JP2004224826A - 接着剤樹脂組成物およびチップ型コイル部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】透磁率の低下を抑制しつつ、限界周波数およびQを高めて高周波化に対応できるようにする。
【解決手段】接着剤樹脂組成物4を用いて閉磁路構造が形成されたチップ型コイル部品1において、接着剤樹脂組成物4が、ベース樹脂と、少なくとも第1のフェライト粉末および第2のフェライト粉末の少なくとも一方を含み、第1のフェライト粉末が、NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、0.02≦x≦0.10、0≦y/x≦1.0、0.30≦z≦0.55の条件を満足し、第2のフェライト粉末が、0.10<x≦0.55、0.25≦y/x≦1.0、0.30≦z≦0.55の条件を満足するスピネル型フェライト粉末である。
【選択図】 図1
【解決手段】接着剤樹脂組成物4を用いて閉磁路構造が形成されたチップ型コイル部品1において、接着剤樹脂組成物4が、ベース樹脂と、少なくとも第1のフェライト粉末および第2のフェライト粉末の少なくとも一方を含み、第1のフェライト粉末が、NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、0.02≦x≦0.10、0≦y/x≦1.0、0.30≦z≦0.55の条件を満足し、第2のフェライト粉末が、0.10<x≦0.55、0.25≦y/x≦1.0、0.30≦z≦0.55の条件を満足するスピネル型フェライト粉末である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波帯で使用されるチョークコイルやインダクタ等のチップ型コイル部品およびそれらに好適に用いられる接着剤樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、チョークコイルやインダクタ等のチップ部品としては、以下のようなものがある。すなわち、絶縁体シートにコイル導体パターンを形成して積層し、その上下からフェライト基板を接着剤によって接着して封止した後、コイル導体パターンと電気的に接続するように外部電極を形成したものがある。
【0003】
しかしながら、上記のような構成のチップ型コイル部品の場合、上下面は、フェライト基板によって封止されるものの、側面は接着剤のみによって封止されることになり、磁気的に開放されていることになる。したがって、外部磁界によって影響されてインダクタンスやQ(利得)が変化したり、コイル導体パターンを流れる電流によって雑音障害が発生する虞れが生じるといった問題がある。
【0004】
また、コイル導体パターンを同一部品内に配置するチョークコイルアレイやインダクタアレイ等の場合は、コイル導体パターン同士が磁気的に結合して相互干渉が生じるといった問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するチップ型コイル部品として、液状マトリクス樹脂中にフェライト粉末を添加混合してなることを特徴とする接着剤樹脂組成物を用いて閉磁路構造を形成したチップ型コイル部品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、接着剤樹脂組成物に使用できるフェライトとして、Ni−Zn系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Mg−Zn系フェライト等が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−323245号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の接着剤樹脂組成物を用いたチップ型コイル部品では、接着剤樹脂組成物のμ’(複素透磁率の実数部)が低下し始める限界周波数が、例えば、0.5GHz以下であるため、近年の回路の電送信号の高周波化に対応できないという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたものであって、透磁率の低下を抑制しつつ、限界周波数およびQを高めて高周波化に対応できるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0010】
すなわち、本発明の接着剤樹脂組成物は、ベース樹脂とフェライト粉末とを含む接着剤樹脂組成物であって、
前記フェライト粉末が、第1のフェライト粉末および第2のフェライト粉末の少なくとも一方を含み、
前記第1のフェライト粉末が、(NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、
0.02≦x≦0.10
0≦y/x≦1.0
0.30≦z≦0.55
の条件を満足するスピネル型フェライト粉末であり、
前記第2のフェライト粉末が、(NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、
0.10<x≦0.55
0.25≦y/x≦1.0
0.30≦z≦0.55
の条件を満足するスピネル型フェライト粉末である。
【0011】
また、本発明のチップ型コイル部品は、コイル導体パターンを有するコイル部と、前記コイル部の上下に配置される磁性体基板と、前記コイル導体パターンと電気的に接続する外部電極とを備えるチップ型コイル部品であって、
前記コイル部と前記磁性体基板とが接着剤樹脂組成物を介して接着され、前記磁性体基板と前記接着剤樹脂組成物とによって閉磁路構造が形成され、
前記接着剤樹脂組成物が、ベース樹脂と、第1のフェライト粉末および第2のフェライト粉末の少なくとも一方を含み、
前記第1のフェライト粉末が、(NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、
0.02≦x≦0.10
0≦y/x≦1.0
0.30≦z≦0.55
の条件を満足するスピネル型フェライト粉末であり、
前記第2のフェライト粉末が、(NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、
0.10<x≦0.55
0.25≦y/x≦1.0
0.30≦z≦0.55
の条件を満足するスピネル型フェライト粉末である。
【0012】
本発明の接着剤樹脂組成物によると、限界周波数を高めることができ、高周波帯まで比較的良好な磁気特性、すなわち、透磁率およびQを得ることができる。
【0013】
また、本発明のチップ型コイル部品は、高周波帯まで比較的良好に磁気特性を有する本発明の接着剤樹脂組成物を用いて閉磁路構造が形成されるので、高周波帯でも十分な閉磁効果を奏することができ、高周波帯における外部磁界やコイル内部での相互干渉による悪影響からコイル部を保護することができる。
【0014】
本発明の接着剤樹脂組成物に含まれるフェライト粉末としては、上述の組成の第1のフェライト粉末また第2のフェライト粉末のいずれか一方を用いるのが好ましいが、第1および第2のフェライト粉末の両者を用いてもよい。
【0015】
上述したフェライト組成において、Niの一部を、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Cr、Mn等に置換したり、Feの一部を、Al、Ga、In等に置換したりしてもよい。この場合、例えば、Niの一部をMgで置換したとすると、置換した残りのNiと置換したMgとを合せて置換前のNiの組成を満足するようにすればよい。
【0016】
フェライト粉末を作製するときの仮焼温度は、800〜1200℃であることが好ましく、さらに好ましいのは、900〜1100℃である。これは、仮焼温度が800℃より低い場合には、スピネル相が十分に生成しないために、透磁率が低下するからである。一方、仮焼温度が1200℃より高い場合には、粒径調整するための粉砕工程において、粉砕効率が低下するからである。
【0017】
また、Cuを添加した場合、燒結性が向上し、その結果、粒度調整のため粉砕する際に、粉砕効率が低下するため、好ましくない。
【0018】
フェライト粉末の平均粒径は、0.01〜10μmとするのが好ましい。これは、フェライト粉末の平均粒径が0.01μmよりも小さい場合には、ベース樹脂と混合したときの粘度が高くなり、接着剤としてのハンドリング性が悪化するうえ、経時的にフェライト粉末が凝集して結果的にフェライト粉末の粒径が不均一になり、透磁率がばらつくからである。一方、フェライト粉末の平均粒径が、10μmよりも大きい場合には、フェライト粉末が沈殿しやすく分散状態が不均一になるうえ、スパッタリングや薄膜によって形成されたコイル導電パターンの封止に用いると、印刷時の圧力によってコイル導電パターンを破損する虞れがあるからである。
【0019】
接着剤樹脂組成物の基本となる樹脂であるベース(マトリクス)樹脂については、熱硬化性樹脂が好ましいが、熱可塑性樹脂でもよく、また、両者を同時に用いてもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ビスアリルナジイミド、BTレジン、アクリル樹脂、ベンゾオキサジンおよび硬化後ポリイミド樹脂となるポリアミック酸等が挙げられ、また、熱可塑性樹脂としては、例えば、PPS、LCP、PEEK、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0020】
また、ベース樹脂成分とフェライト粉末との混合においては、フェライト粉末を高密度に充填する必要があるため、液状でないベース樹脂を使用する場合、ベース樹脂成分を液状にする必要がある。液状でないベース樹脂成分を液状にするための方法としては、ベース樹脂を加熱溶融させるか、有機溶剤に溶解させる方法が挙げられるが、そのいずれの方法を用いても構わない。
【0021】
なお、本発明に用いる接着剤樹脂組成物においては、ベース樹脂とフェライト粉末の他に、フェライト粉末の表面を改質してベース樹脂成分との濡れ性を向上させる分散剤等の添加剤を別途添加してもよい。分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノアリルメチルエーテル無水マレイン酸スチレン共重合物、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ナフタレンスルホン酸等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0022】
ベース樹脂成分に対するフェライト粉末の添加量は、ベース樹脂成分100重量部に対して、200〜1500重量部であることが好ましく、さらに好ましいのは、400〜1200重量部である。これは、フェライト粉末のベース樹脂成分100重量部に対する添加量が200重量部より少ない場合は、透磁率が低下するからである。一方、フェライト粉末のベース樹脂成分100重量部に対する添加量が1500重量部より多い場合には、接着剤の粘度が高くなってハンドリング性が低下するとともに、接着剤の接着強度が低下するからである。
【0023】
また、ベース樹脂とフェライト粉末との混合に使用する装置については、特に制約はないが、フェライト粉末の粉砕と、ベース樹脂とフェライト粉末との混合とを同時に行なうことができる粉砕メディアを用いる強制攪拌型粉砕機を使用することができる。粉砕メディアを用いる強制攪拌粉砕機としては、例えば、サンドミル、アトライター等が挙げられる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面によって本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係るチップ型コイル部品の分解斜視図、図2はその概略斜視図、図3はその断面図である。
【0026】
この実施の形態のチップ型コイル部品1は、コイル部2と、本発明に係る接着剤樹脂組成物(接着剤)4を介してコイル部2の上下に配置されるフェライト基板(磁性体基板)3と、外部電極5とからなる。このうち、コイル部2は、コイル導体パターン2aが形成された絶縁性シート2bを複数枚積層し、かつ各コイル導体パターン2aを絶縁性シート2bに設けられたビアホール2cによって電気的に接続するこによって構成されている。
【0027】
また、フェライト基板3は、接着剤樹脂組成物4を介してコイル部2の上下から挟み込むように圧着され、接着剤樹脂組成物4によって固定されている。また、図3に示すように、接着剤樹脂組成物4は、フェライト基板3により圧着される際に、コイル部2の側面から下面を覆うように形成される。
【0028】
ここで、図1に示すように、コイル部2の絶縁シート2bには、コイル導体パターン2aが形成されている周囲に、貫通孔2dが設けられており、この貫通孔2dに接着剤樹脂組成物4が注入されるようになっている。なお、絶縁シート2bは、その周囲に接着剤樹脂組成物4が形成されるようにフェライト基板3より小さくするのが好ましい。
【0029】
また、外部電極5は、コイル導体パターン2aに電気的に接続するように、フェライト基板3の外側にスパッタリングによって形成されている。
【0030】
このような接着剤樹脂組成物4を、コイル導体パターン2aを有するコイル部2と、前記コイル部2の上下に配置されるフェライト基板3との接着に用いることによって、コイル部2がフェライト基板3と接着剤樹脂組成物4によって覆われるとともに、閉磁路構造が形成される。接着剤樹脂組成物4は、上述の組成を有するものであって、高周波帯まで比較的良好な磁気特性、すなわち、透磁率および利得Qを得ることができるので、閉磁路構造を有するチップ型コイル部品1は、外部磁界やコイル内部での相互干渉による悪影響からコイル部2を保護することができる。
【0031】
図4は、本発明の他の実施の形態のチップ型コイル部品10の分解斜視図、図5はその概略斜視図、図6はその断面図であり、図1〜図3のチップ型コイル部品1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0032】
この実施の形態のチップ型コイル部品10は、コイル部2を複数形成したものであり、この場合、各コイル導体パターン2a毎に、絶縁性シート2bを用意してもよいし、一枚の絶縁性シート2bに複数のコイル導体パターン2aを形成してもよい。その他の構成は、上述の実施の形態のチップ型コイル部品1と同様である。
【0033】
本発明のチップ型コイル部品1,10に用いる接着剤樹脂組成物4は、前述した組成を有するものであるが、その詳細を、実施例に基づいて以下に説明する。
【0034】
【実施例】
表1および表2に示すフェライト組成(モル比)となるように、原料である各種金属酸化物を調合し、ボールミルにて24時間湿式調合した。なお、表1には、試料番号1〜24、表2には、試料番号25〜46の組成を示している。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
次に、上述の混合粉末を大気中において1000℃の温度で2時間仮焼した。
【0037】
このようにして得られたフェライト粉末300gと、分散剤0.2g、N‐メチルピロリドン100gとを玉石の入った金属容器に投入し、サンドミルを用いて2時間フェライトを粉砕した。なお、このときのフェライト粉末の平均粒径は、0.4μmであった。
【0038】
次に、ピロメリット酸無水物とジアミノジフェニルエーテルとをN‐メチルピロリドン中で反応させて作製したポリアミック酸(ポリアミック酸20wt%溶液)を上記金属容器内に200g投入し、さらに1時間混合・分散を行なって接着剤樹脂組成物を得た。
【0039】
圧縮プレスにより円柱状テストピースを作製し、旋盤加工の後、S‐パラメータ法にて、周波数0.5GHz、1GHz、2GHzの磁気特性を評価した。
【0040】
また、比較例として、Ni−Znフェライトを用いて、上述した方法と同様の方法によって接着剤樹脂組成物を作製し、その磁気特性を評価した。
【0041】
表3,表4には、上述のようにして磁気特性が評価された、表1,表2に示す各試料1〜24、25〜46に係る接着剤樹脂組成物および上述の比較例に係る接着剤樹脂組成物の各々についての、μ’(複素透磁率の実数部)が低下し始める限界周波数、各周波数におけるμ’および利得Qが示されている。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
表1〜表4において、本発明の範囲から外れるものについては、その試料番号に*が付されている。
【0044】
試料1,2は、いずれも本発明の範囲から外れている。これら試料1,2は、CoOを含まないため、限界周波数が低くなっている。試料3〜5において、試料3〜4が本発明の範囲にあり、試料5が本発明の範囲から外れている。これら試料3〜5の間で比較すると、CoOに対するZnOのモル比が1.0より大きい試料5では、試料3〜4に比べて、限界周波数が低くなっている。
【0045】
試料6〜9において、試料6〜8が本発明の範囲にあり、試料9が本発明の範囲から外れている。これら試料6〜9の間で比較すると、CoOに対するZnOのモル比が1.0より大きい試料9では、試料6〜8に比べて、限界周波数は低くなっている。試料10〜15において、試料11〜14が本発明の範囲にあり、試料10,15が本発明の範囲から外れている。これら試料10〜15の間で比較すると、CoOのモル比が0.10より大きく、CoOに対するZnOに対するモル比が0.25より小さい試料10では、試料11〜14に比べてμ’が低くなっており、またCoOに対するZnOのモル比が1.0より大きい試料15では、試料11〜14に比べて、限界周波数が低くなっている。
【0046】
試料16〜22において、試料17〜21が本発明の範囲にあり、試料16,22が本発明の範囲から外れている。これら試料16〜22の間で比較すると、CoOのモル比が0.10より大きく、CoOに対するZnOのモル比が0.25より小さい試料16では、試料17〜21に比べてμ’が低くなっている。またCoOに対するZnOのモル比が1.0より大きい試料22では、試料17〜21に比べて、限界周波数が低くなっている。
【0047】
試料23〜29において、試料24〜28が本発明の範囲にあり、試料23,29が本発明の範囲から外れている。これら試料23〜29の間で比較すると、CoOのモル比が0.10より大きく、CoOに対するZnOのモル比が0.25より小さい試料23では、試料24〜28に比べてμ’が、低くなっている。
また、Fe2O3のモル比が、0.30より小さい試料29では、試料24〜28に比べて限界周波数が低くなっている。
【0048】
試料30〜34において、試料31,32が本発明の範囲にあり、試料30,33,34が本発明の範囲から外れている。これら試料30〜34の間で比較すると、CoOのモル比が0.10より大きく、CoOに対するZnOのモル比が0.25より小さい試料30では、試料31,32に比べてμ’が、低くなっている。また、Fe2O3が、0.30より小さい試料33,34では、試料31,32に比べてμ’が低くなっている。
【0049】
試料35〜37においては、試料36が本発明の範囲にあり、試料35,37が本発明の範囲から外れている。CoOのモル比が0.10より大きく、CoOに対するZnOのモル比が0.25より小さい試料35では、試料36に比べてμ’が、低くなっている。また、Fe2O3が、0.30より小さい試料37では、試料36に比べてμ’が低くなっている。
【0050】
本発明の範囲から外れ、CoOのモル比が0.10より大きい試料38,39は、μ’が、低くなっている。
【0051】
試料40〜46において、試料41〜45が本発明の範囲にあり、試料40,46が本発明の範囲から外れている。Fe2O3が、0.30より小さい試料40では、試料41〜45に比べてμ’が低くなっている。また、Fe2O3が0.55を超える試料46では、試料41〜45に比べて利得Qが低くなっている。また、比較例について本願発明と同様の特性評価をしたところ、μ’は高いが、限界周波数が0.1GHzと低く、利得Qも2以下と非常に低いため、0.5GHz以上の高周波帯において電子部品として作動しないことがわかった。
【0052】
このように、試料1〜46によれば、本発明の範囲外にある*を付された試料の一部を除いて、比較例と比較して、大体において、限界周波数が0.5GHzを超えるため、0.5GHz以上の周波数において比較的良好な磁気特性、すなわち、透磁率および利得Qを示すことがわかる。
【0053】
【発明の効果】
以上のように本発明の接着剤樹脂組成物によれば、透磁率が低下し始める限界周波数を、例えば、0.5GHz以上に高めることができ、高周波帯まで比較的良好な磁気特性、すなわち、透磁率およびQを得ることができる。
【0054】
また、本発明の接着剤樹脂組成物を用いてコイルを封止して閉磁路構造が形成される本発明のチップ型コイル部品は、高周波帯でも十分な閉磁効果を奏することができ、高周波帯における外部磁界やコイル内部での相互干渉による悪影響からコイル部を保護することができ、回路の電送信号の高周波化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るチップ型コイル部品の分解斜視図である。
【図2】図1の実施の形態の概略斜視図である。
【図3】図1の実施の形態の断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態のチップ型コイル部品の分解斜視図である。
【図5】図4の実施の形態の概略斜視図である。
【図6】図4の実施の形態の断面図である。
【符号の説明】
1,10 チップ型コイル部品
2 コイル部
3 フェライト基板
4 接着剤樹脂組成物(接着剤)
5 外部電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波帯で使用されるチョークコイルやインダクタ等のチップ型コイル部品およびそれらに好適に用いられる接着剤樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、チョークコイルやインダクタ等のチップ部品としては、以下のようなものがある。すなわち、絶縁体シートにコイル導体パターンを形成して積層し、その上下からフェライト基板を接着剤によって接着して封止した後、コイル導体パターンと電気的に接続するように外部電極を形成したものがある。
【0003】
しかしながら、上記のような構成のチップ型コイル部品の場合、上下面は、フェライト基板によって封止されるものの、側面は接着剤のみによって封止されることになり、磁気的に開放されていることになる。したがって、外部磁界によって影響されてインダクタンスやQ(利得)が変化したり、コイル導体パターンを流れる電流によって雑音障害が発生する虞れが生じるといった問題がある。
【0004】
また、コイル導体パターンを同一部品内に配置するチョークコイルアレイやインダクタアレイ等の場合は、コイル導体パターン同士が磁気的に結合して相互干渉が生じるといった問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するチップ型コイル部品として、液状マトリクス樹脂中にフェライト粉末を添加混合してなることを特徴とする接着剤樹脂組成物を用いて閉磁路構造を形成したチップ型コイル部品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、接着剤樹脂組成物に使用できるフェライトとして、Ni−Zn系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Mg−Zn系フェライト等が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−323245号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の接着剤樹脂組成物を用いたチップ型コイル部品では、接着剤樹脂組成物のμ’(複素透磁率の実数部)が低下し始める限界周波数が、例えば、0.5GHz以下であるため、近年の回路の電送信号の高周波化に対応できないという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたものであって、透磁率の低下を抑制しつつ、限界周波数およびQを高めて高周波化に対応できるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0010】
すなわち、本発明の接着剤樹脂組成物は、ベース樹脂とフェライト粉末とを含む接着剤樹脂組成物であって、
前記フェライト粉末が、第1のフェライト粉末および第2のフェライト粉末の少なくとも一方を含み、
前記第1のフェライト粉末が、(NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、
0.02≦x≦0.10
0≦y/x≦1.0
0.30≦z≦0.55
の条件を満足するスピネル型フェライト粉末であり、
前記第2のフェライト粉末が、(NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、
0.10<x≦0.55
0.25≦y/x≦1.0
0.30≦z≦0.55
の条件を満足するスピネル型フェライト粉末である。
【0011】
また、本発明のチップ型コイル部品は、コイル導体パターンを有するコイル部と、前記コイル部の上下に配置される磁性体基板と、前記コイル導体パターンと電気的に接続する外部電極とを備えるチップ型コイル部品であって、
前記コイル部と前記磁性体基板とが接着剤樹脂組成物を介して接着され、前記磁性体基板と前記接着剤樹脂組成物とによって閉磁路構造が形成され、
前記接着剤樹脂組成物が、ベース樹脂と、第1のフェライト粉末および第2のフェライト粉末の少なくとも一方を含み、
前記第1のフェライト粉末が、(NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、
0.02≦x≦0.10
0≦y/x≦1.0
0.30≦z≦0.55
の条件を満足するスピネル型フェライト粉末であり、
前記第2のフェライト粉末が、(NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、
0.10<x≦0.55
0.25≦y/x≦1.0
0.30≦z≦0.55
の条件を満足するスピネル型フェライト粉末である。
【0012】
本発明の接着剤樹脂組成物によると、限界周波数を高めることができ、高周波帯まで比較的良好な磁気特性、すなわち、透磁率およびQを得ることができる。
【0013】
また、本発明のチップ型コイル部品は、高周波帯まで比較的良好に磁気特性を有する本発明の接着剤樹脂組成物を用いて閉磁路構造が形成されるので、高周波帯でも十分な閉磁効果を奏することができ、高周波帯における外部磁界やコイル内部での相互干渉による悪影響からコイル部を保護することができる。
【0014】
本発明の接着剤樹脂組成物に含まれるフェライト粉末としては、上述の組成の第1のフェライト粉末また第2のフェライト粉末のいずれか一方を用いるのが好ましいが、第1および第2のフェライト粉末の両者を用いてもよい。
【0015】
上述したフェライト組成において、Niの一部を、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Cr、Mn等に置換したり、Feの一部を、Al、Ga、In等に置換したりしてもよい。この場合、例えば、Niの一部をMgで置換したとすると、置換した残りのNiと置換したMgとを合せて置換前のNiの組成を満足するようにすればよい。
【0016】
フェライト粉末を作製するときの仮焼温度は、800〜1200℃であることが好ましく、さらに好ましいのは、900〜1100℃である。これは、仮焼温度が800℃より低い場合には、スピネル相が十分に生成しないために、透磁率が低下するからである。一方、仮焼温度が1200℃より高い場合には、粒径調整するための粉砕工程において、粉砕効率が低下するからである。
【0017】
また、Cuを添加した場合、燒結性が向上し、その結果、粒度調整のため粉砕する際に、粉砕効率が低下するため、好ましくない。
【0018】
フェライト粉末の平均粒径は、0.01〜10μmとするのが好ましい。これは、フェライト粉末の平均粒径が0.01μmよりも小さい場合には、ベース樹脂と混合したときの粘度が高くなり、接着剤としてのハンドリング性が悪化するうえ、経時的にフェライト粉末が凝集して結果的にフェライト粉末の粒径が不均一になり、透磁率がばらつくからである。一方、フェライト粉末の平均粒径が、10μmよりも大きい場合には、フェライト粉末が沈殿しやすく分散状態が不均一になるうえ、スパッタリングや薄膜によって形成されたコイル導電パターンの封止に用いると、印刷時の圧力によってコイル導電パターンを破損する虞れがあるからである。
【0019】
接着剤樹脂組成物の基本となる樹脂であるベース(マトリクス)樹脂については、熱硬化性樹脂が好ましいが、熱可塑性樹脂でもよく、また、両者を同時に用いてもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ビスアリルナジイミド、BTレジン、アクリル樹脂、ベンゾオキサジンおよび硬化後ポリイミド樹脂となるポリアミック酸等が挙げられ、また、熱可塑性樹脂としては、例えば、PPS、LCP、PEEK、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0020】
また、ベース樹脂成分とフェライト粉末との混合においては、フェライト粉末を高密度に充填する必要があるため、液状でないベース樹脂を使用する場合、ベース樹脂成分を液状にする必要がある。液状でないベース樹脂成分を液状にするための方法としては、ベース樹脂を加熱溶融させるか、有機溶剤に溶解させる方法が挙げられるが、そのいずれの方法を用いても構わない。
【0021】
なお、本発明に用いる接着剤樹脂組成物においては、ベース樹脂とフェライト粉末の他に、フェライト粉末の表面を改質してベース樹脂成分との濡れ性を向上させる分散剤等の添加剤を別途添加してもよい。分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノアリルメチルエーテル無水マレイン酸スチレン共重合物、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ナフタレンスルホン酸等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0022】
ベース樹脂成分に対するフェライト粉末の添加量は、ベース樹脂成分100重量部に対して、200〜1500重量部であることが好ましく、さらに好ましいのは、400〜1200重量部である。これは、フェライト粉末のベース樹脂成分100重量部に対する添加量が200重量部より少ない場合は、透磁率が低下するからである。一方、フェライト粉末のベース樹脂成分100重量部に対する添加量が1500重量部より多い場合には、接着剤の粘度が高くなってハンドリング性が低下するとともに、接着剤の接着強度が低下するからである。
【0023】
また、ベース樹脂とフェライト粉末との混合に使用する装置については、特に制約はないが、フェライト粉末の粉砕と、ベース樹脂とフェライト粉末との混合とを同時に行なうことができる粉砕メディアを用いる強制攪拌型粉砕機を使用することができる。粉砕メディアを用いる強制攪拌粉砕機としては、例えば、サンドミル、アトライター等が挙げられる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面によって本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係るチップ型コイル部品の分解斜視図、図2はその概略斜視図、図3はその断面図である。
【0026】
この実施の形態のチップ型コイル部品1は、コイル部2と、本発明に係る接着剤樹脂組成物(接着剤)4を介してコイル部2の上下に配置されるフェライト基板(磁性体基板)3と、外部電極5とからなる。このうち、コイル部2は、コイル導体パターン2aが形成された絶縁性シート2bを複数枚積層し、かつ各コイル導体パターン2aを絶縁性シート2bに設けられたビアホール2cによって電気的に接続するこによって構成されている。
【0027】
また、フェライト基板3は、接着剤樹脂組成物4を介してコイル部2の上下から挟み込むように圧着され、接着剤樹脂組成物4によって固定されている。また、図3に示すように、接着剤樹脂組成物4は、フェライト基板3により圧着される際に、コイル部2の側面から下面を覆うように形成される。
【0028】
ここで、図1に示すように、コイル部2の絶縁シート2bには、コイル導体パターン2aが形成されている周囲に、貫通孔2dが設けられており、この貫通孔2dに接着剤樹脂組成物4が注入されるようになっている。なお、絶縁シート2bは、その周囲に接着剤樹脂組成物4が形成されるようにフェライト基板3より小さくするのが好ましい。
【0029】
また、外部電極5は、コイル導体パターン2aに電気的に接続するように、フェライト基板3の外側にスパッタリングによって形成されている。
【0030】
このような接着剤樹脂組成物4を、コイル導体パターン2aを有するコイル部2と、前記コイル部2の上下に配置されるフェライト基板3との接着に用いることによって、コイル部2がフェライト基板3と接着剤樹脂組成物4によって覆われるとともに、閉磁路構造が形成される。接着剤樹脂組成物4は、上述の組成を有するものであって、高周波帯まで比較的良好な磁気特性、すなわち、透磁率および利得Qを得ることができるので、閉磁路構造を有するチップ型コイル部品1は、外部磁界やコイル内部での相互干渉による悪影響からコイル部2を保護することができる。
【0031】
図4は、本発明の他の実施の形態のチップ型コイル部品10の分解斜視図、図5はその概略斜視図、図6はその断面図であり、図1〜図3のチップ型コイル部品1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0032】
この実施の形態のチップ型コイル部品10は、コイル部2を複数形成したものであり、この場合、各コイル導体パターン2a毎に、絶縁性シート2bを用意してもよいし、一枚の絶縁性シート2bに複数のコイル導体パターン2aを形成してもよい。その他の構成は、上述の実施の形態のチップ型コイル部品1と同様である。
【0033】
本発明のチップ型コイル部品1,10に用いる接着剤樹脂組成物4は、前述した組成を有するものであるが、その詳細を、実施例に基づいて以下に説明する。
【0034】
【実施例】
表1および表2に示すフェライト組成(モル比)となるように、原料である各種金属酸化物を調合し、ボールミルにて24時間湿式調合した。なお、表1には、試料番号1〜24、表2には、試料番号25〜46の組成を示している。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
次に、上述の混合粉末を大気中において1000℃の温度で2時間仮焼した。
【0037】
このようにして得られたフェライト粉末300gと、分散剤0.2g、N‐メチルピロリドン100gとを玉石の入った金属容器に投入し、サンドミルを用いて2時間フェライトを粉砕した。なお、このときのフェライト粉末の平均粒径は、0.4μmであった。
【0038】
次に、ピロメリット酸無水物とジアミノジフェニルエーテルとをN‐メチルピロリドン中で反応させて作製したポリアミック酸(ポリアミック酸20wt%溶液)を上記金属容器内に200g投入し、さらに1時間混合・分散を行なって接着剤樹脂組成物を得た。
【0039】
圧縮プレスにより円柱状テストピースを作製し、旋盤加工の後、S‐パラメータ法にて、周波数0.5GHz、1GHz、2GHzの磁気特性を評価した。
【0040】
また、比較例として、Ni−Znフェライトを用いて、上述した方法と同様の方法によって接着剤樹脂組成物を作製し、その磁気特性を評価した。
【0041】
表3,表4には、上述のようにして磁気特性が評価された、表1,表2に示す各試料1〜24、25〜46に係る接着剤樹脂組成物および上述の比較例に係る接着剤樹脂組成物の各々についての、μ’(複素透磁率の実数部)が低下し始める限界周波数、各周波数におけるμ’および利得Qが示されている。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
表1〜表4において、本発明の範囲から外れるものについては、その試料番号に*が付されている。
【0044】
試料1,2は、いずれも本発明の範囲から外れている。これら試料1,2は、CoOを含まないため、限界周波数が低くなっている。試料3〜5において、試料3〜4が本発明の範囲にあり、試料5が本発明の範囲から外れている。これら試料3〜5の間で比較すると、CoOに対するZnOのモル比が1.0より大きい試料5では、試料3〜4に比べて、限界周波数が低くなっている。
【0045】
試料6〜9において、試料6〜8が本発明の範囲にあり、試料9が本発明の範囲から外れている。これら試料6〜9の間で比較すると、CoOに対するZnOのモル比が1.0より大きい試料9では、試料6〜8に比べて、限界周波数は低くなっている。試料10〜15において、試料11〜14が本発明の範囲にあり、試料10,15が本発明の範囲から外れている。これら試料10〜15の間で比較すると、CoOのモル比が0.10より大きく、CoOに対するZnOに対するモル比が0.25より小さい試料10では、試料11〜14に比べてμ’が低くなっており、またCoOに対するZnOのモル比が1.0より大きい試料15では、試料11〜14に比べて、限界周波数が低くなっている。
【0046】
試料16〜22において、試料17〜21が本発明の範囲にあり、試料16,22が本発明の範囲から外れている。これら試料16〜22の間で比較すると、CoOのモル比が0.10より大きく、CoOに対するZnOのモル比が0.25より小さい試料16では、試料17〜21に比べてμ’が低くなっている。またCoOに対するZnOのモル比が1.0より大きい試料22では、試料17〜21に比べて、限界周波数が低くなっている。
【0047】
試料23〜29において、試料24〜28が本発明の範囲にあり、試料23,29が本発明の範囲から外れている。これら試料23〜29の間で比較すると、CoOのモル比が0.10より大きく、CoOに対するZnOのモル比が0.25より小さい試料23では、試料24〜28に比べてμ’が、低くなっている。
また、Fe2O3のモル比が、0.30より小さい試料29では、試料24〜28に比べて限界周波数が低くなっている。
【0048】
試料30〜34において、試料31,32が本発明の範囲にあり、試料30,33,34が本発明の範囲から外れている。これら試料30〜34の間で比較すると、CoOのモル比が0.10より大きく、CoOに対するZnOのモル比が0.25より小さい試料30では、試料31,32に比べてμ’が、低くなっている。また、Fe2O3が、0.30より小さい試料33,34では、試料31,32に比べてμ’が低くなっている。
【0049】
試料35〜37においては、試料36が本発明の範囲にあり、試料35,37が本発明の範囲から外れている。CoOのモル比が0.10より大きく、CoOに対するZnOのモル比が0.25より小さい試料35では、試料36に比べてμ’が、低くなっている。また、Fe2O3が、0.30より小さい試料37では、試料36に比べてμ’が低くなっている。
【0050】
本発明の範囲から外れ、CoOのモル比が0.10より大きい試料38,39は、μ’が、低くなっている。
【0051】
試料40〜46において、試料41〜45が本発明の範囲にあり、試料40,46が本発明の範囲から外れている。Fe2O3が、0.30より小さい試料40では、試料41〜45に比べてμ’が低くなっている。また、Fe2O3が0.55を超える試料46では、試料41〜45に比べて利得Qが低くなっている。また、比較例について本願発明と同様の特性評価をしたところ、μ’は高いが、限界周波数が0.1GHzと低く、利得Qも2以下と非常に低いため、0.5GHz以上の高周波帯において電子部品として作動しないことがわかった。
【0052】
このように、試料1〜46によれば、本発明の範囲外にある*を付された試料の一部を除いて、比較例と比較して、大体において、限界周波数が0.5GHzを超えるため、0.5GHz以上の周波数において比較的良好な磁気特性、すなわち、透磁率および利得Qを示すことがわかる。
【0053】
【発明の効果】
以上のように本発明の接着剤樹脂組成物によれば、透磁率が低下し始める限界周波数を、例えば、0.5GHz以上に高めることができ、高周波帯まで比較的良好な磁気特性、すなわち、透磁率およびQを得ることができる。
【0054】
また、本発明の接着剤樹脂組成物を用いてコイルを封止して閉磁路構造が形成される本発明のチップ型コイル部品は、高周波帯でも十分な閉磁効果を奏することができ、高周波帯における外部磁界やコイル内部での相互干渉による悪影響からコイル部を保護することができ、回路の電送信号の高周波化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るチップ型コイル部品の分解斜視図である。
【図2】図1の実施の形態の概略斜視図である。
【図3】図1の実施の形態の断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態のチップ型コイル部品の分解斜視図である。
【図5】図4の実施の形態の概略斜視図である。
【図6】図4の実施の形態の断面図である。
【符号の説明】
1,10 チップ型コイル部品
2 コイル部
3 フェライト基板
4 接着剤樹脂組成物(接着剤)
5 外部電極
Claims (2)
- ベース樹脂とフェライト粉末とを含む接着剤樹脂組成物であって、
前記フェライト粉末が、第1のフェライト粉末および第2のフェライト粉末の少なくとも一方を含み、
前記第1のフェライト粉末が、(NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、
0.02≦x≦0.10
0≦y/x≦1.0
0.30≦z≦0.55
の条件を満足するスピネル型フェライト粉末であり、
前記第2のフェライト粉末が、(NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、
0.10<x≦0.55
0.25≦y/x≦1.0
0.30≦z≦0.55
の条件を満足するスピネル型フェライト粉末であることを特徴とする接着剤樹脂組成物。 - コイル導体パターンを有するコイル部と、前記コイル部の上下に配置される磁性体基板と、前記コイル導体パターンと電気的に接続する外部電極とを備えるチップ型コイル部品であって、
前記コイル部と前記磁性体基板とが接着剤樹脂組成物を介して接着され、前記磁性体基板と前記接着剤樹脂組成物とによって閉磁路構造が形成され、
前記接着剤樹脂組成物が、ベース樹脂と、第1のフェライト粉末および第2のフェライト粉末の少なくとも一方を含み、
前記第1のフェライト粉末が、(NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、
0.02≦x≦0.10
0≦y/x≦1.0
0.30≦z≦0.55
の条件を満足するスピネル型フェライト粉末であり、
前記第2のフェライト粉末が、(NiO)1−x−y−z(CoO)x(ZnO)y(Fe2O3)zで表される組成を有し、x、yおよびzが、
0.10<x≦0.55
0.25≦y/x≦1.0
0.30≦z≦0.55
の条件を満足するスピネル型フェライト粉末であることを特徴とするチップ型コイル部品。
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