以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の制御システム構成図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両(不図示)に搭載されたエンジン1は、燃料としてガソリンを用いるガソリンエンジンであり、吸気弁2が開かれたときに、吸気通路3から燃焼室4に燃料燃焼用のエアを吸入するようになっている。そして、この燃焼室4内のエア中に、所定のタイミングで燃料噴射弁5から燃料が噴射され、混合気が形成される。
この混合気は、ピストン6によって圧縮され、所定のタイミングで点火プラグ7により点火されて燃焼する。燃焼ガスすなわち排気ガスは、排気弁8が開かれたときに排気通路9に排出される。排気通路9には、排気ガスを浄化するために排気ガス浄化装置10が介設されている。
他方、吸気通路3には、エアの流れ方向にみて、上流側から順に、エア中のダスト等を除去するエアクリーナ12と、エア流量を検出するエアフローセンサ13と、アクセルペダル(不図示)の踏込量に応じて開閉されてエアを絞る電子制御式スロットル弁14と、エアの流れを安定化させるサージタンク15とが設けられている。
また、排気通路9内の排気ガスの一部をEGRとして吸気通路3に戻すEGR通路16が設けられ、このEGR通路16に、EGRガス流量を制御するEGR制御弁17が介設されている。
この車両にはまた、エンジン1の出力トルクを制御するコントロールユニット20が設けられている。コントロールユニット20には、車両の運転席に設けられたアクセルペダルの踏込量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ21からの信号、車両の車速を検出する車速センサ22からの信号、第1スポーツモードスイッチ(第1スポーツモードSW)23からの信号及び第2スポーツモードスイッチ(第2スポーツモードSW)24からの信号などが入力されるようになっている。
コントロールユニット20はまた、アクセル開度センサ21からの信号、車速センサ22からの信号、第1スポーツモードSW23からの信号及び第2スポーツモードSW24からの信号などに基づいて、エンジン1に連結されてエンジン1の出力トルクを車輪に伝達するための変速機25、スロットル弁14及び燃料噴射弁5などの各種制御を行うようになっている。なお、コントロールユニット20は、マイクロコンピュータを主要部として構成されている。
本実施形態に係る車両では、車両の走行モードとしてノーマルモードと該ノーマルモードよりも目標加速度が高く設定されるスポーツモードとを設定することができ、スポーツモードとして、第1スポーツモードと第2スポーツモードとの選択が可能となっている。
第1及び第2スポーツモードスイッチ23、24がOFF状態とされてコントロールユニット20に第1及び第2スポーツモードスイッチ23、24からOFF信号が入力される場合はノーマルモードが設定され、第1スポーツモードスイッチ23のみがON状態とされてコントロールユニット20に第1スポーツモードスイッチ23からON信号が入力される場合は第1スポーツモードが設定され、第2スポーツモードスイッチ24のみがON状態とされてコントロールユニット20に第2スポーツモードスイッチ24からON信号が入力される場合は第2スポーツモードが設定されるようになっている。
なお、ノーマルモードとスポーツモードとを設定するモード設定手段として、ノーマルモードスイッチと第1スポーツモードスイッチと第2スポーツモードスイッチとを備え、ノーマルモード、第1スポーツモード又は第2スポーツモードの選択を行うようにすることも可能である。
このコントロールユニット20は、ノーマルモード及びスポーツモードごとに、アクセル開度及び車速に基づいて目標加速度特性が予め設定されて記憶されるようになっていると共に、アクセル開度及び車速に基づいて変速機25の変速比特性が予め設定されて記憶されるようになっている。
図2は、本発明の第1実施形態に係るノーマルモード及び第1スポーツモードの目標加速度特性を示す図であり、アクセル開度が30%であるときの車速と目標加速度との関係を示している。図2では、車速を横軸にとり、目標加速度を縦軸にとって表示し、ノーマルモード及び第1スポーツモードの目標加速度特性をそれぞれ実線LN及び破線LS1で表している。
図2に示すように、所定のアクセル開度について、ノーマルモードでは、車速が低いほど目標加速度が高くなるように目標加速度特性が設定されている。これにより、ノーマルモードの目標加速度特性に従ってエンジン出力トルクが制御される場合、低車速域で加速感を得つつ高車速域で高い燃費性能を実現することができる。
第1スポーツモードは、ノーマルモードと同様に、所定のアクセル開度について、車速が低いほど目標加速度が高くなるように目標加速度特性が設定され、ノーマルモードよりも目標加速度が高く設定されている。
第1スポーツモードの目標加速度特性はまた、第1スポーツモードの目標加速度とノーマルモードの目標加速度の差が車速が低いほど大きくなるように目標加速度特性が設定されている。図2では、車速10、20、30km/hについてそれぞれ第1スポーツモードの目標加速度とノーマルモードの目標加速度の差をD11、D12、D13で表しているが、第1スポーツモードの目標加速度とノーマルモードの目標加速度の差は、D13<D12<D11となるように設定されている。
第1スポーツモードの目標加速度特性はまた、目標加速度がゼロとなる車速がノーマルモードの目標加速度がゼロとなる車速と同じ車速に固定されている。図2では、第1スポーツモード及びノーマルモードの目標加速度がゼロとなる車速をそれぞれVS1、VNで表しているが、第1スポーツモードの目標加速度がゼロとなる車速VS1は、ノーマルモードの目標加速度がゼロとなる車速VNと同じ車速に設定されている。
図2に示すように、第1スポーツモードの目標加速度特性は、車速が低いほど目標加速度が高くなり、且つノーマルモードの目標加速度との差が車速が低いほど大きくなるように設定されると共に、目標加速度がゼロとなる車速VS1をノーマルモードでの目標加速度がゼロとなる車速VNと同じ車速に固定しながら車速ゼロ側の目標加速度AS1を所定量変化させるように設定されている。
図2では、アクセル開度が30%である場合について、ノーマルモード及び第1スポーツモードの目標加速度特性を示しているが、アクセル開度が全閉である0%から全開である100%までの他のアクセル開度についても同様に、ノーマルモード及び第1スポーツモードの車速に対する目標加速度の特性が設定され、各アクセル開度について、ノーマルモード及び第1スポーツモードとも車速が低いほど目標加速度が高くなるように設定されている。
また、他のアクセル開度についても、第1スポーツモードの目標加速度とノーマルモードの目標加速度の差が車速が低いほど大きくなるように目標加速度特性が設定され、第1スポーツモードの目標加速度特性は、ノーマルモードの目標加速度特性に対し、目標加速度がゼロとなる車速をノーマルモードでの目標加速度がゼロとなる車速と同じ車速に固定しながら、車速ゼロ側の目標加速度を変化するように設定されている。
図3は、本発明の第1実施形態に係るノーマルモード及び第2スポーツモードの目標加速度特性を示す図であり、アクセル開度が30%であるときの車速と目標加速度との関係を示している。図3では、車速を横軸にとり、目標加速度を縦軸にとって表示し、ノーマルモード及び第2スポーツモードの目標加速度特性をそれぞれ実線LN及び破線LS2で表している。
図3に示すように、第2スポーツモードについても、ノーマルモードと同様に、所定のアクセル開度について、車速が低いほど目標加速度が高くなるように目標加速度特性が設定され、ノーマルモードよりも目標加速度が高く設定されている。
第2スポーツモードの目標加速度特性は、第1スポーツモードの目標加速度特性と同様に、第2スポーツモードの目標加速度とノーマルモードの目標加速度の差が車速が低いほど大きくなるように目標加速度特性が設定されている。図3では、車速10、20、30km/hについてそれぞれ第2スポーツモードの目標加速度とノーマルモードの目標加速度の差をD21、D22、D23で表しているが、第2スポーツモードの目標加速度とノーマルモードの目標加速度の差は、D23<D22<D21となるように設定されている。
第2スポーツモードの目標加速度特性はまた、車速がゼロであるときの目標加速度が、ノーマルモードの車速がゼロであるときの目標加速度との差が所定量に設定されている。図3では、第2スポーツモード及びノーマルモードの車速がゼロであるときの目標加速度をそれぞれAS2、ANで表しているが、第2スポーツモードの車速ゼロ側の目標加速度AS2は、ノーマルモードの車速ゼロ側の目標加速度ANとの差が所定量に設定されている。
第2スポーツモードの目標加速度特性はまた、図3に示すように、第2スポーツモードの目標加速度がゼロとなる車速VS2がノーマルモードの目標加速度がゼロとなる車速VNより所定量高くなるように設定されている。
このように、第2スポーツモードの目標加速度特性は、車速が低いほど目標加速度が高くなり、且つノーマルモードの目標加速度との差が車速が低いほど大きくなるように設定されると共に、車速ゼロ側の目標加速度のノーマルモードの目標加速度に対する差を固定しながら、目標加速度がゼロとなる車速を所定量変化させるように設定されている。
図3では、アクセル開度が30%である場合について、第2スポーツモードの目標加速度特性を示しているが、他のアクセル開度についても同様に、第2スポーツモードの車速に対する目標加速度の特性が設定され、各アクセル開度について、車速が低いほど目標加速度が高くなるように設定されている。
また、他のアクセル開度についても、第2スポーツモードの目標加速度とノーマルモードの目標加速度の差が車速が低いほど大きくなるように目標加速度特性が設定され、第2スポーツモードの目標加速度特性は、ノーマルモードの目標加速度特性に対し、車速ゼロ側の目標加速度のノーマルモードの目標加速度に対する差を固定しながら、目標加速度がゼロとなる車速を変化するように設定されている。
このようにして、ノーマルモード及びスポーツモードごとに、アクセル開度及び車速に基づいて目標加速度特性が予めコントロールユニット20に設定されて記憶されている。本実施形態では、コントロールユニット20に、ノーマルモード、第1スポーツモード及び第2スポーツモードのそれぞれについてアクセル開度及び車速に基づいて目標加速度特性が設定されている。
前述したように、コントロールユニット20はまた、アクセル開度及び車速に基づいて変速機25の変速比特性が予め設定されて記憶されるようになっている。本実施形態では、コントロールユニット20に、ノーマルモード、第1スポーツモード及び第2スポーツモードのそれぞれについてアクセル開度及び車速に基づいて変速機25の変速比特性(シフトパターン)が設定されている。
そして、コントロールユニット20に、ノーマルモード、第1スポーツモード及び第2スポーツモードの目標加速度特性と変速比特性とが設定された状態で、コントロールユニット20は、第1スポーツモードスイッチ23及び第2スポーツモードスイッチ24からの信号に基づいて設定されたモードについて、アクセル開度及び車速に基づき、前記目標加速度特性から読み取った目標加速度と前記変速比特性から読み取った変速比とを用い、前記目標加速度となるようにエンジン出力トルクを制御する。
図4は、本発明の第1実施形態に係る車両のエンジン出力トルク制御を示すフローチャートである。車両のエンジン出力トルクを制御する際には、車両のコントロールユニット20には、前述したように、ノーマルモード、第1スポーツモード及び第2スポーツモードの目標加速度特性と変速比特性とが予め設定されて記憶されている。
そして、図4に示すように、ステップ#1において、アクセル開度、車速、第1スポーツモードスイッチ及び第2スポーツモードスイッチの信号が読み込まれる。次に、ステップ#2において、車両が旋回中であるか否かが判定される。例えば舵角センサなどを用いて、車両が旋回中であるか否かが判定される。
ステップ#2の判定結果がイエス(YES)の場合、すなわち車両が旋回中であるときはステップ#1及びステップ#2が繰り返されるが、ステップ#2の判定結果がノー(NO)の場合、すなわち車両が旋回中でない場合、ステップ#1において読み込まれた第1スポーツモードスイッチ及び第2スポーツモードスイッチからの信号に基づいて第1スポーツモードスイッチ又は第2スポーツモードスイッチがON状態であるか否かが判定される(ステップ#3)。
ステップ#3の判定結果がイエスの場合、すなわち第1スポーツモードスイッチ又は第2スポーツモードスイッチがON状態である場合、第1スポーツモードスイッチがON状態であるか否かが判定される(ステップ#4)。
ステップ#4の判定結果がイエスの場合、すなわち第1スポーツモードスイッチがON状態で第1スポーツモードが設定されている場合、ステップ#1において読み込まれたアクセル開度及び車速に基づいて、第1スポーツモードの目標加速度特性を用いて第1スポーツモードにおける目標加速度が読み取られて算出される(ステップ#5)。
ステップ#5において第1スポーツモードにおける目標加速度が算出されると、ステップ#1において読み込まれたアクセル開度及び車速に基づいて、第1スポーツモードの変速比特性を用いて第1スポーツモードにおける変速比が読み取られて算出される(ステップ#6)。
そして、ステップ#5において算出された目標加速度及びステップ#6において算出された変速比に基づいて、前記目標加速度となるようにエンジンの出力トルクが算出され(ステップ#7)、前記目標加速度となるようにスロットル弁14及び燃料噴射弁5などの作動を制御してエンジン出力トルクを制御する(ステップ#8)。
一方、ステップ#4の判定結果がノーの場合、すなわち第1スポーツモードスイッチがOFF状態で第2スポーツモードスイッチがON状態にあり第2スポーツモードが設定されている場合、ステップ#1において読み込まれたアクセル開度及び車速に基づいて、第2スポーツモードの目標加速度特性を用いて第2スポーツモードにおける目標加速度が読み取られて算出される(ステップ#9)。
ステップ#9において第2スポーツモードにおける目標加速度が算出されると、ステップ#1において読み込まれたアクセル開度及び車速に基づいて、第2スポーツモードの変速比特性を用いて第2スポーツモードにおける変速比が読み取られて算出される(ステップ#10)。
そして、ステップ#9において算出された目標加速度及びステップ#10において算出された変速比に基づいて、前記目標加速度となるようにエンジンの出力トルクが算出され(ステップ#7)、前記目標加速度となるようにエンジン出力トルクを制御する(ステップ#8)。
また、ステップ#3の判定結果がノーの場合、すなわち第1スポーツモードスイッチ及び第2スポーツモードスイッチがOFF状態でノーマルモードが設定されている場合、ステップ#1において読み込まれたアクセル開度及び車速に基づいて、ノーマルモードの目標加速度特性を用いてノーマルモードにおける目標加速度が読み取られて算出される(ステップ#11)。
ステップ#11においてノーマルモードにおける目標加速度が算出されると、ステップ#1において読み込まれたアクセル開度及び車速に基づいて、ノーマルモードの変速比特性を用いてノーマルモードにおける変速比が読み取られて算出される(ステップ#12)。
そして、ステップ#11において算出された目標加速度及びステップ#12において算出された変速比に基づいて、前記目標加速度となるようにエンジンの出力トルクが算出され(ステップ#7)、前記目標加速度となるようにエンジン出力トルクを制御する(ステップ#8)。
このように、本実施形態に係る車両の制御装置は、ノーマルモードとスポーツモードとを設定するモード設定手段と、アクセル開度及び車速に基づいて目標加速度特性を設定する目標加速度特性設定手段と、アクセル開度及び車速に基づいて変速機の変速比特性を設定する変速比特性設定手段と、モード設定手段によって設定されたモードについて、アクセル開度及び車速に基づき、前記目標加速度特性から読み取った目標加速度と前記変速比特性から読み取った変速比とを用い、前記目標加速度となるようにエンジン出力トルクを制御するエンジン制御手段とを有している。
なお、モード設定手段は、第1スポーツモードスイッチ23、第2スポーツモードスイッチ24及びコントロールユニット20によって構成され、目標加速度特性設定手段、変速比特性設定手段及びエンジン制御手段は、コントロールユニット20によって構成されている。
そして、各アクセル開度について、両モードとも車速が低いほど目標加速度が高くなり、且つ両モードの目標加速度の差が車速が低いほど大きくなるように両モードの目標加速度特性が設定されている。
これにより、ドライバが同じアクセル開度に対してより加速したいというアグレッシブな意図を有する場合に、スポーツモードを設定することで、燃費性能の低下を抑制しながら、ドライバのアグレッシブな意図に追従して車両をより加速させることができる。
また、スポーツモードとして、各アクセル開度について、目標加速度がゼロとなる車速をノーマルモードでの目標加速度がゼロとなる車速と同じ車速に固定しながら、車速ゼロ側の目標加速度を変化させる第1スポーツモードと、車速ゼロ側の目標加速度のノーマルモードの目標加速度に対する差を固定しながら、目標加速度がゼロとなる車速を変化させる第2スポーツモードの選択が可能とされることにより、ドライバの選択によって低車速側又は高車速側の加速性を高めることができ、ドライバの要求に応じた加速感を得ることができる。
前述した実施形態では、第1スポーツモードの目標加速度特性において第1スポーツモードの車速ゼロ側の目標加速度AS1が所定値に設定され、第2スポーツモードの目標加速度特性において第2スポーツモードの目標加速度がゼロとなる車速VS2が所定値に設定されているが、ドライバの操作によって第1スポーツモードの車速ゼロ側の目標加速度の変化量と第2スポーツモードの目標加速度がゼロとなる車速の変化量とを操作するようにすることも可能である。
第1スポーツモードの車速ゼロ側の目標加速度の変化量を操作する第1操作部と、第2スポーツモードの目標加速度がゼロとなる車速の変化量を操作する第2操作部とを設け、第1スポーツモードの車速ゼロ側の目標加速度の変化量と第2スポーツモードの目標加速度がゼロとなる車速の変化量を操作するように構成することも可能である。
例えば、第1操作部として第1スポーツモードスイッチ23を、ON/OFF状態に加えてON状態である場合に第1スポーツモードの車速ゼロ側の目標加速度の変化量を設定可能に構成し、第2操作部として第2スポーツモードスイッチ24を、ON/OFF状態に加えてON状態である場合に第1スポーツモードの車速ゼロ側の目標加速度の変化量を設定可能に構成することができる。
この場合、コンピュータユニット20には、第1スポーツモードの車速ゼロ側の目標加速度の変化量にそれぞれ応じた第1スポーツモードの目標加速度特性と、第2スポーツモードの目標加速度がゼロとなる車速の変化量にそれぞれ応じた第2スポーツモードの目標加速度特性とが予め設定されて記憶される。
そして、コンピュータユニット20は、第1スポーツモードが設定される場合に第1操作部の操作量に応じた第1スポーツモードの目標加速度特性を用い、アクセル開度及び車速に基づき目標加速度を算出し、第2スポーツモードが設定される場合に第2操作部の操作量に応じた第2スポーツモードの目標加速度特性を用い、アクセル開度及び車速に基づき目標加速度を算出し、前記目標加速度となるようにエンジン出力トルクを制御する。
このように、第1スポーツモードの車速ゼロ側の目標加速度の変化量を操作する第1操作部と、第2スポーツモードの目標加速度がゼロとなる車速の変化量を操作する第2操作部とを有する場合、ドライバの操作によって低車速側又は高車速側の加速性を調整することができる。
なお、本実施形態では、コントロールユニット20に、ノーマルモード、第1スポーツモード及び第2スポーツモードのそれぞれについてアクセル開度及び車速に基づいて変速機25の変速比特性(シフトパターン)が設定されているが、第1スポーツモード及び第2スポーツモードの変速比特性として同じ変速比特性を用いるようにしてもよく、ノーマルモード、第1スポーツモード及び第2スポーツモードの変速比特性として同一の変速比特性を用いるようにしてもよい。
次に、本発明の第2実施形態に係る車両の制御装置について説明する。なお、第2実施形態に係る車両の制御装置は、第1実施形態に係る車両の制御装置とスポーツモードの目標加速度特性が異なるものであり同様の構成については説明を省略する。
第2実施形態についても、車両の走行モードとして、ノーマルモードと目標加速度が高く設定されるスポーツモードとを設定するように構成されているが、第2実施形態では、第1スポーツモードスイッチ23と第2スポーツモードスイッチ24とは、第1スポーツモードと第2スポーツモードとを設定するものではなく、第1スポーツモードスイッチ23と第2スポーツモードスイッチ24の操作に応じてスポーツモードの目標加速度特性を設定するように構成されている。
第1スポーツモードスイッチ23は、ON又はOFF状態を設定することができると共に、ON状態である場合に、スポーツモードの目標加速度特性における車速ゼロ側の目標加速度の変化量を、例えば第1レベル、第2レベル、第3レベルなどの所定量に設定することができるように構成されている。
第1スポーツモードスイッチ23は、例えば、スポーツモードの目標加速度特性における車速ゼロ側の目標加速度の変化量を第1レベル、第2レベル、第3レベルに設定する場合、操作回数に応じて、OFF状態から、第1レベル、第2レベル、第3レベル、第2レベル、第1レベル、OFF状態の順に設定するように構成することができる。
第2スポーツモードスイッチ24についても、ON又はOFF状態を設定することができると共に、ON状態である場合に、スポーツモードの目標加速度特性における目標加速度がゼロとなる車速を変化させる変化量を、例えば第1レベル、第2レベル、第3レベルなどの所定量に設定することができるように構成されている。
第2スポーツモードスイッチ24は、例えば、スポーツモードの目標加速度特性における目標加速度がゼロとなる車速の変化量を第1レベル、第2レベル、第3レベルに設定する場合、操作回数に応じて、OFF状態から、第1レベル、第2レベル、第3レベル、第2レベル、第1レベル、OFF状態の順に設定するように構成することができる。
そして、コンピュータユニット20には、第1スポーツモードスイッチ23からON/OFF状態に加えて、ON状態である場合、スポーツモードの目標加速度特性における車速ゼロ側の目標加速度の変化量の設定値が入力され、第2スポーツモードスイッチ24からON/OFF状態に加えて、ON状態である場合、スポーツモードの目標加速度特性における目標加速度がゼロとなる車速の変化量の設定値が入力されるようになっている。
第2実施形態においても、コントロールユニット20は、ノーマルモード及びスポーツモードごとに、アクセル開度及び車速に基づいて目標加速度特性が予め設定されて記憶されるようになっていると共に、アクセル開度及び車速に基づいて変速機25の変速比特性が予め設定されて記憶されるようになっている。
ノーマルモード及びスポーツモードの目標加速度特性は、各アクセル開度について、両モードとも車速が低いほど目標加速度が高くなり、且つ両モードの目標加速度の差が車速が低いほど大きくなるように設定されているが、第2実施形態では、スポーツモードの目標加速度特性として、各アクセル開度について、車速ゼロ側の目標加速度を変化させる変化量と目標加速度がゼロとなる車速を変化させる変化量ごとにスポーツモードの目標加速度特性が設定されている。
スポーツモードの目標加速度特性について、車速ゼロ側の目標加速度の変化量を第1レベル、第2レベル、第3レベルに設定することができると共に目標加速度がゼロとなる車速を変化させる変化量を第1レベル、第2レベル、第3レベルに設定することができる場合について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係るノーマルモード及びスポーツモードの目標加速度特性を説明するための説明図であり、図5では、車速を横軸にとり、目標加速度を縦軸にとって表示し、ノーマルモード及びスポーツモードについて、アクセル開度が30%であるときの車速と目標加速度との関係を示している。
図5では、ノーマルモードの目標加速度特性を実線LNで表し、第1スポーツモードスイッチが第1レベルで第2スポーツモードスイッチがOFF状態に設定されたスポーツモードの目標加速度特性を破線LS10で表し、第1スポーツモードスイッチが第2レベルで第2スポーツモードスイッチがOFF状態に設定されたスポーツモードの目標加速度特性を一点鎖線LS20で表し、第1スポーツモードスイッチが第3レベルで第2スポーツモードスイッチがOFF状態に設定されたスポーツモードの目標加速度特性を二点鎖線LS30で表している。
図5に示すように、スポーツモードの目標加速度特性LS10、LS20、LS30はそれぞれ、目標加速度がゼロとなる車速VS10、VS20、VS30をノーマルモードでの目標加速度がゼロとなる車速VNと同じ車速に固定しながら、車速がゼロであるときの目標加速度AS10、AS20、AS30がノーマルモードの車速がゼロであるときの目標加速度ANに対して所定量変化するように設定され、目標加速度はAN<AS10<AS20<AS30となるように設定されている。
図6は、本発明の第2実施形態に係るノーマルモード及びスポーツモードの目標加速度特性を説明するための説明図であり、図6では、車速を横軸にとり、目標加速度を縦軸にとって表示し、ノーマルモード及びスポーツモードについて、アクセル開度が30%であるときの車速と目標加速度との関係を示している。
図6では、ノーマルモードの目標加速度特性を実線LNで表し、第1スポーツモードスイッチが第1レベルで第2スポーツモードスイッチが第1レベルに設定されたスポーツモードの目標加速度特性を破線LS11で表し、第1スポーツモードスイッチが第1レベルで第2スポーツモードスイッチが第2レベルに設定されたスポーツモードの目標加速度特性を一点鎖線LS12で表し、第1スポーツモードスイッチが第1レベルで第2スポーツモードスイッチが第3レベルに設定されたスポーツモードの目標加速度特性を二点鎖線LS13で表している。
図6に示すように、スポーツモードの目標加速度特性LS11、LS12、LS13はそれぞれ、車速がゼロであるときの目標加速度AS11、AS12、AS13のノーマルモードの目標加速度ANに対する差を固定しながら、目標加速度がゼロとなる車速VS11、VS12、VS13をノーマルモードの目標加速度がゼロとなる車速VNに対して所定量変化するように設定され、車速はVN<VS11<VS12<VS13となるように設定されている。
なお、図5に示す第1スポーツモードスイッチが第1レベルで第2スポーツモードスイッチがOFF状態に設定されたスポーツモードの目標加速度特性LS10における車速がゼロであるときの目標加速度AS10と、図6に示す第1スポーツモードスイッチが第1レベルであるときの目標加速度特性LS11、LS12、LS13における車速がゼロであるときの目標加速度AS11、AS12、AS13とは同一に設定されている。
図6では、第1スポーツモードスイッチが第1レベルで第2スポーツモードスイッチが第1レベル、第2レベル又は第3レベルに設定されたスポーツモードの目標加速度特性が表されているが、第1スポーツモードスイッチが第2レベルで第2スポーツモードスイッチが第1レベル、第2レベル又は第3レベルに設定されたスポーツモードの目標加速度特性、及び第1スポーツモードスイッチが第3レベルで第2スポーツモードスイッチが第1レベル、第2レベル又は第3レベルに設定されたスポーツモードの目標加速度特性についてもそれぞれ、車速がゼロであるときの目標加速度のノーマルモードの目標加速度に対する差を固定しながら、目標加速度がゼロとなる車速をノーマルモードの目標加速度がゼロとなる車速に対して所定量変化するように設定されている。
なお、本実施形態では、第1スポーツモードスイッチがOFF状態で第2スポーツモードスイッチがOFF状態からON状態とされて第1レベルに設定される場合、スポーツモードの目標加速度特性における車速ゼロ側の目標加速度の変化量が第1レベルに設定され、ノーマルモード及びスポーツモードの目標加速度の差が車速が低いほど大きくなるように設定されるようになっている。
前述したように、第1スポーツモードスイッチを、操作回数に応じて、OFF状態から、第1レベル、第2レベル、第3レベル、第2レベル、第1レベル、OFF状態の順に設定するように構成した場合においても、第1スポーツモードスイッチがOFF状態で第2スポーツモードスイッチがOFF状態からON状態とされて第1レベルに設定される場合は、第1スポーツモードスイッチがOFF状態でもスポーツモードの目標加速度特性における車速ゼロ側の目標加速度の変化量が第1レベルに設定され、その後に、第1スポーツモードスイッチが操作される場合は、操作回数に応じて、OFF状態から、第2レベル、第3レベル、第2レベル、第1レベル、OFF状態の順に設定されるように構成される。
他のアクセル開度についても同様に、スポーツモードの目標加速度特性は、車速ゼロ側の目標加速度を変化させる変化量と目標加速度がゼロとなる車速を変化させる変化量ごとに設定され、コントロールユニット20には、第1スポーツモードスイッチが第1レベル、第2レベル又は第3レベルに設定され、第2スポーツモードスイッチがOFF状態、第1レベル、第2レベル又は第3レベルに設定された場合についてそれぞれスポーツモードの目標加速度特性が設定されている。
コントロールユニット20にはまた、アクセル開度及び車速に基づいて変速機25の変速比特性が予め設定されて記憶され、本実施形態では、ノーマルモード及びスポーツモードについてそれぞれアクセル開度及び車速に基づいて変速機25の変速比特性が設定されている。
このように、コントロールユニット20に、ノーマルモード及びスポーツモードの目標加速度特性と変速比特性とが設定された状態で、コントロールユニット20は、第1スポーツモードスイッチ23及び第2スポーツモードスイッチ24からの信号に基づいて設定されたモードについて、アクセル開度及び車速に基づき、前記目標加速度特性から読み取った目標加速度と前記変速比特性から読み取った変速比とを用い、前記目標加速度となるようにエンジン出力トルクを制御する。
図7は、本発明の第2実施形態に係る車両のエンジン出力トルク制御を示すフローチャートである。第2実施形態においても、車両のエンジン出力トルクを制御する際には、車両のコントロールユニット20には、前述したように、ノーマルモード及びスポーツモードの目標加速度特性と変速比特性とが予め設定されて記憶されている。
そして、図7に示すように、ステップ#21において、アクセル開度、車速、第1スポーツモードスイッチ及び第2スポーツモードスイッチの信号が読み込まれる。次に、ステップ#22において、車両が旋回中であるか否かが判定される。
ステップ#22の判定結果がイエスの場合、すなわち車両が旋回中であるときはステップ#21及びステップ#22が繰り返されるが、ステップ#22の判定結果がノーの場合、すなわち車両が旋回中でない場合、ステップ#21において読み込まれた第1スポーツモードスイッチ及び第2スポーツモードスイッチからの信号に基づいて第1スポーツモードスイッチ又は第2スポーツモードスイッチがON状態であるか否かが判定される(ステップ#23)。
ステップ#23の判定結果がイエスの場合、すなわち第1スポーツモードスイッチ又は第2スポーツモードスイッチがON状態でスポーツモードが設定されている場合、ステップ#21において読み込まれたアクセル開度、車速、第1及び第2スポーツモードスイッチの状態に基づいてスポーツモードにおける目標加速度が読み取られて算出される(ステップ#24)。
ステップ#24では、ステップ#21において読み込まれたアクセル開度及び車速に基づいて、ステップ#21において読み込まれた第1スポーツモードスイッチ及び第2スポーツモードスイッチの状態に応じたスポーツモードの目標加速度特性を用いてスポーツモードにおける目標加速度が算出される。
スポーツモードの目標加速度特性は、第1スポーツモードスイッチの設定、すなわち第1レベル、第2レベル又は第3レベルの設定と、第2スポーツモードスイッチの設定、すなわちOFF状態、第1レベル、第2レベル、第3レベルの設定との組み合わせに応じた目標加速度特性が用いられる。
ステップ#24においてスポーツモードにおける目標加速度が算出されると、ステップ#21において読み込まれたアクセル開度及び車速に基づいて、スポーツモードの変速比特性を用いてスポーツモードにおける変速比が読み取られて算出される(ステップ#25)。
そして、ステップ#24において算出された目標加速度及びステップ#25において算出された変速比に基づいて、前記目標加速度となるようにエンジンの出力トルクが算出され(ステップ#26)、前記目標加速度となるようにエンジン出力トルクを制御する(ステップ#27)。
一方、ステップ#23の判定結果がノーの場合、すなわち第1スポーツモードスイッチ及び第2スポーツモードスイッチがOFF状態でノーマルモードが設定されている場合、ステップ#21において読み込まれたアクセル開度及び車速に基づいて、ノーマルモードの目標加速度特性を用いてノーマルモードにおける目標加速度が読み取られて算出される(ステップ#28)。
ステップ#28においてノーマルモードにおける目標加速度が算出されると、ステップ#21において読み込まれたアクセル開度及び車速に基づいて、ノーマルモードの変速比特性を用いてノーマルモードにおける変速比が読み取られて算出される(ステップ#29)。
そして、ステップ#28において算出された目標加速度及びステップ#29において算出された変速比に基づいて、前記目標加速度となるようにエンジンの出力トルクが算出され(ステップ#26)、前記目標加速度となるようにエンジン出力トルクを制御する(ステップ#27)。
なお、前述した実施形態では、スポーツモードの目標加速度特性について、車速ゼロ側の目標加速度の変化量を第1レベル、第2レベル、第3レベルに設定することができると共に目標加速度がゼロとなる車速を変化させる変化量を第1レベル、第2レベル、第3レベルに設定することができる場合について説明しているが、車速ゼロ側の目標加速度を変化させる変化量と目標加速度がゼロとなる車速を変化させる変化量とはそれぞれ種々に設定することが可能である。
このように、本実施形態に係る車両の制御装置においても、ノーマルモードとスポーツモードとを設定するモード設定手段と、アクセル開度及び車速に基づいて目標加速度特性を設定する目標加速度特性設定手段と、アクセル開度及び車速に基づいて変速機の変速比特性を設定する変速比特性設定手段と、モード設定手段によって設定されたモードについて、アクセル開度及び車速に基づき、前記目標加速度特性から読み取った目標加速度と前記変速比特性から読み取った変速比とを用い、前記目標加速度となるようにエンジン出力トルクを制御するエンジン制御手段とを有している。
そして、各アクセル開度について、両モードとも車速が低いほど目標加速度が高くなり、且つ両モードの目標加速度の差が車速が低いほど大きくなるように両モードの目標加速度特性が設定されている。
これにより、ドライバが同じアクセル開度に対してより加速したいというアグレッシブな意図を有する場合に、スポーツモードを設定することで、燃費性能の低下を抑制しながら、ドライバのアグレッシブな意図に追従して車両をより加速させることができる。
また、スポーツモードの目標加速度特性として、車速ゼロ側の目標加速度を変化させる変化量と目標加速度がゼロとなる車速を変化させる変化量ごとにスポーツモードの目標加速度特性が設定され、車速ゼロ側の目標加速度の変化量と目標加速度がゼロとなる車速の変化量の操作が可能とされることにより、ドライバの操作に応じて加速性を調整することができ、ドライバの要求に応じた加速感を得ることができる。
更に、スポーツモードの目標加速度特性における車速ゼロ側の目標加速度の変化量が複数設定可能に構成されることにより、ドライバの操作によって低車速側の加速性を任意に調整することができ、スポーツモードの目標加速度特性における目標加速度がゼロとなる車速の変化量が複数設定可能に構成されることにより、ドライバの操作によって高車速側の加速性を任意に調整することができる。
前述した実施形態では、スポーツモードの目標加速度特性における車速ゼロ側の目標加速度の変化量と目標加速度がゼロとなる車速の変化量とがそれぞれ複数設定可能に構成されているが、スポーツモードの目標加速度特性における車速ゼロ側の目標加速度の変化量と目標加速度がゼロとなる車速の変化量とをそれぞれ1つの所定値に設定するようにすることも可能である。
例えば、第1及び第2スポーツモードスイッチをそれぞれ、ON状態又はOFF状態の切り換えのみを行い、第1スポーツモードスイッチがON状態で第2スポーツモードスイッチがOFF状態の場合は、スポーツモードの目標加速度特性における車速ゼロ側の目標加速度の変化量を第1レベルに設定すると共に車速ゼロ側の目標加速度の変化量をゼロに設定し、第1スポーツモードスイッチがOFF状態又はON状態で第2スポーツモードスイッチがON状態の場合は、スポーツモードの目標加速度特性における車速ゼロ側の目標加速度の変化量を第1レベルに設定すると共に車速ゼロ側の目標加速度の変化量を第1ゼロに設定するように構成することができる。
かかる場合においても、第1スポーツモードスイッチがOFF状態で第2スポーツモードスイッチがON状態である場合、第1スポーツモードスイッチがOFF状態でも、スポーツモードの目標加速度特性における車速ゼロ側の目標加速度の変化量が第1レベルに設定され、ノーマルモード及びスポーツモードの目標加速度の差が車速が低いほど大きくなるように設定される。
なお、本実施形態では、コントロールユニット20に、ノーマルモード及びスポーツモードのそれぞれについてアクセル開度及び車速に基づいて変速機25の変速比特性が設定されているが、ノーマルモード及びスポーツモードの変速比特性として同一の変速比特性を用いるようにしてもよい。
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。