JP6044064B2 - 複合磁性体とその製造方法及びアンテナ並びに通信装置 - Google Patents
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Description
λg=λo/(εr’・μr’)1/2 ……(1)
と表すことができる。この式(1)によれば、εr’及びμr’が大きいほど波長λgの短縮率が大きくなるので、アンテナや電子部品の小型化が可能になることが知られている。
しかしながら、従来の磁性材料をVHF帯のアンテナに適用すると、磁性材料の表面に渦電流が生じ、この渦電流が印加した磁界の変化を打ち消す向きに磁界を発生させるために、磁性材料の透磁率が見かけ上低下するという問題点があった。
また、渦電流の増大がジュール熱によるエネルギー損失を生じさせることから、磁性材料をアンテナや電子部品等の材料として使用することは困難であった。
この複合磁性体によれば、渦電流による磁気特性の劣化を避けることができ、500MHz〜1GHzの周波数帯でも損失の低減を図ることができる。
一方、VHF帯にて使用することができる磁性材料として、高周波用フェライトが提案されている。
さらに、フェライトがセラミックスであることから、形状加工性や機械的信頼性に乏しいという問題点があり、したがって、携帯用情報端末に適用した場合に様々な制限が生じ、好ましくない。
本発明の複合磁性体では、前記磁性粉体は、前記扁平状の磁性粉体からなり、前記扁平状の磁性粉体の平均厚みは0.01μm以上かつ0.5μm以下、平均長径は0.05μm以上かつ5μm以下、かつ平均アスペクト比(長径/厚み)は5以上のみからなり、70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は12よりも大きく、かつ損失正接tanδは0.1以下であることが好ましい。
本発明の複合磁性体は、90MHzから220MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は1よりも大きく、かつ損失正接tanδは0.05以下であることがより好ましい。
したがって、この複合磁性体をVHF帯のアンテナに適用すれば、この複合磁性体の表面における渦電流の発生を防止することができ、μr’の低下を防止することができ、さらなるアンテナの小型化を図ることができる。
したがって、この複合磁性体をVHF帯のアンテナや電子部品に適用すれば、アンテナや電子部品のさらなる小型化を図ることができる。
また、小型化されたアンテナを用いることにより、通信装置全体の小型化を図ることができる。よって、さらに小型化された通信装置を提供することができる。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の複合磁性体は、磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、この磁性粉体は扁平状であり、70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が1よりも大きく、かつ損失正接tanδが0.1以下の複合磁性体である。
ここで、複素透磁率の実部μr’及び損失正接tanδを上記の範囲に限定した理由は、この範囲が、電磁波の波長を短縮することができ、かつ、渦電流による磁気損失が低下し、エネルギー損失が小さくなる範囲だからである。
μr’’=μr’×tanδ ……(1)
ここで、複素透磁率の虚部μr’’は0.5以下であることが好ましいので、上記の式(1)から、μr’が10の場合にはtanδは0.05以下であることが好ましく、また、μr’が15の場合にはtanδは1/30以下であることが好ましいこととなる。
磁性粉体における反磁界の大きさは、粉体の形状に依存する。例えば、磁性粉体が球状の場合には、反磁界が等方的に存在するために、得られる透磁率も等方的となり、高周波領域で優れた磁気特性を得ることが困難である。一方、磁性粉体が扁平状の場合には、扁平面に平行な方向の反磁界が格段に小さくなり、したがって、得られるμr’が大きくなる。
ここで、上記の金属元素の添加量を上記の範囲に限定した理由は、金属元素の添加量が0.1質量%未満では、磁性粉体に十分な塑性変形能を付与することができず、一方、添加量が90質量%を超えると、金属元素自体の磁気モーメントが小さいことから、磁性粉体全体の飽和磁化が小さくなり、その結果、得られるμr’も小さくなるからである。
この磁性粉体の平均長径は0.05μm以上かつ5μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以上かつ4μm以下である。
ここで、平均厚みが0.01μm未満とすることは、後述する製造上困難であり、取り扱いも難しくなるので、好ましくなく、また、平均厚みが0.5μmを超えると、粒子同士の融着に起因する厚みのばらつきが生じ、VHF帯の損失正接が増加するので好ましくない。
ここで、平均アスペクト比(長径/厚み)が5より小さいと、磁性粉体の反磁界係数が大きくなり、その結果、複合磁性体のμr’が低下するので好ましくない。
なかでも、熱硬化性樹脂としては、機械的強度及び形状加工性に優れているエポキシ樹脂が好ましく、また、熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレン樹脂、ABS樹脂が好ましい。
本実施形態の複合磁性体の製造方法は、平均粒子径が0.5μm以下の球状の磁性粒子を界面活性剤を含む溶液中に分散してなるスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、前記スラリー及び前記分散媒体の合計の体積量が前記容器の容積と同じくなるように充填し、このスラリーを前記分散媒体と共に密閉状態にて撹拌し、前記球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする第1の工程と、前記扁平状の磁性粉体を、液状の樹脂中または樹脂を溶媒に溶解した溶液中に分散し混合して成形材料とする第2の工程と、前記成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する第3の工程と、を備えている。
(第1の工程)
まず、平均粒子径が0.5μm以下の球状の磁性粒子を界面活性剤を含む溶液中に分散してスラリーとする。
磁性粒子の組成は、上記の磁性粉体の組成と全く同様である。
界面活性剤としては、磁性粒子の表面と相性の良い窒素、リン、イオウ等の元素を含有している界面活性剤が好ましく、例えば、窒素含有ブロックコポリマー、燐酸塩、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
このように、分散媒体の平均粒径が小さいほど、単位体積当たりに存在する個数が増加し、衝突回数も多くなり、変形及び融着性も向上するが、一方、分散媒体の平均粒径が小さすぎると、この分散媒体をスラリーから分離することが困難となる。したがって、分散媒体の平均粒径は、少なくとも0.03mm以上、好ましくは0.04mm以上であることが必要である。
また、分散媒体の平均粒径が大き過ぎると、衝突回数が減少することから、球状の磁性粒子同士の変形及び融着性が低下する。したがって、分散媒体の平均粒径の上限値は3.0mmである。
この密閉容器は、単純な1軸回転方式であることから、大型化も容易であり、工業生産上も有利である。
なお、上記の密閉可能な容器に、スラリーを容器内に導入・導出するための流入口及び流出口を設け、スラリーを密閉容器内に循環するようにしてもかまわない。この場合、予め分散媒体を密閉容器内に収納しておき、球状の磁性粒子と界面活性剤と溶媒とを混合したスラリーを流入口から投入して容器内に空間がないように充填し、流出口から排出されるスラリーを再度密閉容器内へ投入するようにすればよい。
ここで、スラリー及び分散媒体を、密閉容器内に隙間なく充填する理由は、次のとおりである。
この図では、1軸回転体5が高速で回転すると、スラリー3及び分散媒体4の液面は、遠心力により中心軸近傍が低く、周縁部が高いすり鉢状となる。
1軸回転体5により球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4に加えられた機械的応力は、すり鉢状の空間に逃げていくので、開放容器1内全体で分散媒体4を介して球状の磁性粒子2に伝搬される機械的応力は不均一なものとなり、得られた扁平状の磁性粉体の厚みがばらつく要因となる。
また、すり鉢状の空間の底部近傍(中心軸近傍)で扁平状となった磁性粉体は、分散媒体と共にすり鉢状の空間に放出されて不規則な衝撃を受けることとなり、割れや欠け等が生じる虞がある。このような磁性粉体の厚みのばらつきや割れや欠けは、VHF帯での損失正接が増加する要因となっている。
この図では、1軸回転体5が高速で回転しても、密閉容器11内が球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4により満たされているので、開放容器1に見られるようなすり鉢状の空間が生じる虞は無い。したがって、1軸回転体5により球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4に加えられた機械的応力は、密閉容器11内全体で分散媒体4を介して球状の磁性粒子2に均一に伝搬され、得られた扁平状の磁性粉体の厚みがばらつく虞は無い。また、扁平状となった磁性粉体は、不規則な衝撃を受けることもなく、割れや欠け等が生じる虞もない。
なお、密閉容器11の内容積が小さいと、得られた扁平状の磁性粉体に球状の磁性粒子2が残留する虞がある。残留した球状の磁性粒子2は、球状の磁性粒子2同士の接触、または球状の磁性粒子2と扁平状の磁性粉体との接触により、磁気損失を増加させたり、扁平状の磁性粉体の配向を阻害したりする虞がある。したがって、扁平状の磁性粉体は、磁性粉体全体量の90質量%以上が好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、球状の磁性粒子2を実質的に含まないことが望ましい。
このように、実質的に球状の磁性粒子2が残留しなくなる密閉容器11の容積は、1L以上が好ましく、より好ましくは5L以上である。
以上により、球状の磁性粒子同士は、1軸回転体5により加えられた機械的応力により変形及び融着し、扁平状の磁性粉体となる。
次いで、この扁平状の磁性粉体を分散媒体及び溶媒から分離する。
上述の扁平状の磁性粉体を、液状の樹脂中または樹脂を溶媒に溶解した溶液中に分散し混合して成形材料とする。
ここで、樹脂としては、液状の樹脂が好ましく、例えば、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ノルボルネン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
上記の成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する。
成形方法としては、公知の成形方法、例えば、プレス法、ドクターブレード法、射出成形法等が好適である。この成形方法を用いて任意の形状のシート状またはフィルム状に成形することにより、ドライフィルムを作製することができる。
複合磁性体が積層体の場合には、ドクターブレード法によりシート状またはフィルム状に成形することが望ましい。
上記の成形材料は、粘度調整を行う必要がある場合には、溶媒を揮発させて濃縮後に成形を行う。必要があれば、成形材料を基材上に塗布した後、乾燥前に磁場の配向により扁平状の磁性粉体をシートまたはフィルムと平行な方向に配向する配向処理を行えばよい。
熱処理または焼成の条件としては、還元性雰囲気中または真空中にて、熱処理またはホットプレスが好適である。これにより、本実施形態の複合磁性体が得られる。
加熱混練方法としては、公知の方法、例えば、加圧ニーダー、2軸式ニーダー、ブラストミル等で混合分散した混練物を作製することができる。この混練物の成形方法としては、公知の方法、例えば、加熱プレス成形、押出成形、射出成形等で成形体を作製することができる。これらの方法の中でも、扁平状の磁性粉体を樹脂中に配向させるためには、平面状に引き伸ばす加熱プレス成形が好ましい。引き伸ばす際の粘度調整のために、可塑剤の添加、扁平状の磁性粉体の表面処理を行うことも好ましい。必要があれば、加熱して流動性を維持した状態で、磁場の配向により扁平状の磁性粉体を配向する処理を行うことが好ましい。
本実施形態のアンテナは、上記の複合磁性体を装荷し、かつ70MHzから500MHzまでの周波数帯域の電波を、送信、受信または送受信するアンテナである。
このアンテナの形状は、装荷される通信装置の大きさや形状に合わせて適宜変更可能であり、例えば、渦巻き状、蛇行状等が挙げられる。
このアンテナに上記の複合磁性体を装荷させる方法としては、特に制限されず、アンテナを構成する銅線等の導体(以下、「アンテナ導体」と称する)に上記の複合磁性体を被覆させる等、公知の方法で装荷させればよい。
例えば、モノポールアンテナやL字アンテナは、アンテナ導体を中心として、上記の複合磁性体を棒状あるいは長尺の板状に加工したもので挟み込むように形成することで得ることができる。
また、ヘリカルアンテナは、上記の複合磁性体を棒状に加工した棒状複合磁性体の周囲に、銅線等からなる長尺かつ極細のアンテナ導体をコイル状に巻回することで得ることができる。
これらのアンテナでは、波長短縮効果により、所望波長の1/4よりも長さが短い小型アンテナを得ることが可能である。
このモノポールアンテナ21は、所定形状の導体からなる地板24に同軸コネクタ等を介して接続され、この同軸コネクタ等の内導体である接続部25を給電点とするように交流信号発信機26が接続されている。この給電点となる接続部25と地板24とは、電気的に絶縁されている。
その他の種類及び形状のアンテナにおける給電方法も上記と同様、アンテナは地板24にコネクタ等を介して接続され、この接続部25を給電点とするように交流信号発信機26が接続される。
本実施形態の通信装置は、上記のアンテナを備えている。
この通信装置としては、電波を介して各種情報の送信、受信、送受信のいずれかを行う装置であればよく、特に限定されない。例えば、パーソナルコンピューター、携帯用電話機、携帯情報端末、スマートフォン等の多機能携帯用情報端末、PDA(Personal Digital Assistant)等の通信機器、オーディオ機器、ビデオ機器、カメラ機器等の各種電子機器等が挙げられる。
これらの通信装置においては、上記のアンテナは、通信装置の外部に設けられていてもよく、また、内蔵されていてもよく、いずれでもよい。
図4は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の一例を示す斜視図であり、この携帯用電話機31は、筐体32の前面に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部33が設けられ、この表示部33の裏面側には地板(図示略)が設けられ、この地板にコネクタ等を介して棒状のモノポールアンテナ34内に配設された銅線等の導体からなるアンテナ導体35が接続され、この接続部を介して携帯用電話機31の電子回路(図示略)が接続されている。このモノポールアンテナ34のアンテナ導体35は、複合磁性体36により被覆されている。
このモノポールアンテナ34は、棒状である必要はなく、伸縮自在であってもよい。
このモノポールアンテナ34は、アンテナ利得を向上させることを考慮すると、表示部33等と重ならない位置に設けることが好ましい。なお、表示部33等と重なる位置にモノポールアンテナ34を設ける場合には、このモノポールアンテナ34と表示部33との間隔を空けることが好ましい。
この携帯用電話機41では、モノポールアンテナ45の接続端子46を外部アンテナ用端子44に挿入・取り外しすることで、装着及び取り外し可能とされている。
したがって、この複合磁性体をVHF帯のアンテナに適用すれば、この複合磁性体の表面における渦電流の発生を防止することができ、複素透磁率の実部μr’の低下を防止することができ、さらなるアンテナの小型化を図ることができる。
亜鉛を4質量%含有した平均粒径0.25μmのパーマロイ(商品名)磁性粉体200gを、界面活性剤として窒素含有のグラフトポリマーを溶解したキシレン400gおよびイソプロピルアルコール400gの混合液に混合し、スラリーを作製した。
次いで、密閉容器として、図2に示すような循環密閉型で容器容積が5Lのサンドミル
ウルトラアペックスミルUAM−5(寿工業社製)を用い、この密閉容器内に、分散媒体として平均粒径200μmのジルコニアビーズを投入し、次いで、上記のスラリーを投入し、密閉容器内を満たした。ここでは、密閉容器内から排出されたスラリーを再度投入して循環するように配管した。
次いで、得られた扁平状の磁性粉体を乾燥させて溶媒を散逸させた後、この扁平状の磁性粉体の所定量を、エポキシ樹脂を固形分比率40%に希釈して得られた樹脂ワニスに添加して攪拌混合した。
次いで、このフィルムを90℃、大気中にて1時間乾燥してドライフィルムとし、その後、減圧プレス装置にてプレス焼成を行った。プレス条件は、常圧のまま130℃まで20分で昇温させ、その後2MPaの圧力を加えて5分間保持し、その後160℃まで昇温させて40分間保持して樹脂を硬化させ、30mm角、厚み50μmの正方形のフイルム状の複合磁性体を得た。
また、この複合磁性体の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、扁平状の磁性粉体50個の平均の厚みは0.08μm、平均長径は0.5μmであり、平均アスペクト比は6.25であった。また、球状の磁性粒子や、厚みが0.01μm以上かつ0.5μm以下、長さが0.05μm以上かつ5μm以下、かつアスペクト比が5以上でない磁性粒子は、実質的に認められなかった。
この複合磁性体の複素透磁率(実部μr’及び虚部μr’’)及び損失正接(tanδ)を図8に、この複合磁性体の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図9に、それぞれ示す。
亜鉛を4質量%含有した平均粒径0.25μmのパーマロイ(商品名)磁性粉体20gを、界面活性剤として窒素含有のグラフトポリマーを溶解したキシレン40gおよびイソプロピルアルコール40gの混合液に混合し、スラリーを作製した。
次いで、開放容器として、図1に示すような上部開放型のサンドミルを用い、この開放容器のベッセル内に、分散媒体として平均粒径200μmのジルコニアビーズを投入し、次いで、上記のスラリーを投入した。ここでは、ベッセル内の最外周の流速が10m/秒となる回転数で30分間攪拌し、扁平状の磁性粉体を作製した。
この複合磁性体の複素透磁率をマテリアルアナライザ法により測定したところ、90MHzにおける複素透磁率の実部μr’は2.6、損失正接tanδは0.09であり、220MHzにおける複素透磁率の実部μr’は2.8、損失正接tanδは0.11であった。
また、この複合磁性体の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、扁平状の磁性粉体は、互いに不規則に重なり合って、実質的に厚み0.5μm以上のものも多数存在していることが分かった。長さ及びアスペクト比も不均一であった。
この複合磁性体の複素透磁率(実部μr’及び虚部μr’’)及び損失正接(tanδ)を図10に、この複合磁性体の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図11に、それぞれ示す。
実施例1と同様の方法により、長さ250mm、幅30mm、厚み60μmのドライフィルムを12枚作製した。
次いで、これらのドライフィルムを積層し、6枚目と7枚目の間にアンテナ線として直径0.6mm、長さ250mmの銅線を挟み、その後、減圧プレス装置を用いて、実施例1と同様の条件にてプレス焼成を行い、図3に示すような、長さ250mm、幅30mm、厚み0.8mmのドライフィルムの積層体からなる複合磁性体23中に、銅線からなるアンテナ導体22が挟み込まれたモノポールアンテナ21を作製した。
ここでは、このモノポールアンテナ21の共振周波数を測定し、また、比較のために、直径0.6mm、長さ250mmの銅線のみの共振周波数を測定した。
その結果、共振周波数は、銅線のみが273MHzであるのに対して、実施例2の複合磁性体を装荷したモノポールアンテナは180MHzであり、波長に換算した短縮率としては約66%となった。この結果から、本発明の複合磁性体を装荷することにより、VHF帯の180MHzのアンテナの長さは34%ほど小型化されることが分かった。
2 球状の磁性粒子
3 スラリー
4 分散媒体
5 1軸回転体
11 密閉容器
21 モノポールアンテナ
22 アンテナ導体
23 複合磁性体
24 地板
25 接続部
26 交流信号発信機
31 携帯用電話機
32 筐体
33 表示部
34 モノポールアンテナ
35 アンテナ導体
36 複合磁性体
41 携帯用電話機
42 筐体
43 表示部
44 外部アンテナ用端子
45 モノポールアンテナ
46 接続端子
47 アンテナ導体
48 複合磁性体
51 携帯用電話機
52 筐体
53 地板
54 L字アンテナ
55 アンテナ導体
56 複合磁性体
61 携帯用電話機
62 筐体
63 地板
64 ヘリカルアンテナ
65 複合磁性体
66 アンテナ導体
Claims (8)
- 磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、
前記磁性粉体は、扁平状の磁性粉体を含み、
前記磁性粉体の平均厚みは0.01μm以上かつ0.5μm以下、平均長径は0.05μm以上かつ5μm以下、かつ平均アスペクト比(長径/厚み)は5以上6.25以下であり、
前記扁平状の磁性粉体は、前記磁性粉体の全体量の90質量%以上であり、
70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は1よりも大きく、かつ損失正接tanδは0.1以下であることを特徴とする複合磁性体。 - 70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は10よりも大きく、かつ損失正接tanδは0.1以下であることを特徴とする請求項1記載の複合磁性体。
- 前記磁性粉体は、前記扁平状の磁性粉体からなり、
前記扁平状の磁性粉体の平均厚みは0.01μm以上かつ0.5μm以下、平均長径は0.05μm以上かつ5μm以下、かつ平均アスペクト比(長径/厚み)は5以上のみからなり、70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は12よりも大きく、かつ損失正接tanδは0.1以下であることを特徴とする請求項1記載の複合磁性体。 - 前記磁性粉体は、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、スズ(Sn)の群から選択される1種または2種以上の金属元素を含む鉄−ニッケル合金であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の複合磁性体。
- 90MHzから220MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は1よりも大きく、かつ損失正接tanδは0.05以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の複合磁性体。
- 平均粒子径が0.5μm以下の球状の磁性粒子を界面活性剤を含む溶液中に分散してなるスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、前記スラリー及び前記分散媒体の合計の体積が前記容器の容積と同じくなるように充填し、このスラリーを前記分散媒体と共に密閉状態にて撹拌し、前記球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする第1の工程と、
前記扁平状の磁性粉体を、液状の樹脂中または樹脂を溶媒に溶解した溶液中に分散し混合して成形材料とする第2の工程と、
前記成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する第3の工程と、
を備えたことを特徴とする複合磁性体の製造方法。 - 請求項1ないし5のいずれか1項記載の複合磁性体を装荷してなり、
70MHzから500MHzまでの周波数帯域の電波を、送信、受信または送受信することを特徴とするアンテナ。 - 請求項7記載のアンテナを備えてなることを特徴とする通信装置。
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