JP6388333B2 - 定力機構、ムーブメントおよび時計 - Google Patents
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Description
ところで、脱進機は、トルク調整用バネの付勢力により発生するトルクが伝達されて駆動される。このため、トルク調整用バネの付勢力の変化に起因するトルク変動率が計時精度に大きく影響を与えることとなる。
また、本発明の時計は、上記のムーブメントを備えたことを特徴とする。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側、すなわち文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側、すなわち文字板と反対の側をムーブメントの「表側」と称する。
図1に示すように、時計1は、時に関する情報を示す目盛り3などを含む文字板2を備えている。時計1は、時を示す時針4a、分を示す分針4bおよび秒を示す秒針4cを含む針4を備えている。また、時計1は、巻真6を備えている。巻真6は、例えば、日付の修正や、時刻表示(時および分の表示)を修正する際に用いられる時計部品である。巻真6の一端部には、時計ケースの側方に位置するりゅうず7が取付けられている。
図3は、図2のA−A線に沿った断面図である。
図4は、図2のB−B線に沿った断面図である。
なお、図2から図4では、図面を見やすくするため、ムーブメント5を構成する時計部品のうち一部の図示を適宜省略している。
図2に示すように、実施形態のムーブメント5は、動力源である香箱車65(図2において不図示、図6参照)と、脱進機60と、輪列70と、定力機構10と、を備えている。以下に、ムーブメント5の各構成部品について説明する。
図3に示すように、がんぎ車61は、地板90と、地板90よりもムーブメント5の表側に位置する第一輪列受91とにより、所定の回転軸周りに軸受を介して回転可能に支持されている。がんぎ車61は、がんぎ歯部62とがんぎかな63とを備えている。がんぎ歯部62は、がんぎ車61の本体部の外周に形成されている。
アンクルは、地板90と不図示のアンクル受との間で所定の回転軸周りに回転可能に支持されており、一対のつめ石を備えている。一対のつめ石は、不図示の調速機により、がんぎ車61のがんぎ歯部62に対して交互に所定の周期で係合および解除される。これにより、がんぎ車61は、所定の周期で脱進可能となっている。
図3に示すように、香箱車側輪列70Aは、香箱車65(図6参照)と噛合する不図示の香箱車側二番車と、香箱車側二番車と噛合するかな73aを有する香箱車側三番車73と、香箱車側三番車73と噛合するかな74aを有する香箱車側四番車74と、を備えている。香箱車側二番車、香箱車側三番車73および香箱車側四番車74の各歯車は、それぞれ地板90と第一輪列受91とにより、所定の回転軸周りに軸受を介して回転可能に支持されている。香箱車側輪列70Aは、香箱車65の主ぜんまいの動力(以下、「動作トルク」という。)を定力機構10に伝達している。
定力機構10は、動力源である香箱車65(図6参照)から脱進機60に伝達される動作トルクの変動を抑制するために設けられており、動力切替部11と、スイングレバー20と、周期制御機構30と、により構成されている。以下に、定力機構10の各構成部品について説明する。
動力切替部11は、動力源である香箱車65から脱進機60への輪列70に組み込まれている。本実施形態の動力切替部11は、香箱車側輪列70Aの香箱車側四番車74と、脱進機側輪列70Bの脱進機側四番車77とに噛合する遊星車12である。動力切替部11は、トルク調整用バネ40に貯蓄された動作トルクを脱進機60に伝達する第一の動力伝達ルートP1(図6参照)と、香箱車65(図6参照)からの動作トルクを後述のトルク調整用バネ40に伝達する第二の動力伝達ルートP2(図6参照)と、を切り替えている。
スイングレバー20は、第一軸C1と直交する方向に張り出すとともに、軸受を介して遊星車12を回転可能に支持する遊星車支持部21を有している。遊星車支持部21は、スイングレバー20の回動にともなって、遊星車12が第一軸C1周りを公転するとともに自転するように支持している。
周期制御機構30は、主にストップ車31と、アーム部材35と、係止部39と、トルク調整用バネ40と、バネ調節機構50と、を備えている。
図4に示すように、ストップ車31は、地板90と第三輪列受93とにより、所定の回転軸周りに軸受を介して回転可能に支持されている。ストップ車31は、外周面にストップ歯部32を有している。また、ストップ車31は、香箱車側四番車74と噛合するストップかな33を有しいている。ストップ車31は、香箱車側輪列70Aを介して香箱車65(図6参照)からの動作トルクが伝達されることにより回転可能となっている。
アーム歯車37は、平面視で第二軸C2を中心とする扇状に形成されている。アーム歯車37の外周面には、複数のアーム歯部37aが形成されている。アーム部材35は、アーム歯車37がスイングレバー歯車25と噛合することにより、スイングレバー20と連結されている。
ひげぜんまい41は、アーム部材35が回動することにより、外端部41bが固定された状態で内端部41aが第二軸C2周りに回動するとともに外径が拡縮(伸縮)する。ひげぜんまい41は、係止部39がストップ車31から離反する方向(図2における第二軸C2を中心とした時計回り方向)に付勢力が作用するように巻き上げられた状態で、アーム部材35と地板90とに固定される。
バネ調節車45は、筒状に形成されており、外周面にバネ調節車歯部45aを有している。バネ調節車歯部45aは、不図示の治具歯車と噛合可能となっている。バネ調節車45は、例えば第二軸C2と同軸に形成された地板90の筒状部90aに対して外嵌されている。
バネ調節車45は、例えばムーブメント5の製造時において、治具歯車によって所定角度回転される。これにより、ひげぜんまい41は、所定量だけ巻き上げられて所望の撓み量となるように調節される。このように、本実施形態のバネ調節機構50によれば、バネ調節車45を回転させるだけで、容易にひげぜんまい41の撓み量を調節できる。
図5は、横軸を時間とし、縦軸をトルク調整用バネ40の動作トルクの貯蓄量として模式的に表したグラフである。
図6は、定力機構10のブロック図であって、動作トルクの伝達を模式的に表した説明図である。
図7から図9は、それぞれムーブメント5の表側から見たときの定力機構10の動作説明図である。
続いて、上述のように構成された定力機構10の作用について説明をする。なお、以下の説明では、時計1の動作中において、トルク調整用バネ40の動作トルクの貯蓄量(以下、「貯蓄量W」という。)が最大となった後、トルク調整用バネ40に貯蓄された動作トルクが脱進機60に伝達されて貯蓄量Wが最小となり、再度貯蓄量Wが最大となるまでの動作について説明する。また、以下の説明において、図7から図9におけるムーブメント5の表側から見たときの時計回り方向をCW方向といい、反時計回り方向をCCW方向という。また、以下の説明において、各部品の符号については、必要に応じて図2から図4をあわせて参照されたい。
アーム部材35がCW方向に回動すると、アーム部材35と連結されたスイングレバー20は、第一軸C1を中心としてCCW方向に回動する。
ここで、香箱車側四番車74は停止状態となっている。このため、スイングレバー20に支持される遊星車12は、香箱車側四番車74と噛合した状態で、第一軸C1周りをCCW方向に公転するとともにCW方向に自転する。また、遊星車12と噛合する脱進機側四番車77は、遊星車12の自転により動作トルクが伝達されてCCW方向に回転する。そして、脱進機側四番車77に伝達された動作トルクは、中間車76を介して、脱進機60のがんぎ車61に伝達される。すなわち、図6における第一の動力伝達ルートP1で示されるように、香箱車65からの動作トルクは、トルク調整用バネ40に貯蓄された後、変動の少ない状態で脱進機60に伝達される。
このとき、図9に示すように、香箱車側輪列70Aの各歯車およびストップ車31は、香箱車65(図6参照)からの動作トルクにより回転する。具体的に、香箱車側四番車74は、CCW方向に回転する。また、香箱車側四番車74と噛合するストップ車31は、CW方向に回転する。なお、このとき、脱進機60のがんぎ車61および脱進機側輪列70Bの各歯車は、回転が停止した状態となっている。
ここで、脱進機側四番車77は停止状態となっている。このため、脱進機側四番車77と噛合する遊星車12は、脱進機側四番車77および香箱車側四番車74と噛合した状態で、第一軸C1周りをCW方向に公転するとともにCW方向に自転する。また、遊星車12を支持するスイングレバー20は、遊星車12の公転にともなって、第一軸C1を中心にCW方向に回転する。
以降、上記の動作を繰り返すことにより、脱進機60は、伝達される動作トルクの変動が抑制された状態で駆動される。
TrMIN=TrMAX−k×Tc・・・(1)
トルク調整用バネ40は、バネ定数kが大きいほど弾性変形しにくく撓み量は少なくなり、バネ定数kが小さいほど弾性変形しやすく撓み量は大きくなる。
また、撓み係数nなる値を導入して、次式を定義する。
k=TrMAX/(n×Tc)・・・(2)
nは、トルク調整用バネ40が、撓みの作動量の何倍程度の撓みを有しているかを表している。(1)式と(2)式との関係から、以下の式が得られる。
TrMIN=TrMAX×(n−1)/n・・・(3)
また、最大動作トルクTrMAXと、最小動作トルクTrMINとの差(以下、「動作トルクの差」という。)を△Trとしたとき、次式で表される。
△Tr=TrMAX−TrMIN=TrMAX/n・・・(4)
(4)式より、nが大きい場合、すなわちトルク調整用バネ40の撓み量が多く取れるほど,動作トルクの変化が小さくなるといえる。
香箱車65の動作トルクとムーブメント5の経過時間とは、単調減少の関係にある。したがって、動作トルクの差△Trが小さいほど、不安定状態を生じる香箱車65(すなわち主ぜんまい)の動作トルク範囲は縮小し、これに連動して不安定状態となる時間も縮小する。
これに対して、トルク調整用バネ40にひげぜんまい41を採用した本実施形態においては、例えば撓み係数n=20とすることにより、不安定状態の時間T2をムーブメント5の持続時間Tmの1/20程度まで縮小することができる(図11参照)。なお、撓み係数n=20の場合は一例であって、例えば撓み係数nを20以上とすることもできる。
このように、本実施形態では、従来技術と比較して不安定領域の時間を大幅に短縮できるので、計時精度に優れたムーブメント5および時計1が得られる。
Claims (4)
- 動力源から脱進機への輪列に組み込まれる動力切替部と、
前記動力切替部を第一軸周りに回動可能に支持するスイングレバーと、
前記動力源から動力が伝達されて回転可能なストップ車と、伸縮により付勢力を発生して前記脱進機を駆動するトルク調整用バネと、前記トルク調整用バネにより動作されて前記ストップ車と係止する係止部と、を有し、前記スイングレバーを間欠的に回動させる周期制御機構と、
を備え、
前記周期制御機構は、前記スイングレバーと連結され、前記係止部を第二軸周りに回動可能に支持するアーム部材を備え、
前記トルク調整用バネは、前記アーム部材に連結されるとともに、伸縮により前記第二軸周りに付勢力を付与することを特徴とする定力機構。 - 前記周期制御機構は、前記トルク調整用バネの撓み量を調節するバネ調節機構を有することを特徴とする請求項1に記載の定力機構。
- 請求項1または2に記載の定力機構を備えたことを特徴とするムーブメント。
- 請求項3に記載のムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
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