脂、具体的には、エポキシ樹脂が採用される。エポキシ樹脂については、熱硬化の温度が165℃程度であって比較的低温であり、また、硬化後の機械的強度も高いため、好適である。封止材29は、未硬化の状態の液状の樹脂を凹部26内に注入し、加熱による硬化により固めたものである。封止材29の硬化により、凹部26内に収容されたIC12は、封止材29に固着される。すなわち、封止材29により、IC12は、保持され、固定される。
二次成形体31についても、一次成形体21と同様に、板厚方向から見た場合に、略矩形状である。二次成形体31についても、所定の肉厚を有する。二次成形体31には、板厚方向に貫通する取り付け孔32a、32bが二つ設けられている。二つの取り付け孔32a、32bは、矩形状の二次成形体31において、対角線上に位置する角部に近い領域に設けられている。二次成形体31の板厚については、図2中の長さL8で示す一方面33aから他方面33bまでの長さで示される。また、図1における紙面表裏方向となる二次成形体31の縦方向の長さL9については、二次成形体31の側面34aと側面34bとの間の長さで示され、図1および図2における紙面左右方向となる二次成形体31の横方向の長さL10については、二次成形体31の側面34cと側面34dとの間の長さで示される。二次成形体31の縦方向の長さL9、および横方向の長さL10はそれぞれ、一次成形体21の縦方向の長さL5、および横方向の長さL6よりも長く構成されている。なお、二次成形体31の材質としても、例えば、PPS樹脂が採用される。
また、二次成形体31には、一方面34a側から内方側に凹む凹部35が設けられている。この二次成形体31に設けられる凹部35内に、回路基板13を取り付けた一次成形体21が収容される。すなわち、この凹部35内に収容された一次成形体21は、二次成形体31に覆われた構成となる。なお、一次成形体21のうち、下側の他方面23bについては、外部、具体的には、積層方向の下側に露出した構成である。図2および図3に示す断面において、二次成形体31は、開口を下方側とした略コの字状である。この二次成形体31については、後述する通り、射出成形にて形成される。二次成形体31は、回路基板13および一次成形体21の外方側、具体的には、回路基板13の他方面14b、回路基板13の側面15a〜15d、一次成形体21の側面24a〜24d、および一次成形体21の一方面23aのうちの回路基板13の一方面14aに覆われていない領域を、ほぼすき間なく覆うように形成されている。
ここで、一次成形体21には、凹部26を構成する壁面のうちの少なくとも一部から連なるようにして、一次成形体21の一方面23aから板厚方向の内方側に凹む樹脂逃げ部36a、36b、36c、36dが設けられている。図4は、図1に示すこの発明の一実施形態に係るRFタグ11に含まれる一次成形体21のうち、凹部26を含む領域を拡大して示す概略断面図であり、図3中のIVで示す部分の拡大図である。図5は、この発明の一実施形態に係るRFタグ11に含まれる一次成形体21のうち、凹部26を含む領域を拡大して板厚方向の上側、すなわち、図1〜図3に示す矢印A1と逆の方向から見た図である。
図1〜図5を参照して、樹脂逃げ部36a、36b、36c、36dは、合計四つ設けられている。四つの樹脂逃げ部36a〜36dは、矩形状に凹む凹部26の四つの角部にそれぞれ設けられている。一つの樹脂逃げ部36aについて説明すると、樹脂逃げ部36aは、凹部26を構成する側壁面27aおよび側壁面27cを構成する角部のうちの上側の領域、すなわち、一方面23a側の領域から凹部26の外方側に延びるスリット状である。スリット状の樹脂逃げ部36aは、凹部26の外方側に向かって真直ぐ延びるように設けられている。
また、樹脂逃げ部36aを構成し、回路基板13の一方面14aに対向する壁面である底壁面37aは、凹部26を構成する側壁面27aおよび側壁面27c側から一次成形体21の一方面23aに向かって近づくようにテーパ状に設けられている。すなわち、スリット状の樹脂逃げ部36aを構成する底壁面37aについて、凹部26側の凹み量が多く、そして、外方側に向かって徐々に凹み量が少なくなるように設けられている。樹脂逃げ部36aについては、凹部26側が最も深く、凹部26から遠ざかるにつれ、浅くなっていくように構成されている。
ここで、図3および図4に示す断面、すなわち、RFタグ11を板厚方向に沿う平面で切断した場合の断面において、一次成形体21の一方面23aを構成する線38aと樹脂逃げ部36aを構成する底壁面37aを構成する線39aとのなす角度のうち図4中の角度B1で示す鋭角の方の角度は、5度以上45度以下であるよう構成されている。具体的には、この場合、角度B1は、30度である。
なお、他の樹脂逃げ部36b、36c、36dの構成については、設けられる位置がそれぞれ、凹部26を構成する側壁面27bおよび側壁面27cを構成する角部のうちの上側の領域、凹部26を構成する側壁面27bおよび側壁面27dを構成する角部のうちの上側の領域、凹部26を構成する側壁面27aおよび側壁面27dを構成する角部のうちの上側の領域であり、それぞれ樹脂逃げ部36aと同様の構成であるため、それらの説明を省略する。
このようにして、この発明の一実施形態に係るRFタグ11は構成されている。また、この発明の一実施形態に係るRFタグ用一次成形体21は、板厚方向の一方面23aにIC12が実装される回路基板13を備えるRFタグ11に備えられ、板状であって、回路基板13に実装されたIC12を収容可能に板厚方向の内方側に凹む凹部26が設けられており、凹部26にIC12が収容され、回路基板13の一方面14aに板厚方向の一方面23aを対向させるようにして回路基板13が配置される。RFタグ用一次成形体21は、凹部26を構成する側壁面27a〜27dのうちの少なくとも一部から連なるようにして、一次成形体21の一方面23aから板厚方向の内方側に凹む樹脂逃げ部36a〜36dが設けられている。
次に、このような構成のRFタグ11を製造する際の製造方法について説明する。図6は、この発明の一実施形態に係るRFタグ11の製造方法の代表的な構成を示すフローチャートである。
図6を参照して、まず、IC12を実装した回路基板13を準備すると共に、取り付け孔22a、22b、凹部26、および樹脂逃げ部36a〜36dが形成された一次成形体21を準備する(図6(A))。一次成形体21の準備に際しては、取り付け孔22a、22b、凹部26、および樹脂逃げ部36a〜36dが形成されるような金型を用いて、射出成形や加熱圧縮成形を行ってもよいし、矩形状の所定の板厚および大きさを有する樹脂部材を形成し、この樹脂部材の所定の箇所を削って、取り付け孔22a、22b、凹部26、および樹脂逃げ部36a〜36dを形成し、これを一次成形体21としてもよい。
その後、凹部26内に後に封止材29となる未硬化の熱硬化性の液状の樹脂40を注入する(図6(B))。この場合、樹脂逃げ部36a〜36dが設けられた領域にまで樹脂40が注入されることになる。図7は、この場合、すなわち、樹脂40を注入した状態の凹部26を板厚方向の上側から見た図である。この樹脂40の注入量については、後にIC12を凹部26内に収容させた際に、凹部26および樹脂逃げ部36a〜36dがほぼ満杯になる量である。
次に、樹脂が硬化しないうちに、凹部26内にIC12を収容するようにして、一次成形体21に回路基板13を配置させる(図6(C))。すなわち、回路基板13の板厚方向の一方面14aと一次成形体21の板厚方向の一方面23aとを対向させ、その後、回路基板13と一次成形体21との板厚方向の距離を狭めて、最後には回路基板13の板厚方向の一方面14aと一次成形体21の板厚方向の一方面23aとを当接させて配置し、回路基板13を一次成形体21に取り付ける。図8は、樹脂40を注入後、IC12を凹部26内に収容させた状態の凹部26を板厚方向の上側から見た図である。図8を参照して、樹脂40に浸かったIC12の体積分、図8中の矢印A4で示す樹脂逃げ部36a〜36dの外方側に向かって樹脂40が浸入することになる。すなわち、この場合、樹脂逃げ部36a〜36dの外方側に向かって樹脂40が浸入し、回路基板13と一次成形体21との板厚方向の微小なすき間、具体的には、回路基板13の板厚方向の一方面14aと一次成形体21の板厚方向の一方面23aとの間の微小なすき間に、毛細管現象によって、樹脂40が這い上がることを抑制することができる。
その後、加熱等により熱硬化性の樹脂40を硬化させる。この樹脂40の硬化の終了により、一次成形体21に回路基板13を取り付ける工程が終了することとなる。
封止材29としての樹脂40が硬化した後、二次成形体31を形成するために、射出成型機(図示せず)内の所定の箇所に回路基板13を取り付けた一次成形体21をセットする(図6(D))。
その後、射出成形を行い、二次成形体31を形成する(図6(E))。具体的には、所定の圧力にて溶融された樹脂を金型内に投入し、射出成形を行う。このようにして、この発明の一実施形態に係るRFタグ11を製造する。
このような構成によると、一次成形体21には、凹部26を構成する壁面のうちの少なくとも一部から連なるようにして、一次成形体21の一方面23aから板厚方向の内方側に凹む樹脂逃げ部36a〜36dが設けられているため、封止剤29を構成する樹脂40を凹部26内に注入し、IC12を凹部26内に収容させ、樹脂40を固めて封止する際に、回路基板13と一次成形体21との間への樹脂40の這い上がりによる流出を抑制することができる。そうすると、凹部26内を封止材29によって空間を存在させないように適切に封止することができる。したがって、二次成形体31を形成する際に、回路基板13やIC12が損傷するおそれを大きく低減することができ、RFタグ11の生産性を向上させることができる。
また、この場合、樹脂逃げ部36a〜36dはテーパ状であるため、樹脂逃げ部36a〜36dに樹脂40が円滑に流れることになり、より効率的に回路基板13と一次成形体21との間のすき間への樹脂40の這い上がりを抑制することができる。
なお、上記の実施の形態においては、四つの角部に樹脂逃げ部を設けることとしたが、これに限らず、少なくとも四つの角部のうちの一つに樹脂逃げ部を設ける構成とすればよく、例えば、四つの角部のうちの三つに樹脂逃げ部を設けることとしてもよい。また、樹脂逃げ部を設ける箇所は、角部に限らず、例えば、板厚方向の上側から見た場合に、角部と角部との間の辺の部分から外方側に向かって延びるように樹脂逃げ部を設けることとしてもよい。
さらに、以下のような実施形態でもよい。図9は、この発明の他の実施形態に係るRFタグに含まれる一次成形体のうち、凹部を含む領域を拡大して示す概略断面図である。図10は、この発明の他の実施形態に係るRFタグに含まれる一次成形体のうち、凹部を含む領域を拡大して板厚方向の上側から見た図である。図9は、図4に相当し、図10は、図5に相当する。
図9および図10を参照して、この発明の他の実施形態に係るRFタグ41に備えられる一次成形体42には、矩形状に凹んだ凹部43が設けられている。凹部43を構成する四つの側壁面44a、44b、44c、44dから連なるようにして、一次成形体42の一方面45から板厚方向に凹む樹脂逃げ部46が設けられている。
樹脂逃げ部46は、凹部43の周囲を取り囲むように環状に設けられている。すなわち、樹脂逃げ部46は、凹部43の開口の全域に亘って設けられている。また、樹脂逃げ部46は、テーパ状に設けられている。樹脂逃げ部46のうち、一方面45と交わる部分の角部に相当する領域47a、47b、47c、47dについては、曲面で構成されている。
このような構成としても、上記したように回路基板を一次成形体に取り付ける際に、凹部43内に注入された樹脂の這い上がりを効率的に抑制して、凹部43を封止材によって空間を存在させないように適切に封止することができる。したがって、二次成形体を形成する際に、回路基板や回路部品が損傷するおそれを大きく低減することができ、RFタグの生産性を向上させることができる。
また、上記した図9および図10に示す実施形態の場合、以下の点で有利である。図11および図12は、凹部のうち、図9中のXIIの領域で示す一部を拡大して示す断面図である。図11は、図14および図15に示すRFタグの場合であり、図12は、図9および図10に示すRFタグの場合である。なお、図11および図12においては、平らな状態の回路基板113、13を点線により図示している。
まず、図11を参照して、図14および図15に示すRFタグ111の場合、凹部116を構成する側壁面120が設けられた領域においては、凹部116内に空間119が存在しているため、射出成形時において、図11中の矢印A3で示す方向の荷重を受ける部分と荷重を受けない部分との差が顕著となる。そして、回路基板113に段差が生じるような圧力を受けることとなり、この領域において、回路基板113が損傷する割合が高くなる。
一方、図12を参照して、図9および図10に示すRFタグ41の場合、封止材48が充填された凹部43を構成する側壁面44cが設けられた領域において、凹部43の外方側にテーパ状の樹脂逃げ部46が設けられているため、垂直方向、すなわち、板厚方向に延びる側壁面44cの図12中に示す始点49から、水平方向に延びる一次成形体42の一方面45に亘って、なだらかに連なる構成となる。そうすると、図12中の矢印A3で示す方向の荷重を受けた場合でも、なだらかに連なった広い領域で荷重を受けることができる。したがって、この領域において、回路基板13が損傷するおそれを大きく低減することができる。
なお、上記の実施の形態においては、樹脂逃げ部は、テーパ状に設けることとしたが、これに限らず、階段状に段差を有する構成としてもよいし、凹凸を有するよう構成してもよい。
また、上記の実施の形態においては、ICを一つ実装することとしたが、これに限らず、回路基板に二つ以上のICを実装することにしてもよい。この場合、ICが実装される領域において、対向する一次成形体の領域に、凹部および樹脂逃げ部を設けるとよい。
なお、上記の実施の形態においては、一次成形体を樹脂製としたが、RFタグが金属部材に取り付けられて用いられる場合には、一次成形体に磁性体、具体的には、例えば、フェライトを含有させる構成としてもよい。こうすることにより、外部との交信における交信性能の安定化を図ることができる。また、フェライトで構成されたフェライトシートを準備し、一次成形体と回路基板との間に介在させるようにしてもよい。
また、上記の実施の形態においては、パターンコイルが形成される面は、ICと反対側の面とすることとしたが、必要に応じて、コイル面をICと同じ面に形成することにしてもよい。ここで、一次成形体にフェライトを含有させた場合、パターンコイルとフェライトとを含有した一次成形体とを回路基板の板厚分離すことができるため、一次成形体にフェライトを含有させる場合、パターンコイルが形成される面は、ICと反対側の面とするのがよい。また、交信アンテナとの距離を短くする観点からは、パターンコイルが形成される側の二次成形体の板厚方向の厚みは、できるだけ薄くすることが好ましい。
なお、上記の実施の形態において、樹脂から構成される封止材としてエポキシ樹脂を用いることとしたが、これに限らず、他の熱硬化性樹脂や、要求に応じて熱可塑性樹脂を用いることとしてもよい。
また、上記の実施の形態においては、ICを収容する凹部は、板厚方向に真直ぐに凹むこととしたが、これに限らず、板厚方向に斜め方向に凹む構成としてもよく、また、底壁面が曲面や球面の一部を構成するものとしてもよい。
なお、上記の実施の形態においては、一次成形体、二次成形体として、板厚方向から見た場合に、略矩形状となるよう構成することとしたが、これに限らず、他の形状、例えば多角形状や略円状、略楕円状としてもよい。また、平板状でなくともよく、例えば、図2に示す断面において、一次成形体や二次成形体の形状が断面略H字状となる構成としてもよい。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。