JP2014029936A - 複合磁性体の製造方法及び複合磁性体 - Google Patents

複合磁性体の製造方法及び複合磁性体 Download PDF

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Abstract

【課題】磁性を有する平板状粒子を絶縁性の樹脂中の面に良好に配向させることにより、高い複素透磁率の実部μr’を得ることができる複合磁性体の製造方法及び複合磁性体を提供する。
【解決手段】本発明の複合磁性体の製造方法は、平板状磁性体粒子と絶縁性の樹脂とを含有してなる複合磁性体の製造方法であり、平板状磁性体粒子12を流動性を有する絶縁性の樹脂13中に含有させた樹脂組成物11に、磁極が互いに異なる一対の磁石14、15を用いて樹脂組成物11中のx軸方向に磁界を印加させて平行な磁力線Hを貫通させ、次いで、樹脂組成物11中のx軸方向と70°以上かつ110°以下の角度をなす他の一方向に磁界を印加させて平行な磁力線Hを貫通させる工程を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、複合磁性体の製造方法及び複合磁性体に関し、特に詳しくは、高周波回路基板、高周波電子部品、磁性シート、電磁波遮蔽シート、樹脂結合磁石、磁気記録媒体等に好適に用いられ、磁性を有する平板状粒子を絶縁性の樹脂中に良好に配向させることにより、高い複素透磁率の実部μr’を得ることが可能な複合磁性体の製造方法及び複合磁性体に関するものである。
磁性金属粒子は、絶縁性の有機高分子と複合化することにより、複合磁性材料として様々な分野に用いられている。例えば、磁性金属粒子(磁性顔料)を有機バインダーに分散した塗料を塗布した塗膜や、樹脂中に磁性金属粒子を分散させた複合磁性体等が挙げられる。特に、磁性金属粒子を樹脂に分散させた複合磁性体は、高透磁率であることによる波長短縮効果により、アンテナの小型化や電子回路の消費電力の低減が可能であることから、小型のアンテナ基板や高周波電子回路基板等に用いられている。
また、磁性金属粒子の形状については、平板状、フレーク状等の様々な形状の粒子が提案されている(特許文献1、2参照)。
さらに、平板状の磁性体粒子の配向性をよりよくするために、この平板状の磁性体粒子に磁界を印加させて配向させる方法が一般的に用いられている。そして、磁界の印加に用いられる磁界発生源としては、工業的な生産性から、大型の同極磁石を向かい合わせで配置した磁極構造、ソレノイド状の電磁石等が用いられている(特許文献3、4参照)。
特開昭63−35701号公報 特開平1−188606号公報 特開平6−150314号公報 特開平11−147247号公報
しかしながら、従来の大型の同極磁石を向かい合わせで配置した磁極構造やソレノイド状の電磁石では、磁力線がN極からS極へ向かって曲線を描くことから、平行な磁力線を得ることが難しく、したがって、これら大型の同極磁石やソレノイド状電磁石を用いて広い範囲での平行な磁力線を得ることは困難である。
例えば、小型のアンテナ基板や電子回路等の高い周波数で高透磁率が要求される複合磁性体では、粒子配向の乱れやずれなどによる粒子同士の接触により渦電流損失が発生し、この渦電流損失が透磁率を低下させる原因となっていた。
そこで、渦電流損失を発生させないために、2つの磁石の異極同士を対向させて、精度の高い平行な磁力線により複合磁性体中の扁平形状の磁性体粒子を配向させる試みが検討されてきた。しかしながら、扁平形状の磁性体粒子を樹脂中に分散させた樹脂組成物に、平行な磁力線を有する磁界を印加して、この樹脂組成物中の扁平形状の磁性体粒子を配向させる場合、従来の一方向からのみの磁界の印加では、一次元構造の棒状やファイバー状の磁性体粒子はよいが、二次元構造の扁平形状の磁性体粒子では、各磁性体粒子の平面を一方向にそろえて配向することができず、したがって、複合磁性体をアンテナ等に用いた場合に、安定した利得が得られない等、性能が安定しないという問題点があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、磁性を有する平板状粒子を絶縁性の樹脂中の面に良好に配向させることにより、高い複素透磁率の実部μr’を得ることができる複合磁性体の製造方法及び複合磁性体を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、平板状磁性体粒子を流動性を有する絶縁性の樹脂中に含有させた樹脂組成物に、磁極が互いに異なる一対の磁石を用いて前記樹脂組成物中の一方向に磁界を印加させて平行な磁力線を貫通させ、次いで、前記樹脂組成物中の前記一方向と直交する他の一方向に磁界を印加させて平行な磁力線を貫通させれば、樹脂組成物中の平板状磁性体粒子を前記一方向及び前記他の一方向を含む平面に平行に配向させることができる。したがって、平板状磁性体粒子の面方向をそろえて配向させることで、複合磁性体の高い複素透磁率の実部μr’を任意の方向で高い値で略一定とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の複合磁性体の製造方法は、平板状磁性体粒子と絶縁性の樹脂とを含有してなる複合磁性体の製造方法であって、平板状磁性体粒子を流動性を有する絶縁性の樹脂中に含有させた樹脂組成物に、磁極が互いに異なる一対の磁石を用いて前記樹脂組成物中の一方向に磁界を印加させて平行な磁力線を貫通させ、次いで、前記樹脂組成物中の前記一方向と70°以上かつ110°以下の角度をなす他の一方向に磁界を印加させて平行な磁力線を貫通させる工程を有することを特徴とする。
この複合磁性体の製造方法では、前記一方向への磁界の印加と、前記他の一方向への磁界の印加とを繰り返し行うことが好ましい。
前記平板状磁性体粒子は、平均厚みが0.1μm以上かつ10μm以下、平均長径が0.2μm以上かつ100μm以下、平均アスペクト比(長径/厚み)が2以上であることが好ましい。
前記平板状磁性体粒子は、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びモリブデン(Mo)の群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。
前記一方向と前記他の一方向とは直交することが好ましい。
本発明の複合磁性体は、本発明の複合磁性体の製造方法により得られた複合磁性体であって、前記一方向及び前記他の一方向を含む平面に平行な任意の2つの方向の複素透磁率の実部μr’の差は1以下であることを特徴とする。
この複合磁性体では、前記複素透磁率の実部μr’の差は0.5以下であることが好ましい。
本発明の複合磁性体の製造方法によれば、平板状磁性体粒子を流動性を有する絶縁性の樹脂中に含有させた樹脂組成物に、磁極が互いに異なる一対の磁石を用いて樹脂組成物中の一方向に磁界を印加させて平行な磁力線を貫通させ、次いで、樹脂組成物中の前記一方向と70°以上かつ110°以下の角度をなす他の一方向に磁界を印加させて平行な磁力線を貫通させる工程を有するので、樹脂組成物中の平板状磁性体粒子を一方向及び他の一方向を含む平面に平行に配向させることができる。したがって、平板状磁性体粒子の面方向がそろって配向し、よって複素透磁率の実部μr’が任意の方向で高い値で略一定となった複合磁性体を、容易かつ効率的に得ることができる。
本発明の複合磁性体によれば、一方向及び他の一方向を含む平面に平行な任意の2つの方向の複素透磁率の実部μr’の差を1以下としたので、任意の方向で高くかつ略同じ値の複素透磁率の実部μr’を得ることができる。したがって、この複合磁性体をアンテナや電子回路に適用した場合に、安定した性能を得ることができる。
本発明の一実施形態の樹脂組成物を作製する密閉容器を示す模式図である。 本発明の一実施形態の平板状の樹脂組成物に2種類の磁界を順次印加する方法を示す模式図である。 本発明の一実施形態のシート状の樹脂組成物に2種類の磁界を順次印加する装置を示す模式図である。 本発明の一実施形態の複合磁性体の表面の複素透磁率の実部μr’の測定方法を示す模式図である。
本発明の複合磁性体の製造方法及び複合磁性体を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[複合磁性体の製造方法]
本実施形態の複合磁性体の製造方法は、平板状磁性体粒子と絶縁性の樹脂とを含有してなる複合磁性体の製造方法であり、平板状磁性体粒子を流動性を有する絶縁性の樹脂中に含有させた樹脂組成物に、磁極が互いに異なる一対の磁石を用いて樹脂組成物中の一方向に磁界を印加させて平行な磁力線を貫通させ、次いで、この樹脂組成物中の一方向と直交する他の一方向に磁界を印加させて平行な磁力線を貫通させる工程を含む方法である。
次に、この複合磁性体の製造方法について詳細に説明する。
「平板状磁性体粒子」
まず、本実施形態の複合磁性体の製造方法に用いられる平板状磁性体粒子について説明する。
この平板状磁性体粒子は、平均厚みが0.1μm以上かつ10μm以下、平均長径が0.2μm以上かつ100μm以下、平均アスペクト比(長径/厚み)が2以上であることが好ましい。
本実施形態における「平板状」とは、扁平状、鱗片状、フレーク状、薄板状等、厚みが薄い板状のものを全て含む。
ここで、この平板状磁性体粒子を複合磁性体に用いる理由は、長軸方向に優れた複素透磁率の実部μr’(以下、単に「μr’」と略記する場合がある)を示すからである。なお、一次元構造の磁性体粒子では、一方向でしか特性を示さないが、二次元構造の平板状磁性体粒子では、平板の平面上のどの方向にも特性を示すという特徴を有する。
この平板状磁性体粒子の平均厚み及び平均長径は、複数個の平板状磁性体粒子それぞれの厚み及び長径、例えば、100個以上の平板状磁性体粒子、好ましくは500個の平板状磁性体粒子それぞれの厚み及び長径を測定し、厚み及び長径各々の平均値を算出することで求めることができる。
この平板状磁性体粒子の平均厚みは、0.1μm以上かつ10μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以上かつ1μm以下である。
特に、この平板状磁性体粒子を100MHz以上の高周波帯域にて使用する場合には、平均厚みの好ましい範囲は0.1μm以上かつ0.5μm以下である。
ここで、平板状磁性体粒子の平均厚みが0.1μm未満では、平板状磁性体粒子自体の製造が難しく、複合磁性体を製造する際の取り扱いも難しく、その結果、配向が良好でありかつμr’が任意の方向で略一定となる複合磁性体を得ることが難しくなるので好ましくない。一方、この平板状磁性体粒子の平均厚みが10μmを超えると、高周波を印加した際に渦電流等が生じ、得られる複合磁性体のμr’が低くなるので、好ましくない。
この平板状磁性体粒子の平均長径は、0.2μm以上かつ100μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以上かつ10μm以下である。
特に、この平板状磁性体粒子を100MHz以上の高周波帯域にて使用する場合には、平均長径の好ましい範囲は0.2μm以上かつ10μm以下である。
ここで、平板状磁性体粒子の平均長径が0.2μm未満では、平板状磁性体粒子自体の製造が難しく、複合磁性体を製造する際の取り扱いも難しく、その結果、配向が良好でありかつμr’が任意の方向で略一定となる複合磁性体を得ることが難しくなるので好ましくない。
一方、この平板状磁性体粒子の平均長径が100μmを超えると、流動性のある絶縁性の樹脂中での粒子の分散が不安定になり易くなり、さらには、平板状磁性体粒子間の間隙が小さくなり過ぎる等により、平板状磁性体粒子間の間隙に流動性のある絶縁性の樹脂が進入し難くなり、その結果、気孔が生成され易くなり、所望のμr’が得られなくなる虞があるので好ましくない。
この平板状磁性体粒子の平均アスペクト比(長径(粒子内における最大長さ)/厚み)も、上記の平均厚み及び平均長径と同様、複数個の平板状磁性体粒子それぞれの厚みと長径、例えば、100個以上の平板状磁性体粒子、好ましくは500個の平板状磁性体粒子それぞれの厚みと長径を測定することにより、個々の平板状磁性体粒子それぞれのアスペクト比(長径/厚み)を求め、これらのアスペクト比(長径/厚み)の平均値を算出することで求めることができる。
この平板状磁性体粒子の平均アスペクト比(長径/厚み)は、2以上が好ましく、5以上がより好ましい。
ここで、この平板状磁性体粒子の平均アスペクト比(長径/厚み)が2未満では、粒子形状による反磁界係数が大きくなり、よって、複合磁性体を作製する際に印加される磁界が小さくなることで得られる複合磁性体のμr’が小さくなるので好ましくない。
一方、平均アスペクト比が大きくなりすぎると、平板状磁性体粒子自体の機械的強度が低下する虞がある。そこで、平板状磁性体粒子が所望の機械的強度を確保するためには、平均アスペクト比は15以下が好ましく、実用的には20程度が上限となる。
さらに、平均アスペクト比が20を超えると、平板状磁性体粒子の形状が扁平になりすぎることで、平板状磁性体粒子同士の間が狭くなり、この間に流動性のある絶縁性の樹脂が進入し難い空間が形成され易くなり、その結果、複合磁性体中に気泡が生じ易くなり、この気泡の存在により所望のμr’が得られなくなる虞があるので好ましくない。
以上の点を勘案すれば、平板状磁性体粒子の平均アスペクト比は2以上かつ20以下であることが好ましい。
この平板状磁性体粒子を構成する材料としては、磁性を有する材料であればよく、特に限定されないが、例えば、強磁性金属としては、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)等が挙げられ、常磁性金属としては、モリブデン(Mo)等が挙げられ、これらの金属群から選択される1種からなる金属、または、これらの金属群から選択される2種以上を含む合金が好適に用いられる。
これらの金属または合金は、反磁性金属である銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)等を含んでいてもよい。
これらの合金としては、二元素系合金、三元素系合金等が挙げられる。
二元素系合金としては、保磁力が70エルステッド(Oe)以下の軟磁性を示すパーマロイ(登録商標)等のFe−Ni合金、Fe−Si合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金等が挙げられる。
三元素系合金としては、スーパーマロイ(登録商標)等のFe−Ni−Mo合金、センダスト(登録商標)等のFe−Si−Al合金、Fe−Cr−Si合金等が挙げられる。
これらの合金の中でも、Fe−Ni合金としては、Ni78質量%−Fe22質量%の合金が、平板状磁性体粒子の平均厚みが0.1μm以上かつ10μm以下、平均長径が0.2μm以上かつ100μm以下のものが得られ易く、しかもμr’が高くなるとともに低磁気損失の複合磁性体を得られるので好ましい。
上記の合金に、その合金に含まれない金属元素で、その合金と性質が近い金属(合金に含まれている金属と周期律表で近接している金属)、例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、すず(Sn)の群から1種または2種以上を適宜選択して添加してもよい。
上記の金属元素を上記の合金に添加する場合には、この金属元素の含有率は、この金属元素と合金との合計質量に対して0.1質量%以上かつ90質量%以下が好ましく、1質量%以上かつ12質量%以下がより好ましく、1質量%以上かつ5質量%以下がさらに好ましい。
ここで、上記の金属元素の含有率を上記の範囲に限定した理由は、金属元素の含有率が0.1質量%未満では、後述する球状の磁性体粒子を平板状に加工するための十分な塑性変形能を付与することができず、一方、含有率が90質量%を超えると、金属元素自体の磁気モーメントが小さいことから、この平板状磁性体粒子全体の飽和磁化が小さくなり、その結果、得られるμr’も小さくなるからである。
特に、高いμr’の複合磁性体が得られ易い点で、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、すず(Sn)の群から選択される1種または2種以上の金属元素を1質量%以上かつ12質量%以下、好ましくは1質量%以上かつ5質量%以下含む鉄−ニッケル合金を用いるのが好ましい。
これらの中でも、ニッケル−鉄−亜鉛(Ni−Fe−Zn)合金は、Fe−Ni合金へのZnの添加により、後述する球状の磁性体粒子の加工性が高くなるために、大きなアスペクト比を有する平板状の磁性体粒子が得られ易いので好ましい。合金の組成比としては、例えば、Ni75質量%−Fe20質量%−Zn5質量%の合金、Ni76質量%−Fe20質量%−Zn4質量%の合金等を好適に用いることができる。
この平板状磁性体粒子は、絶縁性の平板状磁性体粒子であることが好ましい。
このように、絶縁性の平板状磁性体粒子を用いることで、複合磁性体中にて平板状磁性体粒子同士が接触することにより導電パスが形成されるのを抑制することができ、その結果、複合磁性体の誘電損失を低減させることができる。なお、この絶縁性の平板状磁性体粒子においては、少なくとも粒子の表面が絶縁性を有していればよい。
平板状磁性体粒子を絶縁体とする方法としては、特に限定されないが、例えば、平板状磁性体粒子の表面に厚みが5nm程度の絶縁性の酸化被膜を形成する方法が挙げられる。
この酸化被膜を形成する方法としては、特に限定されず、加熱処理等による強制酸化の他、自然酸化でもよい。自然酸化の場合、長期に亘って自然酸化させる方法でもよい。自然酸化させる場合には、平板状磁性体粒子を、酸化を促進させる環境、例えば高温湿度下にて保管するのが好ましい。
通常、平板状磁性体粒子を大気中で取り扱うことにより、この平板状磁性体粒子の表面に自然に酸化被膜が形成されるが、自然に形成される酸化被膜では、膜厚が不均一になり易く、部分的に絶縁性に劣る箇所が生じる等により、絶縁性が不十分である場合が多い。また、製造ロットにより絶縁性能が変動し易くなるので、複合磁性体とした時に製造ロットによっては誘電損失を低減することが難しい場合がある。そこで、安定して複合磁性体の誘電損失を低減させるためには、50℃以上かつ200℃以下の温度にて、1時間〜数時間程度加熱処理することにより、平板状磁性粉体の表面に厚みが5nm程度の絶縁性の酸化被膜を形成することが好ましい。
また、平板状磁性体粒子の表面に、この平板状磁性体粒子と異なる組成の絶縁性被膜を形成してもよい。このような組成としては、例えば、酸化ケイ素、リン酸塩等の無機物質、あるいは、樹脂、界面活性剤等の有機物質等が挙げられる。これらの絶縁性被膜は、酸化被膜(自然酸化や加熱酸化による酸化被膜を含む)を有する平板状磁性体粒子の表面に形成してもよく、酸化被膜を有しない平板状磁性体粒子の表面に形成してもよい。
次に、この平板状磁性体粒子の製造方法について、図1に基づき詳細に説明する。
まず、例えば、液相還元法、アトマイズ法等で合成した球状の磁性体粒子2を界面活性剤を含む溶液中に分散してスラリー3とする。
球状の磁性体粒子2の一次粒子径は、特に限定されないが、微細な平板状磁性体粒子を作製するためには、球状の磁性体粒子2の一次粒子径は3μm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。
ここで、球状の磁性体粒子2の一次粒子径を3μm以下と限定した理由は、この磁性体粒子2の表面が高活性となることから、磁性体粒子2同士の親和性も高くなり、磁性体粒子2同士の凝着が促進されるからである。
一方、球状の磁性体粒子2の一次粒子径が小さくなりすぎると、球状の磁性体粒子2の表面活性が高すぎてしまい、球状の磁性体粒子2が著しく酸化され易くなり、よって磁気特性が悪くなる虞がある。それ故に、球状の磁性体粒子2の一次粒子径は30nm以上が好ましい。なお、この一次粒子径の実用上の下限値は10nm程度である。
磁性体粒子2の組成は、上記の平板状磁性体粒子の組成と全く同様である。
界面活性剤としては、球状の磁性体粒子2の表面と相性の良い窒素、リン、イオウ等の元素を含有している界面活性剤が好ましく、例えば、窒素含有ブロックコポリマー、燐酸塩、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
この界面活性剤を溶解させる溶媒としては、球状の磁性体粒子2に含まれる金属元素の酸化を防止する必要があることから、有機溶媒が好ましく、特に、キシレン、トルエン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の非極性有機溶媒が好ましい。
次いで、スラリー3及び分散媒体4を、密閉容器1内に、スラリー3及分散媒体4の合計の体積が密閉容器1内の体積と同じくなるように充填する。
密閉容器1としては、ディスク、スクリュー、羽根、ピン等の一軸回転体5を高速回転することで、分散媒体4をスラリー3とともに高速回転する構造の容器が好ましい。
密閉容器1は、単純な1軸回転方式であることから、大型化も容易であり、工業生産上も有利である。
一軸回転体5の構造としては、軸を中心として外方へ突出するピン6を有する構造が好ましい。このような構造とすることで、一軸回転体5からピン6を経て、分散媒体4を介して球状の磁性体粒子2に伝搬される機械的応力が均一になる。また、応力が均一に伝播されることにより、生成する平板状磁性体粒子の厚みにばらつきが生じ難くなる。また、生成する平板状磁性体粒子が不規則な衝撃を受けることもなく、平板状磁性体粒子に割れや欠け等も発生し難くなる。
この一軸回転体5の回転数は、密閉容器1の大きさにより決定される。例えば、内径が120mmの密閉容器1の場合、球状の磁性体粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4の一軸回転体5の径方向の外周端5a付近の流速が5m/秒以上となるように一軸回転体5の回転数を設定することが好ましく、さらには、上記の流速が8m/秒以上となるように一軸回転体5の回転数を設定することがより好ましい。
一方、一軸回転体5の径方向の外周端5a付近の流速が15m/sを超えると、エネルギーが大きすぎるために平板状になった粒子を破壊してしまう虞があるので、上記の流速は15m/s以下であることが好ましい。
なお、密閉容器1の内容積が小さいと、得られた平板状磁性体粒子中に球状の磁性体粒子2が残留してしまう虞がある。平板状磁性体粒子中に残留した球状の磁性体粒子2は、球状の磁性体粒子2同士の接触、または球状の磁性体粒子2と平板状磁性体粒子との接触により、磁気損失を増加させたり、あるいは平板状磁性体粒子の配向を阻害したりする虞がある。したがって、得られた磁性体粒子中の平板状磁性体粒子の含有率は、磁性体粒子全体量の90質量%以上が好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、球状の磁性体粒子2を実質的に含まないことが望ましい。
この密閉容器1では、スラリー3を密閉容器1内に導入・導出するための流入口及び流出口を設け、スラリー3を密閉容器1内に循環させる構成としてもよい。この場合、予め分散媒体4を密閉容器1内に収納しておき、球状の磁性体粒子2と界面活性剤と溶媒とを混合したスラリー3を流入口から投入して密閉容器1内に空間がないように充填し、流出口から排出されるスラリー3を再度密閉容器1内へ戻すように循環経路を形成すればよい。
次いで、スラリー3を分散媒体4と共に密閉状態にて撹拌し、球状の磁性体粒子2同士を融着させながら扁平状に変形させて平板状磁性体粒子とする。
球状の磁性体粒子2への機械的応力の付加は、分散媒体4同士の衝突の際、または分散媒体4と密閉容器1の内壁との衝突の際に、磁性体粒子2がこれらの間に挟まれることで与えられる衝撃によって行われる。この場合、分散媒体4同士または分散媒体4と密閉容器1の内壁との衝突回数が増加するにつれて、球状の磁性体粒子2同士の融着性及び変形性が向上する。
ここでは、分散媒体4の平均粒径が小さいほど、単位体積当たりに存在する分散媒体4の個数が増加し、衝突回数も多くなる。したがって、磁性体粒子2の融着性及び変形性も向上する。一方、分散媒体4の平均粒径が小さすぎると、分散媒体4をスラリー3から分離することが困難となる。したがって、分散媒体4の平均粒径は、少なくとも0.01mm以上、好ましくは0.03mm以上であることが必要である。
また、分散媒体4の平均粒径が大き過ぎると、衝突回数が減少することにより、球状の磁性体粒子2同士の変形及び融着性が低下する。したがって、分散媒体の平均粒径の上限値は3.0mmである。
以上により、球状の磁性体粒子2同士は、一軸回転体5により加えられた機械的応力により融着しながら変形し、平板状磁性体粒子となる。
次いで、この平板状磁性体粒子を分散媒体4及び溶媒から分離する。
溶媒を分離する方法としては、平板状磁性体粒子を作製した後のスラリー3から溶媒を除去することができれば特に限定されず、加熱乾燥、真空乾燥、フリーズドライ等が挙げられるが、乾燥効率や乾燥途中での過剰な酸化を防ぐことができる点で真空乾燥が好ましい。また、乾燥効率を高めるために、乾燥工程の前に、固液分離等の手法によりある程度の溶媒を除去してもよい。固液分離の方法としては、フィルタープレスや吸引ろ過等のろ過操作や、デカンターや遠心分離機による遠心分離操作等、通常の方法を用いればよい。
「平板状磁性体粒子と樹脂との混合」
次いで、上記の平板状磁性体粒子と、流動性のある絶縁性の樹脂と、必要に応じて溶媒を混合して樹脂組成物とする。ここで「流動性のある絶縁性の樹脂」とは、樹脂自体の粘度が低く流動性があるものであってもよく、樹脂自体の粘度が高くとも、溶媒や樹脂モノマー等を添加することにより、樹脂組成物としての粘度が低くなるように調節されたものであってもよい。
(樹脂)
樹脂としては、本実施形態の平板状磁性体粒子と混合・分散することのできる樹脂であればよく、特に限定されないが、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ノルボルネン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が好適に用いられる。これらの樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの樹脂の中でも、熱硬化性樹脂としては、機械的強度及び形状加工性に優れているエポキシ樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ABS樹脂が好ましい。
また、上記樹脂に加えて、熱可塑性エラストマーを添加することとしてもよい。この熱可塑性エラストマーの添加により、複合磁性体の機械的強度や形状加工性を向上させることができる。したがって、この熱可塑性エラストマーが添加された複合磁性体は、靭性、柔軟性、変形性により優れたものとなる。
この熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマーの群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
この熱可塑性エラストマーの添加量は、複合磁性体の用途により必要とされる耐熱性を勘案して、適宜調整すればよい。
エポキシ樹脂のなかでも、主鎖に環状構造、特に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する樹脂は、平板状磁性体粒子と絡まり難いことから平板状磁性体粒子の配向を阻害する虞が無く、しかも高いμr’が得られ易いので、好ましい。
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、主鎖に脂環式の環状構造のみを有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(化学式(1))が好適に用いられる。
Figure 2014029936
また、主鎖に直鎖構造を有する樹脂としては、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の直鎖にC=1〜3の短い直鎖構造を有する構造の樹脂(化学式(2))も用いることができる。
化学式(2)中、XはC=1〜3のアルキル鎖を有する直鎖構造である。
Figure 2014029936
上記構造の樹脂が平板状磁性体粒子に絡み難い樹脂であっても、高分子鎖が長くなると、複合磁性体の複素透磁率の実部μr’が小さくなる場合がある。したがって、上記の化学式(1)及び(2)のnの値は、0、または1〜3の範囲の整数が好ましく、より好ましくは0である。
すなわち、モノマーを単独で用いるか、モノマー及びオリゴマーを適宜組み合わせて用いることが好ましい。
特に、より高いμr’を得たい場合には、化学式(1)のジシクロペンタジエン型樹脂では、n=0の樹脂を用いるのが好ましい。
このジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のような硬い樹脂を用いる場合、複合磁性体の気孔率を低減させるために、このような硬い樹脂に、複合磁性体に伸縮性や可撓性を付与する絶縁性樹脂を混合させてもよい。この伸縮性や可撓性を付与する絶縁性樹脂としては、上述した樹脂から適宜選択して用いればよく、特に、液状エポキシ樹脂またはビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールB型、ビスフェノールF型等のビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。
ビスフェノールA型の骨格を有するエポキシ樹脂としては、イソプロピリデンビスフェノール、イソプロピリデンビス(オルソクレゾール)、テトラブロムビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)等が挙げられる。
ビスフェノールB型の骨格を有するエポキシ樹脂としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。
ビスフェノールF型の骨格を有するエポキシ樹脂としては、メチレンビスフェノール、メチレンビス(オルソクレゾール)等が挙げられる。
このビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールA型骨格及びビスフェノールF型骨格のうち少なくとも1種を有するエポキシ樹脂が好ましい。中でも、伸縮性、剪断強度の観点から、ビスフェノールA骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。
また、上記のビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂の中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有し、かつエーテル骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。この1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する構造としては、例えば、ジグリシジルエーテル、ジグリシジルエステル、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
上記のエーテル骨格としては、1つ以上のエーテル部分構造を含む化合物であれば特に限定されない。このようなエーテル骨格としては、例えば、アルキレングリコールが挙げられる。
このアルキレングリコールとしては、アルキレンの炭素の数が2〜6が好ましく、より好ましくは2〜5、さらに好ましくは2〜4である。
このエーテル骨格は、直鎖状であってもよく、分岐鎖を有していてもよいが、エチレングリコールやプロピレングリコールに由来するエーテル骨格が好ましい。
また、ビスフェノールA型の骨格を有し、一分子中に2個以上のエポキシ基を含有し、かつエーテル骨格を有する構造としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格に、プロピレングリコールからなるエーテル骨格を導入し、このビスフェノールA型の骨格の末端にグリシジルエーテルを導入した、プロピレングリコール付加ビスフェノールA型構造(化学式3)が挙げられる。
Figure 2014029936
この化学式(3)では、p+qの値は1〜5であるが、このp+qのより好ましい値は2〜4であり、さらに好ましい値は2〜3である。
また、この構造の他の例としては、ビスフェノールA型の骨格に、プロピレングリコールからなるエーテル骨格の替わりにエチレングリコールからなるエーテル骨格を導入し、このビスフェノールA型の骨格の末端にグリシジルエーテルを導入した、エチレングリコール付加ビスフェノールA型構造(化学式4)も挙げられる。
Figure 2014029936
この化学式(4)では、n+mの値は1〜10であるが、このn+mのより好ましい値は4〜8であり、さらに好ましい値は6である。
ビスフェノールA型骨格を有し、かつ1分子中に2個以上のエポキシ基を含有し、ポリエーテル骨格を有する樹脂としては、ビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテル、ビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル等が挙げられる。
このジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂とビスフェノール型エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、化学式(1)でn=0のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を用いるのが好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、化学式(3)または化学式(4)の可撓性を付与する樹脂を組み合わせて用いることが好ましい。
このジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のような硬い樹脂と、上記の液状エポキシ樹脂またはビスフェノール型エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合には、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の樹脂全体量に対する含有率を50質量%以上かつ90質量%以下とすることが好ましい。このジシクロペンタジエン型樹脂の含有率を上記範囲とすることで、平板状磁性体粒子の配向性が向上し、かつ高いμr’を得ることができる。
さらに、液状エポキシ樹脂またはビスフェノール型エポキシ樹脂を10質量%以上かつ50質量%以下含有するので、平板状磁性体粒子同士の間隙に樹脂が進入し易くなり、複合磁性体の気孔の生成を抑制し、気孔率を低減させることができるので好ましい。
上記の樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、エポキシ基同士の縮合反応を促進させて、複合磁性体の成形体における硬化不良による気孔の発生を防止する点で第3アミンを添加することが好ましい。
第3アミンとしては、例えば、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
硬化剤の添加量としては、官能基の縮合反応を促進させる点を考慮すると、樹脂の全体の質量に対して0.5質量%以上かつ3質量%以下、添加させればよい。
なお、樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合には、硬化剤は不要である。
また、上記樹脂に加えて、熱可塑性エラストマーを添加することとしてもよい。この熱可塑性エラストマーの添加により、複合磁性体の機械的強度や形状加工性を向上させることができる。したがって、この熱可塑性エラストマーが添加された複合磁性体は、靭性、柔軟性、変形性により優れたものとなる。
この熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマーの群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
この熱可塑性エラストマーの添加量は、複合磁性体の用途により必要とされる耐熱性を勘案して、適宜調整すればよい。
(溶媒)
溶媒としては、上記の平板状磁性体粒子と樹脂とを混合して得られた樹脂組成物(混合物)の粘度等を調整するために適宜用いればよい。
この溶媒としては、上記の樹脂を溶解させることができるものであればよく、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ―ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられる。
これらの溶媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記の平板状磁性体粒子と、絶縁性の樹脂と、必要に応じて溶媒を混合して樹脂組成物とする場合、この樹脂組成物における平板状磁性体粒子の含有率は、この樹脂組成物から溶媒等の揮発成分が揮発し硬化して得られた固体状物質に換算して、樹脂と平板状磁性体粒子の合計体積量中10体積%以上かつ50体積%以下が好ましく、より好ましくは20体積%以上かつ40体積%以下である。
ここで、平板状磁性体粒子の含有率が10体積%未満では、平板状磁性体粒子が少なすぎて複合磁性体としての磁気特性が低下してしまうので好ましくなく、一方、この平板状磁性体粒子の含有率が50体積%を超えると、平板状磁性体粒子が多すぎてしまい、この平板状磁性体粒子を含む樹脂組成物の流動性が低下し、したがって、後工程で、この樹脂組成物に磁界を印加した場合に平板状磁性体粒子を十分に配向させることができなくなるので好ましくない。
この樹脂組成物の粘度としては、0.1Pa・s以上かつ10Pa・s以下が好ましく、より好ましくは0.3Pa・s以上かつ10Pa・s以下である。
上記の範囲が好ましい理由は、樹脂組成物の粘度が0.1Pa・s未満では、粘度が低すぎて成形方法が限られてしまい、また、溶媒を乾燥する工程に長時間を要することとなり、乾燥不良等による欠陥が発生し易くなるので好ましくない。一方、10Pa・sを超えると、後工程で、この樹脂組成物に磁界を印加した場合に、通常の磁界では平板状磁性体粒子が動き難くなることから、十分に配向させることができず、そこで、平板状磁性体粒子を十分に配向させるためには、さらに強い磁界を印加する必要が生じるからである。
混合装置としては、これら平板状磁性体粒子、樹脂、溶媒等を均一に混合・分散させて流動性のある樹脂組成物とすることができればよく、特に制限はされないが、例えば、ロールミル、自公転式ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、撹拌機等が挙げられる。これらの装置で混合する場合、平板状磁性体粒子が凝集しすぎず、かつ樹脂中に均一に分散させるように、混合条件を適宜調整すればよい。
「樹脂組成物の成形」
上記の樹脂組成物を、所定の形状のバルク状、シート状またはフィルム状に成形する。
成形法としては、上記の樹脂組成物を一定の形状に成形することができ、かつ成形後の形状を保持することができればよく、特に制限されない。
また、成形体の形状や大きさも特に制限はされず、例えば、板状あるいは直方体状等の厚みがあるバルク状に成形してもよく、シート状またはフィルム状に成形してもよい。
ここで、板状あるいは直方体状等の厚みがあるバルク状に成形する場合、所望の形状の成形用型に上記の樹脂組成物を投入し、成形用型内の樹脂組成物を所要時間静置するか、あるいは所要の圧力で押圧した後、樹脂組成物の成形体を成形型から取り出すことで容易に得ることができる。この方法は、量産性に優れている。
また、シート状またはフィルム状に成形する場合、シート状またはフィルム状の基体上に上記の樹脂組成物を塗布することで容易に得ることができる。この方法も量産性に優れている。シート状またはフィルム状に成形する方法としては、ドクターブレード法、バーコート法、ダイコート法、プレス法等を挙げることができる。
また、複合磁性体を積層して積層構造体とする場合には、ドクターブレード法によりシート状またはフィルム状に成形した複合磁性体を積層することが好ましい。
「平板状磁性体粒子の配向」
成形された樹脂組成物中の平板状磁性体粒子を、その樹脂組成物の表面に沿って配向させる。
配向させる方法としては、樹脂組成物の形状の違いにより、次の2種類の配向方法がある。これらの配向方法について、図に基づき順次説明する。
A.板状または厚みのあるシート状の樹脂組成物の場合
図2(a)に示すように、板状の樹脂組成物11、または厚みのあるシート状の樹脂組成物を用意する。
この板状の樹脂組成物11では、平板状磁性体粒子12の表面12aが任意の方向に向いた状態で樹脂13中に分散している。したがって、平板状磁性体粒子12の表面12aの配向方向は任意である。
そこで、図2(b)に示すように、この板状の樹脂組成物11を、磁極が互いに異なる一対の磁石14、15で一方向(図中、x軸方向)から挟み、これら磁石14、15により樹脂組成物11中の一方向(図中、x軸方向)に磁界を印加させて平行な磁力線Hを貫通させる。ここで、この板状の樹脂組成物11が長方形の板状であった場合には、長方形の長手方向(または短手方向)に沿って磁界を印加させればよい。
これら磁石14、15としては、永久磁石でもよく、電磁石でもよいが、樹脂組成物11中に平行な磁力線Hを貫通させるためには、磁石14、15の対向する磁極面の幅が板状の樹脂組成物11の厚みより大きくなくてはならない。
印加する磁界の大きさは100ガウス以上かつ1000ガウス以下であることが好ましい。印加する磁界の大きさが100ガウス未満であると、印加する磁界が小さすぎるため、平板状磁性体粒子12を十分に配向させることができず、一方、印加する磁界が1000ガウスを超えると、印加する磁界が大きすぎて、平板状磁性体粒子12と樹脂13とが分離してしまい、磁気特性に不均一が生じるので、好ましくない。
この磁力線Hの貫通により、平板状磁性体粒子12の表面12aは、磁力線Hと平行な方向、すなわち樹脂組成物11中の一方向(図中、x軸方向)に沿うこととなり、したがって、平板状磁性体粒子12の表面12aの配向方向は、一方向(図中、x軸方向)に沿って配向した状態となる。なお、平板状磁性体粒子12の表面12aは、一方向(図中、x軸方向)と直交する他の一方向(図中、y軸方向)に対しては任意の方向に向いた状態で、配向してはいない。
次いで、この板状の樹脂組成物11に、上記の一方向(図中、x軸方向)と70°以上かつ110°以下の他の一方向、好ましくは80°以上かつ100°以下の他の一方向、より好ましくは85°以上かつ95°以下の他の一方向、さらに好ましくは87°以上かつ93°以下の他の一方向、最も好ましくは直交する他の一方向に磁界を印加させて平行な磁力線を貫通させる。
ここでは、例えば、図2(c)に示すように、この板状の樹脂組成物11を、一対の磁石14、15で他の一方向(図中、y軸方向)から挟み、これら磁石14、15により樹脂組成物11中の他の一方向(図中、y軸方向)に磁界を印加させて平行な磁力線Hを貫通させる。ここで、この板状の樹脂組成物11が長方形の板状であった場合には、長方形の短手方向(または長手方向)に沿って磁界を印加させることとなる。
この磁力線Hの貫通により、平板状磁性体粒子12の表面12aは、他の一方向(図中、y軸方向)に対しては任意の方向に向いた状態から、磁力線Hと平行な方向、すなわち樹脂組成物11中の他の一方向(図中、y軸方向)に沿って配向した状態となる。これにより、平板状磁性体粒子12の表面12aは、一方向(図中、x軸方向)及び他の一方向(図中、y軸方向)を含む面に平行となる。
なお、平板状磁性体粒子12の表面12aの配向方向が、一方向(図中、x軸方向)及び他の一方向(図中、y軸方向)に十分に揃っていない場合には、樹脂組成物11中の一方向(図中、x軸方向)への磁界の印加と、他の一方向(図中、y軸方向)への磁界の印加とを繰り返し行うことにより、平板状磁性体粒子12の表面12aの配向方向が一方向(図中、x軸方向)及び他の一方向(図中、y軸方向)それぞれに十分に揃った状態とすることができる。
例えば、板状の樹脂組成物11が長方形の板状であった場合には、長方形の長手方向(または短手方向)に沿う磁界の印加と、長方形の短手方向(または長手方向)に沿う磁界の印加とを、繰り返し行うことにより、平板状磁性体粒子12の表面12aの配向方向を長方形の長手方向及び短手方向を含む面に十分に揃った状態とすることができる。
ここで、この平板状磁性体粒子12の表面12aの配向方向が二方向(図中、x軸方向及びy軸方向)それぞれに十分に揃った状態とは、樹脂組成物11の二方向(図中、x軸方向及びy軸方向)それぞれのμr’の値が略等しくなった状態、すなわち、樹脂組成物11の二方向(図中、x軸方向及びy軸方向)を含む面内の任意の方向のμr’の値が略等しくなった状態のことである。
以上により、平板状磁性体粒子12の表面12aは、樹脂組成物11中の一方向(図中、x軸方向)及び他の一方向(図中、y軸方向)それぞれに沿うこととなり、したがって、平板状磁性体粒子12の表面12aの配向方向は、一方向(図中、x軸方向)及び他の一方向(図中、y軸方向)を含む面に沿った状態となる。
B.薄厚のシート状またはフィルム状の樹脂組成物の場合
図3は、薄厚(厚みが薄い)のシート状の樹脂組成物に互いに直交する2種類の磁界を順次印加する磁界印加装置21を示す模式図であり、この磁界印加装置21は、帯状の薄厚(厚みが薄い)のシート状の樹脂組成物22を繰り出す繰り出しローラ23と、シート状の樹脂組成物22を帯状の長手方向に沿って搬送する搬送ローラ24、25と、搬送ローラ24の下部に設けられ、シート状の樹脂組成物22をその長手方向に沿って挟むことでその長手方向に沿って磁界を印加させて平行な磁力線Hをシート状の樹脂組成物22に貫通させる磁極が互いに異なる一対の磁石26、27と、搬送ローラ25の上部に設けられシート状の樹脂組成物21をその短手方向に沿って挟むことでその短手方向に沿って磁界を印加させて平行な磁力線Hを貫通させる磁極が互いに異なる一対の磁石28、29と、シート状の樹脂組成物22を巻き取る巻き取りローラ30とから構成されている。
このシート状の樹脂組成物22においても、上記の板状の樹脂組成物11と同様、平板状磁性体粒子の表面が任意の方向に向いた状態で樹脂中に分散している。したがって、平板状磁性体粒子の表面の配向方向は任意である。
ここで、繰り出しローラ23から繰り出されるシート状の樹脂組成物22は、その一端部が巻き取りローラ30により巻き取られることで、その長手方向に一定の速度で移動する。
この移動の間に、シート状の樹脂組成物22は、磁極が互いに異なる一対の磁石26、27により挟まれた状態で、これらの磁石26、27により樹脂組成物22中の一方向(図中、x軸方向)、すなわちシート状の樹脂組成物22の長手方向に沿って磁界が印加され、平行な磁力線Hが貫通される。
これら磁石26、27としては、上記の磁石14、15と同様、永久磁石でもよく、電磁石でもよいが、シート状の樹脂組成物22中に平行な磁力線Hを貫通させるためには、磁石26、27の対向する磁極面の幅wがシート状の樹脂組成物22の厚みより大きくなくてはならない。
印加する磁界の大きさは、上記の板状の樹脂組成物の場合と同様、100ガウス以上かつ1000ガウス以下であることが好ましい。
この磁力線Hの貫通により、シート状の樹脂組成物22に含まれる平板状磁性体粒子の表面は、磁力線Hと平行な方向、すなわち樹脂組成物22中の一方向(図中、x軸方向)に沿うこととなり、したがって、この樹脂組成物22に含まれる平板状磁性体粒子の表面の配向方向は、一方向(図中、x軸方向)に沿った状態となる。なお、この平板状磁性体粒子の表面は、一方向(図中、x軸方向)と直交する他の一方向(図中、y軸方向)に対しては任意の方向に向いた状態で、配向してはいない。
次いで、このシート状の樹脂組成物22がその長手方向に一定の速度で移動する間に、このシート状の樹脂組成物22は、磁極が互いに異なる一対の磁石28、29により挟まれた状態で、これらの磁石28、29により樹脂組成物22中の他の一方向(図中、y軸方向)、すなわちシート状の樹脂組成物22の短手方向に沿って磁界が印加され、平行な磁力線Hが貫通される。
この磁力線Hの貫通により、シート状の樹脂組成物22に含まれる平板状磁性体粒子の表面は、他の一方向(図中、y軸方向)に対して任意の方向に向いた状態から、磁力線Hと平行な方向、すなわち樹脂組成物22中の他の一方向(図中、y軸方向)に沿うこととなり、したがって、この樹脂組成物22に含まれる平板状磁性体粒子の表面の配向方向は、一方向(図中、x軸方向)及び他の一方向(図中、y軸方向)それぞれに沿った状態となる。これにより、シート状の樹脂組成物22に含まれる平板状磁性体粒子の表面は、一方向(図中、x軸方向)及び他の一方向(図中、y軸方向)を含む面に平行となる。
このシート状の樹脂組成物22においても、上記の樹脂組成物11と同様、平板状磁性体粒子の表面の配向方向が、一方向(図中、x軸方向)及び他の一方向(図中、y軸方向)に十分に揃っていない場合には、樹脂組成物中の一方向(図中、x軸方向)への磁界の印加と、他の一方向(図中、y軸方向)への磁界の印加とを繰り返し行うことにより、平板状磁性体粒子の表面の配向方向が一方向(図中、x軸方向)及び他の一方向(図中、y軸方向)それぞれに十分に揃った状態とすることができる。
以上により、このシート状の樹脂組成物22に含まれる平板状磁性体粒子の表面は、上記の平板状磁性体粒子12と同様、樹脂組成物22中の一方向(図中、x軸方向)及び他の一方向(図中、y軸方向)それぞれに沿うこととなり、したがって、平板状磁性体粒子の表面の配向方向は、一方向(図中、x軸方向)及び他の一方向(図中、y軸方向)それぞれを含む面に平行となる。
「乾燥・硬化」
平板状磁性体粒子が配向した樹脂組成物を、乾燥・硬化させ、複合磁性体とする。
ここでは、平板状磁性体粒子が配向した樹脂組成物を乾燥させ、次いで、加熱あるいは紫外線照射等により樹脂組成物に含まれる樹脂、例えば、熱硬化性樹脂を硬化させる。
乾燥・硬化条件(処理温度、処理時間等)は、使用する樹脂の種類に応じて適宜調整すればよい。例えば、熱可塑性樹脂の場合、乾燥により溶媒を除去することが好ましい。
例えば、板状または厚みのあるシート状の樹脂組成物の場合には、この樹脂組成物を乾燥機を用いて乾燥・硬化すればよい。
また、薄厚のシート状またはフィルム状の樹脂組成物の場合には、搬送ローラ25と巻き取りローラ30との間、あるいは別途トンネル状の乾燥機を設け、この樹脂組成物がトンネル状の乾燥機を通過する間に乾燥・硬化することとしてもよい。
以上により、本実施形態の板状(またはシート状)の複合磁性体を得ることができる。
[複合磁性体]
本実施形態の複合磁性体は、本実施形態の複合磁性体の製造方法により得られた複合磁性体であり、この複合磁性体中の一方向(x軸方向)及び他の一方向(y軸方向)を含む平面に平行な任意の2つの方向の複素透磁率の実部μr’の差は1以下が好ましく、より好ましくは0.5以下である。
この複合磁性体では、複合磁性体中の一方向及び他の一方向を含む平面に平行な任意の2つの方向、例えば、一方向(x軸方向)及び他の一方向(y軸方向)を含む平面に平行な任意の2つの方向の複素透磁率の実部μr’の差を1以下とすることにより、性能安定性の高い複合磁性体を得ることができる。
したがって、本実施形態の複合磁性体を備えた電子部品や電子機器は、小型化が可能となり、電力損失を抑制することができる。
この複合磁性体中の任意の2つの方向の複素透磁率の実部μr’の差は、次のようにして測定することができる。
図4に示すように、板状(またはシート状)の複合磁性体41から、x軸方向(図中、A方向)、x軸から45°傾斜した方向(図中、B方向)、y軸方向(図中、C方向)それぞれに沿って、所定形状の短冊状の試験片42a、42b、42cを切り出し、これらの試験片42a、42b、42cそれぞれについて長手方向のμr’を測定し、これらのμr’の測定値から、複素透磁率の実部μr’の差を求めることができる。
この複合磁性体では、複素透磁率の損失正接tanδμ(以下、tanδμと略記する場合がある)は0.1以下が好ましく、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.04以下である。また、複素誘電率の損失正接tanδε(以下、tanδεと略記する場合がある)は0.1以下が好ましく、より好ましくは0.07以下である。
また、本実施形態の複合磁性体は、70MHz以上かつ220MHz以下までの周波数帯域におけるtanδμは0.1以下が好ましく、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.04以下であり、また、tanδεは0.1以下が好ましく、より好ましくは0.07以下である。
さらに、本実施形態の複合磁性体は、70MHz以上かつ500MHz以下の周波数帯域において、tanδμは0.1以下が好ましく、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.04以下であり、また、tanδεは0.1以下が好ましく、より好ましくは0.07以下である。
ここで、tanδμ及びtanδεの値が、それぞれの値を超えた場合には、複合磁性体内にて高周波が複素透磁率の虚数部μr’’あるいは複素誘電率の虚数部εr’’に対応する部分だけ吸収されて熱に変わるので、高周波信号のエネルギーが減衰する上に、S/N比の低下や発熱等の問題が生じる虞があるので好ましくない。
この複合磁性体を用いてアンテナを作製することができる。
この複合磁性体を備えたアンテナの一形態として、本実施形態の複合磁性体を装荷したアンテナがある。
アンテナに本実施形態の複合磁性体を装荷させる方法としては、特に制限されず、アンテナを構成する銅線等の導体(以下、「アンテナ導体」と称する)に本実施形態の複合磁性体を被覆させる等、公知の方法で装荷させればよい。
ここで、「装荷」とは、電磁的な相互作用により波長短縮等の効果が得られるようにするために、アンテナ導体に複合磁性体を接触させたり、あるいは近づけたりすることを意味する。
アンテナの種類及び形状は、特に制限されず、モノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、ループアンテナ、ミアンダアンテナ、ヘリカルアンテナ、パッチアンテナ、F型アンテナ、L型アンテナ等が好適に用いられる。また、アンテナをより小型化させるために、整合回路を併用してもよい。
例えば、モノポールアンテナやL字アンテナは、アンテナ導体を中心として、上記の複合磁性体を棒状あるいは長尺の板状に加工したもので挟み込むように形成することで得ることができる。
また、ヘリカルアンテナは、上記の複合磁性体を棒状に加工した棒状複合磁性体の周囲に、銅線等からなる長尺かつ極細のアンテナ導体をコイル状に巻回することで得ることができる。
これらのアンテナでは、波長短縮効果により、所望波長の1/4よりも長さが短い小型アンテナを得ることが可能である。
以上説明したように、本実施形態の複合磁性体の製造方法によれば、平板状磁性体粒子を流動性のある絶縁性の樹脂中に含有させた樹脂組成物に、磁極が互いに異なる一対の磁石を用いて樹脂組成物中の一方向(x軸方向)に磁界を印加させて平行な磁力線Hを貫通させ、次いで、樹脂組成物中の他の一方向(y軸方向)に磁界を印加させて平行な磁力線Hを貫通させるので、樹脂組成物中の平板状磁性体粒子を一方向(x軸方向)及び他の一方向(y軸方向)を含む平面に平行に配向させることができる。したがって、平板状磁性体粒子の面方向がそろって配向し、よってμr’が任意の方向で略一定となった複合磁性体を、容易かつ効率的に得ることができる。
本実施形態の複合磁性体によれば、複合磁性体中の一方向及び他の一方向を含む平面に平行な任意の2つの方向の複素透磁率の実部μr’の差を1以下としたので、任意の方向で略同じμr’を得ることができる。したがって、この複合磁性体をアンテナや電子回路に適用した場合に、安定した性能を得ることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
平均長径が2.1μm、平均厚みが0.38μmの平板状磁性体粒子(Ni:75%−Fe:20%−Zn:5%合金)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂 EPICLON HP−7200L(DIC株式会社製)、1−イソブチル−2メチルイミダゾール(硬化剤)及びシクロヘキサノンを遊星撹拌機に投入し、15分間混合してスラリー状の混合物を得た。
ここでは、各材料の投入量は、平板状磁性体粒子が樹脂に対して30体積%になるように、シクロヘキサノンは混合物中の含有率が40質量%となるように、それぞれ投入した。硬化剤は、樹脂に対して1質量部となるように投入した。この混合物の粘度は400mPa・sであった。
次いで、この混合物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にバーコーターにて、縦50mm、横50mm、厚み0.1mmの形状にシート成形を行い、シート成形体を得た。
次いで、このシート成形体の表面の水平方向(x軸方向)に900ガウスの磁界を6分間印加した。次いで、このシートを、その面に垂直な軸の回りに90度回転させて、再度、水平方向(y軸方向)に900ガウスの磁界を6分間印加した。
次いで、このシート上に80℃の温風を導入して風乾させた。その後、160℃にて3時間加熱して樹脂を硬化させ、実施例1のシート状の複合磁性体を得た。
このシート状の複合磁性体では、シート成形後、このシートの面に水平方向に磁界を印加し、次いで、このシートを、その面に垂直な軸の回りに90度回転させて、再度、水平方向に磁界を印加するので、平板状磁性体粒子の表面の向きは、シート状の複合磁性体の表面と平行になる。よって、このシート状の複合磁性体では、面内でμr’の値に違いがなくなる。
このシート状の複合磁性体から、図4に示すA方向、B方向及びC方向の3方向に沿って、縦30mm×横4mm×厚み0.1mmの短冊状の試験片をそれぞれ切り出し、これらの試験片それぞれについて、表面の長手方向の500MHzにおける複素透磁率μrをパラレルライン法により測定した。その結果、A方向では6.8、B方向では7.0、C方向では7.0であり、この複合磁性体の表面に平行な3つの方向の複素透磁率の実部μr’の差は0.2であった。
[実施例2]
平均長径が2.1μm、平均厚みが0.38μmの平板状磁性体粒子(Ni:75%−Fe:20%−Zn:5%合金)及びポリスチレン樹脂 HPIS(PS ジャパン社製)を、平板状磁性体粒子がポリスチレン樹脂に対して30体積%になるように、ラボブラストミルにて溶融混合して混合物を得た。
次いで、この混合物を、加熱装置付きの50mm×50mmの底面を有するセラミック容器内に投入し、次いで、200℃にて加熱溶融し、シート状に成形した。
次いで、このセラミック容器を冷却して温度を150℃とし、この容器の外から、このシートの面に水平方向(x軸方向)に900ガウスの磁界を6分間印加した。次いで、磁界の印加方向をシートの面に垂直な軸の回りに90度回転させて、再度、水平方向(y軸方向)に900ガウスの磁界を6分間印加した。
その後、室温まで冷却して、縦50mm×横50mm×厚み1mmの実施例2のシート状の複合磁性体を得た。
このシート状の複合磁性体から、図4に示すA方向、B方向及びC方向の3方向に沿って、縦30mm×横4mm×厚み1mmの短冊状の試験片をそれぞれ切り出し、これらの試験片それぞれについて、表面の長手方向の500MHzにおける複素透磁率の実部μr’をパラレルライン法により測定した。その結果、A方向では6.8、B方向では7.0、C方向では7.0であり、この複合磁性体の表面に平行な3つの方向の複素透磁率の実部μr’の差は0.2であった。
[比較例]
実施例1と同様にして、縦50mm、横50mm、厚み0.1mmの形状のシート成形体を得た。
シート成形後、このシートの面に水平方向(x軸方向)に900ガウスの磁界を6分間印加し、次いで、このシート上に80℃の温風を導入して風乾させた。その後、160℃にて3時間加熱して樹脂を硬化させ、比較例のシート状の複合磁性体を得た。
このシート状の複合磁性体から、図4に示すA方向、B方向及びC方向の3方向に沿って、縦30mm×横4mm×厚み0.1mmの短冊状の試験片をそれぞれ切り出し、これらの試験片それぞれについて、表面の長手方向の500MHzにおける複素透磁率の実部μr’をパラレルライン法により測定した。その結果、A方向では7.4、B方向では3.6、C方向では3.2であり、この複合磁性体の表面に平行な3つの方向の複素透磁率の実部μr’の差は4.2であった。
1 密閉容器
2 磁性体粒子
3 スラリー
4 分散媒体
5 一軸回転体
6 ピン
11 板状の樹脂組成物
12 平板状磁性体粒子
12a 表面
13 樹脂
14、15 磁石
21 磁界印加装置
22 シート状の樹脂組成物
23 繰り出しローラ
24、25 搬送ローラ
26〜29 磁石
30 巻き取りローラ
41 複合磁性体
42a、42b、42c 試験片

Claims (7)

  1. 平板状磁性体粒子と絶縁性の樹脂とを含有してなる複合磁性体の製造方法であって、
    平板状磁性体粒子を流動性を有する絶縁性の樹脂中に含有させた樹脂組成物に、磁極が互いに異なる一対の磁石を用いて前記樹脂組成物中の一方向に磁界を印加させて平行な磁力線を貫通させ、次いで、前記樹脂組成物中の前記一方向と70°以上かつ110°以下の角度をなす他の一方向に磁界を印加させて平行な磁力線を貫通させる工程を有することを特徴とする複合磁性体の製造方法。
  2. 前記一方向への磁界の印加と、前記他の一方向への磁界の印加とを繰り返し行うことを特徴とする請求項1記載の複合磁性体の製造方法。
  3. 前記平板状磁性体粒子は、平均厚みが0.1μm以上かつ10μm以下、平均長径が0.2μm以上かつ100μm以下、平均アスペクト比(長径/厚み)が2以上であることを特徴とする請求項1または2記載の複合磁性体の製造方法。
  4. 前記平板状磁性体粒子は、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びモリブデン(Mo)の群から選択される1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の複合磁性体の製造方法。
  5. 前記一方向と前記他の一方向とは直交することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の複合磁性体の製造方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1記載の複合磁性体の製造方法により得られた複合磁性体であって、
    前記一方向及び前記他の一方向を含む平面に平行な任意の2つの方向の複素透磁率の実部μr’の差は1以下であることを特徴とする複合磁性体。
  7. 前記複素透磁率の実部μr’の差は0.5以下であることを特徴とする請求項6記載の複合磁性体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017216337A (ja) * 2016-05-31 2017-12-07 Jnc株式会社 電磁波抑制コーティング剤、電磁波抑制シート、電磁波シールド部品、電子機器
JP2020150036A (ja) * 2019-03-11 2020-09-17 藤倉化成株式会社 磁性塗料組成物
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