JP6060919B2 - 加熱炉からの自動抽出方法 - Google Patents
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Description
アイドルタイムを最小にするための一つの方法として、熱間圧延工程では、ミルペーシングを用いた制御方法により圧延材の加熱炉からの自動抽出が行われる。ミルペーシングを用いた制御方法では、熱間圧延ライン上の各設備への圧延材の到達時間が計算され、各設備での圧延材同士の衝突や干渉等の物理的制約、および設定変更等に必要な圧延間隔が考慮されたうえで、各圧延材の圧延間隔が最短となるように加熱炉からの抽出時刻が決定される。
特許文献1に開示された圧延材の温度予測を考慮する方法では、仕上圧延機の入側までの温度予測において、1σ=10℃程度の誤差が発生しているため、温度予測の誤差がアイドルタイムの原因となる場合がある。
さらに、従来のミルペーシングによる搬送予測において、予測温度や予測搬送時間に一定の誤差が発生することは避けられない。また、従来の熱間圧延工程の設備において、ミルペーシングにおいて計算される搬送予測の精度を今以上に向上させることは技術的に困難である。
また、このような加熱炉からの自動抽出方法において、算出工程では、待機時間は、第1の推定温度から加熱炉からの抽出時点から仕上圧延機に到達するまでの圧延材の温度降下分を引いた第2の推定温度と、第1の目標温度との温度差から算出されてもよい。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態の熱間圧延ラインは、加熱炉1と、プレス2と、5つの粗圧延スタンドR1,R2,R3,R4,R5を有する粗圧延機3と、7つの仕上圧延スタンドF1,F2,F3,F4,F5,F6,F7を有する仕上圧延機4と、コイラ5と、各設備の動作等を制御し、ミルペーシングを行う制御部6とを備える。
本発明に係る自動抽出方法の説明に先立ち、従来のミルペーシングによる自動抽出方法について説明する。従来の圧延材の自動抽出方法では、様々な制約条件の下で圧延材の圧延間隔が最短となるように加熱炉1からの圧延材の抽出時刻がミルペーシングにより決定され、圧延材の加熱炉1から自動抽出が行われる。従来の自動抽出方法における制約条件には、圧延材の厚み、幅、長さ、機械的特性、抽出予定温度、圧延後のコイルの厚み等の圧延材の条件、および先行材と後行材との衝突や干渉、粗圧延機3、仕上圧延機4の設定変更に要する時間等の設備的な条件がある。従来の圧延材の自動抽出方法では、まず、圧延材の条件に基づいて圧延される各圧延材について圧延ラインの各設備を通過する時間である搬送時間が予測され、次に、設備的な条件に基づいて各圧延材の圧延間隔が最短となるように加熱炉1からの抽出時刻が決定される。以下では、このような自動抽出方法として、特許文献2に記載の自動抽出方法を従来の自動抽出方法として説明する。また、特許文献2に記載の自動抽出方法により決定される加熱炉1からの抽出時刻を第1の抽出時刻ともいう。
次に、図4および5を参照して、本発明の一実施形態の圧延材の加熱炉からの抽出方法について説明する。
図4に示すように、まず、制御部6は、加熱炉内の圧延材について従来の自動抽出方法による抽出時刻である第1の抽出時刻よりも早く抽出できるか否かを判断する(S100)。ステップS100における判断は、圧延材の加熱炉1からの抽出時点の推定温度である第1の推定温度と、圧延材の仕上圧延機4の入側で必要な温度である第1の目標温度とに基づいて行われる。具体的には、第1の推定温度が、第1の目標温度から算出される第2の目標温度よりも高いか否かで判断される。つまり、第1の推定温度が第2の目標温度よりも高い場合には、圧延材を早く抽出できると判断し、第1の推定温度が第2の目標温度以下の場合には、圧延材を早く抽出できないと判断する。
一方、ステップS100において圧延材を早く抽出できると判断した場合、制御部6は、数1で示される待機時間dt2を算出する(S104)。
ステップS104の後、制御部6は、第1の抽出時刻よりも最大で待機時間dt2の時間分だけ早く圧延材が抽出されるように、圧延材の加熱炉1からの抽出時刻である第2の抽出時刻を決定する(S106)。なお、制御部6は、第2の抽出時刻の決定と同時に、圧延材の各設備の搬送時間も算出する。
以上、本実施形態に係る加熱炉1からの自動抽出方法について説明した。次に、本実施形態に係る加熱炉1からの自動抽出方法において、圧延実績が圧延予定よりも早まった場合、圧延実績が圧延予定通りとなった場合、および圧延実績が圧延予定よりも遅くなった場合について、それぞれ説明する。
先行材の仕上圧延が圧延予定通りに行われた場合、先行材の圧延予定と圧延実績とに搬送予測の誤差がないことは、時刻t3で判明する。時刻t3においては、後行材の粗圧延がすでに行われているため、粗圧延機3から仕上圧延機4の間の待機位置(設備位置P7)にて待機動作が行われる。なお、本実施形態では、待機に伴う温度降下が圧延材を加熱炉1から抽出する際の判断で考慮されており、仕上圧延機4の入側での第1の目標温度が確保できるように補償されている。このため、待機動作により圧延材の温度が降下しても、表面品質等の問題が生じることはない。
以上のように、本実施形態において先行材の仕上圧延が圧延予定通りに行われる場合、後行材が従来の自動抽出方法による圧延予定と同じ時刻に仕上圧延機4の入側の仕上圧延スタンドF1に噛み込まれるため、従来の自動抽出方法に比べ生産能率が低下することはない。また、先行材の仕上圧延が圧延予定通りに行われる場合、本実施形態に係る自動抽出方法は、従来の自動抽出方法に対し待機位置での待機動作が行われることで、圧延材の温度が低くなり、第1の目標温度に近い値となる可能性が高くなる。つまり、従来であれば圧延材が仕上圧延機4の入側において圧延可能な上限温度を超えるような場合でも、本実施形態では圧延材の温度は上限温度未満となるため、圧延材の冷却のための待機時間を削減することができる。このため、本実施形態では、待機時間の削減により生産能率を向上させることが可能となる。
図8に示すように、従来の圧延材の加熱炉1からの自動抽出方法において、先行材の仕上圧延が圧延予定よりも遅く終了する搬送予測の誤差が生じる場合、後行材が待機位置(設備位置P7)で誤差となるdt3の時間分だけ待機する待機動作が行われる。待機動作は、図6で説明した動作と同様に行われる。ここで、後行材の温度は、待機に伴い降下する。しかし、この温度降下分は予め仕上圧延機4の入側での目標温度として考慮されており、実績のばらつきから、目標温度を確保すれば先行材の遅れによる待機時間が発生しても、仕上圧延機4の入側で必要な最低温度が確保できるように計算されている。
また、上記実施形態では、ステップS104において、制御部6は、第2の予測温度と第1の目標温度との差から待機時間dt2を算出したが、本発明はこれに限らない。例えば、ステップS104において、制御部6は、第2の予測温度と第1の目標温度との差の代わりに、第1の推定温度と第2の目標温度との差を用いて待機時間dt2を算出してもよい。
本発明は、図10に示す連続した15個の圧延材の圧延実績について、本発明に係る加熱炉1からの自動抽出方法を適用した場合について、シミュレーションを行った。図10に示すように、従来の自動抽出方法では、1個目の圧延材の加熱炉1からの抽出時点から、15個目の圧延材の仕上圧延機4の仕上圧延スタンドF1の噛み込みまでの時間は、2202.7秒であった。
以上の結果から、本発明に係る加熱炉1からの自動抽出方法を適用することにより、搬送予測による誤差の影響を少なくすることができ、生産能率の低下を抑制することが可能となることが確認できた。
2 プレス
3 粗圧延機
4 仕上圧延機
5 コイラ
6 制御部
R1,R2,R3,R4,R5 粗圧延スタンド
F1,F2,F3,F4,F5,F6,F7 仕上圧延スタンド
Claims (3)
- 加熱炉在炉中に、連続して圧延される圧延材である先行材と後行材との干渉が生じないように、前記圧延材が前記加熱炉から抽出される時刻である第1の抽出時刻を決定して、前記加熱炉から自動的に前記圧延材を抽出する熱間圧延における加熱炉からの自動抽出方法において、
前記圧延材の前記加熱炉からの抽出時点の推定温度である第1の推定温度と、前記圧延材が仕上圧延機の入側で必要な温度である第1の目標温度と、に基づいて前記圧延材を前記第1の抽出時刻よりも早く抽出できるか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程において、早く抽出できると判断された場合に、前記第1の推定温度と前記第1の目標温度とに基づいて、前記圧延材が圧延ラインにて待機可能な時間である待機時間を算出する算出工程と、
前記第1の抽出時刻よりも最大で前記待機時間の時間分だけ早い抽出時刻である第2の抽出時刻を決定する抽出時刻決定工程と、
を備え、
前記第1の推定温度が、前記加熱炉内の雰囲気温度と、前記圧延材の前記加熱炉への装入前の温度と、前記圧延材の前記加熱炉内での在炉時間と、前記加熱炉のヒートパターンとから算出されることを特徴とする加熱炉からの自動抽出方法。 - 前記判断工程において、前記圧延材の早く抽出できるか否かの判断は、前記第1の推定温度が、前記第1の目標温度に前記加熱炉からの抽出時点から前記仕上圧延機に到達するまでの前記圧延材の温度降下分を足した第2の目標温度よりも高いか否かの判断により行われることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉からの自動抽出方法。
- 前記算出工程において、前記待機時間は、前記第1の推定温度から前記加熱炉からの抽出時点から前記仕上圧延機に到達するまでの前記圧延材の温度降下分を引いた第2の推定温度と、前記第1の目標温度との温度差から算出されることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱炉からの自動抽出方法。
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