JP2013247352A - 複合磁性体とその製造方法及びアンテナ並びに通信装置 - Google Patents

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雅之 石塚
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良 菊田
Ryosuke Nakamura
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Takeshi Kawase
剛 川瀬
Yasunari Kunimitsu
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Abstract

【課題】70MHzから500MHzまでの周波数帯域に適用可能であり、しかも、この周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が大きくなるような複合磁性体とその製造方法及びアンテナ並びに通信装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の複合磁性体は、磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、この磁性粉体は、平均厚みが0.01μm以上かつ10μm以下、平均長径が0.05μm以上かつ20μm以下、かつ平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の扁平状であり、70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は7以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、複合磁性体とその製造方法及びアンテナ並びに通信装置に関し、特に、70MHzから500MHzまでの周波数帯域の電磁波を利用するアンテナへの装荷あるいは電子部品の構成材料として用いて好適な複合磁性体とその製造方法、及び、この複合磁性体を備えたアンテナ、並びに、このアンテナを備えた携帯用電話機、携帯情報端末等の通信装置に関するものである。
情報通信機器の高速化、高密度化に伴い、電子機器に搭載されるアンテナや電子部品の小型化が強く求められている。一般に、物質内を伝播する電磁波の波長λgは、真空中を伝播する電磁波の波長λoと物質の複素誘電率の実部εr’(以下、εr’と略記する場合がある)及び複素透磁率の実部μr’(以下、μr’と略記する場合がある)を用いて、
λg=λo/(εr’・μr’)1/2 ……(1)
と表すことができる。この式(1)によれば、εr’及びμr’が大きいほど波長λgの短縮率が大きくなるので、アンテナや電子部品の小型化が可能になることが知られている。
また、物質の特性インピーダンスZは真空の特性インピーダンスZを用いて、
=Z・(μr’/εr’)1/2 ……(2)
と表すことができる。この式(2)によれば、εr’とμr’の値の差が小さいほど、真空中の特性インピーダンスZと、複合磁性体の特性インピーダンスZの値の差も小さくなる。一方、電磁波が飛ぶ空間の特性インピーダンスは、真空の特性インピーダンスZとほとんど同じ値であるから、εr’とμr’の値の差が小さいほど、インピーダンスマッチングのための電力損失が抑制される。
また、式(1)により、電磁波の波長を短縮する際には、εr’及びμr’の値を大きくとればよいが、εr’の値とμr’の値との差が大きいと送受信できる周波数帯域が狭くなるということも知られている。そこで、広周波数帯域で多くの情報を送受信するためにもεr’の値とμr’の値との差が小さいことが必要であることが知られている。
ところで、近年、90〜220MHzのVHF帯においては、電波資源の有効利用の観点から、アナログテレビへの利用から他の用途への変更が計画されている。これらの用途としては、中でも携帯用情報端末向けが有望なものであるが、この携帯用情報端末では、VHF帯の電波の波長が長いことによるアンテナの小型化が難しく、現状では、大型のロッドアンテナやイヤホンコードをアンテナとして代用せざるを得ない。
一方、携帯用情報端末の用途が、通話から通話以外の通信に広がるなかで、携帯用情報端末を鞄やポケットの中に入れた状態でも受信することができる必要性から、アンテナの携帯用情報端末への内蔵化は必須事項である。そこで、波長短縮効果が大きく、かつVHF帯のアンテナを小型化することができる磁性材料が望まれている。
しかしながら、従来の磁性材料をVHF帯のアンテナに適用すると、磁性材料の表面に渦電流が生じ、この渦電流が印加した磁界の変化を打ち消す向きに磁界を発生させるために、磁性材料の透磁率が見かけ上低下するという問題点があった。
また、渦電流の増大がジュール熱によるエネルギー損失を生じさせることから、磁性材料をアンテナや電子部品等の材料として使用することは困難であった。
そこで、本発明者等は、球状または扁平状の磁性粉末を絶縁性材料中に分散させた複合物であり、1GHzにおける複素透磁率の実部μr’が1よりも大きく、かつ複素透磁率の損失正接tanδμが0.1以下の複合磁性体を提案した(特許文献1)。
この複合磁性体によれば、渦電流による磁気特性の劣化を避けることができ、500MHz〜1GHzの周波数帯でも磁気損失の低減を図ることができる。
一方、VHF帯にて使用することができる磁性材料として、高周波用フェライトが提案されている。
特開2008−181905号公報
しかしながら、本発明者等の提案した複合磁性体では、渦電流による磁気特性の劣化や500MHz〜1GHzの周波数帯での複素透磁率の損失正接tanδμ(以下、tanδμと略記する場合がある)の低減を図ることはできるものの、500MHzより低い周波数では複素透磁率の損失正接tanδμが増加していく傾向にあり、特に100MHzにおける損失正接は0.1を超えることとなる。したがって、この複合磁性体をVHF帯のアンテナに適用したとしても、さらなるアンテナの小型化は難しいという問題点があった。
また、高周波用フェライトは、VHF帯で使用することができるものの、このVHF帯は共鳴損失の影響が顕著に現れる周波数帯であるから、μr’の周波数依存性が大きく、回路設計が難しいという問題点があった。
さらに、フェライトがセラミックスであることから、形状加工性や機械的信頼性に乏しいという問題点があり、したがって、携帯用情報端末に適用した場合に様々な制限が生じ、好ましくない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、70MHzから500MHzまでの周波数帯域に適用可能であり、しかも、この周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が大きくなるような複合磁性体とその製造方法及びアンテナ並びに通信装置を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、磁性粉体を絶縁材料中に分散させた複合磁性体における前記磁性粉体の形状を扁平状とし、この複合磁性体の70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’を7以上とすれば、この複合磁性体をVHF帯のアンテナに適用することが可能となり、その結果、さらなるアンテナの小型化、アンテナの携帯用情報端末への内蔵化を図ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の複合磁性体は、磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、前記磁性粉体は扁平状であり、70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は7以上であることを特徴とする。
本発明の複合磁性体では、70MHzから220MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の損失正接tanδμは0.1以下であることが好ましい。
気孔率は20%以下であることが好ましい。
70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素誘電率の実部εr’は15以上、かつ複素誘電率の損失正接tanδεは0.1以下であることが好ましい。
前記磁性粉体の平均厚みは0.01μm以上かつ10μm以下、平均長径は0.05μm以上かつ20μm以下、かつ平均アスペクト比(長径/厚み)は5以上であることが好ましい。
本発明の複合磁性体の製造方法は、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子を溶液中に分散してなるスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、前記スラリー及び前記分散媒体の合計の体積が前記容器内の体積と同じくなるように充填し、このスラリーを前記分散媒体と共に密閉状態にて撹拌し、前記球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする第1の工程と、前記扁平状の磁性粉体を絶縁材料に混合して成形材料とする第2の工程と、前記成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する第3の工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明のアンテナは、本発明の複合磁性体を装荷してなり、70MHzから500MHzまでの周波数帯域の電磁波を、送信、受信または送受信することを特徴とする。
本発明の通信装置は、本発明のアンテナを備えてなることを特徴とする。
本発明の複合磁性体によれば、磁性粉体を扁平状とし、さらに、70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’を7以上としたので、μr’の周波数依存性がほとんどなく、この周波数帯域における波長の短縮率を大きく取ることができる。
したがって、この複合磁性体をVHF帯のアンテナに適用すれば、この複合磁性体の表面における渦電流の発生を防止することができ、μr’の低下を防止することができ、さらなるアンテナの小型化を図ることができる。
したがって、この複合磁性体をVHF帯のアンテナや電子部品に適用すれば、アンテナや電子部品のさらなる小型化を図ることができる。
本発明の複合磁性体の製造方法によれば、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子を溶液中に分散してなるスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、前記スラリー及び前記分散媒体の合計の体積量が前記容器内の体積と同じくなるように充填し、このスラリーを前記分散媒体と共に密閉状態にて撹拌し、前記球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする第1の工程と、前記扁平状の磁性粉体を絶縁材料に混合して成形材料とする第2の工程と、前記成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する第3の工程と、を備えたので、70MHzから500MHzまでの周波数帯域におけるμr’が7以上の複合磁性体を容易に作製することができる。
本発明のアンテナによれば、本発明の複合磁性体を装荷し、かつ70MHzから500MHzまでの周波数帯域の電磁波を、送信、受信または送受信することとしたので、70MHzから500MHzまでの周波数帯域の電磁波の送信、受信または送受信の信頼性を向上させることができる。
本発明の通信装置によれば、本発明のアンテナを備えたので、70MHzから500MHzまでの周波数帯域の電磁波の送信、受信または送受信の信頼性を向上させることができる。
また、小型化されたアンテナを用いることにより、通信装置全体の小型化を図ることができる。よって、さらに小型化された通信装置を提供することができる。
開放容器を用いて球状の磁性粒子を含むスラリー及び分散媒体を高速撹拌する様を示す図である。 密閉容器を用いて球状の磁性粒子を含むスラリー及び分散媒体を高速撹拌する様を示す図である。 本発明の一実施形態のアンテナの一例であるモノポールアンテナの給電方法を示す模式図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の他の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機のさらに他の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機のさらに他の一例を示す斜視図である。 本発明の実施例1の複合磁性体の複素透磁率及び損失正接を示す図である。 本発明の実施例1の複合磁性体の構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)像である。 本発明の実施例2の複合磁性体の複素透磁率及び損失正接を示す図である。 比較例1の複合磁性体の複素透磁率及び損失正接を示す図である。 比較例1の複合磁性体の構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
本発明の複合磁性体とその製造方法及びアンテナ並びに通信装置を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[複合磁性体]
本実施形態の複合磁性体は、磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、この磁性粉体は扁平状であり、70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が7以上の複合磁性体である。
また、本実施形態の複合磁性体は、70MHzから220MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の損失正接tanδμは0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.04以下であることがさらに好ましい。
ここで、複素透磁率の実部μr’及び複素透磁率の損失正接tanδμが上記の範囲が好ましい理由は、この範囲が、電磁波の波長を短縮することができ、かつ、渦電流による磁気損失が低下し、エネルギー損失が小さくなる範囲だからである。
このエネルギー損失の大きさは、下記の式(3)に示す複素透磁率の虚部μr’’(以下、μr’’と略記する場合がある)により表すことができる。
μr’’=μr’×tanδμ ……(3)
ここで、複素透磁率の虚部μr’’は0.5以下であることが好ましいので、上記の式(3)から、μr’が10の場合には、tanδμは0.05以下であることが好ましく、また、μr’が15の場合には、tanδμは1/30以下であることが好ましいこととなる。
この複合磁性体では、気孔率が20%以下であることが好ましい。
ここで、複合磁性体の気孔率は、下記の式(4)により求めることができる。
気孔率=(1−実測密度/理論密度)×100 ……(4)
この複合磁性体の理論密度は、磁性粉体の理論密度と絶縁材料の理論密度(≒実測密度)を基に、磁性粉体と絶縁材料との混合比率を考慮して算出される。
また、磁性粉体の理論密度を算出する方法としては、磁性粉体のX線回折図形から格子定数を算出し、この格子定数と結晶構造を基に理論密度値を算出する方法がある。
一方、絶縁材料の実測密度を算出する方法としては、例えば、絶縁材料が樹脂の場合には、樹脂のみを硬化させて外形寸法と質量を測定し、これらの測定値から実測密度を算出する方法がある。
また、複合磁性体の実測密度を算出する方法としては、例えば、外形寸法と質量を測定し、これらの測定値から実測密度を算出する方法、ピクノメーター法で測定した値を用いる方法がある。
この複合磁性体では、より好ましくは、70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が7以上、複素誘電率の実部εr’が15以上、複素透磁率の損失正接tanδμが0.05以下、かつ複素誘電率の損失正接tanδεが0.1以下である。
特に、90MHzから220MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が7以上、かつ複素誘電率の損失正接tanδμが0.05以下であることが好ましい。
この複合磁性体では、複素透磁率の実部μr’が7以上、複素誘電率の実部εr’が15以上であり、かつ、(μr’・εr’)−1/2が0.1以下、(μr’/εr’)1/2が0.5以上かつ1以下であることが好ましい。
さらに、複素透磁率の損失正接tanδμが0.05以下、複素誘電率の損失正接tanδεが0.1以下であることが好ましい。
本実施形態の複合磁性体では、70MHz以上かつ500MHz以下の周波数帯域における複素透磁率の実部μr’が7以上、複素誘電率の実部εr’が15以上であり、かつ、(μr’・εr’)−1/2が0.1以下、(μr’/εr’)1/2が0.5以上かつ1以下であることが好ましい。
さらに、複素透磁率の損失正接tanδμが0.05以下、複素誘電率の損失正接tanδεが0.1以下であることが好ましい。
なお、上記の複素透磁率の実部μr’、複素誘電率の実部εr’、複素透磁率の損失正接tanδμ及び複素誘電率の損失正接tanδεはマテリアルアナライザーにて測定した値であるが、測定装置としては、上記の各値がマテリアルアナライザーと同等の精度で測定することのできる装置であればよく、マテリアルアナライザーに限定されない。
この複合磁性体においては、上記の複素透磁率の実部μr’、複素誘電率の実部εr’、(μr’・εr’)−1/2及び(μr’/εr’)1/2の値として上記の範囲が好ましい理由を、この複合磁性体をアンテナに装荷した場合を例に取り詳細に説明する。
なお、同様の効果は、上記のアンテナ以外の高周波を用いた電子部品全てで得られる。
まず、複素透磁率の実部μr’は7以上が好ましく、より好ましくは9以上である。ここで、μr’を7以上とした理由は、複素誘電率の実部εr’は通常15以上の大きな値を示すので、μr’を7未満とした場合には、μr’がεr’と比べて極端に小さな値となり、特性インピーダンスの不一致による電力損失が大きくなるからである。
このμr’の上限値は特に制限されないが、実際に製造可能な磁性粉体のアスペクト比や含有率等から30以下が好ましく、20以下がより好ましい。
複素誘電率の実部εr’は15以上が好ましく、より好ましくは20以上である。ここで、εr’を15以上とした理由は、上記の式(1)にしたがってアンテナの小型化を達成するために有効な値であるからである。また、εr’の上限を考慮すると、30以下が好ましい。
この複合磁性体では、μr’及びεr’の値を上記の範囲とした場合、さらに(μr’・εr’)−1/2は0.1以下であることが好ましい。その理由は以下のとおりである。
この(μr’・εr’)−1/2の値は、式(1)に示したとおり、複合磁性体中の高周波波長の真空中の波長に対する短縮率である。なお、真空中の波長と通常の大気中の波長は、ほぼ等しい値を示す。
一般に、アンテナは、通常は波長の1/2あるいは1/4の長さの導線等からなるアンテナ導体により構成されている。周波数の低い長波長領域、特に70MHz〜500MHzの周波数帯域では波長は60cm以上であり、アンテナ導体の長さが30cm以上または15cm以上と、アンテナ自体が大きなものになってしまう。そこで、整合回路を用いて長い波長の信号を電子回路と整合して送受信しており、アンテナの長さを短くした場合は、アンテナ導体上の電流量が少なくなるために、送受信の周波数帯域が狭くなったり、放射効率が低下したりする等の問題が生じる。特に、アンテナの長さを波長の1/10以下にした場合には、電波の送受信が困難となり、実用上問題となる。
そこで、(μr’・εr’)−1/2が0.1以下の複合磁性体をアンテナに装荷すれば、複合磁性体上では、理論的には、高周波波長はほぼ1/10以下に短縮される。そのため整合回路を用いたときのように、帯域を狭くさせたり、放射効率を低下させたりすることなくアンテナの大きさを小型化することが可能となる。
上記の(μr’/εr’)1/2は、0.5以上かつ1以下であることが好ましい。その理由は以下のようである。
この(μr’/εr’)1/2の値は、上記の式(2)に示したとおり、複合磁性体の特性インピーダンスZと真空の特性インピーダンスZとの比(Z/Z)であるから、複合磁性体の特性インピーダンスZは真空の特性インピーダンスZの(μr’/εr’)1/2倍となる。なお、ここでは、真空の特性インピーダンスと通常の大気の特性インピーダンスは、ほぼ等しい値を示すこととする。
通常、複合磁性体のμr’はεr’より小さいので、複合磁性体の特性インピーダンスZは、大気の特性インピーダンスZ(≒真空の特性インピーダンスZ)の値よりも小さなものとなる。なお、高周波信号は、特性インピーダンスの大きな領域から小さな領域へ伝播する際に、反射や吸収が生じて減衰することが知られている。
そこで、複合磁性体の特性インピーダンスZが大気の特性インピーダンスZより50%以上も小さくなる場合には、高周波の減衰率は極めて大きくなり、実用上問題となる。そこで、(μr’/εr’)1/2の値を0.5以上とすると、大気から複合磁性体に電磁波が伝播する際に、特性インピーダンスの変化を50%以内に抑えることができる。したがって、高周波信号の減衰を抑制することができるのである。また、複合磁性体の特性インピーダンスZが、大気のインピーダンスZより大きくなる場合には、これらの特性インピーダンスの差がわずかでも電磁波が大きく減衰する。したがって、(μr’/εr’)1/2の値は1以下であることが好ましい。
この複合磁性体の複素透磁率の損失正接tanδμは0.1以下が好ましく、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.04以下である。また、この複合磁性体の複素誘電率の損失正接tanδε(以下、単にtanδεと略記する場合がある)は0.1以下が好ましく、より好ましくは0.07以下である。
この複合磁性体の70MHzから500MHzまでの、より好ましくは90MHzから220MHzまでの、tanδμは0.1以下が好ましく、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.04以下であり、この複合磁性体のtanδεは0.1以下が好ましく、より好ましくは0.07以下である。
ここで、μr’、tanδμ、εr’、tanδεが上記の範囲が好ましい理由は、この範囲が、電磁波の波長を短縮することができ、かつ、渦電流等による磁気損失等が低下し、エネルギー損失が小さくなる範囲だからである。
このように、tanδμ及びtanδεの値が、それぞれ好ましい値を超えた場合には、複合磁性体内にて高周波が複素透磁率の虚数部μr’’あるいは複素誘電率の虚数部εr’’に対応する部分だけ吸収されて熱に変わるので、高周波信号のエネルギーが減衰する上に、S/N比の低下や発熱等の問題が生じる虞があるので好ましくない。
本実施形態の複合磁性体では、70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’等の諸特性が上記の範囲を満足すれば、70MHzから500MHzまで、好ましくは90MHzから220MHzまでの周波数帯域で使用される電子部品や電子機器、例えば、携帯用電話機、携帯情報端末、多機能型携帯用情報機器等の通信装置のアンテナにおいても、小型化と電力損失の低減を両立させることができる。
さらに、500MHz以下、好ましくは220MHz以下の周波数帯域の場合には、500MHzを超える周波数帯域の場合と比べて、tanδμ及びtanδεが低くなるので、アンテナの利得が高くなり、好ましい。
複合磁性体中の気孔率が20%以下である場合には、複合磁性体のμr’は向上するが、εr’はほとんど変化しない。これにより、この複合磁性体が適用される電子部品や電子機器、例えば、携帯用電話機、携帯情報端末、多機能型携帯用情報機器等の通信装置のアンテナを小型化させることができ、電力損失を抑制することができると考えられるので好ましい。
このような効果が得られるメカニズムとしては、次のように考えられる。
複合磁性体中の気孔率が増大すると、複合磁性体の単位体積当たりの磁性粉体の量が少なくなるので、μr’は小さくなる。一方、気孔の表面は絶縁材料と同様に磁性粉体との界面で静電容量を有するので、気孔率が高くなったとしてもεr’の値はほとんど変化しない。
また、複合磁性体中の気孔率が減少すると、複合磁性体の単位体積当たりの磁性粉体の量が多くなるので、μr’は大きくなる。一方、上述したとおり、εr’の値は気孔率の影響をほとんど受けないので、εr’の値はほぼ同じ値となる。
すなわち、複合磁性体中の気孔率を減少させることにより、μr’の値は大きくなるが、εr’の値は殆ど変化しないので、μr’の値とεr’の値との差は小さくなる。よって、平均アスペクト比(長径/厚み)が5以上の磁性粉体を絶縁材料中に分散させた複合磁性体の気孔率を20%以下とすることで、この複合磁性体を備えた電子部品や電子機器を小型化させることが可能であり、インピーダンスマッチングによる電力損失を抑制することができる。
なお、複合磁性体の気孔率を減少させる方法としては、複合磁性体の気孔率を20%以下に減少させることができる方法であればよく、特に制限されない。例えば、磁性粉体の絶縁材料への分散性を向上させることで、磁性粉体同士の凝集を防ぐ方法、硬化剤の種類や量の最適化により絶縁材料の硬化性を向上させる方法、流動性の高い絶縁材料を選定し、絶縁材料が磁性粉体と磁性粉体の間の間隙に進入し易くする方法、得られた複合磁性体を加圧することで内部の気孔を減少させる方法等、さらには、これらの方法を組み合わせた方法等が挙げられる。
ここで、本実施形態の複合磁性体を構成する磁性粉体及び絶縁材料について詳細に説明する。
「磁性粉体」
この磁性粉体の形状が扁平状が好ましい理由は、次のとおりである。
磁性粉体における反磁界の大きさは、粉体の形状に依存する。例えば、磁性粉体が球状の場合には、反磁界が等方的に存在するために、得られる透磁率も等方的となり、高周波領域で優れた磁気特性を得ることが困難である。一方、磁性粉体が扁平状の場合には、扁平面に平行な方向の反磁界が格段に小さくなり、したがって、得られるμr’が大きくなる。
本実施形態の磁性粉体は、平均粒子径が10nm以上かつ3μm以下の球状の磁性粒子に機械的応力を加えることにより、この球状の磁性粒子を変形及び融着して扁平状としたことが好ましい。
この磁性粉体の平均アスペクト比(長径(粒子内における最大長さ)/厚み)は、複数個の磁性粉体それぞれの長径と厚み、例えば、100個以上の磁性粉体、好ましくは500個の磁性粉体それぞれの長径と厚みを測定することにより、個々の磁性粉体それぞれのアスペクト比(長径/厚み)を求め、これらのアスペクト比(長径/厚み)の平均値を算出することで求められる。
このようにして得られる平均アスペクト比(長径/厚み)は、5以上が好ましく、7以上がより好ましい。
ここで、磁性粉体の平均アスペクト比(長径/厚み)が5未満では、粒子形状による反磁界係数が大きくなり、よって、複合磁性体を作製する際に印加される有効磁場が小さくなることで得られる複合磁性体のμr’が小さくなり、その結果、電子部品や電子機器を小型化させるために十分なμr’を得ることができない。
一方、平均アスペクト比が大きくなると、磁性粉体自体の機械的強度が低下する虞がある。そこで、磁性粉体が所望の機械的強度を確保するためには、平均アスペクト比は15以下が好ましく、実用的には20程度が上限となる。
さらに、平均アスペクト比が20を超えると、磁性粉体の形状が扁平すぎることで、磁性粒子同士の間が狭くなり、この間に絶縁性材料が進入し難い空間が形成され易くなり、その結果、複合磁性体中に気泡が生じ易くなり、この気泡の存在によりμr’が低下するので好ましくない。
以上の点を勘案すれば、磁性粉体の平均アスペクト比は5以上かつ20以下であることが好ましく、7以上かつ15以下であることがより好ましい。
この磁性粉体の平均厚み及び平均長径も、上記の平均アスペクト比(長径/厚み)と同様、複数個の磁性粉体それぞれの厚み及び長径、例えば、100個以上の磁性粉体、好ましくは500個の磁性粉体それぞれの厚み及び長径を測定し、厚み及び長径各々の平均値を算出することで求めることができる。
この磁性粉体の平均厚みは、0.1μm以上かつ10μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以上かつ1μm以下である。
特に、この磁性粉体を70MHz以上の高周波帯域にて使用する場合には、平均厚みの好ましい範囲は0.1μm以上かつ0.5μm以下である。
ここで、磁性粉体の平均厚みが0.1μm未満では、磁性粉体自体の製造が難しく、複合磁性体を製造する際の取り扱いも難しく、その結果、配向が良好でありかつμr’の高い複合磁性体を得ることが難しくなるので好ましくない。一方、この磁性粉体の平均厚みが10μmを超えると、高周波を印加した際に渦電流等が生じ、得られる複合磁性体のμr’が低くなるので、好ましくない。
この磁性粉体の平均長径は、0.05μm以上かつ20μm以下が好ましく、0.2μm以上かつ10μm以下がより好ましい。
ここで、磁性粉体の平均長径が0.05μm未満では、磁性粉体自体の製造が難しく、複合磁性体を製造する際の取り扱いも難しく、その結果、配向が良好でありかつ複素透磁率の実部μr’が高い複合磁性体を得ることが難しくなるので好ましくない。
このように、磁性粉体の平均厚み、平均長径、アスペクト比を上記範囲とすることにより、μr’は、70MHzから500MHzまでの周波数帯域で、ほぼ一定値を示すこととなる。
この磁性粉体を構成する材料としては、磁性を有する材料であればよく、特に限定されないが、例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)等の強磁性金属、モリブデン(Mo)等の常磁性金属のうちいずれか1種からなる金属、または、これらのうち少なくとも1種以上を含む合金を用いることができる。
これらの金属または合金は、反磁性金属である銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)等を含んでいてもよい。
これらの合金としては、二元素系合金、三元素系合金等が挙げられる。
二元素系合金としては、保磁力が70エルステッド(Oe)以下の軟磁性を示すパーマロイ(登録商標)等のFe−Ni合金、Fe−Si合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金等が挙げられる。
三元素系合金としては、スーパーマロイ(登録商標)等のFe−Ni−Mo合金、センダスト(登録商標)等のFe−Si−Al合金、Fe−Cr−Si合金等が挙げられる。
これらの合金の中でも、Fe−Ni合金としては、Ni78質量%−Fe22質量%の合金が、磁性粉体の平均厚みが0.5μm以下、平均長径が10μm以下のものが得られ易く、高透磁率とともに低磁気損失の複合磁性体を得られるので好ましい。
上記の合金に、その合金に含まれない金属元素で、その合金と性質が近い金属(合金に含まれている金属と周期律表で近接している金属)、例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、すず(Sn)等の群から1種または2種以上を適宜選択して添加してもよい。
上記の金属元素を合金に添加する場合には、この金属元素の含有率は、この金属元素と合金との合計質量に対して0.1質量%以上かつ90質量%以下が好ましく、1質量%以上かつ12質量%以下がより好ましく、1質量%以上かつ5質量%以下がさらに好ましい。
ここで、上記の金属元素の含有率を上記の範囲に限定した理由は、金属元素の含有率が0.1質量%未満では、後述する球状の磁性粒子を扁平状にさせるための十分な塑性変形能を付与することができず、一方、含有率が90質量%を超えると、金属元素自体の磁気モーメントが小さいことから、この磁性粉体全体の飽和磁化が小さくなり、その結果、得られるμr’も小さくなるからである。
特に、アスペクト比が高くなり、結果として高いμr’の複合磁性体が得られ易い点で、柔らかい金属である、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)の群から選択される1種または2種以上の金属元素を1質量%以上かつ12質量%以下、好ましくは1質量%以上かつ5質量%以下含む鉄−ニッケル合金を用いるのが好ましい。
これらの中でも、ニッケル−鉄−亜鉛(Ni−Fe−Zn)合金は、Fe−Ni合金へのZnの添加により、後述する球状の磁性粒子の加工性が高くなるために、大きなアスペクト比を有する磁性粉体が得られ易いので好ましい。合金の組成比としては、例えば、Ni75質量%−Fe20質量%−Zn5質量%、Ni76質量%−Fe20質量%−Zn4質量%等の各合金を好適に用いることができる。
この磁性粉体は、絶縁性の磁性粉体であることが好ましい。絶縁性の磁性粉体を用いることで、複合磁性体中にて磁性粉体同士が接触することにより導電パスが形成されるのを抑制することができ、その結果、複合磁性体の誘電損失を低減させることができる。この絶縁性の磁性粉体においては、少なくとも粒子の表面が絶縁性を有していればよい。
磁性粉体を絶縁性にする方法としては、特に限定されないが、例えば、磁性粉体の表面に5nm程度の絶縁性の酸化被膜を形成する方法が挙げられる。
通常、磁性粉体を大気中で取り扱うことにより、この磁性粉体の表面に自然に酸化被膜が形成されるが、自然に形成される酸化被膜では絶縁性が不十分であり、複合磁性体の誘電損失を低減することが難しい。そこで、複合磁性体の誘電損失を低減させるためには、50℃以上かつ200℃以下の温度にて、1時間〜数時間程度加熱処理することにより、磁性粉体の表面に5nm程度の絶縁性の酸化被膜を形成することが好ましい。
また、磁性粉体の表面に、この磁性粉体と異なる組成の絶縁性被膜を形成してもよい。このような組成としては、例えば、酸化ケイ素、リン酸塩等の無機物質、あるいは、樹脂、界面活性剤等の有機物質等が挙げられる。これらの絶縁性被膜は、酸化被膜(自然酸化や加熱酸化による酸化被膜を含む)を有する磁性粉体の表面に形成してもよく、酸化被膜を有しない磁性粉体の表面に形成してもよい。
「絶縁材料」
絶縁材料は、絶縁性の材料であればよく、特に制限されないが、本実施形態の複合磁性体を携帯電話用アンテナや携帯情報端末用アンテナとして用いる場合には、機械的強度が高く、吸湿性が低く、しかも形状加工性に優れていることが好ましい。このような絶縁材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ノルボルネン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が好適に用いられる。これらの樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂のなかでも、主鎖に環状構造、特に脂環式の環状構造を有し、かつモノマー単位で重合する官能基を有する樹脂は、磁性粉体と絡まり難いことから磁性粉体の配向を阻害する虞が無く、しかも高いμr’が得られ易いので、好ましい。このような樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型樹脂が挙げられる。
このジシクロペンタジエン型樹脂のような硬い樹脂を用いる場合、複合磁性体の気孔率を低減させるためや生産上のハンドリング性を向上させるために、このような硬い樹脂に、複合磁性体に伸縮性や可撓性を付与する絶縁性樹脂を混合させてもよい。この伸縮性や可撓性を付与する絶縁性樹脂としては、上述した樹脂から適宜選択して用いればよく、特に、液状エポキシ樹脂やビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
このジシクロペンタジエン型樹脂等と上記の液状エポキシ樹脂やビスフェノール型エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合には、ジシクロペンタジエン型樹脂等の樹脂全体量に対する含有率を50質量%以上かつ90質量%以下とすることが好ましい。このジシクロペンタジエン型樹脂等の含有率を上記範囲とすることで、磁性粉体の配向性が向上し、かつ高いμr’を得ることができる。
さらに、伸縮性や可撓性を付与する絶縁性樹脂を10質量%以上かつ50質量%以下含有するので、磁性粉体同士の間隙に樹脂が進入し易くなり、複合磁性体の気孔の生成を抑制し、気孔率を低減させることができるので好ましい。
また、上記絶縁材料に加えて、熱可塑性エラストマーを添加することとしてもよい。この熱可塑性エラストマーの添加により、複合磁性体の機械的強度や形状加工性を向上させることができる。したがって、この熱可塑性エラストマーが添加された複合磁性体は、靭性、柔軟性、変形性により優れたものとなる。
この熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマーの群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
この熱可塑性エラストマーの添加量は、複合磁性体の用途により必要とされる耐熱性を勘案して、適宜調整すればよい。
[複合磁性体の製造方法]
本実施形態の複合磁性体の製造方法は、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子を溶液中に分散してなるスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、前記スラリー及び前記分散媒体の合計の体積量が前記容器内の体積と同じくなるように充填し、このスラリーを前記分散媒体と共に密閉状態にて撹拌し、前記球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする第1の工程と、前記扁平状の磁性粉体を絶縁材料に混合して成形材料とする第2の工程と、前記成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する第3の工程と、を備えている。
以下、各工程について詳細に説明する。
(第1の工程)
まず、平均粒子径が10nm以上かつ3μm以下の球状の磁性粒子を界面活性剤を含む溶液中に分散してスラリーとする。
磁性粒子の組成は、上記の磁性粉体の組成と全く同様である。
界面活性剤として、磁性粒子の表面と相性の良い窒素、リン、イオウ等の元素を含有している界面活性剤が好ましく、例えば、窒素含有ブロックコポリマー、燐酸塩、ポリビニルピロリドン等を添加するのが好ましい。
溶媒としては、磁性粒子に含まれる金属元素の酸化を防止する必要があることから、有機溶媒が好ましく、特に、キシレン、トルエン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の非極性有機溶媒が好ましい。
次いで、このスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、このスラリー及び分散媒体の合計の体積が容器内の体積と同じくなるように充填し、このスラリーを分散媒体と共に密閉状態にて撹拌し、球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする。
分散媒体としては、球状の磁性粒子よりも硬度が高いことが必要であり、例えば、アルミニウム、鋼(スチール)、ステンレススチール、鉛等の金属球、アルミナ、ジルコニア、二酸化ケイ素、チタニア等の金属酸化物あるいは無機酸化物からなる球状焼結体、窒化ケイ素等の無機窒化物からなる球状焼結体、炭化ケイ素等の無機炭化物からなる球状焼結体、ソーダガラス、鉛ガラス、高比重ガラス等からなるビーズと称される球状粒子が挙げられ、中でも、比重6以上のジルコニア、鋼(スチール)、ステンレススチール等が効率の点から好ましい。
球状の磁性粒子への機械的応力の付加は、分散媒体の衝突の際に、球状磁性粒子が、分散媒体と分散媒体の間、または分散媒体と密閉容器の内壁との間に挟まれることで与えられる衝撃によって行われる。そのため、分散媒体同士あるいは分散媒体と容器の壁との衝突回数が増加するにつれて、球状の磁性粒子同士の変形及び融着性が向上する。
このように、分散媒体の平均粒径が小さいほど、単位体積当たりに存在する個数が増加し、衝突回数も多くなり、変形及び融着性も向上するが、一方、分散媒体の平均粒径が小さすぎると、この分散媒体をスラリーから分離することが困難となる。したがって、分散媒体の平均粒径は、少なくとも0.03mm以上、好ましくは0.04mm以上であることが必要である。
また、分散媒体の平均粒径が大き過ぎると、衝突回数が減少することから、球状の磁性粒子同士の変形及び融着性が低下する。したがって、分散媒体の平均粒径の上限値は3.0mmである。
密閉可能な容器としては、ディスク、スクリュー、羽根、ピン等の1軸回転体を高速回転することで、分散媒体をスラリーとともに高速回転する密閉容器が好ましい。
この密閉容器は、単純な1軸回転方式であることから、大型化も容易であり、工業生産上も有利である。
なお、上記の密閉可能な容器に、スラリーを容器内に導入・導出するための流入口及び流出口を設け、スラリーを密閉容器内に循環するようにしてもかまわない。この場合、予め分散媒体を密閉容器内に収納しておき、球状の磁性粒子と界面活性剤と溶媒とを混合したスラリーを流入口から投入して容器内に空間がないように充填し、流出口から排出されるスラリーを再度密閉容器内へ投入するようにすればよい。
ここでは、スラリー及び分散媒体の上記の密閉容器内への充填量を、密閉容器内の体積と同一とする。換言すれば、スラリー及び分散媒体を、密閉容器内に隙間なく充填する。
ここで、スラリー及び分散媒体を、密閉容器内に隙間なく充填する理由は、次のとおりである。
図1は、上部が開放された開放容器1に投入された球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4を、1軸回転体5により高速回転することで高速撹拌する様を示す図である。
この図では、1軸回転体5が高速で回転すると、スラリー3及び分散媒体4の液面は、遠心力により中心軸近傍が低く、周縁部が高いすり鉢状となる。
1軸回転体5により球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4に加えられた機械的応力は、すり鉢状の空間に逃げていくので、開放容器1内全体で分散媒体4を介して球状の磁性粒子2に伝搬される機械的応力は不均一なものとなり、得られた扁平状の磁性粉体の厚みがばらつく要因となる。
また、すり鉢状の空間の底部近傍(中心軸近傍)で扁平状となった磁性粉体は、分散媒体と共にすり鉢状の空間に放出されて不規則な衝撃を受けることとなり、割れや欠け等が生じる虞がある。このような磁性粉体の厚みのばらつきや割れや欠けは、VHF帯での損失正接が増加する要因となっている。また、複素透磁率の実部μr’が70MHzから500MHzまでの周波数帯域で変動する要因となっている。
図2は、密閉容器11に投入された球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4を、1軸回転体5により高速回転することで高速撹拌する様を示す図である。
この図では、1軸回転体5が高速で回転しても、密閉容器11内が球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4により満たされているので、開放容器1に見られるようなすり鉢状の空間が生じる虞は無い。したがって、1軸回転体5により球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4に加えられた機械的応力は、密閉容器11内全体で分散媒体4を介して球状の磁性粒子2に均一に伝搬され、得られた扁平状の磁性粉体の厚みがばらつく虞は無い。また、扁平状となった磁性粉体は、不規則な衝撃を受けることもなく、割れや欠け等が生じる虞もない。
この一軸回転体5の回転数は、密閉容器11の大きさにより決定される。例えば、内径が120mmの密閉容器11の場合、球状の磁性粒子2を含むスラリー3及び分散媒体4の一軸回転体5の径方向の外周端5a付近の流速が5m/秒以上となるように一軸回転体5の回転数を設定することが好ましく、さらには、外周端5a付近の流速が8m/秒以上となるように一軸回転体5の回転数を設定することがより好ましい。
一方、外周端5a付近の流速が15m/sを超えると、エネルギーが大きすぎるために平板状になった粒子を破壊してしまう虞があるので、外周端5a付近の流速は15m/s以下であることが好ましい。
なお、密閉容器11の内容積が小さいと、得られた扁平状の磁性粉体に球状の磁性粒子2が残留する虞がある。残留した球状の磁性粒子2は、球状の磁性粒子2同士の接触、または球状の磁性粒子2と扁平状の磁性粉体との接触により、磁気損失を増加させたり、扁平状の磁性粉体の配向を阻害したりする虞がある。したがって、扁平状の磁性粉体は、磁性粉体全体量の90質量%以上が好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、球状の磁性粒子2を実質的に含まないことが望ましい。
ここで、密閉容器11の内容積が小さい場合に球状の磁性粒子2が残留する理由は、密閉容器11の角や回転体5と密閉容器11との接合部といった機械的応力が十分に伝わらないデッドスペースが相対的に大きくなるからと考えられる。そこで、密閉容器11の内容積を大きくすると、相対的にデッドスペースが小さくなり、よって、球状粒子2に機械的応力が十分に伝わり、球状の磁性粒子同士の変形及び融着性が向上し、その結果、球状の磁性粒子2の残留が少なくなり、実質的に球状の磁性粒子2がなくなる。
このように、実質的に球状の磁性粒子2が残留しなくなる密閉容器11の体積は、1L以上が好ましく、より好ましくは5L以上である。
以上により、球状の磁性粒子同士は、1軸回転体5により加えられた機械的応力により変形及び融着し、扁平状の磁性粉体となる。
次いで、この扁平状の磁性粉体を分散媒体及び溶媒から分離する。ただし、後述する樹脂が可溶な溶媒を使用している場合には、分離しなくてもかまわない。
分離方法は、扁平状の磁性粉体を作製した後のスラリー3から溶媒を除去することができればよく、特に限定されず、加熱乾燥、真空乾燥、フリーズドライ等が挙げられるが、乾燥効率の点で真空乾燥が好ましい。また、乾燥効率を高めるために、乾燥工程の前に、固液分離等の手法によりある程度の溶媒を除去してもよい。固液分離の方法としては、フィルタープレスや吸引ろ過等のろ過操作や、デカンターや遠心分離機による遠心分離操作等、通常の方法を用いればよい。
また、溶媒が除去された扁平状の磁性粉体を、50℃以上かつ200℃以下にて、1時間以上かつ数時間以下、加熱処理してもよい。この加熱処理により、磁性粉体の表面に酸化皮膜を形成することができ、絶縁性の平板状磁性粉体を得ることができる。
(第2の工程)
上述の扁平状の磁性粉体を、絶縁材料に溶解した溶液中に分散し混合して混合物とし、この混合物を成形材料とする。
絶縁材料については、既に述べているとおりであるが、上記絶縁材料の中でも、液状の絶縁材料を用いることが好ましく、それ以外の絶縁材料を用いる場合には、溶媒に溶かして液状にすることが好ましい。
絶縁材料として熱硬化性樹脂を用いる場合、硬化剤の種類や添加量については、使用する熱硬化性樹脂の種類や量に応じて適宜調整すればよい。
上記の熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、エポキシ基同士の縮合反応を促進させて、複合磁性体の成形体における硬化不良による気孔の発生を防止する点で第3アミンが好ましい。
第3アミンとしては、例えば、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
硬化剤の添加量としては、官能基の縮合反応を促進させる点を考慮すると、熱硬化性樹脂の全体の質量に対して0.5質量%以上かつ3質量%以下、添加させればよい。
なお、絶縁材料として熱可塑性樹脂を用いる場合には、硬化剤は不要である。
上記の絶縁材料を溶解させるためや、粘度を調整するために、溶媒を適宜混合させてもよい。
溶媒としては、上記の絶縁材料を溶解させることができるものが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒は、1種のみ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、成形材料中における磁性粉体の分散性を向上させるために、界面活性剤を添加することも好ましい。
溶媒は、絶縁材料と磁性粉体との混合物中に30質量%以上になるように混合させるのが好ましく、より好ましくは35質量%以上である。
溶媒を30質量%以上混合させることにより、得られた混合物の粘度が低下するので、混合時に磁性粉体同士が凝集していた場合においても、凝集がほぐれて絶縁材料中における分散性が向上する。これにより、複合磁性体の気孔率を低減させることができる。
なお、溶媒の量が多すぎると、後述する乾燥に時間がかかり、乾燥時に気孔が生成する虞があるので、溶媒の量は、磁性粉体と絶縁材料との合計質量に対して50質量%以下であることが好ましい。
絶縁材料として熱硬化性樹脂を用いる場合、この混合物中の磁性粉体の含有率は、熱硬化性樹脂と硬化剤と磁性粉体の合計体積量中、10体積%以上かつ60体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以上かつ50体積%以下である。
ここで、磁性粉体の含有率が10体積%未満では、磁性粉体が少なすぎて複合磁性体としての磁気特性が低下してしまうので好ましくない。一方、この磁性粉体の含有率が60体積%を超えると、磁性粉体が多すぎてしまい、この磁性粉体と熱硬化性樹脂と硬化剤と溶媒とを含む混合物の流動性が低下し、したがって、この混合物を用いて成形する際の成形性が低下してしまうので、好ましくない。
なお、この複合磁性体中には、球状の磁性粒子が含まれていないことが好ましい。
絶縁材料として熱可塑性樹脂を用いる場合、この混合物中の磁性粉体の含有率は、熱可塑性樹脂と磁性粉体の合計体積量中、10体積%以上かつ80体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以上かつ60体積%以下である。
ここで、磁性粉体の含有率が10体積%未満では、磁性粉体が少なすぎて複合磁性体としての磁気特性が低下してしまうので好ましくない。一方、この磁性粉体の含有率が80体積%を超えると、磁性粉体が多すぎてしまい、この磁性粉体と熱可塑性樹脂と溶媒とを含む混合物の流動性が低下し、したがって、この混合物を用いて成形する際の成形性が低下してしまうので、好ましくない。
なお、この複合磁性体中には、球状の磁性粒子が含まれていないことが好ましい。
上記の混合物の粘度は0.1Pa・s以上かつ10Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは0.3Pa・s以上かつ10Pa・s以下である。
ここで、粘度が0.1Pa・s未満の場合には、流動性が大きくなりすぎて乾燥工程での生産性が悪くなるので好ましくなく、一方、粘度が10Pa・sを超えると、粘性が高すぎて磁性粉体の配向が生じ難くなり、その結果、複合磁性体中における磁性粉体の配向性が低下してしまうので、好ましくない。
混合方法は特に制限されず、混合装置等を用いて、磁性粉体、絶縁材料、溶媒等が均一に混合または分散されればよい。
混合装置としては、これら磁性粉体、絶縁材料、溶媒等を均一に混合または分散させてスラリー状の混合物とすることができればよく、特に制限はされないが、例えば、撹拌機、ロールミル、自公転式ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、遊星ミル、サンドミル、ボールミル等が挙げられる。これらの装置で混合する場合には、磁性粉体が凝集しすぎず、絶縁材料中に均一に混合または分散されるように、混合条件を適宜調整すればよい。
また、絶縁材料として熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を用いる場合には、加熱混錬により混合または分散させることが好ましい。
加熱混練方法としては、例えば、加圧ニーダー、2軸式ニーダー、ブラストミル等で混合分散した混練物を作製することができる。
(第3の工程)
上記の成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する。
成形方法としては、公知の成形方法、例えば、押し出し法、バーコート法、プレス法、ドクターブレード法、射出成形法等が好適である。この成形方法を用いて任意の形状のシート状またはフィルム状に成形することにより、ドライフィルムを作製することができる。
複合磁性体が積層体の場合には、ドクターブレード法によりシート状またはフィルム状に成形することが望ましい。
絶縁材料として熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を用いる場合には、例えば、加熱プレス成形、押出成形、射出成形等で成形体を作製することができる。これらの方法の中でも、磁性粉体の絶縁材料中における配向性を向上させるためには、平面状に引き伸ばす加熱プレス成形が好ましい。引き伸ばす際の粘度調整のために、可塑剤の添加や、磁性粉体の表面処理を行うことも好ましい。
なお、複合磁性体が積層体の場合には、バーコート法、ドクターブレード法によりシート状またはフィルム状に成形したものを積層あるいは張り合わせすることが好ましい。
上記の成形材料は、粘度調整を行う必要がある場合には、溶媒を揮発させて濃縮後に成形を行う。必要があれば、成形材料を基材上に塗布した後、乾燥前に磁場の配向により扁平状の磁性粉体をシートまたはフィルムと平行な方向に配向する配向処理を行えばよい。
成形体中の磁性粉体を配向させる方法としては、成形体中の磁性粉体を一方向に配向させることができるように磁場を印加すればよく、特に制限されない。
成形体中の磁性粉体に磁場を印加する場合、成形体中で磁力線が曲がると、磁性粉体を一方向に配向させることができない。したがって、磁場は発生する磁力線が成形体の表面に対して略平行となるように印加することが好ましい。
印加する磁場の大きさは、100ガウス以上かつ3000ガウス以下であることが好ましい。磁場の大きさが100ガウス未満であると、磁場が小さすぎてしまい、成形体中の磁性粉体を十分に一方向に配向させることができない場合がある。一方、3000ガウスを超えると、磁場が大きすぎてしまい、この磁場により磁性粉体同士が凝集して絶縁材料である樹脂と分離してしまう虞があり、得られた複合磁性体の磁気特性に不均一が生じる虞があるので好ましくない。
絶縁材料として熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を用いる場合の配向方法としては、加熱して流動性を維持した状態で、上記のような磁場の配向により平板状磁性粒子を配向する方法等が挙げられる。
熱処理または焼成の条件としては、還元性雰囲気中または真空中における熱処理、またはホットプレス等による加圧熱処理が好適に用いられる。
熱処理または焼成によって、熱硬化性樹脂の硬化、あるいは熱可塑性樹脂の軟化による緻密化がなされる。そこで、熱処理または焼成時における成形体の気孔率は、20%以下にすることが好ましい。
プレス装置で成形体に圧力を加える際に、絶縁材料として樹脂を用いる場合には、効果的に気孔を減少させるために、樹脂の軟化温度以上かつ硬化開始温度以下で圧力を加えることが好ましい。特に、熱可塑性樹脂を使用した場合には、樹脂の軟化温度以上の温度で圧力を加えて、樹脂同士を融着させる必要がある。
プレス時の圧力は適宜調整すればよいが、5MPa〜20MPa程度の圧力を加えるのが好ましい。
以上により、本実施形態の複合磁性体が得られる。
[アンテナ]
本実施形態のアンテナは、上記の複合磁性体を装荷し、かつ70MHzから500MHzまでの周波数帯域の電磁波を、送信、受信または送受信するアンテナである。
このアンテナの形状は、装荷される通信装置の大きさや形状に合わせて適宜変更可能であり、例えば、渦巻き状、蛇行状等が挙げられる。
このアンテナに上記の複合磁性体を装荷させる方法としては、特に制限されず、アンテナを構成する銅線等の導体(以下、「アンテナ導体」と称する)に上記の複合磁性体を被覆させる等、公知の方法で装荷させればよい。
ここで、「装荷」とは、電磁的な相互作用により波長短縮等の効果が得られるようにするために、アンテナ導体に複合磁性体を接触させたり、あるいは近づけたりすることである。
アンテナの種類及び形状は、特に制限されず、モノポールアンテナ、ループアンテナ、ヘリカルアンテナ、パッチアンテナ、F型アンテナ、L型アンテナ等が好適に用いられる。また、アンテナをより小型化させるために整合回路を併用してもよい。
例えば、モノポールアンテナやL字アンテナは、アンテナ導体を中心として、上記の複合磁性体を棒状あるいは長尺の板状に加工したもので挟み込むように形成することで得ることができる。
また、ヘリカルアンテナは、上記の複合磁性体を棒状に加工した棒状複合磁性体の周囲に、銅線等からなる長尺かつ極細のアンテナ導体をコイル状に巻回することで得ることができる。
これらのアンテナでは、波長短縮効果により、所望波長の1/4よりも長さが短い小型アンテナを得ることが可能である。
図3は、本実施形態のアンテナの一例であるモノポールアンテナの給電方法を示す模式図であり、このモノポールアンテナ21は、棒状のアンテナ導体22と、このアンテナ導体22を埋め込むことによりその表面を被覆した板状の複合磁性体23とを備えている。
このモノポールアンテナ21は、所定形状の導体からなる地板24に同軸コネクタ等を介して接続され、この同軸コネクタ等の内導体である接続部25を給電点とするように交流信号発信機26が接続されている。この給電点となる接続部25と地板24とは、電気的に絶縁されている。
その他の種類及び形状のアンテナにおける給電方法も上記と同様、アンテナは地板24にコネクタ等を介して接続され、この接続部25を給電点とするように交流信号発信機26が接続される。
[通信装置]
本実施形態の通信装置は、上記のアンテナを備えている。
この通信装置としては、電磁波を介して各種情報の送信、受信、送受信のいずれかを行う装置であればよく、特に限定されない。例えば、パーソナルコンピューター、携帯用電話機、携帯情報端末、スマートフォン等の多機能携帯用情報端末、PDA(Personal Digital Assistant)等の通信機器、オーディオ機器、ビデオ機器、カメラ機器等の各種電子機器等が挙げられる。
これらの通信装置においては、上記のアンテナは、通信装置の外部に設けられていてもよく、また、内蔵されていてもよく、いずれでもよい。
ここで、通信装置として携帯用電話機を例に取り、上記のアンテナの様々な取り付け方について説明する。
図4は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の一例を示す斜視図であり、この携帯用電話機31は、筐体32の前面に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部33が設けられ、この表示部33の裏面側には地板(図示略)が設けられ、この地板にコネクタ等を介して棒状のモノポールアンテナ34内に配設された銅線等の導体からなるアンテナ導体35が接続され、この接続部を介して携帯用電話機31の電子回路(図示略)が接続されている。このモノポールアンテナ34のアンテナ導体35は、複合磁性体36により被覆されている。
このモノポールアンテナ34は、筐体32から取り出し可能かつ筐体32に収納可能とされており、通信時は、必要に応じて筐体32から引き出して通信を行い、通信しない時には、筐体32に押し込んで収納するようになっている。
このモノポールアンテナ34は、棒状である必要はなく、伸縮自在であってもよい。
このモノポールアンテナ34は、アンテナ利得を向上させることを考慮すると、表示部33等と重ならない位置に設けることが好ましい。なお、表示部33等と重なる位置にモノポールアンテナ34を設ける場合には、このモノポールアンテナ34と表示部33との間隔を空けることが好ましい。
図5は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機の他の一例を示す斜視図であり、この携帯用電話機41は、筐体42の前面に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部43が設けられ、側面に外部アンテナ用端子44が設けられ、この外部アンテナ用端子44には、棒状のモノポールアンテナ45の側面に設けられた接続端子46が嵌め込まれており、このモノポールアンテナ45は表示部43の裏面側に設けられた地板(図示略)に接続端子46及び外部アンテナ用端子44を介して接続され、この接続部を介して携帯用電話機41の電子回路(図示略)が接続されている。このモノポールアンテナ45は、銅線等の導体からなるアンテナ導体47が複合磁性体48により被覆されている。
この携帯用電話機41では、モノポールアンテナ45の接続端子46を外部アンテナ用端子44に挿入・取り外しすることで、装着及び取り外し可能とされている。
図6は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機のさらに他の一例の一部を示す部分斜視図であり、この携帯用電話機51は、筐体52の前面の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部(図示略)の背面側に地板53が設けられ、この地板53と重ならない位置(図6では、地板53の上方)にL字アンテナ54が設けられ、このL字アンテナ54内に配設された銅線等の導体からなるアンテナ導体55が地板53にコネクタ等を介して接続され、この接続部を介して携帯用電話機51の電子回路(図示略)が接続されている。このL字アンテナ54は、アンテナ導体55が複合磁性体56により被覆されている。
図7は、本実施形態の通信装置の一種の携帯用電話機のさらに他の一例の一部を示す部分斜視図であり、この携帯用電話機61は、筐体62の前面の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなる表示機能を有する表示部(図示略)の背面側に地板63が設けられ、この地板63と重ならない位置(図7では、地板63の上方)にヘリカルアンテナ64が設けられ、このヘリカルアンテナ64のうち棒状の複合磁性体65に巻回された螺旋状のアンテナ導体66が地板63にコネクタ等を介して接続され、この接続部を介して携帯用電話機61の電子回路(図示略)が接続されている。
上記の各例によれば、搭載しているモノポールアンテナ34、45、L字アンテナ54またはヘリカルアンテナ64が共に小型であるから、アンテナを携帯用電話機内の狭い空間に配置させることができ、アンテナ以外の部品により電磁波が遮断されることなく、アンテナ利得の高い携帯用電話機を得ることができる。
本実施形態の複合磁性体によれば、磁性粉体を扁平状とし、さらに、70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’を7以上、かつ複素透磁率の損失正接tanδμを0.05以下としたので、μr’の周波数依存性がほとんどなく、この周波数帯域における波長の短縮率を大きく取ることができる。
したがって、この複合磁性体をVHF帯等のアンテナに適用すれば、この複合磁性体の表面における渦電流の発生を防止することができ、μr’の低下を防止することができ、さらなるアンテナの小型化を図ることができる。
さらに、この複合磁性体をVHF帯等のアンテナを備えた電子部品に適用すれば、アンテナや電子部品のさらなる小型化を図ることができる。
特に、複合磁性体のtanδμが70MHzから500MHzまで、好ましくは90MHzから220MHzまでの周波数帯域で0.1以下であれば、磁気損失を小さくすることができ、アンテナの利得の向上を図ることができるので、この複合磁性体をVHF帯等のアンテナや電子部品に適用することにより、小型で利得の高いアンテナを得ることができる。
この複合磁性体の気孔率を20%以下とすれば、インピーダンスマッチングによる電力損失を抑制することができる。
また、この複合磁性体の70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素誘電率の実部εr’を15以上、かつ複素誘電率の損失正接tanδεを0.1以下とすれば、アンテナの小型化と利得の向上を図ることができる。
したがって、この複合磁性体を70MHzから500MHzまでの周波数帯域(VHF帯等)のアンテナや電子部品に適用すれば、小型で利得の高いアンテナを得ることができる。
本実施形態の複合磁性体の製造方法によれば、平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子を溶液中に分散してなるスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、前記スラリー及び前記分散媒体の合計の体積量が前記容器内の体積と同じくなるように充填し、このスラリーを前記分散媒体と共に密閉状態にて撹拌し、前記球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする第1の工程と、前記扁平状の磁性粉体を、絶縁材料に混合して成形材料とする第2の工程と、前記成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する第3の工程と、を備えたので、70MHzから500MHzまでの周波数帯域におけるμr’が7以上、かつtanδμも0.1以下の複合磁性体を容易に作製することができる。
本実施形態のアンテナによれば、本実施形態の複合磁性体を装荷し、かつ70MHzから500MHzまでの周波数帯域の電磁波を、送信、受信または送受信することとしたので、アンテナのさらなる小型化を図ることができる。
本実施形態の通信装置によれば、本実施形態の小型のアンテナを備えたので、電磁波を遮断する他の電子機器の影響を受けにくい場所にアンテナを配置させる自由度が高く、良好な送受信が可能な小型の通信装置を得ることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
亜鉛4質量%、ニッケル76質量%、鉄20質量%からなる平均粒径0.25μmの磁性粒子200gを、界面活性剤として窒素含有のグラフトポリマー フローレンKDG−2400(共栄社化学社製)を溶解したキシレン400gおよびイソプロピルアルコール400gの混合液に混合し、スラリーを作製した。
次いで、密閉容器として、図2に示すような循環密閉型で容器体積が5Lのサンドミル ウルトラアペックスミルUAM−5(寿工業社製)を用い、この密閉容器内に、分散媒体として平均粒径200μmのジルコニアビーズを投入し、次いで、上記のスラリーを投入し、密閉容器内を満たした。ここでは、密閉容器内から排出されたスラリーを再度投入して循環するように配管した。
この状態で、スラリーの密閉容器内の滞留時間が20分になるまで、回転体の外周端付近の流速が10m/秒となる回転数で攪拌し、扁平状の磁性粉体を作製した。
次いで、得られた扁平状の磁性粉体を乾燥させて溶媒を散逸させた後、この扁平状の磁性粉体の所定量(樹脂と磁性粉体の全体量に対して40体積%)を、エポキシ樹脂 EPICLON HP−7200L(DIC(株)社製)を固形分比率40%にキシレンで希釈して得られた樹脂ワニスに添加して攪拌混合した。
得られた混合物を、ドクターブレード法により30mm角、厚み100μmの正方形状のフィルムに成形した。
次いで、このフィルムを90℃、大気中にて1時間乾燥してドライフィルムとし、その後、減圧プレス装置にてプレス焼成を行った。プレス条件は、常圧のまま130℃まで20分で昇温させ、その後2MPaの圧力を加えて5分間保持し、その後160℃まで昇温させて40分間保持して樹脂を硬化させ、30mm角、厚み50μmの正方形のフイルム状の実施例1の複合磁性体を得た。
次いで、この複合磁性体の電磁気特性及び気孔率を、以下の方法により評価した。
(1)電磁気特性
複合磁性体の複素透磁率の実部μr’、複素誘電率の実部εr’、複素透磁率のtanδμ及び複素誘電率のtanδεを、マテリアルアナライザー E4991A型(Agilent Technologies社製)にて、大気中室温(25℃)にて測定した。
(2)気孔率
複合磁性体の寸法と質量を測定し、これらの測定値に基づき実測密度を算出した。
一方、樹脂の理論密度(≒実測密度)は樹脂のみの硬化体の寸法と質量を測定し、これらの測定値から算出した。また、磁性粉体の理論密度は、磁性粉体のX線回折パターンから求めたX線理論密度を用いた。
これらの値を上記の式(4)に代入し、複合磁性体の気孔率を算出した。
その結果、実施例1の複合磁性体の気孔率は13.1%であった。また、90MHzにおける複素透磁率の実部μr’は12、損失正接tanδμは0.02であり、220MHzにおける複素透磁率の実部μr’は13、損失正接tanδμは0.03であった。
また、この複合磁性体中の磁性粒子の形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、扁平状の磁性粉体50個の平均の厚みは0.08μm、平均長径は0.5μmであり、平均アスペクト比は6.25であった。また、球状の磁性粒子や、厚みが0.01μm以上かつ0.5μm以下、長径が0.05μm以上かつ20μm以下、かつアスペクト比が5以上でない磁性粉体は観察されず、球状の磁性粒子は認められなかった。
この複合磁性体のμr’、μr’’、tanδμを図8に、この複合磁性体の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図9に、それぞれ示す。
[実施例2]
ニッケル78質量%、鉄22質量%からなる平均粒径0.2μmの磁性粒子200gを、界面活性剤として窒素含有のグラフトポリマー フローレンKDG−2400(共栄社化学社製)を溶解したキシレン800gに混合し、スラリーを作製した。
次いで、密閉容器として、図2に示すような循環密閉型で容器体積が5Lのサンドミル ウルトラアペックスミルUAM−5(寿工業社製)を用い、この密閉容器内に、分散媒体として平均粒径50μmのジルコニアビーズを投入し、次いで、上記のスラリーを投入し、密閉容器内を満たした。ここでは、循環は行わず、密閉容器の投入口は液封した。
この状態で、密閉容器内の回転体の外周端付近の流速が10m/秒となる回転数で4時間攪拌し、磁性粉体を作製した。
次いで、得られた磁性粉体を乾燥させて溶媒を散逸させた後に、この磁性粉体の所定量(樹脂と磁性粉体の全体積量に対して40体積%)を、ポリスチレン樹脂 ディックスチレンMH6800−1(DIC(株)社製)を固形分比率40%にトルエンで希釈した樹脂ワニスに添加して撹拌混合した。
次いで、この混合物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にバーコーターにて0.1mmの厚みになるように、シート成形を行った。
シート成形後、このシートの面に水平方向に900ガウスの磁場を6分間印加した。次いで、80℃の温風を当てて風乾させた。次いで95℃で10MPaのプレス圧力5分間加えて、実施例2の複合磁性体を得た。
実施例2の複合磁性体について、実施例1と同様に評価したところ、この複合磁性体の気孔率は13%であった。
また、90MHzにおけるμr’は9、tanδμは0.02であり、220MHzにおけるμr’は9、tanδμは0.02であった。
また、この複合磁性体中の磁性粒子の形状を実施例1と同様に観察したところ、磁性粒子50個の平均の厚みは0.15μm、平均長径は1.2μmであり、平均アスペクト比は8であった。また、球状の磁性粒子や、厚みが0.01μm以上かつ0.5μm以下、長径が0.05μm以上かつ20μm以下、かつアスペクト比が5以上でない磁性粉体は観察されず、球状の磁性粒子は認められなかった。
この複合磁性体のμr’、μr’’、tanδμを図10に示す。
「実施例3」
ニッケル78質量%、鉄22質量%からなる平均粒径0.2μmの磁性粒子の替わりに、ニッケル88質量%、鉄12質量%からなる平均粒径0.2μmの磁性粒子を用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例3の複合磁性体を得た。
得られた複合磁性体について、実施例1と同様に評価したところ、この複合磁性体の気孔率は12%であった。
また、90MHzにおける複素透磁率の実部μr’は9、損失正接tanδμは0.03であり、220MHzにおける複素透磁率の実部μr’は9.5、損失正接tanδμは0.04であった。
また、この複合磁性体中の磁性粒子の形状を実施例1と同様に観察したところ、磁性粉体50個の平均の厚みは0.18μm、平均長径は1.2μmであり、平均アスペクト比は6.7であった。また、球状の磁性粒子や、厚みが0.01μm以上かつ0.5μm以下、長径が0.05μm以上かつ20μm以下、かつアスペクト比が5以上でない磁性粉体は観察されず、球状の磁性粒子は認められなかった。
「実施例4」
ニッケル78質量%、鉄22質量%からなる平均粒径0.2μmの磁性粒子の替わりに、ニッケル68質量%、鉄32質量%からなる平均粒径0.2μmの磁性粒子を用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例4の複合磁性体を得た。
得られた複合磁性体について、実施例1と同様に評価したところ、この複合磁性体の気孔率は12%であった。
また、90MHzにおける複素透磁率の実部μr’は9.5、損失正接tanδμは0.03であり、220MHzにおける複素透磁率の実部μr’は9.8、損失正接tanδμは0.04であった。
また、この複合磁性体中の磁性粒子の形状を実施例1と同様に観察したところ、磁性粉体50個の平均の厚みは0.2μm、平均長径は1.2μmであり、平均アスペクト比は6であった。また、球状の磁性粒子や、厚みが0.01μm以上かつ0.5μm以下、長径が0.05μm以上かつ20μm以下、かつアスペクト比が5以上でない磁性粉体は観察されず、球状の磁性粒子は認められなかった。
「実施例5」
ポリスチレン樹脂の替わりに、ポリスチレン樹脂とスチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマー タフプレン126S(旭化成ケミカルズ(株)社製)を50:50の質量比で混合した樹脂を使用した以外は、実施例2と同様にして、実施例5の複合磁性体を得た。
得られた複合磁性体について、実施例1と同様に評価したところ、この複合磁性体の気孔率は10.5%であった。
また、90MHzにおける複素透磁率の実部μr’は12、損失正接tanδμは0.02であり、220MHzにおける複素透磁率の実部μr’は12、損失正接tanδμは0.02であった。
また、この複合磁性体中の磁性粒子の形状を実施例1と同様に観察したところ、磁性粉体50個の平均の厚みは0.15μm、平均長径は1.2μmであり、平均アスペクト比は8であった。また、球状の磁性粒子や、厚みが0.01μm以上かつ0.5μm以下、長径が0.05μm以上かつ20μm以下、かつアスペクト比が5以上でない磁性粉体は観察されず、球状の磁性粒子は認められなかった。
「実施例6」
ポリスチレン樹脂が40体積%となるように混合する替わりに、ポリスチレン樹脂とスチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマー タフプレン126S(旭化成ケミカルズ(株)社製)を50:50の質量比で混合した樹脂を用い、この混合樹脂と、磁性粉体の全体積量に対してこの混合樹脂が60体積%となるように混合した以外は、実施例2と同様にして、実施例6の複合磁性体を得た。
得られた複合磁性体について、実施例1と同様に評価したところ、この複合磁性体の気孔率は9.7%であった。
また、90MHzにおけるμr’は16、tanδμは0.03であり、220MHzにおけるμr’は15.4、tanδμは0.03であった。
また、この複合磁性体中の磁性粒子の形状を実施例1と同様に観察したところ、磁性粉体50個の平均の厚みは0.15μm、平均長径は1.2μmであり、平均アスペクト比は8であった。また、球状の磁性粒子や、厚みが0.01μm以上かつ0.5μm以下、長径が0.05μm以上かつ20μm以下、かつアスペクト比が5以上でない磁性粉体は観察されず、球状の磁性粒子は認められなかった。
「比較例1」
亜鉛4質量%、ニッケル76質量%、鉄20質量%からなる平均粒径0.25μmの磁性粒子200gを、界面活性剤として窒素含有のグラフトポリマー フローレンKDG−2400(共栄社化学社製)を溶解したキシレン400gおよびイソプロピルアルコール400gの混合液に混合し、スラリーを作製した。
次いで、開放容器として、図1に示すような上部開放型のサンドミルを用い、この開放容器のベッセル内に、分散媒体として平均粒径200μmのジルコニアビーズを投入し、次いで、上記のスラリーを投入した。ここでは、ベッセル内の回転体の外周端付近の流速が10m/秒となる回転数で30分間攪拌し、磁性粉体を作製した。
得られた磁性粉体を用いて、実施例1と同様にして比較例1のフイルム状の複合磁性体を得た。
得られたフイルム状の複合磁性体について、実施例1と同様に評価したところ、この複合磁性体の気孔率は9.7%であった。
また、90MHzにおけるμr’は2.6、tanδμは0.09であり、220MHzにおけるμr’は2.8、tanδμは0.11であった。
また、この複合磁性体の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、磁性粉体は、互いに不規則に重なり合っており、厚みが0.5μm以上のものや、球状の磁性粒子も観察された。
この複合磁性体の複素透磁率(実部μr’及び虚部μr’’)及び損失正接(tanδ)を図11に、この複合磁性体の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図12に、それぞれ示す。
「実施例7」
実施例1と同様にして得られた混合物を、ドクターブレード法によりフィルムに成形した。次いで、このフィルムを90℃、大気中にて1時間乾燥し、長さ250mm、幅30mm、厚み60μmのドライフィルムを12枚作製した。
次いで、これらのドライフィルムを積層し、6枚目と7枚目の間にアンテナ線として直径0.6mm、長さ250mmの銅線を挟み、その後、減圧プレス装置を用いてプレス焼成を行った。プレス条件は、常圧のまま130℃まで20分で昇温させ、その後2MPaの圧力を加えて5分間保持し、その後160℃まで昇温させて40分間保持して樹脂を硬化させ、図3に示すような、長さ250mm、幅30mm、厚み0.8mmのドライフィルムの積層体からなる複合磁性体23中に、銅線からなるアンテナ導体22が挟み込まれたモノポールアンテナ21を作製した。
次いで、このモノポールアンテナ21を500mm角の導体地板24の中央に接続し、交流信号発振機26により接続点25を給電点として、50Ω給電した。
ここでは、このモノポールアンテナ21の共振周波数を測定し、また、比較のために、直径0.6mm、長さ250mmの銅線のみの共振周波数を測定した。
その結果、共振周波数は、銅線のみが273MHzであるのに対して、本実施例のモノポールアンテナは180MHzであり、波長に換算した短縮率としては約66%となった。この結果から、本実施例の複合磁性体を装荷することにより、VHF帯の180MHzのアンテナの長さは34%ほど小型化されることが分かった。
1 開放容器
2 球状の磁性粒子
3 スラリー
4 分散媒体
5 1軸回転体
11 密閉容器
21 モノポールアンテナ
22 アンテナ導体
23 複合磁性体
24 地板
25 接続部
26 交流信号発信機
31 携帯用電話機
32 筐体
33 表示部
34 モノポールアンテナ
35 アンテナ導体
36 複合磁性体
41 携帯用電話機
42 筐体
43 表示部
44 外部アンテナ用端子
45 モノポールアンテナ
46 接続端子
47 アンテナ導体
48 複合磁性体
51 携帯用電話機
52 筐体
53 地板
54 L字アンテナ
55 アンテナ導体
56 複合磁性体
61 携帯用電話機
62 筐体
63 地板
64 ヘリカルアンテナ
65 複合磁性体
66 アンテナ導体

Claims (8)

  1. 磁性粉体を絶縁材料中に分散してなる複合磁性体において、
    前記磁性粉体は扁平状であり、
    70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の実部μr’は7以上であることを特徴とする複合磁性体。
  2. 70MHzから220MHzまでの周波数帯域における複素透磁率の損失正接tanδμは0.1以下であることを特徴とする請求項1記載の複合磁性体。
  3. 気孔率が20%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の複合磁性体。
  4. 70MHzから500MHzまでの周波数帯域における複素誘電率の実部εr’は15以上、かつ複素誘電率の損失正接tanδεは0.1以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の複合磁性体。
  5. 前記磁性粉体の平均厚みは0.01μm以上かつ10μm以下、平均長径は0.05μm以上かつ20μm以下、かつ平均アスペクト比(長径/厚み)は5以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の複合磁性体。
  6. 平均粒子径が3μm以下の球状の磁性粒子を溶液中に分散してなるスラリー及び分散媒体を、密閉可能な容器内に、前記スラリー及び前記分散媒体の合計の体積が前記容器内の体積と同じくなるように充填し、このスラリーを前記分散媒体と共に密閉状態にて撹拌し、前記球状の磁性粒子同士を変形及び融着させて扁平状の磁性粉体とする第1の工程と、
    前記扁平状の磁性粉体を絶縁材料に混合して成形材料とする第2の工程と、
    前記成形材料を成形または基材上に塗布し、乾燥し、熱処理または焼成する第3の工程と、
    を備えたことを特徴とする複合磁性体の製造方法。
  7. 請求項1ないし5のいずれか1項記載の複合磁性体を装荷してなり、
    70MHzから500MHzまでの周波数帯域の電磁波を、送信、受信または送受信することを特徴とするアンテナ。
  8. 請求項7記載のアンテナを備えてなることを特徴とする通信装置。
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