JP6075731B2 - 焼き菓子 - Google Patents

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Description

本発明は、焼き菓子に関する。より詳細には、高油分とした場合であっても、しっかりとした保形性を有し、サクサク感があって、かつ、壊れにくく、香り立ちの良い焼き菓子に関する。
クッキー、ビスケット、クラッカーなどの焼き菓子は、穀物粉、油脂、糖類を主原料とし、さらに必要に応じて、塩類、澱粉、乳製品、卵製品、イースト、酵素、膨張剤、食品添加物などを加えて生地を作り、これを成型しオーブン等に入れて焼成した焼き菓子のことである。それぞれ固有の色合いや食感を有し、一般家庭でも容易に作ることができるので、世界中に広く普及している菓子の1つである。また、水分が少なく保存性に富み、場合によっては、主食としても利用可能であるので、世界中で広く愛用されている菓子の1つでもある。
焼き菓子の食感については、サクサク感のあるクラッカーや、硬くて噛み応えのあるハードビスケットや、ソフトでしっとり感のあるソフトクッキーなど、個人の嗜好に合わせて様々なものが存在している。しかし、近年、消費者の嗜好が多様化する中で、従来よりもサクサク感のある焼き菓子が求められるようになってきている。
焼き菓子にサクサク感を付与する技術としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル、食用油脂の組合せを用いる技術(特許文献1)や、特定のPOP含量及びラウリン酸含量を有する油脂を用いる技術(特許文献2)などがある。しかし、これらの技術は、特定の材料を用いるため、手間がかかり、サクサク感のある焼き菓子を得る方法としては、必ずしも満足できるものではなかった。
また、焼き菓子の食感を改善する技術として、油脂含量を増加させる技術が知られている。しかし、油脂の含有量を上げると、焼成の過程で生地から油脂が溶け出して、生地の保形性が損なわれてしまうという問題が知られていた。そこで、このような問題に対処するため、従来技術では、クッキーの焼成工程において過熱蒸気処理を用いること等が行われている(特許文献3)。しかし、過熱蒸気処理を行うためには特別な装置が必要であり、手間がかかるものである。
そこで、より簡便な方法で、高油分であっても、保形性に優れ、サクサク感のある焼き菓子を製造する方法が求められていた。
特開2006−129755号公報 特開2010−4806号公報 特開2012−200241号公報
本発明の課題は、高油分でもしっかりとした保形性があり、サクサク感があって、しかも壊れにくく、香り立ちの良い焼き菓子を提供することである。
本発明者らは、高油分の焼き菓子の製造方法について鋭意研究をしたところ、驚くべきことに、長鎖脂肪酸の一部を中鎖脂肪酸に置き換えたトリアシルグリセロールを含む油脂を用いることによって、対粉で60質量%を超えるような高油分とした焼き菓子であっても、しっかりとした保形性を有し、サクサク感があって、壊れにくく、香り立ちの良い焼き菓子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の一態様によれば、穀物粉、油脂、及び糖類を主原料として使用した焼き菓子であって、穀物粉に対し、油脂を60〜120質量%含有させるとともに、前記油脂が、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングから選ばれる1種又は2種以上であり、前記油脂には、構成脂肪酸として炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールが前記油脂の50質量%以上含まれている、焼き菓子(ただし、膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、粉末状糖類及び液状糖類を含むものを除く)を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記穀物粉が、強力粉、中力粉、薄力粉、小麦全粒粉、玄米粉、ライ麦、とうもろこし、全脂大豆粉、脱脂大豆粉、及び米粉から選ばれる1種又は2種以上である、焼き菓子を提供することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、上記焼き菓子を含む食品を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、穀物粉に対し、油脂を60〜120質量%含有させた焼き菓子用の品質改変剤であって、前記油脂が、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングから選ばれる1種又は2種以上であり、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を含むトリアシルグリセロールを有効成分とする、前記焼き菓子用の品質改変剤(ただし、前記焼き菓子は膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、粉末状糖類及び液状糖類を含むものを除く)を提供することができる。
本発明によれば、焼き菓子の製造において、穀物粉に対し油脂を添加するに当たって、前記油脂の50質量%以上が、構成脂肪酸として炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールである油脂を用いることにより、高油分とした場合であっても、しっかりとした保形性を有し、サクサク感があって、壊れにくく、香り立ちの良い焼き菓子を簡便に製造することができる。これにより、これまでの焼き菓子では満足できなかった人々の需要に応えることができる。また、栄養補給や持久力の向上に寄与する中鎖脂肪酸を、食べやすくかつおいしく大量に摂取することが可能となる。また、本発明の焼き菓子は、高油分であるにもかかわらず、壊れにくいので、消費者の手に届くまでに割れたりすることが少なく、見た目にも美しい焼き菓子となる。そして、香り立ちも良いので、商品価値は極めて高いものとなる。
以下、本発明の焼き菓子について順を追って記述する。
本発明において「焼き菓子」とは、穀物粉、油脂、糖類を主原料として焼成されるものである。これらの原料はいずれも市販品で構わない。穀物粉、油脂、糖類を主原料として焼成されるものであれば特に限定されないが、例えば、クッキー(ロータリーモールドクッキー、ワイヤーカットクッキー、絞りクッキー等)、ビスケット、クラッカー、サブレ、パイ、ウエハース、スナック菓子等が挙げられる。その中でも、油脂を多く含むことができる、クッキー、サブレ、パイなどが好ましい。ただし、本発明の「焼き菓子」においては、スポンジケーキ、カステラ、ホットケーキ等のいわゆるケーキ類は除かれる。
本発明の「穀物粉」としては、強力粉、中力粉、薄力粉、小麦全粒粉、玄米粉、ライ麦粉、とうもろこし粉、及び米粉等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができるが、焼き菓子本来の自然なサクサクした食感を持たせるためには、食物繊維含量が4質量%より少ない穀物粉、例えば、強力粉、中力粉、薄力粉などが好ましい。
焼き菓子原料中の穀物粉の量は、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは20〜60質量%であり、さらに好ましくは30〜50質量%である。
本発明の「油脂」としては、食用油、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。焼き菓子原料中の油脂の量は、穀物粉に対して60〜120質量%であることが好ましく、60〜100質量%であることがより好ましく、70〜90質量%であることがさらに好ましい。
そして、高油分でも保形性を有し、サクサクとした食感を有するためには、当該焼き菓子原料中の油脂の50質量%以上が、構成脂肪酸として炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールでなくてはならない。また、上記焼き菓子原料中の油脂に対して、上記トリアシルグリセロールが70質量%以上であることが好ましく、また80質量%以上であることがより好ましく、さらに90質量%以上であることがより好ましい。また、本発明の焼き菓子に含まれる油脂のすべて(100質量%)が、上記トリアシルグリセロールであることが最も好ましい。
なお、本発明では、配合する油脂以外の含油原料に由来する油脂はこれに含めない。例えば、カカオマスの油脂(ココアバター)含量は約55質量%であり、ココアパウダーの油脂(ココアバター)含量は約11質量%であり、全脂粉乳の油脂(乳脂)含量は約25質量%であるから、チョコレートを焼き菓子生地に配合した場合には、チョコレート全量の約30質量%に相当する油脂が該生地中に含まれることになるが、本発明では、これら含油原料に由来する油脂を上記焼き菓子に含まれる油脂含量に含めない。
上述のとおり、本発明の焼き菓子の油脂中には、構成脂肪酸として炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールが含まれるが、このトリアシルグリセロールは、構成脂肪酸を炭素数6〜10の中鎖脂肪酸のみとするトリアシルグリセロールであってもよいし、構成脂肪酸として炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を含む混酸基トリアシルグリセロールであってもよい。ここで、各々の中鎖脂肪酸のグリセリンへの結合位置は、特に限定されない。また、混酸基トリアシルグリセロールである場合には、構成脂肪酸の一部に炭素数6〜10以外の脂肪酸を含んでいてもよく、例えば、長鎖脂肪酸を含んでいてもよい。
また、本発明において用いられる油脂は、例えば、トリオクタノイルグリセロールとトリデカノイルグリセロールとの混合物等、複数の異なる分子種の油脂が混ざり合った混合物であってもよい。ここで、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸は、直鎖状の飽和脂肪酸であることが好ましい。
本発明の焼き菓子に含まれる中鎖脂肪酸を含むトリアシルグリセロールとしては、構成脂肪酸が炭素数6〜10の中鎖脂肪酸のみからなるトリアシルグリセロール(以下「MCT」とも表す。)が好ましく、さらに、構成脂肪酸が炭素数8又は10の中鎖脂肪酸のみからなるMCTがより好ましい。
本発明の焼き菓子の油脂中に含まれるMCTは、従来公知の方法で製造できる。例えば、炭素数6〜10の脂肪酸とグリセロールとを、触媒下、好ましくは無触媒下で、また、好ましくは減圧下で、120〜180℃に加熱し、脱水縮合させることにより製造できる。
本発明の焼き菓子は、焼き菓子中の油脂含量および炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を含むトリアシルグリセロール含量が上記特定の範囲を満たしている限り、どのような食用油を併用してもよい。例えば、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パーム分別油(パームオレイン、パームスーパーオレイン等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂、ココアバター等やこれらの混合油、これらの水素添加油、分別油、及びエステル交換油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
本発明の焼き菓子には、油脂として、マーガリンも用いられる。マーガリンは、精製した油脂に発酵乳や食塩、ビタミン類を加えて乳化し、練り合わせて得られる加工食品であり、油脂の外に水や調味料等を含んでいるため、本発明におけるマーガリンの油脂含量は、マーガリンに含まれる水や発酵乳、調味料等の副材料をプラスしたものとなる。原料油脂は、常温で固体化するために、通常はその製造工程において水素添加されるが、バターとの違いは、バターの主原料が牛乳であるのに対し、マーガリンの主原料が植物性あるいは動物性の油脂であることである。日本のJAS規格によれば、油脂含有率が80%を超えるものがマーガリンであり、80%未満のものがファットスプレッドである。
マーガリン又はファットスプレッドには、油相成分として水添植物油脂やエステル交換油脂が良く使用されているが、構成脂肪酸として炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を含むトリアシルグリセロールを含有させたものが好適に使用できる。例えば、そのようなものとして、日清オイリオグループ(株)製の商品:リセッタソフトが挙げられる。
本発明の焼き菓子には、油脂として、ショートニングも用いられる。ショートニングとは、元来、「さっくり」や「パリッ」という食感を表す用語であり、焼き菓子に配合するショートニングは、大豆油、とうもろこし油等の植物油脂や動物油脂を原料とした練り込み用の常温で半固形(クリーム状)の油脂であり、そもそもラードの代用品として開発されたものである。ショートニングは、マーガリンやバターなどの乳化製品と異なり、白色の無味無臭のものであって、水や乳成分を含まず、ほぼ100%が油脂成分である。
後述の実施例で示すように、一般に、ショートニングの方がマーガリンよりも、対粉の油脂含量が低いにもかかわらず、保形性は保たれにくく、サクサク感も少なく、壊れやすくなり、香り立ちも弱くなる傾向が認められた。本発明では、ショートニング及びマーガリンのどちらか一方を使用することもできるが、焼き菓子に保形性等を持たせるために、ショートニングに対しマーガリンを併用することも本発明を実施する上で好適であると考えられる。
本発明の「糖類」としては、任意のものを用いることができる。その性状から大別すると、粉末状糖類と液状糖類の2種類がある。そして、粉末状糖類としては、例えば、果糖、ブドウ糖等の粉末状単糖類、ショ糖、麦芽糖、乳糖等の粉末状二糖類、粉末トレハロース及び粉末状糖アルコール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
また、液状糖類としては、例えば、液状ソルビトール、液状マルチトール、還元水あめ等の液状糖アルコールや、ブドウ糖液糖、果糖・ブドウ糖液糖、及びブドウ糖・果糖液糖等の転化型液糖、ショ糖型液糖、並びに液状トレハロース等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらの糖類は市販品を使用することができる。
焼き菓子原料中の糖類の量は、好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは10〜30質量%であり、さらに好ましくは10〜20質量%である。
本発明の「その他の原料」としては、例えば、ココアパウダー、チョコレート、チョコチップ、キャラメル、チーズ、ナッツ類、及びはちみつ並びにこれらの加工品、コーン澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉及び各種加工澱粉等の澱粉、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリド及び有機酸モノグリセリド等の乳化剤、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンE及びビタミンC等のビタミン類、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳パウダー、クリーミングパウダー、デキストリン、オリザノール、鉄分、カルシウム、レシチン、コエンザイムQ、酵母エキス、アミノ酸、卵殻パウダー、レモン砂糖洋酒漬け等の各種果実、乾燥果実、乾燥野菜、フライ果実、フライ野菜、食塩やシーズニング等の各種調味料、増粘多糖類、香料、水、牛乳、豆乳、果汁、及び野菜汁等を配合することができる。
本発明には、本発明の焼き菓子を含む食品も含まれる。例えば、クリーム、ジャム、マシュマロ、餡などを焼き菓子で包むもしくは挟み込んだものが挙げられる。そして、焼き菓子の表面又は裏面に、チョコレート、砂糖、卵白、醤油、油脂等を塗布もしくは被覆して味のコンビネーションを出したものが挙げられる。
本発明の焼き菓子を製造する方法は、常法であればよく、特に制限されないが、例えば、オーブン等による焼成調理、電子レンジ等によるマイクロ波調理、過熱水蒸気調理等が挙げられる。また、本発明の焼き菓子は、従来公知の方法に、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを含む油脂を配合することにより製造することができる。具体的には、まず、穀物粉に、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを含有する油脂及びその他の原料を添加し、適宜の手段で混合し、生地を調製する。続いて、得られた生地を成形し、焼成して製造する。
ところで、これまで述べたように、本発明に用いる炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールは、焼き菓子の保形性を向上させるだけでなく、サクサク感があるものに改変するから、本発明は、穀物粉に対し、油脂を60〜120質量%含有させた焼き菓子用の品質改変剤であって、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を含むトリアシルグリセロールを有効成分とする、前記焼き菓子用の品質改変剤にも関する。
また、本発明の焼き菓子用の品質改変剤は、有効成分であると上述した炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを特定量以上含有したものであればよく、この他に本発明の効果を損なわない範囲で、大豆油、菜種油などの油脂、デキストリン、澱粉等の賦形剤、他の品質改良剤等を含有させたものであってもよい。
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
<分析方法>
トリアシルグリセロール含量は、AOCS Ce5−86に準じて測定した。
各脂肪酸含量は、AOCS Ce1f−96に準じて測定した。
以下、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを「MTG」と省略する。また、そのうち、構成脂肪酸が炭素数6〜10の中鎖脂肪酸のみからなるトリアシルグリセロールを「MCT」と省略する。
<使用油脂>
〔MCT1〕:トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸がn−オクタン酸(炭素数8)とn−デカン酸(炭素数10)であり、その質量比が30:70であるMCT(日清オイリオグループ株式会社社内製)をMCT1とした。
〔植物油脂1〕:ヤシ硬化油(日清オイリオグループ株式会社製、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸中の中鎖脂肪酸含量12.3質量%(内訳:n−オクタン酸含量8.0質量%、n−デカン酸含量4.3質量%)、MTG含量53.2質量%、MCT含量0質量%)を植物油脂1とした。
〔植物油脂2〕:ハイエルシン菜種極度硬化油(横関油脂工業株式会社製、MTG含量0質量%)を植物油脂2とした。
〔植物油脂3〕:菜種油(日清オイリオグループ株式会社製、MTG含量0質量%)を植物油脂3とした。
〔植物油脂4〕:パーム中融点画分(日清オイリオグループ株式会社製、MTG含量0質量%)を植物油脂4とした。
〔エステル交換油1〕:パームステアリン極度硬化油50質量部とパーム核オレイン極度硬化油50質量部との混合油を化学的エステル交換したエステル交換油(トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸中の中鎖脂肪酸含量3.2質量%(内訳:n−オクタン酸2.0質量%、n−デカン酸含量1.2質量%)、MTG含量13.2質量%、MCT含量0質量%)をエステル交換油1とした。
〔エステル交換油2〕:パームオレインを化学的エステル交換したエステル交換油(MTG含量0質量%)をエステル交換油2とした。
<マーガリンの調製>
表1の配合に従って、油相と水相とを調製し、常法に従って、コンビネーターにより急冷可塑化することにより、中鎖マーガリンと長鎖マーガリンを調製した。油脂中のMTG含量について表1に示した。
Figure 0006075731
<ショートニングの調製>
表1の配合から、水相を除いた、下記の表2の配合により、中鎖ショートニングと長鎖ショートニングを調製した。油脂中のMTG含量について表2に示した。
Figure 0006075731
[実施例1]
<クッキーの製造>
下記表3の配合に従って、実施例1、比較例1のクッキーを、常法に従って製造した。具体的には、まず、下記に示された配合の中鎖又は長鎖マーガリンに、上白糖、食塩及び全卵を混合し、これに、薄力粉、ベーキングパウダーを加えて混合し、クッキー生地を得た。リバースシートで4mm厚に延ばして、4cmの丸型で型抜きし、180℃のオーブンで10分間焼成し、下記のクッキーを製造した。
Figure 0006075731
[実施例2]
<クッキーの製造>
下記表4の配合に従って、上記[実施例1]の中鎖又は長鎖マーガリンを、中鎖又は長鎖ショートニングに代えて、実施例2、比較例2のクッキーを、同様に製造した。
Figure 0006075731
<クッキーの評価>
上記で製造した、実施例及び比較例のクッキーの食感等について、以下の評価方法に従って評価した。
<クッキーの評価方法>
(1)保形性の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した
◎:焼成中に型崩れせず、焼き上がり後もだれない
○:焼成中に型崩れしないが、焼き上がり後に若干のだれがみられる
△:焼成中に少し型崩れがみられ、焼き上がり後に少しだれもみられる
×:焼成中に型崩れし、焼き上がり後にだれる
(2)サクサク感の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した
◎:非常にサクサクしている
○:サクサクしている
△:ややサクミにかける
×:サクミはなく、ボロボロとした食感になる
(3)壊れやすさの評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した
◎:十分硬くて壊れにくい
○:まあ硬くて壊れにくい
△:やや壊れやすさが感じられる
×:壊れやすい
(4)香り立ちの評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した
◎:香り立ちがとてもよい
○:香り立ちがまあよい
△:やや香り立ちが弱い
×:香り立ちが弱い
表3及び4から明らかであるように、対粉で60質量%以上の油脂を含む、高油分な焼き菓子であっても、構成脂肪酸として炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールが前記油脂の50質量%以上含まれている油脂を用いることによって、保形性に優れ、サクサク感があり、壊れにくく、香り立ちが良いことがわかった。
次に、上記[実施例1]ないし[実施例2]で得られたクッキーの割れ時の応力を、レオメーターを用いて5回測定した。その結果を表5に示す。
Figure 0006075731
表5から明らかであるように、構成脂肪酸として炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを含む油脂を用いた実施例の方が、このようなトリアシルグリセロールを含まない油脂を用いた比較例と比べて、クッキーの割れ時の応力が大きいことが判明した。このような結果は、実施例のクッキーの方が、比較例のクッキーよりも壊れにくいという結果を裏付けるものである。

Claims (4)

  1. 穀物粉、油脂、及び糖類を主原料として使用した焼き菓子であって、穀物粉に対し、油脂を60〜120質量%含有させるとともに、前記油脂が、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングから選ばれる1種又は2種以上であり、前記油脂には、構成脂肪酸として炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールが前記油脂の50質量%以上含まれていることを特徴とする、焼き菓子(ただし、膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、粉末状糖類及び液状糖類を含むものを除く)。
  2. 前記穀物粉が、強力粉、中力粉、薄力粉、小麦全粒粉、玄米粉、ライ麦、とうもろこし、全脂大豆粉、脱脂大豆粉、及び米粉から選ばれる1種又は2種以上である請求項に記載の焼き菓子。
  3. 請求項1又は2に記載の焼き菓子を含む食品。
  4. 穀物粉に対し、油脂を60〜120質量%含有させた焼き菓子用の品質改変剤であって、前記油脂が、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングから選ばれる1種又は2種以上であり、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸を含むトリアシルグリセロールを有効成分とする、前記焼き菓子用の品質改変剤(ただし、前記焼き菓子は膨張剤及び酵母から選ばれる1種又は2種、穀類粉末、小麦グルテン、グリセリン、粉末状糖類及び液状糖類を含むものを除く)。
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