WO2022030601A1 - 軟磁性組成物、焼結体、複合体、ペースト、コイル部品およびアンテナ - Google Patents

軟磁性組成物、焼結体、複合体、ペースト、コイル部品およびアンテナ Download PDF

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Abstract

本発明の軟磁性組成物は、W型六方晶フェライトを主相とする、以下の金属元素割合を有する酸化物であり、保磁力Hcjが100kA/m以下である。 Ba+Sr+Na+K+La+Bi:4.7mol%以上5.8mol%以下、 Ba:0mol%以上5.8mol%以下、 Sr:0mol%以上5.8mol%以下、 Na:0mol%以上5.2mol%以下、 K:0mol%以上5.2mol%以下、 La:0mol%以上2.1mol%以下、 Bi:0mol%以上1.0mol%以下、 Ca:0.2mol%以上5.0mol%以下、 Fe:67.4mol%以上84.5mol%以下、 Me(II)=Co+Cu+Mg+Mn+Ni+Zn:9.4mol%以上18.1mol%以下、 Me(II)=Mg+Mn+Ni+Zn:7.8mol%以上17.1mol%以下、 Cu:0mol%以上1.6mol%以下、 Mg:0mol%以上17.1mol%以下、 Mn:0mol%以上17.1mol%以下、 Ni:0mol%以上17.1mol%以下、 Zn:0mol%以上17.1mol%以下、 Co:0mol%以上2.6mol%以下、 Me(I)=Na+K+Li、Me(II)=Co+Cu+Mg+Mn+Ni+Zn、Me(IV)=Ge+Si+Sn+Ti+Zr+Hf、Me(V)=Mo+Nb+Ta+Sb+W+V、D=Me(I)+Me(II)-Me(IV)-2×Me(V)と定義した時に、D:7.8mol%以上11.6mol%以下、 M2d=In+Sc+Sn+Zr+Hf:0mol%以上7.8mol%以下、 Sn:0mol%以上7.8mol%以下、 Zr+Hf:0mol%以上7.8mol%以下、 In:0mol%以上7.8mol%以下、 Sc:0mol%以上7.8mol%以下、 Ge:0mol%以上2.6mol%以下、 Si:0mol%以上2.6mol%以下、 Ti:0mol%以上2.6mol%以下、 Al:0mol%以上2.6mol%以下、 Ga:0mol%以上2.6mol%以下、 Mo:0mol%以上2.6mol%以下、 Nb+Ta:0mol%以上2.6mol%以下、 Sb:0mol%以上2.6mol%以下、 W:0mol%以上2.6mol%以下、 V:0mol%以上2.6mol%以下、 Li:0mol%以上2.6mol%以下。

Description

軟磁性組成物、焼結体、複合体、ペースト、コイル部品およびアンテナ
 本発明は、軟磁性組成物、焼結体、複合体、ペースト、コイル部品およびアンテナに関する。
 フェライト材料等の磁性材料は、インダクタ、アンテナ、ノイズフィルタ、電波吸収体、コンデンサと組み合わせたLCフィルタ等の部品を構成する材料として広く使用されている。これらの部品は、磁性材料の有する複素透磁率μの実数項である透磁率μ’または虚数項である磁気損失成分μ”の特性を目的に応じて利用する。例えば、インダクタやアンテナでは、透磁率μ’が高いことが求められる。さらに、インダクタやアンテナでは、磁気損失成分μ”が低いことも好ましいため、μ”/μ’の比で求められる磁気損失tanδが低いことが求められる。
 近年、電子機器を使用する周波数帯域の高周波数化が進んでおり、GHz帯において必要な特性を満たす磁性材料が求められている。例えば、携帯情報通信規格である5G(5th Generation)の一部、ETC(電子料金収受システム)、5GHz帯のWi-Fi(登録商標)等の通信市場では、4~6GHz程度の領域で使用することが想定されている。
 特許文献1には、組成式がAO・n(BO)・mFeで表される六方晶W型フェライト相から成り、且つその平均結晶粒径が0.3~4μmであり、特定方向の磁気的異方性を有し、AはBa、Sr、Ca、Pbの1種または2種以上、BはFe、Co、Ni、Mn、Mg、Cr、Cu、Znの1種または2種以上、7.4≦m≦8.8、1.2≦n≦2.5である、W型フェライト焼結磁石が開示されている。
 特許文献2には、A(AはSr、BaまたはCaである。)、CoおよびZnを含有するW型フェライトの主相を有し、それぞれの金属元素(A、Fe、CoおよびZn)の総計の構成比率が、全金属元素量に対し、A:1~13原子%、Fe:78~95原子%、Co:0.5~15原子%およびZn:0.5~15原子%である基本組成を有する、フェライト磁石が開示されている。
 特許文献3には、組成式(Sr1-xCa)O・(Fe2-y)O・n(Fe)(但しMはNi、ZnおよびCoから選択される少なくとも1種の元素)で表され、上記x、yおよびモル比を表すnが、0.05≦x≦0.3、0.5<y<2、7.2≦n≦7.7、であり、構成相がW単相であるW型フェライト粉末が開示されている。
 特許文献4には、組成式がAMeFe1627で示されるW型六方晶フェライトの結晶構造のc軸異方性化合物を有し、組成式のAはCa、Ba、Sr、Pbの1種または2種以上であり、総量が2モルのMeは、Coを0.8モル以下、並びにMg、Mn、Fe、Ni、Cu、Znの1種または2種以上を含むフェライト電波吸収材料が開示されている。さらに、特許文献4には、AO:8~10mol%、MeO:17~19mol%、Fe:71~75mol%で示されるW型六方晶フェライトの結晶構造のc軸異方性化合物を有し、上記AはCa、Ba、Sr、Pbの1種または2種以上であり、MeOは、CoOを7mol%以下並びにMgO、MnO、FeO、NiO、CuO、ZnOの1種または2種以上を含むフェライト電波吸収材料が開示されている。
 特許文献5には、R2+(但しRはBa、Sr、PbおよびCaの少なくとも1種)の塩、Me2+(但しMeはNi、Co、Cu、Cd、Zn、Mgおよび鉄の少なくとも1種)の塩、および第1鉄塩と第2鉄塩の少なくとも1種からなる混合水溶液からアルカリまたはシュウ酸塩の存在下で共沈物を得、該共沈物を分離・洗浄・濾過・乾燥後、焼成してW相単相あるいはW相を含む複合相のフェライト粒子を得る、W相型酸化物磁性粒子の製造方法が開示されている。
特開2000-311809号公報 特開2003-133119号公報 特開2017-69365号公報 特開2005-347485号公報 特開昭59-174530号公報
 特許文献1および2には、いずれもフェライト磁石が記載されている。特許文献1の図1には、保磁力が100kA/m以上であることが記載されている。また、特許文献2の実施例9、10および11には、保磁力がそれぞれ159.2kA/m、175.1kA/mおよび175.1kA/mであることが記載されている。そのため、特許文献1および2に記載のフェライト材料は、磁石材料としては有効であるが、インダクタやアンテナの材料として使用するには保磁力が高すぎる。
 特許文献3には、フェライト材料を焼結磁石またはボンド磁石として好適に使用できることが記載されている。さらに、特許文献3には、M元素が2、すなわちFe2+が0になると保磁力が低下するという問題が指摘されている。フェライト材料では、低温減磁現象が知られている。低温減磁現象のため、磁石材料として使用する場合に保磁力が100kA/m以下と低いと、図2に示すように、低温から常温に戻した時に磁力が減少する問題が生じやすい。実使用上、磁石材料の低温減磁現象を防ぐために高保磁力化させるので、特許文献3に記載のフェライト材料は、インダクタやアンテナの材料として使用するには保磁力が高すぎると推定される。
 特許文献4には、高い磁気損失が要求される電波吸収体の材料で、該虚数部のμ”を上げることが記載されている。そのため、特許文献4に記載のフェライト材料は、低い磁気損失tanδ=μ”÷μ’が要求されるインダクタやアンテナの材料とは、用途および特性が大きく異なる。
 特許文献5には、BaMeFe1627というW相の組成式が記載されている。しかし、実施例では、MeとしてCd、Cu、Fe、Znの例のみが開示されており、Co、MgまたはNiを用いた組成は開示されず、Mnは請求項の範囲外である。本特許の用途は磁気記録用であり、インダクタやアンテナに必要な高透磁率化や低損失化に関する言及がない。BaサイトにCaを含む実施例はMe元素がFeのみであり、Zn-W型フェライトの実施例にCaを含まないことから、本特許に重なる実施例組成はない。なお、実施例1のように、Baに対するCaの置換量を変えていくと、MeサイトにFeが入るため、Ba1-xCaFe2+ Fe3+ 1627で表される組成が得られると考えられる。つまり、Fe2+は2価のFe、Fe3+は3価のFeとして区別される。
 このように、特許文献1~5には種々のフェライト材料が記載されているものの、保磁力が低い軟磁性材料であって、高周波領域における透磁率μ’が高く、かつ、磁気損失tanδが低いフェライト材料は得られていないのが現状である。
 本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、例えば6GHzといった高周波領域における透磁率μ’が高く、かつ、磁気損失tanδが低い軟磁性組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記軟磁性組成物を用いた焼結体、複合体およびペーストを提供すること、並びに、上記焼結体、複合体またはペーストを用いたコイル部品およびアンテナを提供することを目的とする。
 本発明の軟磁性組成物は、W型六方晶フェライトを主相とする、以下の金属元素割合を有する酸化物であり、保磁力Hcjが100kA/m以下である。
 Ba+Sr+Na+K+La+Bi:4.7mol%以上5.8mol%以下、
 Ba:0mol%以上5.8mol%以下、
 Sr:0mol%以上5.8mol%以下、
 Na:0mol%以上5.2mol%以下、
 K:0mol%以上5.2mol%以下、
 La:0mol%以上2.1mol%以下、
 Bi:0mol%以上1.0mol%以下、
 Ca:0.2mol%以上5.0mol%以下、
 Fe:67.4mol%以上84.5mol%以下、
 Me(II)=Co+Cu+Mg+Mn+Ni+Zn:9.4mol%以上18.1mol%以下、
 Me(II)=Mg+Mn+Ni+Zn:7.8mol%以上17.1mol%以下、
 Cu:0mol%以上1.6mol%以下、
 Mg:0mol%以上17.1mol%以下、
 Mn:0mol%以上17.1mol%以下、
 Ni:0mol%以上17.1mol%以下、
 Zn:0mol%以上17.1mol%以下、
 Co:0mol%以上2.6mol%以下、
 Me(I)=Na+K+Li、Me(II)=Co+Cu+Mg+Mn+Ni+Zn、Me(IV)=Ge+Si+Sn+Ti+Zr+Hf、Me(V)=Mo+Nb+Ta+Sb+W+V、D=Me(I)+Me(II)-Me(IV)-2×Me(V)と定義した時に、D:7.8mol%以上11.6mol%以下、
 M2d=In+Sc+Sn+Zr+Hf:0mol%以上7.8mol%以下、
 Sn:0mol%以上7.8mol%以下、
 Zr+Hf:0mol%以上7.8mol%以下、
 In:0mol%以上7.8mol%以下、
 Sc:0mol%以上7.8mol%以下、
 Ge:0mol%以上2.6mol%以下、
 Si:0mol%以上2.6mol%以下、
 Ti:0mol%以上2.6mol%以下、
 Al:0mol%以上2.6mol%以下、
 Ga:0mol%以上2.6mol%以下、
 Mo:0mol%以上2.6mol%以下、
 Nb+Ta:0mol%以上2.6mol%以下、
 Sb:0mol%以上2.6mol%以下、
 W:0mol%以上2.6mol%以下、
 V:0mol%以上2.6mol%以下、
 Li:0mol%以上2.6mol%以下。
 本発明の焼結体は、本発明の軟磁性組成物を焼成して得られる。
 本発明の複合体は、本発明の軟磁性組成物と、非磁性体とを混合して得られ、一体となっている。
 本発明のペーストは、本発明の軟磁性組成物と、非磁性体とを混合して得られ、流動性と高粘性がある。流動性を持つことで、穴の開いた空間などに形成することが容易になる。
 本発明のコイル部品は、コア部と、上記コア部の周囲に設けられた巻線部とを備え、上記コア部は、本発明の焼結体、複合体またはペーストを用いてなり、上記巻線部は、電気伝導体を含む。
 本発明のアンテナは、本発明の焼結体、複合体またはペーストと、電気伝導体とを用いてなる。
 本発明によれば、例えば6GHzといった高周波領域における透磁率μ’が高く、かつ、磁気損失tanδが低い軟磁性組成物を提供することができる。
図1は、W型六方晶フェライトの結晶構造を示す模式図である。 図2は、低温減磁を説明するためのBH曲線である。 図3は、組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Co、Mg、Mn、Ni、ZnまたはCu)のX線回折チャートである。 図4は、組成式BaCaMnFe1627(x=0、0.3または1.0)のX線回折チャートである。 図5は、組成式BaCa0.3Mg1.8Co0.2Fe1627の焼結体の表面SEM像である。 図6は、組成式BaCa0.3Mn1.8Co0.2Fe1627の焼結体の表面SEM像である。 図7は、組成式BaCa0.3Ni1.8Co0.2Fe1627の焼結体の表面SEM像である。 図8は、組成式BaCa0.3Zn1.8Co0.2Fe1627の焼結体の表面SEM像である。 図9は、組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Co、MgまたはMn)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図10は、組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Co、MgまたはMn)における磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図11は、組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Co、NiまたはZn)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図12は、組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Co、NiまたはZn)における磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図13は、組成式BaCaMn1.8Co0.2Fe1627(x=0または0.3)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図14は、組成式BaCaMn1.8Co0.2Fe1627(x=0または0.3)における磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図15は、組成式BaCa0.3Mn2-xCoFe1627(x=0、0.2または0.5)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図16は、組成式BaCa0.3Mn2-xCoFe1627(x=0、0.2または0.5)における磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図17は、組成式BaCa0.3Ni2-xCoFe1627(x=0、0.2または0.5)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図18は、組成式BaCa0.3Ni2-xCoFe1627(x=0、0.2または0.5)における磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図19は、組成式BaCa0.3Zn2-xCoFe1627(x=0、0.2または0.5)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図20は、組成式BaCa0.3Zn2-xCoFe1627(x=0、0.2または0.5)における磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図21は、組成式(Ba1-xSr)Ca0.3Mn1.8Co0.2Fe1627(x=0または1.0)および(Ba1-yBi)Ca0.3Mn1.8+yCo0.2Fe16-y27(y=0または0.2)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図22は、組成式(Ba1-xSr)Ca0.3Mn1.8Co0.2Fe1627(x=0または1.0)および(Ba1-yBi)Ca0.3Mn1.8+yCo0.2Fe16-y27(y=0または0.2)における磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図23は、組成式BaCa0.3Mn1.8―xCuCo0.2Fe1627(x=0または0.3)における透磁率μおよび磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図24は、組成式BaCa0.3Mn1.8―yNiCo0.2Fe1627(y=0または0.9)における透磁率μおよび磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図25は、組成式BaCa0.3Mn1.8―xCo0.2ZnFe1627(x=0、0.5または0.9)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図26は、組成式BaCa0.3Mn1.8―xCo0.2ZnFe1627(x=0、0.5または0.9)における磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図27は、組成式BaCa0.3Mn1.8+xCo0.2Fe16-2xMe27(x=0または0.5、Me=SiまたはTi)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図28は、組成式BaCa0.3Mn1.8+xCo0.2Fe16-2xMe27(x=0または0.5、Me=SiまたはTi)における磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図29は、組成式BaCa0.3Mn1.8+xCo0.2Fe16-2x(Zr+Hf)27(x=0または1)における透磁率μおよび磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図30は、組成式BaCa0.3Mn1.8Co0.2ZnSnFe1427における磁化曲線を示すグラフである。 図31は、組成式BaCa0.3Mn1.8Co0.2ZnSnFe16-2x27(x=0、1.0または2.0)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図32は、組成式BaCa0.3Mn1.8Co0.2ZnSnFe16-2x27(x=0、1.0または2.0)における磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図33は、組成式BaCa0.3Ni1.8Co0.2Fe16-xSc27(x=0、0.2または1.0)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図34は、組成式BaCa0.3Ni1.8Co0.2Fe16-xSc27(x=0、0.2または1.0)における磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図35は、組成式BaCa0.3Zn1.8Co0.2Fe16-xSc27(x=0、0.5または1.0)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図36は、組成式BaCa0.3Zn1.8Co0.2Fe16-xSc27(x=0、0.5または1.0)における磁気損失tanδの周波数特性を示すグラフである。 図37は、巻線コイルの一例を模式的に示す斜視図である。 図38は、コイルのインダクタンスLの周波数特性を示すグラフである。 図39は、コイルのQの周波数特性を示すグラフである。 図40は、積層コイルの一例を模式的に示す透視斜視図である。 図41は、積層コイルの別の一例を模式的に示す透視斜視図である。 図42は、アンテナの一例を模式的に示す斜視図である。 図43は、アンテナの別の一例を模式的に示す斜視図である。 図44は、組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Mn、NiまたはZn)における透磁率μの周波数特性を示すグラフである。 図45は、組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Mn、NiまたはZn)における透磁率平方和|μ|=√{μ”+μ’}の周波数特性を示すグラフである。
 以下、本発明の軟磁性組成物、焼結体、複合体、ペースト、コイル部品およびアンテナについて説明する。
 しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
[軟磁性組成物]
 本発明の軟磁性組成物は、W型六方晶フェライトを主相とする。
 なお、軟磁性組成物とは、JIS R 1600に定義されているソフトフェライトを意味する。
 本明細書において、主相とは、存在割合が最も多い相を意味する。具体的には、W型六方晶フェライトが主相である場合を、無配向の粉状で測定した場合に、以下の5条件を全て満足した時と定義する。(1)W型以外の六方晶フェライトの10%以上の強さを持つピークが近くに存在しない格子面間隔=4.11、2.60、2.17[nm](銅線源のX線を用いたときの回折角2θ=21.6、34.5、41.6°。ただしこの格子面間隔および回折角は、Ba,Co,Fe,Oのみから構成される六方晶フェライトを基準としており、置換元素により格子定数が縮んだ場合は格子面間隔が狭くなり、格子定数が膨らんだ場合は格子面間隔が広くなる。なお、BaCoFe1627・BaMgFe1627・BaMnFe1627・BaNiFe1627・BaZnFe1627の間で回折角2θの差異は±0.3度程度である。)のピーク強度比の合計をAとした時、Aが80%を超えている。(2)M型以外の六方晶フェライトの10%以上の強さを持つピークが近くに存在しない格子面間隔=2.63[nm](銅線源のX線を用いたときの回折角2θ=34.1°)のピーク強度比が80%未満である。(3)Y型以外の六方晶フェライトの10%以上の強さを持つピークが近くに存在しない格子面間隔=2.65[nm](銅線源のX線を用いたときの回折角2θ=33.8°)のピーク強度比が30%未満である。(4)Z型以外の六方晶フェライトの10%以上の強さを持つピークが近くに存在しない格子面間隔=2.68[nm](銅線源のX線を用いたときの回折角2θ=33.4°)のピーク強度比が30%未満である。(5)スピネルフェライトのメインピークである格子面間隔=2.53[nm](銅線源のX線を用いたときの回折角2θ=35.4°)のピーク強度比が90%未満である。本発明の軟磁性組成物は、W型六方晶フェライトが単相、すなわち、W型六方晶フェライト相のモル比が実質的に100%であってもよい。
 図1は、W型六方晶フェライトの結晶構造を示す模式図である。図1には、Ba2+Fe2+ Fe1627の結晶構造を示している。
 W型六方晶フェライトの結晶構造は、構造式A2+Me2+ Fe1627で表され、SブロックおよびRブロックと呼ばれるc軸方向への積層構造から構成される。図1中、*はc軸に対し180°回転したブロックを示す。
 六方晶フェライトの結晶構造としては、W型のほか、M型、U型、X型、Y型およびZ型が知られている。その中で、W型は、M型、U型、X型、Y型およびZ型より飽和磁化Isが高い特徴を持っている。なぜなら、Rブロック、Sブロック、Tブロックの3つの結晶因子の組み合わせで、W型はSSR、M型はSR、U型はSRSRST、X型はSRSSR、Y型はST、Z型はSRSTの結晶因子を有しているが、W型は飽和磁化=0のT結晶因子を含まず、最も飽和磁化が高いS結晶因子の割合は、W型2/3に対し、X型が3/5、M型とU型とY型とZ型が1/2であり、W型フェライトが最も高いからである。このため、六方晶フェライトのスネークの関係式fr×(μ-1)=(γIs)÷(6πμ)×{√(HA1/HA2)+√(HA2/HA1)}から飽和磁化Isを高くできて、共鳴周波数frを高くできるため、高周波で高い透磁率を得ることができると考えられる。なお、六方晶フェライトのスネークの関係式において、共鳴周波数frは磁気損失成分μ”の極大値の周波数であり、μは透磁率、γは磁気回転比、Isは飽和磁化、μは真空の透磁率、Hは異方性磁界、HA1は1方向の異方性磁界、HA2は2方向の異方性磁界であり、その方向はHA1とHA2の差が最も高くなるように設定する。六方晶フェライトは、HA1とHA2の差が10倍以上と非常に大きいことを特徴としている。
 本発明の軟磁性組成物では、飽和磁化を高めることで共鳴周波数を高くする観点から、W型六方晶フェライトが単相であることが望ましい。ただし、M型六方晶フェライト、Y型六方晶フェライト、Z型六方晶フェライト、スピネルフェライト等の異相が少し含まれていてもよい。
 本発明の軟磁性組成物は、以下の金属元素割合を有する酸化物である。
 本明細書において、「Ba+Sr」等の記載は、各元素の合計を意味する。また、以下の組成は、磁性体の組成であり、無機ガラスなどが添加された場合には、後述する複合物として扱う。
 軟磁性組成物に含有される各元素の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy;ICP-AES)を用いた組成分析により求めることができる。
・構成1-1:必須元素(Ba+Sr+Na+K+La+Bi:4.7mol%以上5.8mol%以下)
 W型六方晶フェライト(構造式A2+Me 2+Fe1627)で、図1に示す結晶構造のBa位置に該当するAサイト元素を構成するには、イオン半径が比較的大きな陽イオンであるバリウムBa、ストロンチウムSr、ナトリウムNa、カリウムK、ランタンLaおよびビスマスBiの総量を、4.7mol%以上5.8mol%以下とする必要がある。
 Aサイト元素量が少ない(A=Ba+Sr+Na+K+La+Bi<4.7mol%)場合も、Aサイト元素量が多い(A>5.8mol%)場合も、6GHzの磁気損失がtanδ>0.06と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
 Aサイト元素の上限は、後述のBa量およびSr量の上限設定で説明する。Aサイト元素の下限量を4.7mol%と設定する詳細は、以下のとおりである。
 Aサイト元素がBa量=4.7mol%のみの場合は、表1のNo.18、表2のNo.36、表3のNo.54および表4のNo.72より、いずれも透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。
 Aサイト元素がBa量<4.7mol%のみの場合は、表1のNo.19、表2のNo.37、表3のNo.55および表4のNo.73より、いずれも磁気損失tanδが0.06以上である。このため、BaなどのAサイト元素量の下限を4.7mol%と設定する。
 各元素の含有量は、Ba:0mol%以上5.8mol%以下、Sr:0mol%以上5.8mol%以下、Na:0mol%以上5.2mol%以下、K:0mol%以上5.2mol%以下、La:0mol%以上2.1mol%以下、Bi:0mol%以上1.0mol%以下である。
 Ba:0mol%以上5.8mol%以下と設定する詳細は、以下のとおりである。
 Ba量=5.8mol%では、構造式BaMgFe1627(以下Mg-W型フェライトと称する)の組成系で、表1のNo.16より、透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。
 Ba量>5.8mol%では、Mg-W型フェライトで、表1のNo.15より、磁気損失tanδが0.06以上である。このためMg-W型フェライトではBaの範囲を0mol%以上5.8mol%以下と設定する。
 Ba量=5.8mol%では、構造式BaMnFe1627(以下Mn-W型フェライトと称する)の組成系で、表2のNo.34より、透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。
 Ba量>5.8mol%では、Mn-W型フェライトで、表2のNo.33より、磁気損失tanδが0.06以下である。このためMn-W型フェライトでもBaの範囲を0mol%以上5.8mol%以下と設定する。
 Ba量=5.8mol%では、構造式BaNiFe1627(以下Ni-W型フェライトと称する)の組成系で、表3のNo.52より、透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。
 Ba量>5.8mol%では、Ni-W型フェライトで、表3のNo.51より、透磁率μ’が1.1未満で、磁気損失tanδが0.06以上である。このためNi-W型フェライトでもBaの範囲を0mol%以上5.8mol%以下と設定する。
 Ba量=5.8mol%では、構造式BaZnFe1627(以下Zn-W型フェライトと称する)の組成系で、表4のNo.70より、透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。
 Ba量>5.8mol%では、Zn-W型フェライトで、表4のNo.69より、透磁率μ’が1.1未満で、磁気損失tanδが0.06以上である。このためZn-W型フェライトでもBaの範囲を0mol%以上5.8mol%以下と設定する。
 Sr:0mol%以上5.8mol%以下と設定する詳細は、以下のとおりである。
 Sr量=5.8mol%では、Mg-W型フェライトで、表17のNo.307より、透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。
 Sr量>5.8mol%では、Mg-W型フェライトで、表17のNo.306より、磁気損失tanδが0.06以上である。このためMg-W型フェライトではSrの範囲を0mol%以上5.8mol%以下と設定する。
 Sr量=5.8mol%では、Mn-W型フェライトで、表17のNo.312より、透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。
 Sr量>5.8mol%では、Mn-W型フェライトで、表17のNo.311より、磁気損失tanδが0.06以上である。このためMn-W型フェライトでもSrの範囲を0mol%以上5.8mol%以下と設定する。
 Sr量=5.8mol%では、Ni-W型フェライトで、表17のNo.317より、透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。
 Sr量>5.8mol%では、Ni-W型フェライトで、表17のNo.316より、磁気損失tanδが0.06以上である。このためNi-W型フェライトでもSrの範囲を0mol%以上5.8mol%以下と設定する。
 Sr量=5.8mol%では、Zn-W型フェライトで、表17のNo.322より、透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。
 Sr量>5.8mol%では、Zn-W型フェライトで、表17のNo.321より、磁気損失tanδが0.06以上である。このためZn-W型フェライトでもSrの範囲を0mol%以上5.8mol%以下と設定する。
 Na量=5.2mol%では、表21のNo.346より、透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。このためNaの範囲を0mol%以上5.2mol%以下と設定する。
 K量=5.2mol%では、表21のNo.348より、透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。このためKの範囲を0mol%以上5.2mol%以下と設定する。
 La量=2.1mol%では、表20のNo.342より、透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。La量>2.1mol%では、表20のNo.343より、磁気損失tanδが0.06以上である。このためLaの範囲を0mol%以上2.1mol%以下と設定する。
 Bi量=1.0mol%では、表5のNo.77と82と87と92より、透磁率μ’がいずれも1.1以上で、磁気損失tanδがいずれも0.06以下である。Bi量>1.0mol%では、表5のNo.78と83と88と93より、磁気損失tanδがいずれも0.06以上である。このためBiの範囲を0mol%以上1.0mol%以下と設定する。
 Sr量は、0mol%でもよい。Srが含まれないと、誘電率が低くなる。詳細は以下のとおりである。
 Mg-W型フェライトでは、Srを含むときの誘電率は表5のNo.75と76より30以上で、Srが含まないときの誘電率は表5のNo.74より10であり、Srを含まない方が低誘電率化できる。
 Mn-W型フェライトでは、Srを含むときの誘電率は表5のNo.80と81より30以上で、Srが含まないときの誘電率は表5のNo.79より10であり、Srを含まない方が低誘電率化できる。
 Ni-W型フェライトでは、Srを含むときの誘電率は表5のNo.85と86より30以上で、Srが含まないときの誘電率は表5のNo.84より10であり、Srを含まない方が低誘電率化できる。
 Zn-W型フェライトでは、Srを含むときの誘電率は表5のNo.90と91より30以上で、Srが含まないときの誘電率は表5のNo.89より10であり、Srを含まない方が低誘電率化できる。
・構成1-2:必須元素(Ca:0.2mol%以上5.0mol%以下)
 W型六方晶フェライト(構造式A2+Me 2+Fe1627)を単相合成するには、カルシウムCaを添加することが効果的である。特許文献3にも同様の効果が示されているが、特許文献3においてFe2+の生成を必須とする還元雰囲気とは違い、Fe2+を生成させない大気中での焼成により効果を得ている。特許文献5にも同様の効果が示されているが、特許文献5において水溶液の共沈物生成を必須とする湿式法とは違い、酸化物等の固相反応により効果を得ている。Caは、AサイトやFeサイトに入るほか、粒界にも析出すると考えるため、W型六方晶フェライトの構造式の外で添加量を規定している。
 Caを0.2mol%以上5.0mol%以下添加することで、W型六方晶フェライトの合成が促進され、表1~4より、保磁力を100kA/m以下と低くすることができる。
 Caが少ない(Ca<0.2mol%)場合も、Caが多い(Ca>5.0mol%)場合も、6GHzの透磁率がμ’<1.10に低下し、6GHzの磁気損失がtanδ>0.06と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。詳細は以下のとおりである。
 Mg-W型フェライトで、Ca=0.2mol%では表1のNo.3より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Caが少ない(Ca<0.2mol%)場合、表1のNo.1と2より、6GHzの透磁率μ’が1.10以下または磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Mg-W型フェライトで、Ca=5.0mol%では表1のNo.7より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Caが多い(Ca>5.0mol%)場合、表1のNo.8より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Mn-W型フェライトで、Ca=0.2mol%では表2のNo.22より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Caが少ない(Ca<0.2mol%)場合、表2のNo.20と21より、6GHzの透磁率μ’が1.10以下または磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Mn-W型フェライトで、Ca=5.0mol%では表2のNo.26より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Caが多い(Ca>5.0mol%)場合、表2のNo.27より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Ni-W型フェライトで、Ca=0.2mol%では表3のNo.40より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Caが少ない(Ca<0.2mol%)場合、表3のNo.38と39より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Ni-W型フェライトで、Ca=5.0mol%では表3のNo.44より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Caが多い(Ca>5.0mol%)場合、表3のNo.45より、6GHzの透磁率μ’が1.10以下で、磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Zn-W型フェライトで、Ca=0.2mol%では表4のNo.58より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Caが少ない(Ca<0.2mol%)場合、表4のNo.56と57より6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Zn-W型フェライトで、Ca=5.0mol%では表4のNo.62より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Caが多い(Ca>5.0mol%)場合、表4のNo.63より、6GHzの透磁率μ’が1.10以下で、磁気損失tanδが0.06以上となる。
・構成1-3:必須元素(Fe:67.4mol%以上84.5mol%以下)
 W型六方晶フェライト(構造式A2+Me 2+Fe1627)を構成して強磁性を示すには、鉄Feが必要である。六方晶フェライト相(M型、U型、W型、X型、Y型またはZ型)の中で、W型フェライトは最もFe量が多量に必要な結晶相である。Fe量が不足する場合は他の六方晶フェライト相(例えばM型=AFe1219、Y型=AMeFe1222など)が生成しやすくなり、Fe量が過剰な場合はスピネルフェライト相(MeFe)が生成しやすくなることが一般的に知られている。
 Feが少ない(Fe<67.4mol%)場合も、Feが多い(Fe>84.5mol%)場合も、6GHzの磁気損失がtanδ>0.06と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。詳細は以下のとおりである。
 Mg-W型フェライトではFe=67.4mol%では表9のNo.129と135と144と151より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Feが少ない(Fe<67.4mol%)場合、表9のNo.130と136と145と152より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Mg-W型フェライトでは、Fe=84.5mol%では表1のNo.18より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Feが多い(Fe>84.5mol%)場合、表1のNo.19より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Mn-W型フェライトではFe=67.4mol%では表10のNo.160と166と175と182とより6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Feが少ない(Fe<67.4mol%)場合、表10のNo.161と167と176と183より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Mn-W型フェライトでは、Fe=84.5mol%では表2のNo.36より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Feが多い(Fe>84.5mol%)場合、表2のNo.37より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Ni-W型フェライトではFe=67.4mol%では表11のNo.191と197と206と213より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Feが少ない(Fe<67.4mol%)場合、表11のNo.192と198と207と214より、磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Ni-W型フェライトでは、Fe=84.5mol%では表3のNo.54より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Feが多い(Fe>84.5mol%)場合、表3のNo.55より、6GHzの透磁率μ’が1.1以下で、磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Zn-W型フェライトではFe=67.4mol%では表12のNo.222と228と237と244より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Feが少ない(Fe<67.4mol%)場合、表12のNo.223と229と238と245より、磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Zn-W型フェライトでは、Fe=84.5mol%では表4のNo.72より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Feが多い(Fe>84.5mol%)場合、表4のNo.73より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
・構成1-4:選択必須元素
 W型六方晶フェライト(構造式A2+Me 2+Fe1627)を構成するには、Me(II)元素が必要である。
 Me(II)=Co+Cu+Mg+Mn+Ni+Znと定義した時に、Me(II):9.4mol%以上18.1mol%以下である。
 Me(II)元素が少ない(Me(II)<9.4mol%)場合も、Me(II)元素が多い(Me(II)>18.1mol%)場合も、6GHzの磁気損失がtanδ>0.06と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。詳細は以下のとおりである。
 Mg-W型フェライトの場合、Me(II)元素=9.4mol%では、表1のNo.18より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が少ない(Me(II)<9.4mol%)場合、表1のNo.19より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Mg-W型フェライトの場合、Me(II)元素=18.1mol%では、表9のNo.129と135と144と151より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が多い(Me(II)>18.1mol%)場合、表9のNo.130と136と145と152より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Mn-W型フェライトの場合、Me(II)元素=9.4mol%では、表2のNo.36より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が少ない(Me(II)<9.4mol%)場合、表2のNo.37より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Mn-W型フェライトの場合、Me(II)元素=18.1mol%では、表10のNo.160と166と175と182より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が多い(Me(II)>18.1mol%)場合、表10のNo.161と167と176と183より、6GHzの磁気損失tanδが0.06となる。
 Ni-W型フェライトの場合、Me(II)元素=9.4mol%では、表3のNo.54より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が少ない(Me(II)<9.4mol%)場合、表3のNo.55より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Ni-W型フェライトの場合、Me(II)元素=18.1mol%では、表11のNo.191と197と206と213より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が多い(Me(II)>18.1mol%)場合、表11のNo.192と198と207と214より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Zn-W型フェライトの場合、Me(II)元素=9.4mol%では、表4のNo.72より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が少ない(Me(II)<9.4mol%)場合、表4のNo.73より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Zn-W型フェライトの場合、Me(II)元素=18.1mol%では、表12のNo.222と228と237と244より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が多い(Me(II)>18.1mol%)場合、表12のNo.223と229と238と245より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 さらに、Me(II)=Mg+Mn+Ni+Znと定義した時に、Me(II):7.8mol%以上17.1mol%以下である。
 Meサイトの元素として、Mg、Mn、NiおよびZnの少なくとも1種が含まれることにより、例えば6GHzといった高周波領域で高い透磁率μ’を得た状態で、磁気損失tanδを抑制することができる。したがって、インダクタやアンテナに適した磁気特性が得られる。
 Me(II)元素が少ない(Me(II)<7.8mol%)場合も、Me(II)元素が多い(Me(II)>17.1mol%)場合も、6GHzの磁気損失がtanδ>0.06と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。詳細は以下のとおりである。
 Ni-W型フェライトの場合、Me(II)=7.8mol%では、表3のNo.49より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が少ない(Me(II)<7.8mol%)場合、表3のNo.50より、6GHzの磁気損失tanδが0.06と大きくなってしまう。Mg-W型・Mn-W型・Zn-W型のMe(II)下限値は表1のNo.12、表2のNo.31および表4の67より8.3mol%である。
 Mg-W型フェライトの場合、Me(II)=17.1mol%では、表9のNo.129と135と144と151より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が多い(Me(II)>17.1mol%)場合、表9のNo.130と136と145と152より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下となる。
 Mn-W型フェライトの場合、Me(II)=17.1mol%では、表10のNo.160と166と175と182より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が多い(Me(II)>17.1mol%)場合、表10のNo.161と167と176と183より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Ni-W型フェライトの場合、Me(II)=17.1mol%では、表11のNo.191と197と206と213より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が多い(Me(II)>17.1mol%)場合、表11のNo.192と198と207と214より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Zn-W型フェライトの場合、Me(II)=17.1mol%では、表12のNo.222と228と237と244より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Me(II)元素が多い(Me(II)>17.1mol%)場合、表12のNo.223と229と238と245より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 各元素の含有量は、Cu:0mol%以上1.6mol%以下、Mg:0mol%以上17.1mol%以下、Mn:0mol%以上17.1mol%以下、Ni:0mol%以上17.1mol%以下、Zn:0mol%以上17.1mol%以下、Co:0mol%以上2.6mol%以下である。
 Cu量が多い(Cu>1.6mol%)場合、6GHzの透磁率μ’が1.10以下となり、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上なるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。詳細は以下のとおりである。
 Cu=1.6mol%では、Mg-W型フェライトでは表6のNo.95、Mn-W型フェライトでは表6のNo.99、Ni-W型フェライトでは表6のNo.102、Zn-W型フェライトでは表6のNo.105より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上と高く、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下と低い。
 Cu量が多い(Cu>1.6mol%)場合、Mg-W型フェライトでは表6のNo.96と97、Mn-W型フェライトでは表6のNo.100、Ni-W型フェライトでは表6のNo.103、Zn-W型フェライトでは表6のNo.106より、6GHzの透磁率μ’が1.10以下と低くなり、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。このため、Cu量の上限を1.6mol%と設定する。
 Mg=17.1mol%では、表9のNo.129と135より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Mg>17.1mol%の場合、表9のNo.130と136より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下となる。このため、Mg量の上限を17.1mol%と設定する。
 Mn=17.1mol%では、表10のNo.160と166より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Mn>17.1mol%の場合、表10のNo.161と167より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。このため、Mn量の上限を17.1mol%と設定する。
 Ni=17.1mol%では、表11のNo.191と197より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Ni>17.1mol%の場合、表11のNo.192と198より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。このため、Ni量の上限を17.1mol%と設定する。
 Zn=17.1mol%では、表12のNo.222と228より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。一方、Zn>17.1mol%の場合、表12のNo.223と229より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。このため、Zn量の上限を17.1mol%と設定する。
 Co=2.6mol%では、表3のNo.49より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上と高く、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下と低い。一方、Co>2.6mol%では、表3のNo.50より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となる。
 Co=0mol%では、表1のNo.9、表2のNo.28、表3のNo.46および表4のNo.64より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上と高く、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下と低い。このため、Coの範囲を0mol%以上2.6mol%以下と設定する。
・構成1-5:Co:0.5mol%以上2.1mol%以下
 上記のとおり、Co量は、0mol%以上2.6mol%以下であればよいが、0.5mol%以上であることが望ましい。詳細は以下のとおりである。
 Mg-W型フェライトの場合、Co量0mol%では、表1のNo.9より6GHzの透磁率は1.63である。一方、Co≧0.5mol%では、後述のM2d元素を置換しない場合、表1のNo.12より6GHzの透磁率の最大値を2.00に高めることができる。
 Mn-W型フェライトの場合、Co量0mol%では、表2のNo.28より6GHzの透磁率は1.20である。一方、Co≧0.5mol%では、後述のM2d元素を置換しない場合、表2のNo.30より6GHzの透磁率の最大値を1.62に高めることができる。
 Ni-W型フェライトの場合、Co量0mol%では、表3のNo.46より6GHzの透磁率は1.26である。一方、Co≧0.5mol%では、後述のM2d元素を置換しない場合、表3のNo.49より6GHzの透磁率の最大値を1.71に高めることができる。
 Zn-W型フェライトの場合、Co量0mol%では、表4のNo.64より6GHzの透磁率は1.27である。一方、Co≧0.5mol%では、後述のM2d元素を置換しない場合、表4のNo.67より6GHzの透磁率の最大値を2.12に高めることができる。
 Coを含まないW型六方晶フェライト(構造式A2+Me 2+Fe1627)は、通常は5配位位置(図1の2d位置)にあるFeイオンの影響によりc軸異方性(c軸にスピンが向き易くなる)を有するため、特許文献1、2および3に示すとおり磁石材料として適した硬磁性を示すことが知られている。W型六方晶フェライトで軟磁性を示して透磁率を高めるためには、六方晶フェライトのc面方向へスピンが向き易くする必要があるため、6配位位置(図1の4f、4fVI、6gまたは12k位置)にコバルトCoを置換することが望ましい。なお、4配位位置(図1の4eまたは4fIV位置)にコバルトCoを置換すると、保磁力が高くなって硬磁性が強められて透磁率が減少することも知られているため、酸素雰囲気を90%未満とすることが望ましい。
 Co<0.5mol%でCoを添加しない場合、6GHzの透磁率μ’は、Mg-W型フェライトが表1のNo.9より1.63、Mn-W型フェライトが表2のNo.28より1.20、Ni-W型フェライトが表3のNo.46より1.26、Zn-W型フェライトが表4のNo.64より1.27であり、1.63が上限であった。
 Co量は、2.1mol%以下であることが望ましい。
 Co>2.1mol%の場合は、Mg-W型フェライトは表1のNo.13、Mn-W型フェライトは表2のNo.32、Zn-W型フェライトは表4のNo.68より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上のため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
 Ni-W型フェライトのみCo=2.6mol%で表3のNo.49より磁気損失tanδが0.06以下である。しかし、Co>2.6mol%では表3のNo.50より6GHzの磁気損失tanδが0.06以上のため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
・構成1-6:複数元素のバランス(Me(I)=Na+K+Li、Me(II)=Co+Cu+Mg+Mn+Ni+Zn、Me(IV)=Ge+Si+Sn+Ti+Zr+Hf、Me(V)=Mo+Nb+Ta+Sb+W+V、D=Me(I)+Me(II)-Me(IV)-2×Me(V)と定義した時に、D:7.8mol%以上11.6mol%以下)
 Me(I)には1価の陽イオンに、Me(II)には2価の陽イオンに、Me(IV)には4価の陽イオンに、Me(V)には5価以上の陽イオンになり易い元素で定義する。ただし、電荷量の測定は絶縁体の多結晶では困難なため、比抵抗が高いことで電荷バランスが取れていると推定している。
 電荷バランス量Dが多い(D>11.6mol%)場合も、少ない(D<7.8mol%)場合も、6GHzの磁気損失がtanδ>0.06と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。詳細は以下のとおりである。
 電荷バランス量D=11.6mol%では、表1のNo.16と表2のNo.34と表3のNo.52と表4のNo.70と表17のNo.307とNo.312とNo.317とNo.322より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、電荷バランス量Dが多い(D>11.6mol%)場合、表1のNo.15、表2のNo.33、表3のNo.51および表4のNo.69と、表17のNo.306,No.311,No.316およびNo.321より、磁気損失tanδが0.06以上となる。
 電荷バランス量D=7.8mol%では、表19のNo.338より6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。一方、電荷バランス量Dが少ない(D<7.8mol%)場合、表19のNo.339より、磁気損失tanδが0.06以上となる。
・構成1-7:M2d=In+Sc+Sn+Zr+Hf:0mol%以上7.8mol%以下
 In、Sc、Sn、ZrおよびHfは、六方晶フェライト中のFeの5配位位置と置換する作用を持つ非磁性元素である。5配位位置にあるFeは、六方晶フェライトのc軸にスピンが向き易い硬磁性の効果がある。六方晶フェライトの5配位位置に非磁性元素であるIn、Sc、Sn、ZrおよびHfの少なくとも1種を置換すると、飽和磁化は減少するが、5配位位置にあるFeが示していた硬磁性の効果が弱められた結果、保磁力が急激に低下する。その結果、6GHzの透磁率μ’を、M2d=0molの最大2.12に対して、M2d≧1.0mol%では最大3.15まで高めることができる。したがって、M2d量は1.0mol%以上であることが望ましい。M2dの各元素(Sn・Zr+Hf・In・Sc)とW型フェライト材料系(Mg-W型フェライト・Mn-W型フェライト・Ni-W型フェライト・Zn-W型フェライト)に場合分けして、以下に説明する。
 Mg-W型フェライトでは、M2d元素を置換しない場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表1のNo.12よりμ’=2.00である。
 Mg-W型フェライトで、In元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表13のNo.253よりμ’=2.51と高い。
 Mg-W型フェライトで、Sc元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表13のNo.258よりμ’=2.49と高い。
 Mg-W型フェライトで、Sn元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表9のNo.143よりμ’=3.15と高い。
 Mg-W型フェライトで、Zr+Hf元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表9のNo.150よりμ’=3.15と高い。
 Mn-W型フェライトでは、M2d元素を置換しない場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は、表2のNo.30よりμ’=1.62である。
 Mn-W型フェライトで、In元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表14のNo.268よりμ’=2.45と高い。
 Mn-W型フェライトで、Sc元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表14のNo.273よりμ’=2.51と高い。
 Mn-W型フェライトで、Sn元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表10のNo.174よりμ’=3.15と高い。
 Mn-W型フェライトで、Zr+Hf元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表10のNo.181よりμ’=3.15と高い。
 Ni-W型フェライトでは、M2d元素を置換しない場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は、表3のNo.49よりμ’=1.71である。
 Ni-W型フェライトで、In元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表15のNo.283よりμ’=2.26と高い。
 Ni-W型フェライトで、Sc元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表15のNo.288よりμ’=2.27と高い。
 Ni-W型フェライトで、Sn元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表11のNo.205のμ’=2.68と高い。
 Ni-W型フェライトで、Zr+Hf元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表11のNo.212よりμ’=2.56と高い。
 Zn-W型フェライトでは、M2d元素を置換しない場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は、表4のNo.67よりμ’=2.12である。
 Zn-W型フェライトで、In元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表16のNo.298よりμ’=2.49と高い。
 Zn-W型フェライトで、Sc元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表16のNo.303よりμ’=2.50と高い。
 Zn-W型フェライトで、Sn元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表12のNo.236よりμ’=2.97と高い。
 Zn-W型フェライトで、Zr+Hf元素を置換した場合、6GHzの透磁率μ’の最大値は表12のNo.243よりμ’=2.79と高い。
 ただし、W型フェライトの結晶構造(AMeFe1627)の中で5配位位置の陽イオンは5.3mol%であるため、過剰に添加した場合は6配位Fe位置にも非磁性イオンを置換する。6配位Fe位置に非磁性イオンを置換すると、強磁性Feの効果が弱められた結果、飽和磁化が減少し、磁気損失が大きくなってしまう。その結果、M2d>7.8mol%では、6GHzの磁気損失がtanδ>0.06と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。M2dの各元素(Sn・Zr+Hf・In・Sc)に場合分けして、構成1-8と構成1-9で説明する。
・構成1-8:Sn:0mol%以上7.8mol%以下、Zr+Hf:0mol%以上7.8mol%以下
 Sn、ZrおよびHfは、Feの5配位位置に置換して高透磁率化する効果がある。しかし、いずれも4価の陽イオンになりやすい性質を持つため、2価の陽イオンになりやすいM(II)の元素や、1価の陽イオンになりやすいM(I)の元素を添加して、電荷バランス量Dを補正する必要がある。
 なお、ZrとHfは同じ鉱石から産出される元素で、同じ効果があり、分離精製するとコストが高くなるため、Zr+Hfと表記している。
 Sn>7.8mol%またはZr+Hf>7.8mol%では、6GHzの磁気損失がtanδ>0.06と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。詳細は以下のとおりである。
 Sn=7.8mol%では、Mg-W型フェライトでは表9のNo.129と144、Mn-W型フェライトでは表10のNo.160と175、Ni-W型フェライトでは表11のNo.191と206、Zn-W型フェライトでは表12のNo.222と237より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。
 Sn>7.8mol%では、Mg-W型フェライトでは表9のNo.130と145、Mn-W型フェライトでは表10のNo.161と176、Ni-W型フェライトでは表11のNo.192と207、Zn-W型フェライトでは表12のNo.223と238より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
 Zr+Hf=7.8mol%では、Mg-W型フェライトでは表9のNo.135と151、Mn-W型フェライトでは表10のNo.166と182、Ni-W型フェライトでは表11のNo.197と213、Zn-W型フェライトでは表12のNo.228と244より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。
 Zr+Hf>7.8mol%では、Mg-W型フェライトでは表9のNo.136と152、Mn-W型フェライトでは表10のNo.167と183、Ni-W型フェライトでは表11のNo.198と214、Zn-W型フェライトでは表12のNo.229と245より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
・構成1-9:In:0mol%以上7.8mol%以下、Sc:0mol%以上7.8mol%以下
 InまたはScを一部置換すると、Feの5配位位置に置換して高透磁率化する効果がある。いずれも3価の陽イオンになりやすい性質を持つため、3価のFeと置換しても電荷バランスが崩れず、電荷バランス量Dを補正する必要が無い。
 In>7.8mol%またはSc>7.8mol%では、6GHzの磁気損失がtanδ>0.06と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。詳細は以下のとおりである。
 In=7.8mol%では、Mg-W型フェライトでは表13のNo.254、Mn-W型フェライトでは表14のNo.269、Ni-W型フェライトでは表15のNo.284、Zn-W型フェライトでは表16のNo.299より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。
 In>7.8mol%では、Mg-W型フェライトでは表13のNo.255、Mn-W型フェライトでは表14のNo.270、Ni-W型フェライトでは表15のNo.285、Zn-W型フェライトでは表16のNo.300より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
 Sc=7.8mol%では、Mg-W型フェライトでは表13のNo.259、Mn-W型フェライトでは表14のNo.274、Ni-W型フェライトでは表15のNo.289、Zn-W型フェライトでは表16のNo.304より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下である。
 Sc>7.8mol%では、Mg-W型フェライトでは表13のNo.260、Mn-W型フェライトでは表14のNo.275、Ni-W型フェライトでは表15のNo.290、Zn-W型フェライトでは表16のNo.305より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
・構成1-10:Ge:0mol%以上2.6mol%以下、Si:0mol%以上2.6mol%以下、Ti:0mol%以上2.6mol%以下
 4価の陽イオンになりやすいGe、SiまたはTiを一部置換すると、2価の陽イオンになりやすいM(II)の元素や、1価の陽イオンになりやすいM(I)の元素を添加して、電荷バランス量Dを補正する必要がある。
 Ge>2.6mol%、Si>2.6mol%またはTi>2.6mol%では、6GHzの磁気損失がtanδ>0.06と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。詳細は以下のとおりである。
 Ge=2.6mol%では、表9のNo.123と137や、表10のNo.154と168や、表11のNo.185と199や、表12のNo.216と230より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。しかしGe>2.6mol%では、表9のNo.124と138や、表10のNo.155と169や、表11のNo.186と200や、表12のNo.217と231より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
 Si=2.6mol%では、表9のNo.125と139や、表10のNo.156と170や、表11の187と201や、表12のNo.218や232より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。しかしSi>2.6mol%では、表9のNo.126と140や、表10のNo.157と171や、表11のNo.188と202や、表12のNo.219と233より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
 Ti=2.6mol%では、表9のNo.131と146や、表10のNo.162と177や、表11のNo.193と208や、表12のNo.224と239より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。しかしTi>2.6mol%では、表9のNo.132と147や、表10のNo.163と178や、表11のNo.194と209や、表12のNo.225と240より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
・構成1-11:Al:0mol%以上2.6mol%以下、Ga:0mol%以上2.6mol%以下
 AlまたはGaを一部置換すると、Feの6配位位置に置換するため、飽和磁化が低下し、かつ保磁力が高くなる。
 Al>2.6mol%またはGa>2.6mol%では、6GHzの透磁率がμ’<1.10に低下し、6GHzの磁気損失がtanδ>0.06と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。詳細は以下のとおりである。
 Al=2.6mol%では、表13のNo.247や、表14のNo.262や、表15のNo.277や、表16のNo.292より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。しかしAl>2.6mol%では、表13のNo.248や、表14のNo.263や、表15のNo.278や、表16のNo.293より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
 Ga=2.6mol%では、表13のNo.249や、表14のNo.264や、表15のNo.279や、表16のNo.294より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。しかしGa>2.6mol%では、表13のNo.250や、表14のNo.265や、表15のNo.280や、表16のNo.295より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
・構成1-12:Mo:0mol%以上2.6mol%以下、Nb+Ta:0mol%以上2.6mol%以下、Sb:0mol%以上2.6mol%以下、W:0mol%以上2.6mol%以下、V:0mol%以上2.6mol%以下
 Mo、Nb、Ta、Sb、WまたはVを一部置換すると、5価または6価の陽イオンになりやすい性質を持つため、2価の陽イオンになりやすいM(II)の元素や、1価の陽イオンになりやすいM(I)の元素を添加して、電荷バランス量Dを補正する必要がある。
 Mo>2.6mol%、Nb+Ta>2.6mol%、Sb>2.6mol%、W>2.6mol%またはV>2.6mol%では、6GHzの透磁率がμ’<1.10に低下し、6GHzの磁気損失がtanδ>0.06と大きくなってしまうため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。詳細は以下のとおりである。
 Mo=2.6mol%では、表18のNo.327より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。しかしMo>2.6mol%では、表18のNo.328より、6GHzの透磁率μ’が1.10以下かつ、磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
 Nb+Ta=2.6mol%では、表18のNo.329より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。しかしNb+Ta>2.6mol%では、表18のNo.330より、6GHzの透磁率μ’が1.10以下かつ、磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
 Sb=2.6mol%では、表18のNo.331より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。しかしSb>2.6mol%では、表18のNo.332より、6GHzの透磁率μ’が1.10以下かつ、磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
 W=2.6mol%では、表18のNo.333より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。しかしW>2.6mol%では、表18のNo.334より、6GHzの透磁率μ’が1.10以下かつ、磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
 V=2.6mol%では、表18のNo.335より、6GHzの透磁率μ’が1.10以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。しかしV>2.6mol%では、表18のNo.336より、6GHzの透磁率μ’が1.10以下かつ、磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
・構成1-13:Li:0mol%以上2.6mol%以下
 Li添加量=2.6mol%では、表19のNo.338より、6GHzの透磁率μ’が1.1以上で、磁気損失tanδが0.06以下である。しかしLi添加量>2.6mol%では、表19のNo.339より、6GHzの磁気損失tanδが0.06以上となるため、インダクタ等では使用困難な磁気特性を示す。
 本発明の軟磁性組成物においては、保磁力Hcjが100kA/m以下である。
 保磁力を低減させることで、軟磁性の特性を示して、6GHzの透磁率μ’を1.10以上に高めることができる。
 保磁力が低いと、フェライト材料では低温減磁現象により残留する磁界が減るため、永久磁石としては実用上使用することが困難である。一方で、インダクタやアンテナではコイル状などの導線から発生する磁力を利用して透磁率を高めているため、残留する磁界が不要なメカニズムとなり、利用できる。
 一般的なM型六方晶フェライト磁石と、W型六方晶フェライト軟磁性体の磁化曲線(BH曲線)を図2に示す。一般的なフェライト磁石材料では、保磁力Hcj≧300kA/mと高いため、BH曲線は直線であり、パーミアンス係数に関わらず低温減磁を防ぐことができ、温度変化しても磁石からの磁力を維持できる。一方、本発明のW型フェライト軟磁性体では、保磁力がHcj≦100kA/mと低いため、磁石として用いると低温減磁を防ぐことができず、温度変化により磁力が低下してしまい、磁石材料として実用上使用することができない。また、磁気記録材料で保磁力が小さいと、弱い外部磁界や低温減磁が生じて磁気記録が消えてしまうので、磁気記録材料としても実用上使用することができない。このため、特許文献1、2および3に記載の磁石特性を示す材料を、本発明のようにインダクタとして用いることは適していない。
 なお、本発明の軟磁性組成物からは、W型六方晶フェライトを主相とする、以下の金属元素割合を有する酸化物であり、以下の保磁力Hcjを有する軟磁性組成物のうち、少なくとも1種の軟磁性組成物を除いてもよい。
 Ba:5.18mol%、Ca:1.55mol%、Co:2.59mol%、Zn:7.77mol%、Fe:82.90mol%、Hcj:36.4kA/m。
 Ba:5.18mol%、Ca:1.55mol%、Co:1.04mol%、Zn:9.33mol%、In:5.18mol%、Fe:77.72mol%、Hcj:80.0kA/m。
 Ba:5.18mol%、Ca:1.55mol%、Co:1.04mol%、Zn:9.33mol%、Sc:5.18mol%、Fe:77.72mol%、Hcj:78.8kA/m。
 Ba:5.18mol%、Ca:1.55mol%、Co:1.04mol%、Ni:5.18mol%、Zn:9.33mol%、Sn:5.18mol%、Fe:72.54mol%、Hcj:77.6kA/m。
 Ba:5.18mol%、Ca:1.55mol%、Co:1.04mol%、Ni:5.18mol%、Zn:9.33mol%、Zr+Hf:5.18mol%、Fe:72.54mol%、Hcj:75.8kA/m。
 本発明の軟磁性組成物においては、飽和磁化Isが200mT以上であることが望ましい。
 材料の飽和磁化Isを高めて飽和磁束密度Bsを高めることが、直流重畳特性を高めるのに有効であることは一般的に知られている。六方晶フェライトにおいては、M型およびZ型よりW型の方が、高い飽和磁化を持つことが、特許文献1に記載されている。IC(集積回路)の低電圧高電流化のトレンドにより、電源回路だけでなく通信回路などにおいても電流値が増大する傾向にあるため、飽和磁化が低い材料では直流重畳特性が低下する問題がある。
 本発明の軟磁性組成物においては、比抵抗ρが10Ω・m以上であることが望ましい。
 比抵抗が低い場合、低周波で渦電流損失が高まってしまうため、磁気損失が高く、誘電率も高くなる。比抵抗がρ≧10[Ω・m]と高い値であれば、GHz帯でも渦電流損失が低くなり、磁気損失を低くすることができる。
 本発明の軟磁性組成物においては、6GHzの透磁率μ’が1.10以上であることが望ましく、2以上であることがさらに望ましい。
 透磁率がμ’≧1.1と高いと、同じ巻き数でコイルに加工した時のインダクタンスを、空芯コイルより高くすることができる。透磁率がμ’≧2.0と高いと、図38に示す通り、コイルの巻数を減らしても空芯コイルと同等以上のインダクタンスを得ることができる。コイルの巻数を減らすことで、図38に示す通りインダクタの浮遊容量Cが減少してLC共振周波数を高めることができるため、図39に示す通り高周波まで高Q化できてインダクタの利用周波数の上限を高めることができる。
 なお、空芯コイルとは、巻芯材料にガラス・樹脂等の非磁性体のみを用いたコイルである。
 本発明の軟磁性組成物においては、6GHzの磁気損失tanδが0.06以下であることが望ましい。
 磁気損失tanδの減少で、磁気的な損失を低減できるので、磁性体コア挿入によるコイルのQ低下を抑制することができる。磁性体とすることで、図39に示すように、コイルに加工した時のコイルのQを高周波領域で高くすることができる。
 本発明の軟磁性組成物においては、誘電率εが30以下であることが望ましい。
 コイルの巻線間の浮遊容量が大きい場合、コイル部品内でLC共振周波数が数GHz以下に低下すると、磁性材料のQが高くてもインダクタとして機能しなくなる。このため、GHz帯インダクタとして利用するには、磁性材料の誘電率をε≦30に抑制することが望ましい。ただし、図41のように、巻線部21Bに低誘電率材料を用い、コア部21Aのみに磁性材料を用いる場合は、低誘電率の磁性材料を必ずしも必要とはしない。
 本発明の軟磁性組成物は粉末の状態である。このような軟磁性組成物を産業上利用するには、液体または固体の状態にする必要がある。例えば、巻線インダクタとして利用するには焼結体にするのがよい。積層インダクタとして利用するには、焼結体でもよいが、低誘電率化により浮遊容量を減少させて高周波化を目指すために、ガラスや樹脂などの非磁性体と混ぜることが有効である。磁性流体として使用するには、ペースト形態が望ましい。
 このような、本発明の軟磁性組成物を焼成して得られる焼結体、あるいは、本発明の軟磁性組成物と、ガラスおよび樹脂の少なくとも一方からなる非磁性体とを混合して得られる複合体またはペーストも本発明の1つである。本発明の焼結体、複合体またはペーストには、強磁性体や他の軟磁性体などが含まれていてもよい。
 なお、焼結体は、JIS R 1600に定義されているファインセラミックスを意味する。複合体は、2種類以上の性質が異なる素材を、それぞれの相を保ったまま界面で強固に結合し、合体または複合した材料を意味する。ペーストは、軟磁性粉を懸濁した分散系で、流動性と高い粘性のある物質を意味する。
 また、非磁性体は、飽和磁化が1mT以下である、強磁性体ではない物質を意味する。
 さらに、本発明の焼結体、複合体またはペーストを用いてなるコイル部品も本発明の1つである。本発明のコイル部品は、コンデンサと組み合わせることにより、LC共振を利用したノイズフィルタとしても使用することができる。
 なお、コイル部品は、JIS C 5602に記載のコイルを用いた電子部品を意味する。
 本発明のコイル部品は、コア部と、上記コア部の周囲に設けられた巻線部とを備え、上記コア部は、本発明の焼結体、複合体またはペーストを用いてなり、上記巻線部は、銀、銅などの電気伝導体を必ず含む。
 なお、巻線は、自発磁化を持つ物質の周囲または内部の一部を、電気伝導体で接続した線を意味する。電気伝導体は、電気伝導率σが10S/m以上である材質で構成され、巻線の両端が電気的に接続されている構造体を意味する。
 また、本発明の焼結体、複合体またはペーストを用いてなるアンテナも本発明の1つである。
 以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
<実施例1>
 W型フェライト(結晶構造:図1参照、化学量論組成:BaMeFe1627)では、カルシウムCaがBa、Fe、粒界の全てに入ることができるため、組成式をBaCaMeFe2m27-δの形で記載する。炭酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ニッケルおよび酸化亜鉛の各粉末素材を、選択元素Me=Co+Mg+Mn+Ni+Znとし、組成式BaCaMeFe2m27-δのBa、Ca、MeおよびFeの金属イオンの割合が表1~表4に示す所定割合で、素材の総和が100gとなるように各粉末組成を調合した。さらに、純水80~120gと、ポリカルボン酸アンモニウムの分散剤1~2gと、1~5mmφのPSZメディア1kgを、500ccのポリエステル材質のポットに入れて、回転数100~200rpmのボールミルで8~24時間混合してスラリー化した。混合したスラリーを、スプレー式乾燥機または凍結乾燥機を用いて蒸発乾燥して混合乾燥粉を得た。この混合乾燥粉を20~200μmの目の粗さを持つふるいに通して整粒粉を得た。この整粒粉を1000~1200℃で大気中仮焼することで、図3および図4に示すW型六方晶フェライト結晶構造を持つ仮焼粉を固相合成することができた。
 図3は、組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Co、Mg、Mn、Ni、ZnまたはCu)のX線回折チャートである。図3中、Me=Co元素は表1のNo.14、Me=Cu元素は表6のNo.97、Me=Mg元素は表1のNo.9、Me=Mn元素は表2のNo.28、Me=Ni元素は表3のNo.46、Me=Zn元素は表4のNo.64である。
 Me=Co、Mg、Mn、NiまたはZnの場合は、W型六方晶フェライト結晶構造(構造式=BaMeFe1627)のピークが観測された。しかし、Me=Cuの場合は、W型六方晶フェライト結晶構造のピークが観測されず、M型六方晶フェライト(構造式=BaFe1219)とスピネルフェライト(構造式=CuFe)の結晶構造のピークが観測された。
 図4は、組成式BaCaMnFe1627(x=0、0.3または1.0)のX線回折チャートである。図4中、Ca無添加は表2のNo.20、Ca:x=0.3は表2のNo.24、Ca:x=1.0は表2のNo.26である。
 Ca量がx=0.3である場合に、W型六方晶フェライト結晶構造(構造式=BaMnFe1627)のピークが主に観測された。しかし、Ca量がx=0または1.0である場合は、W型六方晶フェライト結晶構造も一部示すが、M型六方晶フェライト(構造式=BaFe1219)とY型六方晶フェライト(構造式=BaMnFe1222)の異相が残り、特にCa量がx=0である場合はY型六方晶フェライト相が主相である。
 上記仮焼粉を乾式粉砕機で粗粉砕し、二次粒子を50μm以下となるよう微粒化した。微粒化した仮焼粉80gに、純水60~100gとポリカルボン酸アンモニウムの分散剤2~4gと、1~5mmφのPSZメディア1000gを、500ccのポリエステル材質のポットに入れて、回転数100~200rpmのボールミルで70~100時間粉砕して、さらに微粒化したスラリーを得た。この微粒化したスラリーに、分子量5000~30000の酢酸ビニルバインダー5~15gを添加し、ドクターブレード法により、シート材質:ポリエチレンテレフタレート、ブレードとシートの間隙:100~250μm、乾燥温度:50~70℃、シート巻取速度:5~50cm/分でシート成形した。このシートを5.0cm角で打抜き加工し、ポリエチレンテレフタレートのシートを剥離除去したフェライトシートを、シート厚さの合計が0.3~2.0mmとなるように重ねてステンレス材質の金型に入れ、50~80℃に温めた状態で上下から150~300MPaの圧力で圧着して圧着体を得た。圧着体を、透磁率測定用には、焼結後に18mm×5mm×0.3mm厚または10mm×2mm×0.2mm厚の薄板形状の大きさになるよう60~80℃に温めた状態で打抜き加工し、比抵抗、密度、磁化曲線測定用には10mmφの円板を打抜いて、加工体を得た。
 円板および薄板形状の加工体を、ジルコニア製のセッターの上に置き、大気中で昇温速度0.1~0.5℃/分かつ最高温度400℃で最高温度保持時間1~2時間で加熱してバインダーなどを熱分解脱脂した後、6GHzの磁気損失成分μ”が最小となる900~1400℃内で焼成温度を選び、昇降温速度1~5℃/分で最高温度保持時間1~10時間で大気中焼成し(酸素濃度約21%)、焼結体を得た。
 組成式BaCa0.3Me1.8Co0.2Fe1627の焼結体の表面SEM像を、Me=Mg(表1のNo.5)の時は図5に、Me=Mn(表2のNo.24)の時は図6に、Me=Ni(表3のNo.42)の時は図7に、Me=Zn(表4のNo.60)の時は図8に示す。
 図5、図7および図8より、Me=Mg,NiまたはZnの時は六角板状粒子の集合体であり、空隙が多数残っている。この空隙により、磁気損失tanδを低減できている。
 図6より、Me=Mnの時のみ、六角板状粒子が粒成長して空隙が少なくなり、焼結している。空隙が少ないにもかかわらず、Me=Mnの場合は、磁気損失tanδを低減できている。
 透磁率の測定は、Keysight製ネットワークアナライザーを用い、1~10GHzの周波数で測定できるように、Keycom製短絡マイクロストリップライン矩形冶具(試料サイズ縦18.0mm、横5.0mm、厚さ≦0.3mm、モデル番号ST-003C)を用いた。一部は、1~20GHzの周波数で測定できるように、Keycom製短絡マイクロストリップライン薄膜冶具(試料サイズ縦10.0mm、横2.0mm、厚さ≦0.2mm、モデル番号ST-005EG)を用いた。
 磁化曲線による飽和磁化(Is)と保磁力(Hcj=MH曲線のM=0の磁界)は、振動試料型磁力計(VSM)を用い、最大磁界10kOe(796kA/m)で測定した。飽和磁化を算出するため、別途、焼結密度をJIS R 1634に従ってアルキメデス法で測定した。飽和磁化Isと保磁力Hcjは、試料の形状による反磁界補正が不要なので、容易に算出できる。
 比抵抗は、10mmφ円板の両平面部にInGa合金で電極を形成し、絶縁抵抗計で測定した。
 誘電率は、Keysight製インピーダンスアナライザーを用い、20mmφの平滑な単板を16453A冶具へ挿入し、1GHzの誘電率を測定した。
 組成式BaCaMgCoFe2m27―δの組成と磁気特性等を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 組成式BaCaMnCoFe2m27―δの組成と磁気特性等を表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 組成式BaCaNiCoFe2m27―δの組成と磁気特性等を表3に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 組成式BaCaZnCoFe2m27―δの組成と磁気特性等を表4に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 例えば、表1中のNo.5、11および17や、表2中のNo.24、30および35や、表3中のNo.42、48および53や、表4中のNo.60、66および71は、同じ組成のため、同じ特性である。なお、表1~表4において、*印を付したものは、本発明の範囲外となる比較例である。以下の表においても同様である。
 表1~表4より、MeサイトをMg、Mn、NiまたはZnとすること等で、6GHzの透磁率μ’を1.1以上と高めた状態で、磁気損失tanδを0.06以下と大幅に低くすることができる。
 組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Co、MgまたはMn)における透磁率μの周波数特性を図9に、組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Co、MgまたはMn)における磁気損失tanδの周波数特性を図10に示す。
 図9と図10中、Me=Coは表1のNo.14、Me=Mgは表1のNo.9、Me=Mnは表2のNo.28である。
 図9より、1GHz以上の周波数ではMe=Coである場合の透磁率μ’が最も高いが、Me=Coである場合は周波数が高くなるほど磁気損失成分μ”が高くなる。図10より、周波数1GHzではMe=Coである場合の磁気損失tanδが最も低いが、6GHzなどの高周波数ではMe=MgまたはMnである場合の方が、磁気損失tanδが低い。
 組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Co、NiまたはZn)における透磁率μの周波数特性を図11に、組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Co、NiまたはZn)における磁気損失tanδの周波数特性を図12に示す。
 図11と図12中、Me=Coは表1のNo.14、Me=Niは表3のNo.46、Me=Znは表1のNo.64である。
 図11より、Me=Coである場合の透磁率μ’が最も高く、Me=NiまたはZnである場合は透磁率μ’が1.2程度と低いが磁気損失成分μ”も低い。図12より、周波数1GHzではMe=Coである場合の磁気損失tanδが最も低いが、6GHzなどの高周波数ではMe=NiまたはZnである場合の方が、磁気損失tanδが低い。
 図4に示すように、W型フェライト相はCa添加の有無にかかわらず検出できるが、Ca無添加ではM型フェライトやY型フェライト相も観測されるため、Ca添加によってW型フェライト相の割合を高めることができる。さらに、表1~表4より、Caを添加しないときは透磁率がμ’<1.10と低いが、Caを添加することにより透磁率をμ’≧1.10に高めることができる。
 組成式BaCaMn1.8Co0.2Fe1627(x=0または0.3)における透磁率μの周波数特性を図13に、組成式BaCaMn1.8Co0.2Fe1627(x=0または0.3)における磁気損失tanδの周波数特性を図14に示す。
 図13と図14中、x=0は表2のNo.20、x=0.3は表2のNo.24である。
 図13より、Ca添加によって2GHz以上での透磁率μ’を高めることができる。図14より、Ca量に関わらず3GHz以上の磁気損失をtanδ≦0.01に抑制できる。
 また、Coを一部置換することで、透磁率μ’を最大1.63から2.12に高めることができる。
 組成式BaCa0.3Mn2-xCoFe1627(x=0、0.2または0.5)における透磁率μの周波数特性を図15に、組成式BaCa0.3Mn2-xCoFe1627(x=0、0.2または0.5)における磁気損失tanδの周波数特性を図16に示す。
 図15と図16中、x=0は表2のNo.28、x=0.2は表2のNo.30、x=0.5は表2のNo.32である。
 図15より、Co量をx=0molからx=0.2molに増やすと軟磁性化により透磁率μ’を高めることができるが、Co量をx=0.5molに増やしすぎると透磁率の磁気損失成分μ”も高くなる。
 図16より、Co量がx=0molとx=0.2molでは3GHz以上の磁気損失をtanδ≦0.01に抑制できたが、Co量がx=0.5molでは0.5GHz以上の磁気損失がtanδ≧0.30と高い。
 組成式BaCa0.3Ni2-xCoFe1627(x=0、0.2または0.5)における透磁率μの周波数特性を図17に、組成式BaCa0.3Ni2-xCoFe1627(x=0、0.2または0.5)における磁気損失tanδの周波数特性を図18に示す。
 図17と図18中、x=0は表3のNo.46、x=0.2は表3のNo.48、x=0.5は表3のNo.49である。
 図17より、Co量を増やすと軟磁性化により透磁率μ’を少し高めることができる。
 図18より、Co量に関わらず、10GHzまで磁気損失tanδを0.06以下に抑制できる。
 組成式BaCa0.3Zn2-xCoFe1627(x=0、0.2または0.5)における透磁率μの周波数特性を図19に、組成式BaCa0.3Zn2-xCoFe1627(x=0、0.2または0.5)における磁気損失tanδの周波数特性を図20に示す。
 図19と図20中、x=0は表4のNo.64、x=0.2は表4のNo.66、x=0.5は表4のNo.68である。
図19より、Co量を増やすと軟磁性化により透磁率μ’を高めることができたが、Co量をx=0.5molに増やしすぎると透磁率の磁気損失成分μ”も高くなった。
 図20より、Co量がx=0molとx=0.2molでは3GHz以上の磁気損失tanδを0.06以下に抑制できたが、Co量がx=0.5molでは1GHz以上の磁気損失tanδが0.06以上と高い。
<実施例2>
 各粉末素材による組成式を、ACa0.3(Co0.2ii1.8)(Fe2m-a-b-c-d-eLiiibiiicivdve)O27-δと設定した。
 A、Ca、Co、Fe、Mii、Miii、Miv、Mの金属イオンを持つ酸化物、水酸化物または炭酸塩を、表5~表21に示す所定割合で、素材の総和が120gとなるように調合した。なお、Aはイオン半径が大きいためFeサイトに入らずAサイトに入る元素であり、A=Ba、Sr、Bi、Na、K、Laであり、Miiは2価金属イオンでMii=Co、Cu、Mg、Mn、Ni、Znであり、Miiiは3価の金属イオンでMiii=Al、Ga、In、Scであり、Mivは4価の金属イオンでMiv=Hf、Si、Sn、Ti、Zrであり、Mは5価以上の金属イオンでM=Mo、Nb、Ta、Sb、W、Vが挙げられる。実施例1と同様の方法で混合乾燥粉、整粒粉、仮焼粉を合成し、仮焼粉を粉砕した後にシート成形体を作製し、焼結体を得た。測定に関しては実施例1と同様とした。
 組成式(Ba1-xSr)Ca0.3Me1.8Co0.2Fe1627―δおよび(Ba1-xBi)Ca0.3Me1.8+xCo0.2Fe16-x27―δの組成と磁気特性等を表5に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 組成式BaCa0.3CuMe1.8―xCo0.2Fe1627―δの組成と磁気特性等を表6に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 組成式BaCa0.3NiMe1.8―xCo0.2Fe1627―δの組成と磁気特性等を表7に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 組成式BaCa0.3ZnMe1.8―xCo0.2Fe1627―δの組成と磁気特性等を表8に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
 組成式BaCa0.3Co0.2Mg1.8+xMeFe16-2x27―δと、組成式BaCa0.3Co0.2Mg1.8ZnMeFe16-2x27―δの組成と磁気特性等を表9に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000009
 組成式BaCa0.3Co0.2Mn1.8+xMeFe16-2x27―δと組成式BaCa0.3Co0.2Mn1.8ZnMeFe16-2x27―δの組成と磁気特性等を表10に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
 組成式BaCa0.3Co0.2Ni1.8+xMeFe16-2x27―δと組成式BaCa0.3Co0.2Ni1.8ZnMeFe16-2x27―δの組成と磁気特性等を表11に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
 組成式BaCa0.3Co0.2Zn1.8+xMeFe16-2x27―δと組成式BaCa0.3Co0.2Zn1.8NiMeFe16-2x27―δの組成と磁気特性等を表12に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012
 組成式BaCa0.3Co0.2Mg1.8(Fe16-xMe)O27―δの組成と磁気特性等を表13に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013
 組成式BaCa0.3Co0.2Mn1.8(Fe16-xMe)O27―δの組成と磁気特性等を表14に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000014
 組成式BaCa0.3Co0.2Ni1.8(Fe16-xMe)O27―δの組成と磁気特性等を表15に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000015
 組成式BaCa0.3Co0.2Zn1.8(Fe16-xMe)O27―δの組成と磁気特性等を表16に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000016
 組成式SrCa0.3Co0.2Me1.8Fe2m27―δの組成と磁気特性等を表17に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000017
 組成式BaCa0.3Co0.2Ni1.8+2xMeFe16-3x27―δの組成と磁気特性等を表18に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000018
 組成式BaCa0.3Co0.2Ni1.8LiFe16-3xSn2x27―δの組成と磁気特性等を表19に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000019
 組成式(Ba1-xLa)Ca0.3(Co0.2Ni1.8Li0.5x)Fe16-0.5x27―δの組成と磁気特性等を表20に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000020
 組成式(Ba1-xMe)Ca0.3Co0.2Ni1.8(Fe16-xSn)O27―δの組成と磁気特性等を表21に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000021
 表5~表21のうち、表9~表16に示すように、W型六方晶フェライトの5配位位置に置換しやすい非磁性元素M2d=In、Sc、Sn、ZrおよびHfの少なくとも1種をFeと一部置換すると、透磁率μ’を、上記元素で置換しない場合の最高値2.12から置換した場合の最高値3.15と大幅に高めることができる。
 一方、その他の非磁性元素を置換すると、実施例1と同程度の効果が得られる。
 組成式(Ba1-xSr)Ca0.3Mn1.8Co0.2Fe1627(x=0または1.0)および(Ba1-yBi)Ca0.3Mn1.8+yCo0.2Fe16-y27(y=0または0.2)における透磁率μの周波数特性を図21に、組成式(Ba1-xSr)Ca0.3Mn1.8Co0.2Fe1627(x=0または1.0)および(Ba1-yBi)Ca0.3Mn1.8+yCo0.2Fe16-y27(y=0または0.2)における磁気損失tanδの周波数特性を図22に示す。
 図21と図22中、x=0およびy=0は表5のNo.79、x=1.0は表5のNo.81、y=0.2は表5のNo.82である。
 図21および図22より、BaサイトのSr全置換や、Bi一部置換による、透磁率μ’や磁気損失tanδの差がほとんどないと考える。
 組成式BaCa0.3Mn1.8―xCuCo0.2Fe1627(x=0または0.3)における透磁率μおよび磁気損失tanδの周波数特性を図23に示す。
 図23中、x=0は表6のNo.98、x=0.3は表6のNo.99である。
 図23より、MnサイトのCu一部置換で、透磁率μ’が減少したと考える。
 組成式BaCa0.3Mn1.8―yNiCo0.2Fe1627(y=0または0.9)における透磁率μおよび磁気損失tanδの周波数特性を図24に示す。
 図24中、y=0は表7のNo.111、y=0.9は表7のNo.110である。
 図24より、MnサイトのNi一部置換による、透磁率μ’や磁気損失tanδの差がほとんどないと考える。
 組成式BaCa0.3Mn1.8―xCo0.2ZnFe1627(x=0、0.5または0.9)における透磁率μの周波数特性を図25に、組成式BaCa0.3Mn1.8―xCo0.2ZnFe1627(x=0、0.5または0.9)における磁気損失tanδの周波数特性を図26に示す。
 図25と図26中、x=0は表8のNo.119、x=0.5は表8のNo.118、x=0.9は表4のNo.117である。
 図25より、MnサイトのZn一部置換により、6GHzの透磁率μ’はやや低下した。図26より、MnサイトのZn一部置換により、6GHzの磁気損失tanδ≦0.06を満たしており、磁気損失tanδ≦0.06を示す最低周波数を2.3GHzから1.1GHzに低周波化できたと考える。
 組成式BaCa0.3Mn1.8+xCo0.2Fe16-2xMe27(x=0または0.5、Me=SiまたはTi)における透磁率μの周波数特性を図27に、組成式BaCa0.3Mn1.8+xCo0.2Fe16-2xMe27(x=0または0.5、Me=SiまたはTi)における磁気損失tanδの周波数特性を図28に示す。
 図27と図28中、x=0は表10のNo.153、x=0.5かつMe=Siは表10のNo.156、x=0.5かつMe=Tiは表10のNo.162である。
 図27および図28より、SiやTi一部置換による、透磁率μ’や磁気損失tanδの差がほとんどないと考える。
 組成式BaCa0.3Mn1.8+xCo0.2Fe16-2xZr27(x=0または1)における透磁率μおよび磁気損失tanδの周波数特性を図29に示す。
 図29中、x=0は表10のNo.153、x=1は表10のNo.165である。
 図29より、Zr単独置換で、透磁率μ’を高めることができるが、3~6GHzの磁気損失tanδも高くなる。図27のSi・Ti添加では透磁率μ’がほぼ同等であることから、Zr添加は高透磁率効果があると考える。
 組成式BaCa0.3Mn1.8Co0.2ZnSnFe16-2x27(x=1.0、表10のNo.174)における磁化曲線を図30に示す。
 図30より、W型六方晶フェライトで報告が多い永久磁石材料や磁気記録材料と違い、保磁力が低い軟磁性材料である。
 組成式BaCa0.3Mn1.8Co0.2ZnSnFe16-2x27(x=0、1.0または2.0)における透磁率μの周波数特性を図31に、組成式BaCa0.3Mn1.8Co0.2ZnSnFe16-2x27(x=0、1.0または2.0)における磁気損失tanδの周波数特性を図32に示す。
 図31と図32中、x=0は表10のNo.153、x=1.0は表10のNo.174、x=2.0は表10のNo.176である。
 図31より、FeサイトにZnとSnを複合置換することで、6GHzの透磁率を倍増できる。
 図32より、ZnSn複合置換量をx=0molからx=1molに増やすと、3~6GHzの磁気損失tanδを0.06以下に抑制できる。ZnSn複合置換量をx=2molに増やすと、磁気損失tanδが0.06以上となり、損失を抑制できなくなる。
 組成式BaCa0.3Ni1.8Co0.2Fe16-xSc27(x=0、0.2または1.0)における透磁率μの周波数特性を図33に、組成式BaCa0.3Ni1.8Co0.2Fe16-xSc27(x=0、0.2または1.0)における磁気損失tanδの周波数特性を図34に示す。
 図33と図34中、x=0は表15のNo.276、x=0.2は表15のNo.286、x=1.0は表15のNo.288である。
 図33より、Sc量を増やすと、6GHzの透磁率μ’を高めることができるが、透磁率が減衰する周波数が低くなる。
 図34より、Scを置換しない場合は、20GHzまで磁気損失tanδを0.06以下に抑制できる。Sc量を増やすと、磁気損失tanδが高くなり始める周波数が、Sc量x=0.2で13GHz、Sc量x=1.0で6GHzに低周波化する。
 組成式BaCa0.3Zn1.8Co0.2Fe16-xSc27(x=0、0.5または1.0)における透磁率μの周波数特性を図35に、組成式BaCa0.3Zn1.8Co0.2Fe16-xSc27(x=0、0.5または1.0)における磁気損失tanδの周波数特性を図36に示す。
 図35と図36中、x=0は表16のNo.291、x=0.5は表16のNo.302、x=1.0は表16のNo.303である。
 図35より、Sc量を増やすと、6GHzの透磁率μ’を高めることができるが、透磁率が減衰する周波数が低くなる。
 図36より、Scを置換しない場合は、20GHzまで磁気損失tanδを0.06以下に抑制できる。Sc量を増やすと、磁気損失tanδが高くなり始める周波数が、Sc量x=0.2で13GHz、Sc量x=1.0で6GHzに低周波化する。
<実施例3-1>
 実施例1または実施例2で作製した仮焼粉から、巻線コイルを作製することができる。
 図37は、巻線コイルの一例を模式的に示す斜視図である。
 図37に示す巻線コイル10は、磁性体としてのコア11を備えている。コア11上には、導電性ワイヤ12が螺旋状に巻かれている。コア11は、導電性ワイヤ12が巻かれる胴部13と、胴部13の両端部に位置する張出部14および15とを備えている。張出部14および15は、胴部13よりも上方および下方に張り出す形状を有している。張出部14および15の下面には、端子電極16および17がめっき等によってそれぞれ形成されている。図示されていないが、導電性ワイヤ12の両端部は、端子電極16および17にそれぞれ熱溶着によって固定されている。
 実施例1または2で作製した六方晶フェライトの仮焼粉80gに、純水60~100gとポリカルボン酸アンモニウムの分散剤2~4gと、1~5mmφのPSZメディア1000gを、500ccのポリエステル材質のポットに入れて、回転数100~200rpmのボールミルで70~100時間粉砕して、さらに微粒化したスラリーを得る。この微粒化したスラリーに、分子量5000~30000のバインダー5~15gを添加し、スプレー造粒機で乾燥して顆粒状の粉を得る。この粉を図37に示す巻線コイルのコア形状を得るようにプレス成形し、加工体を得る。
 この加工体を、ジルコニア製のセッターの上に置き、大気中で昇温速度0.1~0.5℃/分かつ最高温度400℃で最高温度保持時間1~2時間で加熱してバインダーなどを熱分解脱脂した後、6GHzの磁気損失成分μ”が最小となる900~1400℃内で焼成温度を選び、昇降温速度1~5℃/分で最高温度保持時間1~10時間で大気中焼成し(酸素濃度約21%)、焼結体を得る。
 図37に示すとおり、コア形状の焼結体の基板接触面に電極を形成した後、焼結体のコア部に銅線を巻きつけ、銅線の両端を基板接触面に形成した電極へ半田付けして、巻線コイルを作製する。
 空芯コイルで3回巻線した時と、表10のNo.174の磁性体試料を巻芯として2回巻線したときの、インダクタンスLの周波数特性を図38に、コイルのQの周波数特性を図39に示す。
 図38より、インダクタンスLは、空芯コイルでは4.2GHzでピーク値を示して高周波側で急激に低下するが、磁性体試料の場合はピーク値を示す周波数を6.3GHzに高めることができる。また、3~4GHzではインダクタンスL値は近い値を示しており、磁性体を巻芯にすることで巻数を減らすことができると考える。
 図39より、磁性体試料を巻芯とすることで、3~6GHzで空芯コイルより高Q化でき、Qのピーク周波数を高周波化できる。巻数を減らすことで、コイルの浮遊容量が減少した効果が高いと考える。
<実施例3-2>
 なお、コイル部品の構造としては、巻線コイルに限らず、積層コイルなどのコイル部品においても、高いインダクタンスL、かつ、高いQの効果を得ることができる。
 図40は、積層コイルの一例を模式的に示す透視斜視図である。
 図40に示す積層コイル20は、磁性体21を備えている。磁性体21中には、スルーホール22を介して電気的に接続されたコイル状内部電極23が形成されている。磁性体21の表面には、コイル状内部電極23と電気的に接続された外部電極24および25が形成されている。
 実施例1と同様の方法でシートを作製し、シートの一部にコイルを印刷した後に圧着体を作製する。この圧着体を、実施例3-1と同様の方法で焼成して焼結体を得る。この焼結体の表面をバレル加工して電極の両端部を露出させた後、外部電極を形成して焼付を行い、図40に示す形状の積層コイルを作製する。
 図41は、積層コイルの別の一例を模式的に示す透視斜視図である。
 図41に示す積層コイル20Aは、中央にコア部21Aを備え、その周囲に巻線部21Bを備えている。コア部21Aは、磁性体から構成される。巻線部21Bは、非磁性体とコイル状内部電極23とから構成されることが望ましいが、磁性体とコイル状内部電極23とから構成されてもよい。巻線部21Bの中には、スルーホール22を介して電気的に接続されたコイル状内部電極23が形成されている。巻線部21Bの表面には、コイル状内部電極23と電気的に接続された外部電極24および25が形成されている。
 実施例1または2で作製した六方晶フェライトの仮焼粉80gに、純水60~100gとポリカルボン酸アンモニウムの分散剤2~4gと、1~5mmφのPSZメディア1000gを、500ccのポリエステル材質のポットに入れて、回転数100~200rpmのボールミルで70~100時間粉砕して、さらに微粒化したスラリーを得る。この微粒化したスラリーに、分子量5000~30000のバインダー5~15gを添加し、3本ロールにスラリーを通して粉砕してペーストを得る。このペーストを、図41に示す積層コイル20Aのコア部21Aのみに流し入れ、流動性を失わせるために乾燥させ、積層コイルを作製する。
 図41に示す積層コイル20Aの巻線部21Bを低誘電率な非磁性体とし、コア部21Aのみに磁性体を挿入することにより、巻線間の浮遊容量成分を低減でき、磁性体によるインダクタンス成分は利用できるので、LC共振周波数を高めることで広帯域なインダクタとして機能することができる。
<実施例4>
 本発明の軟磁性組成物は、インダクタとして機能するコイル部品用途に限らず、透磁率μ’が高く、磁気損失tanδが低いことが望まれる、電波を受発信するアンテナ用途で使用することも可能である。
 図42は、アンテナの一例を模式的に示す斜視図である。
 図42に示すアンテナ30では、リング状の磁性体31が金属アンテナ線32の一部または全部に配置されている。磁性体による波長短縮効果により、アンテナを小型化することができる。
 スプレー造粒機で得た顆粒状のW型六方晶フェライトの磁性粉体を、リング状にプレス成形してリング状加工体を得る。加工体を、ジルコニア製のセッターの上に置き、大気中で昇温速度0.1~0.5℃/分かつ最高温度400℃で最高温度保持時間1~2時間で加熱してバインダーなどを熱分解脱脂した後、6GHzの磁気損失成分μ”が最小となる900~1400℃内で焼成温度を選び、昇降温速度1~5℃/分で最高温度保持時間1~10時間で大気中焼成し(酸素濃度約21%)、リング状の磁性体31を得る。リング状の磁性体31の穴に、金属アンテナ線32を通して電線を形成する。
 図43は、アンテナの別の一例を模式的に示す斜視図である。
 図43に示すアンテナ40では、磁性体41の周囲にコイル状の金属アンテナ線42が巻き付けられている。磁性体による波長短縮効果により、アンテナを小型化することができる。
<実施例5>
 携帯情報通信規格である5G、ETC、5GHz帯のWi-Fi等の通信市場では、4~6GHz程度の領域で使用することが想定されており、これらの信号から回路を守りたいというノイズフィルタ用途も存在する。磁性体のみによるノイズフィルタでは、4~6GHzの透磁率の損失成分μ”が低すぎるため、ノイズ吸収性能と小型化の両立に限界があった。本発明のインダクタを用い、コンデンサと組み合わせてLC共振回路を形成することで、磁性体のみによるノイズフィルタより、共振周波数付近のノイズ吸収効果を高めることができ、ノイズ吸収性能と小型化の両立が可能となる。
<実施例6>
 実施例1の作製方法において、組成式BaCa0.3MeFe1627―δ(Me=Mn、NiまたはZn)の組成と磁気特性等を表22に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000022
 組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Mn、NiまたはZn)における透磁率μの周波数特性を図44に、組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Mn、NiまたはZn)における透磁率平方和|μ|=√{μ”+μ’}の周波数特性を図45に示す。
 図44と図45中、Me=Mnは表22のNo.349、Me=Niは表22のNo.350、Me=Znは表22のNo.351である。
 図44と表22より、Me=Mn、NiまたはZnのいずれも20GHzまでは透磁率μ’>1.20で非磁性体より透磁率を高めることができた。透磁率μ’は、Me=Mnで31GHz、Me=Niで29GHz、Me=Znで26GHzにおいて極大値を示した。透磁率の複素成分μ”は、Me=Mnで32GHz、Me=Niで30GHz、Me=Znで27GHzにおいて極大値を示し、自然共鳴現象が発生したと考える。
 図45では、透磁率平方和の周波数特性を示したのは、単独でノイズフィルタおよび電波吸収体として機能するには、RL直列回路を想定すると、インピーダンスZを高めるため、透磁率平方和|μ|=√{μ”+μ’}≧2.0が望ましいと考えたからである。なお、インピーダンスZは、RL直列回路を想定すると、Z=(R+ωL”)+jωL’:Rは直流抵抗、ωは角周波数、インダクタンスL=L’-jL”の関係を想定している。組成式BaCa0.3MeFe1627(Me=Mn、NiまたはZn)において、表22よりMe=Znは25GHzで、Me=MnまたはNiは30GHzで|μ|>2を満たしており、ミリ波領域である25GHzや30GHzでノイズフィルタおよび電波吸収体として機能できる特性を示したと考える。図45より、透磁率平方和|μ|は、Me=Mnで31GHz、Me=Niで29GHz、Me=Znで26GHzにおいて極大値を示した。
 携帯情報通信規格である5Gのミリ波帯の通信市場では、24~86GHz程度の領域で使用することが想定されており、これらの信号から回路を守りたいというノイズフィルタおよび電波吸収体用途も存在する。従来の磁性体では、24~40GHzの透磁率の損失成分μ”が低すぎるため、ノイズ吸収性能と小型化の両立に限界があった。本発明の磁性体を用いることで、ミリ波帯の一部である24~30GHzのノイズ吸収性能と小型化の両立が可能となり、ノイズフィルタおよび電波吸収体用途に利用可能となる。
 10 巻線コイル
 11 コア(磁性体)
 12 導電性ワイヤ
 13 胴部
 14、15 張出部
 16、17 端子電極
 20、20A 積層コイル
 21 磁性体
 21A コア部
 21B 巻線部
 22 スルーホール
 23 コイル状内部電極
 24、25 外部電極
 30、40 アンテナ
 31、41 磁性体
 32、42 金属アンテナ線

Claims (10)

  1.  W型六方晶フェライトを主相とする、以下の金属元素割合を有する酸化物であり、保磁力Hcjが100kA/m以下である、軟磁性組成物。
     Ba+Sr+Na+K+La+Bi:4.7mol%以上5.8mol%以下、
     Ba:0mol%以上5.8mol%以下、
     Sr:0mol%以上5.8mol%以下、
     Na:0mol%以上5.2mol%以下、
     K:0mol%以上5.2mol%以下、
     La:0mol%以上2.1mol%以下、
     Bi:0mol%以上1.0mol%以下、
     Ca:0.2mol%以上5.0mol%以下、
     Fe:67.4mol%以上84.5mol%以下、
     Me(II)=Co+Cu+Mg+Mn+Ni+Zn:9.4mol%以上18.1mol%以下、
     Me(II)=Mg+Mn+Ni+Zn:7.8mol%以上17.1mol%以下、
     Cu:0mol%以上1.6mol%以下、
     Mg:0mol%以上17.1mol%以下、
     Mn:0mol%以上17.1mol%以下、
     Ni:0mol%以上17.1mol%以下、
     Zn:0mol%以上17.1mol%以下、
     Co:0mol%以上2.6mol%以下、
     Me(I)=Na+K+Li、Me(II)=Co+Cu+Mg+Mn+Ni+Zn、Me(IV)=Ge+Si+Sn+Ti+Zr+Hf、Me(V)=Mo+Nb+Ta+Sb+W+V、D=Me(I)+Me(II)-Me(IV)-2×Me(V)と定義した時に、D:7.8mol%以上11.6mol%以下、
     M2d=In+Sc+Sn+Zr+Hf:0mol%以上7.8mol%以下、
     Sn:0mol%以上7.8mol%以下、
     Zr+Hf:0mol%以上7.8mol%以下、
     In:0mol%以上7.8mol%以下、
     Sc:0mol%以上7.8mol%以下、
     Ge:0mol%以上2.6mol%以下、
     Si:0mol%以上2.6mol%以下、
     Ti:0mol%以上2.6mol%以下、
     Al:0mol%以上2.6mol%以下、
     Ga:0mol%以上2.6mol%以下、
     Mo:0mol%以上2.6mol%以下、
     Nb+Ta:0mol%以上2.6mol%以下、
     Sb:0mol%以上2.6mol%以下、
     W:0mol%以上2.6mol%以下、
     V:0mol%以上2.6mol%以下、
     Li:0mol%以上2.6mol%以下。
  2.  Co:0.5mol%以上である、請求項1に記載の軟磁性組成物。
  3.  Co:2.1mol%以下である、請求項1または2に記載の軟磁性組成物。
  4.  M2d=In+Sc+Sn+Zr+Hf:1.0mol%以上7.8mol%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の軟磁性組成物。
  5.  Sr=0mol%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の軟磁性組成物。
  6.  請求項1~5のいずれか1項に記載の軟磁性組成物を焼成して得られる焼結体。
  7.  請求項1~5のいずれか1項に記載の軟磁性組成物と、非磁性体とを混合して得られる複合体。
  8.  請求項1~5のいずれか1項に記載の軟磁性組成物と、非磁性体とを混合して得られるペースト。
  9.  コア部と、前記コア部の周囲に設けられた巻線部とを備え、
     前記コア部は、請求項6に記載の焼結体、請求項7に記載の複合体または請求項8に記載のペーストを用いてなり、
     前記巻線部は、電気伝導体を含むコイル部品。
  10.  請求項6に記載の焼結体、請求項7に記載の複合体または請求項8に記載のペーストと、電気伝導体とを用いてなるアンテナ。
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