JP6057227B2 - 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒 - Google Patents

還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒 Download PDF

Info

Publication number
JP6057227B2
JP6057227B2 JP2015129490A JP2015129490A JP6057227B2 JP 6057227 B2 JP6057227 B2 JP 6057227B2 JP 2015129490 A JP2015129490 A JP 2015129490A JP 2015129490 A JP2015129490 A JP 2015129490A JP 6057227 B2 JP6057227 B2 JP 6057227B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
iron
fenton reaction
reducing organic
reaction catalyst
organic substance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015129490A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015211967A (ja
Inventor
クラウジオ 健治 森川
クラウジオ 健治 森川
信 篠原
信 篠原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Agriculture and Food Research Organization
Original Assignee
National Agriculture and Food Research Organization
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Agriculture and Food Research Organization filed Critical National Agriculture and Food Research Organization
Priority to JP2015129490A priority Critical patent/JP6057227B2/ja
Publication of JP2015211967A publication Critical patent/JP2015211967A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6057227B2 publication Critical patent/JP6057227B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Catalysts (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Description

本発明は、フェントン反応触媒に関し、さらに本発明は、前記フェントン反応触媒を用いることを特徴とする殺菌方法、汚染物質分解方法、化学発光を利用した発光方法、に関する。
農業分野や食品加工分野において、殺菌や有害物質を除去する処理は重要である。しかし従来の多くの方法のように薬剤を用いた場合、薬剤が食品や農産物に残留する恐れがあり好ましくない。また、次亜塩素酸による殺菌は塩素臭が発生する欠点がある。
そこで、食品分野においては、食品に臭いの残らない殺菌法としてオゾン殺菌を挙げることができるが、オゾン生成装置は高価で大規模施設以外は導入が難しいという欠点がある。
これらの状況から、多くの産業分野において、人体に有害な残効性がなく且つ安価な殺菌方法の開発に対するニーズは高い。
そこで、このような問題を解決する殺菌方法として、フェントン反応が注目されている。
「フェントン反応」とは、二価鉄が作用することで過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させる反応である。発生したヒドロキシラジカルは、ラジカルの中で最も強い酸化力を示す。
その強力な酸化力を利用して、殺菌、有害物質や難分解性の汚染物質の分解(例えば、有害物質で汚染された土壌にフェントン反応触媒を注入し、土壌浄化を行う技術)など、様々な分野への応用が期待されている。
またフェントン反応は、反応終了後に過酸化水素が酸素と水に変化し無害となるため、環境への負荷の小さい技術である。
これまでのフェントン反応触媒としては、一般的に硫酸第一鉄(II)が用いられていた。しかし、二価鉄はすぐに酸化されて沈殿し、触媒能を失うので随時添加する必要があった。
そこで、水溶性を維持するために、EDTAやクエン酸などを利用して、硫酸第一鉄の溶解度を向上させる技術がある(非特許文献1参照)。
また、フェントン反応の強力な酸化力を利用して、カビの殺菌を行う技術が報告されている(特許文献1参照)。
ところが、これら従来の方法においては、触媒となる二価鉄が非常に不安定で二価から三価に酸化されてしまうことを防ぐことができず、触媒能が短時間で失われてしまう致命的な問題があった。
このため、本来は不安定である二価鉄の状態を長期間維持できる安定したフェントン反応触媒の開発が求められていた。
また、従来のフェントン反応触媒は、豊富に存在し安価で供給可能な三価鉄や金属鉄を鉄原料に使用することはできなかった。
特開2009-062350号公報 特公昭61-59248号公報
http://is-solution.com/library/pdf/2009/s3-18.pdf
本発明は上記課題を解決し、二価鉄を長期間安定維持できるフェントン反応触媒を開発し提供することを課題とする。
また、本発明は、従来のフェントン反応触媒には見られない、三価鉄や金属鉄(安価な鉄供給原料)についても二価鉄に変換して原料として利用可能なフェントン反応触媒を、製造して提供することを課題とする。
また、本発明は、人体や環境に対して無害なフェントン反応触媒を開発することを課題とする。
還元作用を有する物質(例えば、アスコルビン酸等)を用いると、三価鉄を二価鉄にすることはできる(特許文献2参照)が、これらの物質の多くは、強いラジカル消去能(スカベンジャー機能)を有する。
従って、従来これら還元剤は、ヒドロキシラジカルを発生させるフェントン反応に利用されることはなかった。
本発明者らはこのような状況を鑑み、鋭意検討を重ねたところ、特定の還元性有機物(具体的には、アスコルビン酸、ポリフェノール含有植物体成分、植物体乾留液成分)を、水存在下で鉄元素に対して特定の割合で混合して得た反応生成物には、極めて強力なフェントン反応触媒能が付与されることを見出した。
また、本発明者らは、当該還元性有機物は、本来は不安定である二価鉄の状態を長期間安定維持でき、さらに三価の鉄についても二価鉄に還元し、長期間安定維持できることを見出した。さらに、当該還元性有機物は、酸性を呈するため、不溶性の三価鉄や金属鉄についても可溶化して用いることができることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
即ち、〔請求項1〕に係る本発明は、還元性有機物と鉄供給原料とを、水存在下にて以下(C)の条件で混合し、得られた反応生成物を活性成分としてなるフェントン反応触媒、に関するものである。
(C):前記還元性有機物が、木酢液、竹酢液、籾酢液から選ばれた植物乾留液に含まれる還元性有機物であり、;前記鉄供給原料が、三価鉄の化合物または金属鉄であり、;前記鉄供給原料から供給される鉄元素1モルに対し原液換算で20100kgになるように前記植物乾留液を混合する条件;前記還元性有機物としては、植物乾留液に含まれる有機酸、フェノール類、カルボニル類、アルコール類、アミン類、塩基性成分、その他中性成分を含む還元性有機物分子からなる組成物の全量を指す
また、〔請求項2〕に係る本発明は、請求項1のフェントン反応触媒を用いて過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させることを特徴とする殺菌方法、に関するものである。
また、〔請求項3〕に係る本発明は、請求項1のフェントン反応触媒を用いて過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させることを特徴とする汚染物質の分解方法、に関するものである。
また、〔請求項4〕に係る本発明は、請求項1のフェントン反応触媒を用いて過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させることを特徴とする化学発光を利用した発光方法、に関するものである。

本発明により、二価の鉄を長期間安定維持できる安定したフェントン反応触媒を提供することが可能となる。
また、三価鉄や金属鉄についても二価に変換して長期安定維持できるフェントン反応触媒を製造することが可能となる。
これにより、安価な原料(例えば硫酸鉄や塩化鉄などの鉄化合物、土壌、金属鉄など)を鉄供給原料として用いて、フェントン反応触媒を提供することが可能となる。
本発明のフェントン反応触媒は、還元性有機物として、アスコルビン酸、ポリフェノール含有植物体成分、植物体乾留液成分を用いるものであるため、人体や環境に対して、安全性の高いものである。
また、特にこれらの還元性有機物の供給原料として、植物乾留液(炭焼きの副産物)、ポリフェノール含有植物体の搾汁を用いた場合、安価にフェントン反応触媒を製造することが可能となる。
本発明のフェントン反応触媒は、幅広い産業分野で普及が期待される。例えば、食品や医療、公衆衛生、農業、環境浄化などに利用することができる。
例えば、本発明により、人体や環境に対して安全な殺菌方法、汚染物質分解方法を提供することが可能となる。
また本発明により、フェントン反応触媒を用いたルミノール反応等による化学発光方法を提供することが可能となる。これにより新たな発光方法として新規需要の創出が期待される。
以降の図において、(1):アスコルビン酸、(2):ブドウ搾汁、(3):籾酢液、(4):コーヒー粕、(5):茶殻、(6):水、(7):紫キャベツ搾汁、(8):バナナ搾汁、(9):カカオパウダー、(10):ウコン粉末、を試料として用いた場合の実験結果を示す。
実施例1において、各試料によって三価鉄から還元された二価鉄を、ジピリジルによって検出した写真像図である。 各図における右側の溶液は、各試料と塩化鉄を混合した水溶液に対する結果を示す。また、左側の溶液は、塩化鉄のみの溶液(対照)に対する結果を示す。 実施例3において、各試料と鉄の混合比率を変化させて得た反応生成物を触媒としてルミノール反応を行い、ヒドロキシラジカル発生量を測定した結果を示すグラフである。 実施例4において、反応生成物の濃度を変化させてルミノール反応を行い、ヒドロキシラジカル発生量を測定した結果を示すグラフである。 実施例5において、各種試料と鉄の反応生成物を触媒としてルミノール反応を行い、ヒドロキシラジカル発生量を測定した結果を示すグラフである。 各処理区の左側の測定結果は、各試料と塩化鉄の混合液に対する結果を示す。また、右側の測定結果は、各試料のみを加えた溶液(対照)に対する結果を示す。 実施例6において、反応生成物が触媒するフェントン反応による殺菌効果を示す写真像図である。(1):アスコルビン酸・鉄+過酸化水素の殺菌効果を示す図である。(N):過酸化水素のみ(対照)の殺菌効果を示す図である。 実施例7において、各試料によって三価鉄から還元された二価鉄を、ジピリジルによって検出した写真像図である。 各図における右側の溶液は、各試料と塩化鉄を混合した水溶液に対する結果を示す。また、左側の溶液は、塩化鉄のみの溶液(対照)に対する結果を示す。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明は、特定の還元性有機物を、鉄供給原料から供給される鉄元素に対して特定の割合にて水存在下で混合して得た反応生成物、を活性成分としてなるフェントン反応触媒に関する。
〔還元性有機物〕
本発明のフェントン反応触媒の製造に用いる還元性有機物としては、以下の(A)〜(C)に挙げるものを用いることができる。また、これらを単独で用いてもよいが、混合して用いることもできる。
・(A) アスコルビン酸
本発明における還元性有機物としては、‘アスコルビン酸’を用いることができる。
ここで、アスコルビン酸としては、植物体に含まれるアスコルビン酸を用いることができる。
アスコルビン酸には、三価鉄や金属鉄を二価鉄に還元する作用と、二価鉄を長期間安定化する作用の両方を有するものと推測される。
本発明に用いることができるアスコルビン酸の供給原料としては、アスコルビン酸を多く含む植物体の器官・組織を用いることができる。
例えば、トマト、ピーマン、アセロラ、柑橘類(レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツなど)、柿、キウイフルーツ、グァバ、パパイヤ、ブラックベリー、ブルーベリー、イチゴ、メロンなどの果実、;パセリ、ホウレン草などの葉、;ブロッコリー、カリフラワーなどの花茎、;サツマイモなどの地下茎、;芽キャベツなどの側芽、;などを挙げることができる。
本発明においてはこれらの植物体を、植物体乾燥物(特に粉末)、植物体搾汁、抽出物(特に水抽出物)、として用いることができる。また、搾汁や抽出液の乾燥物を用いることもできる。
なお、麹菌などの微生物培養物についても、アスコルビン酸を多く含むものであれば供給原料として用いることが可能である。
本発明においては、経済性の観点を考慮した場合、これらのうち、トマト、ピーマン、アセロラ、柑橘類などの植物体を供給原料に用いることが好ましい。
また、品質の観点を考慮した場合、精製された(もしくはある程度精製された)アスコルビン酸を直接添加して用いることが好ましい。
精製されたアスコルビン酸としては、アスコルビン酸のfree acidだけでなく、アスコルビン酸化合物(アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムなど)であっても用いることができる。
・(B) ポリフェノール含有植物体に含まれる還元性有機物
本発明における還元性有機物としては、‘ポリフェノール含有植物体に含まれる還元性有機物’を用いることができる。
当該還元性有機物としては、原料植物体に含まれる総ポリフェノール、有機酸、フェノール類、カルボニル類など、非常に多くの還元性有機物分子からなる組成物の全量を指すものである。
当該組成物には、三価鉄や金属鉄を二価鉄に還元する作用を奏する分子、二価鉄を長期間安定化する作用を奏する分子、これら両方の作用を奏する分子、が含まれると推測される。
当該還元性有機物の供給原料としては、還元性有機物を多く含有する植物体として、総ポリフェノールを多く含む植物体の器官・組織を用いることができる。
例えば、ブドウ、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、リンゴ、柑橘類(レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツなど)、柿、バナナなどの果実、;カカオ、黒大豆、黒胡麻、蕎麦などの種子、;紫イモ、ウコンの地下茎、;などを挙げることができる。
本発明においてはこれらの植物体を、植物体乾燥物(特に粉末)、植物体搾汁、抽出物(特に、水抽出物、アルコール抽出物、含水アルコール抽出物)、として用いることができる。また、搾汁や抽出液の乾燥物を用いることもできる。
なお、ここで抽出に用いるアルコールとしては、特にエタノールが好適である。
本発明においては、原料コストの観点を踏まえると、ブドウやバナナの搾汁(ジュース)を用いることが好ましい。
また、品質の点を考慮すると、抽出された総ポリフェノールや有機酸等の還元性有機物を、組成物として用いることが好適である。
・(C) 植物乾留液に含まれる還元性有機物
本発明における還元性有機物としては、‘植物乾留液に含まれる還元性有機物’を用いることができる。
当該還元性有機物としては、植物乾留液に含まれる有機酸、フェノール類、カルボニル類、アルコール類、アミン類、塩基性成分、その他中性成分など、非常に多くの還元性有機物分子からなる組成物の全量を指す。
当該組成物には、三価鉄や金属鉄を二価鉄に還元する作用を奏する分子、二価鉄を長期間安定化する作用を奏する分子、これら両方の作用を奏する分子、が含まれると推測される。
当該還元性有機物の供給原料としては、具体的には、植物乾留液の原液、濃縮液、希釈液、これらの乾燥物を用いることができる。
植物乾留液とは、還元状態の植物体を熱分解することによって得られる乾留液(粘りけのある褐色を呈する液体)を指す。外見は赤褐色〜暗褐色を呈する。
例えば、木酢液、竹酢液、籾酢液などを挙げることができる。なお、原料コストの観点からも、これらを好適に用いることができる。
〔鉄供給原料〕
本発明では、鉄元素を供給する原料として、二価鉄の化合物、;三価鉄の化合物、;金属鉄、;を含む鉄供給原料のいずれをも用いることができる。また、複数のものを混合して用いることもできる。
二価鉄の供給原料としては、塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、水酸化鉄(II)、酸化鉄(II)などの鉄化合物を挙げることができる。
また、これらが溶解した二価の鉄イオンを含む水溶液を用いることもできる。
三価の鉄の供給原料としては、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)などの水溶性の鉄化合物、;酸化鉄(III)、硝酸鉄(III)、水酸化鉄(III)などの不溶性の鉄化合物、;赤玉土、鹿沼土、ローム(アロフェン質の鉄分を多く含む土壌)、ラテライト(酸化鉄(III)を多く含む土壌)、ゲータイト(非結晶質の鉱物を含む土壌)などの土壌;、ヘム鉄、貝殻などの生体由来の物質、;を挙げることができる。
また、水溶性の鉄化合物が溶解した三価の鉄イオンを含む水溶液を用いることもできる。
なお、これら三価鉄化合物で水に不溶性のものであっても、本発明における還元性有機物の酸性を呈する働きによって水溶化するため、本発明の鉄供給原料として直接用いることができる。
金属鉄の供給原料としては、鉄鉱石(黄鉄鉱、白鉄鉱、菱鉄鉱、磁鉄鉱、針鉄鉱など天然の鉄鉱石)、砂鉄(鉄鉱石の砂塵化したもの)、鉄材(製錬鉄、合金)などを挙げることができる。その他、錆びも原料として用いることができる。
なお、これら金属鉄は、通常は水に不溶性を示すが、本発明における還元性有機物の酸性を呈する働きによって水溶化するため、本発明の鉄供給原料として直接用いることができる。
これらのうち、本発明のフェントン反応触媒を効率よく製造する観点から、農業や食品、医療などの分野で利用する場合は、原料コストや安定供給の観点からは、安価な鉄化合物(塩化鉄、硫酸鉄などの鉄化合物:二価、三価のいずれでもよい)を用いることが好適である。
また、有機農業で利用する場合は、原料を天然物に限る必要があることと原料コストや安定供給の観点から、天然物である土壌(特に赤玉土、鹿沼土、ローム)、金属鉄、を鉄供給原料として用いることが好適である。
〔混合処理〕
本発明では、前記還元性有機物の供給原料(もしくは還元性有機物)と前記鉄供給原料(もしくは鉄イオン)を、水存在下で混合することによって、フェントン反応触媒能を有する反応生成物(活性成分)を得ることができる。
・原料の混合比率
本発明においては、前記鉄供給原料から供給される鉄元素に対して、前記還元性有機物の供給原料(もしくは還元性有機物)を特定割合で混合することで、強いフェントン反応触媒能を示す反応生成物が得ることが可能となる。
なお、鉄元素に対して前記還元性有機物の混合割合が多すぎる場合には、過剰に存在する還元性有機物がスカベンジャーとして機能するため、逆にフェントン反応を阻害するため好ましくない。
また、鉄元素に対して前記還元性有機物の混合割合が少なすぎる場合には、得られる反応生成物の量が十分でなく好ましくない。
(A) 具体的には、還元性有機物が‘アスコルビン酸’の場合、鉄元素に対して0.01〜5倍量のモル数になるようにアスコルビン酸を混合することを要する。
好ましくは、0.02〜2倍量、特に0.02〜1倍量、さらに0.2〜1倍量、さらに特には約0.5倍量のモル数になるように混合することが望ましい。
(B) また、還元性有機物が‘ポリフェノール含有植物体成分’の場合、鉄元素1モルに対してポリフェノールが0.01〜1,000gの混合比になるように、ポリフェノール含有植物体を混合することを要する。
好ましくは、0.4〜200g、さらには10〜100g、さらに特には20〜100g、さらに特には約40gになるようにポリフェノール含有植物体を混合することが望ましい。
(C) また、還元性有機物が‘植物乾留液成分’の場合、鉄元素1モルに対して植物乾留液の原液が0.1〜200kgの混合比になるように、植物乾留液を混合することを要する。
好ましくは、0.2〜100kg、さらには20〜100kg、さらに特には約50kgになるように混合することが望ましい。
・混合操作
本発明の混合操作は、水存在下において行うものである。ここで水存在下とは、還元性有機物と鉄が、水を媒質として反応できる条件であればよい。
なお、水の量としては、混合や攪拌が可能な溶液の状態であれば良いが、混合操作によって原料(還元性有機物と鉄)が湿潤する程度の量であってもよい。
なお、水としては、当該反応が起こる条件のものであれば如何なるものも用いることができる。例えば、水道水、井戸水、地下水、河川水、脱イオン水、蒸留水、などを挙げることができる。
なお、還元性有機物の供給原料として、植物体搾汁や植物乾留液などを液体のままを用いる場合は、新たに媒質を添加することなく、直接鉄供給原料と混合して反応させることができる。
混合操作としては、単純な攪拌混合を行えばよいが、ミキサー、大型攪拌槽、ボルテックス、シェーカーなどによっても行うことができる。
ここで水の温度としては、水が液体状態である温度であればよいが(例えば1〜100℃)、室温程度(例えば10〜40℃)で特に加熱を要することなく行うことができる。
なお、鉄供給原料として特定の天然物(具体的には土壌)を用いた場合や、不溶性の鉄化合物が主体である場合、混合後、反応時間を長く取ることによって、鉄と還元性有機物が反応しやすくする処理が必要となる。
加温する場合、上限としては200℃(加圧加熱の場合)を挙げることができるが、製造コストの観点から、通常加熱での水の沸点である100℃以下、さらに好ましくは70℃以下で行うことが望ましい。なお、100℃以上の反応条件において、還元性有機物の熱分解を抑制するには、密閉容器内で行う方が効果的である。
混合時間としては、還元性有機物と鉄が十分に接触するまで、おおよそ10秒以上行えばよいが、均一性を向上させるためには、好ましくは3分以上の混合処理を行うことが望ましい。
また、上限としては、微生物の繁殖による腐敗を防止するため、240時間以下で行うことが望ましい。ただし滅菌処理を伴う場合は特に上限はない。
〔フェントン反応触媒〕
上記工程を経て得られる反応生成物(還元性有機物と鉄との反応物)は、二価の鉄を長期間安定維持でき、さらに三価鉄や金属鉄を二価の鉄に変換して長期安定維持できる性質を有するものである。
そのため、本発明において得られる前記反応生成物は、反応後に得られた上清や含水状態の沈殿物のままフェントン反応触媒として用いることができる。また、上清や沈殿物をそれぞれ分離回収して、フェントン反応触媒として用いることができる。
また、上清及び/又は沈殿物の乾燥物(例えば、自然乾燥、焙煎など)、当該乾燥物を水に溶いた上清や懸濁物についても、フェントン反応触媒として用いることもできる。
当該反応生成物をフェントン反応触媒として用いる場合には、水溶液中の濃度を一定範囲に調製して用いることが望ましい。
(A) 例えば、‘アスコルビン酸’の場合、添加した鉄元素 1mMに対して得られる反応生成物濃度を「1倍標準液」とした際に、その濃度の0.05倍量以上、特に0.1倍量以上、さらには0.5倍量以上の濃度である時に、強いフェントン反応触媒能を得ることができる。
特に0.5〜20.0倍量、さらには0.5〜10倍量、さらに特には0.5〜5.0倍量の範囲では触媒能はピークに達するため望ましい。
(B) また、‘ポリフェノール含有植物体成分’の場合、添加した鉄元素 1mMに対して得られる反応生成物濃度を「1倍標準液」とした際に、0.1倍量以上、特に0.2倍量以上、さらに1倍量以上の濃度である時に、強いフェントン反応触媒能が得ることができる。
特に1〜20倍量、1〜10倍量の範囲では触媒能はピークに達するため望ましい。
(C) また、‘植物乾留液成分’の場合、鉄元素 1mMに対して得られる反応生成物濃度を「1倍標準液」とした際に、0.1〜5倍量、特に0.2〜5倍量、さらに特には約1倍量の濃度である時に、強いフェントン反応触媒能が得られるため望ましい。
〔利用用途〕
本発明のフェントン反応触媒(還元性有機物と鉄の反応生成物)は、人体や環境に対して安全性が高い物質であるので、医薬、食品、公衆衛生、農業等、工業等、様々な用途に用いることができる。
例えば、前記還元性有機物として、アスコルビン酸やポリフェノール含有植物体成分を用いた場合、これらは食品由来の供給原料に由来する物質であるので、特に食品分野での使用が期待される。
なお、アスコルビン酸を単一物質として用いた場合、当該物質は無色透明のため、特に食品分野での使用が期待される。
また、還元性有機物供給原料として、植物乾留液を用いた場合、当該成分はやや臭いを有する物質を含む。しかし、当該原料は非常に安価であるため、農業、医薬、公衆衛生等の分野での使用が期待される。
・殺菌作用
本発明のフェントン反応触媒は、過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させる性質を利用して、様々な分野の殺菌に用いることができる。
当該殺菌対象として、具体的には、医療器具、病室の壁、患者の患部、衣服、寝具など、食品の製造機器のライン、食材、まな板、包丁等の台所用品、食器、便座、手すり、農機具、植物などを挙げることができる。これらの殺菌に本発明のフェントン反応触媒を用いることによって、通常の過酸化水素のみを用いた殺菌方法に比べて、大幅に(約99〜99.9%程度も)過酸化水素の使用量を削減することが可能となる。
また、殺菌対象が土壌、汚染水、植物、動物、微生物などの生体そのものあるいは生物を含むものである場合、殺菌対象中には既に生物由来の過酸化水素が微量発生するため、本発明のフェントン反応触媒のみを用いて(過酸化水素を別途加えることなく)殺菌を行うことが可能となる。
本発明においては、殺菌対象が固形か液体かで、実施態様が異なる場合がある。
殺菌対象が固体である場合、当該フェントン反応触媒と過酸化水素を含む溶液を調製し、殺菌対象に、噴霧、塗布、練り込み等することによって行うことができる。
なお、殺菌対象を当該溶液中に浸漬することによっても行うことができる。また、当該フェントン反応触媒(固形の形態)を殺菌対象に塗布や練り込み等を行い、別途過酸化水素を噴霧等することによっても行うことができる。
また、殺菌対象が液体である場合、当該フェントン反応触媒(液体、固形の両方の形態)と過酸化水素を、殺菌対象に添加、混合等することによって、行うことができる。なお、フェントン反応触媒が固体の場合には、過酸化水素を加えた殺菌対象の液体中に浸漬することによっても行うことができる。
これら殺菌に用いる溶液におけるフェントン反応触媒の使用量としては、上記フェントン反応触媒能が得られる濃度で調製して使用すればよい。また、過酸化水素の使用量としては、極めて微量でよく、0.1〜20mM程度含むように用いればよい。
当該殺菌効果は、極めて強力であるため、例えば、数分程度の浸漬によって、顕著な殺菌効果を奏する。
本発明フェントン反応触媒を殺菌剤の有効成分として使用する場合の形態としては、例えば、固体、液体の形態を挙げることができる。具体的には、粉末、顆粒、シート状、ボード状、キューブ状、スポンジ状などの固形の形態、;あるいは濃縮液、液体アンプルなどの液体の形態、;を挙げることができる。また、粉末状の形態、賦型剤等と混ぜて固形にした形態、カプセルに充填する形態、ゲルなども挙げることができる。
・汚染物質分解作用
また、本発明のフェントン反応触媒は、汚染水や汚染土壌に含まれる汚染物質を分解して、浄化の一工程に用いることができる。
ここで汚染水としては、生活排水、し尿水、工場排水、汚染された河川や湖沼の水、海水などを挙げることができる。汚染土壌としては、ゴミ廃棄場の土壌、産業廃棄物、農地、工場跡地などを挙げることができる。
また、分解対象となる具体的な汚染物質としては、自然界に汚染水や汚染土壌に含まれる有機化合物を指し、例えば、ダイオキシン、PCBなどを挙げることができる。
なお、これら浄化対象のほとんどのもの(微生物相を含むもの)は、既に生物由来の過酸化水素が微量含まれているため、本発明のフェントン反応触媒のみを用いて(過酸化水素を別途加えることなく)汚染物質の分解を行うことも可能となる。
本発明においては、浄化対象が固形か液体かで、実施態様が異なる場合がある。
浄化対象が固体である場合、当該フェントン反応触媒と過酸化水素を含む溶液を調製し、対象に、噴霧、散布、塗布、練り込み等することによって行うことができる。なお、浄化対象を当該溶液中に混合浸漬することによっても行うことができる。また、当該フェントン反応触媒(固形の形態)を浄化対象に塗布や練り込み等を行い、別途過酸化水素を噴霧等することによっても行うことができる。
また、浄化対象が液体である場合、当該フェントン反応触媒(液体、固形の両方の形態)と過酸化水素を、浄化対象に添加、混合、散布、浸漬等することによって、行うことができる。なお、フェントン反応触媒が固体の場合には、過酸化水素を加えた浄化対象の液体中に浸漬することによっても行うことができる。
汚染物質の分解に用いる溶液におけるフェントン反応触媒の使用量としては、上記フェントン反応触媒能が得られる濃度で調製して使用すればよい。また、過酸化水素の使用量としては、極めて微量でよく、0.1〜100mM程度含むように用いればよい。
当該分解効果は、極めて強力であるため、例えば、30分程度の浸漬によって、顕著な分解効果を奏することができる。
本発明フェントン反応触媒を汚染物質分解剤の有効成分として使用する場合の形態としては、固体、液体の形態を挙げることができる。具体的には、粉末、顆粒、シート状、ボード状、キューブ状、スポンジ状などの固形の形態、;あるいは濃縮液、液体アンプルなどの液体の形態、;を挙げることができる。また、粉末状の形態、賦型剤等と混ぜて固形にした形態、カプセルに充填する形態、ゲルなども挙げることができる。
・発光作用
また、本発明のフェントン反応触媒は、化学発光を利用した発光に用いることができる。
ここで化学発光としては、フェントン反応によって発生したヒドロキシラジカルによって、基質が分解されて発光する現象を指すものである。具体的には、ルミノール、ロフィン、ルシゲニン、シュウ酸ジフェニル、塩化オキサリル、ルシゲニンなどを発光基質として用いた各化学反応を挙げることができる。
発光に用いる溶液において、フェントン反応触媒の使用量としては、上記フェントン反応触媒能が得られる濃度で調製して使用すればよい。また、過酸化水素の使用量としては、0.01〜30,000mM程度含むように用いればよい。また、発光基質としては、それぞれの物質の特性に合わせて適量含むように使用すればよい(ルミノールの場合、0.1〜10g/L程度)。
当該フェントン触媒は極めて安定であるため、長期間安定した発光効果を奏することができる。
当該発光反応は、照明、発電(太陽電池との組合せによる)などに利用することが期待される。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
〔実施例1〕 鉄還元能の検証
還元作用を示す有機物や組成物について、三価鉄を二価鉄に還元する実験を行った。
表1に示す各試料のそれぞれについて、同重量の塩化鉄(III)(FeCl3)を含む各水溶液(0.1%(w/v))を調製した。
なお、‘アスコルビン酸’(試料1)としては、和光純薬から購入した試薬を用いた。
また、‘ブドウ搾汁’(試料2)(ポリフェノール含有植物体の搾汁)としては、ブドウの実を皮ごと搾汁した液(総ポリフェノール含量2.3g/L)を用い、含有される総ポリフェノール量に換算した重量で濃度調製した。
また、‘籾酢液’(試料3)(植物乾留液)としては、籾殻燻炭を作成する際に抽出した籾酢液の原液を用い、原液の液重量で濃度調製した。
そして、各水溶液を混合して室温で数分静置することで反応させた。また、対照として、塩化鉄のみを含む水溶液を調製した。
この水溶液に、0.2%ジピリジル(ジピリジル2g、酢酸100g/L)を添加して、呈色反応の有無を調べた。なお、ジピリジルは、二価鉄と反応した時に赤色に呈色する物質であり、二価鉄の検出に用いられる。三価の鉄とは反応せず、無色のままである。
反応後の呈色結果を表1および図1に示す。
この結果から、アスコルビン酸(試料1:図1(1))、ブドウ搾汁(試料2:図1(2))、籾酢液(試料3:図1(3))は、三価鉄を二価鉄に還元する機能を有し、さらに二価鉄の状態で安定的に維持できることが明らかとなった。
また、籾酢液の鉄還元能は、含有成分である還元性有機物(有機酸、フェノール類、カルボニル類、アルコール類、アミン類、塩基性成分、その他中性成分)に起因するものと推測される。
〔実施例2〕 フェントン反応触媒能の検証
実施例1で鉄還元作用が確認された上記試料と鉄との反応生成物について、フェントン反応触媒能があることを、ルミノール反応により検証した。
なお、ルミノール反応とは、ヒドロキシラジカルの発生によりルミノールを酸化させて発光する反応を指すものである。
実施例1で調製した反応生成物を含む水溶液を、ルミノール溶液(1g/Lルミノール、4g/L水酸化ナトリウム、0.3%過酸化水素)100mlに少量加えて、発光の有無を観察した。
その結果、いずれの水溶液についても青い蛍光が観察された。このことから、アスコルビン酸(試料1)と鉄の反応生成物、;ブドウ搾汁(試料2)と鉄の反応生成物、;籾酢液(試料3)と鉄の反応生成物、;のいずれについても、過酸化水素と混合することでフェントン反応を触媒し、ヒドロキシラジカルが発生することが示された。
〔実施例3〕 鉄との最適な混合比の検討
上記試料と鉄の反応生成物を得る工程において、試料と鉄の混合比率を変化させた場合におけるフェントン反応触媒能の強さを検討した。
塩化鉄(III)(1mM FeCl3)に対して、上記各試料の混合比率を図2に示すように変化させ、実施例1と同様の手順にて各反応生成物を得た。
そして、これら反応生成物を含む水溶液について、AB-2270ルミネッセンサーOctaでルミノール反応の発光量(ヒドロキシラジカル発生量)を測定することで、フェントン反応触媒能の強さを測定した。結果を図2に示す。
i ) その結果、アスコルビン酸(図2(1))については、1mM FeCl3に対して0.02〜5mM、特に0.02〜2mM、さらに0.02〜1mM、さらに特には0.2〜1mM、さらに特には約0.5mMで混合した時に、強いフェントン反応触媒能を示す反応生成物が得られることが示された。
ii) また、ブドウ搾汁(図2(2))については、1mM FeCl3に対してブドウ搾汁に含有される総ポリフェノールに換算して0.4〜200mg/L、特に0.4〜100mg/L、さらには10〜100mg/L、さらに特には20〜100mg/L、さらに特には約40mg/Lで混合した時に、強いフェントン反応触媒能を示す反応生成物が得られることが示された。
iii) また、籾酢液(図2(3))については、1mM FeCl3に対して原液で0.2〜100g/L、特に10〜100g/L、さらには20〜100g/L、さらに特には約50g/Lとなるように混合した時に、強いフェントン反応触媒能を示す反応生成物が得られることが示された。
なお、鉄に対する試料の比率が多すぎる場合にフェントン反応触媒能が減少するのは、これらの試料によるラジカル消去能に起因するものと推測される。
〔実施例4〕 最適な濃度の検討
上記試料と鉄の反応生成物について、フェントン反応触媒として機能するのに適した濃度を検討した。
実施例3で明らかになった最適混合比(1mM FeCl3に対して、0.5mM アスコルビン酸、;総ポリフェノール換算で40mg/Lのブドウ搾汁、;50g/L 籾酢液原液)を採用し、塩化鉄(III) 0.02, 0.1, 0.2, 1, 5, 10 mMの各濃度に対して、上記各試料を最適混合比になるように添加して、実施例1と同様の手順にて反応生成物を得た。
そして、これら反応生成物を含む水溶液について、AB-2270ルミネッセンサーOctaでルミノール反応の発光量(ヒドロキシラジカル発生量)を測定することで、フェントン反応触媒能の強さを測定した。結果を図3に示す。
なお、図3における各反応生成物の濃度(横軸)は、添加した塩化鉄(III) 1mMの時に得られる反応生成物濃度を「1倍標準液」とした場合の倍率で示した。
i )その結果、アスコルビン酸と鉄の反応生成物(図3(1):アスコルビン酸・鉄)については、0.1倍量以上、特に0.2倍量以上、さらには1倍量以上の濃度である時に、強いフェントン反応触媒能が得られることが示された。特に1〜10倍量の範囲ではピークに達することが示された。
ii)また、ブドウ搾汁と鉄の反応生成物(図3(2):ブドウ搾汁成分・鉄)については、0.1倍量 以上、特に0.2倍量以上、さらに1倍量以上の濃度である時に、強いフェントン反応触媒能が得られることが示された。特に1〜10倍量の範囲ではピークに達することが示された。
iii)また、籾酢液と鉄の反応生成物(図3(3):籾酢液成分・鉄)については、0.1〜5倍量、特に0.2〜5倍量、さらに約1倍量の濃度である時に、強いフェントン反応触媒能が得られることが示された。
なお、当該反応生成物の濃度が高すぎる場合にフェントン反応触媒能が減少するのは、籾酢液成分中にラジカル消去能を有する物質が存在するためと推測される。
〔実施例5〕 フェントン反応触媒能の比較
各種試料と鉄の反応生成物について、フェントン反応触媒の比較を行った。
実施例3,4で明らかになった最適混合比と最適濃度を採用して、実施例1と同様の手順にて、アスコルビン酸(試料1)、ブドウ搾汁(試料2)、籾酢液(試料3)、のそれぞれと鉄との反応生成物を含む水溶液を調製した。
また、特願2010-080605明細書(本願発明者らによるフェントン反応触媒に関する出願)に記載されているコーヒー粕(試料4)、茶殻(試料5)についても、塩化鉄(III)1mMに対して、試料4g/Lになるように加えて、これら試料と鉄との反応生成物を含む水溶液を調製した。調製は実施例1と同様の手順にて調製した。
また、比較対照として、水(試料6)に塩化鉄(III) 1 mMのみを含む水溶液を調製した。
なお、上記各水溶液のそれぞれの対照として、各試料のみを加えた水溶液(Fe無添加の水溶液)を調製した。
そして、これらの水溶液について、AB-2270ルミネッセンサーOctaでルミノール反応の発光量(ヒドロキシラジカル発生量)を測定することで、フェントン反応触媒能の強さを測定した。結果を図4に示す。
その結果、アスコルビン酸、ブドウ搾汁、籾酢液のそれぞれと鉄との反応生成物には、極めて高いフェントン反応触媒能があることが示された(試料1〜3)。
特に、ブドウ搾汁(試料2)と鉄の反応生成物には、コーヒー粕(試料4)や茶殻(試料5)との反応生成物に比べて、約20倍の触媒能があることが示された。
〔実施例6〕 殺菌効果
アスコルビン酸と鉄の反応生成物について、フェントン反応触媒能による殺菌効果を大腸菌について検討した。
塩化鉄(III)(10mM FeCl3)に対して、アスコルビン酸10mMを含むように調製して、実施例1と同様の手順にて反応生成物を得た。
この反応生成物を含む水溶液(10mM アスコルビン酸・鉄)に、過酸化水素を10mMになるように加え、そして、大腸菌を1.0×106cfu/mLとなるように加えた。
なお、対照として、過酸化水素(10mM)のみを含む水溶液に同様に大腸菌を加えたものを調製した。
そして、10分後に各溶液0.1mLを分取し、TTC培地で平板培養した。結果を図5に示す。
その結果、当該反応生成物(アスコルビン酸・鉄)と過酸化水素を加えて処理した大腸菌(図5(1))は、10分の処理で完全に死滅した。一方、過酸化水素のみで処理した場合、大量の大腸菌が生残した(図5(N))。
このことから、アスコルビン酸と鉄の反応生成物は、過酸化水素と混合することで、フェントン反応を触媒し、強力な殺菌作用を奏することが示された。
〔実施例7〕 他のポリフェノール含有植物抽出物における鉄還元能の検証
ブドウ搾汁(試料2)以外のポリフェノール含有植物体由来の試料についても、ジピリジル反応によって鉄還元能を検証した。
表2に示す各試料7〜10のそれぞれと、1mM塩化鉄(III)を含む各水溶液を調製した。そして、各水溶液を混合して室温で数分静置することで反応させた。
調製した水溶液について、実施例1と同様にしてジピリジル反応を行った。結果を表2、図6に示す。
その結果、紫キャベツ搾汁(試料7:図6(7))、バナナ搾汁(試料8:図6(8))、カカオパウダー(試料9:図6(9))、ウコン粉末(試料10:図6(10))のいずれについても、三価鉄を二価に還元する機能を有し、二価鉄の状態で安定的に維持されることが示された。
このことから、ポリフェノールを含有する多くの植物体の成分には、鉄を還元する活性があることが確認された。
本発明のフェントン反応触媒は、原料が入手容易であり且つ人体や環境に安全なものであるため、幅広い産業分野で普及が見込める。
例えば、農業、食品、医療、公衆衛生分野などの分野における殺菌に利用することが期待される。また、汚染物質分解方法として利用することも期待される。さらに、化学発光の物質との反応と組み合わせることで、新たな発光方法として新規需要の創出が見込める。

Claims (4)

  1. 還元性有機物と鉄供給原料とを、水存在下にて以下(C)の条件で混合し、得られた反応生成物を活性成分としてなるフェントン反応触媒。
    (C):前記還元性有機物が、木酢液、竹酢液、籾酢液から選ばれた植物乾留液に含まれる還元性有機物であり、;前記鉄供給原料が、三価鉄の化合物または金属鉄であり、;前記鉄供給原料から供給される鉄元素1モルに対し原液換算で20100kgになるように前記植物乾留液を混合する条件;前記還元性有機物としては、植物乾留液に含まれる有機酸、フェノール類、カルボニル類、アルコール類、アミン類、塩基性成分、その他中性成分を含む還元性有機物分子からなる組成物の全量を指す
  2. 請求項1のフェントン反応触媒を用いて過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させることを特徴とする殺菌方法。
  3. 請求項1のフェントン反応触媒を用いて過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させることを特徴とする汚染物質の分解方法。
  4. 請求項1のフェントン反応触媒を用いて過酸化水素からヒドロキシラジカルを発生させることを特徴とする化学発光を利用した発光方法。
JP2015129490A 2015-06-29 2015-06-29 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒 Active JP6057227B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015129490A JP6057227B2 (ja) 2015-06-29 2015-06-29 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015129490A JP6057227B2 (ja) 2015-06-29 2015-06-29 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011110173A Division JP2012239952A (ja) 2011-05-17 2011-05-17 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016227558A Division JP6202770B2 (ja) 2016-11-24 2016-11-24 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015211967A JP2015211967A (ja) 2015-11-26
JP6057227B2 true JP6057227B2 (ja) 2017-01-11

Family

ID=54696591

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015129490A Active JP6057227B2 (ja) 2015-06-29 2015-06-29 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6057227B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7312586B2 (ja) * 2019-03-27 2023-07-21 保土谷化学工業株式会社 鉄-ポリフェノール複合材の製造方法
CN112121822A (zh) * 2020-09-23 2020-12-25 绍兴文理学院 一种生物炭/黄铁矿复合颗粒状芬顿氧化催化剂的制备方法
WO2022269749A1 (ja) * 2021-06-22 2022-12-29 日本たばこ産業株式会社 気相中のガス状物質及び粒子状物質の分解方法並びに分解装置

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS58156539A (ja) * 1982-03-11 1983-09-17 Agency Of Ind Science & Technol 鉄化合物水溶液の安定化方法
JPH0775772A (ja) * 1993-06-18 1995-03-20 Kankyo Eng Kk 土壌の修復方法
JPH11130618A (ja) * 1997-10-24 1999-05-18 Kaihatsu Koji Kk 粗木酢液の有効成分を含有する化粧品原料の製造方法
JP2003267858A (ja) * 2002-03-14 2003-09-25 Chaco:Kk 縮合型タンニンを含有する浴用剤組成物
JP2004230374A (ja) * 2002-11-04 2004-08-19 Toru Ueda 汚染土壌等の浄化方法
JP2004249258A (ja) * 2003-02-21 2004-09-09 Kurita Water Ind Ltd 排水の処理方法
BRPI0405847B1 (pt) * 2004-12-21 2015-04-22 Petroleo Brasileiro Sa Processo para a oxidação extrativa de contaminantes presentes em correntes brutas de combustíveis catalisada por óxidos de ferro
JP2009062350A (ja) * 2007-09-06 2009-03-26 Kuniaki Ogami フェントン反応による糸状菌の殺菌方法
JP2009269843A (ja) * 2008-05-02 2009-11-19 Gun Ei Chem Ind Co Ltd イソマルオリゴ糖及びこれを用いた飲食物

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015211967A (ja) 2015-11-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2012157365A1 (ja) 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒
JP5733781B2 (ja) コーヒー粕あるいは茶殻を原料とするフェントン反応触媒
JP6340657B2 (ja) 還元性有機物を利用した光触媒
JP6478209B2 (ja) 還元性有機物を利用した光触媒
JP5358030B2 (ja) 還元パウダー及びその製造方法
JP6057227B2 (ja) 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒
JP6202770B2 (ja) 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒
WO2022172649A1 (ja) ポリフェノール鉄錯体カプセル、過酸化水素カプセル、フェントン反応キット及び魚介類の飼育又は病気治療方法
JP6179957B2 (ja) 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒
Pandiselvam et al. Research trends and emerging physical processing technologies in mitigation of pesticide residues on various food products
CN101606534B (zh) 一种含溴消毒杀菌剂
JP2014169254A (ja) 超微細ガス水を用いた消毒及び鮮度保持装置、消毒及び鮮度保持方法、消毒及び鮮度保持方法を施した生鮮食料品又は植物
JP2017148804A (ja) 還元性有機物を原料とするフェントン反応触媒
CN105191941B (zh) 含有槐糖脂的杀菌剂溶液及其应用
WO2022168519A1 (ja) 光触媒組成物及びその製造方法、並びに消臭剤
JP6322956B2 (ja) 鉄イオンを利用した光触媒
WO2022172688A1 (ja) 可視光応答型多孔質光触媒体、その製造方法及び用途
WO2022185706A1 (ja) ラジカル発生組成物、殺菌組成物、及び有機物の分解組成物
Jafari et al. Non-thermal Food Processing Operations: Unit Operations and Processing Equipment in the Food Industry
CN111096977A (zh) 遇水即时生成强氧化二氧化氯的长效缓溶组合物
Fetouh et al. Potential health risk effects of silver nanoparticles on aquatic ecosystem: Regulations and guidelines
Maryam et al. Grewia asiatica leaves extract assisted green synthesis of gold nanoparticles and study of their antibacterial, antioxidant and photocatalytic potential
JP2013124223A (ja) 抗菌剤
JP2006025760A (ja) 抗酸化物質を含有する食品の処理方法

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160413

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160531

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20160726

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160915

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161108

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161125

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6057227

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250