JP2002365377A - 駆動機構、および時計 - Google Patents
駆動機構、および時計Info
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Abstract
機構を動作させることのできるゼンマイを提供すること
を目的とする。 【解決手段】 駆動機構の動力源として用いられるゼン
マイは、アモルファス金属板状体により形成され、その
自由展開形状はS字状をなし、この自由展開形状の湾曲
方向が変化する変曲点は、巻き取り側の端部となる内端
と、この内端に対して他の端部となる外端との中間点よ
りも内端側に形成されている。アモルファス金属は、引
っ張り応力が高くヤング率が低いので、ゼンマイに蓄え
られる機械エネルギを大きくすることができる。
Description
バネに関し、例えば、時計、オルゴール等の駆動機構の
動力源として利用することができる。
械には、種々のバネが採用されている。例えば、時計で
あれば、水晶発振式の時計の水晶振動子を付勢状態で固
定するバネ、時計の駆動機構の動力源を構成するゼンマ
イ、ゼンマイを巻く際に巻き戻り防止のために設けられ
るコハゼバネ、機械式時計におけるテンプを付勢するヒ
ゲゼンマイ等が知られている。
は、従来より炭素鋼、ステンレス、コバルト合金、銅合
金等からなるバネ材料、ゼンマイ材料等が採用されてい
たが、次のような問題がある。 水晶振動子を付勢状態で固定するバネの場合、水晶
振動子の特性として、このバネの付勢力により水晶振動
子の歩度にずれが生じるという問題がある。すなわち、
バネの付勢力のばらつきにより、水晶が発振する32k
Hzの信号の周期が進み遅れするため、その信号を基準
信号としている時計体の精度がずれるという問題があ
る。従って、水晶振動子を固定するバネには、付勢力の
ばらつきが少ないものが切望される。 また、機械式時計の調速機を構成するテンプを付勢
するヒゲゼンマイの場合、温度変化によってヤング率が
変化して付勢力がばらつき、テンプの揺動周期が変化
し、このテンプの揺動周期の変化が機械式時計の精度に
大きく影響を及ぼす。従って、ヒゲゼンマイの材料とし
ては、温度変化によりヤング率が変化しないものを採用
するのが好ましい。 さらに、時計等の駆動機構の動力源を構成するゼン
マイの場合、駆動機構の長時間動作と、駆動機構の小型
化という相反する性能を満たすゼンマイが切望されてい
る。すなわち、例えば、時計の駆動機構は、動力源とな
るゼンマイと、このゼンマイを収納する香箱と、この香
箱と噛合してゼンマイの機械エネルギを伝達する輪列と
を備え、巻締められたゼンマイの巻き戻しによる回転力
を利用して、輪列等の伝達装置を介して時計の指針を回
転させている。
マイの巻数と出力トルクとの関係は比例関係にあり、ゼ
ンマイが出力するトルクをT、ゼンマイの巻締め回数
(巻数)をN、ヤング率をE、ゼンマイの全長をLと
し、ゼンマイが厚さt、幅bの矩形状の断面を有すると
すると、 T=(Et3bπ/6L)×N …(1) という式で表されることが知られている。
は、ゼンマイが収納される香箱サイズによって決定さ
れ、香箱内半径をR、香箱真半径をrとすると、ゼンマ
イの全長Lは、 L=π(R2−r2)/2t …(2) という式によって導かれ、ゼンマイの全長Lおよび厚さ
tは反比例の関係にあるということが判る。
ギは、(1)式の出力トルクTを巻数Nで積分すること
により与えられ、(1)式がゼンマイの全長Lおよび厚
さtの関数とも考えられるので、従来は、L、tを調整
することによってゼンマイのエネルギを調整していた。
ンマイの全長Lを大きくすれば、ゼンマイの最大巻数N
maxを大きくすることができる。
イの厚さtを厚くすれば、出力トルクTの値を高くする
ことができる。
うな決定方法では、(2)式から判るように、ゼンマイ
の厚さtおよび全長Lが香箱内部の収納空間の容積によ
って制限されてしまうので、長時間動作可能なゼンマイ
を採用する場合、必然的に香箱を大きくして収納空間を
大きくとらなければならず、ゼンマイを含む駆動機構の
小型化が図れないという問題がある。
して厚さtが薄くても高トルクを出力することのできる
ゼンマイとすることも考えられたが、ゼンマイの靱性を
確保しづらく、ゼンマイの耐久性という点で限界があっ
た。
度化、安定動作化を図ることができるバネを提供するこ
とにあり、また、動力源として利用した場合、長時間動
作化を図ることのできるバネ、およびこのバネを動力源
とする駆動機構を提供することにある。
いることを特徴とする。
を採用したのは、要するに、引っ張り応力が大きくかつ
ヤング率の小さな材料をバネ材料とするためである。具
体的には、従来のゼンマイ材料(化学組成(重量%):
Co 30〜45%、Ni10〜20%、Cr 8〜1
5%、C <0.03%、W 3〜5%、Mo 3〜1
2%、Ti 0.1〜2%、Mn 0.1〜2%、Si
0.1〜2%、Fe 残)と、アモルファス金属から
構成されるバネとを比較すると、以下のようになる。 σmax(kgf/mm2) E(kgf/mm2) 従来材料 200 20000 アモルファスバネ 340 9000〜12000
ァス金属としては、例えば、Ni−Si−B系、Ni−
Si−Cr系、Ni−B−Cr系、Co−Fe−Cr系
等のアモルファス金属を採用することができるが、バネ
の要求性能に応じて、種々のアモルファス金属を採用す
ることができる。
るバネを採用すれば、アモルファスバネの方が最大引張
り応力が大きいので、許容応力も大きくなり、同じ形状
の従来材料のバネと比較して、高い付勢力が得られ、精
密機器を小型化する際に好適である。
されているので、単ロール法、双ロール法、回転水中紡
糸法等によりワイヤ、リボン材等を簡単に製造すること
ができ、バネの製造工程の簡素化が図られる。
なので、錆止め用メッキを使用箇所によっては不要とす
ることができる。
してアモルファス金属から構成されるバネを用いた場
合、以下の理由で水晶振動子の信号の周期の進み遅れを
防止することができる。すなわち、上述したように、ア
モルファス金属から構成されるバネは、従来材料のバネ
と比較してヤング率が低いため、バネのたわみ量εと付
勢力Fとの関係は、図1に示すように、従来材料のバネ
のグラフG1よりも傾きの小さいグラフG2となる。従
って、水晶振動子を固定するのに必要な付勢力F0を与
える従来材料のバネのたわみ量をε1、アモルファスバ
ネのたわみ量をε2とすると、両者のバネのたわみ量ε1
およびたわみ量ε2にδという変化が生じた場合、その
際の付勢力F0の変動df1、df2を比較するとアモル
ファスバネの付勢力の変動df2の方が小さいことが判
る。よって、水晶振動子を固定する付勢手段としてアモ
ルファスバネを採用すれば、付勢力のばらつきを低減す
ることが可能となり、水晶振動子の周期のずれを少なく
することができ、時計体の高精度化が図られる。
を、機械式時計の調速機を構成するテンプを付勢するヒ
ゲゼンマイとして採用すれば、通常のヒゲゼンマイ材料
である炭素鋼等と比較すると、温度変化に伴うヤング率
の変化が少ないので、温度変化が生じても、付勢力のば
らつきに伴うテンプの揺動周期の変化が少なく、機械式
時計の高精度化が図られる。
ァス金属から構成されるバネを採用した場合、すなわ
ち、アモルファス金属から構成されるゼンマイとした場
合、動力源の長時間動作化は、以下のような考えに基づ
いて導くことができる。
するゼンマイ31(厚さt、幅b、長さL)のたわみ
は、図2に示されるように、内端311が香箱真33に
剛接合され、他の端部となる外端312が自由端とされ
る片持ち支持梁のたわみとして近似的に求められる。図
2におけるたわみ角α(rad)は、ゼンマイ31のた
わみ半径をrとすると、 r=L/α …(3) と表すことができる。
たわみ角αによって、 N=α/2π …(4) と表される。
(4)式から、 T=(bt3E/12L)×α …(5) と変形される。
えられるエネルギUは、ゼンマイ1に作用する曲げモー
メント、すなわち、ゼンマイ1の出力トルクTをαにつ
いて積分することによって求められ、 U=∫Tdα=∫(bt3E/12L)×αdα =(bt3E/24L)×α2 …(6) となる。
エネルギUmaxは、図2におけるゼンマイ31の最大た
わみ角αmaxとすると、 Umax=(bt3E/24L)×αmax2 …(7) と表される。
σは、ゼンマイ31に作用する曲げモーメント、すなわ
ち、たわみ状態にあるゼンマイ31が出力し得る出力ト
ルクTの関数として表され、ゼンマイ1の中立軸Aから
の厚さ方向変位をy、ゼンマイ31の断面二次モーメン
トをIzとすると、 σ=T×y/Iz …(8) と表される。
に作用する引っ張り方向の最大曲げ応力σbは、(8)
式より、 σb=T・(t/2)/Iz …(9) と算出される。
bの矩形状をなしているから、 Iz=bt3/12 …(10) と算出され、(9)、(10)式より、 T=(bt2/6)×σb …(11) と表される。
最大巻数Nmaxは、(4)式より、 Nmax=αmax/2π …(13) となる。よって、(12)、(13)式より、 αmax=2Lσb/Et …(14) という関係が導き出せる。
り方向の最大曲げ応力σb、すなわち、ゼンマイ31に
用いられるゼンマイ材料の最大引っ張り応力σmaxによ
って決定され、上述した(7)式は、 Umax=(bt3E/24L)×(2Lσmax/Et)2 =(btL/6)×(σmax2/E) …(15) と算出されることが判る。
えられる最大エネルギUmaxは、ゼンマイ31の厚さ
t、幅b、長さLのみならず、ゼンマイ31を構成する
材料の最大引っ張り応力σmax、ヤング率Eによっても
変化することが判る。
maxをより大きくするには、最大引っ張り応力σmaxが大
きくかつヤング率Eが小さい性質の材料をゼンマイ1に
採用するのが好ましいということが判る。すなわち、上
述したσmax=340(kgf/mm2)、E=9000〜1
2000(kgf/mm2)のアモルファスバネをゼンマイ
31の材料として採用した場合、(15)式より、従来
の場合と比較して4.8〜6.4倍のエネルギを蓄えら
れることが判る。
動力源としてアモルファスゼンマイを採用すれば、香箱
等他の部分の形状寸法を変更することなく、ゼンマイに
蓄積可能なエネルギ体積密度を向上することが可能とな
る。よって、駆動機構の動力源としては、小型化を維持
しつつ、長時間動作させることが可能となり、特に、小
型化が重要な腕時計の駆動機構の動力源として好まし
い。
から構成されるバネがヒゲゼンマイまたはゼンマイとし
て利用される場合、非磁性体からなるゼンマイであるの
が好ましい。すなわち、これらのゼンマイが非磁性体で
構成されていれば、耐磁性が向上するので、ゼンマイが
磁界等に引っ張られても、ゼンマイの特性が低下するこ
ともない。尚、アモルファス金属から構成されるバネ
を、水晶振動子の固定バネ、コハゼバネ等に用いた場
合、当該バネが非磁性体から構成されていれば、耐磁性
が向上し、上述と同様にバネの付勢力が磁界等に影響さ
れることもない。
の最適形状 また、アモルファス金属から構成されるバネの断面形状
は、直径0.05mm以上の円形断面、または厚さ0.0
1mm×幅0.05mm以上の矩形断面を有しているのが好
ましい。
面であれば、十分な付勢力が得られるので、水晶振動子
の固定手段、機械式時計の調速機を構成するテンプを付
勢するヒゲゼンマイ、駆動機構の動力源となるゼンマイ
等として利用することができる。
されるバネは、基板や地板等に初期たわみを持たせて組
み込まれているのが好ましい。
基板、地板等に組み込んでも、バネの動きやずれを生じ
ることもない。さらに、初期たわみがあると、荷重を初
期から加えることができるが、従来材料のバネではヤン
グ率が高いため、その分許容応力までの余裕が少なくな
ってしまう。これに対して、アモルファス金属から構成
されるバネでは、ヤング率が低いため、初期たわみで荷
重がかかっていても、許容応力の余裕分が十分確保され
る。
成されるバネが駆動機構の動力源であるゼンマイとして
利用される場合、このゼンマイの自由展開形状はS字状
をなし、この自由展開形状の湾曲方向が変化する変曲点
は、巻き取り側の端部となる内端と、この内端に対して
他の端部となる外端との中間点よりも内端側に形成され
ているのが好ましい。
ンマイを香箱内から出した状態の形状のように、ゼンマ
イの拘束状態を解放した場合の展開形状をいう。
では、図3に示すグラフG3のように、ゼンマイの内端
と外端との中間点Cに変曲点(曲率半径ρが無限大とな
り、ゼンマイの湾曲方向が変化する点)を設けた理想曲
線に近いS字状に形成していたが、これは以下の理由に
よる。 予めゼンマイを巻き取り方向とは反対側にクセ付し
ておき、巻締め時、ゼンマイに蓄えられるエネルギを多
く蓄積するためである。 ゼンマイ全体に亘って均等に曲げ応力が作用するよ
うにして応力集中によるゼンマイの破断を防止するため
である。
マイは、従来のゼンマイ材料と比較してヤング率が小さ
いので、上記の理由による制限は緩和され、専らを
達成するためにクセ付を行うことが可能となる。
イの最適な自由展開形状は、以下のようにして決定され
る。
ける螺旋形状をアルキメデスの螺旋と仮定すると、極座
標r、θを採った場合、 r=(t/2π)・θ …(16) と表される(t:ゼンマイの厚さ)。
起こらない理想曲線を与える条件は、ゼンマイに作用す
る曲げモーメントをM、ゼンマイの曲げ剛性をB、自由
展開形状におけるゼンマイの曲率半径をρ0、巻締め時
におけるゼンマイの外周部分の曲率半径をρ1とする
と、 (1/ρ1)−(1/ρ0)=M/B=一定 …(17) で与えられる。
ギが最大となる条件は、ゼンマイの最大弾性歪み量をε
maxとすると、 B/M=t/4εmax …(18) で与えられる。
マイの長さをL’とすると、 1/ρ1=(π/tL’)1/2 …(19) という関係が成立する。
き付けられるので、この香箱真半径をrとすると、実際
のゼンマイの長さLは、 L=L’−πr2/t …(21) となる。そして、理想曲線形の自然方程式は(22)式
のようになる。 ρ0=2(π/t)×(B/M)3×(1/L)+B/M …(22)
なる場合の自由展開形状における曲率半径ρ0は、(1
8)、(22)式より、 ρ0=2(π/t)×(t/4εmax)3×(1/L)+t/4εmax …(23) と表すことができる。
の渦巻形状のピッチがゼンマイの厚さtよりも完全に小
さくなってしまうので、実際には、εmax=0.02に
近い形状で代用することとなる。
G4のようになり、計算上変曲点を、従来材料のゼンマ
イのグラフG3よりも内端側に形成することが可能なこ
とが判る。
ゼンマイの全長に亘って巻き取り方向とは反対側にクセ
付することが可能となるので、巻締め時の蓄積エネルギ
をより多くすることが可能となる。
れる基礎式であり、(22)式もこの基礎式から求めら
れる理論上の式であり、実際には、ゼンマイ同士または
ゼンマイと香箱との間に摩擦が生じたり、ゼンマイと香
箱真とを接合するための巻き代が必要となるので、これ
らを考慮する必要がある。
マイを香箱真に巻き付けるための巻数Noとすると、従
来材料のゼンマイでは、巻数Nと出力トルクTとの関係
は、 T=K1・(Ebt3π/6L)×(N−No) …(24) となる。
ンマイの出力トルク特性G6と比較して、アモルファス
ゼンマイの出力トルク特性G5は、巻数は同じである
が、カーブの傾きが小さく巻数の変化によるトルク変動
が小さい。また、同じ巻数時でのトルクが高いので、持
続時間が増加し、駆動機構をより長時間動作させること
が可能となる。 3.最適形状となるアモルファスゼンマイの形成 また、上述したアモルファス金属から構成されるバネを
ゼンマイとして利用する場合、単板では厚さtが50μ
m以上のものを製造するのが困難なため、2枚、3枚、
および複数枚のアモルファス金属板状体を積層一体化し
てアモルファスゼンマイとするのが好ましい。
して形成されているので、(1)、(22)、(23)
式から判るように、出力トルク等の要求性能に応じてア
モルファスゼンマイの厚さtを自由に設定することが可
能となる。
モルファス金属板状体を合成樹脂系の接着剤で貼り合わ
せるのが好ましい。
低温で複数枚のアモルファス金属板状体を積層一体化す
ることができるので、アモルファス金属の特性が変化す
ることもなく、上述したアモルファスゼンマイの特徴が
損なわれることもない。
化する略300℃以下の温度で硬化する接着剤を採用す
ればよく、例えば、エポキシ系接着剤であれば、略10
0℃で硬化するので、アモルファス金属の特性が変化す
ることもない。
容易に変形するので、上述したアモルファスゼンマイの
クセ付を治具等に巻き付けて容易に行うことが可能とな
る。
ために別途熱処理等をする必要がなく、ゼンマイの製造
工程の簡素化を図ることが可能となる。尚、複数枚のア
モルファス金属板状体の内端部分、変曲点部分、外端部
分をスポット溶接しても、アモルファスゼンマイのクセ
付を行うことが可能である。尚、このような積層一体化
したバネを、水晶振動子の固定バネ、コハゼバネ等とし
て用いても、上述と同様の効果を享受できる。
機構 そして、本発明に係るゼンマイを利用した駆動機構は、
上述したアモルファスゼンマイと、このゼンマイの機械
エネルギを伝達する輪列とを備えたゼンマイを利用した
駆動機構であって、複数のアモルファスゼンマイと、こ
れらのゼンマイを収納する複数の香箱とを有し、前記輪
列には、前記複数の香箱が同時に噛合していることを特
徴とする。
れた複数の香箱を同時に輪列に噛合させているので、輪
列には、複数の香箱から出力される出力トルクを重ね合
わせた出力トルクが作用し、輪列に大きなトルクを作用
させることが可能となり、駆動機構を高い出力トルクで
動作させることが可能となる。
対する噛合の位相が互いにずれているのが好ましい。
ので、一方の香箱と輪列との噛合によって発生するトル
ク変動を、他の香箱との噛合により打ち消すことが可能
となり、香箱全体で輪列への伝達トルクの変動を抑制し
て駆動機構をスムースに動作させることが可能となる。
面に基づいて説明する。
マイとして利用した駆動機構に係るものである。図5
は、本発明の第1実施形態に係るアモルファスゼンマイ
を利用した電子制御式機械時計の駆動機構を示す平面図
であり、図6及び図7はその断面図である。
ルファスゼンマイ31、香箱歯車32、香箱真33及び
香箱蓋34からなる香箱30を備えている。アモルファ
スゼンマイ31は、外端が香箱歯車32、内端が香箱真
33に固定される。香箱真33は、地板2と輪列受3に
支持され、角穴車4と一体で回転するように角穴ネジ5
により固定されている。
計方向には回転しないように、コハゼ6と噛み合ってい
る。なお、角穴車4を時計方向に回転しアモルファスゼ
ンマイ31を巻く方法は、機械時計の自動巻または手巻
機構と同様であるため、説明を省略する。
二番車7へ、順次6.4倍増速されて三番車8へ、9.37
5 倍増速されて四番車9へ、3倍増速されて五番車10
へ、10倍増速されて六番車11へ、10倍増速されて
ロータ12へと、合計126,000倍の増速をし、こ
れらの歯車が輪列を構成している。
は分針13が、四番車9には秒針14がそれぞれ固定さ
れている。従って、二番車7を1rphで、四番車9を
1rpmで回転させるためには、ロータ12は5rps
で回転するように制御すればよい。このときの香箱歯車
1bは、1/7rphとなる。
ステータ15、コイルブロック16から構成される発電
機20を備えている。ロータ12は、ロータ磁石12
a、ロータかな12b、ロータ慣性円板12cから構成
される。ロータ慣性円板12cは、香箱30からの駆動
トルク変動に対しロータ12の回転数変動を少なくする
ためのものである。ステータ15は、ステータ体15a
に4万ターンのステータコイル15bを巻線したもので
ある。
万ターンのコイル16bを巻線したものである。ここ
で、ステータ体15aと磁心16aはPCパーマロイ等
で構成されている。また、ステータコイル15bとコイ
ル16bは、各々の発電電圧を加えた出力電圧がでるよ
うに直列に接続されている。
交流出力は、図5〜図7では図示を略したが、駆動機構
1の調速、脱進等の制御用に組み込まれる制御回路に供
給される。
て図8に基づいて説明する。
ンマイ31が香箱30内で巻締められた状態が示され、
図8(B)には、アモルファスゼンマイ31が香箱内で
巻戻った後の状態が示されている。
寸法は、幅b=1mm、厚さt=0.1mm、全長L=30
0mmである。
うに、その内端311が香箱真33に巻き付けられてい
るとともに、外端312が香箱の内側面に接合固定され
ている。
香箱30を香箱真33に対して回転させると、アモルフ
ァスゼンマイ31が巻締まる。巻締め後、香箱30の拘
束状態を解放すると、アモルファスゼンマイ31の巻戻
りとともに、香箱30が回転する。そして、香箱30の
外周に形成される香箱歯車32によって上述した二番車
7等の輪列を回転させて分針13、秒針14等が動作す
る。
ように、厚さ50μmのアモルファス金属板状体313
を複数枚積層一体化して形成され、各々のアモルファス
金属板状体313同士は、エポキシ系接着剤314によ
って貼り付けられている。
ゼンマイ31は、図10に示すように、香箱真33に対
する巻取り方向とは、反対側にクセ付され、平面略S字
状の自由展開形状を有している。
は、内端311の近傍に形成され、変曲点315から内
端311までは、アモルファスゼンマイ31を香箱真3
3に固定するために利用される。
製造するに際しては、まず、アモルファス金属板状体3
13を駆動機構1の動力源として必要な幅、長さ寸法に
加工する。
13をエポキシ系接着剤314を用いて互いに貼り合わ
せ、アモルファスゼンマイ31に必要な厚さt(0.1
mm)を確保する。
る前に、丸棒等にアモルファスゼンマイ31を巻き付け
てクセ付を行い、エポキシ系接着剤314を硬化させ
る。
ァスゼンマイ31によれば、次のような効果がある。 駆動機構1の動力源としてアモルファスゼンマイ3
1が採用されているので、駆動機構1の小型化を維持し
つつ、当該駆動機構1を長時間動作させることができ
る。
マイを組み込んだ場合、巻締め時から40時間で停止す
るのに対して、アモルファスゼンマイ31を組み込んだ
場合、巻締め時から45時間で停止し、持続時間は約1
0%増加する。 変曲点315の位置を内端311の近傍に設定する
ことができるので、クセ付をアモルファスゼンマイ31
のほぼ全長に亘って行うことができ、アモルファスゼン
マイ31が蓄積する機械エネルギを増大させて駆動機構
1の動作の長時間化を一層図ることができる。
トルク変動が小さいので、機械式時計の動力源として採
用した場合、駆動精度が向上する。 従来のゼンマイでは、バルク材から圧延を繰り返し
て所定寸法の厚さのゼンマイを得ていた。
マイ31は、単ロール法、双ロール法、回転水中紡糸法
等によりワイヤ、リボン材等を簡単に製造することがで
きるので、アモルファスゼンマイの製造の簡単化を図る
ことができる。 複数枚のアモルファス金属板状体313の積層一体
化をエポキシ系接着剤314によって行っているので、
アモルファスゼンマイ31の形成に加熱工程が加わるこ
ともなく、アモルファス金属の特性を損なうことがな
い。
ができるので、アモルファスゼンマイ31のクセ付を治
具等に巻き付けて容易に行うことができる。
ファスゼンマイを利用した駆動機構について説明する。
尚、以下の発明では、既に説明した部分又は部材と同一
又は類似の部分等については、その説明を省略又は簡略
する。
は、駆動機構1を動作させる動力源は、香箱30に収納
された1つのアモルファスゼンマイ31のみであった。
実施形態に係る駆動機構101は、香箱30を2つ備
え、各々の内部に収納されたアモルファスゼンマイ31
が駆動機構101の動力源とされている点が相違する。
には、2つの香箱30の外周に形成された香箱歯車32
(図11では図示略)が同時に噛合している。
を中心として同一方向に回動し、二番車7には、各々の
アモルファスゼンマイ31の出力トルクTを加えたトル
ク2Tが作用している。
は、図12に示すように、左側の香箱歯車32と右側の
香箱歯車32とが噛合する位相が異なっていて、左側の
香箱歯車32が二番歯車7とB1点で当接する時、右側
の香箱歯車32はB2点で二番歯車7から離間しようと
している。
の相対位置によって決まり、図11から判るように、二
番車7の回転中心と香箱真33とがなす角βに応じて噛
合する位相を調整することができる。
スゼンマイを利用した駆動機構101によれば、前述の
第1実施形態で述べた効果に加えて、次のような効果が
ある。すなわち、アモルファスゼンマイ31が収納され
た2つの香箱30を同時に輪列を構成する二番車7に同
時に噛合させているので、香箱30各々の出力トルクT
を重ね合わせて二番車7を回転させることができ、駆動
機構101を高い出力トルク2Tで動作させることがで
きる。
位相が互いにずれているので、一方、例えば、図12に
おいて、左側の香箱30と二番歯車7との噛合状態によ
って発生するトルク変動を、他の右側の香箱30との噛
合状態によりトルクを和することで、伝達トルクの変動
を抑制して駆動機構101をスムースに動作させること
ができる。
する。第3実施形態は、本発明に係るアモルファス金属
から構成されるバネを、機械式時計の調速機を構成する
テンプを付勢するヒゲゼンマイとして利用したものであ
る。すなわち、本例における調速機を構成するテンプひ
げ系400は、図13および図14に示すように、テン
真410、テン輪420、振り座430、ヒゲ玉44
0、ヒゲ持450、緩急針460を含んで構成される。
430、ヒゲ玉440が固定され、これらが一体で回転
するように構成されている。ヒゲゼンマイ470は、ア
モルファス合金から構成される非磁性体であり、その内
周端がヒゲ玉440に固定され、外周端は、ヒゲ持45
0に固定されている。緩急針460は、ヒゲ棒461お
よびヒゲ受462を含んで構成され、ヒゲゼンマイ47
0の最外周部分は、ヒゲ棒461およびヒゲ受の間を通
過している。
は、テンプ輪420がテン真410を軸として回転する
と、これに伴いヒゲ玉440も回転するので、テンプ輪
420には、ヒゲゼンマイ470の付勢力が作用し、こ
の付勢力とテンプ輪470の慣性力とがつり合うと、テ
ン輪420の回転が停止し、ヒゲゼンマイ470の付勢
力により、テン輪420は逆方向に回転する。すなわ
ち、テン輪420は、テン真410を軸として揺動を繰
り返す。このテン輪420の揺動周期は、緩急針460
のヒゲ棒461、ヒゲ受462の位置を微調整すること
により、変化させることができる。また、この揺動周期
Tは、テンプ輪420等の回転部分の慣性モーメントJ
の他、ヒゲゼンマイ470の材料特性によっても変化
し、ヒゲゼンマイ470の幅をb、厚さをt、ゼンマイ
長さをL、ヒゲゼンマイのヤング率をEとすると、以下
の(25)式によって表される。 以上ような第3実施形態によれば、次のような効果があ
る。
ァス金属により構成されているので、温度変化に伴うヤ
ング率Eの変化が少なく、(25)式で表されるテンプ
ヒゲ系400の揺動周期の変化も少なくなり、テンプヒ
ゲ系400を含む調速機を有する機械式時計の高精度化
を図ることができる。
モルファス金属から構成されているので、耐磁性が向上
し、ヒゲゼンマイ470が外部磁界等に引っ張られて
も、ゼンマイの特性が低下することもない。
する。第4実施形態は、本発明に係るアモルファス金属
から構成されるバネを、水晶発振式時計の水晶振動子を
付勢状態で固定するバネとして利用したものである。
子500は、真空カプセル501と、この真空カプセル
501の内部に収納される音叉型の振動子本体502と
を含んで構成され、真空カプセル501の端部に設けら
れる端子503が回路基板510と電気的に接続されて
発振回路が構成される。このような水晶振動子500
は、地板520上に配置され、ネジ530と、アモルフ
ァス金属から構成される固定バネ540によって、地板
520に押さえつけられる方向に付勢された状態で固定
されている。
ような効果がある。すなわち、アモルファス金属から構
成される固定バネ530は、ヤング率が小さいので、固
定バネ530のたわみ量と付勢力との関係は、上述した
図1に示されるように、従来材料のバネのグラフG1よ
りも傾きの小さいグラフG2となる。従って、固定バネ
530のたわみ量が変化しても、その際の付勢力の変動
が少なくなるので、水晶振動子の周期のずれを少なくす
ることができ、水晶発振式時計の高精度化を図ることが
できる。
れるものではなく、次に示すような変形等をも含むもの
である。
ルファスゼンマイ31は、電子制御式機械時計の駆動機
構1の動力源として用いられていたが、これに限らず、
制御系が調速機、脱進機によって構成される通常の機械
式時計の駆動機構にアモルファスゼンマイを用いてもよ
い。
動機構1の動力源としてアモルファスゼンマイ31が用
いられていたが、これに限らず、オルゴール等他の駆動
機構の動力源としてアモルファスゼンマイを用いても良
い。
ファスゼンマイ31は接着剤314によって積層一体化
されていたが、内端311、外端312、変曲点315
にスポット溶接を行って一体化してもよく、このように
すれば、積層一体化と同時にアモルファスゼンマイのク
セ付をある程度行うことができる。
構成する二番車7には、2つの香箱30が噛合していた
が、2以上の香箱30が噛合していてもよく、要する
に、アモルファスゼンマイの蓄積エネルギと、駆動機構
の動力源として要求されるエネルギとに応じて適宜決定
すればよい。
ァス金属から構成されるバネを、水晶振動子500を固
定する固定バネ530として利用していたが、これに限
られない。すなわち、第1実施形態の角穴車4と噛合す
るコハゼ6を構成するコハゼバネをアモルファス金属か
ら構成してもよい。コハゼは、香箱内のゼンマイを巻く
際の巻戻り防止のための部品であり、その時機能するバ
ネがコハゼバネである。そして、コハゼバネは、ゼンマ
イを巻いている最中、コハゼと係合している角穴車のか
み合い歯数分だけ繰り返し荷重を受けることとなり、そ
の回数は数万〜数十万回/年となる。このような繰り返
し荷重がかかる場合、コハゼバネの許容応力は、最大応
力の1/2以下に設定する必要がある。従って、このよ
うなコハゼバネにアモルファス金属から構成されるバネ
を使用すれば、許容応力が高く設定でき、また付勢力の
ばらつきも少ないので、コハゼバネの材料としても有利
である。
及び形状等は、他の目的を達成できる範囲で他の構造等
としてもよい。
マイ、ヒゲゼンマイ、これらを利用した駆動機構、およ
び時計は、時計、オルゴール、オルゴール等の駆動機構
の動力源として、水晶発振式時計等の水晶振動子を固定
するバネとして、機械式時計のテンプを付勢するヒゲゼ
ンマイとして、香箱内のゼンマイの巻締めの際の巻戻り
防止のためのコハゼバネとして好適である。
力の関係を示すグラフである。
る。
イの変曲点位置を表すグラフである。
る。
ンマイを利用した駆動機構を表す平面図である。
ある。
図である。
ゼンマイを表す平面図である。
断面図である。
開形状を表す平面図である。
す部分平面図である。
合状態を表す部分平面図である。
の構造を表す平面図である。
造を表す断面図である。
固定構造を表す側面図である。
イ、311…内輪、312…外輪、313…アモルファ
ス金属板状体、314…接着剤、315…変曲点
Claims (4)
- 【請求項1】 動力源としてアモルファス金属を用いた
ゼンマイと、前記ゼンマイによって駆動される輪列と、
前記輪列によって駆動される発電機とを有したことを特
徴とする駆動機構。 - 【請求項2】 請求項1において、前記輪列は前記発電
機によって回転制御されることを特徴とする駆動機構。 - 【請求項3】 動力源としてアモルファス金属を用いた
ゼンマイと、前記ゼンマイによって駆動される輪列と、
前記輪列によって駆動される発電機とを有したことを特
徴とする時計。 - 【請求項4】 請求項3において、前記輪列は前記発電
機によって回転制御されることを特徴とする時計。
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2002
- 2002-03-14 JP JP2002070390A patent/JP3982290B2/ja not_active Expired - Lifetime
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