JP6065036B2 - 印刷インキ積層体 - Google Patents

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Description

本発明は印刷インキ積層体に関し、さらに詳細には、異なる樹脂系のインキ皮膜層を組み合わせて用いることにより得られる、高品質な印刷画像および優れた各種塗膜物性を兼ね備えた印刷インキ積層体に関する。
商品の包装には、表面保護や販売時に消費者の購買意欲を高めるために印刷インキによる印刷が施されることがほとんどである。これら包装は主にプラスチックフィルム基材へグラビア印刷あるいはフレキソ印刷等の方式で印刷を施すことで得られる。
プラスチック包装のうち、特に衛生用品包装や食品包装の多くは、印刷面が内容物に触れないように包材を構成する。一般的に、これらの構成としては、印刷物をそのまま使用するものと、印刷物とその他フィルムを接着剤により貼り合わせるラミネート加工を施し、印刷物のみでは得られない、強度、保存安定性、ボイル適性、レトルト適性などの内容物保護適性を付与したものに大別される。
印刷物をそのまま使用する構成としては、ガラスビンやプラスチック容器など内容物を保護する包材に、印刷が施されたプラスチックフィルム巻きつけホットメルトで固定したりする場合や消費期限の短い商品、2次包装に使用されることが多い。この場合、印刷インキ層がむき出しとなるため、加工、充填、流通など、印刷後の各段階において、印刷インキ層が物理的に摩擦されるため、使用される印刷インキ層には高い塗膜物性が必要となる。
この場合、高い塗膜物性を得る手段として、印刷インキ層の上にオーバープリントワニス層を設けることで塗膜強度を強固なものにする手法が一般的に行われている。
一方、印刷物にラミネート加工を施した構成は、そのものが内容物保護を目的とした包材として使用されることが多い。この場合、プラスチック基材と印刷インキ層からなる印刷物と、シーラントフィルムとを接着剤を介してラミネートするため、印刷インキ層が直接内容物に触れることはないが、ラミネート適性が必要となる。ラミネート適性確保のため、印刷インキ層の下にアンカーコートワニス層を設けることで、プラスチックフィルム基材と印刷インキ層との密着性を向上させる手法が一般的に行われている。
このように用途に応じて選択されている印刷物の加工方法であるが、近年の包装の簡素化、省資材の流れから、石油化学由来であるフィルムの使用量低減、後加工時の使用エネルギー低減を目的とし、印刷物そのものを包材に利用するケースが増えてきている。このため、印刷インキ層には密着性、耐摩擦性、耐水性、耐ブロッキング性に代表されるような塗膜物性が高い品位で要求されている。
また、消費者の購買意欲向上のため、包材における印刷デザインが美粧性に富んだものが多くなって高画質化していることもあり、塗膜物性に加えて高い画像再現性が要求される。
さらに従来、プラスチックフィルムへの印刷は揮発性有機化合物を主として使用する系で構成された印刷インキを使用することで行われていたが、近年では、印刷時の環境負荷低減、安全性への要求が高まりから、印刷インキ層に含有する揮発性有機化合物の低減、水性化が求められている。
これらの課題に対して、既知の水性アクリル樹脂系をバインダー樹脂として用いる場合は、高い画像再現性を有するが、インキ層としての塗膜が硬く、様々な基材への密着性、追従性が劣るといった問題がある。それに対して、既知の水性ポリウレタン樹脂系をバインダー樹脂として用いる場合は、塗膜が柔軟であることから、高い基材密着性を有するものの、耐ブロッキング性が劣るといった問題に加え、顔料分散性や再溶解性が低いことが課題としてあげられる。
そのため、近年様々な試みが行われている。特に、特許文献1のように、水性アクリル樹脂系の色インキ皮膜層と水性ポリウレタン樹脂系の白インキ皮膜層を組み合わせることで、これまで得ることが出来なかった塗膜物性、インキ物性を得ることが出来るようになっている。しかし、これらのインキ皮膜層の組み合わせ構成は、揮発性有機化合物を使用したオーバープリントワニス層あるいは水性ポリウレタン系アンカーコートワニス層を必須とするため、印刷時の生産性に関して課題が残っている。
特開2005−225083号公報
本発明は、高品質な印刷画像および優れた各種塗膜物性を兼ね備えた印刷インキ積層体を提供することを目的とする。
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の異なる樹脂系のインキ皮膜層を組み合わせて用いることで解決することを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち本発明は、
プラスチックフィルムに、
アクリル樹脂(A)またはポリウレタン樹脂(B)と、有機顔料(D1)および/またはカーボンブラック(D2)とを含有する印刷インキ(1)より形成された第一のインキ皮膜層と、
ポリウレタン樹脂(B)またはアクリルウレタン樹脂(C)と、白色顔料(D3)を含有する印刷インキ(2)より形成された第二のインキ皮膜層と、
アクリル樹脂(A)を含有する印刷インキ(3)より形成された第三のインキ皮膜層とを順に積層してなる印刷インキ積層体であって、
アクリル樹脂(A)の重量平均分子量が、200000〜800000、酸価が、40〜100mgKOH/gであることを特徴とする印刷インキ積層体に関する。
さらに、本発明は、
印刷インキ(1)がアクリル樹脂(A)と、有機顔料(D1)および/またはカーボンブラック(D2)とを含有することを特徴とする上記印刷インキ積層体に関する。
さらに、本発明は、
印刷インキ(2)および/または(3)が、カルボジイミド基を有する化合物を含有することを特徴とする印刷インキ積層体に関する。
本発明により、物性を重視して設計された水性の白インキやオーバープリントワニスと、印刷適性や画像再現性を重視に設計されたプロセス色及び特色を含む水性の色インキを組み合わせることによって、水性インキでは、これまでは難しいとされた良好な画質と耐水摩擦性、基材密着性などの塗膜物性を共に有する印刷インキ積層体が得られるようになった。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本発明の印刷インキ積層体は、プラスチックフィルムに、印刷インキ(1)より形成された第一のインキ皮膜層と、印刷インキ(2)より形成された第二のインキ皮膜層と、印刷インキ(3)より形成された第三のインキ皮膜層を順に積層してなる。
本発明に使用できるプラスチックフィルムとしては、ポリオレフィン系(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等)、ポリエステル系、ポリアミド系が挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じてコロナ処理、ケミカル処理等がされている方が、基材密着性はより良い積層体が作成できる。
本発明における印刷インキ(1)は、有機顔料(D1)および/またはカーボンブラック(D2)、アクリル樹脂(A)またはポリウレタン樹脂(B)を含有する。
有機顔料(D1)としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されているものを挙げることができる。例えば、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。藍インキには銅フタロシアニンが使用されることが着色力の点から好ましい。透明黄インキにはコスト・耐光性の点からC.I.PigmentNoYellow83を用いることが好ましい。墨インキでは、有機顔料の混合によっても墨インキが得られるが、黒色度の観点からカーボンブラックを使用することが好ましい。
本発明における印刷インキ(1)に使用される樹脂としては、アクリル樹脂(A)またはポリウレタン樹脂(B)を含有することが必須である。
本発明においては、アクリル樹脂(A)にはアクリル樹脂の他、アクリル酸−スチレン共重合樹脂、アクリル酸−マレイン酸樹脂、アクリル酸−スチレン-マレイン酸樹脂等も含むものとする。
アクリル樹脂(A)の酸価は40〜180mgKOH/gである事が好ましく、更に好ましくは40〜100mgKOH/gの範囲である。酸価が40mgKOH/g未満になると、印刷における再溶解性が悪くなり、印刷インキ積層体としての画像再現性が劣る。さらにアクリル樹脂(A)とウレタン樹脂(B)もしくはウレタンアクリル樹脂(C)との相溶性も低下するため、造膜不良となり、積層体の基材密着性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性も悪化する。一方で、酸価が180mgKOH/gを超えると、樹脂の耐水性が低下するため、積層体の基材密着性、耐水摩擦性、耐水ブロッキング性、耐ブロッキング性が著しく悪化してしまう。ここで言う酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数の事をさす。
アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は200000〜800000の範囲にある場合が好ましい。重量平均分子量が200000未満であると、樹脂皮膜の強度が低下して、積層体の基材密着性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性、耐ブロッキング性が低下する場合がある。一方で800000を超えると、分子鎖の運動性が低下するため、低温乾燥条件では、インキ皮膜層間の融着が不十分となり、積層体の基材密着性、耐水摩擦性が低下する恐れがある。また、再溶解性も低下しやすい。
アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、−30℃〜30℃の範囲である事が好ましい。アクリル樹脂(A)のTgが−30℃未満であると、樹脂の塗膜強度が低下し、積層体の耐水摩擦性、耐ブロッキング性が悪化する場合がある。一方で30℃を超えた場合、分子鎖の運動性が低下して、ウレタン樹脂との相溶も悪化するため、積層体の基材密着性、耐水摩擦性が低下する場合がある。
本発明において、印刷インキ(1)に使用されるポリウレタン樹脂(B)には、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン−ウレア樹脂を使用することができる。
ポリウレタン樹脂は造膜性の観点から、酸価を有することが望ましく、酸価は10〜50mgKOH/gの範囲であることが好ましい。酸価が10mgKOH/g未満では、印刷における再溶解性が悪くなり、印刷インキ積層体としての画像再現性が劣る場合がある。一方酸価が50mgKOH/gを超えると、樹脂の耐水性が低下するため、積層体の基材密着性、耐水摩擦性、耐水ブロッキング性が低下する恐れがある。
ポリウレタン樹脂(B)の詳細な説明は後述する。
次に、本発明における印刷インキ(2)は、白色顔料(D3)、ポリウレタン樹脂(B)またはアクリルウレタン樹脂(C)を含有する。
白色顔料(D3)としては、印刷インキを白色にできるものであれば限定されるものではなく、例えば無機白色顔料、有機白色顔料、白色ポリマー微粒子などを挙げることができる。このうち無機白色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩、ケイ酸、ケイ酸カルシウム、鉛白、タルク、クレーなどがあり、有機白色顔料としては、特開平11−130975号、特開2004−250559号に示されるビススチリル誘導体白色顔料や、特開平11−140365号、特開2001−234093号に示されるアルキレンビスメラミン誘導体白色顔料などがある。
このうち隠蔽性や着色性の点において、白色顔料としては酸化チタンが好ましく用いられる。酸化チタンには、ルチル型、アナターゼ型、ブルーカイト型といった結晶形態があり、本発明においてはいずれも好適に用いることができるが、光透過性が低く隠蔽性が高いルチル型がより好適に用いられる。
本発明における印刷インキ(2)に使用される樹脂としては、ポリウレタン樹脂(B)またはウレタンアクリル樹脂(C)を含有することが必須である。なお、ポリウレタン樹脂(B)は、印刷インキ(1)で前述した通りであり、詳細な説明は後述する。
印刷インキ(2)にウレタンアクリル樹脂(C)を使用する場合には、酸価は10〜60mgKOH/gが望ましく、より好ましくは、20〜50mgKOH/gである。酸価が10mgKOH/g未満になると、印刷における再溶解性が悪くなり、印刷インキ積層体としての画像再現性が劣る。さらに、積層体の耐ブロッキング性も悪化する場合がある。一方で、酸価が60mgKOH/gを超えると、樹脂の耐水性が低下するため、積層体の基材密着性、耐水摩擦性、耐水ブロッキング性が低下する場合がある。
ウレタンアクリル樹脂(C)の詳細な説明は後述する。
本発明における印刷インキ(3)は、アクリル樹脂(A)を含有する。アクリル樹脂(A)は、印刷インキ(1)で前述した通りであり、詳細な説明は後述する。
なお、印刷インキ(3)は必要に応じて、白色顔料(D2)を含んでも良い。
印刷インキ(1)〜(3)に含まれる樹脂の量は、固形分で10〜40重量%であることが望ましい。10重量%未満になると、インキ塗膜の強度がもろくなり、基材密着性および耐水摩擦性の著しい低下を招く。40重量%を超えると、印刷インキ(1)および印刷インキ(2)においては必要十分な着色力が得られず、印刷インキ(3)では粘度が高くなり、印刷が困難になる。
さらに、印刷インキ(1)〜(3)いずれにも必要に応じて添加剤を含有することもできる。添加剤としては、レベリング剤、濡れ剤、撥水剤、消泡剤、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化エチレンなどのワックス等を使用することができる。
また、本発明においては、印刷インキ(2)および/または(3)に必要に応じてカルボジイミド、イソシアネート、エポキシなどの硬化剤を使用することができるが、カルボジイミド基を有する化合物を添加することが望ましい。カルボジイミド基を有する化合物を添加することにより、インキ層を形成する際にアクリル樹脂(A)、または、ポリウレタン樹脂(B)、または、アクリルウレタン樹脂(C)中のカルボキシル基とカルボジイミド基が反応し、インキ層中に架橋点が形成され、インキ層の基材に対する密着性および耐水摩擦性をより向上させることができる。硬化剤の添加量は、水性インキ組成物中100重量%中、固形分で0.2〜5.0重量%が望ましく、0.8〜4.0重量%がより好ましい。添加量が5.0重量%を超えると、耐水摩擦性および基材密着性が低下する。このような硬化剤としては、例えば、日清紡社製、カルボジライトE−02、E−03、SV−02、V−02、V−02−L2、V−04などが挙げられる。
本発明における印刷インキ(1)〜(3)に含まれる溶剤としては、水、アルコール類、グリコール類などが挙げられる。本発明に使用する溶剤アルコール類は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノールなどが挙げられる。またグリコール類は、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチエルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジピロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンなどがあげられる。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
印刷インキの製造方法について記載する。製造方法は特に限定されるものではないが、一例として次に例示する。印刷インキは、まず、顔料、樹脂、溶剤、分散剤、消泡剤などを添加し、撹拌混合することで得られる混合物を分散機にて分散し、顔料分散体を得る。続いて、得られた顔料分散体に、溶剤、樹脂、必要に応じてワックス、レオロジーコントロール剤、レベリング剤などの添加剤を加え、撹拌混合することで得られる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ビーズミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。
本発明で使用される顔料は、印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわち印刷インキの総重量に対して1〜50重量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの着色剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
印刷インキ組成物中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
印刷インキ組成物の粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。なお、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
本発明の印刷インキ積層体においては、プラスチックフィルムに、印刷インキ(1)にアクリル樹脂(A)を用いることがより好ましい。
一般的に、アクリル樹脂を使用したインキとポリウレタン樹脂を使用したインキには次のような特徴がある。アクリル樹脂は酸価の使用可能範囲が広いため、顔料分散性が高く、印刷時の再溶解性が高い。また、塗膜のガラス転移点(Tg)の設計の幅が広く、多様な塗膜設計が可能である。アクリル樹脂を顔料分散に用いると、良好な発色の分散体が得ることができ、印刷のメインバインダーとして用いると、再溶解性が高く、印刷適性が良好なインキが得られるが、塗膜が固く、柔軟性に乏しいため、フィルムに対する密着性や変形に対する追従性が少ない。一方、ポリウレタン樹脂を使用したインキは、塗膜の柔軟性が高く、強靭な塗膜が得られるが、Tgが低く、酸価も低いため、発色や再溶解性が悪く、柔軟で強靭な塗膜ゆえに印刷時の糸曳きが発生しやすいことが挙げられる。
このように、相反する特徴を有するアクリル樹脂とポリウレタン樹脂であるが、一般的にこれらの混合性は悪く、混合により双方の特徴を両立することは困難である。
本発明では、このように混合での使用が困難なアクリル樹脂とポリウレタン樹脂、双方の特徴を最大限に引き出すべく検討した結果、異なる樹脂系により、異なる機能に特化したインキ層を積層することにより、それぞれの特徴を有するインキ積層体を得ることに成功した。
印刷インキ(1)は、本発明における印刷インキ積層体において、画像を形成する役割を担う。上述したように、近年では消費者の購買意欲を高めるため、高精細な画像が好まれる。本発明における印刷インキ積層体は、印刷により製造されるため、印刷インキ(1)においては、良好な発色と高い画像再現性を有することが望ましい。一般的に顔料分散性はポリウレタン樹脂を使用した場合よりも、アクリル樹脂を使用した場合の方が良好であり、アクリル樹脂を使用した顔料分散体の方が良好な発色、濃度を得ることができる。このため、印刷インキ(1)にはアクリル樹脂を使用した顔料分散体を使用する事が望ましい。このとき、得られたアクリル樹脂を使用した顔料分散体との混合性は、アクリル樹脂(A)は良好であり、発色、濃度ともに良好なインキが得られる。一方、ポリウレタン樹脂(B)との混合により得られたインキはピグメントショックを起こしやすく、インキ安定性に劣るため、良好なインキを得ることが難しい。ポリウレタン樹脂(B)を使用する場合には、ポリウレタン樹脂を使用した顔料分散体を使用することにより、安定なインキを得ることができるが、発色性などは上述した通り、アクリル樹脂(A)を使用したものより劣る。
さらに、アクリル樹脂(A)は使用可能な酸価がポリウレタン樹脂(B)よりも高いため、再溶解性が高く、印刷時に安定して高精細な画像を形成することができる。また、アクリル樹脂(A)は骨格がポリウレタン樹脂(B)よりも固く、印刷時の糸曳き現象も少ないことから、印刷インキ(1)にはアクリル樹脂(A)を使用することがより好ましい。
印刷インキ(2)では、印刷インキ(1)では不足している基材密着性を補助する機能を担う。このため、基材密着性や柔軟性に特化したポリウレタン樹脂(B)もしくはウレタンアクリル樹脂(C)を使用することが望ましい。印刷インキ(2)においてアクリル樹脂(A)を使用すると、十分な基材密着性を得ることができない。なお、印刷インキ(2)で用いられるポリウレタン樹脂(B)は、印刷インキ(1)で用いられるポリウレタン樹脂(B)と同じであっても、異なっていても良い。
印刷インキ(3)では、ブロッキングの抑制ならびに耐水摩擦性向上の機能を担う。このため、アクリル樹脂(A)を必須成分として含むことが望ましい。印刷インキ(3)において、ポリウレタン樹脂(B)もしくはウレタンアクリル樹脂(C)を使用すると、積層体を構成する樹脂系が軟らかくなるため、ブロッキングを発生しやすい。なお、印刷インキ(3)で用いられるアクリル樹脂(A)は、印刷インキ(1)で用いられるアクリル樹脂(A)と同じであっても、異なっていても良い。
続いて、本発明で使用するアクリル樹脂(A)について記述する。
本発明で使用するアクリル樹脂(A)には、水溶型アクリル樹脂(Ac)またはエマルジョン型(以後Em型と呼ぶ)アクリル樹脂(AE)が挙げられる。これらは単独で使用しても構わないし、複数種併用しても構わない。
水溶型アクリル樹脂(Ac)の製造方法として、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体についてあげる。反応槽に有機溶剤を仕込み、昇温させる。有機溶剤は、反応時ならびにその後の処理に悪影響が無く、得られた樹脂を溶解するものであれば任意のものを使用する事ができる。昇温後、窒素雰囲気下で、スチレン、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレートを滴下しながら、ラジカル開始剤を加えてラジカル重合を行う。ラジカル重合は、公知の重合方法で行うことができ、特に溶液重合で行うのが好ましい。得られた樹脂溶液については、塩基性化合物で中和後、そのままイオン交換水で希釈しても良いし、有機溶剤をイオン交換水に溶剤置換してもかまわない。以上の工程により目的の水溶型アクリル樹脂(Ac)を得る事ができる。
水溶型アクリル樹脂(Ac)は、積層体における良好な耐水摩擦性、耐スクラッチ性の観点から、芳香族骨格を有し、カルボキシル基を有するものが好ましい。水溶型アクリル樹脂(Ac)は、芳香族エチレン性不飽和単量体(a−1)、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(a−2)および、これらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体(a−3)を含むエチレン性不飽和単量体(a)をラジカル開始剤により、溶液重合もしくは塊状重合する事で得る事ができる。得られた樹脂は、塩基性化合物で中和して水性化する事ができる。
芳香族エチレン性不飽和単量体(a−1)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールメタクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート等があげられる。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(a−2)としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、ヘキサヒドロフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等があげられる。
エチレン性不飽和単量体(a)は、上記で定めた芳香族エチレン性不飽和単量体(a−1)、ならびにエチレン性不飽和単量体(a−2)の他に、それらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体(a−3)を併用する事ができる。
エチレン性不飽和単量体(a−3)としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tーブチルメタクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等の直鎖または分岐アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のアミド基含有エチレン性不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコール等のヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体;ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシ(メタ)アクリレート等のケト基含有エチレン性不飽和単量体;等が挙げられる。
ラジカル開始剤には公知の油溶性重合開始剤を使用でき、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1'−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリルなどのアゾビス化合物を挙げることができる。
中和剤として使用する塩基性化合物には、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリンなどのアミン類;水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの水酸化物塩;等が挙げられる。
次にEm型アクリル樹脂(AE)の製造方法について説明する。Em型アクリル樹脂(AE)は、高分子分散剤を乳化剤として、エチレン性不飽和単量体(a−4)を乳化重合する事で得る事ができる。これらの中でも積層体の優れた被膜耐性の観点から、前記の水溶性アクリル樹脂(Ac)を乳化剤としたエマルジョン型アクリル樹脂を使用する事が好ましい。
具体的に、水溶型アクリル樹脂(Ac)を高分子乳化剤に使用したEm型アクリル樹脂の製造方法について挙げる。まず、反応槽に水性媒体と水溶型アクリル樹脂(Ac)を仕込み、昇温して溶解させる。その後、窒素雰囲気下でエチレン性不飽和単量体(a−4)を滴下しながら、ラジカル重合開始剤を添加する。反応開始後、反応槽の溶液の色が青白くなるので、粒子核の形成が確認できる。エチレン性不飽和単量体の滴下完了後、更に数時間反応させる事で目的のエマルジョン型アクリル樹脂(AE)を得る事ができる。エチレン性不飽和単量体はそのまま反応槽に滴下しても良いし、水性媒体であらかじめ乳化液にしてから滴下しても構わない。水溶型アクリル樹脂(Ac)は水性媒体中で保護コロイド(シェル成分)として働き、生成する粒子核(コア成分)を安定化する。この方法により得られるエマルジョン型アクリル樹脂(AE)は、ニュート二アンに近い粘性を有するため印刷適性に大変優れている。
エチレン性不飽和単量体(a−4)としては、前述の芳香族エチレン性不飽和単量体(a−1)、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(a−2)、これらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体(a−3)、更に架橋性エチレン不飽和単量体が挙げられる。
架橋性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、
アリル(メタ)アクリレート、1−メチルアリル(メタ)アクリレート、2−メチルアリル(メタ)アクリレート、1−ブテニル(メタ)アクリレート、2−ブテニル(メタ)アクリレート、3−ブテニル(メタ)アクリレート、1,3−メチル−3−ブテニル(メタ)アクリレート、2−クロルアリル(メタ)アクリレート、3−クロルアリル(メタ)アクリレート、o−アリルフェニル(メタ)アクリレート、2−(アリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルラクチル(メタ)アクリレート、シトロネリル(メタ)アクリレート、ゲラニル(メタ)アクリレート、ロジニル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、ビニル(メタ)アクリレート、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等の2個以上のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体;
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アルキルエーテル化N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有エチレン性不飽和単量体が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは1種類または2種以上を併用して用いることができる。
エチレン性不飽和単量体(a−4)にケト基含有エチレン性不飽和単量体を併用する事で、塗膜の基材密着性、耐水摩擦性を相乗効果によりさらに向上させる事ができる。エチレン性不飽和単量体由来のケト基が、インキ組成物中のヒドラジド化合物と反応して、乾燥時にケト・ヒドラジド架橋を形成する。この架橋を形成することにより、塗膜の基材密着性、耐水摩擦性を向上させることが可能となる。
ヒドラジド化合物としては、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
本発明で使用するEm型アクリル樹脂(AE)を得るに際して用いられる重合開始剤としては、ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はなく、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができる。
油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1'−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリルなどのアゾビス化合物を挙げることができる。これらは1種類または2種類以上を混合して使用することができる。
本発明においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましく、例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドなど、従来既知のものを好適に使用することができる。
また、乳化重合を行うに際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用することができる。これにより、乳化重合速度を促進したり、低温において乳化重合を行ったりすることが容易になる。
このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどの金属塩等の還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元性無機化合物、塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素などを例示できる。これら還元剤は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.05〜5.0重量部の量を用いるのが好ましい。なお、前記した重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射等によっても重合を行うことができる。重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常80℃程度とすればよい。重合時間は特に制限されないが、通常2〜24時間である。
さらに必要に応じて、緩衝剤として、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどが、また、連鎖移動剤としてのオクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、ステアリルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類が適量使用できる。
本発明で使用するEm型アクリル樹脂(AE)をラジカル重合により得るに際しては、前記の水溶型アクリル樹脂(Ac)の他、各種界面活性剤を使用することができる。これらは1種類または2種以上を併用して用いることができる。
界面活性剤としては例えば、アルキルエーテル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH−05、KH−10、KH−20、株式会社ADEKA製アデカリアソープSR−10N、SR−20N、花王株式会社製ラテムルPD−104など)、スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王株式会社製ラテムルS−120、S−120A、S−180P、S−180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS−2など)、アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンH−2855A、H−3855B、H−3855C、H−3856、HS−05、HS−10、HS−20、HS−30、株式会社ADEKA製アデカリアソープSDX−222、SDX−223、SDX−232、SDX−233、SDX−259、SE−10N、SE−20N、など)、(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製アントックスMS−60、MS−2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS−30など)、リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製H−3330PL、株式会社ADEKA製アデカリアソープPP−70など)等のアニオン系反応性乳化剤;
オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類、ポリエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体類、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類等のアニオン性非反応性乳化剤;
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等のノニオン性非反応性乳化剤;等が挙げられる。
次に、本発明で使用するポリウレタン樹脂(B)について説明する。
ポリウレタン樹脂(B)は、特に限定はされないが、従来既知の方法に従い、ポリオールとポリイソシアネートとを重付加反応させて得ることができる。
ポリウレタン樹脂(B)の原料に使用するポリオールとしては、代表的なものとして例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオール成分と二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールがある。ポリオールのうちジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3'−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA等が挙げられ、3個以上の水酸基を有するポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、二塩基酸成分としてテレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸、およびそれらの無水物が挙げられる。また、ε−カプロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフラン、あるいはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの重合体、共重合体あるいはグラフト共重合体、またはヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオールあるいはこれらの混合物の縮合によるポリエーテルポリオール類、プロポキシル化またはエトキシル化されたポリエーテルポリオール類等の水酸基が2個以上のものを用いることができる。これらの中でもポリエチレングリコールは、親水基として樹脂骨格中に導入される。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるものを挙げることができる。ポリカーボネートポリオールを構成するポリオールとしては、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示したポリオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
この他に、ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオール、ポリシロキサンポリオール、ひまし油ポリオールなども挙げられる。
これらのポリオールは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
ポリウレタン樹脂を水媒体中に溶解または分散させるためには、樹脂骨格中に親水基を導入する必要がある。前述で挙げたポリエチレングリコールも親水基として有用ではあるが、エチレンオキサイド鎖のみで、水媒体中に溶解または分散させるためには、樹脂骨格中に大量に導入しなければない。その場合、樹脂被膜の耐水性が大幅に低下するため、積層体の耐水摩擦性も著しく悪化してしまう。したがって、親水基の導入には、アニオン性基を有するポリオールを使用する。アニオン性基を有するポリオールの中でも、乾燥後の優れた耐性発現の観点から、カルボキシル基を有するポリオールを使用する事が望ましい。
カルボキシル基を有するポリオールとしては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸や、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有ポリオールは単独、または複数で使用する事ができる。
カルボキシル基を中和する際に使用する塩基性化合物としては、水溶性樹脂(Ac1)を中和する際に使用する前述の塩基性化合物が挙げられる。
また、樹脂骨格中のウレタン結合濃度を上げる、樹脂中に分岐構造や3級アミノ基を導入する等の目的で上記のポリオールに加え、各種低分子ポリオールを適宜、併用する事ができる。
低分子ポリオールとしては、例えば、
エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、などが挙げられる。
更に、同一分子中に少なくとも2個の水酸基と1個の不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体を併用する事で、ウレタン骨格中にエチレン性不飽和基を導入する事も可能である。
同一分子中に少なくとも2個の水酸基と1個の不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、グリシドールとアクリル酸の反応物、トリオール、ジイソシアネートと2−ヒドロキシメタアクリレートとの反応物等が挙げられる。
ポリオールと反応させるポリイソシアネートとして、芳香族、脂肪族、脂環式のポリイソシアネートが用いられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3' −ジクロロ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
イソシアネートと水酸基の反応に用いられる触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキソエート)、2−エチルヘキソエート鉛、チタン酸2−エチルヘキシル、チタンエチルアセテート、2−エチルヘキソエート鉄、2−エチルヘキソエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、テトラ−n−ブチル錫、塩化第一錫、塩化第二錫、塩化鉄等が挙げられる。
本発明で使用するウレタン樹脂は、必要に応じて鎖延長反応をおこなっても構わない。鎖延長反応は、イソシアネート基過剰のウレタンプレポリマーを製造した後、ジアミンなど、イソシアネート基と反応する二官能以上の活性水素含有化合物を鎖延長剤として反応させる。この反応は、樹脂溶液の著しい増粘の観点から、樹脂を中和して水性化する際におこなう事が好ましい。鎖延長により、ポリウレタン樹脂の更なる高分子量化が可能である。また、ウレア結合が導入される事で、樹脂の更なる凝集力向上も期待できる。したがって、この樹脂を使用した積層体の各種塗膜耐性も向上する。
鎖延長剤としては、例えば、
ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;
ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;
トリメチロールプロパンなどのトリオール類;
ペンタエリスリトールなどのペンタオール類;
アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類
などの公知の鎖延長剤を使用できる。
単官能のモノアミンまたはモノオールを併用すれば、鎖延長の停止による分子量の制御も可能である。
反応は無溶剤でも可能であるが、反応後の溶液の粘度を考慮して、反応の際に有機溶剤を使用する事が好ましい。さらに、この有機溶剤は、原料のイソシアネート基と不活性であり、親水性の原料ならび生成物を溶解できる有機溶剤である事が好ましい。
好ましい有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられるが、ポリウレタンの水性化後は通常減圧蒸留により除去されるため、また、脱溶剤しないで使用する場合でも乾燥速度を早めるため、好ましくは水より低沸点の溶剤の使用が望ましい。
水性ウレタン樹脂(B)の水媒体中での安定性を改良する目的で、少量の界面活性剤を併用することも可能である。使用できる界面活性剤としては、Em型アクリル樹脂(AE)で挙げた前述の界面活性剤と同じものを使用する事ができる。
本発明で使用するポリウレタン樹脂(B)は合成しても構わないし、市販のものを使用しても構わない。市販品としては、例えば、第一工業製薬社製スーパーフレックス210、800、860,170等、大成ファインケミカル製アクリットWBR016U、600U、2000U、2101等、宇部興産社製UW5002、UW5020、UW5010等、三洋化成工業社製パーマリンUA−150、UA−300、UA310,ユーコートUWS145、US230等が挙げられる。
次に、本発明で使用するウレタンアクリル樹脂(C)について詳細に説明する。
本発明で使用するウレタンアクリル樹脂(C)は、ウレタン樹脂(c−1)を高分子乳化剤として、エチレン性不飽和単量体(c−2)を乳化重合して得る事ができる。ウレタン樹脂骨格とアクリル樹脂骨格は、化学的に結合されていても良いし、そうでなくても構わない。
ウレタンアクリル樹脂(C)の中でも、ウレタン樹脂(c−1)の骨格中にヒドラジド基が含有されており、エチレン性不飽和単量体(c−2)がケト基含有エチレン性不飽和単量体を含有しているウレタンアクリル樹脂(C)を使用する事が好ましい。このウレタンアクリル樹脂は、アクリル骨格とウレタン骨格が十分に相溶した後に、ケト−ヒドラジド架橋が進行するため、強靭な樹脂塗膜が形成され、積層体の塗膜耐性も向上する。さらにアクリル樹脂(A)もケト基を含有している場合、インキ皮膜層間の架橋も進行するため、その相乗効果で積層体の塗膜耐性はさらに向上する。
ウレタン樹脂(c−1)は、前述のウレタン樹脂(B)と同様の製造方法で得る事ができる。使用する原料としては、前述のウレタン樹脂(B)と同様のものが挙げられる。
ウレタンアクリル樹脂(C)は、乳化剤にウレタン樹脂(c−1)を使用する以外は、前述したEm型アクリル樹脂(AE)と同様の製造方法で得る事ができる。
エチレン性不飽和単量体(c−2)としては、前述のエチレン性不飽和単量体(a−4)などが挙げられる。
本発明で使用するウレタンアクリル樹脂(C)は合成しても構わないし、市販のものを使用しても構わない。市販品としては、例えば、
大成ファインケミカル製WEM-031U、200U、202U、321、3000、290A、WAN−6000
等が挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」をそれぞれ表す。
アクリル樹脂(A)の製造
<水溶性樹脂(Ac)の製造>
実施例において、当該アクリル樹脂(Ac)は、Em型アクリル樹脂(AE)を合成する際の、高分子乳化剤として使用する。
[製造例1]
攪拌器、温度計、2つの滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、メチルイソブチルケトン94.0部を仕込み、攪拌しながら、窒素雰囲気下で温度100℃まで昇温した。次に、2つの滴下ロートにおいて、一方からは、スチレン50.0部、アクリル酸30.0部、メチルメタクリレート10.0部、n−ブチルアクリレート10.0部を3時間かけて滴下した。もう一方からは、ジメチル2,2‘−アゾビスイソブチレート5.8部をメチルイソブチルケトン7.0部に溶解させ、4時間かけてそれを滴下した。滴下完了後、更に10時間反応させた。冷却後、得られた水溶性樹脂(Ac1)溶液に25%アンモニア水28.3部部を加えて中和した。更にイオン交換水を加えて、加熱しながら溶剤置換を行い、水溶性樹脂(Ac1)の水溶液を得た。最後にイオン交換水により、水溶性樹脂(Ac1)溶液の固形分を35.0%に調整した。水溶性樹脂(Ac1)の酸価は221mgKOH/g、重量平均分子量は11800であった。
[製造例2〜8]
表1に示す配合組成で、製造例1と同様の方法で水溶性樹脂(Ac2〜Ac8)溶液を調製した。中和剤である25%アンモニア水は、水溶性樹脂(Ac2〜Ac8)のカルボキシル基とアンモニアが等モルになるように添加した。さらに製造例1と同様の操作をおこない、固形分35.0%の水溶樹脂(Ac2〜Ac8)水溶液を調製した。水溶性樹脂(Ac2〜Ac8)については、酸価、重量平均分子量を評価した。
[酸価]
樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数。乾燥させた水溶性樹脂(Ac1〜Ac8)について、JIS K2501に記載の方法に従い、水酸化カ
リウム・エタノール溶液で電位差滴定をおこない算出した。
[重量平均分子量(Mw)]
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポ
リスチレン換算の値。乾燥させた水溶性樹脂(Ac1〜Ac8)をテトラヒドロフランに溶解させ、0.1%の溶液を調製し、東ソー製HLC−8320−GPC(カラム番号M−0053分子量測定範囲約2千〜約400万)により重量平均分子量を測定した。
[ガラス転移温度(Tg)]
ガラス転移温度とは下のFOXの式より計算した理論値の事をさす。
<FOX式>1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+…+Wi/Tgi+…+Wn/Tgn
〔上記FOX式は、n種の単量体からなる重合体を構成する各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度をTgi(K)とし、各モノマーの質量分率を、Wiとしており、(W1+W2+…+Wi+…Wn=1)である。〕
但し、架橋性エチレン性不飽和単量体の部分は除く。
Figure 0006065036
<Em型アクリル樹脂(AE)の製造>
[製造例9]
攪拌器、温度計、2つの滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水91.8部と製造例1で調製した水溶性樹脂(Ac4)溶液94.3部(固形分として33.0部)仕込み、攪拌しながら、窒素雰囲気下で温度80℃まで昇温した。次に、2つの滴下ロートにおいて、一方からは、2エチルヘキシルアクリレート53.0部、メチルメタクリレート47.0部を2時間かけて滴下した。もう一方からは、過硫酸アンモニウム20%水溶液5.0部(固形分で1.0部)を2時間かけて滴下した。滴下完了後、更に4時間反応させて目的のEm型アクリル樹脂(AE1)の水分散体を得た。イオン交換水により、水分散体の固形分を45.0%に調整した。得られた樹脂の酸価は50mgKOH/g、重量平均分子量は330000、Tgは20℃、平均粒子径は63nmであった。酸価ならびに重量平均分子量は前述の方法により測定し、Tgも前述の式により算出した。平均粒子径は後述する方法により測定した。
[平均粒子径]
樹脂微粒子分散体を500倍に水希釈し、該希釈液約5mlを動的光散乱測定法(測定装置は日機装製ナノロトラックEX150)により測定をおこなった。この時得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを平均粒子径とした。
[製造例10〜22]
表2に示す配合組成で、製造例9と同様の方法でEm型アクリル樹脂(AE2〜14)の水分散体を調製した。製造例9と同様に、イオン交換水により、水分散体の固形分を全て45.0%に調整した。酸価、重量平均分子量、Tg、平均粒子径については製造例9と同様の方法で測定した。
Figure 0006065036
<ポリウレタン樹脂(B)の製造>
[製造例23]
温度計、攪拌器、還流器、および窒素ガス導入管を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、PTG-3000SN(保土谷化学製ポリテトラメチレングリコール 官能基数2 水酸基価37 数平均分子量3000)121.8部、PEG#2000(日油製ポリエチレングリコール 官能基数2 水酸基価56 数平均分子量2000)24.4部、2,2−ジメチロールプロピオン酸32.7部およびイソホロンジイソシアネート66.9部を仕込み、90℃、3時間反応させた。冷却後、得られた水溶性樹脂に25%アンモニア水16.6部とイオン交換水73.0部の混合溶液を徐々に滴下して中和することにより水溶化し、ポリウレタン樹脂(B1)の水溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(B1)の酸価は55mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は36000であった。酸価、重量平均分子量(Mw)は水溶性アクリル樹脂(Ac)と同様の方法で測定した。
[製造例24〜28]
表3に示す配合組成で、製造例23と同様の方法でポリウレタン樹脂(B2〜B6)溶液を調製した。中和剤である25%アンモニア水は、ポリウレタン樹脂(B2〜B6)のカルボキシル基とアンモニアが等モルになるように添加した。得られたポリウレタン樹脂(B2〜B6)について、酸価、重量平均分子量を評価した。酸価、重量平均分子量(Mw)は製造例23と同様の方法で測定した。
[製造例29]
温度計、攪拌器、還流器、および窒素ガス導入管を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、P−2010(クラレ製3-メチルペンタンジオール、アジピン酸系ポリエステルポリオール 官能基数2 水酸基価56 数平均分子量2000)160.0部,ジメチロールプロピオン酸17.9部を仕込み,60℃まで昇温した。撹拌を行いながら,イソホロンジイソシアネート94.8部,ジブチル錫ジラウレート0.05部を加え80℃まで昇温したのち6時間反応させ、実測NCO%=3.25%のウレタンプレポリマーを得た。その後、40℃まで冷却して、イソプロピルアルコール100部を加え、さらに撹拌をしながらイソホロンジアミン25.4部,蒸留水100部からなる溶液を30分かけて滴下し、その後1時間反応を行った。イソシアネートの消失をIRで確認した後、25%アンモニア水11.5部、蒸留水488.5部を加え,ポリウレタン樹脂(B7)溶液を得た。得られた樹脂について、製造例23と同様の方法で酸価、重量平均分子量を測定した。樹脂の酸価は25mgKOH/g、重量平均分子量は35000であった。
Figure 0006065036
<ウレタン樹脂(c1)の製造>
[製造例30]
温度計、攪拌器、還流器、および窒素ガス導入管を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、PTG-2000SN(保土谷化学製ポリテトラメチレングリコール 官能基数2 水酸基価56 数平均分子量2000)55.7部、PEG#2000(日油製 ポリエチレングリコール 官能基数2 水酸基価56 数平均分子量2000)18.6部、ジメチロールブタン酸8.2部、メチルエチルケトン43.0部を仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温した。攪拌下、イソホロンジイソシアネート17.5部、ジブチル錫ジラウレート0.01部を加え78℃まで昇温し、7時間反応させた。得られたウレタン樹脂(c1)の重量平均分子量は11400、酸価は31mgKOH/gであった。反応後、濃度25%のアンモニア水3.8部、イオン交換水233.3部を加え、中和、脱溶剤をおこなった。脱溶剤後、イオン交換水で固形分を30.0%に調製した。
[製造例31および32]
表4に示す配合組成で製造例30と同じ方法でウレタン樹脂を合成し、中和、脱溶剤をおこない、不揮発成分が30%の樹脂水溶液を調製した。中和時のアンモニア水は、ウレタン樹脂のカルボキシル基が100%中和になる量を添加した。
[製造例33]
温度計、攪拌器、還流器、および窒素ガス導入管を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、P2000(アデカ製ポリプロピレングリコール 分子量2000)53.2部、ジメチロールプロピオン酸14.3部、酢酸ブチル40.0部を仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温した。攪拌下、イソホロンジイソシアネート32.5部、ジブチル錫ジラウレート0.01部を加え80℃まで昇温し、7時間反応させ、イソシアネート基末端のウレタンプレポリマーを得た。さらにアジピン酸ジヒドラジド4.6部を添加して、2時間反応させ、ヒドラジド基末端のウレタン樹脂(c4)を得た。重量平均分子量は15600、酸価は57mgKOH/gであった。反応後、濃度25%のアンモニア水7.2部、イオン交換水247.1部を加え、中和、脱溶剤をおこなった。脱溶剤後、イオン交換水で固形分を30.0%に調製した。
Figure 0006065036
<ウレタンアクリル樹脂(C)の製造>
[製造例34]
温度計、攪拌器、還流器、および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、窒素ガスを導入しながら、製造例30で得たウレタン樹脂(c−1)の30.0重量%水溶液777.6部、イオン交換水43.0部を加え、温度80℃まで昇温した。次に、2つの滴下ロートを準備し、一方に、エチルアクリレート30.0部、n−ブチルアクリレート30.0部、メチルメタクリレート40.0部を仕込み2時間かけて滴下した。他方には、濃度5%の過硫酸カリウム水溶液16.0部(固形で0.8部)を仕込み2時間かけて滴下した。滴下完了後、さらに4時間反応を継続した後、反応を終了した。イオン交換水で溶液の不揮発分を40重量%に調整して、ウレタンアクリル樹脂(C1)の水分散体を得た。得られた樹脂の酸価は13mgKOH/gであった。酸価はコアシェル型アクリル樹脂(AE)と同様の方法で測定した。
[製造例35〜39]
表5に示す配合組成で製造例34と同じ方法でウレタンアクリル樹脂(C2〜C6)の水分散体を調製した。
Figure 0006065036
<印刷インキ(1)の製造>
[製造例40]
銅フタロシアニンブルー(リオノールブルーFG−7400、トーヨーカラー社製)15部、アクリル樹脂A(Ac1)10部、水20部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3部を攪拌混合し、サンドミルを使用して、常法に従い顔料分散を行い、得られた顔料分散体にアクリル樹脂(A1)40.0部、水9.7部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部および消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部を撹拌混合することにより、印刷インキ(1)−1を得た。

[製造例41]
銅フタロシアニンブルー(リオノールブルーFG−7400、トーヨーカラー社製)15部、アクリル樹脂A(Ac1)10部、水20部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3部を攪拌混合し、サンドミルを使用して、常法に従い顔料分散を行い、得られた顔料分散体にアクリル樹脂(A2)40.0部、水5.7部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部および消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部およびカルボジイミド基を有する化合物(カルボジライトSV02、日清紡ケミカル社製)4.0部を撹拌混合することにより、印刷インキ(1)−2を得た。

[製造例42]
銅フタロシアニンブルー(リオノールブルーFG−7400、トーヨーカラー社製)15部、アクリル樹脂A(Ac1)10部、水20部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3部を攪拌混合し、サンドミルを使用して、常法に従い顔料分散を行い、得られた顔料分散体にアクリル樹脂(A2)40.0部、水5.4部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部および消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部、アジピン酸ジヒドラジド0.3部およびカルボジイミド基を有する化合物(カルボジライトSV02、日清紡ケミカル社製)4.0部を撹拌混合することにより、印刷インキ(1)−3を得た。
[製造例43〜58]
表6に示す構成で、実施例40と同様の方法で印刷インキ((1)−4〜(1)−19)を得た。
[製造例59]
カーボンブラック(リーガル99R、キャボット社製)15部、アクリル樹脂A(Ac1)15部、水20部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3部を攪拌混合し、サンドミルを使用して、常法に従い顔料分散を行い、得られた顔料分散体にアクリル樹脂(A2)40.0部、水9.7部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部、消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部撹拌混合することにより、印刷インキ(1)−20を得た。
[製造例60]
銅フタロシアニンブルー(リオノールブルーFG−7400、トーヨーカラー社製)15部、ポリウレタン樹脂(B3)10部、水25部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3.0部を攪拌混合し、サンドミルを使用して、常法に従い顔料分散を行い、得られた顔料分散体にポリウレタン樹脂(B3)35.0部、水9.7部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部、消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部を撹拌混合し、印刷インキ(1)−21を得た。
[製造例61]
カーボンブラック(リーガル99R、キャボット社製)15部、ポリウレタン樹脂(B3)10部、水25部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3.0部を攪拌混合し、サンドミルを使用して、常法に従い顔料分散を行い、得られた顔料分散体にポリウレタン樹脂(B3)35.0部、水9.7部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部、消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部を撹拌混合し、印刷インキ(1)−1を得た。
Figure 0006065036
<印刷インキ(2)の製造>
[製造例62]
酸化チタン(タイペークCR80、石原産業社製)35.0部、アクリル樹脂A(Ac1)10部、水15部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3.0部を攪拌混合し、サンドミルを使用して、常法に従い顔料分散を行い、得られた顔料分散体にアクリル樹脂(A2)22.0部、水5.7部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部、消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部、およびカルボジイミド基を有する化合物(カルボジライトSV02、日清紡ケミカル社製)7.0部を撹拌混合することにより、印刷インキ(2)−1を得た。

[製造例63]
酸化チタン(タイペークCR80、石原産業社製)35.0部、ポリウレタン樹脂(B3)20.0部、水10.0部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3.0部を攪拌混合し、サンドミルを使用して、常法に従い顔料分散を行い、得られた顔料分散体にポリウレタン樹脂(B1)20.0部、水5.7部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部、消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部、およびカルボジイミド基を有する化合物(カルボジライトSV02、日清紡ケミカル社製)4.0部を撹拌混合することにより、印刷インキ(2)−2を得た。
[製造例64〜70]
表7に示す構成で、実施例63と同様の方法で印刷インキ((2)−3〜(2)−9)を得た。
[製造例71]
酸化チタン(タイペークCR80、石原産業社製)35.0部、ポリウレタン樹脂(B3)20.0部、水10.0部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3.0部を攪拌混合し、サンドミルを使用して、常法に従い顔料分散を行い、得られた顔料分散体にアクリルウレタン樹脂(C1)20.0部、水5.7部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部、消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部、およびカルボジイミド基を有する化合物(カルボジライトSV02、日清紡ケミカル社製)4.0部を撹拌混合することにより、印刷インキ(2)−10を得た。
[製造例72〜76]
表7に示す構成で、実施例71と同様の方法で印刷インキ((2)−11〜(2)−15)を得た。
Figure 0006065036
<印刷インキ(3)の製造>
[製造例77]
酸化チタン(タイペークCR80、石原産業社製)35.0部、アクリル樹脂A(Ac1)10部、水15部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3.0部を攪拌混合し、サンドミルを使用して、常法に従い顔料分散を行い、得られた顔料分散体にアクリル樹脂(A1)25.0部、水2.7部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部、消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部、およびカルボジイミド基を有する化合物(カルボジライトSV02、日清紡ケミカル社製)7.0部を撹拌混合することにより、印刷インキ(3)−1を得た。
[製造例78〜95]
表8に示す構成で、実施例77と同様の方法で印刷インキ((3)−2〜(3)−19)を得た。

[製造例96]
アクリル樹脂A(A2)70部、水9.7部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3.0部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部、消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部、およびカルボジイミド基を有する化合物(カルボジライトSV02、日清紡ケミカル社製)15.0部を撹拌混合することにより、印刷インキ(3)−20を得た。
[製造例97]
表8に示す構成で、実施例96と同様の方法で印刷インキ(3)−21を得た。
[製造例98]
酸化チタン(タイペークCR80、石原産業社製)35.0部、ポリウレタン樹脂(B3)10.0部、水15.0部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3部を攪拌混合し、サンドミルを使用して、常法に従い顔料分散を行い、得られた顔料分散体にポリウレタン樹脂(B3)25.0部、水5.7部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部、消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部、およびカルボジイミド基を有する化合物(カルボジライトSV02、日清紡ケミカル社製)4.0部を撹拌混合することにより、印刷インキ(3)−22を得た。
[製造例99]
酸化チタン(タイペークCR80、石原産業社製)35.0部、ポリウレタン樹脂(B3)10.0部、水15.0部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部およびn-プロパノール3部を攪拌混合し、サンドミルを使用して、常法に従い顔料分散を行い、得られた顔料分散体にアクリルウレタン樹脂(C2)25.0部、水5.7部、ポリエチレンワックス(アクアペトロDP2502B、東洋アドレ社製)2.0部、消泡剤(テゴフォーメックス1488、エボニック社製)0.2部、およびカルボジイミド基を有する化合物(カルボジライトSV02、日清紡ケミカル社製)4.0部を撹拌混合することにより、印刷インキ(3)−23を得た。
Figure 0006065036
<印刷インキ積層体の作製>
[実施例1]
処理ポリエチレンテレフタラート(E5100、東洋紡(株)製)上に、セントラルインプレッション(CI)型のフレキソ印刷機を利用し、アニロックスロールおよび樹脂版により、印刷インキ(1)−1、印刷インキ(2)−4、印刷インキ(3)−1の順で印刷速度100m/分で印刷し、得られた印刷物を40℃にて20時間エージングを行った後、印刷インキ積層体(P1)を得た。
[実施例2〜55][比較例1〜18]
表9−1、9−2、9−3および表10に示す印刷インキ(1)、印刷インキ(2)および印刷インキ(3)を用い、実施例1と同様の方法で印刷インキ積層体(P2〜P55およびQ1〜Q18)を得た。
前記印刷インキ積層体(P1〜P55およびQ1〜Q18)を用い、基材密着性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性、耐水ブロッキング性、再溶解性、ブロッキング性、図柄再現性の評価を行った。
<基材密着性>
得られた印刷インキ積層体に対し、インキ塗工面にセロファンテープを貼ったのち、強く引き剥がしてインキの剥離度合いを目視判定した。
なお、実用レベルは△以上である。
◎:インキが全く剥離しなかったもの
○:インキがフィルムから僅かに剥離するもの(20%未満)
△:インキがフィルムから剥離するもの(20%以上、50%未満)
×:インキがフィルムから著しく剥離するもの(50%以上)
<耐水摩擦性>
得られた印刷インキ積層体を、学振型耐摩擦性試験機を用いて、含水黒綿布にて摩擦し、インキ層の剥離度合いを目視判定した。(荷重 500g、100回)
なお、実用レベルは△以上である。
◎:インキが全く剥離しなかったもの
○:インキがフィルムから僅かに剥離するもの(15%未満)
△:インキがフィルムから剥離するもの(15%以上、50%未満)
×:インキがフィルムから著しく剥離するもの(50%以上)
<耐スクラッチ性>
得られた印刷インキ積層体に対し、爪でインキ塗工面を引掻き、塗膜の傷つき程度から耐スクラッチ性を評価した。
なお、実用レベルは△以上である。
◎:傷が生じなかったもの
○:僅かに傷を生ずるもの
△:傷を生ずるもの
×:著しく傷を生ずるもの(爪を縦にしても剥がれるもの)
<耐水ブロッキング性>
得られた印刷インキ積層体を、4cm×4cmの大きさに切りだし、このインキ塗工面に水を0.1g垂らしたものに、これと同じ大きさに切った処理ポリエチレンテレフタラート(E5100、東洋紡(株)製)の非処理面とを重ね合わせて、1kg/cm2の荷重をかけ、40℃、80%RHの雰囲気で24時間放置後、印刷面とプラスチックフィルムを引き剥がし、インキの剥離の程度から耐ブロッキング性を評価した。
なお、実用レベルは△以上である。
◎:インキが全く剥離しなかったもの
○:インキがフィルムから僅かに剥離するもの(10%未満)
△:インキがフィルムから剥離するもの(10%以上、30%未満)
×:インキがフィルムから著しく剥離するもの(30%以上)
<耐ブロッキング性>
得られた印刷インキ積層体を、4cm×4cmの大きさに切りだし、このインキ塗工面と、これと同じ大きさに切った処理ポリエチレンテレフタラート(E5100、東洋紡(株)製)の非処理面とを重ね合わせて、10kg/cm2の荷重をかけ、40℃、80%RHの雰囲気で24時間放置後、印刷面とプラスチックフィルムを引き剥がし、インキの剥離の程度から耐ブロッキング性を評価した。
なお、実用レベルは△以上である。
◎:インキが全く剥離しなかったもの
○:インキがフィルムから僅かに剥離するもの(10%未満)
△:インキがフィルムから剥離するもの(10%以上、30%未満)
×:インキがフィルムから著しく剥離するもの(30%以上)
<画像再現性>
印刷物の画像(網点およびベタ部分)を目視評価。
なお、実用レベルは△以上である。
◎:ドットブリッジが全く発生しない
○:5%網点部分にドットブリッジが発生
△:10%網点部分にドットブリッジが発生
×: ベタ部エッジに汚れが発生
Figure 0006065036
Figure 0006065036
Figure 0006065036
Figure 0006065036
評価結果を表9−1、9−2、9−3および表10に示す。
プラスチックフィルムに、アクリル樹脂(A)もしくはポリウレタン樹脂(B)を含む印刷インキ(1)、ポリウレタン樹脂(B)もしくはウレタンアクリル樹脂(C)を含む印刷インキ(2)、アクリル樹脂(A)を含む印刷インキ(3)を順に積層した実施例1〜55の印刷インキ積層体は、比較例1〜18の順に積層した場合よりも、塗膜物性が良好であった。特に、印刷インキ(1)および(3)に酸価が40〜180mgKOH/gのアクリル樹脂(A)を併用した場合には、耐水摩擦性、耐水ブロッキング性、耐ブロッキング性に優れた印刷インキ積層体が得られた。また、印刷インキ(2)にポリウレタン樹脂(B)もしくはウレタンアクリル樹脂(C)を用いることで、基材密着性、耐スクラッチ性が向上した。これらを組み合わせて積層することにより、樹脂の混合のみでは困難であった、それぞれの特徴を両立させ、性能のバランスのとれた印刷インキ積層体が得られた。

Claims (3)

  1. プラスチックフィルムに、
    アクリル樹脂(A)またはポリウレタン樹脂(B)と、有機顔料(D1)および/またはカーボンブラック(D2)とを含有する印刷インキ(1)より形成された第一のインキ皮膜層と、
    ポリウレタン樹脂(B)またはアクリルウレタン樹脂(C)と、白色顔料(D3)を含有する印刷インキ(2)より形成された第二のインキ皮膜層と、
    アクリル樹脂(A)を含有する印刷インキ(3)より形成された第三のインキ皮膜層とを順に積層してなる印刷インキ積層体であって、
    アクリル樹脂(A)の重量平均分子量が、200000〜800000、酸価が、40〜100mgKOH/gであることを特徴とする印刷インキ積層体。
  2. 印刷インキ(1)が、アクリル樹脂(A)と、有機顔料(D1)および/またはカーボンブラック(D2)とを含有することを特徴とする請求項1記載の印刷インキ積層体。
  3. 印刷インキ(2)および/または(3)が、カルボジイミド基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1または2記載の印刷インキ積層体。
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