JP2003002656A - 軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末、該軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を用いたグリーンシート並びに軟磁性六方晶フェライト焼結体 - Google Patents
軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末、該軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を用いたグリーンシート並びに軟磁性六方晶フェライト焼結体Info
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Abstract
数百MHz帯での透磁率の虚数部が十分小さく、数GH
z付近の周波数において透磁率の虚数部が大きくなるよ
うな周波数特性を示すと共に、低周波から数百MHz帯
までにおける透磁率の実数部が低下することなくほぼ一
定に保持できる周波数特性を示す軟磁性六方晶フェライ
ト焼結体を得る為に用いられる軟磁性六方晶フェライト
複合粒子粉末を得る。 【解決手段】Z型フェライト、Y型フェライト又はW型
フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉
末100重量部に対し、炭酸バリウム粒子粉末又は炭酸
ストロンチウム粒子粉末若しくは当該両炭酸塩粒子粉末
1〜10重量部と二酸化ケイ素粒子粉末0.5〜5重量
部とを配合したことを特徴とする軟磁性六方晶フェライ
ト複合粒子粉末。
Description
ライト粒子粉末と炭酸バリウム粒子粉末又は炭酸ストロ
ンチウム粒子粉末若しくは当該両炭酸塩粒子粉末と二酸
化ケイ素粒子粉末とからなる軟磁性六方晶フェライト複
合粒子粉末を提供すると共に、該軟磁性六方晶フェライ
ト複合粒子粉末を用いて成型、焼成することによって高
い焼結密度と体積固有抵抗とを有し、且つ、400MH
zにおける透磁率の虚数部が1以下であり、数GHz付
近の周波数において透磁率の虚数部が大きくなるような
周波数特性を示すと共に、低周波から数百MHz帯まで
における透磁率の実数部が低下することなくほぼ一定に
保持できる周波数特性を示す軟磁性六方晶フェライト焼
結体を提供するものである。
ェライト焼結体は、数百MHz帯の周波数において透磁
率の虚数部が高い値を示すことから、その磁気的損失を
利用して数百MHz帯のノイズを減衰させるインピーダ
ンス素子及び電磁波を吸収する電波吸収体等の材料とし
て広く使用されている。また、軟磁性立方晶スピネル型
フェライト焼結体は、低周波から数十MHzまでにおけ
る透磁率の実数部がほぼ一定であることから、そのイン
ダクタンスを利用したインダクター素子の材料として広
く使用されている。
ステム、屋内における無線LAN、パソコンやゲーム機
等の高速デジタル機器等の普及が進んでおり、数百MH
z帯の周波数を信号として利用することが急速に進めら
れようとしているが、その信号の高調波として生じる数
GHz付近のノイズが大きな問題になってきている。従
って、数百MHz帯の信号、電磁波には影響を与えない
で、それを越える数GHz付近の周波数のノイズ、電磁
波を減衰、吸収するインピーダンス素子、電波吸収体が
強く望まれており、その為には数百MHz帯における透
磁率の虚数部を小さくし、数GHz付近における透磁率
の虚数部を大きくすることが必要である。また、数百M
Hz帯の周波数を信号として利用するには、低周波から
その周波数帯まで一定の高いインダクタンスを持ったイ
ンダクター素子を電子部品として使用する必要があり、
その為には低周波から数百MHz帯における透磁率の実
数部が低下することなくほぼ一定に保持できることが必
要である。
ト焼結体にはいわゆるスヌークの限界則が存在し、数百
MHz帯における透磁率の虚数部を小さくすることがで
きない。従って、数百MHz帯の周波数を信号として利
用する電子機器に対して、従来の軟磁性立方晶スピネル
型フェライト焼結体をインピーダンス素子や電波吸収体
として用いた場合には、電子機器の動作に必要な信号周
波数(数百MHz帯)が磁気的損失により減衰、吸収さ
れてしまうという問題があった。また、透磁率の実数部
も、スヌークの限界則により数百MHz帯以上では減少
してしまう。従って、数百MHz帯の周波数を信号とし
て利用する電子機器に対して、従来の軟磁性立方晶スピ
ネル型フェライト焼結体をインダクター素子として利用
できないという問題があった。
虚数部が小さく、スヌークの限界則を越えて、数GHz
付近の周波数において透磁率の虚数部が大きい材料とし
て、Z型フェライト、Y型フェライト又はW型フェライ
トの結晶構造を有する軟磁性六方晶フェライト焼結体が
提案されている。即ち、軟磁性六方晶フェライト焼結体
をインピーダンス素子や電波吸収体として用いた場合に
は、数百MHz帯の周波数を信号周波数として使用で
き、その信号周波数の高調波として生じる数GHz付近
のノイズを減衰、吸収できることが期待される。また、
数百MHz帯まで透磁率の実数部が低下することなくほ
ぼ一定である材料として、該軟磁性六方晶フェライト焼
結体が提案されている。即ち、軟磁性六方晶フェライト
焼結体をインダクター素子として用いた場合には、数百
MHz帯の周波数を信号として使用することができる。
は、焼結密度が高々4.9×103kg/m3程度と低い
という欠点が存在することから、実用上は殆ど利用され
ていない。この事実は、特開2001−39718号公
報の「六方晶フェライトは高周波での透磁率は優れてい
るものの、焼成体密度が低いため機械的強度の点で不十
分となり、電子機器の表面実装部品として使いづらかっ
た。」なる記載からも明らかである。
型フェライト焼結体の焼結密度が5.0×103kg/m
3以上であることから、軟磁性六方晶フェライト焼結体
についても同程度の高い焼結密度が強く要求されてい
る。また、焼結密度と透磁率との間には密接な関係があ
り、焼結密度が低いと軟磁性六方晶フェライト焼結体が
本来有している透磁率を発現できない。
体積固有抵抗が高々1×105Ωmと低いという欠点も
あり、絶縁不良を引き起こす原因となっている。この事
実は、前出特開2001−39718号公報の「六方晶
フェライトは・・・・。また、スピネルフェライトに比
べて比抵抗が低いため、コイル製作時に絶縁のための対
策をしなければならない場合があり、製作が面倒であ
る。」なる記載からも明らかである。
フェライト焼結体(Ni−Zn系)の体積固有抵抗が1×
106Ωm以上であることから、軟磁性六方晶フェライ
ト焼結体についても同程度の高い体積固有抵抗が強く要
求されている。
上記焼結密度及び体積固有抵抗の向上と共に、前述した
通り、数百MHz帯の信号、電磁波には影響を与えず、
それを越える数GHz付近の周波数のノイズ、電磁波を
減衰、吸収するインピーダンス素子、電波吸収体を得る
為には、周波数400MHzにおける透磁率の虚数部が
小さく、数GHz付近における透磁率の虚数部が大きい
ことが要求されている。また、上記焼結密度及び体積固
有抵抗の向上と共に、前述した通り、数百MHz帯まで
利用できるインダクター素子を得る為には、低周波から
数百MHz帯までにおける透磁率の実数部が低下するこ
となくほぼ一定に保持できることが要求されている。
と体積固有抵抗とを向上させる方法が種々提案されてい
る。特開平10−92624号公報には、SiO2とP
bOを含有させることによって焼結密度が4.6×103
〜4.9×103kg/m3であって、体積固有抵抗が1
04Ωm以上である軟磁性六方晶フェライト焼結体が記
載されている。
は、SiO2とCaOを含有させることによって、焼結
密度が4.6×103〜5.3×103kg/m3であっ
て、体積固有抵抗が1×105〜1×106Ωmである軟
磁性六方晶フェライト焼結体が記載されている。
報には、Mn3O4、Bi2O3及びCuOを添加した軟磁
性六方晶フェライト焼結体が記載されている。
有抵抗とを有し、且つ、数百MHz帯での透磁率の虚数
部が十分小さく、数GHz付近の周波数において透磁率
の虚数部が大きくなるような周波数特性を示すと共に、
低周波から数百MHz帯までにおける透磁率の実数部が
低下することなくほぼ一定に保持できる軟磁性六方晶フ
ェライト焼結体は、現在最も要求されているところであ
るが、このような特性を有する軟磁性六方晶フェライト
焼結体は未だ得られていない。
記載の軟磁性六方晶フェライト焼結体は、高い焼結密度
と体積固有抵抗の両立を目指したものであるが、未だ十
分な特性を有しているとは言い難い。また、PbOを含
有する為、人体に対する毒性を慎重に考慮する必要があ
る。
軟磁性六方晶フェライト焼結体は、同様に高い焼結密度
と体積固有抵抗の両立を目指したものであるが、特に体
積固有抵抗において未だ十分とは言い難い。
の軟磁性六方晶フェライト焼結体は、焼結密度と体積固
有抵抗の改善を図ると共に透磁率の周波数特性をも考慮
したものであるが、数百MHz帯の透磁率の虚数部が十
分低減されているとは言い難い。
有抵抗とを有し、且つ、数百MHz帯での透磁率の虚数
部が十分小さく、数GHz付近の周波数において透磁率
の虚数部が大きくなるような周波数特性を示すと共に、
低周波から数百MHz帯までにおける透磁率の実数部が
低下することなくほぼ一定に保持できる周波数特性を示
す軟磁性六方晶フェライト焼結体を得る為に用いられる
軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を得ることを技術
的課題とする。
の本発明によって達成できる。即ち、本発明は、Z型フ
ェライト、Y型フェライト又はW型フェライトを主相と
する軟磁性六方晶フェライト粒子粉末100重量部に対
し、炭酸バリウム粒子粉末又は炭酸ストロンチウム粒子
粉末若しくは当該両炭酸塩粒子粉末1〜10重量部と二
酸化ケイ素粒子粉末0.5〜5重量部とを配合したこと
を特徴とする軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末であ
る。(発明1)
ェライト複合粒子粉末と結合材料とを用いてシート状に
成膜してなるグリーンシートである。(発明2)
ェライト複合粒子粉末を成型した後焼成してなる焼結密
度が5.0×103kg/m3以上であって体積固有抵抗
が1×106Ωm以上であり、400MHzにおける透
磁率の虚数部が1以下であることを特徴とする軟磁性六
方晶フェライト焼結体である。(発明3)
を積層した後焼成してなる焼結密度が5.0×103kg
/m3以上であって体積固有抵抗が1×106Ωm以上で
あり、400MHzにおける透磁率の虚数部が1以下で
あることを特徴とする軟磁性六方晶フェライト焼結体で
ある。(発明4)
の通りである。
ト複合粒子粉末について述べる。本発明に係る軟磁性六
方晶フェライト複合粒子粉末は、Z型フェライト、Y型
フェライト又はW型フェライトを主相とする軟磁性六方
晶フェライト粒子粉末100重量部に対し、炭酸バリウ
ム粒子粉末又は炭酸ストロンチウム粒子粉末若しくは当
該両炭酸塩粒子粉末1〜10重量部と二酸化ケイ素粒子
粉末0.5〜5重量部とを配合したものである。
フェライト粒子粉末は、組成が酸化物換算で15〜25
mol%のAO(AはBa、Sr又はBa−Sr)、5
〜15mol%のMe1O(Me1はCoとNi、Zn,
Cu,Mg,Mnから選ばれた1種又は2種以上の元素
とからなり、Co量はMe1総量に対して少なくとも3
0mol%である。)及び65〜75mol%のFe2
O3からなることが好ましく、より好ましくは、16〜
22mol%のAO、8〜14mol%のMe1O及び
67〜73mol%のFe2O3である。組成が上記範囲
外である場合には、主相以外のY型フェライト及びW型
フェライトの生成量が多くなり、得られる軟磁性六方晶
フェライト焼結体本来の透磁率の周波数特性を実現でき
ない。
フェライト粒子粉末は、組成が酸化物換算で10〜30
mol%のAO(AはBa、Sr又はBa−Sr)、1
0〜30mol%のMe2O(Me2はNi、Zn、C
u、Mg、Mnから選ばれた1種又は2種以上の元素)
及び55〜65mol%のFe2O3からなることが好ま
しく、より好ましくは、13〜27mol%のAO、1
3〜27mol%のMe 2O及び57〜63mol%の
Fe2O3である。組成が上記範囲外である場合には、主
相以外のZ型フェライト及びW型フェライトの生成量が
多くなり、得られる軟磁性六方晶フェライト焼結体本来
の透磁率の周波数特性を実現できない。
フェライト粒子粉末は、組成が酸化物換算で5〜14m
ol%のAO(AはBa、Sr又はBa−Sr)、10
〜30mol%のMe3O(Me3はCoとNi、Zn,
Cu,Mg,Mnから選ばれた1種又は2種以上の元素
とからなり、Co量はMe3総量に対して少なくとも3
0mol%である。)及び65〜80mol%のFe2
O3からなることが好ましく、より好ましくは、7〜1
3mol%のAO、13〜27mol%のMe3O及び
66〜77mol%のFe2O3である。組成が上記範囲
外である場合には、主相以外のZ型フェライト及びY型
フェライトの生成量が多くなり、得られる軟磁性六方晶
フェライト焼結体本来の透磁率の周波数特性を実現でき
ない。
は、X線回折により決定する。即ち、Z型フェライト相
の(1 0 16)面の反射強度、Y型フェライト相の
(1 013)面の反射強度及びW型フェライト相の
(1 1 6)面の反射強度のうち、最も強い反射強度を
示す相を主相とする。
フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉
末における副相の生成量は、上記反射面のうち最も強い
反射強度を示す主相を1とした場合の相対強度で表さ
れ、相対強度が副相の合計で0.7以下が好ましい。相
対強度が上記範囲を越えた場合には、主相本来の透磁率
の周波数特性を実現できない。副相の生成量は、より好
ましくは副相の合計で0.65以下である。その下限値
は0である。
フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉
末は、上記組成割合になるように配合した各元素の酸化
物原料、炭酸塩原料、シュウ酸塩原料及び水酸化物原料
等の原料粒子粉末の混合物を常法により、大気中におい
て1100〜1300℃の温度範囲で1〜20時間仮焼
成した後粉砕することによって得ることができる。Z型
フェライト、Y型フェライト及びW型フェライトのそれ
ぞれを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末を得
る場合の最適な仮焼成温度は、それぞれ1250℃、1
200℃及び1250℃付近である。
子粉末又は炭酸ストロンチウム粒子粉末は、平均粒子径
が好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは0.5〜
40μmであって、BET比表面積が好ましくは0.1
〜40m2/g、より好ましくは0.1〜30m2/gで
ある。
フェライト粒子粉末100重量部に対して1〜10重量
部、好ましくは1〜7重量部である。配合量が該範囲外
である場合は、目的とする焼結密度が5.0×103kg
/m3以上の軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ること
が困難となり、機械的強度の点で不十分となる。
子粉末は、平均粒子径が好ましくは0.5〜50μm、
より好ましくは1〜40μmである。
六方晶フェライト粒子粉末100重量部に対し0.5〜
5重量部、より好ましくは0.7〜4重量部である。0.
5重量部未満の場合は、目的とする体積固有抵抗が1×
106Ωm以上の軟磁性六方晶フェライト焼結体を得る
ことが困難である。また、本発明に係る軟磁性六方晶フ
ェライト焼結体の400MHzにおける透磁率の虚数部
は1を越え、数百MHz帯で磁気的損失が増加する為、
その帯域の信号を利用することができない。配合量が5
重量部を越える場合は、400MHzにおける透磁率の
虚数部は1より小さくなるが、目的とする焼結密度が
5.0×103kg/m3以上の軟磁性六方晶フェライト
焼結体を得ることが困難となり、機械的強度の点で不十
分となる。
粒子粉末は、平均粒子径が好ましくは0.1〜30μ
m、より好ましくは0.1〜20μmであって、BET
比表面積が好ましくは0.1〜40m2/g、より好まし
くは0.5〜40m2/gである。磁気特性は、飽和磁化
が好ましくは20〜60Am2/kg、より好ましくは
25〜55Am2/kgであって、保磁力が好ましくは
0.50〜50kA/m、より好ましくは1.0〜30k
A/mである。
性が上記範囲外である場合は、後述するグリーンシート
製造過程における軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末
の塗料中への均一分散が困難となり、特性にバラツキが
ある焼結体となりやすい。
記範囲外である場合には、本発明の目的とする軟磁性六
方晶フェライト焼結体を得ることが困難となる。
ト焼結体について述べる。軟磁性六方晶フェライト焼結
体は、用いたZ型フェライト、Y型フェライト又はW型
フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉
末の前記組成とほぼ同じである。組成が範囲外である場
合には、副相の生成量が多くなり、主相本来の透磁率の
周波数特性を実現できない
体は、焼結密度が5.0×103kg/m3以上、好まし
くは5.0×103〜5.3×103kg/m3であって体
積固有抵抗が1×106Ωm以上、好ましくは1×106
〜5×109Ωmである。
場合は、機械的強度の点で不十分となる。機械的強度の
点から焼結密度は高い方が良いが、その上限は5.3×
103kg/m3である。体積固有抵抗が1×106Ωm
未満の場合は、絶縁不良を引き起こす。絶縁不良を改善
するためには体積固有抵抗は高い方が良い。
体は、400MHzにおける透磁率の虚数部は1以下、
好ましくは0.7以下であって、低周波から数百MHz
帯までにおける透磁率の実数部が低下することなくほぼ
一定に保持できる。
体の透磁率の周波数特性について以下に具体的に説明す
る。後出実施例1で得られた軟磁性六方晶フェライト焼
結体の透磁率の周波数特性を図1に示す。図1中、細線
が透磁率の実数部(以下、μ′で示す。)であり、太線
が虚数部(以下、μ″で示す。)である。μ′は低周波
側では低下することなく一定の値を保持しているが、約
300MHzから一旦増加した後約800MHzで減少
を始め、約5GHzでほぼ1となる。μ″は低周波側で
は殆ど0であるが、約300MHzから増加を始め、共
鳴周波数(fr=1.4GHz)で最大値を示した後高周
波側では次第に減少していく。
7で得られた軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体
の場合には、図2に示す通り、μ′が約15MHzから
一旦増加した後約50MHz付近から減少し始め、数G
Hzでほぼ1となる。また、μ″は約20MHzから増
加を始め、共鳴周波数(fr=約100MHz)で最大
値を示した後高周波側では次第に減少していく。
ト焼結体のμ″のピークは、従来から用いられている軟
磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体のそれより高周
波側にずれていることが分かる。また、μ′が低下する
ことなく一定の値を保持している周波数範囲が高周波側
に伸びていることが分かる。
μ″の周波数特性であって、これが大きい範囲において
インピーダンス素子がノイズを減衰させるという事実で
ある。つまり、現在利用が進められようとしている数百
MHz帯の信号を減衰させずに通過させる為には、その
周波数帯のμ″をできるだけ小さくする必要があり、更
に、その信号の高調波として生じる数GHz付近のノイ
ズを減衰させる為には、数GHz付近の周波数帯でμ″
が大きくなるように、即ち、共鳴周波数が数GHz付近
になるように透磁率の周波数特性を調節する必要があ
る。
0MHzにおけるμ″を1以下、好ましくは0.7以下
にすることができると共に共鳴周波数を数GHz以上に
することができ、更に共鳴周波数におけるμ″を1.0
以上、更に好ましくは1.3以上にすることができる。
分に対応するμ′の周波数特性であって、インダクター
素子が数百MHz帯で動作する為には、その周波数範囲
でμ′がほぼ一定であり減少しないことが必要である。
本発明によれば、図1に示したようにμ′が減少し始め
る周波数を数百MHz以上にすることができる。
さの指標として、400MHz及び共鳴周波数における
透磁率の虚数部(μ″)の値で示した。また、透磁率の
実数部が低下することなく一定である周波数範囲の上限
の指標として、透磁率の実数部(μ′)が減少し始める周
波数で示した。従来の軟磁性六方晶フェライト焼結体及
び軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体では400
MHzにおけるμ″が1を越えており、数百MHz帯に
おける磁気損失が大きいことから、これを用いたインピ
ーダンス素子では数百MHz帯の信号を減衰させずに通
過させることはできなかった。
ある。1GHz未満の場合は、数百MHz帯の透磁率の
虚数部、即ち、磁気的損失が大きくなる為、数百MHz
帯の信号を減衰させてしまう。
ましくは1.0以上、更に好ましくは1.3以上である。
1.0未満の場合は、数GHz付近のノイズを十分に減
衰させることができない。
好ましくは500MHz以上、更に好ましくは700M
Hz以上である。500MHz未満の場合は、低周波か
ら数百MHz帯まで透磁率の実数部を低下することなく
一定にすることができない。
体は、本発明に係る軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉
末を金型を用いて0.3×104〜3×104t/m2の圧
力で加圧する、所謂、粉末加圧成型法により得られた成
型体又は本発明に係る軟磁性六方晶フェライト複合粒子
粉末を含有するグリーンシートを積層して得られた、所
謂、グリーンシート法により得られた積層体を好ましく
は1100〜1300℃の温度範囲で1〜20時間、好
ましくは2〜10時間焼成することによって得ることが
できる。成型方法としては、公知のいずれの方法をも使
用することができるが、上記粉末加圧成型法や、グリー
ンシート法が好ましい。
明の目的とする焼結密度が5.0×103kg/m3以上
の軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることが困難とな
る。焼成温度が1300℃を越える場合にも、本発明の
目的とする軟磁性六方晶フェライト焼結体が得られる
が、工業性及び経済性を考慮するとその上限は1300
℃である。
て述べる。グリーンシートとは積層チップ部品を製造す
る際の被焼成物となるもので、軟磁性六方晶フェライト
複合粒子粉末を結合材料、可塑剤及び溶剤等と混合する
ことによって塗料とし、該塗料をドクターブレード式コ
ーター等で数μmから数百μmの厚さに成膜した後乾燥
してなるシートである。
ライト、Y型フェライト又はW型フェライトを主相とす
る軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末100重量部と
結合材料が好ましくは2〜20重量部、より好ましくは
4〜15重量部と可塑剤が好ましくは0.5〜15重量
部、より好ましくは2〜10重量部とからなる。また、
成膜後の乾燥が不十分なことによって溶剤が残留してい
てもよい。
ル、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレー
ト、塩化ビニル、ポリメタクリル酸エステル、エチルセ
ルロース、アビエチン酸レジン等であり、ポリビニルブ
チラールが好ましい。
ンシートが脆くなりやすい。強度の点からその上限値は
20重量部で十分である。
チル、ジブチルフタレート、ジメチルフタレート、ポリ
エチレングリコール、フタール酸エステル、ブチルステ
アレート、メチルアジテート等であり、フタル酸ベンジ
ルn−ブチルが好ましい。
ーンシートが固くなり、ひび割れを生じやすくなる。可
塑剤が15重量部を越える場合は、グリーンシートが軟
らかくなる。
っては、Z型フェライト、Y型フェライト又はW型フェ
ライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉
末100重量部に対して、20〜150重量部の溶剤を
使用する。より好ましくは30〜120重量部である。
溶剤が上記範囲外である場合は、均一なグリーンシート
が得られないので、得られる焼結体は、特性にバラツキ
があるものとなりやすい。
は、アセトン、エチルアルコール、ベンゼン、ブタノー
ル、エタノール、メチルエチルケトン、トルエン、プロ
ピルアルコール等であり、メチルエチルケトン、トルエ
ンが好ましい。
次の通りである。尚、以下の発明の実施の形態並びに後
出実施例及び比較例における軟磁性六方晶フェライト複
合粒子粉末の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測
定装置(Sympatec GmbH製)で測定したx
50の値で示した。
−II(湯浅アイオニックス(株)製)を用いてBET
法により求めた。
SM−3S(東英工業(株)製)で測定し、印加磁場を
10kOeとした時の値で示した。
AII(理学電機(株)製)を用いた。
径25mm)の外径寸法から求めた体積と重量から算出
した。
ーター4329A(アジレント・テクノロジー(株)
製)を用いて測定した値と上記試料の外径寸法から算出
した。
((株)関東電子応用開発 製)に外径7mm内径3m
mのリング状焼結体試料を挿入した後、ネットワークア
ナライザーHP8753C(アジレント・テクノロジー
(株)製)を用いてSパラメーターを測定し、これより
算出した。
製造〉α−Fe2O3とCoCO3とBaCO3とを組成が
BaO=18.7mol%、CoO=11.6mol%、
Fe2O3=69.7mol%となるように秤量して、湿
式アトライターで1時間混合した後、濾過、乾燥した。
この混合原料粉末を大気中、1250℃で5時間仮焼成
した。得られた軟磁性六方晶フェライトの主相はZ型で
あって、Z型フェライト相の(1 0 16)面のピーク
強度1に対して、Y型フェライト相の(1 0 13)面
のピーク強度は0.54、W型フェライト相の(1 1
6)面のピーク強度は0であった。この軟磁性六方晶フ
ェライト100重量部に炭酸バリウム粒子粉末1.5重
量部、二酸化ケイ素粒子粉末0.9重量部を添加した
後、湿式ボールミルで微粉砕して軟磁性六方晶フェライ
ト複合粒子粉末を得た。得られた軟磁性六方晶フェライ
ト複合粒子粉末は、平均粒子径が3.0μmであり、B
ET比表面積が3.1m2/g、飽和磁化が41.0Am2
/kg、保磁力が11.1kA/mであった。
ーンシート積層体の製造〉上記軟磁性六方晶フェライト
複合粒子粉末100重量部に対して結合材料ポリビニル
ブチラール「エスレックB BL−S」(商品名、積水化
学工業(株)製))7重量部と可塑剤フタル酸ベンジル
n−ブチル(東京化成工業(株)製試薬)4.4重量部と
溶剤として酢酸n−ブチル試薬特級(米山薬品工業
(株)製)30重量部及びメチルエチルケトン(日本化
成品(株)製)30重量部とを加えて、ボールミルで1
5時間混合して塗料を製造した。この塗料をドクターブ
レード式コーターを用いてPETフィルム上に塗布して
塗膜を形成した後乾燥することにより膜厚120μmの
グリーンシートを得た。これを縦5cm横5cmの大き
さに切断して20枚を積層した後、0.5×104t/m
2の圧力で加圧してグリーンシート積層体を得た。得ら
れたグリーンシート積層体の厚みは1.4mmであっ
た。
上記グリーンシート積層体を大気中1250℃で7時間
焼成して軟磁性六方晶フェライト焼結体を得た。得られ
た焼結体の密度は5.1×103kg/m3、体積固有抵
抗は1×109Ωmであり、400MHzにおける透磁
率の実数部は5.2であって透磁率の虚数部は0.3であ
った。また、共鳴周波数は2.2GHz、その共鳴周波
数における透磁率の虚数部は3.2、透磁率の実数部が
減少し始める周波数は958MHzであった。
ト、Y型フェライト又はW型フェライトを主相とする軟
磁性六方晶フェライト粒子粉末と炭酸バリウム粒子粉末
又は炭酸ストロンチウム粒子粉末若しくは当該両炭酸塩
粒子粉末と二酸化ケイ素粒子粉末とを特定の割合で配合
した軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を用いて軟磁
性六方晶フェライト焼結体を得た場合には、5.0×1
03kg/m3以上の高い焼結密度と1×106Ωm以上
の高い体積固有抵抗とを維持しながら、400MHzに
おける透磁率の虚数部が1以下であって低周波から数百
MHz帯まで透磁率の実数部が低下することなくほぼ一
定である軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることがで
きるという事実である。
磁性六方晶フェライト焼結体を得ることができた理由に
ついて、本発明者は、焼成にあたってあらかじめ配合し
た特定量の炭酸塩が焼成時に結晶粒相互の焼結を促進し
て焼結密度を高めると共に、同様に焼成にあたってあら
かじめ配合した特定量の二酸化ケイ素が焼成時に結晶粒
界部分に選択的に析出して、絶縁層として機能したこと
により体積固有抵抗値を高めることができたものと考え
ている。
以下である軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることが
できた理由について、本発明者は、結晶粒界に選択的に
析出した二酸化ケイ素が該焼結体の磁気回路を分断する
ことで反磁界が生じ、これが共鳴現象を高周波側に移動
させたことによるものと考えている。
バリウム粒子粉末、炭酸ストロンチウム粒子粉末及び二
酸化ケイ素粒子粉末の平均粒子径、BET比表面積及び
配合量、軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を用いた
グリーンシートの積層時の圧力、焼成温度及び焼成時間
を種々変化させた以外は、前記発明の実施の形態と同様
にして軟磁性六方晶フェライト焼結体を製造した。この
時の主要製造条件及び諸特性を表1乃至表3に示す。な
お、比較例7は、公知の代表的な軟磁性立方晶スピネル
型フェライト焼結体である。
晶フェライト複合粒子粉末を金型に充填した後、1×1
04t/m2の圧力で加圧して直径30mm、厚さ2.5
mmの円盤状試料を作成した。上記円盤状試料を大気中
1250℃で5時間焼成して軟磁性六方晶フェライト焼
結体を得た。得られた焼結体は、焼結密度が5.2×1
03kg/m3、体積固有抵抗は1×109Ωcmであ
り、400MHzにおける透磁率の実数部は4.6であ
って透磁率の虚数部は0.2であった。また、共鳴周波
数は2.5GHz、その共鳴周波数における透磁率の虚
数部は2.6、透磁率の実数部が減少し始める周波数は
1068MHzであった。
バリウム粒子粉末、炭酸ストロンチウム粒子粉末及び二
酸化ケイ素粒子粉末の平均粒子径、BET比表面積及び
配合量、成型時の圧力、焼成温度及び焼成時間を種々変
化させた以外は、上記実施例5と同様にして、軟磁性六
方晶フェライト焼結体を得た。このときの主要製造条件
及び諸特性を表1乃至表3に示す。
合粒子粉末を用いた場合には、高い焼結密度と体積固有
抵抗とを有し、且つ、数百MHz帯での透磁率の虚数部
が十分小さく、数GHz付近の周波数において透磁率の
虚数部が大きい周波数特性を有すると共に低周波から数
百MHz帯までにおける透磁率の実数部が低下すること
なくほぼ一定であるような周波数特性を示す軟磁性六方
晶フェライト焼結体を得ることができるので、数GHz
付近のノイズを減衰させるインピーダンス素子や電磁波
を吸収する電波吸収体用の材料として、また、数百MH
z帯の周波数を信号として使用するインダクター素子等
として好適である。
ライト焼結体の透磁率の周波数特性である。
ェライト焼結体の透磁率の周波数特性である。
Claims (4)
- 【請求項1】 Z型フェライト、Y型フェライト又はW
型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子
粉末100重量部に対し、炭酸バリウム粒子粉末又は炭
酸ストロンチウム粒子粉末若しくは当該両炭酸塩粒子粉
末1〜10重量部と二酸化ケイ素粒子粉末0.5〜5重
量部とを配合したことを特徴とする軟磁性六方晶フェラ
イト複合粒子粉末。 - 【請求項2】 請求項1記載の軟磁性六方晶フェライト
複合粒子粉末と結合材料とを用いてシート状に成膜して
なるグリーンシート。 - 【請求項3】 請求項1記載の軟磁性六方晶フェライト
複合粒子粉末を成型した後焼成してなる焼結密度が5.
0×103kg/m3以上であって体積固有抵抗が1×1
06Ωm以上であり、400MHzにおける透磁率の虚
数部が1以下であることを特徴とする軟磁性六方晶フェ
ライト焼結体。 - 【請求項4】 請求項2記載のグリーンシートを積層し
た後焼成してなる焼結密度が5.0×103kg/m3以
上であって体積固有抵抗が1×106Ωm以上であり、
400MHzにおける透磁率の虚数部が1以下であるこ
とを特徴とする軟磁性六方晶フェライト焼結体。
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