JP2013254757A - 複合磁性体及びそれを備えたアンテナ並びに通信装置 - Google Patents

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雅之 石塚
Ryosuke Nakamura
亮輔 中村
Ryo Kikuta
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Takeshi Kawase
剛 川瀬
Ryuta Yamaya
竜太 山屋
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Abstract

【課題】電子部品や電子機器を小型化する際に、この小型化に合わせて複素透磁率の実部μr’が十分に大きく、かつ複素透磁率の実部μr’の値と複素誘電率の実部εr’の値との差が小さくなり、その結果、電子部品や電子機器を小型化すると同時に、インピーダンスマッチングによる電力損失を抑制して広帯域化することができる複合磁性体及びそれを備えたアンテナ並びに通信装置を提供する。
【解決手段】本発明の複合磁性体は、平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体であり、この複合磁性体の気孔率は20%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、複合磁性体及びそれを備えたアンテナ並びに通信装置に関し、特に詳しくは、高周波回路基板、高周波電子部品等の各種電子部品に好適に用いられ、これらの電子部品の小型化及び電力損失を抑制することが可能な複合磁性体、及びこの複合磁性体を備えることで、小型で、放射効率が高く、広帯域にて使用可能なアンテナ、並びに、このアンテナを備えた携帯用電話機、携帯情報端末等の通信装置に関するものである。
磁性材料は、電磁波に対する特性や生産性、使い勝手の良さ等から、有機高分子材料等のような絶縁材料中に混合・分散させた複合磁性体として使用されることが知られている。
この磁性材料は、電子機器に搭載される高周波回路基板、高周波電子部品、磁性シート、電磁干渉抑制シート、電磁波遮蔽シート等の各種電子部品、モーター、トランス等の電気製品、ビデオテープやフロッピー(登録商標)ディスク等の磁気記録媒体に用いられている。
近年、情報通信機器の高速化、高密度化に伴い、電子機器に搭載される電子部品においても、回路基板等の小型化や低消費電力化等が強く求められている。
一般に、物質内を伝播する電磁波の波長λは、真空中を伝播する電磁波の波長λと物質の複素誘電率の実部εr’(以下εr’と略記する場合がある)及び複素透磁率の実部μr’(以下、μr’と略記する場合がある)を用いて、
λ=λ/(εr’・μr’)1/2 ……(1)
と表すことができる。
この式(1)によれば、εr’及びμr’が大きいほど波長λの短縮率が大きくなる。したがって、上記の各種電子部品を構成する複合磁性体中の磁性粉体のεr’及びμr’を大きくすることで、波長λの短縮率が大きくなり、高周波を用いる電子部品や回路基板等の各種電子部品の小型化が可能になる。
そこで、波長λの短縮率を大きくすることで電子部品をさらに小型化するために、扁平状の磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体が提案されている(特許文献1)。
ところで、物質の特性インピーダンスZは真空の特性インピーダンスZを用いて、以下の式(2)で表すことができる。
=Z・(μr’/εr’)1/2 ……(2)
式(2)によれば、εr’とμr’の値の差が小さいほど、真空中の特性インピーダンスZと、複合磁性体の特性インピーダンスZの値の差も小さくなる。一方、電磁波が飛ぶ空間の特性インピーダンスは、真空の特性インピーダンスZとほとんど同じ値であるから、εr’とμr’の値の差が小さいほど、インピーダンスマッチングのための電力損失が抑制される。
また、式(1)により、電磁波の波長を短縮する際には、εr’及びμr’の値を大きくとればよいが、εr’の値とμr’の値との差が大きいと送受信できる周波数帯域が狭くなるということも知られている。そこで、広周波数帯域で多くの情報を送受信するためにもεr’の値とμr’の値との差が小さいことが必要である。
そこで、電子部品及び電子機器の小型化と電力損失を抑制しつつ、広い周波数帯域で多くの情報を送受信するための複合磁性体として、球状の磁性体粒子を絶縁材料中に分散することにより、1GHzの周波数におけるμr’が5以上、(μr’・εr’)−1/2が0.2以下、かつ(μr’/εr’)1/2が0.5以上かつ1以下となる複合磁性体が提案されている(特許文献2)。
特開2008−263098号公報 特開2010−103427号公報
しかしながら、特許文献2に記載された複合磁性体では、球状の磁性体粒子を用いていることから、磁性体粒子個々における反磁界係数が大きくなり、したがって、得られる複合磁性体のμr’が十分なものではなく、インピーダンスマッチングによる電力損失を抑制することができても、電子部品や電子機器の小型化が十分ではないという問題点があった。
一方、特許文献1に記載された複合磁性体では、平板状磁性体粒子として導電性の高い金属材料を用いた場合には、複合磁性体のμr’の値も大きくなるが、この磁性体粒子と絶縁材料との界面が静電容量を有することにより、εr’の値がそれ以上に大きくなり、インピーダンスマッチングによる電力損失が増加するという問題点があった。
この電力損失は、例えば、アンテナが電磁波の一種である電波を送受信する際の電波の出力損失となり、アンテナの最も重要な性能である放射効率が低下することとなる。また、μr’とεr’との差が拡大することにより、アンテナが送受信できる周波数帯域が狭くなることも問題であった。
さらに、ほとんどの磁性粉体においては、μr’はεr’より小さい(μr’<εr’)ので、磁性体粒子を改良することにより複合磁性体自体のμr’を大きくしたとしても、εr’がそれ以上に大きくなってしまい、電子部品や電子機器の小型化はできても、電力損失を抑制することができず、さらには、アンテナの送受信可能な周波数の広帯域化ができないという問題点があった。
このような問題点は、小型化の要求が大きい電子機器、例えば、携帯用電話機、携帯情報端末、多機能型携帯情報機器等の携帯用情報機器に使用されるアンテナ等では重大な問題点となる。
特に、最近、普及が著しいスマートフォン等の多機能携帯用情報端末では、筐体と略同じ大きさであるディスプレイ部から強い電界を発生させているために、このディスプレイ部では電波を遮断することとなる。したがって、アンテナは、ディスプレイと重ならない位置に設けるか、あるいはディスプレイと間隔を置いた位置に設ける必要があるが、筐体内ではアンテナを設置できる位置が限られており、しかも極めて狭い領域である。
一方、携帯用情報機器で使用されるワンセグ放送やマルチメディア放送は、用いられている電磁波の波長が長いので、広い波長帯域の電磁波の受信が必要となる。従来では、筐体内の小型アンテナでは十分な受信性能が得られず、そこで、これらの放送の受信を目的として、アンテナ部分を伸縮自在とすることにより筐体サイズの数倍の長さに延長することが可能なホイップアンテナを筐体の外に設置した携帯用情報機器が提案されている。しかしながら、このホイップアンテナを用いた場合であっても、携帯用情報機器がかばんやポケット等に入れられている場合には、ホイップアンテナを延長することができず、やはり、これらの放送の受信が困難であるという問題点があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、電子部品や電子機器を小型化する際に、この小型化に合わせて複素透磁率の実部μr’が十分に大きく、かつ複素透磁率の実部μr’の値と複素誘電率の実部εr’の値との差が小さくなり、その結果、電子部品や電子機器を小型化すると同時に、インピーダンスマッチングによる電力損失を抑制して広帯域化することができる複合磁性体及びそれを備えたアンテナ並びに通信装置を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、以下の知見を得た。
平板状磁性体粒子を絶縁材料中に分散した複合磁性体においては、平板状磁性体粒子が少量の場合には絶縁材料中に均一に分散し易いが、平板状磁性体粒子の量が増加するにしたがって、平板状磁性体粒子同士が絡み合ったり凝集したり等により、これらの平板状磁性体粒子の間に空間が生じ、この空間内に絶縁材料が進入し難くなり、結果として、得られた複合磁性体中に気孔が生じてしまうこととなる。また、平板状磁性体粒子が一方向に配向している場合には、互いに平行に配置されている平板状磁性体粒子間の間隔が極めて狭く、この狭い空間に絶縁材料が進入し難くなり、結果として、得られた複合磁性体中に気孔が生じてしまうこととなる。
そこで、平板状磁性体粒子を絶縁材料中に分散した際に、これらの平板状磁性体粒子の間に生じる気孔を低減させることにより、μr’の値は増大するものの、εr’の値がほとんど変化しないことを見出し、その結果、μr’の値とεr’の値との差を小さくすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の複合磁性体は、平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体であって、気孔率が20%以下であることを特徴とする。
本発明の複合磁性体では、前記平板状磁性体粒子の平均厚みは0.01μm以上かつ10μm以下であり、その平均長径は0.05μm以上かつ20μm以下であることが好ましい。
複素透磁率の実部μr’が7以上、複素誘電率の実部εr’が15以上であり、かつ、(μr’・εr’)−1/2が0.1以下、(μr’/εr’)1/2が0.5以上かつ1以下であることが好ましい。
複素透磁率の損失正接tanδμが0.05以下、複素誘電率の損失正接tanδεが0.1以下であることが好ましい。
本発明の複合磁性体では、70MHz以上かつ500MHz以下の周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が7以上、複素誘電率の実部εr’が15以上であり、かつ、(μr’・εr’)−1/2が0.1以下、(μr’/εr’)1/2が0.5以上かつ1以下であることが好ましい。
また、複素透磁率の損失正接tanδμが0.05以下、複素誘電率の損失正接tanδεが0.1以下であることが好ましい。
本発明のアンテナは、本発明の複合磁性体を備えてなることを特徴とする。
本発明の通信装置は、本発明のアンテナを備えてなることを特徴とする。
本発明の複合磁性体によれば、平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体の気孔率を20%以下としたので、複素透磁率の実部μr’の値は増大するものの、複素誘電率の実部εr’の値を殆ど変わらなくすることができる。したがって、複素透磁率の実部μr’の値と複素誘電率の実部εr’の値との差を小さくすることができ、その結果、この複合磁性体が適用される電子部品や電子機器を小型化することができ、インピーダンスマッチングによる電力損失を抑制することができる。
本発明のアンテナによれば、本発明の複合磁性体を備えたので、放射効率を向上させることができる。したがって、小型で、インピーダンスマッチングによる電力損失が抑制され、小型で、放射効率が高く、広帯域にて使用することができるアンテナを提供することができる。
本発明の通信装置によれば、本発明のアンテナを備えたので、小型で、放射効率が高く、広帯域にて使用することができるアンテナを用いることにより、通信装置全体の小型化を図ることができる。よって、さらに小型化され、広帯域にて使用することができる通信装置を提供することができる。
本発明の一実施形態のアンテナの一例であるモノポールアンテナの給電方法を示す模式図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の他の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機のさらに他の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機のさらに他の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の保護カバー付き携帯用電話機の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の保護カバー付き携帯用電話機の他の一例を示す平面図である。 図7のA−A線に沿う断面図である。 本発明の実施例1の複合磁性体の各周波数における複素透磁率の実部μr’及び複素透磁率の損失正接tanδμを示す図である。 本発明の実施例1の複合磁性体の各周波数における複素誘電率の実部εr’及び複素誘電率の損失正接tanδεを示す図である。 本発明の実施例2の複合磁性体の各周波数における複素透磁率の実部μr’及び複素透磁率の損失正接tanδμを示す図である。 本発明の実施例2の複合磁性体の各周波数における複素誘電率の実部εr’及び複素誘電率の損失正接tanδεを示す図である。 密閉容器を用いてスラリー及び分散媒体を撹拌する様子を示す模式図である。
本発明の複合磁性体及びそれを備えたアンテナ並びに通信装置を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[複合磁性体]
本実施形態の複合磁性体は、平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体であり、この複合磁性体の気孔率は20%以下である。
ここで、複合磁性体の気孔率は、下記の式(3)により求めることができる。
気孔率=(1−実測密度/理論密度)×100 ……(3)
この複合磁性体の理論密度は、平板状磁性体粒子の理論密度と絶縁材料の理論密度(≒実測密度)を基に、平板状磁性体粒子と絶縁材料との混合比率を考慮して算出される。
また、平板状磁性体粒子の理論密度を算出する方法としては、平板状磁性体粒子のX線回折図形から格子定数を算出し、この格子定数と結晶構造を基に理論密度値を算出する方法がある。
一方、絶縁材料の実測密度を算出する方法としては、例えば、絶縁材料が樹脂の場合には、樹脂のみを硬化させて外形寸法と質量を測定し、これらの測定値から実測密度を算出する方法がある。
また、複合磁性体の実測密度を算出する方法としては、例えば、外形寸法と質量を測定し、これらの測定値から実測密度を算出する方法、ピクノメーター法で測定した値を用いる方法がある。
この複合磁性体は、複素透磁率の実部μr’は7以上、複素誘電率の実部εr’は15以上、(μr’・εr’)−1/2は0.1以下、(μr’/εr’)1/2は0.5以上かつ1以下であることが好ましい。
また、この複合磁性体は、70MHz以上かつ500MHz以下の周波数帯域におけるμr’は7以上、εr’は15以上、(μr’・εr’)−1/2は0.1以下、(μr’/εr’)1/2は0.5以上かつ1以下であることが好ましい。
この複合磁性体では、複素透磁率の実部μr’及び複素誘電率εr’を上記範囲とすることにより、本実施形態の複合磁性体を備えた電子部品や電子機器は、小型化が可能となり、電力損失を抑制することができる。
なお、上記のμr’、εr’、(μr’・εr’)−1/2及び(μr’/εr’)1/2は、マテリアルアナライザーにて測定した値であるが、測定装置としては、上記の各値がマテリアルアナライザーと同等の精度で測定することのできる装置であればよく、マテリアルアナライザーに限定されない。
以下、この複合磁性体においては、上記の複素透磁率の実部μr’、複素誘電率の実部εr’、(μr’・εr’)−1/2及び(μr’/εr’)1/2の値として上記の範囲が好ましい理由を、この複合磁性体をアンテナに装荷した場合を例に取り詳細に説明する。
なお、同様の効果は、上記のアンテナ以外の高周波を用いた電子部品全てで得られる。
まず、複素透磁率の実部μr’は7以上が好ましく、より好ましくは9以上である。ここで、μr’を7以上とした理由は、複素誘電率の実部εr’は通常15以上の大きな値を示すので、μr’を7未満とした場合には、μr’がεr’と比べて極端に小さな値となり、特性インピーダンスの不一致による電力損失が大きくなるからである。
このμr’の上限値は特に制限されないが、実際に製造可能な平板状磁性体粒子のアスペクト比や含有率等から30以下が好ましく、20以下がより好ましい。
複素誘電率の実部εr’は15以上が好ましく、より好ましくは20以上である。ここで、εr’を15以上とした理由は、上記の式(1)にしたがってアンテナの小型化を達成するために有効な値であるからである。
この複合磁性体では、μr’及びεr’の値を上記の範囲とした場合、さらに(μr’・εr’)−1/2は0.1以下であることが好ましい。その理由は以下のとおりである。
この(μr’・εr’)−1/2の値は、式(1)に示したとおり、複合磁性体中の高周波波長の真空中の波長に対する短縮率である。なお、真空中の波長と通常の大気中の波長は、ほぼ等しい値を示す。
一般に、アンテナは、通常は波長の1/2あるいは1/4の長さの導線等からなるアンテナ導体により構成されている。周波数の低い長波長領域、特に70MHz〜500MHzの周波数帯域では波長は60cm以上であり、アンテナ導体の長さが30cm以上または15cm以上と、アンテナ自体が大きなものになってしまう。そこで、整合回路を用いて長い波長の信号を電子回路と整合して送受信しており、アンテナの長さを短くした場合は、アンテナ導体上の電流量が少なくなるために、送受信の周波数帯域が狭くなったり、放射効率が低下したりする等の問題が生じる。特に、アンテナの長さを波長の1/10以下にした場合には、電波の送受信が困難となり、実用上問題となる。
そこで、(μr’・εr’)−1/2が0.1以下の複合磁性体をアンテナに装荷すれば、複合磁性体上では、理論的には、高周波波長はほぼ1/10以下に短縮される。そのため整合回路を用いたときのように、帯域を狭くさせたり、放射効率を低下させたりすることなくアンテナの大きさを小型化することが可能となる。
上記の(μr’/εr’)1/2は、0.5以上かつ1以下であることが好ましい。その理由は以下のようである。
この(μr’/εr’)1/2の値は、上記の式(2)に示したとおり、複合磁性体の特性インピーダンスZと真空の特性インピーダンスZとの比(Z/Z)であるから、複合磁性体の特性インピーダンスZは真空の特性インピーダンスZの(μr’/εr’)1/2倍となる。なお、ここでは、真空の特性インピーダンスと通常の大気の特性インピーダンスは、ほぼ等しい値を示すこととする。
通常、複合磁性体のμr’はεr’より小さいので、複合磁性体の特性インピーダンスZは、大気の特性インピーダンスZ(≒真空の特性インピーダンスZ)の値よりも小さなものとなる。なお、高周波信号は、特性インピーダンスの大きな領域から小さな領域へ伝播する際に、反射や吸収が生じて減衰することが知られている。
そこで、複合磁性体の特性インピーダンスZが大気の特性インピーダンスZより50%以上も小さくなる場合には、高周波の減衰率は極めて大きくなり、実用上問題となる。そこで、(μr’/εr’)1/2の値を0.5以上とすると、大気から複合磁性体に電磁波が伝播する際に、特性インピーダンスの変化を50%以内に抑えることができる。したがって、高周波信号の減衰を抑制することができるのである。また、複合磁性体の特性インピーダンスZが、大気のインピーダンスZより大きくなる場合には、これらの特性インピーダンスの差がわずかでも電磁波が大きく減衰する。したがって、(μr’/εr’)1/2の値は1以下であることが好ましい。
この複合磁性体の複素透磁率の損失正接tanδμ(以下、単にtanδμと略記する場合がある)は0.1以下が好ましく、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.04以下である。また、この複合磁性体の複素誘電率の損失正接tanδε(以下、単にtanδεと略記する場合がある)は0.1以下が好ましく、より好ましくは0.07以下である。
また、70MHz以上かつ220MHz以下の周波数帯域におけるtanδμは0.1以下が好ましく、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.04以下であり、tanδεは0.1以下が好ましく、より好ましくは0.07以下である。
このように、tanδμ及びtanδεの値が、それぞれ好ましい値を超えた場合には、複合磁性体内にて高周波が複素透磁率の虚数部μr’’あるいは複素誘電率の虚数部εr’’に対応する部分だけ吸収されて熱に変わるので、高周波信号のエネルギーが減衰する上に、S/N比の低下や発熱等の問題が生じる虞があるので好ましくない。
さらに、この複合磁性体は、70MHz以上かつ500MHz以下の周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が7以上かつ損失正接tanδμが0.05以下であり、複素誘電率の実部εr’が15以上かつ損失正接tanδεが0.1以下であり、さらに、(μr’・εr’)−1/2が0.1以下、(μr’/εr’)1/2が0.5以上かつ1以下であることが好ましい。
現状では、70MHz以上かつ500MHz以下の周波数帯域では、電磁波の波長が長いことによりアンテナの小型化が難しく、したがって、携帯用電話機、携帯情報端末、多機能型携帯用情報機器等のような特に小型化の要求される用途では、ホィップアンテナを筐体の数倍の長さに伸ばして使用したり、イヤホンコードをアンテナとして代用せざるを得ない。
一方、本実施形態の複合磁性体では、70MHz以上かつ500MHz以下の周波数帯域における複素透磁率の実部μr’等の諸特性が上記の範囲を満足すれば、70MHz以上かつ500MHz以下、好ましくは90MHz以上かつ220MHz以下の周波数帯域で使用される電子部品や電子機器、例えば、携帯用電話機、携帯情報端末、多機能型携帯用情報機器等の通信装置のアンテナにおいても、小型化と電力損失の低減を両立させることができる。
さらに、500MHz以下、より好ましくは220MHz以下の周波数帯域の場合には、500MHzを超える周波数帯域の場合と比べて、tanδμ及びtanδεが低くなるので、アンテナの利得が高くなり、好ましい。
本実施形態の複合磁性体では、平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子を用い、この平板状磁性体粒子を絶縁材料中に分散させることで、得られた複合磁性体の気孔率を20%以下とすることにより、複合磁性体のμr’を向上させるが、εr’をほとんど変化させない。これにより、この複合磁性体が適用される電子部品や電子機器、例えば、携帯用電話機、携帯情報端末、多機能型携帯用情報機器等の通信装置のアンテナを小型化させることができ、電力損失を抑制することができる。
このような効果が得られるメカニズムとしては、次のように考えられる。
複合磁性体中の気孔率が増大すると、複合磁性体の単位体積当たりの磁性粉体の量が少なくなるので、μr’は小さくなる。一方、気孔の表面は絶縁材料と同様に平板状磁性体粒子との界面で静電容量を有するので、気孔率が高くなったとしてもεr’の値はほとんど変化しない。
また、複合磁性体中の気孔率が減少すると、複合磁性体の単位体積当たりの磁性粉体の量が多くなるので、μr’は大きくなる。一方、上述したとおり、εr’の値は気孔率の影響をほとんど受けないので、εr’の値はほぼ同じ値となる。
すなわち、複合磁性体中の気孔率を減少させることにより、μr’の値は大きくなるが、εr’の値は殆ど変化しないので、μr’の値とεr’の値との差は小さくなる。よって、平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子を絶縁材料中に分散させた複合磁性体の気孔率を20%以下とすることで、この複合磁性体を備えた電子部品や電子機器を小型化させることが可能であり、インピーダンスマッチングによる電力損失を抑制することができる。
なお、複合磁性体の気孔率を減少させる方法としては、複合磁性体の気孔率を20%以下に減少させることができる方法であればよく、特に制限されない。例えば、平板状磁性体粒子の絶縁材料への分散性を向上させることで、平板状磁性体粒子同士の凝集を防ぐ方法、硬化剤の種類や量の最適化により絶縁材料の硬化性を向上させる方法、流動性の高い絶縁材料を選定し、絶縁材料が平板状磁性体粒子と平板状磁性体粒子の間の間隙に進入し易くする方法、得られた複合磁性体を加圧することで内部の気孔を減少させる方法等、さらには、これらの方法を組み合わせた方法等が挙げられる。
ここで、本実施形態の複合磁性体を構成する平板状磁性体粒子及び絶縁材料について詳細に説明する。
「平板状磁性体粒子」
本実施形態における「平板状」とは、扁平状、鱗片状、フレーク状、薄板状等の厚みが薄い板状のものを意味する。
この平板状磁性体粒子の平均アスペクト比(長径(粒子内における最大長さ)/厚み)は、複数個の平板状磁性体粒子それぞれの長径と厚み、例えば、100個以上の平板状磁性体粒子、好ましくは500個の平板状磁性体粒子それぞれの長径と厚みを測定することにより、個々の平板状磁性体粒子それぞれのアスペクト比(長径/厚み)を求め、これらのアスペクト比(長径/厚み)の平均値を算出することで求められる。
このようにして得られる平均アスペクト比(長径/厚み)は、5以上が好ましく、7以上がより好ましい。
ここで、平板状磁性体粒子の平均アスペクト比(長径/厚み)が5未満では、粒子形状による反磁界係数が大きくなり、よって、複合磁性体を作製する際に印加される有効磁場が小さくなることで得られる複合磁性体のμr’が小さくなり、その結果、電子部品や電子機器を小型化させるために十分なμr’を得ることができない。
一方、平均アスペクト比が大きくなると、平板状磁性体粒子自体の機械的強度が低下する虞がある。そこで、平板状磁性体粒子が所望の機械的強度を確保するためには、平均アスペクト比は15以下が好ましく、実用的には20程度が上限となる。
さらに、平均アスペクト比が20を超えると、平板状磁性体粒子の形状が扁平すぎることで、磁性体粒子同士の間が狭くなり、この間に絶縁性材料が進入し難い空間が形成され易くなり、その結果、複合磁性体中に気泡が生じ易くなり、この気泡の存在によりμr’が低下するので好ましくない。
以上の点を勘案すれば、平板状磁性体粒子の平均アスペクト比は5以上かつ20以下であることが好ましく、7以上かつ15以下であることがより好ましい。
この平板状磁性体粒子の平均厚み及び平均長径も、上記の平均アスペクト比(長径/厚み)と同様、複数個の平板状磁性体粒子それぞれの厚み及び長径、例えば、100個以上の平板状磁性体粒子、好ましくは500個の平板状磁性体粒子それぞれの厚み及び長径を測定し、厚み及び長径各々の平均値を算出することで求めることができる。
この平板状磁性体粒子の平均厚みは、0.1μm以上かつ10μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以上かつ1μm以下である。
特に、この平板状磁性体粒子を70MHz以上の高周波帯域にて使用する場合には、平均厚みの好ましい範囲は0.1μm以上かつ0.5μm以下である。
ここで、平板状磁性体粒子の平均厚みが0.1μm未満では、平板状磁性体粒子自体の製造が難しく、複合磁性体を製造する際の取り扱いも難しく、その結果、配向が良好でありかつμr’の高い複合磁性体を得ることが難しくなるので好ましくない。一方、この平板状磁性体粒子の平均厚みが10μmを超えると、高周波を印加した際に渦電流等が生じ、得られる複合磁性体のμr’が低くなるので、好ましくない。
この平板状磁性体粒子の平均長径は、0.05μm以上かつ20μm以下が好ましく、0.2μm以上かつ10μm以下がより好ましい。
ここで、平板状磁性体粒子の平均長径が0.05μm未満では、平板状磁性体粒子自体の製造が難しく、複合磁性体を製造する際の取り扱いも難しく、その結果、配向が良好でありかつ複素透磁率の実部μr’が高い複合磁性体を得ることが難しくなるので好ましくない。
一方、この平板状磁性体粒子の平均長径が20μmを超えると、絶縁材料中での粒子の分散が不安定になり易くなり、さらには、平板状磁性体粒子間の間隙が小さくなり過ぎる等により、平板状磁性体粒子間の間隙に絶縁材料が進入し難くなり、その結果、気孔が生成され易くなり、所望のμr’が得られない虞があるので好ましくない。
この平板状磁性体粒子を構成する材料としては、磁性を有する材料であればよく、特に限定されないが、例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)等の強磁性金属、モリブデン(Mo)等の常磁性金属のうちいずれか1種からなる金属、または、これらのうち少なくとも1種以上を含む合金を用いることができる。
これらの金属または合金は、反磁性金属である銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)等を含んでいてもよい。
これらの合金としては、二元素系合金、三元素系合金等が挙げられる。
二元素系合金としては、保持力が70エルステッド(Oe)以下の軟磁性を示すパーマロイ(登録商標)等のFe−Ni合金、Fe−Si合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金等が挙げられる。
三元素系合金としては、スーパーマロイ(登録商標)等のFe−Ni−Mo合金、センダスト(登録商標)等のFe−Si−Al合金、Fe−Cr−Si合金等が挙げられる。
これらの合金の中でも、Fe−Ni合金としては、Ni78質量%−Fe22質量%の合金が、平板状磁性体粒子の平均厚みが0.2μm以下、平均長径が2μm以下のものが得られ易く、高透磁率とともに低磁気損失の複合磁性体を得られるので好ましい。
上記の合金に、その合金に含まれない金属元素で、その合金と性質が近い金属(合金に含まれている金属と周期律表で近接している金属)、例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、すず(Sn)等の群から1種または2種以上を適宜選択して添加してもよい。
上記の金属元素を合金に添加する場合には、この金属元素の含有率は、この金属元素と合金との合計質量に対して0.1質量%以上かつ90質量%以下が好ましく、1質量%以上かつ12質量%以下がより好ましく、1質量%以上かつ5質量%以下がさらに好ましい。
ここで、上記の金属元素の含有率を上記の範囲に限定した理由は、金属元素の含有率が0.1質量%未満では、後述する球状の磁性体粒子を扁平状にさせるための十分な塑性変形能を付与することができず、一方、含有率が90質量%を超えると、金属元素自体の磁気モーメントが小さいことから、この平板状磁性体粒子全体の飽和磁化が小さくなり、その結果、得られるμr’も小さくなるからである。
特に、アスペクト比が高くなり、結果として高いμr’の複合磁性体が得られ易い点で、柔らかい金属である、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)の群から選択される1種または2種以上の金属元素を1質量%以上かつ12質量%以下、好ましくは1質量%以上かつ5質量%以下含む鉄−ニッケル合金を用いるのが好ましい。
これらの中でも、ニッケル−鉄−亜鉛(Ni−Fe−Zn)合金は、Fe−Ni合金へのZnの添加により、後述する球状の磁性体粒子の加工性が高くなるために、大きなアスペクト比を有する扁平状の磁性粉体が得られ易いので好ましい。合金の組成比としては、例えば、Ni75質量%−Fe20質量%−Zn5質量%の合金、Ni76質量%−Fe20質量%−Zn4質量%等を好適に用いることができる。
この平板状磁性体粒子は、絶縁性の平板状磁性体粒子であることが好ましい。絶縁性の平板状磁性体粒子を用いることで、複合磁性体中にて平板状磁性体粒子同士が接触することにより導電パスが形成されるのを抑制することができ、その結果、複合磁性体の誘電損失を低減させることができる。この絶縁性の平板状磁性体粒子においては、少なくとも粒子の表面が絶縁性を有していればよい。
平板状磁性体粒子を絶縁性にする方法としては、特に限定されないが、例えば、平板状磁性体粒子の表面に5nm程度の絶縁性の酸化被膜を形成する方法が挙げられる。
通常、平板状磁性体粒子を大気中で取り扱うことにより、この平板状磁性体粒子の表面に自然に酸化被膜が形成されるが、自然に形成される酸化被膜では絶縁性が不十分であり、複合磁性体の誘電損失を低減することが難しい。そこで、複合磁性体の誘電損失を低減させるためには、50℃以上かつ200℃以下の温度にて、1時間〜数時間程度加熱処理することにより、平板状磁性体粒子の表面に5nm程度の絶縁性の酸化被膜を形成することが好ましい。
また、平板状磁性体粒子の表面に、この平板状磁性体粒子と異なる組成の絶縁性被膜を形成してもよい。このような組成としては、例えば、酸化ケイ素、リン酸塩等の無機物質、あるいは、樹脂、界面活性剤等の有機物質等が挙げられる。これらの絶縁性被膜は、酸化被膜(自然酸化や加熱酸化による酸化被膜を含む)を有する平板状磁性体粒子の表面に形成してもよく、酸化被膜を有しない平板状磁性体粒子の表面に形成してもよい。
「絶縁材料」
絶縁材料は、絶縁性の材料であればよく、特に制限されないが、本実施形態の複合磁性体を携帯電話用アンテナや携帯情報端末用アンテナとして用いる場合には、機械的強度が高く、吸湿性が低く、しかも形状加工性に優れていることが好ましい。このような絶縁材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ノルボルネン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が好適に用いられる。これらの樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂のなかでも、主鎖に環状構造、特に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する樹脂は、平板状磁性体粒子と絡まり難いことから平板状磁性体粒子の配向を阻害する虞が無く、しかも高いμr’が得られ易いので、好ましい。このような樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型樹脂が挙げられる。
このジシクロペンタジエン型樹脂のような硬い樹脂を用いる場合、複合磁性体の気孔率を低減させるために、このような硬い樹脂に、複合磁性体に伸縮性や可撓性を付与する絶縁性樹脂を混合させてもよい。この伸縮性や可撓性を付与する絶縁性樹脂としては、上述した樹脂から適宜選択して用いればよく、特に、液状エポキシ樹脂やビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
このジシクロペンタジエン型樹脂のような硬い樹脂と上記の液状エポキシ樹脂やビスフェノール型エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合には、ジシクロペンタジエン型樹脂の樹脂全体量に対する含有率を50質量%以上かつ90質量%以下とすることが好ましい。このジシクロペンタジエン型樹脂の含有率を上記範囲とすることで、平板状磁性体粒子の配向性が向上し、かつ高いμr’を得ることができる。
さらに、伸縮性や可撓性を付与する絶縁性樹脂を10質量%以上かつ50質量%以下含有するので、平板状磁性体粒子同士の間隙に樹脂が進入し易くなり、複合磁性体の気孔の生成を抑制し、気孔率を低減させることができるので好ましい。
また、上記絶縁材料に加えて、熱可塑性エラストマーを添加することとしてもよい。この熱可塑性エラストマーの添加により、複合磁性体の機械的強度や形状加工性を向上させることができる。したがって、この熱可塑性エラストマーが添加された複合磁性体は、靭性、柔軟性、変形性により優れたものとなる。
この熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマーの群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
この熱可塑性エラストマーの添加量は、複合磁性体の用途により必要とされる耐熱性を勘案して、適宜調整すればよい。
[複合磁性体の製造方法]
次に、本実施形態の複合磁性体の製造方法について説明する。
この複合磁性体の製造方法は、絶縁材料に平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子を混合・分散させて混合物を得る混合工程と、得られた混合物を所定の形状に成形する成形工程と、得られた成形体を乾燥・硬化させる乾燥・硬化工程とを有する。
「混合工程」
この工程では、平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子と、絶縁材料と、必要に応じて硬化剤と溶媒とを混合して、平板状磁性体粒子を絶縁材料中に分散させた混合物を作製する工程である。
平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子を作製する方法は特に制限されないが、例えば、液相還元法、アトマイズ法等で合成した球状磁性体粒子を溶媒中にて扁平化処理することにより得ることができる。ここで、「扁平化処理」とは、球状の磁性体粒子に機械的応力(機械的なせん断エネルギー)を加えて、この球状の磁性体粒子を塑性変形させるとともに、これら磁性体粒子同士を凝着させることにより、平板状磁性体粒子を作製する方法である。
この扁平化処理装置としては、ビーズミル、ニーダ、ロールミル、遊星ボールミル、ジェットミル等が挙げられる。また、これらの装置で用いるボール等の分散媒体(メディア)としては、球状磁性体粒子に対して不純物とならず、かつ剪断エネルギーを効果的に加えることができるものであればよく、アルミニウム、スチール等の金属、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物、二酸化ケイ素等の無機酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、炭化ケイ素等の炭化物、ソーダガラス、鉛ガラス、高比重ガラス等の各種ガラスが挙げられる。
この混合工程においては、分散媒体から球状粒子へのせん断エネルギーの付与を効果的に行うために、界面活性剤等を添加することも好ましい。
ここで用いられる球状磁性体粒子の平均一次粒子径は、所望の形状が得られる大きさであれば特に限定されないが、液相還元法、水アトマイズ法等により作製された平均一次粒子径が10nm以上かつ3μm以下の球状の磁性体粒子を用いるのが好ましい。
球状の磁性体粒子の平均一次粒子径を上記範囲とすれば、球状の磁性体粒子の表面が高活性となり、粒子同士の親和性も高くなり、粒子同士の凝着を促進することができるので、好ましい。
この平板状磁性体粒子を作製する好ましい方法としては、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性体粒子を界面活性剤を含む溶液中に分散したスラリーと、分散媒体とを、密閉可能な容器内に、上記のスラリー及び分散媒体の合計の体積量が、密閉容器内の体積と等しくなるように充填し、このスラリーを分散媒体と共に密閉状態にて撹拌し、球状の磁性体粒子同士を変形及び融着させることにより、複数個の球状の磁性体粒子から1個の平板状磁性体粒子を得る方法がある。
この方法により、アスペクト比が2以上かつ20以下で、厚みや長径等の形状が略均一の平板状磁性体粒子を容易に作製することができる。
以下、この平板状磁性体粒子の製造方法について、図13に基づき詳細に説明する。
まず、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性体粒子202を界面活性剤を含む溶液中に分散してスラリー203とする。磁性体粒子202の組成は、上記の平板状磁性体粒子の組成と全く同様である。
界面活性剤としては、磁性体粒子202の表面と相性の良い窒素、リン、イオウ等の元素を含有している界面活性剤が好ましく、例えば、窒素含有ブロックコポリマー、燐酸塩、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
この界面活性剤を溶解させる溶媒としては、特に限定されないが、磁性体粒子に含まれる金属元素の酸化を防止する必要がある点を考慮すると、有機溶媒が好ましく、特に、キシレン、トルエン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の非極性有機溶媒が好ましい。
次いで、スラリー203及び分散媒体204を、密閉可能な容器201内に、スラリー203及び分散媒体204の合計の体積が密閉容器201内の体積と同じくなるように充填し、スラリー203を分散媒体204と共に密閉状態にて撹拌し、球状の磁性体粒子202同士を融着させながら扁平状に変形させて平板状磁性体粒子とする。
ここでは、スラリー203及び分散媒体204の密閉容器201内への充填量を、密閉容器201内の体積と同一とする。換言すれば、スラリー203及び分散媒体204を、密閉容器内201内に隙間なく充填する。
ここで、密閉容器201内に隙間があるようにスラリー203及び分散媒体204を加えた場合には、一軸回転体205が回転した際に、遠心力によりスラリー203及び分散媒体204の液面は、中心軸近傍が低く、周縁部が高いすり鉢状となる。
一軸回転体205により球状の磁性体粒子202を含むスラリー203及び分散媒体204に加えられた機械的応力は、すり鉢状の空間に逃げていくので、密閉容器201内全体で分散媒体204を介して球状の磁性体粒子202に伝搬される機械的応力は不均一なものとなり、得られる平板状磁性体粒子の厚みがばらつく要因となる。このような平板状磁性体粒子の厚みのばらつきや割れや欠けは、磁気損失が増加する要因となる。
また、すり鉢状の空間の底部近傍(中心軸近傍)で平板状となった磁性体粒子は、分散媒体204と共にすり鉢状の空間に放出されて不規則な衝撃を受けることとなり、割れや欠け等が生じる場合がある。
そこで、図13に示すように、密閉容器201内が球状の磁性体粒子202を含むスラリー203及び分散媒体204により満たされた状態で機械的応力を加えることにより、一軸回転体205が高速で回転したとしても、すり鉢状の空間が生じる虞は無い。したがって、一軸回転体205により球状の磁性体粒子202を含むスラリー203及び分散媒体204に加えられた機械的応力は、密閉容器201内全体で分散媒体204を介して球状の磁性体粒子202に均一に伝搬され、得られた平板状磁性体粒子の厚みがばらつく虞は無い。また、平板状磁性体粒子は、機械的応力を加えられる際に、不規則な衝撃を受けることもないので、割れや欠け等がほとんど生じない。
なお、密閉容器201に、スラリー203を密閉容器201内に導入・導出するための流入口及び流出口を設け、スラリー203を密閉容器201内に循環するようにしてもかまわない。この場合、予め分散媒体204を密閉容器201内に収納しておき、球状の磁性体粒子202と界面活性剤と溶媒とを混合したスラリー203を流入口から投入して密閉容器201内に空間がないように充填し、流出口から排出されるスラリー203を再度密閉容器201内へ戻すようにすればよい。
分散媒体204としては、球状の磁性体粒子202よりも硬度が高いことが必要であり、例えば、アルミニウム、鋼(スチール)、ステンレススチール、鉛等の金属球、アルミナ、ジルコニア、二酸化ケイ素、チタニア等の金属酸化物あるいは無機酸化物からなる球状焼結体、窒化ケイ素等の無機窒化物からなる球状焼結体、炭化ケイ素等の無機炭化物からなる球状焼結体、ソーダガラス、鉛ガラス、高比重ガラス等からなるビーズと称される球状粒子が挙げられ、中でも、比重6以上のジルコニア、鋼(スチール)、ステンレススチール等が効率の点から好ましい。
球状の磁性体粒子202への機械的応力の付加は、分散媒体204同士の衝突の際、または分散媒体204と密閉容器201の内壁との衝突の際に、磁性体粒子202がこれらの間に挟まれることで与えられる衝撃によって行われる。この場合、分散媒体204同士または分散媒体204と密閉容器201の内壁との衝突回数が増加するにつれて、球状の磁性体粒子202同士の融着性及び変形性が向上する。
ここでは、分散媒体204の平均粒径が小さいほど、単位体積当たりに存在する分散媒体204の個数が増加し、衝突回数も多くなる。したがって、磁性体粒子202の融着性及び変形性も向上する。一方、分散媒体204の平均粒径が小さすぎると、分散媒体204をスラリー203から分離することが困難となる。したがって、分散媒体204の平均粒径は、少なくとも0.03mm以上、好ましくは0.04mm以上であることが必要である。
また、分散媒体204の平均粒径が大き過ぎると、衝突回数が減少することにより、球状の磁性体粒子202同士の変形及び融着性が低下する。したがって、分散媒体の平均粒径の上限値は3.0mmである。
密閉容器201としては、ディスク、スクリュー、羽根、ピン等の一軸回転体205を高速回転することで、分散媒体204をスラリー203とともに高速回転できる構成を有するものが好ましい。
密閉容器201は、単純な1軸回転方式であることから、大型化も容易であり、工業生産上も有利である。
この一軸回転体205の回転数は、密閉容器201の大きさにより決定される。例えば、内径が120mmの密閉容器201の場合、球状の磁性体粒子202を含むスラリー203及び分散媒体204の一軸回転体205の径方向の外周端205a付近の流速が5m/秒以上となるように一軸回転体205の回転数を設定することが好ましく、さらには、外周端205a付近の流速が8m/秒以上となるように一軸回転体205の回転数を設定することがより好ましい。
一方、外周端5a付近の流速が15m/sを超えると、エネルギーが大きすぎるために平板状になった粒子を破壊してしまう虞があるので、外周端5a付近の流速は15m/s以下であることが好ましい。
なお、密閉容器201の内容積が小さいと、得られた平板状磁性体粒子に球状の磁性体粒子202が残留する虞がある。残留した球状の磁性体粒子202は、球状の磁性体粒子202同士の接触、または球状の磁性体粒子202と平板状磁性体粒子との接触により、 tanδμを増加させたり、平板状磁性体粒子の配向を阻害したりする虞がある。したがって、平板状磁性体粒子は、磁性体粒子全体量の90質量%以上が好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、球状の磁性体粒子202を実質的に含まないことが望ましい。
ここで、密閉容器201の内容積が小さい場合に球状の磁性体粒子202が残留する理由は、密閉容器201の角や一軸回転体205と密閉容器201との接合部といった機械的応力が十分に伝わらないデッドスペースが相対的に大きくなるからと考えられる。そこで、密閉容器201の内容積を大きくすると、相対的にデッドスペースが小さくなり、よって、球状の磁性体粒子202に機械的応力が十分に伝わり、球状の磁性体粒子202同士の融着性及び変形性が向上し、その結果、球状の磁性体粒子202の残留が少なくなり、実質的に球状の磁性体粒子202がなくなることとなる。
このように、実質的に球状の磁性体粒子202が残留しなくなる密閉容器201の体積は、1L以上が好ましく、より好ましくは5L以上である。
以上により、球状の磁性体粒子202同士は、一軸回転体205により加えられた機械的応力により融着しながら変形し、平板状磁性体粒子となる。
次いで、この平板状磁性体粒子を分散媒体204及び溶媒から分離する。
分離方法は、平板状磁性体粒子を作製した後のスラリー203から溶媒を除去することができれば特に限定されず、加熱乾燥、真空乾燥、フリーズドライ等が挙げられるが、乾燥効率の点で真空乾燥が好ましい。また、乾燥効率を高めるために、乾燥工程の前に、固液分離等の手法によりある程度の溶媒を除去してもよい。固液分離の方法としては、フィルタープレスや吸引ろ過等のろ過操作や、デカンターや遠心分離機による遠心分離操作等、通常の方法を用いればよい。
また、溶媒が除去された平板状磁性体粒子を、50℃以上かつ200℃以下にて、1時間以上かつ数時間以下、加熱処理してもよい。この加熱処理により、平板状磁性体粒子の表面に酸化皮膜を形成することができ、絶縁性の平板状磁性体粒子を得ることができる。
ここでは、特に、高周波帯域にて使用する場合を考慮して、上記の平板状磁性体粒子を用いているが、厚み、長径及びアスペクト比が上記範囲内にある板状、棒状、扁平状、鱗片状、フレーク状等の各種形状の磁性体粒子を用いることもできる。
絶縁材料については、既に述べているので、説明を省略する。
絶縁材料として熱硬化性樹脂を用いる場合、硬化剤の種類や添加量については、使用する熱硬化性樹脂の種類や量に応じて適宜調整すればよい。
上記の熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、エポキシ基同士の縮合反応を促進させて、複合磁性体の成形体における硬化不良による気孔の発生を防止する点で第3アミンが好ましい。
第3アミンとしては、例えば、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
硬化剤の添加量としては、官能基の縮合反応を促進させる点を考慮すると、熱硬化性樹脂の全体の質量に対して0.5質量%以上かつ3質量%以下、添加させればよい。
なお、絶縁材料として熱可塑性樹脂を用いる場合には、硬化剤は不要である。
溶媒としては、上記の絶縁材料を溶解させることができるものであればよく、特に制限はされないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられる。
これらの溶媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。特に、シクロヘキサノンやキシレン等の沸点の高い溶媒は、溶媒の揮発によるスラリーの増粘を抑制することができるので好ましい。
溶媒は、絶縁材料と平板状磁性体粒子との混合物中に30質量%以上になるように混合させるのが好ましく、より好ましくは35質量%以上である。
溶媒を30質量%以上混合させることにより、得られた混合物の粘度が低下するので、混合時に平板状磁性体粒子同士が凝集していた場合においても、凝集がほぐれて絶縁材料中における分散性が向上する。これにより、複合磁性体の気孔率を低減させることができる。
なお、溶媒の量が多すぎると、後述する乾燥に時間がかかり、乾燥時に気孔が生成する虞があるので、溶媒の量は、平板状磁性体粒子と絶縁材料との合計質量に対して50質量%以下であることが好ましい。
絶縁材料として熱硬化性樹脂を用いる場合、この混合物中の平板状磁性体粒子の含有率は、熱硬化性樹脂と硬化剤と平板状磁性体粒子の合計体積量中、10体積%以上かつ60体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以上かつ50体積%以下である。
ここで、平板状磁性体粒子の含有率が10体積%未満では、平板状磁性体粒子が少なすぎて複合磁性体としての磁気特性が低下してしまうので好ましくない。一方、この平板状磁性体粒子の含有率が60体積%を超えると、平板状磁性体粒子が多すぎてしまい、この平板状磁性体粒子と熱硬化性樹脂と硬化剤と溶媒とを含む混合物の流動性が低下し、したがって、この混合物を用いて成形する際の成形性が低下してしまうので、好ましくない。
なお、この複合磁性体中には、球状の磁性体粒子が含まれていないことが好ましい。
絶縁材料として熱可塑性樹脂を用いる場合、この混合物中の平板状磁性体粒子の含有率は、熱可塑性樹脂と平板状磁性体粒子の合計体積量中、10体積%以上かつ80体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以上かつ60体積%以下である。
ここで、平板状磁性体粒子の含有率が10体積%未満では、平板状磁性体粒子が少なすぎて複合磁性体としての磁気特性が低下してしまうので好ましくない。一方、この平板状磁性体粒子の含有率が80体積%を超えると、平板状磁性体粒子が多すぎてしまい、この平板状磁性体粒子と熱可塑性樹脂と溶媒とを含む混合物の流動性が低下し、したがって、この混合物を用いて成形する際の成形性が低下してしまうので、好ましくない。
なお、この複合磁性体中には、球状の磁性体粒子が含まれていないことが好ましい。
上記混合物の粘度は0.1Pa・s以上かつ10Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは0.3Pa・s以上かつ10Pa・s以下である。
ここで、粘度が0.1Pa・s未満の場合には、流動性が大きくなりすぎて乾燥工程での生産性が悪くなり、一方、粘度が10Pa・sを超えると、粘性が高すぎて平板状磁性体粒子の配向が生じ難くなり、その結果、複合磁性体中における平板状磁性体粒子の配向性が低下してしまうので、好ましくない。
これら平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子と、絶縁材料と、必要に応じて硬化剤と溶媒とを混合し、混合物を得る。
混合装置としては、これら平板状磁性体粒子、絶縁材料、硬化剤及び溶媒を均一に混合・分散させてスラリー状の混合物とすることができればよく、特に制限はされないが、例えば、ロールミル、自公転式ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、撹拌機等が挙げられる。これらの装置で混合する場合、平板状磁性体粒子が凝集しすぎず、絶縁材料中に均一に分散させるように、混合条件を適宜調整すればよい。
「成形工程」
上記の工程で得られた混合物を、所定の形状のシート状、フィルム状またはバルク状に成形する工程である。
成形法としては、混合物を一定の形状に成形することができ、かつ成形後の形状を保持することができればよく、特に制限されない。
また、成形体の形状や大きさも特に制限はされず、例えば、シート状またはフィルム状に成形してもよく、直方体状等の厚みがある形状、例えばバルク状に成形してもよい。
シート状またはフィルム状に成形する場合、シート状またはフィルム状の基体上に上記の混合物を塗布することで容易に得ることができる。この方法は、量産性に優れているので好ましい。
シート状またはフィルム状に成形する方法としては、ドクターブレード法、バーコート法、ダイコート法、プレス法等を挙げることができる。また、薄板状等の厚みがある形状に成形する場合、例えば、任意の形状の型に混合物を流し込む方法等が挙げられる。
また、複合磁性体を積層して積層構造体とする場合には、ドクターブレード法によりシート状またはフィルム状に成形した複合磁性体を積層することが好ましい。
「配向工程」
上記の成形工程で得られた成形体中の平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子を一方向に配向させる工程である。
上記の成形工程で得られた成形体が、所望のμr’を有している場合には、この配向工程は不要であるが、よりμr’が高い複合磁性体を得るためには、得られた成形体に磁場を印加して成形体中の平板状磁性体粒子を一方向に配向させる配向工程を施す必要がある。
成形体中の平板状磁性体粒子を配向させる方法としては、成形体中の平板状磁性体粒子を一方向に配向させることができるように磁場を印加すればよく、特に制限されない。
成形体中の平板状磁性体粒子に磁場を印加する場合、成形体中で磁力線が曲がると、平板状磁性体粒子を一方向に配向させることができない。したがって、磁場は発生する磁力線が成形体の表面に対して略平行となるように印加することが好ましい。
印加する磁場の大きさは、100ガウス以上かつ3000ガウス以下であることが好ましい。磁場の大きさが100ガウス未満であると、磁場が小さすぎてしまい、成形体中の平板状磁性体粒子を十分に一方向に配向させることができない場合がある。一方、3000ガウスを超えると、磁場が大きすぎてしまい、この磁場により平板状磁性体粒子同士が凝集して絶縁材料である樹脂と分離してしまう虞があり、得られた複合磁性体の磁気特性に不均一が生じる虞があるので好ましくない。
「乾燥・硬化工程」
上記の配向工程で平板状磁性体粒子を配向させた成形体を、乾燥・硬化させ、複合磁性体とする工程である。
ここでは、平板状磁性体粒子が配向した成形体を乾燥させ、次いで、加熱あるいは紫外線照射等により絶縁材料である樹脂、例えば、熱硬化性樹脂を硬化させる。
乾燥・硬化条件(処理温度、処理時間等)は、使用する樹脂や溶媒の種類に応じて適宜調整すればよい。例えば、熱可塑性樹脂の場合、乾燥により溶媒を除去することが好ましい。
「プレス工程」
上記の乾燥工程で得られた成形体の気孔率が20%以下であれば、このプレス工程は不要であるが、成形体の気孔率が20%を超える場合や、成形体の気孔率をさらに減少させたい場合には、上記の乾燥工程後に、成形体をプレスする工程を施すことが好ましい。プレス装置は公知のものを適宜用いればよい。
プレス装置で成形体に圧力を加える際に、絶縁材料として樹脂を用いる場合には、効果的に気孔を減少させるために、樹脂の軟化温度以上かつ硬化開始温度以下で圧力を加えることが好ましい。特に、熱可塑性樹脂を使用した場合には、樹脂の軟化温度以上の温度で圧力を加えて、樹脂同士を融着させる必要がある。
プレス時の圧力は適宜調整すればよいが、5MPa〜20MPa程度の圧力を加えるのが好ましい。
以上により、本実施形態の複合磁性体を得ることができる。
[アンテナ]
本実施形態のアンテナは、本実施形態の複合磁性体を備えたものである。
この複合磁性体を備えたアンテナの一形態として、本実施形態の複合磁性体を装荷したアンテナがある。
アンテナに本実施形態の複合磁性体を装荷させる方法としては、特に制限されず、アンテナを構成する銅線等の導体(以下、「アンテナ導体」と称する)に本実施形態の複合磁性体を被覆させる等、公知の方法で装荷させればよい。
ここで、「装荷」とは、電磁的な相互作用により波長短縮等の効果が得られるようにするために、アンテナ導体に複合磁性体を接触させたり、あるいは近づけたりすることを意味する。
アンテナの種類及び形状は、特に制限されず、モノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、ループアンテナ、ミアンダアンテナ、ヘリカルアンテナ、パッチアンテナ、F型アンテナ、L型アンテナ等が好適に用いられる。また、アンテナをより小型化させるために、整合回路を併用してもよい。
例えば、モノポールアンテナやL字アンテナは、アンテナ導体を中心として、上記の複合磁性体を棒状あるいは長尺の板状に加工したもので挟み込むように形成することで得ることができる。
また、ヘリカルアンテナは、上記の複合磁性体を棒状に加工した棒状複合磁性体の周囲に、銅線等からなる長尺かつ極細のアンテナ導体をコイル状に巻回することで得ることができる。
これらのアンテナでは、波長短縮効果により、所望波長の1/4よりも長さが短い小型アンテナを得ることが可能である。
図1は、本実施形態のアンテナの一例であるモノポールアンテナの給電方法を示す模式図であり、このモノポールアンテナ1は、棒状のアンテナ導体2と、このアンテナ導体2を埋め込むことによりその表面を被覆した板状の複合磁性体3とを備えている。
このモノポールアンテナ1は、所定形状の導体からなる地板4に同軸コネクタ等を介して接続され、この同軸コネクタ等の内導体である接続部5を給電点とするように交流信号発信機6が接続されている。給電点と地板4とは、電気的に絶縁されている。
その他の種類及び形状のアンテナにおける給電方法も上記と同様、アンテナは地板4に同軸コネクタ等を介して接続され、この接続部5を給電点とするように交流信号発信機6が接続される。
[通信装置]
本実施形態の通信装置は、上記のアンテナを備えている。
この通信装置としては、電磁波を介して各種情報の送信、受信、送受信のいずれかを行う装置であればよく、特に限定されない。例えば、パーソナルコンピューター、携帯用電話機、携帯情報端末、スマートフォン等の多機能携帯用情報端末、PDA(Personal Digital Assistant)等の通信機器、オーディオ機器、ビデオ機器、カメラ機器等の各種電子機器等が挙げられる。
本実施形態の通信装置には、上述した各種機器の他、これらの各種機器に付随する保護カバー等の各種アクセサリー(補助用具)に上記のアンテナを設けた補助アンテナを装着した通信装置も含まれる。
これらの通信装置においては、上記のアンテナは、通信装置の外部に設けられていてもよく、また、内蔵されていてもよく、いずれでもよい。
ここで、通信装置として携帯用電話機を例に取り、上記のアンテナの様々な取り付け方について説明する。
図2は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の一例を示す斜視図であり、この携帯用電話機11は、筐体12の前面に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部13が設けられ、この表示部13の裏面側には地板(図示略)が設けられ、この地板にコネクタ等を介して棒状のモノポールアンテナ14内に配設されたアンテナ導体15が接続され、この接続部を介して携帯用電話機の電子回路(図示略)が接続されている。このモノポールアンテナ14は、銅線等の導体からなるアンテナ導体15が複合磁性体16により被覆されている。
このモノポールアンテナ14は、筐体12から取り出し可能かつ筐体12に収納可能とされており、通信時は、必要に応じて筐体12から引き出して通信を行い、通信しない時には、筐体12に押し込んで収納するようになっている。
このモノポールアンテナ14は、棒状である必要はなく、伸縮自在であってもよい。
このモノポールアンテナ14は、アンテナ利得を向上させることを考慮すると、表示部13等と重ならない位置に設けることが好ましい。なお、表示部13等と重なる位置に設ける場合には、筐体12の厚みをとって、筐体12内部でモノポールアンテナ14と表示部13の間隔をとることが望ましい。
図3は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の他の一例を示す斜視図であり、この携帯用電話機21は、筐体22の前面に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部23が設けられ、側面に外部アンテナ用端子24が設けられ、この外部アンテナ用端子24には、棒状のモノポールアンテナ25の側面に設けられた接続端子26が嵌め込まれており、このモノポールアンテナ25内に配設されたアンテナ導体27が、表示部23の裏面側に設けられた地板(図示略)に接続端子26及び外部アンテナ用端子24を介して電気的に接続され、この接続部を介して携帯用電話機の電子回路(図示略)が接続されている。このモノポールアンテナ25は、銅線等の導体からなるアンテナ導体27が複合磁性体28により被覆されている。
この携帯用電話機21では、モノポールアンテナ25の接続端子26を外部アンテナ用端子24に挿入・取り外しすることで、モノポールアンテナ25の装着及び取り外し可能とされている。
図4は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機のさらに他の一例の一部を示す部分斜視図であり、この携帯用電話機31は、筐体32の前面の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部(図示略)の背面側に地板33が設けられ、この地板33と重ならない位置(図4では、地板33の上方)にL字アンテナ34が設けられ、このL字アンテナ34内に配設されたアンテナ導体35が地板33にコネクタ等を介して接続され、この接続部を介して携帯用電話機の電子回路(図示略)が接続されている。このL字アンテナ34は、銅線等の導体からなるアンテナ導体35が複合磁性体36により被覆されている。
図5は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機のさらに他の一例の一部を示す部分斜視図であり、この携帯用電話機41は、筐体42の前面の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部(図示略)の背面側に地板43が設けられ、この地板43と重ならない位置(図5では、地板43の上方)にヘリカルアンテナ44が設けられ、このヘリカルアンテナ44の螺旋状のアンテナ導体46が地板43にコネクタ等を介して接続され、この接続部を介して携帯用電話機の電子回路(図示略)が接続されている。このヘリカルアンテナ44は、棒状の複合磁性体45を取り巻くように、銅線等の導体からなるアンテナ導体46が螺旋状に巻回されている。
図6は、本実施形態の通信装置の一種の保護カバー付き携帯用電話機の一例を示す斜視図であり、この保護カバー付き携帯用電話機51は、携帯用電話機52と、この携帯用電話機52に装着されたアクセサリーの一種である保護カバー53とにより構成され、携帯用電話機52は、筐体54の前面に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部55が設けられ、この筐体54の一方の側面に表示部55の裏面側に設けられた地板(図示略)に接続する外部アンテナ用端子56が設けられている。
一方、保護カバー53は、柔軟性を有する樹脂等からなる変形可能なもので、筐体54の表示部55を除く周縁部及び背面を覆うように設けられ、この保護カバー53の一方の側部にはダイポールアンテナ61が設けられ、このダイポールアンテナ61は、銅線等の導体からなるアンテナ導体62が複合磁性体63により被覆されている。このダイポールアンテナ61には、このダイポールアンテナ61を外部アンテナ用端子56に接続するための接続端子64が設けられている。
ダイポールアンテナ61は、モノポールアンテナを対にして2つ備えたもので、保護カバー53を携帯用電話機52に装着したときに、表示部55と重ならない位置に備えられていることが好ましい。なお、表示部55と重なる位置に設ける場合には、保護カバー53の厚みを厚くし、保護カバー53内部でダイポールアンテナ61と表示部55の間隔を適宜空けることが望ましい。
この保護カバー付き携帯用電話機51は、ダイポールアンテナ61が表示部55の裏面側に設けられた地板(図示略)に接続端子64及び外部アンテナ用端子56を介して接続され、この接続部を介して携帯用電話機の電子回路(図示略)が接続されている。
この保護カバー付き携帯用電話機51では、保護カバー53の接続端子64を携帯用電話機52の外部アンテナ用端子56に挿入し、この状態を保持したまま、保護カバー53を携帯用電話機52に被せることで、ダイポールアンテナ61を携帯用電話機52に接続することができる。
また、保護カバー53を携帯用電話機52から取り外すことで、ダイポールアンテナ61を携帯用電話機52から取り外すことができる。
図7は、本実施形態の通信装置の一種の保護カバー付き携帯用電話機の他の一例を示す平面図、図8は図7のA−A線に沿う断面図であり、この保護カバー付き携帯用電話機71は、携帯用電話機72と、保護カバー73とにより構成され、携帯用電話機72は、筐体74の前面に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部75が設けられ、この筐体74の上面に表示部75の裏面側に設けられた地板(図示略)に接続する外部アンテナ用端子76が設けられている。
一方、保護カバー73は、柔軟性を有する樹脂等からなる変形可能なもので、筐体74の周縁部及び背面を覆うように設けられ、この保護カバー73の背面の上部にはスパイラルアンテナ81が設けられている。このスパイラルアンテナ81は、スパイラル状にしたアンテナ導体82を複合磁性体83により被覆したもので、このスパイラルアンテナ81には、外部アンテナ用端子76に接続するための接続端子84が設けられている。
このスパイラルアンテナ81は、保護カバー73を携帯用電話機72に装着したときに、表示部75と重ならない位置に備えられていることが好ましい。なお、表示部75と重なる位置に設ける場合には、保護カバー73の厚みを厚くし、保護カバー73内部でスパイラルアンテナ81と表示部75の間隔を適宜空けることが望ましい。
この保護カバー付き携帯用電話機71は、スパイラルアンテナ81が、表示部75の裏面側に設けられた地板(図示略)に接続端子84及び外部アンテナ用端子76を介して接続され、この接続部を介して携帯用電話機の電子回路(図示略)が接続されている。
この保護カバー付き携帯用電話機71では、保護カバー73の接続端子84を携帯用電話機72の外部アンテナ用端子76に挿入し、この状態を保持したまま、保護カバー73を携帯用電話機72に被せることで、スパイラルアンテナ81を携帯用電話機72に接続することができる。
また、保護カバー73を携帯用電話機72から取り外すことで、スパイラルアンテナ81を携帯用電話機72から取り外すことができる。
上記の各例によれば、搭載しているモノポールアンテナ14、25、L字アンテナ34、ヘリカルアンテナ44、ダイポールアンテナ61及びスパイラルアンテナ81が共に小型であるから、アンテナを携帯用電話機内の狭い空間に配置させることができ、アンテナ以外の部品により電波が遮断されることなく、アンテナ利得の高い携帯用電話機を得ることができる。
特に、ダイポールアンテナ61及びスパイラルアンテナ81は、保護カバー53、73のようなアクセサリー内にも設置が可能であるから、携帯用電話機の筐体内の領域を占有することなく、携帯用電話機に補助アンテナを設けることができ、アンテナの性能を向上させることができる。
以上説明したように、本実施形態の複合磁性体によれば、平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体の気孔率を20%以下としたので、複素透磁率の実部μr’の値を向上させ、かつ複素誘電率の実部εr’の値を殆ど変わらなくすることができる。したがって、この複合磁性体が適用される電子部品や電子機器を小型化することができ、インピーダンスマッチングによる電力損失を抑制することができる。
平板状磁性体粒子として平均厚みが0.01μm以上かつ0.5μm以下、平均長径が0.05μm以上かつ10μm以下のものを用いた場合には、この平板状磁性体粒子を絶縁材料中で容易に一方向に配向することができ、μr’がより高い複合磁性体が得られる。これにより、電子部品や電子機器のさらなる小型化を図ることができる。
また、複素誘電率の損失正接tanδμを0.1以下、より好ましくは0.05以下、複素誘電率の損失正接tanδεを0.1以下とした場合には、電子部品や電子機器の利得を向上させることができる。
さらに、70MHz以上かつ220MHzまでの周波数帯域における複素誘電率の損失正接tanδμを0.1以下、より好ましくは0.05以下、複素誘電率の損失正接tanδεを0.1以下とした場合には、VHF帯で使用される電子部品や電子機器の利得を向上させることができる。
本実施形態のアンテナによれば、本実施形態の複合磁性体を備えたので、複素透磁率の実部μr’が7以上、複素誘電率の実部εr’が15以上、(μr’・εr’)−1/2が0.1以下、(μr’/εr’)1/2が0.5以上かつ1以下の性能を得ることができる。
したがって、波長短縮効果により、所望波長の1/4よりも長さが短い小型で、インピーダンスマッチングによる電力損失が抑制され、放射効率が高いアンテナを提供することができる。よって、マルチメディア放送のようなVHF帯のように波長の長い電波であっても、波長短縮効果により、携帯用電話機の筐体サイズで受信できる小型のアンテナを提供することができる。
本実施形態の通信装置によれば、本実施形態の小型のアンテナを備えたので、電波を遮断する他の電子機器の影響を受けにくい場所にアンテナを配置させる自由度が高く、良好な送受信が可能な小型の通信装置を得ることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂 EPICLON HP−7200L(DIC株式会社製)と、硬化剤として、エポキシ樹脂と硬化剤の合計質量中1質量%となる1−イソブチル−2メチルイミダゾールと、樹脂と硬化剤と平板状磁性体粒子の合計体積量に対して40体積%のNi75質量%−Fe20質量%−Zn5質量%のNi−Fe−Zn合金からなる平均長径が2.5μm、平均厚みが0.3μm、平均アスペクト比が8.3の平板状磁性体粒子と、平板状磁性体粒子と樹脂の合計質量に対して40質量%のシクロヘキサノンとを遊星撹拌機に投入し、15分間混合してスラリー状の混合物を得た。この混合物の粘度は4Pa・sであった。
次いで、この混合物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にバーコーターにて乾燥時の膜厚で0.1mmとなるように、シート成形を行った。
シート成形後、このシートの面に水平方向に900ガウスの磁場を6分間印加した。次いで、80℃の温風を当てて風乾させた。次いで、樹脂の軟化点以上である110℃で10MPaのプレス圧力を加えた後に、160℃にて2時間硬化反応を行い、実施例1の複合磁性体を得た。
次いで、この複合磁性体の電磁気特性及び気孔率を、以下の方法により評価した。
(1)電磁気特性
複合磁性体の200MHzにおける複素透磁率の実部μr’、複素誘電率の実部εr’、複素透磁率のtanδμ及び複素誘電率のtanδεを、マテリアルアナライザー E4991A型(Agilent Technologies社製)にて、大気中室温(25℃)にて測定した。そして、これらμr’及びεr’を基に(μr’・εr’)−1/2及び(μr’/εr’)1/2を算出した。
(2)気孔率
複合磁性体の寸法と質量を測定し、これらの測定値に基づき実測密度を算出した。
一方、樹脂の理論密度(≒実測密度)は樹脂のみの硬化体の寸法と質量を測定し、これらの測定値から算出した。また、平板状磁性体粒子の理論密度は、平板状磁性体粒子のX線回折パターンから求めたX線理論密度を用いた。
これらの値を式(3)に代入し、複合磁性体の気孔率を算出した。
実施例1の複合磁性体の気孔率及び200MHzにおいてマテリアルアナライザーより得られた磁気特性の結果を表1に示す。
また、実施例1の複合磁性体の複素透磁率の実部μr’及びtanδμを図9に、複素誘電率の実部εr’及びtanδεを図10に、それぞれ示す。
[実施例2]
ジシクロペンタジエン型樹脂の替わりに、ジシクロペンタジエン型樹脂と液状エポキシ樹脂 リカレジンBPO−20(新日本理化株式会社製)を85:15の質量比で混合した樹脂を使用し、さらにプレス圧力を加える際の温度を160℃とした以外は、実施例1に準じて実施例2の複合磁性体を得た。
実施例2の複合磁性体の気孔率及び200MHzにおいてマテリアルアナライザーより得られた磁気特性の結果を表1に示す。
また、実施例2の複合磁性体の複素透磁率の実部μr’及びtanδμを図11に、複素誘電率の実部εr’及びtanδεを図12に、それぞれ示す。
[実施例3]
ポリスチレン樹脂 ディックスチレンMH6800−1(DIC株式会社製)と、Ni78質量%−Fe22質量%のNi−Fe合金からなる平板状磁性体粒子(平均長径2.4μm、平均厚み0.2μm、平均アスペクト比12)と、トルエンとを遊星撹拌機に投入し、15分間混合してスラリー状の混合物を得た。
平板状磁性体粒子は、樹脂と平板状磁性体粒子の合計体積量に対して40体積%となるように、トルエンは、樹脂と平板状磁性体粒子の合計質量に対して40質量%となるように、それぞれ投入した。この混合物の粘度は5Pa・sであった。
次いで、この混合物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にバーコーターにて乾燥後の膜厚が0.1mmとなるように塗布し、シート成形を行った。
シート成形後、このシートの面に水平方向に900ガウスの磁場を6分間印加した。次いで、80℃の温風を当てて風乾させた。次いで、樹脂の軟化点以上である95℃で10MPaのプレス圧力を加えて加熱成形し、実施例3の複合磁性体を得た。
この複合磁性体の気孔率及び200MHzにおけるマテリアルアナライザーにより得られた磁気特性の結果を表1に示す。
[実施例4]
Ni78質量%−Fe22質量%のNi−Fe合金からなる平板状磁性体粒子の替わりに、Ni88質量%−Fe12質量%のNi−Fe合金からなる平板状磁性体粒子(平均長径2.7μm、平均厚み0.25μm、平均アスペクト比10.8)を用いた以外は、実施例3に準じて実施例4の複合磁性体を得た。
この複合磁性体の気孔率及び200MHzにおけるマテリアルアナライザーにより得られた磁気特性の結果を表1に示す。
[実施例5]
Ni78質量%−Fe22質量%のNi−Fe合金からなる平板状磁性体粒子の替わりに、Ni68質量%−Fe32質量%のNi−Fe合金からなる平板状磁性体粒子(平均長径2.2μm、平均厚み0.28μm、平均アスペクト比7.8)を用いた以外は、実施例3に準じて実施例5の複合磁性体を得た。
この複合磁性体の気孔率及び200MHzにおけるマテリアルアナライザーにより得られた磁気特性の結果を表1に示す。
[実施例6]
ポリスチレン樹脂の替わりに、ポリスチレン樹脂とスチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマー タフプレン126S(旭化成ケミカルズ株式会社製)を50:50の質量比で混合した樹脂を用い、Ni78質量%−Fe22質量%のNi−Fe合金からなる平板状磁性体粒子の替わりに、Ni75質量%−Fe20質量%−Zn5質量%のNi−Fe−Zn合金からなる平板状磁性体粒子(平均長径2.5μm、平均厚み0.3μm、平均アスペクト比8.3)を用いた以外は実施例3に準じて、実施例6の複合磁性体を得た。
この複合磁性体の気孔率及び200MHzにおけるマテリアルアナライザーにより得られた磁気特性の結果を表1に示す。
[実施例7]
ポリスチレン樹脂の替わりに、ポリスチレン樹脂とスチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマー タフプレン126S(旭化成ケミカルズ株式会社製)を50:50の質量比で混合した樹脂を用い、Ni78質量%−Fe22質量%のNi−Fe合金からなる平板状磁性体粒子の替わりに、Ni75質量%−Fe20質量%−Zn5質量%のNi−Fe−Zn合金からなる平板状磁性体粒子(平均長径2.5μm、平均厚み0.3μm、平均アスペクト比8.3)を用い、さらに、この平板状磁性体粒子の投入量を40体積%から60体積%に変更した以外は実施例3に準じて、実施例7の複合磁性体を得た。
この複合磁性体の気孔率及び200MHzにおけるマテリアルアナライザーにより得られた磁気特性の結果を表1に示す。
[比較例1]
スラリー状の混合物を得る際に、遊星撹拌機での混合時間を15分から5分へ変えた以外は、実施例1に準じて比較例1の複合磁性体を得た。
この複合磁性体の気孔率及び200MHzにおいてマテリアルアナライザーより得られた磁気特性の結果を表1に示す。
[比較例2]
成形体をプレスする際の温度を160℃とした以外は、実施例1に準じて比較例2の複合磁性体を得た。
この複合磁性体の気孔率及び200MHzにおいてマテリアルアナライザーより得られた磁気特性の結果を表1に示す。
[比較例3]
平均長径が2.5μm、平均厚みが0.3μm、平均アスペクト比が8.3の平板状磁性体粒子の替わりに、平均長径が1.2μm、平均厚みが0.3μm、平均アスペクト比が4の磁性体粒子を用いた以外は、実施例1に準じて比較例3の複合磁性体を得た。
この複合磁性体の気孔率及び200MHzにおいてマテリアルアナライザーより得られた磁気特性の結果を表1に示す。
Figure 2013254757
表1によれば、実施例1〜6の複合磁性体は、比較例1、2の複合磁性体と比べて気孔率が20%以下と小さかった。したがって、実施例1〜6の複合磁性体は、比較例1、2の複合磁性体と比べて、μr’は大きくなるが、εr’はほとんど変わらないことが確認された。
また、実施例7の複合磁性体は、この複合磁性体に含まれる平板状磁性体粒子の含有率を、実施例6の40体積%を更に増加して60体積%としたものであり、気孔率が9.8%、(μr’・εr’)−1/2が0.03、(μr’/εr’)1/2が0.51であった。これにより、複合磁性体中の平板状磁性体粒子の含有率を増やした場合であっても、気孔率が20%以下、(μr’・εr’)−1/2が0.1以下、(μr’/εr’)1/2が0.5以上かつ1以下となる複合磁性体が得られることが確認された。
また、比較例3では、複合磁性体の気孔率が20%以下でも、平均アスペクト比が5未満の磁性体粒子を用いたので、複合磁性体のμr’が小さく、電子部品や電子機器を小型化するのに十分なμr’を得ることができないことが確認された。
1 モノポールアンテナ
2 アンテナ導体
3 複合磁性体
4 地板
5 接続部
6 交流信号発信機
11 携帯用電話機
12 筐体
13 表示部
14 モノポールアンテナ
15 アンテナ導体
16 複合磁性体
21 携帯用電話機
22 筐体
23 表示部
24 外部アンテナ用端子
25 モノポールアンテナ
26 接続端子
27 アンテナ導体
28 複合磁性体
31 携帯用電話機
32 筐体
33 地板
34 L字アンテナ
35 アンテナ導体
36 複合磁性体
41 携帯用電話機
42 筐体
43 地板
44 ヘリカルアンテナ
45 複合磁性体
46 アンテナ導体
51 保護カバー付き携帯用電話機
52 携帯用電話機
53 保護カバー
54 筐体
55 表示部
56 外部アンテナ用端子
61 ダイポールアンテナ
62 アンテナ導体
63 複合磁性体
64 接続端子
71 保護カバー付き携帯用電話機
72 携帯用電話機
73 保護カバー
74 筐体
75 表示部
76 外部アンテナ用端子
81 スパイラルアンテナ
82 アンテナ導体
83 複合磁性体
84 接続端子
201 密閉容器
202 磁性体粒子
203 スラリー
204 分散媒体
205 一軸回転体
205a 外周端

Claims (8)

  1. 平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の平板状磁性体粒子を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体であって、
    気孔率が20%以下であることを特徴とする複合磁性体。
  2. 前記平板状磁性体粒子の平均厚みは0.01μm以上かつ10μm以下であり、その平均長径は0.05μm以上かつ20μm以下であることを特徴とする請求項1記載の複合磁性体。
  3. 複素透磁率の実部μr’が7以上、複素誘電率の実部εr’が15以上であり、かつ、(μr’・εr’)−1/2が0.1以下、(μr’/εr’)1/2が0.5以上かつ1以下であることを特徴とする請求項1または2記載の複合磁性体。
  4. 複素透磁率の損失正接tanδμが0.05以下、複素誘電率の損失正接tanδεが0.1以下であることを特徴とする請求項3記載の複合磁性体。
  5. 70MHz以上かつ500MHz以下の周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が7以上、複素誘電率の実部εr’が15以上であり、かつ、(μr’・εr’)−1/2が0.1以下、(μr’/εr’)1/2が0.5以上かつ1以下であることを特徴とする請求項1または2記載の複合磁性体。
  6. 複素透磁率の損失正接tanδμが0.05以下、複素誘電率の損失正接tanδεが0.1以下であることを特徴とする請求項5記載の複合磁性体。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項記載の複合磁性体を備えてなることを特徴とするアンテナ。
  8. 請求項7記載のアンテナを備えてなることを特徴とする通信装置。
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