JP2013253123A - 複合磁性体とそれを備えたアンテナ及び通信装置並びに複合磁性体の製造方法 - Google Patents

複合磁性体とそれを備えたアンテナ及び通信装置並びに複合磁性体の製造方法 Download PDF

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Makoto Kikuta
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Yoshiki Yoshioka
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Abstract

【課題】平板状磁性体粒子が樹脂中にて良好に配向することにより、複素透磁率の実部μr’を高くすることが可能な複合磁性体とそれを備えたアンテナ及び通信装置並びに複合磁性体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の複合磁性体は、主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂と、この第1の樹脂に可撓性を付与する第2の樹脂と、平板状磁性体粒子と、を含有した。
【選択図】なし

Description

本発明は、複合磁性体とそれを備えたアンテナ及び通信装置並びに複合磁性体の製造方法に関し、特に詳しくは、高周波回路基板、高周波電子部品、磁性シート、電磁波遮蔽シート、樹脂結合磁石、磁気記録媒体、アンテナ等に好適に用いられ、磁性を有する平板状粒子を高分子材料中に良好に配向させることにより高い比透磁率を得ることが可能な複合磁性体とそれを備えたアンテナ及び通信装置並びに複合磁性体の製造方法に関するものである。
磁性材料は、電磁波に対する特性や生産性、使い勝手の良さ等から、有機高分子材料等のような絶縁材料中に混合・分散させた複合磁性体として使用されることが知られている。
この磁性材料は、電子機器に搭載される電子部品、磁性シート、電磁干渉抑制シート、モーター、トランス、アンテナ等の電気製品、ビデオテープやフロッピー(登録商標)ディスク等の磁気記録媒体に用いられている。
近年、情報通信機器の高速化、高密度化に伴い、電子機器に搭載される電子部品や回路基板やアンテナの小型化及び低消費電力化が強く求められている。
一般に、物質内を伝播する電磁波の波長λは、真空中を伝播する電磁波の波長λと物質の複素誘電率の実部εr’(以下、単に「εr’」と略記する場合がある)及び複素透磁率の実部μr’(以下、単に「μr’」と略記する場合がある)を用いて、
λ=λ/(εr’・μr’)1/2 ……(1)
と表すことができる。
この式(1)によれば、物質のεr’及びμr’が大きいほど波長λの短縮率が大きくなる。したがって、電子部品や回路基板を構成する磁性材料のεr’及びμr’を大きくすることで、波長λの短縮率が大きくなり、よって、電子部品や回路基板やアンテナ等の小型化が可能になる。
波長の短縮率を大きくした材料としては、電子部品や回路基板等を構成する絶縁材料中に磁性体粒子を混合・分散させた複合磁性体が提案されている(特許文献1)。この複合磁性体では、μr’を大きくすることで、波長の短縮率を大きくしている。
ところで、複合磁性体に球状の磁性体粒子を用いた場合、磁性体粒子個々における反磁界係数が大きくなることから、複合磁性体のμr’を大きくすることが難しいという問題点があることが一般に知られている。
そこで、このような用途に用いられる磁性体粒子としては、平均厚みが10μm以下の平板状磁性体粒子が望まれており、扁平状、鱗片状、フレーク状等の平均アスペクト比(長径/厚み)が大きい様々な形状の磁性体粒子が提案されている(例えば、特許文献2、3等参照)。
このような平板状磁性体粒子では、最も反磁界係数の低い平面方向、即ち長軸方向で高いμr’が得られる。そこで、平板状磁性体粒子を絶縁材料中に混合・分散させた複合磁性体が、反磁界係数の効果を有効に利用して高いμr’を得るためには、平板状磁性体粒子が絶縁材料中にて一方向に配向している必要がある。
平板状磁性体粒子を配向させる方法としては、基体上に形成された平板状磁性微粒子を含む塗膜を磁石の磁極間を通過させる方法(特許文献4)や、永久磁石を内蔵する成形金型を用いる方法(特許文献5)が提案されている。
これらの方法では、絶縁材料として樹脂が用いられており、この樹脂が熱硬化前あるいは加熱溶融で流動性がある状態で磁場を印加することにより、平板状磁性体粒子を配向させている。
特開2004−087627号公報 特開昭63−35701号公報 特開平1−188606号公報 特開昭57−127931号公報 特開2000−141392号公報
ところで、従来の特許文献4や特許文献5に記載された平板状磁性体粒子を配向させる方法では、樹脂が熱硬化前あるいは加熱溶融で流動性がある状態で磁場を印加して平板状磁性体粒子を配向させても、得られる複合磁性体のμr’が小さいという問題点があった。
また、個々の軟磁性の平板状磁性体粒子自体のμr’は、保磁力の大きな硬磁性の平板状磁性体粒子より高いにも関わらず、従来の磁場印加方法では保磁力が小さい軟磁性の平板状磁性体粒子は配向性が悪く、複合磁性体全体として得られるμr’が小さいという問題点があった。
特に、100μm以上の厚みを有する複合磁性体を製造する場合には、良好なμr’が得られないという問題点があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、平板状磁性体粒子が樹脂中にて良好に配向することにより、複素透磁率の実部μr’を高くすることが可能な複合磁性体とそれを備えたアンテナ及び通信装置並びに複合磁性体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、以下の知見を得た。
ビスフェノール型エポキシ樹脂のような一般的な樹脂は長い高分子鎖を有するので、平板状磁性体粒子と混合すると、得られた混合物は、エポキシ樹脂の官能基が平板状磁性体粒子の表面に吸着し、高分子鎖が磁性体粒子の周囲を取り囲み、長く絡み合った状態となる。このような高分子鎖が長く絡み合った状態の混合物は、高分子鎖が立体障害となって平板状磁性体粒子の配向が阻害される虞がある。
そこで、平板状磁性体粒子の流動性を良くするために、混合物中の溶媒の量を増加させてマクロ的に低粘度にしたとしても、やはり高分子鎖の立体障害の影響が大きく、平板状磁性体粒子の配向が阻害されることとなる。
一方、高分子鎖の立体障害の影響を小さくするために高分子鎖を短くすると、高分子鎖同士の縮合あるいは結合反応が不十分となり、その結果、得られた複合磁性体としての機械的強度が低下し、場合によっては形状を維持することができなくなる虞がある。よって、このような機械的強度が低下した複合磁性体は、電子部品や回路基板等に用いることができない。
そこで、高分子鎖の立体障害の影響を小さくするために、平面的で平板状磁性体粒子に絡み難い脂環式の環状構造を主鎖に有する樹脂を用いることで、平板状磁性体粒子の配向が向上することを見出した。
さらに、重合する官能基が末端にのみ存在するのではなく、モノマー単位で重合する官能基を有する樹脂を用いることで、高分子鎖が短い場合であっても多くの結合を形成することにより、得られた複合磁性体の機械的強度が向上し、形状の維持も容易であることを見出した。
一方、平板状磁性体粒子と、この平板状磁性体粒子と絡み難い脂環式の環状構造を主鎖に有する樹脂とのみにより形成された複合磁性体は、樹脂同士の絡み合いが少ないために、可撓性及び伸縮性はほとんど有しない。そのために、この複合磁性体は、基材からの剥離性が悪かったり、あるいは複合磁性体自体が硬すぎて柔軟性を有さず、したがって、生産する際に、工業的によく使用される生産方式であるロール巻き取り式の生産方式が適用できないという問題点があった。
また、平板状磁性体粒子と、この平板状磁性体粒子と絡み難い脂環式の環状構造を主鎖に有する樹脂とのみにより形成された複合磁性体は、ミクロレベルあるいはナノレベルでも可撓性及び伸縮性に劣ることから、脂環式の環状構造を主鎖に有する樹脂は、平板状磁性体粒子同士の隙間に進入することができない場合があり、これが原因で複合磁性体中に気孔が生じる場合がある。さらに、脂環式の環状構造による立体障害を緩和することができないために、樹脂−樹脂間や樹脂−粒子間にも間隙を生じることとなり、よって、得られた複合磁性体は多くの気孔を含むこととなり、これらの気孔により複合磁性体自体の複素透磁率の実部μr’が低下する虞があった。
そこで、平板状磁性体粒子に絡み難い脂環式の環状構造を主鎖に有する樹脂に、可撓性及び伸縮性に優れた樹脂を添加させれば、この樹脂が平板状磁性体粒子同士の隙間に進入することで、複合磁性体の複素透磁率の実部μr’を向上させ、かつ複合磁性体の基材からの剥離性を向上させ、しかも生産性に優れた複合磁性体が得られることを見出した。
さらに、上記樹脂と平板状磁性体粒子を混合させた混合物を成形して磁場を印加させる場合に、成形体の表面に対して磁力線が略平行になるように、磁場を1回もしくは複数回印加させることにより、複合磁性体の複素透磁率の実部μr’が向上することを見出した。
このような知見に基づいて、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明の複合磁性体は、主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂と、この第1の樹脂に可撓性を付与する第2の樹脂と、平板状磁性体粒子と、を含有してなることを特徴とする。
本発明の複合磁性体では、前記第2の樹脂は、ビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格のうち少なくとも1種を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。
前記エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有し、かつエーテル骨格を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。
前記エポキシ樹脂は、プロピレングリコール付加ビスフェノールA型骨格及びエチレングリコール付加ビスフェノールA型骨格のうちいずれか1種を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。
本発明の複合磁性体では、複素透磁率の実部μr’は7以上であることが好ましい。
70MHz以上かつ500MHz以下の周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は7以上であることが好ましい。
本発明のアンテナは、本発明の複合磁性体を備えていることを特徴とする。
本発明の通信装置は、本発明のアンテナを備えていることを特徴とする。
本発明の複合磁性体の製造方法は、主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂と、この第1の樹脂に可撓性を付与する第2の樹脂と、平板状磁性体粒子と、を混合して混合物を得る工程と、前記混合物を所定の形状に成形する成形工程と、得られた成形体に磁場を印加して前記成形体中の前記平板状磁性体粒子を一方向に配向させる配向工程と、配向させた前記成形体を乾燥・硬化させる乾燥・硬化工程と、を有することを特徴とする。
本発明の複合磁性体によれば、主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂と、この第1の樹脂に可撓性を付与する第2の樹脂と、平板状磁性体粒子と、を含有したので、この主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂が、平板状磁性体粒子に対する樹脂による立体障害の影響を小さくすることができる。したがって、平板状磁性体粒子の一方向に対する配向性を向上させることができ、複素透磁率の実部μr’が高い複合磁性体を容易に得ることができる。
そして、第2の樹脂が第1の樹脂に対して可撓性を付与するので、複合磁性体自体の可撓性及び伸縮性を向上させることができ、その結果、生産性に優れた複合磁性体を得ることができる。
本発明のアンテナによれば、複素透磁率の実部μr’が高い複合磁性体を備えたので、アンテナ全体の小型化を図ることができる。
本発明の通信装置によれば、小型化可能な本発明のアンテナを備えているので、通信装置全体の小型化を図ることができる。
本発明の複合磁性体の製造方法によれば、主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂と、この第1の樹脂に可撓性を付与する第2の樹脂と、平板状磁性体粒子と、を混合して混合物を得る工程と、前記混合物を所定の形状に成形する成形工程と、得られた成形体に磁場を印加して前記成形体中の前記平板状磁性体粒子を一方向に配向させる配向工程と、配向させた前記成形体を乾燥・硬化させる乾燥・硬化工程と、を有するので、平板状磁性体粒子の配向が良好であり、かつ複素透磁率の実部μr’が高い複合磁性体を容易に作製することができる。
本発明の配向方法Aを実施するための配向装置を示す概略構成図である。 本発明の配向方法Bを実施するための配向装置を示す概略構成図である。 本発明の配向方法Cを実施するための配向装置を示す概略構成図である。 本発明の配向方法Cを実施するための配向装置の動作を示す模式図である。 本発明の配向方法Dを実施するための配向装置を示す概略構成図である。 本発明の実施例3の複合磁性体の70〜1000MHzの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’及び複素透磁率の損失正接tanδμを示す図である。 密閉容器を用いてスラリー及び分散媒体を攪拌する様子を示す図である。 本発明の一実施形態のアンテナの一例であるモノポールアンテナの給電方法を示す模式図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の他の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機のさらに他の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機のさらなる他の一例を示す斜視図である。
本発明の複合磁性体とそれを備えたアンテナ及び通信装置並びに複合磁性体の製造方法を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[複合磁性体]
本実施形態の複合磁性体は、主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂と、この第1の樹脂に可撓性を付与する第2の樹脂と、平板状磁性体粒子と、を含有している。
この複合磁性体の複素透磁率の実部μr’は7以上が好ましく、より好ましくは10以上である。さらに、70MHzから500MHzまでの周波数帯域におけるμr’は7以上が好ましく、より好ましくは10以上である。
ここで、この複合磁性体の複素透磁率の実部μr’を7以上とした理由は、μr’が大きいほど高周波帯域における波長の短縮率が大きくなり、したがって、この複合磁性体を適用した電子部品や回路基板等のさらなる小型化が可能になるからである。
この複合磁性体の損失正接tanδμは、0.1以下が好ましく、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.04以下である。
さらに、70MHzから220MHzまでの周波数帯域におけるtanδμは、0.1以下が好ましく、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.04以下である。
ここで、損失正接tanδμが0.1を超えた場合には、複合磁性体内にて高周波が複素透磁率の虚数部μr’’に対応する部分だけ吸収されて熱に変わることにより、高周波信号のエネルギーが減衰する上に、S/N比の低下や発熱等の問題が生じ、利得が低くなる場合があるので、好ましくない。
ここで、本実施形態の複合磁性体を構成する第1の樹脂、第2の樹脂及び平板状磁性体粒子について詳細に説明する。
「第1の樹脂」
第1の樹脂は、主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する樹脂である。
この第1の樹脂としては、本実施形態の平板状磁性体粒子と混合・分散した場合に低粘度で流動性のある混合物が得られる樹脂であればよく、特に限定されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂を用いることができる。
このような樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシクロヘキサン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン−アクリル樹脂、エポキシ−アクリル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、多くの溶媒に対して溶解性を有し、かつ粘度を調整し易い点で、熱硬化性樹脂が好ましく、熱硬化性樹脂の中でもエポキシ樹脂やポリシクロオレフィン樹脂が好ましい。
ここで、主鎖に脂環式の環状構造を有する樹脂としては、エポキシ樹脂を例に取り説明すると、主鎖に脂環式の環状構造のみを有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(化学式(1))が好適に用いられる。
Figure 2013253123
また、主鎖に直鎖構造を有する樹脂としては、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の直鎖にC=1〜3の短い直鎖構造を有する構造の樹脂(化学式(2))も用いることができる。
化学式(2)中、XはC=1〜3のアルキル鎖を有する直鎖構造である。
Figure 2013253123
上記構造の樹脂が平板状磁性体粒子に絡み難い樹脂であっても、高分子鎖が長くなると、複合磁性体の複素透磁率の実部μr’が小さくなる場合がある。したがって、上記の化学式(1)及び(2)のnの値は、0、または1〜3の範囲の整数が好ましく、より好ましくは0である。
すなわち、モノマーを単独で用いるか、モノマー及びオリゴマーを適宜組み合わせて用いることが好ましい。
特に、より高いμr’を得たい場合には、化学式(1)のジシクロペンタジエン型樹脂では、n=0の樹脂を用いるのが好ましい。
「第2の樹脂」
第2の樹脂は、主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂に可撓性を付与する樹脂である。
この第2の樹脂としては、第1の樹脂及び平板状磁性体粒子と混合して成形・硬化した場合に、得られた硬化体に可撓性及び伸縮性を付与することのできる樹脂であればよく、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等の可撓性に優れた樹脂が好適である。
また、エポキシ樹脂にウレタン、ポリエチレン、エチレンプロピレン等を用いて変性した変性エポキシ樹脂、あるいは、エポキシ樹脂にプロピレンオキシドを付加したプロピレンオキシド付加エポキシ樹脂を用いることができる。
このような可撓性を付与する樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールB型、ビスフェノールF型等のビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂がより好ましい。
ビスフェノールA型の骨格を有するエポキシ樹脂としては、イソプロピリデンビスフェノール、イソプロピリデンビス(オルソクレゾール)、テトラブロムビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)等が挙げられる。
ビスフェノールB型の骨格を有するエポキシ樹脂としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。
ビスフェノールF型の骨格を有するエポキシ樹脂としては、メチレンビスフェノール、メチレンビス(オルソクレゾール)等が挙げられる。
このビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格のうち少なくとも1種を有するエポキシ樹脂が好ましい。中でも、伸縮性、剪断強度の観点から、ビスフェノールA骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。
また、上記のビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂の中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有し、かつエーテル骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。この1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する構造としては、例えば、ジグリシジルエーテル、ジグリシジルエステル、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
上記のエーテル骨格としては、1つ以上のエーテル部分構造を含む化合物であれば特に限定されない。このようなエーテル骨格としては、例えば、アルキレングリコールが挙げられる。
このアルキレングリコールとしては、アルキレンの炭素の数が2〜6が好ましく、より好ましくは2〜5、さらに好ましくは2〜4である。
このエーテル骨格は、直鎖状であってもよく、分岐鎖を有していてもよいが、エチレングリコールやプロピレングリコールに由来するエーテル骨格が好ましい。
また、ビスフェノールA型の骨格を有し、一分子中に2個以上のエポキシ基を含有し、かつエーテル骨格を有する構造としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格に、プロピレングリコールからなるエーテル骨格を導入し、このビスフェノールA型の骨格の末端にグリシジルエーテルを導入した、プロピレングリコール付加ビスフェノールA型構造(化学式3)が挙げられる。
Figure 2013253123
この化学式(3)では、p+qの値は1〜5であるが、このp+qのより好ましい値は2〜4であり、さらに好ましい値は2〜3である。
また、この構造の他の例としては、ビスフェノールA型の骨格に、プロピレングリコールからなるエーテル骨格の替わりにエチレングリコールからなるエーテル骨格を導入し、このビスフェノールA型の骨格の末端にグリシジルエーテルを導入した、エチレングリコール付加ビスフェノールA型構造(化学式4)も挙げられる。
Figure 2013253123
この化学式(4)では、n+mの値は1〜10であるが、このn+mのより好ましい値は4〜8であり、さらに好ましい値は6である。
ビスフェノールA型骨格を有し、かつ1分子中に2個以上のエポキシ基を含有し、ポリエーテル骨格を有する樹脂としては、ビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、ビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル等が挙げられる。
これら第1の樹脂と第2の樹脂とを組み合わせて用いる場合、第1の樹脂としては、化学式(1)でn=0のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を用いるのが好ましく、第2の樹脂としては、化学式(3)または化学式(4)の可撓性を付与する樹脂を組み合わせて用いることが好ましい。
これら第1の樹脂及び第2の樹脂の混合割合としては、第1の樹脂と第2の樹脂との合計質量に対して、第2の樹脂を5質量%以上かつ30質量%以下含有させることが好ましい。
上記範囲で第2の樹脂を第1の樹脂に混合させることにより、複合磁性体を基材上に成形して製造する際に、この複合磁性体に、基材からの剥離性が良好になる程度に伸縮性及び可撓性を付与することができるので好ましい。
上記の第1の樹脂及び第2の樹脂に、必要に応じて熱可塑性エラストマーを添加してもよい。この熱可塑性エラストマーを添加することにより、複合磁性体の機械的強度及び形状加工性を向上させることができる。したがって、この熱可塑性エラストマーが添加された複合磁性体は、靭性、柔軟性、変形性により優れたものとなる。
この熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマーの群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
この熱可塑性エラストマーの添加量は、複合磁性体の用途により必要とされる耐熱性を勘案して、適宜調整すればよい。
「平板状磁性体粒子」
本実施形態における「平板状」とは、扁平状、鱗片状、フレーク状、薄板状等の厚みが薄い板状のものである。
この平板状磁性体粒子は、平均厚みが0.1μm以上かつ10μm以下、平均長径が0.05μm以上かつ100μm以下、平均アスペクト比(長径/厚み)が2以上が好ましい。
この平板状磁性体粒子を構成する材料としては、磁性を有する材料であればよく、特に限定されないが、例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)等の強磁性金属、モリブデン(Mo)等の常磁性金属のうちいずれか1種からなる金属、または、これらのうち少なくとも1種以上を含む合金を用いることができる。
これらの金属または合金は、反磁性金属である銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)等を含んでいてもよい。
これらの合金としては、二元素系合金、三元素系合金等が挙げられる。
二元素系合金としては、保持力が70エルステッド(Oe)以下の軟磁性を示すパーマロイ(登録商標)等のFe−Ni合金、Fe−Si合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金等が挙げられる。
三元素系合金としては、スーパーマロイ(登録商標)等のFe−Ni−Mo合金、センダスト(登録商標)等のFe−Si−Al合金、Fe−Cr−Si合金等が挙げられる。
これらの合金の中でも、Fe−Ni合金としては、Ni78質量%−Fe22質量%の合金が、平板状磁性体粒子の平均厚みが0.5μm以下、平均長径が20μm以下のものが得られ易く、高透磁率とともに低磁気損失の複合磁性体を得られるので好ましい。
上記の合金に、その合金に含まれない金属元素で、その合金と性質が近い金属(合金に含まれている金属と周期律表で近接している金属)、例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、すず(Sn)等の群から1種または2種以上を適宜選択して添加してもよい。
上記の金属元素を合金に添加する場合には、この金属元素の含有率は、この金属元素と合金との合計質量に対して0.1質量%以上かつ90質量%以下が好ましく、1質量%以上かつ12質量%以下がより好ましく、1質量%以上かつ5質量%以下がさらに好ましい。
ここで、上記の金属元素の含有率を上記の範囲に限定した理由は、金属元素の含有率が0.1質量%未満では、後述する球状の磁性体粒子を扁平状にさせるための十分な塑性変形能を付与することができず、一方、含有率が90質量%を超えると、金属元素自体の磁気モーメントが小さいことから、この平板状磁性体粒子全体の飽和磁化が小さくなり、その結果、得られるμr’も小さくなるからである。
特に、アスペクト比が高くなり、結果として高いμr’の複合磁性体が得られ易い点で、柔らかい金属である、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)の群から選択される1種または2種以上の金属元素を1質量%以上かつ12質量%以下、好ましくは1質量%以上かつ5質量%以下含む鉄−ニッケル合金を用いるのが好ましい。
これらの中でも、ニッケル−鉄−亜鉛(Ni−Fe−Zn)合金は、Fe−Ni合金へのZnの添加により、後述する球状の磁性体粒子の加工性が高くなるために、大きなアスペクト比を有する扁平状の磁性粉体が得られ易いので好ましい。合金の組成比としては、例えば、Ni75質量%−Fe20質量%−Zn5質量%の合金、Ni76質量%−Fe20質量%−Zn4質量%等を好適に用いることができる。
この平板状磁性体粒子は、絶縁性の平板状磁性体粒子であることが好ましい。絶縁性の平板状磁性体粒子を用いることで、複合磁性体中にて平板状磁性体粒子同士が接触することにより導電パスが形成されるのを抑制することができ、その結果、複合磁性体の誘電損失を低減させることができる。この絶縁性の平板状磁性体粒子においては、少なくとも粒子の表面が絶縁性を有していればよい。
平板状磁性体粒子を絶縁性にする方法としては、特に限定されないが、例えば、平板状磁性体粒子の表面に5nm程度の絶縁性の酸化被膜を形成する方法が挙げられる。
通常、平板状磁性体粒子を大気中で取り扱うことにより、この平板状磁性体粒子の表面に自然に酸化被膜が形成されるが、自然に形成される酸化被膜では絶縁性が不十分であり、複合磁性体の誘電損失を低減することが難しい。そこで、複合磁性体の誘電損失を低減させるためには、50℃以上かつ200℃以下の温度にて、1時間〜数時間程度加熱処理することにより、平板状磁性体粒子の表面に5nm程度の絶縁性の酸化被膜を形成することが好ましい。
また、平板状磁性体粒子の表面に、この平板状磁性体粒子と異なる組成の絶縁性被膜を形成してもよい。このような組成としては、例えば、酸化ケイ素、リン酸塩等の無機物質、あるいは、樹脂、界面活性剤等の有機物質等が挙げられる。これらの絶縁性被膜は、酸化被膜(自然酸化や加熱酸化による酸化被膜を含む)を有する平板状磁性体粒子の表面に形成してもよく、酸化被膜を有しない平板状磁性体粒子の表面に形成してもよい。
この平板状磁性体粒子の平均厚みは、複数個の平板状磁性体粒子それぞれの厚み、例えば、100個以上の平板状磁性体粒子、好ましくは500個の平板状磁性体粒子それぞれの厚みを測定し、平均値を算出することで求めることができる。
このようにして得られる平均厚みは0.1μm以上かつ10μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以上かつ1μm以下である。
特に、この平板状磁性体粒子を70MHz以上の高周波帯域にて使用する場合には、平均厚みの好ましい範囲は0.1μm以上かつ0.5μm以下である。
ここで、平板状磁性体粒子の平均厚みが0.1μm未満では、平板状磁性体粒子自体の製造が難しく、複合磁性体を製造する際の取り扱いも難しく、その結果、配向が良好でありかつμr’の高い複合磁性体を得ることが難しくなるので好ましくない。
一方、この平板状磁性体粒子の平均厚みが10μmを超えると、高周波を印加した際に渦電流等が生じ、得られる複合磁性体のμr’が低くなるので、好ましくない。
この平板状磁性体粒子の平均長径(粒子内における最大長さ)は、複数個の平板状磁性体粒子それぞれの長径、例えば、100個以上の平板状磁性体粒子、好ましくは500個の平板状磁性体粒子それぞれの長径を測定し、平均値を算出することで求めることができる。
このようにして得られる平均長径は、0.05μm以上かつ100μm以下が好ましく、特に、この平板状磁性体粒子を70MHz以上の高周波帯域にて使用する場合には、平均長径は0.2μm以上かつ20μm以下がより好ましく、0.3μm以上かつ10μm以下がさらに好ましい。
ここで、平板状磁性体粒子の平均長径が0.05μm未満では、平板状磁性体粒子自体の製造が難しく、複合磁性体を製造する際の取り扱いも難しく、その結果、配向が良好でありかつ複素透磁率の実部μr’が高い複合磁性体を得ることが難しくなるので好ましくない。
一方、この平板状磁性体粒子の平均長径が100μmを超えると、得られる複合磁性体における樹脂中での分散安定性が低下し、所望のμr’が得られなくなるので、好ましくない。
この平板状磁性体粒子の平均アスペクト比(長径/厚み)は、複数個の平板状磁性体粒子それぞれの長径(粒子内における最大長さ)と厚み、例えば、100個以上の平板状磁性体粒子、好ましくは500個の平板状磁性体粒子それぞれの長径と厚みを測定することにより、個々の平板状磁性体粒子それぞれのアスペクト比(長径/厚み)を求め、これらのアスペクト比(長径/厚み)の平均値を算出することで求められる。
このようにして得られる平均アスペクト比(長径/厚み)は、2以上が好ましく、6以上がより好ましい。
ここで、平板状磁性体粒子の平均アスペクト比(長径/厚み)が2未満では、粒子形状による反磁界係数が大きくなり、よって、複合磁性体を作製する際に印加される有効磁場が小さくなることで得られる複合磁性体の複素透磁率の実部μr’が小さくなり、その結果、電子部品や電子機器を小型化させるために十分なμr’を得ることができない。
一方、平均アスペクト比が大きくなると、平板状磁性体粒子自体の機械的強度が低下する虞がある。そこで、平板状磁性体粒子が所望の機械的強度を確保するためには、平均アスペクト比は15以下が好ましく、実用的には20程度が上限となる。
さらに、平均アスペクト比が20を超えると、平板状磁性体粒子の形状が扁平すぎることで、磁性体粒子同士の間が狭くなり、この間に絶縁性材料が進入し難い空間が形成され易くなり、その結果、複合磁性体中に気泡が生じ易くなり、この気泡の存在によりμr’が低下するので好ましくない。
したがって、平均アスペクト比は2以上かつ20以下であることが好ましく、6以上かつ15以下であることがより好ましい。
この平板状磁性体粒子を作製する方法としては、例えば、液相還元法、アトマイズ法等で合成した球状磁性体粒子を溶媒中にて扁平化処理することにより得ることができる。ここで、扁平化処理とは、球状の磁性体粒子に機械的なせん断エネルギーを加えることにより、粒子を塑性変形させるともに、塑性変形した粒子同士を凝着させて、平板状磁性体粒子を得る処理方法である。
扁平化(平板化)処理装置としては、ビーズミル、ニーダ、ロールミル、遊星ボールミル、ジェットミル等が挙げられる。また、これらの装置で用いるボール等の分散媒体(メディア)としては、球状磁性体粒子を汚染せず、かつ剪断エネルギーを効果的に加えることができるものであればよく、アルミニウム、スチール、ステンレス鋼等の金属、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物、二酸化ケイ素等の無機酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、炭化ケイ素等の炭化物、ソーダガラス、鉛ガラス、高比重ガラス等の各種ガラスが挙げられる。
上記の球状の磁性体粒子の平均一次粒子径は、所望の形状が得られる大きさであれば特に限定されないが、液相還元法により作製した平均一次粒子径が10nm以上かつ3μm以下の球状の磁性体粒子を用いるのが好ましい。
この球状の磁性体粒子の平均一次粒子径を上記範囲とすれば、球状の磁性体粒子の表面が高活性となり、粒子同士の親和性も高くなり、粒子同士の凝着を促進することができるので、好ましい。
この平板状磁性体粒子を作製する好ましい方法としては、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性体粒子を界面活性剤を含む溶液中に分散したスラリーと、分散媒体とを、密閉可能な容器内に、前記スラリー及び前記分散媒体の合計の体積量が、前記密閉容器内の体積と同じくなるように充填し、このスラリーを分散媒体と共に密閉状態にて撹拌し、この球状の磁性体粒子同士を変形及び融着させて、複数個の球状の磁性体粒子から1個の平板状磁性体粒子を得る方法がある。
この方法により、アスペクト比が2以上かつ20以下で、厚みや長径等の形状が略均一の平板状磁性体粒子を容易に作製することができる。
以下、この平板状磁性体粒子の製造方法について、図7に基づき詳細に説明する。
まず、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性体粒子62を界面活性剤を含む溶液中に分散してスラリー63とする。磁性体粒子62の組成は、上記の平板状磁性体粒子の組成と全く同様である。
界面活性剤としては、磁性体粒子62の表面と相性の良い窒素、リン、イオウ等の元素を含有している界面活性剤が好ましく、例えば、窒素含有ブロックコポリマー、燐酸塩、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
この界面活性剤を溶解させる溶媒としては、特に限定されないが、磁性体粒子に含まれる金属元素の酸化を防止する必要がある点を考慮すると、有機溶媒が好ましく、特に、キシレン、トルエン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の非極性有機溶媒が好ましい。
次いで、スラリー63及び分散媒体64を、密閉可能な容器61内に、スラリー63及び分散媒体64の合計の体積が密閉容器61内の体積と同じくなるように充填し、スラリー63を分散媒体64と共に密閉状態にて撹拌し、球状の磁性体粒子62同士を融着させながら扁平状に変形させて平板状磁性体粒子とする。
ここでは、スラリー63及び分散媒体64の密閉容器61内への充填量を、密閉容器61内の体積と同一とする。換言すれば、スラリー63及び分散媒体64を、密閉容器内61内に隙間なく充填する。
ここで、密閉容器61内に隙間があるようにスラリー63及び分散媒体64を加えた場合には、一軸回転体65が回転した際に、遠心力によりスラリー63及び分散媒体64の液面は、中心軸近傍が低く、周縁部が高いすり鉢状となる。
1軸回転体65により球状の磁性体粒子62を含むスラリー63及び分散媒体64に加えられた機械的応力は、すり鉢状の空間に逃げていくので、密閉容器61内全体で分散媒体64を介して球状の磁性体粒子62に伝搬される機械的応力は不均一なものとなり、得られる平板状磁性体粒子の厚みがばらつく要因となる。このような平板状磁性体粒子の厚みのばらつきや割れや欠けは、磁気損失が増加する要因となる。
また、すり鉢状の空間の底部近傍(中心軸近傍)で平板状となった磁性体粒子は、分散媒体64と共にすり鉢状の空間に放出されて不規則な衝撃を受けることとなり、割れや欠け等が生じる場合がある。
そこで、図7に示すように、密閉容器61内が球状の磁性体粒子62を含むスラリー63及び分散媒体64により満たされた状態で機械的応力を加えることにより、1軸回転体65が高速で回転したとしても、すり鉢状の空間が生じる虞は無い。したがって、1軸回転体65により球状の磁性体粒子62を含むスラリー63及び分散媒体64に加えられた機械的応力は、密閉容器61内全体で分散媒体64を介して球状の磁性体粒子62に均一に伝搬され、得られた平板状磁性体粒子の厚みがばらつく虞は無い。また、平板状磁性体粒子は、機械的応力を加えられる際に、不規則な衝撃を受けることもないので、割れや欠け等がほとんど生じない。
なお、密閉容器61に、スラリー63を密閉容器61内に導入・導出するための流入口及び流出口を設け、スラリー63を密閉容器61内に循環するようにしてもかまわない。この場合、予め分散媒体64を密閉容器61内に収納しておき、球状の磁性体粒子62と界面活性剤と溶媒とを混合したスラリー63を流入口から投入して密閉容器61内に空間がないように充填し、流出口から排出されるスラリー63を再度密閉容器61内へ戻すようにすればよい。
分散媒体64としては、球状の磁性体粒子62よりも硬度が高いことが必要であり、例えば、アルミニウム、鋼(スチール)、ステンレススチール、鉛等の金属球、アルミナ、ジルコニア、二酸化ケイ素、チタニア等の金属酸化物あるいは無機酸化物からなる球状焼結体、窒化ケイ素等の無機窒化物からなる球状焼結体、炭化ケイ素等の無機炭化物からなる球状焼結体、ソーダガラス、鉛ガラス、高比重ガラス等からなるビーズと称される球状粒子が挙げられ、中でも、比重6以上のジルコニア、鋼(スチール)、ステンレススチール等が効率の点から好ましい。
球状の磁性体粒子62への機械的応力の付加は、分散媒体64同士の衝突の際、または分散媒体64と密閉容器61の内壁との衝突の際に、磁性体粒子62がこれらの間に挟まれることで与えられる衝撃によって行われる。この場合、分散媒体64同士または分散媒体64と密閉容器61の内壁との衝突回数が増加するにつれて、球状の磁性体粒子62同士の融着性及び変形性が向上する。
ここでは、分散媒体64の平均粒径が小さいほど、単位体積当たりに存在する分散媒体64の個数が増加し、衝突回数も多くなる。したがって、磁性体粒子62の融着性及び変形性も向上する。一方、分散媒体64の平均粒径が小さすぎると、分散媒体64をスラリー63から分離することが困難となる。したがって、分散媒体64の平均粒径は、少なくとも0.03mm以上、好ましくは0.04mm以上であることが必要である。
また、分散媒体64の平均粒径が大き過ぎると、衝突回数が減少することにより、球状の磁性体粒子62同士の変形及び融着性が低下する。したがって、分散媒体の平均粒径の上限値は3.0mmである。
密閉容器61としては、ディスク、スクリュー、羽根、ピン等の1軸回転体65を高速回転することで、分散媒体64をスラリー63とともに高速回転できる構成を有するものが好ましい。
密閉容器61は、単純な1軸回転方式であることから、大型化も容易であり、工業生産上も有利である。
この一軸回転体65の回転数は、密閉容器61の大きさにより決定される。例えば、内径が120mmの密閉容器61の場合、球状の磁性体粒子62を含むスラリー63及び分散媒体64の一軸回転体65の径方向の外周端65a付近の流速が5m/秒以上となるように一軸回転体65の回転数を設定することが好ましく、さらには、外周端65a付近の流速が8m/秒以上となるように一軸回転体65の回転数を設定することがより好ましい。
一方、外周端5a付近の流速が15m/sを超えると、エネルギーが大きすぎるために平板状になった粒子を破壊してしまう虞があるので、外周端5a付近の流速は15m/s以下であることが好ましい。
なお、密閉容器61の内容積が小さいと、得られた平板状磁性体粒子に球状の磁性体粒子62が残留する虞がある。残留した球状の磁性体粒子62は、球状の磁性体粒子62同士の接触、または球状の磁性体粒子62と平板状磁性体粒子との接触により、磁気損失を増加させたり、平板状磁性体粒子の配向を阻害したりする虞がある。したがって、平板状磁性体粒子は、磁性体粒子全体量の90質量%以上が好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、球状の磁性体粒子62を実質的に含まないことが望ましい。
ここで、密閉容器61の内容積が小さい場合に球状の磁性体粒子62が残留する理由は、密閉容器61の角や一軸回転体65と密閉容器61との接合部といった機械的応力が十分に伝わらないデッドスペースが相対的に大きくなるからと考えられる。そこで、密閉容器61の内容積を大きくすると、相対的にデッドスペースが小さくなり、よって、球状の磁性体粒子62に機械的応力が十分に伝わり、球状の磁性体粒子62同士の融着性及び変形性が向上し、その結果、球状の磁性体粒子62の残留が少なくなり、実質的に球状の磁性体粒子62がなくなることとなる。
このように、実質的に球状の磁性体粒子62が残留しなくなる密閉容器61の体積は、1L以上が好ましく、より好ましくは5L以上である。
以上により、球状の磁性体粒子62同士は、一軸回転体65により加えられた機械的応力により融着しながら変形し、平板状磁性体粒子となる。
次いで、この平板状磁性体粒子を分散媒体64及び溶媒から分離する。
分離方法は、平板状磁性体粒子を作製した後のスラリーから溶媒を除去することができれば特に限定されず、加熱乾燥、真空乾燥、フリーズドライ等が挙げられるが、乾燥効率の点で真空乾燥が好ましい。また、乾燥効率を高めるために、乾燥工程の前に、固液分離等の手法によりある程度の溶媒を除去してもよい。固液分離の方法としては、フィルタープレスや吸引ろ過等のろ過操作や、デカンターや遠心分離機による遠心分離操作等、通常の方法を用いればよい。
また、溶媒が除去された平板状磁性体粒子を、50℃以上かつ200℃以下にて、1時間以上かつ数時間以下、加熱処理してもよい。この加熱処理により、平板状磁性体粒子の表面に酸化被膜を形成することができ、絶縁性の平板状磁性体粒子を得ることができる。
ここでは、特に、高周波帯域にて使用する場合を考慮して、上記の平板状磁性体粒子を用いているが、厚み、長径及びアスペクト比が上記範囲内にある板状、棒状、扁平状、鱗片状、フレーク状等の各種形状の磁性体粒子を用いることもできる。
この複合磁性体全体量における平板状磁性体粒子の含有率は、10質量%以上かつ70質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以上かつ60質量%以下である。
ここで、平板状磁性体粒子の含有率が10質量%未満であると、平板状磁性体粒子の割合が少なすぎるために、得られる複合磁性体のμr’が低くなり過ぎてしまい、その結果、所望のμr’を確保することができなくなる虞があるので、好ましくない。
一方、平板状磁性体粒子の含有率が70質量%を超えると、平板状磁性体粒子の割合が多すぎるために、相対的に樹脂の量が少な過ぎて、平板状磁性体粒子と樹脂とを混合した場合に、低粘度で流動性のあるスラリーが得られず、後工程での平板状磁性体粒子の配向が不十分なものとなるので、好ましくない。
また、この複合磁性体中には、球状の磁性体粒子が含まれていないことが好ましい。
この複合磁性体のμr’は、100MHz以上の高周波帯域にて使用する場合には、7以上が好ましく、10以上がより好ましい。
ここで、μr’を7以上とした理由は、μr’が大きいほど高周波帯域における波長の短縮率が大きくなり、したがって、この複合磁性体を適用した電子部品や回路基板のさらなる小型化が可能になるからである。
なお、上記のμr’はマテリアルアナライザーにて測定した値であるが、測定装置としては、上記のμr’がマテリアルアナライザーと同様の精度で測定することのできる装置であればよく、マテリアルアナライザーに限定されない。
[複合磁性体の製造方法]
次に、本実施形態の複合磁性体の製造方法について説明する。
この複合磁性体の製造方法は、主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂と、この第1の樹脂に可撓性を付与する第2の樹脂と、平板状磁性体粒子と、を混合して混合物を得る工程と、この混合物を所定の形状に成形する成形工程と、得られた成形体に磁場を印加して成形体中の平板状磁性体粒子を一方向に配向させる配向工程と、配向させた成形体を乾燥・硬化させる乾燥・硬化工程と、を有する。
「混合工程」
この工程では、主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂と、この第1の樹脂に可撓性を付与する第2の樹脂と、平板状磁性体粒子と、必要に応じて硬化剤や溶媒を混合して混合物を得る工程である。
これら第1の樹脂、第2の樹脂及び平板状磁性体粒子それぞれの組成、形状、特性、製造方法等については、既に説明しているので、説明を省略する。
なお、第1の樹脂及び第2の樹脂は、公知の方法で合成してもよく、市販品を用いてもよい。
また、第2の樹脂の市販品としては、商品名「アデカレジンEP−4000」(アデカ社製 (上記の化学式(3)でp+q=2のもの))、商品名「リカレジンBPO−20E」(新日本理化社製 (上記の化学式(3)でp+q=2のもの)、商品名「リカレジンBEO−60E」(新日本理化社製(上記の化学式(4)でn+m=6のもの))等が好ましい。
上記の第1の樹脂及び第2の樹脂を用いる場合の硬化剤の種類や添加量については、使用する樹脂の種類や量に応じて適宜調整すればよい。
上記の樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、エポキシ基同士の縮合反応を促進させて、複合磁性体の成形体における機械的強度を向上させる点で第3アミンが好ましい。
第3アミンとしては、例えば、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
硬化剤の添加量としては、官能基の縮合反応を促進させる点を考慮すると、樹脂の全体の質量に対して0.5質量%以上かつ3質量%以下、添加させればよい。
また、上記の硬化剤として、平板状磁性体粒子に対する立体障害の影響を小さくして複合磁性体のμr’を向上させるという点では、上記の樹脂と同様、主鎖に脂環式の環状構造を有する硬化剤が好ましい。
この環状構造を有する硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック型硬化剤、ザイロック型硬化剤、ジシクロペンタジエン型硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は、第3アミン等と比べると樹脂を重合させる駆動力が弱いので、樹脂と同量程度添加することが好ましい。
溶媒としては、上記の樹脂を溶解させることができるものであればよく、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられる。
これらの溶媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
特に、シクロヘキサノンやキシレン等の沸点の高い溶媒は、溶媒の揮発によるスラリーの増粘を抑制することができるので好ましい。
この混合物中の平板状磁性体粒子の含有率は、混合物中の揮発成分以外が硬化して固体状になった場合の第1の樹脂の体積V1と第2の樹脂の体積V2と硬化剤の体積V3との和(V1+V2+V3)に対して、10体積%以上かつ60体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以上かつ50体積%以下である。
ここで、平板状磁性体粒子の含有率が10体積%未満では、平板状磁性体粒子が少なすぎて複合磁性体としての磁気特性が低下してしまうので好ましくなく、一方、この平板状磁性体粒子の含有率が60体積%を超えると、平板状磁性体粒子が多すぎてしまい、この平板状磁性体粒子と樹脂と硬化剤と溶媒とを含む混合物の流動性が低下し、したがって、この混合物により成形体を形成したときに平板状磁性体粒子の配向が起こり難くなり、その結果、複合磁性体中における平板状磁性体粒子の配向性が低下してしまうので、好ましくない。
これら平板状磁性体粒子、第1の樹脂、第2の樹脂、硬化剤及び溶媒を混合し、混合物を得る。この場合、溶媒の添加量を適宜調整することにより、混合物の粘度を調整することができる。
混合装置としては、これら平板状磁性体粒子、樹脂、硬化剤及び溶媒を均一に混合してスラリー状の混合物とすることができればよく、特に限定されないが、例えば、ロールミル、自公転式ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、撹拌機等が挙げられる。
得られた混合物の粘度は0.1Pa・s以上かつ10Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは0.3Pa・s以上かつ10Pa・s以下である。
ここで、粘度が0.1Pa・s未満の場合には、流動性が大きくなりすぎて乾燥工程での生産性が悪くなるので好ましくなく、一方、粘度が10Pa・sを超えると、粘性が高すぎて平板状磁性体粒子の配向が起こり難くなり、その結果、複合磁性体中における平板状磁性体粒子の配向性が低下してしまうので、好ましくない。
このように、この混合物中の平板状磁性体粒子の含有率を10体積%以上かつ50体積%以下、かつ、この混合物の粘度を0.1Pa・s以上かつ10Pa・s以下とすることにより、μr’と成形体の機械的強度のバランスがとれた複合磁性体を得ることができる。
「成形工程」
上記の工程で得られた混合物を所定の形状に成形する工程である。
成形法としては、混合物を一定の形状に成形することができ、かつ成形後に磁場を印加する際に一定の形状を保持することができればよく、特に制限されない。
また、成形体の形状や大きさも特に制限はされず、例えば、シート状またはフィルム状に成形してもよく、直方体状等の厚みがある形状、例えばバルク状に成形してもよい。
シート状またはフィルム状に成形する場合、シート状またはフィルム状の基体上に上記の混合物を塗布することで容易に得ることができる。この方法は、量産性に優れているので好ましい。
シート状またはフィルム状に成形する場合、例えば、混合物の粘度が10Pa・s以下の場合には、ドクターブレード法、バーコート法等を用いることができる。また、混合物の粘度が10Pa・sを超える場合には、ダイコート法等を用いることができる。また、厚みがある形状に成形する場合、例えば、任意の形状の型に混合物を流し込む方法等が挙げられる。
混合物が、シート状、フィルム状あるいは直方体状等に成形されただけの状態では、平板状磁性体粒子はそれぞれがランダムな方向を向いて、配向が十分ではない場合がある。
そこで、このシート状、フィルム状あるいは直方体状等に成形された成形体に磁場を印加し、この成形体中の平板状磁性体粒子を一方向に配向させる。
「配向工程」
上記の成形体に磁場を印加して成形体中の平板状磁性体粒子を一方向に配向させる工程である。
成形体中の平板状磁性体粒子を配向させる方法としては、成形体中の平板状磁性体粒子を一方向に配向させることができるように磁場を印加すればよく、特に限定されないが、成形体中で磁力線が曲がると、平板状磁性体粒子を一方向に配向させることができない。
そこで、磁場は、発生する磁力線が成形体の表面に対して略平行となるように印加させる必要がある。
このような配向方法としては、次に挙げる4つの配向方法がある。
(1)配向方法A
図1は、本発明の複合磁性体の製造方法における配向方法Aを実施するための配向装置を示す概略構成図であり、上記の混合物(図示略)をシート状あるいはフィルム状の基体1の上面に塗布した塗布膜2に磁場を印加して発生する磁力線Hにより塗布膜2中の平板状磁性体粒子を配向させる装置の例である。
この配向装置11は、上記の混合物(図示略)を図中矢印方向に進行gする基体1の上面に塗布して塗布膜2を形成するディスペンサを備えた塗布手段12と、この塗布膜2の幅方向の両側にそれぞれ設けられて塗布膜2にその幅方向に沿って磁場を印加して発生する磁力線Hにより塗布膜2中の平板状磁性体粒子を配向させる一対の磁石13a、13bと、磁力線Hにより平板状磁性体粒子が配向した塗布膜2を乾燥する乾燥手段14とにより構成されている。磁石13a、13bは、対向する極同士が互いに異極となるように配置されている。
この配向装置11では、磁石13aのN極から磁石13bのS極に向かって磁場が発生するので、磁石13a、13b間を通過する塗布膜2には、磁石13aのN極から磁石13bのS極に向かう方向に対して平行な磁力線Hが発生することとなる。この磁力線Hにより、塗布膜2中の平板状磁性体粒子は、磁力線Hに平行に配向することとなる。
以上により、塗布膜2中の平板状磁性体粒子を、磁力線Hに平行に配向させることができる。
(2)配向方法B
図2は、本発明の複合磁性体の製造方法における配向方法Bを実施するための配向装置を示す概略構成図であり、この配向装置21が、図1の配向装置11と異なる点は、塗布膜2の上側及び下側それぞれに設けられた一対の磁石22a、22bの対向する極同士が互いに同極となるように配置した点である。
この配向装置21では、一対の磁石22a、22bにより塗布膜2に磁場を印加すると、一方の磁石22aから発生した磁力線と他方の磁石22bから発生した磁力線とは、塗布膜2の位置で互いに反発し合うために、この塗布膜2の表面に対して平行な磁場を印加させる磁力線H1、H2が発生することとなる。この磁力線H1、H2により、塗布膜2中の平板状磁性体粒子は、磁力線H1、H2に平行に配向することとなる。
以上により、塗布膜2中の平板状磁性体粒子を、磁力線H1、H2に平行に配向させることができる。
(3)配向方法C
図3は、本発明の複合磁性体の製造方法における配向方法Cを実施するための配向装置を示す概略構成図であり、この配向装置31が、図2の配向装置21と異なる点は、塗布膜2の上側及び下側それぞれに設けられた各一対の磁石32a、32b、磁石33a、33b及び磁石34a、34bのそれぞれの対向する極同士が互いに同極となるように、一定の間隔、例えば隣接する磁石同士の磁力線が互いに打ち消し合わないような間隔をおいて配置した点である。
例えば、図2に示す配向装置21では、磁石22a、22b各々のN極から発生した磁力線H1、H2がS極に戻るために、磁石22a、22bの水平方向の両端付近では、磁力線が塗布膜2の表面に対して垂直となり、塗布膜2に対して平行方向でない磁力線も発生することとなり、その結果、平板状磁性体粒子の配向性が低下する場合がある。
一方、図3に示す配向装置31では、図4に示すように、塗布膜2が一対の磁石32a、32b間を通過前では、塗布膜2中の平板状磁性体粒子41は、配向方向が無秩序な状態であるが、磁石32a、32b間を通過することで、この塗布膜2の表面に対して平行に発生した磁力線H1、H2により、塗布膜2中の平板状磁性体粒子41は、磁力線H1、H2に沿って配向した平板状磁性体粒子41となる。
しかしながら、最初の磁石32a、32b間を通過しただけでは、平板状磁性体粒子41の配向が不十分な場合がある。そこで、磁石33a、33b間を通過させることにより、平板状磁性体粒子41の不十分な配向を修正し、配向性を向上させる。最後の磁石34a、34b間を通過させた後には、平板状磁性体粒子41の不十分な配向は修正されて配向性の高いものとなる。
このように、塗布膜2に磁場を複数回印加することで、塗布膜2中の平板状磁性体粒子41の配向性を向上させることができる。
(4)配向方法D
図5は、本発明の複合磁性体の製造方法における配向方法Dを実施するための配向装置を示す概略構成図であり、この配向装置51が、図2の配向装置21と異なる点は、磁力線H1、H2が塗布膜2中の平板状磁性体粒子41に対して平行な位置に、塗布膜2を予備乾燥するための乾燥手段52を設けた点である。
乾燥手段52としては、塗布膜2を固化することのできる程度の乾燥機能を備えていれば特に限定されず、例えば、温風供給源に接続した温風吹き出しノズル等が挙げられる。
この配向装置51では、一対の磁石22a、22bにより塗布膜2に磁場を印加すると、この塗布膜2の表面に対して平行な磁場を印加させる磁力線H1、H2が発生し、この磁力線H1、H2により、塗布膜2中の平板状磁性体粒子は、磁力線H1、H2に平行に配向する。この際、乾燥手段52により塗布膜2を予備乾燥すれば、塗布膜2が固化することで磁力線H1、H2に平行に配向している平板状磁性体粒子の配向状態を固定することができる。
以上により、塗布膜2中の平板状磁性体粒子を、磁力線H1、H2に平行に配向させることができる。
以上のように、配向方法A〜Dのうち1種のみを単独で行うか、もしくは2種以上を組み合わせて行うことにより、塗布膜2中の平板状磁性体粒子の配向性を向上させることができる。
塗布膜2を所定形状の成形体に替えた場合においても、配向方法A〜Dのうち1種以上を適宜適用することにより、成形体中の平板状磁性体粒子の配向性を向上させることができる。
上記の磁石13a、13b、…としては、電磁石、永久磁石等が挙げられる。磁石の配置や対の数は特に限定されず、塗布膜や成形体の形状や求められる磁気特性に合わせて適宜調整すればよい。
印加する磁場の大きさは、図1に示す配向装置のような異極を互いに対向させた場合には、100ガウス以上かつ1000ガウス以下であることが好ましい。磁場の大きさが100ガウス未満であると、磁場が小さすぎてしまい、成形体中の平板状磁性体粒子を十分に配向させることができない場合がある。一方、1000ガウスを超えると、磁場が大きすぎて、平板状磁性体粒子と樹脂が分離してしまう虞があり、その結果、得られた複合磁性体の磁気特性に不均一が生じる。
また、図2に示す配向装置のような同極を互いに対向させた場合には、平板状磁性体粒子と樹脂の分離は起こり難くなるので、100ガウス以上3000ガウス以下であることが好ましい。
「乾燥・硬化工程」
上記の配向工程で平板状磁性体粒子を配向させた成形体を、乾燥・硬化させ、複合磁性体とする工程である。
ここでは、平板状磁性体粒子が配向した成形体を乾燥させ、次いで、加熱あるいは紫外線照射等により樹脂を硬化させる。乾燥・硬化条件(処理温度、処理時間等)は、使用する樹脂や溶媒の種類に応じて適宜調整すればよい。
「プレス工程」
上記の乾燥工程で得られた成形体の気孔率をさらに減少させたい場合には、上記の乾燥工程後に、成形体をプレスする工程を施すことが好ましい。プレス装置は公知のものを適宜用いればよい。
プレス装置で成形体に圧力を加える際には、効果的に気孔を減少させるために、樹脂の軟化温度以上かつ硬化開始温度以下で圧力を加えることが好ましい。
プレス時の圧力は適宜調整すればよいが、5MPa〜20MPa程度の圧力を加えるのが好ましい。
以上により、本実施形態の複合磁性体を得ることができる。
[アンテナ]
本実施形態のアンテナは、本実施形態の複合磁性体を備えたものである。
この複合磁性体を備えたアンテナの一形態として、本実施形態の複合磁性体を装荷したアンテナがある。
アンテナに本実施形態の複合磁性体を装荷させる方法としては、特に制限されず、アンテナを構成する導体に本実施形態の複合磁性体を被覆させる等、公知の方法で装荷させればよい。
ここで、「装荷」とは、電磁的な相互作用により波長短縮等の効果が得られるようにするために、アンテナ導体に複合磁性体を接触あるいは近づけることである。
アンテナの形状は特に制限されず、モノポールアンテナ、ループアンテナ、ヘリカルアンテナ、パッチアンテナ、F型アンテナ、L型アンテナ等が好適に用いられる。また、アンテナをより小型化させるために、整合回路を併用してもよい。
図8は、本実施形態のアンテナの一例であるモノポールアンテナの給電方法を示す模式図であり、このモノポールアンテナ71は、棒状のアンテナ導体72と、このアンテナ導体72を埋め込むことによりその表面を被覆した板状の複合磁性体73とを備えている。
このモノポールアンテナ71は、所定形状の導体からなる地板74に同軸コネクタ等を介して接続され、この同軸コネクタ等の内導体である接続部75を給電点とするように交流信号発信機76が接続されている。
その他の種類及び形状のアンテナにおける給電方法も上記と同様、アンテナは地板74にコネクタ等を介して接続され、この接続部75を給電点とするように交流信号発信機76が接続される。
[通信装置]
本実施形態の通信装置は、上記のアンテナを備えている。
この通信装置としては、電磁波を介して各種情報の送信、受信、送受信のいずれかを行う装置であればよく、特に限定されない。例えば、パーソナルコンピューター、携帯用電話機、携帯情報端末、スマートフォン等の多機能携帯用情報端末、PDA(Personal Digital Assistant)等の通信機器、オーディオ機器、ビデオ機器、カメラ機器等の各種電子機器等が挙げられる。
これらの通信装置においては、上記のアンテナは、通信装置の外部に設けられていてもよく、また、内蔵されていてもよく、いずれでもよい。
ここで、通信装置として携帯用電話機を例に取り、上記のアンテナの様々な取り付け方について説明する。
図9は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の一例を示す斜視図であり、この携帯用電話機81は、筐体82の前面に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部83が設けられ、この表示部83の裏面側には地板(図示略)が設けられ、この地板にコネクタ等を介して棒状のモノポールアンテナ84内に配設されたアンテナ導体85が接続され、この接続部を介して携帯用電話機81の電子回路(図示略)が接続されている。このモノポールアンテナ84のアンテナ導体85は、複合磁性体86により被覆されている。
このモノポールアンテナ84は、筐体82から取り出し可能かつ筐体82に収納可能とされており、通信時は、必要に応じて筐体82から引き出して通信を行い、通信しない時には、筐体82に押し込んで収納するようになっている。
このモノポールアンテナ84は、棒状である必要はなく、伸縮自在であってもよい。
このモノポールアンテナ84は、アンテナ利得を向上させることを考慮すると、表示部83等と重ならない位置に設けることが好ましい。なお、表示部83等と重なる位置にモノポールアンテナ84を設ける場合には、このモノポールアンテナ84と表示部83との間隔を空けることが好ましい。
図10は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の他の一例を示す斜視図であり、この携帯用電話機91は、筐体92の前面に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部93が設けられ、側面に外部アンテナ用端子94が設けられ、この外部アンテナ用端子94には、棒状のモノポールアンテナ5の側面に設けられた接続端子96が嵌め込まれており、このモノポールアンテナ95内に配設されたアンテナ導体97が、表示部93の裏面側に設けられた地板(図示略)に接続端子96及び外部アンテナ用端子94を介して接続され、この接続部を介して携帯用電話機91の電子回路(図示略)が接続されている。このモノポールアンテナ95は、アンテナ導体97が複合磁性体98により被覆されている。
この携帯用電話機91では、モノポールアンテナ95の接続端子96を外部アンテナ用端子94に挿入・取り外しすることで、装着及び取り外し可能とされている。
図11は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機のさらに他の一例の一部を示す部分斜視図であり、この携帯用電話機101は、筐体102の前面の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部(図示略)の背面側に地板103が設けられ、この地板103と重ならない位置(図11では、地板103の上方)にL字アンテナ104が設けられ、このL字アンテナ104内に配設された銅線等の導体からなるアンテナ導体105が地板103にコネクタ等を介して接続され、この接続部を介して携帯用電話機101の電子回路(図示略)が接続されている。このL字アンテナ104は、アンテナ導体105が複合磁性体106により被覆されている。
図12は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機のさらに他の一例の一部を示す部分斜視図であり、この携帯用電話機111は、筐体112の前面の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部(図示略)の背面側に地板113が設けられ、この地板113と重ならない位置(図12では、地板113の上方)にヘリカルアンテナ114が設けられ、このヘリカルアンテナ114のうち棒状の複合磁性体115に巻回された螺旋状のアンテナ導体116が地板113にコネクタ等を介して接続され、この接続部を介して携帯用電話機111の電子回路(図示略)が接続されている。
上記の各例によれば、搭載しているモノポールアンテナ84、95、L字アンテナ104またはヘリカルアンテナ114が共に小型であるから、アンテナを携帯用電話機内の狭い空間に配置させることができ、アンテナ以外の部品により電磁波が遮断されることなく、アンテナ利得の高い携帯用電話機を得ることができる。
以上説明したように、本実施形態の複合磁性体によれば、主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂と、この第1の樹脂に可撓性を付与する第2の樹脂と、平板状磁性体粒子と、を含有したので、平板状磁性体粒子に対する樹脂による立体障害の影響を小さくすることができ、平板状磁性体粒子の一方向に対する配向性を向上させることができ、μr’を高くすることができる。
また、第2の樹脂が第1の樹脂に対して可撓性を付与するので、複合磁性体自体の可撓性及び伸縮性を向上させることができる。
したがって、μr’が高くかつ機械的強度に優れ、ロールに巻き取ることができる程度に柔らかく、生産性に優れた複合磁性体を提供することができる。
しかも、モノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂を用いているので、樹脂の結合が強固なものとなり、電子部品等に用いるのに十分な成形体としての機械的強度を有することができる。
さらに、ミクロレベルあるいはナノレベルの大きさでも可撓性及び伸縮性を有するので、平板状磁性体粒子同士の隙間に樹脂が進入し易くなり、μr’を低下させる原因となる複合磁性体中の気孔を減少させることができる。
また、第1の樹脂と第2の樹脂とを併用することにより、第1の樹脂による立体障害を緩和させることができ、したがって、樹脂−樹脂間や樹脂−平板状磁性体粒子間に生じる気孔も減少させることができる。
以上により、高いμr’を有する複合磁性体を提供することができる。
本実施形態のアンテナによれば、本実施形態の複合磁性体を備えたので、アンテナを小型化させることができる。また、本実施形態のアンテナを70MHz以上かつ500MHz以下の周波数帯域にて用いた場合には、損失正接tanδμが低くなるので、利得が高いアンテナを得ることができる。さらに、(μr’/εr’)1/2が1に近いために、特性インピーダンスが自由空間の値に近くなり、したがって、インピーダンスマッチングが行い易くなり、利得の高いアンテナを得ることができる。
本実施形態の通信装置によれば、本実施形態のアンテナを備えたので、通信装置全体を小型化することができる。また、電磁波を遮断する他の電子機器の影響を受けにくい場所にアンテナを配置させる自由度が高く、良好な送受信が可能な小型の通信装置を得ることができる。
本実施形態の複合磁性体の製造方法によれば、主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂と、この第1の樹脂に可撓性を付与する第2の樹脂と、平板状磁性体粒子と、を混合して混合物を得る工程と、この混合物を所定の形状に成形する成形工程と、得られた成形体に磁場を印加して成形体中の平板状磁性体粒子を一方向に配向させる配向工程と、配向させた成形体を乾燥・硬化させる乾燥・硬化工程と、を有するので、μr’が高くかつ機械的強度に優れ、柔軟で生産性に優れた複合磁性体を、容易に作製することができる。
さらに、塗布膜2に磁場を1回若しくは複数回印加することで、塗布膜2中の平板状磁性体粒子41の配向性を向上させることができる。よって、μr’が高い複合磁性体を製造することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂 EPICLON HP−7200L(DIC株式会社製)に、ビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテル型液状エポキシ樹脂 リカレジンBPO−20(新日本理化製)を、これらのエポキシ樹脂の全体質量に対して10質量%混合し、エポキシ樹脂混合物を得た。
次いで、このエポキシ樹脂混合物に、硬化剤としてエポキシ樹脂混合物の全体質量に対して1質量%の1−イソブチル−2メチルイミダゾールと、このエポキシ樹脂混合物と硬化剤の全体量に対して40体積%のNi75質量%−Fe20質量%−Zn5質量%の合金からなる平均長径が2.5μm、平均厚みが0.3μm、平均アスペクト比が8.3の平板状磁性体粒子と、このエポキシ樹脂混合物と平板状磁性体粒子の全質量に対して40質量%のシクロヘキサノンを遊星撹拌機に投入し、5分間混合してスラリー状の混合物を得た。
次いで、このスラリー状の混合物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にバーコーターにて縦100mm×横200mm×厚み0.1mmになるように、シート成形を行い、実施例1の成形体シート付きフィルムを得た。
次いで、このシート成形後、この成形体シートに水平方向に900ガウスの磁場を6分間印加した。次いで、80℃の温風を当てて風乾させた後、PETフィルムから成形体シートを剥離させ、さらに、110℃で10MPaのプレス圧力を加えた後、160℃にて2時間硬化反応を行い、実施例1の100mm×200mmのシート形状の複合磁性体を得た。このシート形状の複合磁性体をPETフィルムから剥離させた際に、シート形状の複合磁性体に破損は生じなかった。
次いで、この複合磁性体の電磁気特性及び気孔率を、以下の方法により評価した。
(1)電磁気特性
複合磁性体の200MHzにおける複素透磁率の実部μr’と複素誘電率の実部εr’を、マテリアルアナライザー E4991A型(Agilent Technologies社製)にて、大気中室温(25℃)にて測定した。
(2)気孔率
複合磁性体の寸法と質量を測定し、これらの測定値に基づき実測密度を算出した。
一方、樹脂の理論密度(≒実測密度)は樹脂のみの硬化体の寸法と質量を測定し、これらの測定値から算出した。また、平板状磁性体粒子の理論密度は、平板状磁性体粒子のX線回折パターンから求めたX線理論密度を用いた。
これらの値を下記の式(2)に代入し、複合磁性体の気孔率を算出した。
気孔率=(1−実測密度/理論密度)×100 ……(2)
これらの測定の結果、複合磁性体の200MHzにおける複素透磁率の実部μr’は8.9、複素誘電率の実部εr’は30.4であり、気孔率は19%であった。
[実施例2]
成形体シートに水平方向に900ガウスの磁場を6分間印加する替わりに、図1に示す配向装置11を用いて、この成形体シートを2m/分の速度にて送りつつ1200ガウスの磁場を印加し、さらに、乾燥・硬化工程にて、110℃で10MPaのプレス圧力を加えた後、160℃にて2時間硬化反応を行う替わりに、プレス圧力を加えずに、160℃にて2時間硬化反応を行った以外は、実施例1と同様にして、実施例2の複合磁性体を得た。
ここで、得られたシート形状の複合磁性体をPETフィルムから剥離させた際に、シート形状の複合磁性体に破損は生じなかった。
次いで、この複合磁性体の磁気特性及び気孔率を実施例1と同様にして測定したところ、複合磁性体の200MHzにおける複素透磁率の実部μr’は9.0、複素誘電率の実部εr’は27.1であり、気孔率は19%であった。
[実施例3]
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂 EPICLON HP−7200Lに対して、液状エポキシ樹脂 リカレジンBPO−20を10質量%混合する替わりに、液状エポキシ樹脂 リカレジンBPO−20を20質量%混合した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の複合磁性体を得た。
ここで、得られたシート形状の複合磁性体をPETフィルムから剥離させた際に、シート形状の複合磁性体に破損は生じなかった。
次いで、この複合磁性体の磁気特性及び気孔率を実施例1と同様にして測定したところ、複合磁性体の200MHzにおける複素透磁率の実部μr’は9.3、複素誘電率の実部εr’は31.0であり、気孔率は11%であった。
さらに、この複合磁性体の70〜1000MHzの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’及び複素透磁率の損失正接tanδμを、マテリアルアナライザー E4991A型(Agilent Technologies社製)にて、大気中室温(25℃)にて測定した。これらの測定結果を、図6に示す。
この図6によれば、70〜1000MHzの周波数帯域での複素透磁率の実部μr’は7以上であった。
[実施例4]
ビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテル型液状エポキシ樹脂の替わりに、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂 アデカレジンEP−4010S(アデカ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の複合磁性体を得た。
ここで、得られたシート形状の複合磁性体をPETフィルムから剥離させた際に、シート形状の複合磁性体に破損は生じなかった。
次いで、この複合磁性体の磁気特性及び気孔率を実施例1と同様にして測定したところ、複合磁性体の200MHzにおける複素透磁率の実部μr’は9.3、複素誘電率の実部εr’は29.7であり、気孔率は19%であった。
[実施例5]
ビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテル型液状エポキシ樹脂 リカレジンBPO−20を10質量%混合する替わりに、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂 アデカレジンEP−4010S(アデカ社製)を20質量%混合した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の複合磁性体を得た。
ここで、得られたシート形状の複合磁性体をPETフィルムから剥離させた際に、シート形状の複合磁性体に破損は生じなかった。
次いで、この複合磁性体の磁気特性及び気孔率を実施例1と同様にして測定したところ、複合磁性体の200MHzにおける複素透磁率の実部μr’は9.5、複素誘電率の実部εr’は28.9であり、気孔率は12%であった。
[実施例6]
成形体シートに水平方向に900ガウスの磁場を6分間印加する替わりに、成形体シートを図2に示す配向装置21に2m/分の速度にて送り、この成形体シートに900ガウスの磁場を印加した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の複合磁性体を得た。
ここで、得られたシート形状の複合磁性体をPETフィルムから剥離させた際に、シート形状の複合磁性体に破損は生じなかった。
次いで、この複合磁性体の磁気特性及び気孔率を実施例1と同様にして測定したところ、複合磁性体の200MHzにおける複素透磁率の実部μr’は7.3、複素誘電率の実部εr’は22.8であり、気孔率は19%であった。
[実施例7]
成形体シートに水平方向に900ガウスの磁場を6分間印加する替わりに、成形体シートを図3に示す配向装置31に2m/分の速度にて送り、1対の磁石それぞれにつき300ガウスの磁場を印加した以外は、実施例1と同様にして、実施例7の複合磁性体を得た。
ここで、得られたシート形状の複合磁性体をPETフィルムから剥離させた際に、シート形状の複合磁性体に破損は生じなかった。
次いで、この複合磁性体の磁気特性及び気孔率を実施例1と同様にして測定したところ、複合磁性体の200MHzにおける複素透磁率の実部μr’は9.0、複素誘電率の実部εr’は30.4であり、気孔率は19%であった。
[実施例8]
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂 EPICLON HP−7200Lに対して、液状エポキシ樹脂 リカレジンBPO−20を10質量%混合する替わりに、この液状エポキシ樹脂 リカレジンBPO−20を40質量%混合した以外は、実施例1と同様にして、実施例8の複合磁性体を得た。
ここで、得られたシート形状の複合磁性体をPETフィルムから剥離させた際に、シート形状の複合磁性体に破損は生じなかった。
次いで、この複合磁性体の磁気特性及び気孔率を実施例1と同様にして測定したところ、複合磁性体の200MHzにおける複素透磁率の実部μr’は7.5、複素誘電率の実部εr’は23.9であり、気孔率は9%であった。
[比較例1]
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂 EPICLON HP−7200Lに対して、液状エポキシ樹脂 リカレジンBPO−20を混合しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の複合磁性体を得た。
ここで、得られたシート形状の複合磁性体をPETフィルムから剥離させようとしたところ、きれいに剥離させることができず、破損してしまい、100mm×200mmのシート形状の複合磁性体を得ることができなかった。
そこで、破損した複合磁性体の破片に対して、160℃にて2時間硬化反応を行い、得られた破片状の複合磁性体の磁気特性及び気孔率を実施例1と同様にして測定したところ、複合磁性体の200MHzにおける複素透磁率の実部μr’は7.0、複素誘電率の実部εr’は32.4であり、気孔率は26%であった。
1 基体
2 塗布膜
11 配向装置
12 塗布手段
13a、13b 磁石
14 乾燥手段
21 配向装置
22a、22b 磁石
22 磁石
31 配向装置
32a、32b、33a、33b、34a、34b 磁石
41 平板状磁性体粒子
51 配向装置
52 乾燥手段
H、H1、H2 磁力線
g 進行方向
61 密閉容器
62 磁性体粒子
63 スラリー
64 分散媒体
65 一軸回転体
65a 外周端
71 モノポールアンテナ
72 アンテナ導体
73 複合磁性体
74 地板
75 接続部
76 交流信号発信機
81 携帯用電話機
82 筐体
83 表示部
84 モノポールアンテナ
85 アンテナ導体
86 複合磁性体
91 携帯用電話機
92 筐体
93 表示部
94 外部アンテナ用端子
95 モノポールアンテナ
96 接続端子
97 アンテナ導体
98 複合磁性体
101 携帯用電話機
102 筐体
103 地板
104 L字アンテナ
105 アンテナ導体
106 複合磁性体
111 携帯用電話機
112 筐体
113 地板
114 ヘリカルアンテナ
115 複合磁性体
116 アンテナ導体

Claims (9)

  1. 主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂と、この第1の樹脂に可撓性を付与する第2の樹脂と、平板状磁性体粒子と、を含有してなることを特徴とする複合磁性体。
  2. 前記第2の樹脂は、ビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格のうち少なくとも1種を有するエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1記載の複合磁性体。
  3. 前記エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有し、かつエーテル骨格を有するエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項2記載の複合磁性体。
  4. 前記エポキシ樹脂は、プロピレングリコール付加ビスフェノールA型骨格及びエチレングリコール付加ビスフェノールA型骨格のうちいずれか1種を有するエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項3記載の複合磁性体。
  5. 複素透磁率の実部μr’は7以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の複合磁性体。
  6. 70MHz以上かつ500MHz以下の周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は7以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の複合磁性体。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項記載の複合磁性体を備えていることを特徴とするアンテナ。
  8. 請求項7記載のアンテナを備えていることを特徴とする通信装置。
  9. 請求項1ないし6のいずれか1項記載の複合磁性体を製造する方法であって、
    主鎖に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する第1の樹脂と、この第1の樹脂に可撓性を付与する第2の樹脂と、平板状磁性体粒子と、を混合して混合物を得る工程と、前記混合物を所定の形状に成形する成形工程と、得られた成形体に磁場を印加して前記成形体中の前記平板状磁性体粒子を一方向に配向させる配向工程と、配向させた前記成形体を乾燥・硬化させる乾燥・硬化工程と、を有することを特徴とする複合磁性体の製造方法。
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