JP6077751B2 - 偏光板 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの少なくとも一方の面にプロピレン系樹脂層を含む多層フィルムが貼合された偏光板に関する。この偏光板は、液晶表示装置に好適に用いられる。
液晶表示装置は、液晶テレビ、液晶モニター、パーソナルコンピュータなど、薄型の表示装置として、用途が急拡大している。特に液晶テレビの市場拡大は著しく、また、低コスト化の要求も非常に高い。液晶テレビなどの液晶表示装置は、偏光板を構成部材として所定の構成で積層され、使用されている。
偏光板は通常、二色性色素が吸着配向したポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面または両面に接着剤層を介して、透明保護フィルム、たとえばトリアセチルセルロースに代表される酢酸セルロース系の透明保護フィルムを積層した構成となっている。これを、必要により他の光学フィルムを介して液晶セルに粘着剤で貼り合わせ、液晶表示装置の構成部品とされる。
しかし、酢酸セルロース系樹脂のような親水性の保護フィルムを使用すると、高温多湿の条件では、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの水分量に影響を与え、偏光板としての性能が多少なりとも変化してしまうことがあり、そのため、親水性樹脂からなる保護フィルムの代わりに疎水性の例えばプロピレン系樹脂からなる保護フィルムを使用し、環境による影響を極力抑制できる構成の偏光板が検討されるようになった(たとえば特開2009−258588号公報(特許文献1)など)。
一方、液晶表示装置の中でも車載用など、使用環境が高温状態となるものがあり、またテレビ、モニターなどでもバックライトからの熱で構成部材である偏光板は高温状態となることがある。そのような過酷な状態でも安定的な性能を発揮するには、特許文献1に示されるプロピレン系樹脂からなる保護フィルムを使用した偏光板をさらに高性能とした偏光板が望まれていた。
特開2009−258588号公報
特許文献1に記載の偏光板は、偏光フィルムの両面に疎水性材料からなるフィルムを配置するため、使用環境による偏光フィルムへの影響が少ない偏光板である。しかし、プロピレン系樹脂からなる保護フィルムを有する偏光板は、プロピレン系樹脂が低いガラス転移温度を有する柔軟な素材であることから、高温下での使用によってポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムが大きく収縮する場合、その収縮を抑える性能が若干不足することがあり、偏光板として変形を伴う可能性があるという課題を有していた。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、プロピレン系樹脂フィルムを保護フィルムとしながら、高温環境下で使用した場合でも変形を伴うことの少ない偏光板を提供することである。
本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの両面にそれぞれ接着剤を介して透明樹脂フィルムが貼合されており、前記透明樹脂フィルムの少なくとも一方は、厚みが5〜100μmのプロピレン系樹脂層を含む多層フィルムであり、80℃において1000MPa以上の引張弾性率を示すことを特徴とする。
この偏光板において、上記の多層フィルムは、プロピレン系樹脂層と、ガラス転移温度が90℃以上の熱可塑性樹脂層、とりわけスチレン系樹脂層とを含むことが好ましい。また、プロピレン系樹脂層が最表面となり、その最表面となったプロピレン系樹脂層側で偏光フィルムに貼合されていることも好ましい。さらに、偏光フィルムの一方の面に前記多層フィルムが貼合され、偏光フィルムの他方の面にはノルボルネン系樹脂フィルムが貼合されている形態も好ましい。
本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの両面にそれぞれ接着剤を介して透明樹脂フィルムが貼合されている偏光板に関し、前記両面に貼合される透明樹脂フィルムの少なくとも一方は、厚みが5〜100μmのプロピレン系樹脂層を含む多層フィルムであって、80℃で測定される弾性率が1000MPa以上である保護フィルムで構成したことにより、高温環境下で使用されても変形を伴うことの少ない偏光板とすることができる。
(偏光フィルム)
本発明の偏光板に用いられる偏光フィルムは、具体的には、一軸延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものである。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体、たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体としては、たとえば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98モル%以上である。これらのポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、たとえば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなども、使用し得る。またポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000〜10000の範囲内、好ましくは1500〜5000の範囲内である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の適宜の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムの膜厚は特に限定されるものではないが、たとえば10〜150μm程度である。
偏光フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程(染色処理工程)、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程(ホウ酸処理工程)、ならびにこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程(水洗処理工程)を経て、製造される。
また、偏光フィルムの製造に際し、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは一軸延伸されるが、この一軸延伸は、染色処理工程の前に行なってもよいし、染色処理工程中に行なってもよいし、染色処理工程の後で行なってもよい。一軸延伸を染色処理工程の後で行なう場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理工程の前に行なってもよいし、ホウ酸処理工程中に行なってもよい。勿論、これらの複数の段階で一軸延伸を行なうことも可能である。一軸延伸は、周速の異なるロール間で一軸に延伸するようにしてもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸するようにしてもよい。また、大気中で延伸を行なう乾式延伸であってもよいし、溶剤にて膨潤させた状態で延伸を行なう湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
染色処理工程におけるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬することによって行なわれる。二色性色素としては、たとえばヨウ素、二色性染料などが用いられる。二色性染料には、たとえば、C.I.DIRECT RED 39などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料が包含される。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常0.01〜1重量部であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常0.5〜20重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃であり、またこの水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1800秒である。
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶液二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部、好ましくは1×10-3〜1重量部、さらに好ましくは1×10-3〜1×10-2重量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有してもよい。二色性色素として二色性染料を用いる場合、染色に用いる染料水溶液の温度は、通常20〜80℃であり、またこの水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1800秒である。
ホウ酸処理工程は、二色性色素により染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行なわれる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。上述した染色処理工程における二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸処理工程に用いるホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。この場合、ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常0.1〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常60〜1200秒、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
続く水洗処理工程では、上述したホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、たとえば水に浸漬することによって水洗処理する。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃であり、浸漬時間は、通常1〜120秒である。水洗処理後は、通常乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は、たとえば熱風乾燥機、遠赤外線ヒータなどを好適に用いて行われる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒、好ましくは120〜600秒である。
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理および水洗処理を施して、偏光フィルムが得られる。この偏光フィルムの厚みは、通常5〜40μmの範囲内である。本発明の偏光板は、このような偏光フィルムの両面にそれぞれ、接着剤を介して透明樹脂フィルムを貼合し、製造される。そして、これら両面に貼合される透明樹脂フィルムの少なくとも一方は、厚みが5〜100μmのプロピレン系樹脂層を含む多層フィルムであって、JIS K7161−1994「プラスチック−引張特性の試験方法 第1部:通則」に準拠し、80℃において測定される引張弾性率が1000MPa以上である偏光板保護フィルムで構成する。
(多層フィルム)
本発明の偏光板は上述のとおり、偏光フィルムの両面に接着剤を介して貼合される透明樹脂フィルムのうち少なくとも一方を、厚みが5〜100μmのプロピレン系樹脂層を含み、JIS K7161:1994に準拠して80℃で測定される引張弾性率が1000MPa以上である多層フィルムとしたことを特徴とする。このようにプロピレン系樹脂層を含みながら引張弾性率の大きい多層フィルムを用いていることで、偏光板が高温下など過酷な環境下で使用されるときでも、熱により偏光フィルムに生じる収縮を抑え込むことができ、偏光板の変形が少なくなる。このような観点からは、本発明における多層フィルムの上記引張弾性率は、1100MPa以上であることが好ましい。多層フィルムの上記引張弾性率の上限に特別な制限はないが、一般的な樹脂フィルムが示す引張弾性率を考慮すると、3000MPa程度までで十分である。
本発明に用いる多層フィルムにおいて、前記プロピレン系樹脂層に積層される層は、ガラス転移温度が90℃以上の熱可塑性樹脂で構成することが好ましい。ガラス転移温度が90℃以上の熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂(たとえば、メタクリル酸メチル系共重合体等)、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル(たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ノルボルネン系樹脂(たとえば、ノルボルネンを代表例とする環状オレフィンの開環重合体の水素添加物や、エチレンおよび炭素数3〜12のα−オレフィンから選ばれるオレフィンモノマーと環状オレフィンとの付加共重合体等)などが挙げられる。多層フィルムは、プロピレン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との共押出成形によって好ましく製造されるところ、上に掲げたプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂の中では、共押出の際の成形温度がプロピレン系樹脂のそれに比較的近いという点で、スチレン系樹脂や、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体が好ましい。
プロピレン系樹脂層とスチレン系樹脂など他の熱可塑性樹脂層とが積層された多層フィルムを共押出成形で製造する場合、これら樹脂層の間には、中間層として接着の機能を有する熱可塑性樹脂を配置することが好ましい。中間層に用いることのできる熱可塑性樹脂は、プロピレン系樹脂とそこに積層される他の熱可塑性樹脂の両方に接着する機能があればよい。具体的には、酢酸ビニルをはじめとするビニルエステル、メタクリル酸メチルをはじめとするメタクリル酸エステル、アクリル酸メチルをはじめとするアクリル酸エステル、無水マレイン酸などから選ばれる1種または2種以上のビニルモノマーと、エチレンとの共重合体であるエチレン系共重合体;好ましくは直鎖状である低密度ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト変性体や、プロピレン系樹脂の無水マレイン酸グラフト変性体を包含する変性ポリオレフィン;スチレンと共役ジエンのブロック共重合体の水素添加物であるSEBS〔ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン〕、SEPS〔ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン〕、およびSEEPS〔ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン〕を包含するスチレン系エラストマーなどが挙げられる。SEBSにおいて、「ブチレン」と表示されている部分は、ブタジエンから導かれる単位に水素添加されていることを意味する。またSEPSおよびSEEPSにおいて、「エチレン/プロピレン」と表示されている部分は、イソプレンから導かれる単位に水素添加されていることを意味する。
本発明に用いるのに好適な多層フィルムの具体的な層構成の例を挙げると、
(A)プロピレン系樹脂層/中間層/ガラス転移温度が90℃以上の熱可塑性樹脂層、
(B)プロピレン系樹脂層/中間層/ガラス転移温度が90℃以上の熱可塑性樹脂層/中間層/プロピレン系樹脂層、
(C)ガラス転移温度が90℃以上の熱可塑性樹脂層/中間層/プロピレン系樹脂層/中間層/ガラス転移温度が90℃以上の熱可塑性樹脂層
などがある。それぞれ、プロピレン系樹脂層の厚みが5〜100μmであり、かつ、多層フィルムの80℃における引張弾性率が1000MPa以上である構成が使用できる。
さらに具体的な多層フィルムの層構成の例を挙げると、
(A)プロピレン系樹脂層/中間層/スチレン系樹脂層、
(B)プロピレン系樹脂層/中間層/スチレン系樹脂層/中間層/プロピレン系樹脂層、
(C)スチレン系樹脂層/中間層/プロピレン系樹脂層/中間層/スチレン系樹脂層
などとなる。80℃における引張弾性率が1000MPa以上となるように、各層の厚み比を調整することが好ましい。前記引張弾性率は、成形条件にも依存するので一概にはいえないが、目安としてプロピレン系樹脂層の厚みを1としたとき、全体の厚みが1.5〜10程度の範囲となるようにするのが、成形のしやすさという点からは好ましいと考えられる。
偏光フィルムに対する接着力の観点からは、多層フィルムを構成するプロピレン系樹脂層が最表面となり、その最表面となったプロピレン系樹脂層側で偏光フィルムに貼合されることが好ましい。そこで、上記の(A)および(B)は好ましい形態となる。(A)のように、多層フィルムの一方の面をプロピレン系樹脂層とし、他方の面を他の樹脂層とした場合、当該他の樹脂層は、偏光フィルムから最も遠い側に位置させることが好ましい。また、(B)のように、間に他の樹脂層を挟んで、多層フィルムの両面にプロピレン系樹脂層がくるようにする形態も好ましい。この場合は、一方のプロピレン系樹脂層が偏光フィルムに貼合され、他方のプロピレン系樹脂層が偏光フィルムから最も遠い位置になる。
上述のように、ガラス転移温度が90℃以上の熱可塑性樹脂としてスチレン系樹脂が好適に使用できるが、このスチレン系樹脂は、スチレンを主な構成モノマーとする重合体である。スチレン系樹脂はゴム成分が配合されていることもあるが、液晶表示装置に使用する偏光板に適用する場合、透明性の観点からは、ゴム成分は極力少ないことが好ましい。このスチレン系樹脂は、JIS K7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準拠して測定されるヘイズ値が1.5以下であることが好ましい。また、このスチレン系樹脂は、JIS K7206:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)試験方法」に準拠して測定されるビカット軟化点が90℃以上であることが、保護フィルムとしての弾性率を高くしやすいため、好ましい。さらに、プロピレン系樹脂と共押出成形するときの成形のしやすさを考慮すると、JIS K7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して温度200℃、荷重5kg(49.03N)で測定されるメルトマスフローレイト(MFR)が3〜20g/10分の範囲内にあることが好ましい。
本発明に用いられるプロプレン系樹脂層は、プロピレンからなる構成単位を90重量%以上含有するプロピレン系樹脂で構成することが好ましく、この樹脂をフィルム状に成形したものであればよい。ここで、プロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。また、これらを併用してもよい。プロピレンに共重合可能な他のモノマーとしては、たとえば、エチレンおよびα−オレフィンを挙げることができる。共重合されるα−オレフィンは、炭素数4以上であり、好ましくは炭素数4〜12のものである。炭素数4〜12のα−オレフィンの具体例を挙げれば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンのような直鎖状モノオレフィン類;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンのような分岐状モノオレフィン類;ビニルシクロヘキサンなどがある。プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
プロピレンと他のモノマーとの共重合体の具体例としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、およびプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体のような、プロピレンと、前記エチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群より選ばれる1種または2種以上のモノマーとの二元ないし三元の共重合体などが挙げられる。
プロピレン系樹脂が前記共重合体からなる場合には、プロピレン由来の構成単位は、耐熱性などの特性により選択することができる。高い耐熱性が必要な場合、プロピレン由来の構成単位を多く含むほうが好ましく、具体的には96重量%以上であるのが好ましい。なお、共重合体中の当該他のモノマー由来の構成単位の含有率は、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法に従い、赤外線(IR)スペクトル測定を行なうことにより、求めることができる。
また、プロピレン系樹脂の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれでもよいが、フィルムに成形した後の剛性や透明性のバランスに優れるという観点から、アイソタクチック性の高いプロピレン系樹脂が好ましい。
プロピレン系樹脂は、公知の重合用触媒を用いて重合された重合体または共重合体であってよく、重合用触媒としては、たとえば、次のようなものを挙げることができる。
(A)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分からなるTi−Mg系触媒、
(B)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物などの第三成分とを組み合わせた触媒系、
(C)メタロセン系触媒など。
前記(A)の固体触媒成分としては、たとえば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報などに記載の触媒系が挙げられる。また、前記(B)の触媒系における有機アルミニウム化合物の好ましい例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物、テトラエチルジアルモキサンなどが挙げられ、電子供与性化合物の好ましい例としては、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチルプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランなどが挙げられる。また、前記(C)のメタロセン系触媒としては、たとえば、特許第2587251号公報、特許第2627669号公報、特許第2668732号公報などに記載の触媒系が挙げられる。
プロピレン系樹脂は、たとえば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンのような炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶液重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマーをそのまま重合させる気相重合法などによって製造することができる。これらの方法による重合は、バッチ式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。
多層フィルムを構成するプロピレン系樹脂層は、上述したプロピレン系樹脂を溶融押出法によって押出し、フィルム状に成形することによって形成される。この場合、プロピレン系樹脂は、JIS K7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトマスフローレイト(MFR)が1〜30g/10分の範囲内にあることが好ましく、さらには1〜20g/10分の範囲内、とりわけ1.5〜15g/10分の範囲内にあることが一層好ましい。MFRがこの範囲内にあるプロピレン系樹脂を用いることで、溶融押出によるフィルム成形において、押出機の負荷を低減しつつ、厚みの均質なフィルムが製造しやすくなる。
プロピレン系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、たとえば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤などを挙げることができる。酸化防止剤としては、たとえば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられ、また、1分子中にたとえば、フェノール系の酸化防止機構とリン系の酸化防止機構とを併せ持つユニットを有する複合型の酸化防止剤も用いることができる。紫外線吸収剤としては、たとえば、2−ヒドロキシベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ベンゾエート系の紫外線吸収剤などが挙げられる。帯電防止剤は、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型のいずれであってもよい。滑剤としては、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドのような高級脂肪酸アミド、ステアリン酸のような高級脂肪酸およびその塩などが挙げられる。アンチブロッキング剤としては、球状あるいはそれに近い形状の微粒子が、無機系、有機系を問わず使用できる。
また、プロピレン系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で造核剤が添加されていてもよい。造核剤を添加する場合、無機系造核剤、有機系造核剤のいずれであってもよい。無機系造核剤としては、タルク、クレイ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。また、有機系造核剤としては、芳香族カルボン酸の金属塩類、芳香族リン酸の金属塩類などの金属塩類、高密度ポリエチレン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリシクロペンテン、ポリビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。これらの中でも有機系造核剤が好ましく、さらに好ましくは上述した金属塩類および高密度ポリエチレンである。また、プロピレン系樹脂に対する造核剤の添加量は0.01〜3重量%とするのが好ましく、0.05〜1.5重量%であればさらに好ましい。以上の添加物は、複数種が併用されてもよい。
本発明の偏光板に用いられる多層フィルムは、先述のとおり、共押出成形法(共押出キャスト法ともいう)によって好適に製造されるが、その他、押出ラミネーション法など、他の公知の積層成形法によって製造することもできる。やはり先述のとおり、共押出成形法(共押出キャスト法)で成形されることが、生産性およびコストの観点から好ましい。この共押出成形法は、必要な数の押出機を備え、それぞれの押出機が1台のTダイに連結された設備を用いて、このTダイより樹脂を積層した状態でフィルム状に押出し、冷却ロールにて冷却固化し、多層フィルムを製造する方法である。
具体的に、共押出成形法にて前記多層フィルムを製造する方法の一例として、プロピレン系樹脂/無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン樹脂/スチレン系樹脂の構成からなる多層フィルムを製造する方法について、以下に説明する。なお、ここでいう「無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン樹脂」は、先に中間層の例として掲げた「好ましくは直鎖状である低密度ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト変性体」に相当する。
3台の押出機をそれぞれ180〜300℃程度に加熱し、プロピレン系樹脂、無水マレイン酸変性直鎖状ポリエチレン系樹脂、およびスチレン系樹脂のパウダー状物またはペレット状物をそれぞれの押出機に供給する。各押出機のスクリューにより溶融混練し、Tダイの上流側に設置されたフィードブロックあるいはコンバーティングアダプターに供給され、最終フィルムの多層構成順に並べた状態でTダイに入り、Tダイのスリットよりシート状に溶融共押出された後、種々の手段で冷却ロールに接触させ、冷却することで、多層フィルムが製造される。
共押出されるプロピレン系樹脂を含む溶融シート状物の温度は、180〜300℃程度が好ましい。このときの溶融シート状物の温度が180℃を下回ると、延展性が十分でなく、得られるフィルムの厚みが不均一になり、位相差ムラのあるフィルムとなる可能性がある。また、その温度が300℃を超えると、樹脂の劣化や分解が起こりやすく、シート中に気泡が生じたり、炭化物が含まれたりすることがある。
3台の押出機は、それぞれ単軸押出機であっても二軸押出機であってもよく、各押出機は、統一されていなくてもよい。また、多層フィルムにおける各層の構成比に基づいて、3台の押出機の各サイズを選択することにより、設備的に安定した押出量で製造できるようにすることもできる。各押出機で溶融混練されたそれぞれの樹脂は、アダプターと呼ばれる温度調節された単管を通り、フィードブロック、あるいはコンバーティングアダプターに供給される。これらは、Tダイの種類に応じて適切なものが選択される。Tダイ中の流路が一つの場合は、多層フィルムの樹脂構成に従ってフィードブロック内で事前に樹脂を並べた後、Tダイに供給される。一方、マルチマニホールドと呼ばれるTダイ中に流路が複数ある設備の場合は、Tダイリップ部分の直前で各樹脂層が積層されるので、各押出機からの流路をコンバーティングアダプターにより、フィルム構成に応じてTダイ中の各流路に接続する。
なお、多層フィルムを構成する各樹脂の押出変動を抑制する観点から、各押出機とTダイとの間には、アダプターを介して各々ギアポンプを取り付け、圧力を安定させてTダイに樹脂を供給することが好ましい。このときの圧力は、変動値が0.1MPa以内となるようにすることが好ましい。
さらに、プロピレン系樹脂、スチレン系樹脂、および無水マレイン酸変性直鎖状ポリエチレン系樹脂のそれぞれに含まれる異物を取り除くため、リーフディスクフィルターを取り付けることが好ましい。リーフディスクフィルターの枚数と1枚あたりの濾過面積は、溶融樹脂の粘度と押出量(流量)、および樹脂の耐熱性により任意に選択できる。濾過精度に関しては、異物の捕集率が98%以上となる異物サイズが10μm以下であるフィルターを用いることが、フィルム中に巻き込まれる異物量を少なくでき、フィルムとしての品質を向上できるので、好ましい。同様の理由から、濾過精度は、5μm以下、さらには3μm以下となるようにするのが一層好ましい。また、リーフディスクフィルターの設置位置は、押出機、ギアポンプ、リーフディスクフィルター、Tダイの順とするのが、安定した異物除去が可能であるという観点から好ましい。
以上、プロピレン系樹脂/無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン樹脂/スチレン系樹脂の三層構成である多層フィルムを、共押出成形により製造する方法について説明したが、先の(B)に例示したプロピレン系樹脂層/中間層(無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン樹脂)/スチレン系樹脂層/中間層(無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン樹脂)/プロピレン系樹脂層という五層構成の多層フィルムを作成する場合は、押出機を樹脂層の数に等しい5台に変更する以外は、上の説明に準じて、五層共押出成形を行なえばよい。
Tダイから押出された溶融シート状のプロピレン系樹脂層を含む多層フィルムは、引き続き金属製の冷却ロール(チルロールまたはキャスティングロールともいう)に接触し、冷却ロールに密着することで冷却される。このとき、冷却ロールへの密着方法が、透明性に影響を与えることがある。冷却ロールへの密着は、たとえば、
a)溶融シート状の多層フィルム状物に静電気を付与し、表面状態が鏡面の冷却ロールに密着させて冷却する方法、
b)溶融シート状の多層フィルム状物を、表面状態が鏡面の冷却ロールと表面状態が鏡面の弾性変形可能な金属ロール(タッチロールともいう)または金属ベルトとの間で挟圧し、冷却ロールに密着させて冷却する方法、
c)溶融シート状の多層フィルム状物を冷却ロールに接触させるときに、エアチャンバーから吹き出されるエアによって冷却ロールに密着させて冷却する方法
などの公知の方法で実施できる。
a)の方法は、「静電ピニング方式」と呼称されることもある方式であり、Tダイから押出された溶融フィルム状物の両端部(耳部と呼称することがある)のみ、または、前記フィルム状物の幅方向前面部に、芯状、糸状、あるいはベルト状の電源を設置し、高周波電源を用いて高電圧を溶融フィルム状物に付与し、静電気を帯電させ、冷却ロールに接触させて、その溶融フィルム状物を冷却固化させる方法である。この方法は、Tダイのリップ部分から、冷却ロールに溶融フィルム状物が接するまでの部分(エアギャップと呼称される)でのフィルムのばたつきが生じにくく、また、不安定であるエアギャップの長さを短くすることができ、フィルムの均質性を確保しやすいので、好ましい方式である。
b)の方法は、「タッチロール成形」と呼称される方式であり、Tダイから押出された溶融フィルム状物を冷却ロールと弾性変形可能な金属ロールまたは金属ベルトとの間で挟圧することで冷却ロールに密着させ、フィルムを冷却固化させ、透明性に優れたフィルムを得る方式である。弾性変形可能な金属ロールとは、厚みが5mm以下のロール表面を有し、冷却ロールとの間で溶融フィルムを挟圧した際、樹脂たまり(バンクと呼称されることもある)を作ることなく挟圧する金属ロールであり、金属ベルトとは、厚み1mm以下の金属無端ベルトであって、ゴムロール、金属ロールに支持され、回転し、冷却ロールとの間で、溶融プロピレン系樹脂のフィルム状物を挟圧するものである。この方法は、冷却条件によっては、透明性が損なわれる結晶性樹脂を用いる場合などで、成形速度を高速化しやすいという観点から好ましい方式である。
c)の方法は、「エアチャンバー方式」と呼称される方式であり、Tダイより押出された溶融フィルム状物を冷却ロールに接触させるときに、当該冷却ロールとは逆側から溶融フィルム状物にエアチャンバーによりエアを吹き付け、これにより、冷却ロールに溶融フィルム状物を密着させる。エアチャンバーは、市販の適宜のものを特に制限なく用いることができ、吹き付けるエアはたとえば、製造環境空間の空気をブロアなどで高性能エアフィルター(HEPAフィルター:High Efficiency Particulate Air Filter)を介して吸い込み、エアチャンバー内が50〜300Paの加圧された状態となるようにすることが好ましい。エアチャンバー内の圧力がこの範囲にあれば、フィルムにかかるエアの圧力が適度となるので、Tダイのリップから冷却ロールに溶融シート状の樹脂が接触するまでの距離(エアギャップという)において、ばたつきを起こさず、安定した製膜が可能となり、当然、フィルムの厚み精度などの安定性も向上する。この理由から、エアチャンバー内の圧力は、100〜200Paとなるようにすることがさらに好ましい。
上記の3種類の方式で用いられる冷却ロールは、たとえば表面温度を0〜60℃の範囲に調整することが好ましい。冷却ロールの表面温度が60℃を超えると、溶融多層フィルム状物の冷却固化に時間がかかるため、多層フィルム状物を構成するプロピレン系樹脂中の結晶成分が成長してしまい、得られるフィルムは透明性に劣るものとなることがある。一方、冷却ロールの表面温度が0℃を下回ると、冷却ロールの表面が結露して水滴が付着し、得られるフィルムの外観を悪化させる傾向がある。
プロピレン系樹脂層を含む多層フィルムを製造するときの加工速度は、溶融多層フィルム状物中のプロピレン系樹脂を冷却固化するために必要な時間により決定される。その観点から、溶融プロピレン系樹脂は金属製冷却ロール側に配置されることが好ましい。加工速度に関しては、使用する冷却ロールの径が大きくなると、溶融多層フィルム状物がその冷却ロールと接触している距離が長くなるため、より高速での製造が可能となる。具体的には、600mmφの金属製冷却ロールを用い、ヘイズ値が5%以下の透明なプロピレン系樹脂層を含む多層フィルムを製造する場合、加工速度は最大で50m/分程度となる。
本発明の偏光板に用いる多層フィルムは、先述したJIS K7161:1994に準拠して80℃において測定される引張弾性率が1000MPa以上であることに加え、透明性に優れていることが好ましい。透明性に関して、具体的には、JIS K7136:2000に従って測定される全ヘイズ値が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。このヘイズ値が20%を超えると、液晶テレビなどに組込んだときに輝度の低下を引き起こす可能性が生じる。
本発明の偏光板における多層フィルムの厚みは、10〜200μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましい。多層フィルムが10μmより薄い場合は、偏光板の製造時のライン適性に劣り、製造ライン中の張力により変形する可能性があり、また、150μmより厚くなると偏光板自体も厚くなり、商品性を損なう虞がある。この多層フィルム中のプロピレン系樹脂層の厚みは、5〜100μmとするが、5〜50μmであることが好ましい。プロピレン系樹脂層の厚みが5μmより薄くなると多層フィルムの成形時の生産効率が低くなる可能性があり、一方、100μmを超えると本発明の効果である弾性率が発現しにくくなる虞がある。
本発明の偏光板における多層フィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲で、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理を施すこともできる。また、表面に反射防止層、ハードコート層などをコーティングなどの手法で設けてもよい。
本発明の偏光板は、上述した偏光フィルムの多層フィルムが貼合されたのと反対側の面に、透明樹脂フィルムが貼合されている。この多層フィルムが貼合された側とは反対側に貼合される透明樹脂フィルムとしては、たとえば、シクロオレフィンモノマー由来の構成単位からなるノルボルネン系樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂系フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリスチレン系樹脂フィルム、アクリル系フィルム、あるいは4−メチル−1−ペンテン系樹脂フィルムのような、プロピレン系以外のポリオレフィン系樹脂フィルムなどを用いることができる。中でも、偏光板の高湿度環境下での性能安定性を保つためには、ノルボルネン系樹脂フィルムが好ましく、ノルボルネン系樹脂フィルムの一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムがより好ましい。
(ノルボルネン系樹脂フィルム)
本発明の偏光板に用いられるノルボルネン系樹脂フィルムは、たとえば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような環状オレフィン(シクロオレフィン)のユニットを有する熱可塑性の樹脂からなるフィルムである。ノルボルネン系樹脂フィルムは、前記シクロオレフィンの開環重合体や2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であることができる他、シクロオレフィンと環状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物などとの付加共重合体であってもよい。また、極性基が導入されているものも有効である。
シクロオレフィンと鎖状オレフィンまたはビニル基を有する芳香族化合物との共重合体を用いる場合、鎖状オレフィンとしては、エチレン、プロピレンなどが挙げられ、またビニル基を有する芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、核アルキル置換スチレンなどが挙げられる。このような共重合体において、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットが50モル%以下(好ましくは15〜50モル%)であってもよい。特に、シクロオレフィンと鎖状オレフィンとビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体とする場合、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットは、上述したように比較的少ない量とすることができる。かかる三元共重合体において、鎖状オレフィンからなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%、ビニル基を有する芳香族化合物からなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%である。
シクロオレフィン系樹脂は、適宜の市販品、たとえばTOPAS(Topas Advanced Polymers GmbH製)、アートン(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(ZEONEX)(日本ゼオン(株)製)、アペル(三井化学(株)製)などを好適に用いることができる。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また、たとえばエスシーナ(積水化学工業(株)製)、SCA40(積水化学工業(株)製)、ゼオノアフィルム(日本ゼオン(株)製)、アートンフィルム(JSR(株)製)などの予め製膜されたシクロオレフィン系樹脂製のフィルムの市販品を透明保護フィルムとして用いてもよい。
ノルボルネン系樹脂フィルムは、少なくとも一方向に延伸されていることで、液晶の光学補償が可能となり、液晶表示装置の視野角拡大に寄与することができる。本発明に用いられるノルボルネン系樹脂フィルムは、面内位相差値R0が40〜100nm(好ましくは40〜80nm)の範囲内にあり、かつ、厚み方向位相差値Rthが80〜250nm(好ましくは100〜250nm)の範囲内にあることが好ましい。ここで、面内位相差値R0および厚み方向位相差値Rthは、フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をnx、面内でそれと直交する方向(進相軸方向)の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz、およびフィルムの厚みをdとして、以下の式でそれぞれ表わされる。
0=(nx−ny)×d
th=〔(nx+ny)/2−nz〕×d
面内位相差値R0が上記範囲を外れる場合には、液晶パネルの視野角補償能が低下してしまう。また、厚み方向位相差値Rthが上記範囲を外れる場合には、やはり液晶パネルの視野角補償能が低下してしまう。なお、上述した面内位相差値R0および厚み方向位相差値Rthは、たとえば、王子計測機器(株)製のKOBRAシリーズ(KOBRA−21ADHやKOBRA−WRなどがある)を用いて測定することができる。
上述したような屈折率特性を有するノルボルネン系樹脂フィルムを得るには、延伸倍率と延伸速度とを適切に調整するほか、延伸時の予熱温度、延伸温度、ヒートセット温度、冷却温度などの各種温度、およびそれらの変化パターンを適宜選択すればよい。比較的緩い条件で延伸を行なうことにより、このような屈折率特性が得られるが、たとえば延伸倍率は1.05〜1.6倍の範囲とするのが好ましく、さらには1.1〜1.5倍とするのがより好ましい。二軸延伸の場合には、最大延伸方向の延伸倍率がこの範囲となるようにすればよい。
本発明に用いられる延伸が施されたノルボルネン系樹脂フィルムは、その厚みについては特に制限されないが、20〜80μmの範囲内であることが好ましく、40〜80μmの範囲内であることがより好ましい。ノルボルネン系樹脂フィルムの厚みが20μm未満である場合には、フィルムの取扱いが難しく、また所定の位相差値が発現し難くなる傾向にあるためであり、一方、ノルボルネン系樹脂フィルムの厚みが80μmを超える場合には、加工性に劣るものとなり、また、透明性が低下したり、得られた偏光板の重量が大きくなったりするなどの虞がある。
ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに保護フィルムを貼って偏光板とするとき、偏光フィルム自体の透過率(単体透過率)に比べて、偏光板としたときの透過率が若干下がる傾向にあるが、この単体透過率の低下は少ないほうが好ましい。本発明においては、偏光フィルムの少なくとも一方の面に貼合される多層フィルムの透明性を確保することで、偏光フィルムの単体透過率(%)から、その両面に保護フィルムを貼って偏光板としたときの単体透過率(%)を差し引いた値、すなわち偏光板にしたときの単体透過率の低下を、1ポイント以下とすることが好ましい。また、多層フィルムの透明性確保を一層厳密に行なうことで、その低下を0.4ポイント以下とすることもできる。
(接着剤)
本発明の偏光板は、先に説明した偏光フィルムの両面に接着剤を介して、前記多層フィルムおよび上述したノルボルネン系樹脂フィルムなどの透明樹脂フィルムがそれぞれ貼合されて構成される。ここで接着剤は、偏光フィルムの両面で同種のものとしてもよいし、両面で異種のものとしてもよい。接着剤層を薄くする観点から好ましい接着剤として、水系の接着剤、すなわち、接着剤成分を水に溶解させたものまたは水に分散させたものが挙げられる。また、接着強度の観点から好ましい接着剤として、それ自体が光により硬化する光硬化性接着剤が挙げられる。
光硬化性接着剤としては、たとえば光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含む混合物が挙げられる。この光硬化性接着剤は、活性エネルギー線の照射によって硬化する。活性エネルギー線の光源は、波長400nm以下に発光分布を有する紫外線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましい。
偏光フィルムに上述した多層フィルムおよび透明樹脂フィルムを貼合する方法は、通常一般に知られているものでよく、たとえば、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクターブレード法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などによって偏光フィルムおよび/またはそこに貼合されるフィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が使用できる。これらの塗布方法の中で、塗布膜の厚み精度や設備のサイズなどの観点からは、グラビアコート法、ダイコート法が好ましく、より好ましくは、同様の観点からグラビアコート法である。グラビアコート法は、塗布量を考慮して選択されるグラビアロールを用いる塗布法であり、塗布するフィルムの流れ方向に対し、反対方向に回転するグラビアロールを囲う位置にチャンバーを設置し、チャンバー内に液を供給する方式で塗布する方法である。接着剤を塗布した後、偏光フィルムとそれに接合されるフィルムをニップロールなどにより挟んで、貼り合わせる。
また、偏光フィルムおよび/またはそこに貼合されるフィルムの接着剤塗布面には、接着性を上げるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬してフィルム表面をケン化する方法である。
偏光フィルムの両面に、それぞれ接着剤層を介して前記多層フィルムおよび透明樹脂フィルムを積層させた後、水系接着剤を用いた場合は、加熱処理を施して乾燥される。加熱処理は、たとえば熱風を吹き付けることにより行われ、その温度は、通常40〜100℃の範囲内であり、好ましくは60〜100℃の範囲内である。また、乾燥時間は通常20〜1200秒である。
一方、光硬化性接着剤を用いた場合は、先述のとおり活性エネルギー線の照射によって接着剤層を硬化させる。このとき、接着剤層の厚みは、通常0.5〜5μm、好ましくは1〜4μm、さらに好ましくは1.5〜4μmである。接着剤層の厚みが0.5μm未満である場合には、接着が不十分となる虞があり、また、接着剤層の厚みが5μmを超えると、偏光板の外観不良を生じる虞がある。
(粘着剤)
本発明の偏光板において、偏光フィルムの一方の面に前記多層フィルムを貼合し、他方の面に前記したノルボルネン系樹脂フィルムを代表例とする透明樹脂フィルムを貼合した場合は、その透明樹脂フィルム上に、また偏光フィルムの両面に前記多層フィルムを貼合した場合は、そのうち一方の多層フィルム上に、通常は粘着剤層が設けられる。この粘着剤層は、偏光板を液晶表示装置に適用する場合に、液晶セルへの貼合に好適に用いることができる。粘着剤層に用いられる粘着剤としては、従来公知の適宜の粘着剤を特に制限なく用いることができ、たとえばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。中でも、透明性、粘着力、信頼性、リワーク性などの観点から、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤層は、それを設けようとするフィルムの表面に直接、粘着剤を含む溶液をダイコータやグラビアコータなどによって塗布し、乾燥させる方法によって設けることができる他、離型処理が施されたプラスチックフィルム(セパレートフィルムと呼ばれる)上に形成された粘着剤層を、偏光板上に転写する方法によっても設けることができる。粘着剤層の厚みは、一般に2〜40μmの範囲内であることが好ましい。
(液晶表示装置)
本発明の偏光板は、液晶表示装置に好適に適用することができる。液晶表示装置において、本発明の偏光板は、粘着剤層を介して液晶パネルの背面側に配置される。この際、本発明の偏光板は、前記多層フィルムが液晶セルから遠い側となるように、すなわちバックライトに対向するように配置される。かかる液晶表示装置は、本発明の偏光板を用いているため、耐久性に優れるとともに、表示性能の安定性に優れている。液晶表示装置において、上述した偏光板以外の部分については、従来公知の液晶表示装置の適宜の構成を採用することができ、液晶表示装置が液晶パネル以外に通常備える構成部材(光拡散板、バックライトなど)を適宜備えることができる。なお、液晶パネルの「背面側」とは、液晶パネルを液晶表示装置に搭載したときのバックライト側を意味し、一方、液晶パネルの「前面側」とは、液晶パネルを液晶表示装置に搭載したときの視認側を意味する。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。例中、ヘイズの測定、位相差値R0およびRthの測定、引張弾性率の測定、偏光板の耐久評価、ならびに偏光板としたときの単体透過率低下量の評価は、次に示す方法で行なった。
[ヘイズの測定]
(株)村上色彩研究所製のヘイズメータHM150用い、プロピレン系樹脂層を含む多層フィルム(実施例)またはプロピレン系樹脂フィルム自体(比較例)のヘイズを測定した。
[位相差値R0およびRthの測定]
王子計測機器(株)製のKOBRA−WRを用い、プロピレン系樹脂層を含む多層フィルム(実施例)またはプロピレン系樹脂フィルム自体(比較例)の面内位相差値R0および厚み方向位相差値Rthを測定した。
[引張弾性率の測定]
(株)島津製作所製のオートグラフAG−1を用いて、プロピレン系樹脂層を含む多層フィルム(実施例)またはプロピレン系樹脂フィルム自体(比較例)の23℃における引張弾性率および80℃における引張弾性率を測定した。
[偏光板の耐久評価]
偏光板を200mm×300mmにカットし(短辺が偏光板の吸収軸)、粘着剤を介してそれをソーダガラスに貼合し、80℃の乾燥のオーブンに入れて100時間置いた後、偏光板を観察した。そして、粘着剤層とガラスの間の剥れの発生状況によって、以下の基準で評価した。
○:偏光板の剥れが1mm以下、
×:偏光板の剥れが1mmを超える。
[単体透過率低下の評価]
両面に保護フィルムを貼る前の偏光フィルムの単体透過率と、その両面に保護フィルムを貼って得られた偏光板の単体透過率の差(偏光フィルムの単体透過率−偏光板の単体透過率:単位はいずれも%)を求め、以下の基準で評価した。単体透過率の測定は、偏光フィルム又は偏光板をそれぞれ40mm×40mmの正方形にカットし、日本分光(株)製の紫外可視分光光度計V7100を用いて行った。
○:偏光フィルムと偏光板の単体透過率(%)の差が0.4ポイント未満、
△:偏光フィルムと偏光板の単体透過率(%)の差が0.4〜1.0ポイント、
×:偏光フィルムと偏光板の単体透過率(%)の差が1.0ポイントを超える。
<実施例1>
プロピレン/エチレン共重合体(エチレン含量=0.4重量%、MFR=9g/10分)と、接着樹脂である「アドマー AT2304」(三井化学社製)と、ポリスチレンである「HRM12」(東洋スチレン社製)とを、それぞれ250℃に加熱した50mmφ押出機にて溶融混練し、次いで600mm幅のTダイより溶融状態で、それぞれの層厚が順に20μm/15μm/40μmとなるように三層共押出した。共押出されたフィルムは、引き続き表面温度が20℃に調節された冷却ロールにて冷却し、上記のプロピレン/エチレン共重合体からなる厚さ20μmのプロピレン系樹脂層が一方の表面となっている総厚みが75μmの多層フィルムを得た。この多層フィルムは、ヘイズ値が10.1%、R0が10nm、Rthが31nm、23℃での引張弾性率が1323MPa、80℃での引張弾性率が1120MPaであった。
次に、得られた多層フィルムのプロピレン系樹脂層表面にコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面に光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含む光硬化性接着剤を厚み4μmで塗工した。一方、二軸延伸されたノルボルネン系樹脂フィルム(厚さ=50μm、面内位相差値R0=55nm、厚み方向位相差値Rth=124nm)の片面にコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面に上記と同じ光硬化性接着剤を厚み4μmで塗工した。次いで、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している偏光フィルムの一方の面に、上記多層フィルムのプロピレン系樹脂層側接着剤層を貼合するとともに、偏光フィルムの他方の面に上記ノルボルネン系樹脂フィルムの接着剤層を貼合し、100mmφの一対のニップロールで挟圧した。その後、ノルボルネン系樹脂フィルム側から紫外線を照射し、両方の接着剤層を硬化させて偏光板を得た。得られた偏光板について、上に示した方法で耐久評価をしたところ、粘着剤層とガラスの間の剥れは0.3mmであり、問題ないレベルであった。また、偏光フィルムの単体透過率(%)と偏光板の単体透過率(%)の差は、0.8ポイントであった。
<実施例2>
接着樹脂を「アドマー SF600」(三井化学社製)に変更し、三層共押出されたフィルムを、表面温度が30℃に調節された冷却ロールにて冷却した以外は、実施例1と同様の方法で、プロピレン/エチレン共重合体からなるプロピレン系樹脂層が一方の表面となっている多層フィルムを得た。この多層フィルムは、ヘイズ値が8.9%、R0が11nm、Rthが16nm、23℃での引張弾性率が1900MPa、80℃での引張弾性率が1090MPaであった。この多層フィルムを用いて、実施例1と同じ方法で偏光板を作製した。得られた偏光板について、上に示した方法で耐久評価をしたところ、粘着剤層とガラスの間の剥れは0.3mmであり、問題ないレベルであった。また、偏光フィルムの単体透過率(%)と偏光板の単体透過率(%)の差は、0.7ポイントであった。
<実施例3>
接着樹脂を「アドマー SE800」(三井化学社製)に変更し、三層共押出されたフィルムを、表面温度が30℃に調節された冷却ロールにて冷却した以外は、実施例1と同様の方法で、プロピレン/エチレン共重合体からなるプロピレン系樹脂層が一方の表面となっている多層フィルムを得た。この多層フィルムは、ヘイズ値が9.0%、R0が15nm、Rthが20nm、23℃での引張弾性率が1880MPa、80℃での引張弾性率が1085MPaであった。この多層フィルムを用いて、実施例1と同じ方法で偏光板を作製した。得られた偏光板について、上に示した方法で耐久評価をしたところ、粘着剤層とガラスの間の剥れは0.3mmであり、問題ないレベルであった。また、偏光フィルムの単体透過率(%)と偏光板の単体透過率(%)の差は、0.7ポイントであった。
<実施例4>
いずれも実施例2で用いた材料と同じであって、プロピレン/エチレン共重合体と、接着樹脂「アドマー SF600」(三井化学社製)と、ポリスチレン「HRM12」(東洋スチレン社製)と、接着樹脂「アドマー SF600」と、プロピレン/エチレン共重合体とを、それぞれ250℃に加熱した50mmφ押出機にて溶融混練し、次いで600mm幅のTダイより溶融状態で、それぞれの層厚が順に10μm/7.5μm/40μm/7.5μm/10μmとなるように五層共押出した。共押出されたフィルムは、引き続き表面温度が30℃に調節された冷却ロールにて冷却して、プロピレン/エチレン共重合体からなる厚さ10μmのプロピレン系樹脂層がそれぞれ両側の表面となっており、総厚みが75μmの多層フィルムを得た。この多層フィルムは、ヘイズ値が8.0%、R0が10nm、Rthが25nm、23℃での引張弾性率が1850MPa、80℃での引張弾性率が1070MPaであった。この多層フィルムを用いて、実施例1と同じ方法で偏光板を作製した。得られた偏光板について、上に示した方法で耐久評価をしたところ、粘着剤層とガラスの間の剥れは0.2mmであり、問題ないレベルであった。また、偏光フィルムの単体透過率(%)と偏光板の単体透過率(%)の差は、0.3ポイントであった。
<比較例1>
実施例1で用いたのと同じプロピレン/エチレン共重合体のみを用い、単層で押出す以外は実施例1と同様にして、厚み75μmのプロピレン系樹脂フィルムを得た。このプロピレン系樹脂フィルムは、ヘイズ値が0.9%、R0が2nm、Rthが16nm、23℃での引張弾性率が1000MPa、80℃での引張弾性率が60MPaであった。このプロピレン系樹脂フィルムを用いて、実施例1と同じ方法で偏光板を作製し、上に示した方法で耐久評価をしたところ、粘着剤層とガラスの間に1.3mmの剥れが発生していた。また、偏光フィルムの単体透過率(%)と偏光板の単体透過率(%)の差は、0.2ポイントであった。
以上の実施例1〜4で偏光フィルムの一方の面に貼合したプロピレン系樹脂層を含む多層フィルムの層構成および各層の厚さを以下にまとめた。「貼合面」とした側が、偏光フィルムに貼合されている。
実施例1の多層フィルム:ポリスチレン(40μm)/AT2304(15μm)/プロピレン系樹脂(20μm)貼合面、
実施例2の多層フィルム:ポリスチレン(40μm)/SF600(15μm)/プロピレン系樹脂(20μm)貼合面、
実施例3の多層フィルム:ポリスチレン(40μm)/SE800(15μm)/プロピレン系樹脂(20μm)貼合面、
実施例4の多層フィルム:プロピレン系樹脂(10μm)/SF600(7.5μm)/ポリスチレン(40μm)/SF600(7.5μm)/プロピレン系樹脂(10μm)貼合面。
ここで、「AT2304」、「SF600」および「SE800」とあるのは、各例で用いた接着樹脂「アドマー」のグレード名である。「アドマー」は、グラフト反応により官能基が導入された「接着性ポリオレフィン」として、三井化学社から販売されている樹脂であり、先に説明した無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン樹脂に相当する。「アドマー」には、上の3種類を含めて各種のグレードがあるが、それぞれのグレードにつき、メーカーから具体的な構造は開示されていない(インターネット<URL:http://jp.mitsuichem.com/service/functional_polymeric/compound/admer/spec.htm>,平成24年3月13日検索)。
実施例および比較例で用いたプロピレン系樹脂層を含む保護フィルム(実施例は多層フィルム、比較例はプロピレン系樹脂の単層フィルム)の物性、および偏光板としたときの耐久評価の結果と単体透過率低下の評価結果を表1にまとめた。
Figure 0006077751

Claims (3)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの両面にそれぞれ接着剤を介して透明樹脂フィルムが貼合されている偏光板であって、
    前記透明樹脂フィルムの少なくとも一方は、スチレン系樹脂層と厚みが5〜100μmのプロピレン系樹脂層を含む、80℃において1000MPa以上の引張弾性率を示す多層フィルムである、偏光板。
  2. 前記多層フィルムは、プロピレン系樹脂層が最表面となり、その最表面となったプロピレン系樹脂層側で偏光フィルムに貼合されている請求項に記載の偏光板。
  3. 偏光フィルムの一方の面に前記多層フィルムが貼合され、偏光フィルムの他方の面にはノルボルネン系樹脂フィルムが貼合されている請求項1または2に記載の偏光板。
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