JP6079068B2 - アモルファスバネの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アモルファスバネの製造方法に関する。
従来、時計用バネは、時計等の駆動機構の動力源を構成するゼンマイや、調速機を構成するテンプを付勢するヒゲゼンマイ、水晶発振式時計の水晶振動子を付勢状態で固定するバネ等に使用されている。従来、上記用途のバネ材料としては、炭素鋼、ステンレス、コバルト合金、銅合金等が採用されていた。
一方、時計等の精密機械の高精度化、安定動作化を図るため、バネ材料として、アモルファス金属材料が検討されている(特許文献1,2参照)。
特許第3498315号公報 特許第3982290号公報
しかしながら、アモルファス金属材料は、強度が強く、硬いため、常温では機械加工が困難であり、ドリルやプレス等で正確かつ確実に孔開け加工をすることが困難であった。
そのため、特許文献1および2に記載のゼンマイを製造するためには、ダイヤモンドを用いた工具など、特殊な工具を用いて孔開け加工をする必要があった。
そこで本発明は、アモルファス金属材料からなるアモルファスバネに、簡便かつ正確に孔開け加工するアモルファスバネの製造方法を提供する。

本発明のアモルファスバネの製造方法は、アモルファス金属材料からなる帯状の板材からなり、孔を有するアモルファスバネの製造方法であって、ヒートシンクであって、前記孔と同じ平面形状および大きさの開口部を有する溝を備えた支持部材に、前記板材を前記開口部に対向させて載置し、前記支持部材の前記開口部に対応する位置に窓を備えた固定部材を前記板材に載置し、前記窓からレーザー光を照射して、前記板材の前記開口部に対応する領域に、前記板材を結晶化させた結晶化部を形成し、前記結晶化部を押圧することで、前記板材に前記開口部と同じ平面形状および大きさを有する孔を形成することを特徴とする。
この発明によれば、支持部材がヒートシンクであるので、板材の支持部材に接触する領域が冷却される。このとき、板材の支持部材の開口部に対応する領域は、支持部材が接触していないため、冷却されない。したがって、固定部材の窓からレーザー光を照射された場合、加熱されて高温となり、結晶化温度を越えると、当該領域のみが結晶化して、結晶化部が形成される。結晶化したアモルファス金属材料は、脆いため、パンチ等、公知の機械を用いて押圧することにより、容易に孔を形成することができる。
そして、本発明では、特に、固定部材が板材に形成される孔と同じ平面形状および大きさの開口部を有する溝を備えているので、板材にレーザー光を照射した際、板材の開口部に対応する領域以外への熱伝導が支持部材だけの場合に比べて、より一層抑えられ、板材に開口部に対応する領域より大きな結晶化部が形成されるなど、開口部に対応する領域以外に結晶化部が形成されてしまうことを防ぐことができる。したがって、結晶化部を開口部と同じ平面形状および大きさとすることができ、この結晶化部を押圧することで、開口部と同じ平面形状および大きさを有する孔を簡便かつ正確に形成できる。
また、本発明においては、支持部材の開口部に対応する位置に窓を備えた固定部材を板材に載置するので、孔の形成中に板材が支持部材に対して位置ずれを起こすことを防ぐことができる。したがって、板材に正確に孔を形成することができる。
本発明のアモルファスバネの製造方法において、前記固定部材は、ヒートシンクであることが好ましい。
この発明によれば、固定部材がヒートシンクであるので、支持部材および固定部材とで板材の両面から板材を冷却することができる。したがって、板材にレーザー光が照射された際に板材の開口部に対応する領域外への熱伝導を、支持部材のみをヒートシンクとした場合に比べて、より一層効果的に抑制することができる。
本発明のアモルファスバネは、前記アモルファスバネの製造方法により得られたことを特徴とする。
この発明によれば、アモルファスバネが前記アモルファスバネの製造方法により製造されるので、簡便かつ正確に孔開けされたアモルファスバネが提供される。上記製造方法により製造されたアモルファスバネは、孔開けが正確であるので、製品のばらつきが少なく、孔開けが簡便であるので、製造コストを抑えることができる。
そして、本発明の時計は、前記アモルファスバネを用いたことを特徴とする。
この発明によれば、時計が前記アモルファスバネを用いているので、製品のばらつきが少なく、コストを抑えて製造できる。
本発明の第一実施形態に係る時計に用いられるアモルファスバネを利用した駆動機構を表す平面図である。 図1における駆動機構の断面図である。 図1における駆動機構の他の断面図である。 (A)図1における香箱内に収納されたアモルファスバネを表す平面図である。(B)図1における香箱内に収納されたアモルファスバネを表す平面図である。 図1におけるアモルファスバネの自由展開形状を表す平面図である。 図1におけるアモルファスバネの製造方法に用いる支持部材および固定部材を示す平面図である。 図1におけるアモルファスバネの製造方法に用いる支持部材および固定部材を示す断面図である。 図1におけるアモルファスバネを構成するアモルファス金属材料の温度と結晶化の関係を示した図である。 図1におけるアモルファスバネの厚さ方向断面図である。 本発明の第二実施形態に係る駆動機構を表す部分平面図である。 図10における駆動機構を表す部分平面図である。 本発明の第三実施形態に係るアモルファスバネの構造を表す平面図である。 図13におけるアモルファスバネの構造を表す断面図である。 本発明の第四実施形態に係る時計の一部を表す側面図である。
<第一実施形態>
以下に本発明の第一実施形態を図面に基づいて説明する。
第一実施形態は、本発明に係るアモルファスバネをアモルファスゼンマイ31として用いた電子制御式機械時計1に係るものである。
なお、本実施形態において、アモルファスバネを構成するアモルファス金属材料としては、例えば、Ni−Si−B系、Ni−Si−Cr系、Ni−B−Cr系、Co−Fe−Cr系等のアモルファス金属材料を用いることができるが、本実施形態においては、アモルファス金属材料として、金属ガラスを用いる。
図1は、アモルファスゼンマイ31を利用した電子制御式機械時計1の駆動機構1Aを示す平面図であり、図2および図3はその断面図である。
電子制御式機械時計1の駆動機構1Aは、アモルファスゼンマイ31、香箱歯車32、香箱真33および香箱蓋34からなる香箱30を備えている。アモルファスゼンマイ31は、外端が香箱歯車32、内端が香箱真33に固定される。香箱真33は、地板2と輪列受3に支持され、角穴車4と一体で回転するように角穴ネジ5により固定されている。
角穴車4は、時計方向には回転するが反時計方向には回転しないように、コハゼ6と噛み合っている。なお、角穴車4を時計方向に回転しアモルファスゼンマイ31を巻く方法は、機械時計の自動巻または手巻機構と同様であるため、説明を省略する。香箱歯車32の回転は、7倍に増速されて二番車7へ、順次6.4倍増速されて三番車8へ、9.375倍増速されて四番車9へ、3倍増速されて五番車10へ、10倍増速されて六番車11へ、10倍増速されてローター12へと、合計126,000倍の増速をし、これらの歯車が輪列を構成している。
二番車7には筒かな7aが、筒かな7aには分針13が、四番車9には秒針14がそれぞれ固定されている。したがって、二番車7を1rphで、四番車9を1rpmで回転させるためには、ローター12は5rpsで回転するように制御すればよい。このときの香箱歯車1bは、1/7rphとなる。この電子制御式機械時計1は、ローター12、ステーター15、コイルブロック16から構成される発電機20を備えている。ローター12は、ローター磁石12a、ローターかな12b、ローター慣性円板12cから構成される。ローター慣性円板12cは、香箱30からの駆動トルク変動に対しローター12の回転数変動を少なくするためのものである。ステーター15は、ステーター体15aに4万ターンのステーターコイル15bを巻線したものである。
コイルブロック16は、磁心16aに11万ターンのコイル16bを巻線したものである。ここで、ステーター体15aと磁心16aはPCパーマロイ等で構成されている。また、ステーターコイル15bとコイル16bは、各々の発電電圧を加えた出力電圧ができるように直列に接続されている。このような発電機20によって発電された交流出力は、図1〜図3では図示を略したが、駆動機構1Aの調速、脱進等の制御用に組み込まれる制御回路に供給される。
次に、上記した香箱30内部構造について図4に基づいて説明する。
図4(A)には、前述したアモルファスゼンマイ31が香箱30内で巻締められた状態が示され、図4(B)には、アモルファスゼンマイ31が香箱30内で巻戻った後の状態が示されている。
なお、このアモルファスゼンマイ31の形状寸法は、幅b=1.05mm、厚さt=0.12mm、全長L=550mmであり、内端311に半径0.6mmの円弧を有する。そして、アモルファスゼンマイ31は、内端311に図4には図示しない孔316を有し、上記したように、その内端311の孔316が香箱真33の図示しない係合部に係合され、香箱真33に巻き付けられている。そして、アモルファスゼンマイ31の外端312は、図示しないスリッピングアタッチメントにより香箱30の内側面に圧接されている。
孔316は、本実施形態においては、アモルファスゼンマイ31の長さ方向に沿った長さ=1mm、幅=0.4mmの長方形状である。このように、長方形状の孔316とすることで、アモルファスゼンマイ31が巻き締められた際の遊びが設けられ、アモルファスゼンマイ31および香箱真33に急激に強い力が加わることを抑えることができる。
図4(B)の状態において、外力によって香箱30を香箱真33に対して回転させると、アモルファスゼンマイ31が巻締まる。巻締め後、香箱30の拘束状態を解放すると、アモルファスゼンマイ31の巻戻りとともに、香箱30が回転する。そして、香箱30の外周に形成される香箱歯車32によって上記した二番車7等の輪列を回転させて分針13、秒針14等が動作する。
前記香箱30から取り外したアモルファスゼンマイ31は、図5に示すように、香箱真33に対する巻取り方向とは、反対側に癖付けされ、平面略S字状の自由展開形状を有している。そして、湾曲方向が変化する変曲点315は、内端311の近傍に形成され、変曲点315から内端311までは、アモルファスゼンマイ31を香箱真33に固定するために利用される。
<アモルファスゼンマイの製造用治具>
次に、上記アモルファスゼンマイ31を製造するに際して用いる治具について説明する。本実施形態においては、治具として、図6〜7に示すヒートシンク100を用いる。
ヒートシンク100は、板材313を載置する支持部材110と、支持部材110に板材313を挟んで対向する固定部材120と、を備える。
支持部材110は、板材313の孔316の平面形状よりも大きな支持面111を有する直方体であり、支持面111に孔316と同じ形状および大きさの開口部114を有する溝である貫通孔112を備える。貫通孔112は、支持部材110の支持面111から支持面111と対向する底面113に貫通して設けられている。そして、支持部材110は、板材313を載置した際、板材313に接触する開口部114以外の支持面111において、板材313を冷却する。
固定部材120は、支持部材110に載置可能な直方体であり、支持部材110の支持面111に載置した板材313を支持部材110に固定するとともに、板材313を支持面111と反対側の面から冷却する。
固定部材120は、支持部材110の支持面111に対向する対向面121と対向面121の反対側の面である上面122と、上面122から対向面121に貫通する窓123と、を備える。窓123は、支持部材110に載置された板材313にレーザー光を照射するためのものであり、支持部材110の貫通孔112に対応する位置に設けられ、その平面形状は貫通孔112の開口部114よりもやや大きい形状とされている。
支持部材110および固定部材120は、熱伝導性の観点から、いずれも銅製であることが好ましい。支持部材110および固定部材120は、大気による空冷により冷却されるが、その他の冷却方法により、冷却されていてもよい。
<アモルファスゼンマイの製造方法>
アモルファスゼンマイ31を製造する方法としては、まず、金属ガラスからなる板材313を駆動機構1Aの動力源として必要な幅、長さ寸法に加工する。次いで、上記ヒートシンク100を用いて、板材313の一端側に香箱真33の図示しない係合部に係合させる孔316を設ける。
上記ヒートシンク100を用いて、板材313に孔316を設ける方法としては、まず、板材313において孔316を形成する部分を支持部材110の開口部114に合わせて位置決めし、支持部材110に載置する。ついで、固定部材120の窓123が板材313を介して貫通孔112に対向するよう、固定部材120を板材313の上に載置する。これにより、板材313がヒートシンク100に固定される。
そして、窓123から板材313にYAGレーザー光をパルス状に数秒間照射する。
板材313は、アモルファス金属材料からなる。図8に示すように、YAGレーザー光の照射により、アモルファス金属は、加熱され、結晶化温度Txに至る。そして、結晶化温度Tx越えて高温になると、結晶化する。結晶化したアモルファス金属は、常温におけるアモルファス金属に比べて、脆化するので、この脆化した部分に孔を設けるなどの加工が容易になる。
したがって、板材313にYAGレーザー光を照射すると、図6〜7に示すように、板材313のうち、YAGレーザー光が照射されて、結晶化温度Txを越えた部分が、結晶化し、結晶化部316Aが形成される。そして、結晶化部316Aをパンチ等の公知の機械で押圧することにより、弱い力で簡単に孔316を形成することができる。この際、板材313は、支持部材110および固定部材120により、孔316の周辺部が冷却されているため、周辺部は結晶化温度Txを越えることはなく、結晶化しない。特に、支持部材110では、貫通孔112の開口部114が孔316と同じ平面形状および大きさに設けられているので、板材313は、開口部114に対応する領域だけが高温となって、結晶化温度Txを越え、結晶化が可能となる。したがって、板材313の開口部114に対応する領域のみが結晶化するので、孔316を正確かつ確実に形成できる。すなわち、貫通孔112の開口部114を所望の孔316の平面形状および大きさに設ければ、正確かつ確実に所望の形状および大きさを有する孔316を形成できる。
そして、上記孔316を形成した板材313を、孔316が形成された内端311側から丸棒等に巻き付けて癖付けを行って、アモルファスゼンマイ31を製造する。
なお、板材313の厚さ寸法が、アモルファスゼンマイ31に必要な厚さt(0.12mm)でない場合は、図9に示すように複数の板材313をエポキシ系接着剤314を用いて互いに貼り合わせ、アモルファスゼンマイ31に必要な厚さt(0.1mm)を確保する。そして、最後に、エポキシ系接着剤314が硬化する前に、丸棒等にアモルファスゼンマイ31を巻き付けて癖付けを行い、エポキシ系接着剤314を硬化させればよい。
このような第一実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)本実施形態のアモルファスゼンマイ31の製造方法では、アモルファス金属材料からなる帯状の板材313をヒートシンク100の支持部材110に載置するので、板材313の支持部材110の支持面111に接触する領域が冷却され、板材313の支持部材110の開口部114に対応する領域は、冷却されない。したがって、この板材313にYAGレーザー光を照射すれば、冷却されていない板材313の貫通孔112の開口部114に対応する領域は、開口部114と同じ平面形状および大きさを有する結晶化部316Aとなる。そして、この結晶化部316Aを押圧すれば、簡便かつ正確に、開口部114と同じ平面形状および大きさを有する孔316を形成できる。
(2)また、固定部材120もヒートシンクであり、板材313を支持部材110と固定部材120とで挟んで、板材313の両面から冷却するので、板材313において、板材313の開口部114に対応する領域以外への熱伝導が支持部材110だけの場合に比べて、一層抑えられる。したがって、板材313にYAGレーザー光を照射した際、開口部114に対応する領域以外に結晶化部316Aが形成されてしまうことを防ぐことができる。
(3)駆動機構1Aの動力源としてアモルファスゼンマイ31が採用されているので、駆動機構1Aの小型化を維持しつつ、当該駆動機構1Aを長時間動作させることができる。
(4)変曲点315の位置を内端311の近傍に設定することができるので、癖付けをアモルファスゼンマイ31のほぼ全長に亘って行うことができ、アモルファスゼンマイ31が蓄積する機械エネルギを増大させて駆動機構1Aの動作の長時間化を一層図ることができる。
(5)さらに、孔316を長方形状に設けたので、アモルファスゼンマイ31が巻き締められた際の遊びが設けられ、アモルファスゼンマイ31および香箱真33に急激に強い力が加わることを抑えることができる。
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係るアモルファスゼンマイ31を利用した駆動機構1Bについて説明する。前述した第一実施形態に係る駆動機構1Aでは、駆動機構1Aを動作させる動力源は、香箱30に収納された1つのアモルファスゼンマイ31のみであった。これに対して、第二実施形態に係る駆動機構1Bは、図10に示すように、香箱30を2つ備え、各々の内部に収納されたアモルファスゼンマイ31が駆動機構1Bの動力源とされている点が相違する。なお、第二実施形態において、アモルファスゼンマイ31の製造方法は、第一実施形態におけるアモルファスゼンマイ31の製造方法と同じである。
駆動機構1Bにおいて、二番車7の基部歯車71には、2つの香箱30の外周に形成された香箱歯車32(図10では図示略)が同時に噛合している。
2つの香箱30は、それぞれの香箱真33を中心として同一方向に回動し、二番車7には、各々のアモルファスゼンマイ31の出力トルクTを加えたトルク2Tが作用している。
ここで、二番車7に噛合する香箱歯車32は、図11に示すように、左側の香箱歯車32と右側の香箱歯車32とが噛合する位相が異なっていて、左側の香箱歯車32が二番車7とB1点で当接する時、右側の香箱歯車32はB2点で二番車7から離間しようとしている。
なお、このような位相の相違は、香箱真33の相対位置によって決まり、図10から判るように、二番車7の回転中心と香箱真33とがなす角βに応じて噛合する位相を調整することができる。
このような第二実施形態によれば、上記した第一実施形態の効果に加えて、以下のような効果がある。
(6)アモルファスゼンマイ31が収納された2つの香箱30を同時に輪列を構成する二番車7に同時に噛合させているので、香箱30各々の出力トルクTを重ね合わせて二番車7を回転させることができ、駆動機構1Bを高い出力トルク2Tで動作させることができる。
(7)また、二番車7に噛合する香箱歯車32の位相が互いにずれているので、一方、例えば、図11において、左側の香箱30と二番車7との噛合状態によって発生するトルク変動を、他の右側の香箱30との噛合状態によりトルクを和することで、伝達トルクの変動を抑制して駆動機構1Bをスムースに動作させることができる。
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態は、本発明に係るアモルファスバネを、機械式時計の調速機を構成するテンプを付勢するヒゲゼンマイ470として利用したものである。すなわち、本例における調速機を機構するテンプヒゲ系400は、図12および図13に示すように、テン真410、テン輪420、振り座430、ヒゲ玉440、ヒゲ持450、緩急針460を含んで構成される。テン真410には、テン輪420、振り座430、ヒゲ玉440が固定され、これらが一体で回転するように構成されている。ヒゲゼンマイ470は、アモルファス合金から構成される非磁性体であり、その内周端がヒゲ玉440に固定され、外周端は、ヒゲ持450に固定されている。緩急針460は、ヒゲ棒461およびヒゲ受462を含んで構成され、ヒゲゼンマイ470の最外周部分は、ヒゲ棒461およびヒゲ受462の間を通過している。
そして、このようなテンプヒゲ系400では、テン輪420がテン真410を軸として回転すると、これに伴いヒゲ玉440も回転するので、テン輪420には、ヒゲゼンマイ470の付勢力が作用し、この付勢力とテン輪420の慣性力とがつり合うと、テン輪420の回転が停止し、ヒゲゼンマイ470の付勢力により、テン輪420は逆方向に回転する。すなわち、テン輪420は、テン真410を軸として揺動を繰り返す。このテン輪420の揺動周期Sは、緩急針460のヒゲ棒461、ヒゲ受462の位置を微調整することにより、変化させることができる。また、この揺動周期Sは、テン輪420等の回転部分の慣性モーメントJの他、ヒゲゼンマイ470の材料特性によっても変化し、ヒゲゼンマイ470の幅をb、厚さをt、ゼンマイ長さをL、ヒゲゼンマイ470のヤング率をEとすると、以下の(1)式によって表される。
S=2π(12JL/Ebt1/2…(1)
なお、ヒゲゼンマイ470には、通常孔を設ける必要はないが、孔を設ける場合は、前記第一実施形態において孔316を設けた方法と同様の方法を用いることができる。
このような第三実施形態によれば、以下のような効果がある。
(8)ヒゲゼンマイ470がアモルファス金属により構成されているので、温度変化に伴うヤング率Eの変化が少なく、(1)式で表されるテンプヒゲ系400の揺動周期Sの変化も少なくなり、テンプヒゲ系400を含む調速機を有する機械式時計の高精度化を図ることができる。
(9)また、ヒゲゼンマイ470が非磁性体のアモルファス金属から構成されているので、耐磁性が向上し、ヒゲゼンマイ470が外部磁界等に引っ張られても、ゼンマイの特性が低下することもない。
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態は、本発明に係るアモルファスバネを、水晶発振式時計の水晶振動子500を付勢状態で固定するバネとして利用したものである。すなわち、図14に示すように、水晶振動子500は、真空カプセル501と、この真空カプセル501の内部に収納される音叉型の振動子本体502とを含んで構成され、真空カプセル501の端部に設けられる端子503が回路基板510と電気的に接続されて発振回路が構成される。このような水晶振動子500は、地板520上に配置され、ネジ530と、アモルファス金属からなる固定バネ540によって、地板520に押さえつけられる方向に付勢された状態で固定されている。
なお、図14に示すように固定バネ540にネジ530が挿通される孔514を設ける場合、前記第一実施形態において孔316を設けた方法と同様の方法を用いることができる。
このような第四実施形態によれば、以下のような効果がある。
(10)、アモルファス金属から構成される固定バネ540は、ヤング率Eが小さいので、固定バネ540のたわみ量が変化しても、その際の付勢力の変動が、従来材料のバネに比べて少なくなるので、水晶振動子500の周期のずれを少なくすることができ、水晶発振式時計の高精度化を図ることができる。
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記第一実施形態では、アモルファスゼンマイ31は、電子制御式機械時計1の駆動機構1Aの動力源として用いられていたが、これに限らず、制御系が調速機、脱進機によって構成される通常の機械式時計の駆動機構にアモルファスゼンマイ31を用いてもよい。
さらに、電子制御式機械時計1や機械式時計に限らず、オルゴール等他の駆動機構の動力源としてアモルファスゼンマイ31を用いても良い。
前記第一実施形態では、支持部材110に支持面111から底面113に貫通する貫通孔112を設けたが、開口部114が形成されるものであれば、貫通していなくてもよく、支持面111に開口部114を有する凹溝でもよい。
さらに、前記第一実施形態では、支持部材110および固定部材120をいずれも冷却可能なヒートシンク100で構成したが、支持部材110のみが冷却可能であってもよい。
さらに、前記第一実施形態では、固定部材120の窓123から板材313にレーザー光を照射して、孔316を形成したが、支持部材110の貫通孔112側からも板材313にレーザー光を照射することができる。この場合、板材313の両面に同時にレーザー光を照射できる。
板材313へのレーザー光の両面からの照射およびレーザー光のパワーについては、板材313の板厚、加工時間などに応じて、調整すればよい。
また、前記第一実施形態では、アモルファスゼンマイ31の内端311に孔316を設けたが、外端312にも孔を設け、香箱30の内側面に、この孔に対応する突起を設けて、外端312を香箱30の内側面にスリッピングアタッチメントで圧接する代わりに、外端312の孔を香箱30の内側面の突起に係合して固定してもよい。
さらに、アモルファスゼンマイ31の形状寸法は、上記したものに限らず、香箱30の大きさおよび駆動機構1Aの設計等により、適宜変更可能である。孔316の形状寸法も、上記したものに限らない。例えば、板材313の端部において開口した溝状の孔でもよい。
1…電子制御式機械時計(時計)、31…アモルファスゼンマイ(アモルファスバネ)、110…支持部材(ヒートシンク)、112…貫通孔(溝)、114…開口部、120…固定部材(ヒートシンク)、123…窓、313…板材、316,541…孔、316A…結晶化部

Claims (2)

  1. アモルファス金属材料からなる帯状の板材からなり、孔を有するアモルファスバネの製
    造方法であって、
    ヒートシンクであって、前記孔と同じ平面形状および大きさの開口部を有する溝を備え
    た支持部材に、前記板材を載置し、
    窓を備えた固定部材を前記板材に載置し、
    前記窓からレーザー光を照射して、前記板材に、前記板材
    を結晶化させた結晶化部を形成し、
    前記結晶化部を押圧することで、前記板材に前記開口部と同じ平面形状および大きさを
    有する孔を形成することを特徴とするアモルファスバネの製造方法。
  2. 請求項1に記載のアモルファスバネの製造方法であって、
    前記固定部材は、ヒートシンクであることを特徴とするアモルファスバネの製造方法。
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