JP6024306B2 - 時計用バネの製造方法、時計用バネ、及び時計 - Google Patents

時計用バネの製造方法、時計用バネ、及び時計 Download PDF

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Description

本発明は、時計用バネの製造方法、時計用バネ、及び時計に関する。
時計用バネは、時計等の駆動機構の動力源を構成するゼンマイや、調速機を構成するテンプを付勢するヒゲゼンマイ、水晶発振式時計の水晶振動子を付勢状態で固定するバネ等に使用されている。従来、上記用途のバネ材料としては、炭素鋼、ステンレス、コバルト合金、銅合金等が採用されていた。
一方、時計等の精密機械の高精度化、安定動作化を図るため、バネ材料として、アモルファス金属が検討されている(特許文献1,2参照)。
上記アモルファス金属製の時計用バネは、単ロール液体急冷法等の鋳造法により、容易に製造することができる。
特許第3498315号公報 特許第3982290号公報
しかし、アモルファス金属製の時計用バネは、上述のように鋳造の手法により製造すると、表面や内部に空気が残存した状態で固化されることがあるため、ピンホールが入り易い。また、単ロール液体急冷法による製造では、表面粗さも大きいものであった。
そして、ゼンマイのような強い曲げ応力のかかる用途に使用した場合、ピンホールや表面粗さの大きさ等によって曲げ疲労特性が低下する問題を有していた。
また、アモルファス金属の中でもガラス転移点が明確に観察される金属ガラスが開発され、金属ガラスをバネ材料に使用することが検討されているが、金属ガラスについても上記アモルファス金属と同様の課題を有していた。
本発明の目的は、曲げ疲労特性を大幅に向上することができる、時計用バネの製造方法、時計用バネ、及び時計を提供することにある。
本発明の時計用バネの製造方法は、金属ガラスで構成された金属ガラス素材を鋳造により製造する工程と、前記金属ガラス素材を加熱して超塑性状態とする工程と、超塑性状態の前記金属ガラス素材を圧延加工して板材を製造する工程と、を含むことを特徴とする。
金属ガラスとは、金属元素を主成分とする非結晶性の合金で、ガラス転移点が明確に観察されるアモルファス金属である。なお、金属ガラスに分類されないアモルファス金属は、加熱時にガラス転移点に至る前に結晶化が進行する。
また、超塑性状態とは、ある種の材料を融点よりもかなり低い温度で力を加えると、基本的特性を損なうことなく、非常に大きな伸びを生じる現象を示す状態である。
本発明によれば、鋳造により製造された金属ガラスで構成された金属ガラス素材を用い、これを加熱して超塑性状態とし、続いて一対のローラー間に金属ガラス素材を通過させるなどの圧延によって所望の厚さを有する板材に加工する。これにより、金属ガラス素材にピンホールが存在していても、超塑性状態での圧延により、金属ガラス素材表面は平坦にならされるため、ピンホールを低減することができる。そのため、ピンホールによる応力集中に起因する曲げ疲労特性の低下を解消でき、加工された板材を含む構成の時計用バネの曲げ疲労特性を大幅に向上することができる。
また、超塑性状態で圧延するので、従来の単ロール液体急冷法などで製造される金属ガラス素材に比べ、板材の表面粗さを低減させることができる。また、板材の厚さは、圧延時のローラー間寸法等で精度良く設定できるので、厚み精度を向上させることができる。
本発明の時計用バネの製造方法では、前記圧延加工は、回転する一対のローラーの間に超塑性状態の前記金属ガラス素材を通過させることにより行われ、前記一対のローラーのうち、一方のローラーの外周面の所定位置には凸部が設けられ、他方のローラーの外周面の前記凸部と対向する位置には前記凸部と嵌合する凹部が設けられ、前記回転する一対のローラーの間を通過させることにより、超塑性状態の前記金属ガラス素材を圧延するとともに、超塑性状態の前記金属ガラス素材を前記凸部と前記凹部とで挟み込むことが好ましい。
本発明によれば、圧延加工時は金属ガラスが超塑性状態であるため、一対のローラーの間に超塑性状態の金属ガラス素材を通過させる際に、一対のローラーにそれぞれ設けられた凸部と凹部とで挟み込むので、圧延して得られる板材に対して、挟み込む凸部及び凹部に応じた形状の加工を容易に行うことができる。加工としては、例えば、香箱真引っ掛け穴やスリッピングアタッチメント取り付け用の穴の形成、板材の切断などが挙げられる。
本発明の時計用バネの製造方法では、前記圧延加工は、回転する一対のローラーの間に超塑性状態の前記金属ガラス素材を通過させることにより行われ、前記一対のローラーの相対的回転速度を制御することにより、前記圧延加工による前記板材の加工と同時に、前記板材への癖付けが施されることが好ましい。
本発明によれば、圧延加工時は金属ガラスが超塑性状態であるため、一対のローラーの相対的回転速度を制御することで、得られる板材を湾曲させた状態に癖付けをすることができる。
これにより、後工程で別途癖付けのための工程を設ける必要がなくなる、或いは、後工程での癖付け作業が軽減されるため、製造コストを低減することができる。
本発明の時計用バネの製造方法では、前記金属ガラス素材は、単ロール液体急冷法により製造された板状材であることが好ましい。
本発明によれば、金属ガラス素材として板状材を用いることで、板状材は上面及び下面が平坦であるため、ローラーによって板材に圧延する際に加工し易く、また、得られる板材表面に高い平坦度を付与することができる。板状材は単ロール液体急冷法により容易に製造することができる。
本発明の時計用バネの製造方法では、前記金属ガラス素材は、回転液中紡糸法により製造された線状材であることが好ましい。
本発明によれば、金属ガラス素材として線状材を用いることで、線状材は、その断面が円形であるため、断面積を高精度に制御することができる。そして、断面積を高精度に制御した線状材を用いるため、一対のローラーによって板材に圧延する際に、所望の幅寸法の板材を精度良く製造し易い。また、線状材は回転液中紡糸法により容易に製造することができる。
本発明の時計用バネは、上記時計用バネの製造方法により得られたことを特徴とする。
本発明によれば、金属ガラス素材にピンホールが存在している場合でも、超塑性状態での圧延により、ピンホールが低減され、また、金属ガラス素材の製造方法に起因する表面粗さも低減されるため、曲げ疲労特性を大幅に向上させた時計用バネを提供できる。時計用バネとしては、ゼンマイやヒゲゼンマイ、固定用バネ等が例示される。
本発明の時計は、上記時計用バネを用いたことを特徴とする。
本発明によれば、曲げ疲労特性を大幅に向上させた時計用バネを用いるため、疲労寿命が長い耐久性に優れた時計を提供できる。
本発明の第一実施形態に係る金属ガラス板材から構成されるゼンマイを利用した電子制御式機械時計の駆動機構を示す平面図である。 図1の駆動機構の断面図である。 図1の駆動機構の他の断面図である。 図1の香箱内に収納されたゼンマイを示す平面図であり、(A)は、ゼンマイが巻締められた状態であり、(B)は、ゼンマイが巻戻った後の状態である。 金属ガラス板材を複数枚積層一体化して形成された金属ガラスゼンマイの厚さ方向断面図である。 金属ガラスゼンマイの自由展開形状を示す平面図である。 板状材の製造に用いられる単ロール液体急冷装置の構成を示す概略図である。 本発明の金属ガラス板材の製造方法の加熱及び圧延加工を示す概略図である。 金属ガラスの超塑性領域を説明するための熱量曲線である。 線状材の製造に用いられる回転液中紡糸装置の構成を示す概略図である。 金属ガラス素材として線状材を用いた製造方法の加熱及び圧延加工を示す概略図である。 第三実施形態における一対のローラーに凸部及び凹部を設けた製造方法の圧延加工を示す概略図である。 第四実施形態における一対のローラーの相対的回転速度を制御した製造方法の加熱及び圧延加工を示す概略図である。 香箱を2つ備えた駆動機構を示す部分平面図である。 香箱と輪列との噛合状態を示す部分平面図である。 ヒゲゼンマイを備えたテンプヒゲ系の構造を示す平面図である。 図16のテンプヒゲ系の構造を示す断面図である。 固定バネを備えた水晶振動子の固定構造を示す側面図である。
〔第一実施形態〕
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
第一実施形態は、本発明に係る時計用バネをゼンマイとして利用した駆動機構に係るものである。図1は、本発明の第一実施形態に係る金属ガラス板材から構成されるゼンマイを利用した電子制御式機械時計1の駆動機構1Aを示す平面図である。図2は、図1の駆動機構1Aの断面図である。図3は、図1の駆動機構1Aの他の断面図である。
電子制御式機械時計1の駆動機構1Aは、金属ガラスゼンマイ31、香箱歯車32、香箱真33及び香箱蓋34からなる香箱30を備えている。
金属ガラスゼンマイ31は、外端が香箱歯車32、内端が香箱真33に固定される。香箱真33は、地板2と輪列受3に支持され、角穴車4と一体で回転するように角穴ネジ5により固定されている。角穴車4は、時計方向には回転するが反時計方向には回転しないように、コハゼ6と噛み合っている。
なお、角穴車4を時計方向に回転し金属ガラスゼンマイ31を巻く方法は、機械時計の自動巻又は手巻機構と同様であるため、説明を省略する。
香箱歯車32の回転は、7倍に増速されて二番車7へ、順次6.4倍増速されて三番車8へ、9.375倍増速されて四番車9へ、3倍増速されて五番車10へ、10倍増速されて六番車11へ、10倍増速されてローター12へと、合計126,000倍の増速をし、これらの歯車が輪列を構成している。
二番車7には筒かな7aが、かかる筒かな7aには分針13が、四番車9には秒針14がそれぞれ固定されている。したがって、二番車7を1rphで、四番車9を1rpmで回転させるためには、ローター12は5rpsで回転するように制御すればよい。また、この場合における香箱歯車32は、1/7rphとなる。
この電子制御式機械時計1は、ローター12、ステーター15、コイルブロック16から構成される発電機20を備えている。ローター12は、ローター磁石12a、ローターかな12b、ローター慣性円板12cから構成される。ローター慣性円板12cは、香箱30からの駆動トルク変動に対してローター12の回転数変動を少なくするためのものである。一方、ステーター15は、ステーター体15aに対して4万ターンのステーターコイル15bを巻線したものである。
コイルブロック16は、磁心16aに11万ターンのコイル16bを巻線したものである。ここで、ステーター体15aと磁心16aはPCパーマロイ等で構成されている。また、ステーターコイル15bとコイル16bは、各々の発電電圧を加えた出力電圧がでるように直列に接続されている。
このような発電機20によって発電された交流出力は、図1〜図3では図示を略したが、駆動機構1Aの調速、脱進等の制御用に組み込まれる制御回路に供給される。
次に、上記香箱30の内部構造について、図4に基づいて説明する。
図4は、香箱内に収納されたゼンマイを示す平面図であり、(A)は、ゼンマイが香箱内で巻締められた状態であり、(B)は、ゼンマイが香箱内で巻戻った後の状態である。
なお、この金属ガラスゼンマイ31の形状寸法は、例えば、幅b=1mm、厚さt=0.1mm、全長L=300mmとすることができる。なお、金属ガラスゼンマイ31を形成する時計用バネは、ワイヤー状の金属ガラスを線引き加工することにより、矩形断面が形成されているようにしてもよい。
金属ガラスゼンマイ31は、その内端311が香箱真33に対してスパイラル状(螺旋状)に巻き付けられているとともに、外端312が香箱30の内側面に接合固定されている。
図4(B)の状態において、外力によって香箱30を香箱真33に対して回転させると、金属ガラスゼンマイ31が巻締まる。一方、かかる巻締め後、香箱30の拘束状態を解放すると、金属ガラスゼンマイ31の巻戻りとともに、香箱30が回転する。
そして、香箱30の外周に形成される香箱歯車32によって上記二番車7等の輪列を回転させて、分針13、秒針14等が動作することとなる。
図5は、金属ガラス板材313を複数枚積層一体化して形成された金属ガラスゼンマイ31の厚さ方向断面図である。
この金属ガラスゼンマイ31は、例えば、厚さtが0.1mmの単板からなる金属ガラス板材313からなるようにしてもよく、また、図5に示すように、厚さ50μmの金属ガラス板材313を複数枚積層一体化して形成されるようにしてもよく、この場合にあっては、各々の金属ガラス板材313同士は、エポキシ系接着剤314によって貼り付けられて構成されることになる。
図6は、ゼンマイの自由展開形状を示す平面図である。
また、上記香箱30から取り外した金属ガラスゼンマイ31は、図6に示すように、香箱真33に対する巻取り方向とは反対側に癖付けされ、形状としては、平面略S字状の自由展開形状を有している。
そして、湾曲方向が変化する変曲点315は、内端311の近傍に形成され、変曲点315から内端311までは、金属ガラスゼンマイ31を香箱真33に固定するために利用される。
以上のような金属ガラスゼンマイ31を形成するに際しては、先ず、鋳造により金属ガラス素材を製造する。
〔金属ガラス素材の構成〕
金属ガラス素材は、金属ガラスで構成されている。
金属ガラスは、金属元素を主成分とし、所定の条件を満たす元素を含む合金であり、元素配列に規則性がなく、無秩序に元素が配列される非結晶性の合金である。このような金属ガラスは、溶融状態の原材料を、急速な冷却速度で冷却した際に形成される。そして、金属ガラスに分類されないアモルファス金属は、加熱時にガラス転移点に至る前に結晶化が進行するが、金属ガラスは、ガラス転移点が観察される。
このような物性を有する金属ガラスは、高耐摩耗性、高強度、低ヤング率、高耐食性の特性を有する。
上述した金属ガラス素材の金属ガラスとしては、例えば、La基合金、Mg基合金、Pd基合金、Zr基合金、Fe基合金、Co基合金、Cu−Zr基合金、Cu−Hf基合金、Cu−Zr−Be基合金、Ni基合金等の金属ガラスを採用することができるが、バネの要求性能に応じて、種々の金属ガラスを採用することができる。
金属ガラス素材は、単ロール液体急冷法(単ロール急冷法)により製造された板状材であることが好ましい。以下、単ロール液体急冷法について説明する。
〔単ロール液体急冷法〕
図7は、板状材101の製造に用いられる単ロール液体急冷装置110の構成を示す概略図である。
図7に示す単ロール液体急冷装置110は、チャンバー111と、チャンバー111内に設けられ、下端にノズル112aを有し、内部に金属ガラス原料112bを収容可能な石英管112と、石英管112の外周に配置された高周波加熱コイル113と、石英管112の下方に、石英管112の軸の延長線上に設けられ、高速で回転可能な冷却ロール114と、を備えている。
また、チャンバー111は、図示しない減圧手段を有しており、これにより、チャンバー111内を減圧することができる。また、チャンバー111の側面には、形成される金属ガラス素材100を空冷するための飛行管111aが設けられている。冷却ロール114から放出された金属ガラス素材100は、飛行管111aの内部を通過する際に、高速で飛行することによって空冷される。飛行管111aは、数mの長さで設けられる。石英管112は、その上方から、不活性ガスを石英管112内部に供給するガス供給手段112cを有している。冷却ロール114は、図示しない冷却手段を有しており、これにより、冷却ロールを所望の温度範囲に維持することができる。冷却ロール114は、図7の矢印の方向に回転する。この回転速度としては、4000rpm以上が好ましい。この冷却ロール114の構成材料は、耐熱性及び熱伝導性に優れた材料であるのが好ましく、例えば、銅、銀、金、白金、アルミニウム等が挙げられる。
図7に示す単ロール液体急冷装置110を用いて、金属ガラス素材100である板状材(薄帯)101を製造する方法について説明する。
先ず、本発明の金属ガラスを得るための構成元素材料を、前述の各構成元素の含有率にしたがって秤量し、これを金属ガラス原料112bとする。金属ガラス原料112bは、石英管112内に収容される。そして、減圧手段により、チャンバー111内を減圧する。
次いで、高周波加熱コイル113に通電して、石英管112内の金属ガラス原料112bを所定の温度に加熱する。これにより、金属ガラス原料112bは溶融される。
次に、溶融した金属ガラス原料112bは、ガス供給手段から石英管112内に供給されるガス圧により、石英管112のノズル112aから冷却ロール114の外周面に噴出される。
そして、石英管112のノズル112aから噴出した溶融した金属ガラス原料112bは、冷却ロール114の外周面に接触し、冷却ロール114の外周面との熱交換によって急速に冷却される。これにより、溶融液中にランダムに存在していた各原子は、そのランダムな配置を保存した状態で固化に至る。固化された金属ガラスは、回転している冷却ロール114の遠心力によって、接線方向に連続して放出される。これにより、帯状の金属ガラスの板状材101が得られる。冷却ロール114から連続して放出される帯状の金属ガラスの板状材101は、チャンバー111側面の飛行管111aの内部を通過し、高速で飛行することにより空冷される。帯状の金属ガラスの板状材101は、図示しない巻取ロールなどを用いて、巻き取られることが好ましい。
なお、溶融した金属ガラス原料112bの噴出量制御、溶融した金属ガラス原料112bの粘度制御などにより、板状材101を所望の厚さに制御することができる。溶融した金属ガラス原料112bの噴出量制御は、ガス供給手段112cで供給するガス流量を調整して、石英管112内へのガス圧を変動させることにより行われる。また、溶融した金属ガラス原料112bの粘度制御は、高周波加熱コイル113の電圧を調整して、加熱温度を変動させることで、石英管112内の溶融した金属ガラス原料112bの温度を変動させることにより行われる。
また、石英管112のノズル112aの幅を調整することで、得られる金属ガラスの板状材101の幅をある程度制御することができる。
上記単ロール液体急冷法により得られる帯状の金属ガラスの板状材101には、表面や内部に空気が残存した状態で固化されることで形成される空隙(ピンホール)が存在する。また、単ロール液体急冷法により得られる帯状の金属ガラスの板状材101は、表面加工されていないため、表面粗さが大きい。
〔金属ガラス素材(板状材)の加熱〕
図8は、本発明の金属ガラス板材の製造方法の加熱及び圧延加工を示す概略図である。
金属ガラス素材100としての板状材101を加熱して超塑性状態とする。図8では、加熱手段として、抵抗加熱ヒーターから構成されたヒーター102が、圧延手段に送られる前の板状材101の上方及び下方に対してそれぞれ配置されている。ヒーター102が板状材101の上下に配置されることで、板状材101は上下から均一に加熱される。
図9は、金属ガラスの超塑性領域を説明するための熱量曲線である。図9に示すように、金属ガラスは、徐々に加熱していくと吸熱を示すガラス転移温度(Tg)が現れ、その後、発熱を示す結晶化温度(Tx)に至る。なお、結晶化温度を超えて加熱していくと、図示しない融点に至る。
金属ガラスの超塑性状態を示す超塑性領域は、ガラス転移点(Tg)近傍から結晶化温度(Tx)未満の温度領域である。
本発明の製造方法における加熱は、上記板状材101がガラス転移温度(Tg)近傍から結晶化温度(Tx)未満までの超塑性領域に含まれる温度になるように行われる。
上記超塑性領域では、金属ガラスは超塑性状態を示し、金属ガラスが飴状となって、極めて加工性に富んだ状態になっている。
Ni基合金を一例に挙げると、ガラス転移温度(Tg)は573℃、結晶化温度(Tx)は624℃である。なお、上記温度は、測定する際の昇温速度条件等によって、若干の変動がある。上記物性を有するNi基合金から構成される金属ガラスを超塑性領域にするために適した加熱温度としては、550℃以上600℃以下が好ましい。
〔金属ガラス素材(板状材)の圧延加工〕
図8に戻って、加熱手段であるヒーター102で加熱して超塑性状態とした板状材101を圧延加工して板材106を製造する。圧延加工は、圧延手段103としての回転する一対のローラー104,105の間に超塑性状態の板状材101を通過させることにより行われる。一対のローラー104,105を構成する一方のローラー104及び他方のローラー105は、円筒状であり、それぞれの外周面が平坦に形成されている。
一対のローラー104,105の間に生じる間隔が、形成される板材106の厚さに相当することになるため、一対のローラー104,105は、形成する板材106の所望の厚さに応じて間隔を変更できるように配置されることが好ましい。
圧延時の一対のローラー104,105の回転は、一方のローラー104と、他方のローラー105とが、それぞれ同じ回転速度となるように回転させることが好ましい。
圧延加工を終えて得られた金属ガラスの板材106は、ガラス転移温度(Tg)以下にまで冷却される。ここでの冷却は、自然放冷のような徐冷でもよいし、水などの水冷や空冷などの冷却手段を用いた強制冷却でもよい。
そして、上記製造方法により得られる金属ガラスの板材106を駆動機構1Aの動力源として必要な幅、長さ寸法に加工する。金属ガラスゼンマイ31に必要な厚さt(0.1mm)の単板からなる金属ガラスの板材106の場合には、丸棒等に金属ガラスゼンマイ31を巻き付けて癖付けを行う。金属ガラスゼンマイ31の癖付けを行う場合にあっては、150℃以上の温度により熱処理を行って癖付けを施すようにすればよい。
なお、図5に示すように、複数枚積層一体化する場合、各々の金属ガラス板材313を、エポキシ系接着剤314を用いて互いに貼り合わせ、金属ガラスゼンマイ31に必要な厚さt(0.1mm)を確保するようにする。最後に、エポキシ系接着剤314が硬化する前に、丸棒等に金属ガラスゼンマイ31を巻き付けて癖付けを行い、エポキシ系接着剤314を硬化させる。
〔第一実施形態の作用効果〕
(1)本実施形態によれば、金属ガラスで構成された金属ガラス素材100(板状材101)を用い、これを加熱して超塑性状態とし、続いて圧延して金属ガラスの板材106を製造する。
超塑性状態での圧延によって板状材101表面は平坦にならされ、表面を滑らかにしているので、板状材101表面に空隙が凹みのように存在している場合でも、空隙はその数が低減され、また空隙による凹みを小さくできる。また、板材106の表面粗さを小さくし、また、表面に存在する傷を低減することができる。このように応力が集中する空隙の数が低減され、また、空隙による凹みも小さくなるので、空隙による応力集中に起因する曲げ疲労特性の低下を解消できる。
(2)超塑性状態での圧延によって、板状材101は厚さ方向に対して潰されるため、板状材101内部に空隙が存在している場合、内部の空隙は扁平状に変形する。変形前の内部空隙に生じる応力に比べて、変形した扁平状の内部空隙は、応力が分散するので、その点でも、曲げ疲労特性を向上することができる。また、板材106の厚さは、圧延時のローラー間寸法等で精度良く設定できるので、厚み精度も向上させることができる。
(3)金属ガラス素材100として板状材101を用いることで、板状材101は上面及び下面が平坦であるため、ローラー104,105によって板材106に圧延する際に加工し易く、また、得られる板材106表面に高い平坦度を付与することができる。また、板状材101は単ロール液体急冷法により容易に製造することができる。
(4)上記金属ガラスゼンマイは、ヤング率が小さいため、ゼンマイのトルクカーブをフラット化できる。上記特性を有する金属ガラスゼンマイ31を駆動機構1Aの動力源として採用したので、時間精度を向上させることができる。
(5)上記金属ガラスゼンマイは、引張応力が大きく、かつヤング率が小さいため、ゼンマイに蓄えられるエネルギを大きくすることができる。上記特性を有する金属ガラスゼンマイ31を駆動機構1Aの動力源として採用したので、駆動機構1Aを小型化できるとともに、駆動機構1Aを長時間動作させることができる。
(6)変曲点315の位置を内端311の近傍に設定することができるので、癖付けを金属ガラスゼンマイ31のほぼ全長に亘って行うことができ、金属ガラスゼンマイ31が蓄積する機械エネルギを増大させて駆動機構1Aの動作の長時間化を一層図ることができる。
また、金属ガラスゼンマイ31であればトルク変動が小さいので、機械式時計の動力源として採用した場合、駆動精度が向上する。
なお、この実施形態では、金属ガラスゼンマイ31は、電子制御式機械時計1の駆動機構1Aの動力源として用いられていたが、これに限らず、制御系が調速機、脱進機によって構成される通常の機械式時計の駆動機構に金属ガラスゼンマイ31を用いてもよい。
〔第二実施形態〕
上記第一実施形態では、金属ガラスゼンマイ31用の板材106を製造する金属ガラス素材100として、単ロール液体急冷法により製造された板状材101を用いたが、本実施形態では、回転液中紡糸法により製造された線状材を用いる。以下、回転液中紡糸法について説明する。
〔回転液中紡糸法〕
図10は、線状材131の製造に用いられる回転液中紡糸装置120の構成を示す概略図である。
図10に示す回転液中紡糸装置120は、回転可能な円筒状のドラム121と、下端にノズル122aを有し、内部に金属ガラス原料122bを収容可能な石英管122と、石英管122の外周に配置された高周波加熱コイル123と、を備えている。
また、ドラム121の両面には、内部に供給される冷却用液体の流出を防止するための図示しない流出防止板が形成されている。ドラム121は、冷却用液体をドラム121内に供給する図示しない冷却用液体供給手段を有している。ドラム121は、図10の矢印の方向に回転する。石英管122は、その上方から、不活性ガスを石英管122内部に供給するガス供給手段124を有している。
図10に示す回転液中紡糸装置120を用いて、線状材131を製造する方法について説明する。
先ず、本発明の金属ガラスを得るための構成元素材料を、前述の各構成元素の含有率にしたがって秤量し、これを金属ガラス原料122bとする。金属ガラス原料122bは、石英管122内に収容される。
そして、ドラム121を回転させ、回転速度が所定の値になったときに、冷却用液体供給手段から冷却用液体をドラム121の内面に供給する。供給された冷却用液体は、遠心力により、液体層121aを形成するとともに、流出防止板によりドラム121からの流出が防止される。
次いで、高周波加熱コイル123に通電して、石英管122内の金属ガラス原料122bを所定の温度に加熱する。これにより、金属ガラス原料122bは溶融される。
次に、溶融した金属ガラス原料122bは、ガス供給手段から石英管122内に供給されるガス圧により、石英管122のノズル122aからドラム121内の液体層121aに噴出される。
そして、石英管122のノズル122aから噴出した溶融した金属ガラス原料122bは、液体層121a内の表面張力等によって、その断面形状が円形になるとともに、急速に冷却される。これにより、溶融液中にランダムに存在していた各原子は、そのランダムな配置を保存した状態で固化に至る。固化された金属ガラスは、ドラム121の回転に沿って連続して形成される。これにより、金属ガラスの線状材131が得られる。金属ガラス原料122bの冷却速度は、2.5m/s程度が好ましい。
なお、液体層121aの冷却用液体が流れる速度制御、溶融した金属ガラス原料122bの噴出量制御、溶融した金属ガラス原料122bの粘度制御などにより、線状材131を所望の径に制御することができる。液体層121aの冷却用液体が流れる速度制御は、ドラム121の回転や、ドラム121内に供給する冷却用液体の量を変動させることにより行われる。また、溶融した金属ガラス原料122bの噴出量制御は、ガス供給手段で供給するガス流量を調整して、石英管122内へのガス圧を変動させることにより行われる。また、溶融した金属ガラス原料122bの粘度制御は、高周波加熱コイル123の電圧を調整して、加熱温度を変動させることで、石英管122内の溶融した金属ガラス原料122bの温度を変動させることにより行われる。
〔金属ガラス素材(線状材)の加熱〕
図11は、金属ガラス素材100として線状材131を用いた製造方法の加熱及び圧延加工を示す概略図である。
金属ガラス素材100としての線状材131を加熱して超塑性状態とする。
図11では、加熱手段として、抵抗加熱ヒーターから構成されたヒーター132が、圧延手段に送られる前の線状材131の外周に巻き付くように配置されている。ヒーター132が線状材131の外周に巻き付くように配置されることで、線状材131は外周から均一に加熱される。
この点以外は、上記第一実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
〔金属ガラス素材(線状材)の圧延加工〕
加熱手段であるヒーター132で超塑性状態に加熱された線状材131を圧延加工して板材106を製造する。圧延加工は、回転する一対のローラー104,105の間に超塑性状態の線状材131を通過させることにより行われる。
この点以外は、上記第一実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
〔第二実施形態の作用効果〕
本実施形態によれば、上記第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、金属ガラス素材100として線状材131を用いることで、線状材131は、その断面が円形であるため、断面積を高精度に制御することができる。そして、断面積を高精度に制御した線状材131を用いるため、一対のローラー104,105によって板材106に圧延する際に、所望の幅寸法の板材106を精度良く製造し易い。また、線状材は回転液中紡糸法により容易に製造することができる。
〔第三実施形態〕
図12は、第三実施形態における一対のローラー144,145に凸部144a及び凹部145aを設けた製造方法の圧延加工を示す概略図である。
上記第一実施形態では、外周面が平坦な一対のローラー104,105を用いて説明したが、本実施形態では、圧延時に超塑性状態の金属ガラス素材を凸部と凹部とで挟み込む。
図12に示すように、圧延加工に用いられる圧延手段143である一対のローラー144,145のうち、一方のローラー144の外周面の所定位置には、凸部144aが設けられている。また、他方のローラー145の外周面の、凸部144aと対向する位置には凸部144aと嵌合する凹部145aが設けられている。
圧延時に、回転する一対のローラー144,145の間に、超塑性状態の金属ガラス素材100を通過させると、超塑性状態の金属ガラス素材100は圧延される。そして、圧延とともに、超塑性状態の金属ガラス素材100は、凸部144aと凹部145aとで挟み込まれる。
図12では、凸部144aと凹部145aとで挟み込むことにより、板材106に穴146が形成された例を示している。
例えば、香箱真引っ掛け穴やスリッピングアタッチメント取り付け用の穴を形成したり、時計用バネの長さに板材を切断したりすることができる。
具体的には、一方のローラー144の凸部144aは、香箱真引っ掛け穴やスリッピングアタッチメント取り付け用の穴に相応する形状の突起に、他方のローラー145の凹部145aは、上記突起と嵌合する形状の穴にしておく。これにより、一対のローラー144,145が一周するたびに、圧延時の超塑性状態の金属ガラス素材100は、上記突起及び穴で挟み込まれることにより、加工された板材の所望の位置に香箱真引っ掛け穴やスリッピングアタッチメント取り付け用の穴が形成される。
また、図12に示す一方のローラー144の凸部144aでは、上記形状の突起としたが、上記形状の突起の代わりに、或いは上記形状の突起とは別に、少なくとも板材の幅を横断する長さの凸条を形成してもよい。また、他方のローラー145の凹部145aでは、上記形状の穴としたが、上記形状の穴の代わりに、或いは上記形状の穴とは別に、上記凸条と嵌合する長さの凹条を形成してもよい。これにより、一対のローラー144,145が一周するたびに、圧延時の超塑性状態の金属ガラス素材100は、上記凸条及び凹条で挟み込まれることにより、所望の長さで加工された板材106が切断される。
なお、ローラー144,145の外周長さが、挟み込み加工される板材106の長さに相当するため、板材106を挟み込み加工する際には、所望の板材の長さに対応するような外周長さを有するローラーが使用される。
〔第三実施形態の作用効果〕
本実施形態によれば、上記第一実施形態で述べた(1)〜(6)と同様の効果に加え、次のような効果が得られる。
(7)一対のローラー144,145の間に超塑性状態の金属ガラス素材100を通過させる際に、一方のローラー144に設けられた凸部144aと他方のローラー145に設けられた凹部145aとで挟み込むので、圧延して得られる板材106に対して、挟み込む凸部144a及び凹部145aに応じた形状の加工を容易に行うことができる。
〔第四実施形態〕
図13は、第四実施形態における一対のローラーの相対的回転速度を制御した製造方法の加熱及び圧延加工を示す概略図である。
上記第一実施形態では、圧延時に、一対のローラー104,105の回転を同じ回転速度として説明したが、本実施形態では、一対のローラー104,105の相対的回転速度を制御する。
例えば、図13に示すように、一方のローラー104の回転速度Rを、他方のローラー105の回転速度Rよりも大きくする。超塑性状態での圧延において、一方のローラー104の回転速度Rと、他方のローラー105の回転速度Rとをそれぞれ異なる速度にすることで、加工される板材106は、湾曲される。これにより、圧延加工による板材106の加工と同時に、板材106への癖付けが施される。得られる板材の厚さや癖付けの程度によって、一対のローラー104,105のそれぞれの回転速度R,Rは、適宜調整される。それぞれの回転速度R,Rの差を大きくすることで、形成される湾曲も大きくなる。
〔第四実施形態の作用効果〕
本実施形態によれば、上記第一実施形態で述べた(1)〜(6)と同様の効果に加え、次のような効果が得られる。
(8)圧延時の一対のローラー104,105の相対的回転速度を制御することで、得られる板材106を湾曲させた状態に癖付けすることができる。これにより、後工程で別途癖付けのための工程を設ける必要がなくなる、或いは、後工程での癖付け作業が軽減されるため、製造コストを低減することができる。
〔その他の実施形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
第一〜第四実施形態において、圧延手段103,143である一対のローラーに冷却手段を備えてもよい。これにより、圧延と同時に、加工された帯状の金属ガラスの板状材を冷却することができるため、加工された板状材の変形や、巻き取った際の板状材同士の密着を防止し易くなる。
また、圧延手段103,143である一対のローラーに加熱手段を備えてもよい。
〔第一変形例〕
図14は、香箱30を2つ備えた駆動機構1Bを示す部分平面図である。図15は、香箱30と輪列との噛合状態を示す部分平面図である。
前述した第一実施形態に係る駆動機構1Aでは、駆動機構1Aを動作させる動力源は、香箱30に収納された1つの金属ガラスゼンマイ31のみとしたが、図14及び図15に示すように、金属ガラスゼンマイ31が収納された香箱30を2つ備えた駆動機構1Bとしてもよい。
図14に示すように、駆動機構1Bにおける二番車7の基部歯車71には、2つの香箱30の外周に形成された香箱歯車32(図14では図示略)が同時に噛合している。2つの香箱30は、それぞれの香箱真33を中心として同一方向に回動し、二番車7には、各々の金属ガラスゼンマイ31の出力トルクTを加えた出力トルク2Tが作用している。
ここで、二番車7に噛合する香箱歯車32は、図15に示すように、左側の香箱歯車32と右側の香箱歯車32とが噛合する位相が異なっていて、左側の香箱歯車32が二番車7とB1点で当接する時、右側の香箱歯車32はB2点で二番車7から離間しようとしている。
なお、このような位相の相違は、香箱真33の相対位置によって決定され、図14からわかるように、二番車7の回転中心と香箱真33とがなす角βに応じて噛合する位相を調整することができる。
このような金属ガラスゼンマイ31が収納された2つの香箱30を備えた駆動機構1Bによれば、1つの香箱30を備えた駆動機構1Aの効果に加えて、次のような効果がある。
即ち、金属ガラスゼンマイ31が収納された2つの香箱30を、同時に輪列を構成する二番車7に同時に噛合させているので、香箱30各々の出力トルクTを重ね合わせて二番車7を回転させることができ、駆動機構1Bを高い出力トルク2Tで動作させることができる。
また、二番車7に噛合する香箱歯車32の位相が互いにずれているので、例えば、図15において、左側の香箱30と二番車7との噛合状態によって発生するトルク変動を、他の右側の香箱30との噛合状態によりトルクを和することで、伝達トルクの変動を抑制して駆動機構1Bをスムースに動作させることができる。
なお、この第一変形例では、輪列を構成する二番車7には、2つの香箱30が噛合していたが、2以上の香箱30が噛合していてもよい。要するに、金属ガラスゼンマイの蓄積エネルギと、駆動機構の動力源として要求されるエネルギとに応じて適宜決定すればよい。
〔第二変形例〕
図16は、ヒゲゼンマイ470を備えたテンプヒゲ系400の構造を示す平面図である。図17は、図16のテンプヒゲ系400の構造を示す断面図である。
本発明に係る金属ガラスで構成される時計用バネを、図16及び図17に示すように、機械式時計の調速機を構成するテンプを付勢するヒゲゼンマイとして利用してもよい。
調速機を構成するテンプヒゲ系400は、テン真410、テン輪420、振り座430、ヒゲ玉440、ヒゲ持450、緩急針460を含んで構成される。
図16及び図17に示されるテン真410には、テン輪420、振り座430、ヒゲ玉440が固定され、これらが一体で回転するように構成されている。ヒゲゼンマイ470は、金属ガラスで構成される非磁性体であり、その内周端がヒゲ玉440に固定され、外周端は、ヒゲ持450に固定されている。緩急針460は、ヒゲ棒461及びヒゲ受462を含んで構成され、ヒゲゼンマイ470の最外周部分は、ヒゲ棒461及びヒゲ受462の間を通過している。
そして、このようなテンプヒゲ系400では、テン輪420がテン真410を軸として回転すると、これに伴いヒゲ玉440も回転するので、テン輪420には、ヒゲゼンマイ470の付勢力が作用し、この付勢力とテン輪420の慣性力とがつり合うと、テン輪420の回転が停止し、ヒゲゼンマイ470の付勢力により、テン輪420は逆方向に回転する。即ち、テン輪420は、テン真410を軸として揺動を繰り返す。このテン輪420の揺動周期は、緩急針460のヒゲ棒461、ヒゲ受462の位置を微調整することにより、変化させることができる。また、この揺動周期Sは、テン輪420等の回転部分の慣性モーメントJのほか、ヒゲゼンマイ470の材料特性によっても変化し、ヒゲゼンマイ470の幅をb、厚さをt、ゼンマイ長さをL、ヒゲゼンマイの平均ヤング率をEとすると、以下の(1)式によって表される。
S=2π×(12JL/Ebt1/2 ……(1)
このようなテンプヒゲ系400では、ヒゲゼンマイ470が金属ガラスにより構成されているので、温度変化に伴う平均ヤング率Eの変化が少なく、上記(1)式で表されるテンプヒゲ系400の揺動周期の変化も少なくなり、テンプヒゲ系400を含む調速機を有する機械式時計の高精度化を図ることができる。
また、ヒゲゼンマイ470が非磁性体の金属ガラスで構成されているので、耐磁性が向上し、ヒゲゼンマイ470が外部磁界等に引っ張られても、ゼンマイの特性が低下することもない。
〔第三変形例〕
図18は、固定バネ540を備えた水晶振動子500の固定構造を示す側面図である。
本発明に係る金属ガラスで構成されるバネを、図18に示すように、水晶発振式時計の水晶振動子500を付勢状態で固定するバネとして利用してもよい。
水晶振動子500は、真空カプセル501と、この真空カプセル501の内部に収納される音叉型の振動子本体502を含んで構成され、真空カプセル501の端部に設けられる端子503が回路基板510と電気的に接続されて発振回路が構成される。そして、水晶振動子500は、地板520上に配置され、ネジ530と、金属ガラスで構成される固定バネ540によって、地板520に押さえつけられる方向に付勢された状態で固定されている。
このような水晶振動子500では、金属ガラスで構成される固定バネ540は、平均ヤング率が小さいので、固定バネ540のたわみ量が変化しても、その際の付勢力の変動が少なくなるので、水晶振動子500の周期のずれを少なくすることができ、水晶発振式時計の高精度化を図ることができる。
また、上記実施形態の駆動機構1Aの角穴車4と噛合するコハゼ6を構成するコハゼバネを金属ガラスで構成するようにしてもよい。コハゼ6は、香箱内のゼンマイを巻く際の巻戻り防止のための部品であり、そのとき機能するバネがコハゼバネである。そして、コハゼバネは、ゼンマイを巻いている最中、コハゼと係合している角穴車のかみ合い歯数分だけ繰り返し荷重を受けることになり、その回数は数万〜数十万回/年となる。
このような繰り返し荷重がかかる場合、コハゼバネの許容応力は、最大応力の1/2以下に設定する必要がある。したがって、このようなコハゼバネに金属ガラスで構成されるバネを使用すれば、許容応力が高く設定でき、また付勢力のばらつきも少ないので、コハゼバネの材料としても有利に使用できる。
上記実施形態では、金属ガラス素材100の製造方法として、単ロール液体急冷法、回転液中紡糸法を挙げたが、これらの製造方法だけでなく、双ロール液体急冷法、回転ディスク法などを採用してもよい。
また、上記実施形態では、時計用の駆動機構1Aの動力源として金属ガラスゼンマイ31を用いていたが、これに限らず、オルゴール等他の駆動機構の動力源として金属ガラスゼンマイ31を用いてもよい。
そして、本発明の時計用バネ自体も、時計のほか、オルゴール等の他の精密機械も適用することができる。また、低トルクの時計に対して、本発明の時計用バネや金属ガラスゼンマイ31を適用するようにしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、他の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
以上のように、本発明に係る時計用バネの製造方法、時計用バネ、及び時計は、例えば、時計をはじめとする駆動機構の動力源、水晶発振式時計等の水晶振動子を固定するバネ、機械式時計のテンプを付勢するヒゲゼンマイ、香箱内のゼンマイの巻締めの際の巻戻り防止のためのコハゼバネ等に利用することができる。
1…電子制御式機械時計、1A,1B…駆動機構、2…地板、3…輪列受、4…角穴車、5…角穴ネジ、6…コハゼ、7…二番車、8…三番車、9…四番車、10…五番車、11…六番車、12…ローター、12a…ローター磁石、12b…ローターかな、12c…ローター慣性円板、13…分針、14…秒針、15…ステーター、15a…ステーター体、15b…ステーターコイル、16…コイルブロック、16a…磁心、16b…コイル、20…発電機、30…香箱、31…金属ガラスゼンマイ、32…香箱歯車、33…香箱真、34…香箱蓋、71…基部歯車、100…金属ガラス素材、101…板状材、102…ヒーター、103…圧延手段、104…一方のローラー、105…他方のローラー、106…板材、110…単ロール液体急冷装置、111…チャンバー、111a…飛行管、112…石英管、112a…ノズル、112b…金属ガラス原料、112c…ガス供給手段、113…高周波加熱コイル、114…冷却ロール、120…回転液中紡糸装置、121…ドラム、121a…液体層、122…石英管、122a…ノズル、122b…金属ガラス原料、123…高周波加熱コイル、124…ガス供給手段、131…線状材、132…ヒーター、143…圧延手段、144…一方のローラー、144a…凸部、145…他方のローラー、145a…凹部、311…内端、312…外端、313…金属ガラス板材、314…エポキシ系接着剤、315…変曲点、400…テンプヒゲ系、410…テン真、420…テン輪、430…振り座、440…ヒゲ玉、450…ヒゲ持、460…緩急針、461…ヒゲ棒、462…ヒゲ受、470…ヒゲゼンマイ、500…水晶振動子、501…真空カプセル、502…振動子本体、503…端子、510…回路基板、520…地板、530…ネジ、540…固定バネ。

Claims (6)

  1. 金属ガラスで構成された金属ガラス素材を鋳造により製造する工程と、
    前記金属ガラス素材を加熱して塑性状態とする工程と、
    塑性状態の前記金属ガラス素材を圧延加工して板材を製造する工程と、
    を含む時計用バネの製造方法において、
    前記圧延加工は、回転する一対のローラーの間に塑性状態の前記金属ガラス素材を通過させることにより行われ、
    前記一対のローラーの相対的回転速度を制御することにより、前記圧延加工による前記板材の加工と同時に、前記板材への癖付けが施されることを特徴とする時計用バネの製造方法。
  2. 請求項1に記載の時計用バネの製造方法であって、
    前記一対のローラーのうち、一方のローラーの外周面の所定位置には凸部が設けられ、他方のローラーの外周面の前記凸部と対向する位置には前記凸部と嵌合する凹部が設けられ、
    前記回転する一対のローラーの間を通過させることにより、塑性状態の前記金属ガラス素材を圧延するとともに、塑性状態の前記金属ガラス素材を前記凸部と前記凹部とで挟み込むことを特徴とする時計用バネの製造方法。
  3. 請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の時計用バネの製造方法であって、
    前記金属ガラス素材は、単ロール液体急冷法により製造された板状材である
    ことを特徴とする時計用バネの製造方法。
  4. 請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の時計用バネの製造方法であって、
    前記金属ガラス素材は、回転液中紡糸法により製造された線状材である
    ことを特徴とする時計用バネの製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の時計用バネの製造方法により得られたことを特徴とする時計用バネ。
  6. 請求項5に記載の時計用バネを用いたことを特徴とする時計。
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