JP4045410B2 - 軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末、該軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を用いたグリーンシート並びに軟磁性六方晶フェライト焼結体 - Google Patents

軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末、該軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を用いたグリーンシート並びに軟磁性六方晶フェライト焼結体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟磁性六方晶フェライト粒子粉末と炭酸バリウム粒子粉末又は炭酸ストロンチウム粒子粉末若しくは当該両炭酸塩粒子粉末と二酸化ケイ素粒子粉末、酸化ビスマス粒子粉末及び酸化銅粒子粉末とからなる軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を提供すると共に、該軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を用いて成型、焼成することによって高い焼結密度と体積固有抵抗とを有し、且つ、400MHzにおける透磁率の虚数部が1以下であり、数GHz付近の周波数において透磁率の虚数部が大きくなるような周波数特性を示すと共に、低周波から数百MHz帯までにおける透磁率の実数部が低下することなくほぼ一定に保持できる周波数特性を示す軟磁性六方晶フェライト焼結体を工業的、経済的に有利に提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体は、数百MHz帯の周波数において透磁率の虚数部が高い値を示すことから、その磁気的損失を利用して数百MHz帯のノイズを減衰させるインピーダンス素子及び電磁波を吸収する電波吸収体等の材料として広く使用されている。
また、軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体は、低周波から数十MHzまでにおける透磁率の実数部が一定であることから、そのインダクタンスを利用したインダクター素子の材料として広く使用されている。
【0003】
近年、携帯電話、PHS等の移動体通信システム、屋内における無線LAN、パソコンやゲーム機等の高速デジタル機器等の普及が進んでおり、数百MHz帯の周波数を信号として利用することが急速に進められようとしているが、その信号の高調波として生じる数GHz付近のノイズが大きな問題になってきている。従って、数百MHz帯の信号、電磁波には影響を与えないで、それを越える数GHz付近の周波数のノイズ、電磁波を減衰、吸収するインピーダンス素子、電波吸収体が強く望まれており、その為には数百MHz帯における透磁率の虚数部を小さくし、数GHz付近における透磁率の虚数部を大きくすることが必要である。
また、数百MHz帯の周波数を信号として利用するには、低周波からその周波数帯まで一定の高いインダクタンスを持ったインダクター素子を電子部品として使用する必要があり、その為には低周波から数百MHz帯における透磁率の実数部が低下することなくほぼ一定に保持できることが必要である。
【0004】
しかし、軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体にはいわゆるスヌークの限界則が存在し、数百MHz帯における透磁率の虚数部を小さくすることができない。従って、数百MHz帯の周波数を信号として利用する電子機器に対して、従来の軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体をインピーダンス素子や電波吸収体として用いた場合には、電子機器の動作に必要な信号周波数(数百MHz帯)が磁気的損失により減衰、吸収されてしまうという問題があった。
また、透磁率の実数部も、スヌークの限界則により数百MHz帯以上では減少してしまう。従って、数百MHz帯の周波数を信号として利用する電子機器に対して、従来の軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体をインダクター素子として利用できないという問題があった。
【0005】
これに対して、数百MHz帯では透磁率の虚数部が小さく、スヌークの限界則を越えて、数GHz付近の周波数において透磁率の虚数部が大きい材料として、Z型フェライト、Y型フェライト又はW型フェライトの結晶構造を有する軟磁性六方晶フェライト焼結体が提案されている。即ち、軟磁性六方晶フェライト焼結体をインピーダンス素子や電波吸収体として用いた場合には、数百MHz帯の周波数を信号周波数として使用でき、その信号周波数の高調波として生じる数GHz付近のノイズを減衰、吸収できることが期待される。
また、数百MHz帯まで透磁率の実数部が低下することなくほぼ一定である材料として、該軟磁性六方晶フェライト焼結体が提案されている。即ち、軟磁性六方晶フェライト焼結体をインダクター素子として用いた場合には、数百MHz帯の周波数を信号として使用することができる。
【0006】
しかし、軟磁性六方晶フェライト焼結体は、焼結密度が高々4.9×103kg/m3程度と低いという欠点が存在することから、実用上は殆ど利用されていない。この事実は、特開2001−39718号公報の「六方晶フェライトは高周波での透磁率は優れているものの、焼成体密度が低いため機械的強度の点で不十分となり、電子機器の表面実装部品として使いづらかった。」なる記載からも明らかである。
【0007】
現在使用されている軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体の焼結密度が5.0×103kg/m3以上であることから、軟磁性六方晶フェライト焼結体についても同程度の高い焼結密度が強く要求されている。また、焼結密度と透磁率との間には密接な関係があり、焼結密度が低いと軟磁性六方晶フェライト焼結体が本来有している透磁率を発現できない。
【0008】
次に、軟磁性六方晶フェライト焼結体は、体積固有抵抗が高々1×105Ωmと低いという欠点もあり、絶縁不良を引き起こす原因となっている。この事実は、前出特開2001−39718号公報の「六方晶フェライトは・・・・。また、スピネルフェライトに比べて比抵抗が低いため、コイル製作時に絶縁のための対策をしなければならない場合があり、製作が面倒である。」なる記載からも明らかである。
【0009】
現在使われている軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体(Ni−Zn系)の体積固有抵抗が1×106Ωm以上であることから、軟磁性六方晶フェライト焼結体についても同程度の高い体積固有抵抗が強く要求されている。
【0010】
次に、軟磁性六方晶フェライト焼結体は、上記焼結密度及び体積固有抵抗の向上と共に、前述した通り、数百MHz帯の信号、電磁波には影響を与えず、それを越える数GHz付近の周波数のノイズ、電磁波を減衰、吸収するインピーダンス素子、電波吸収体を得る為には、周波数400MHzにおける透磁率の虚数部が小さく、数GHz付近における透磁率の虚数部が大きいことが要求されている。
また、上記焼結密度及び体積固有抵抗の向上と共に、前述した通り、数百MHz帯まで利用できるインダクター素子を得る為には、低周波から数百MHz帯までにおける透磁率の実数部が低下することなく一定に保持できることが要求されている。
【0011】
軟磁性六方晶フェライト焼結体の焼結密度と体積固有抵抗とを向上させる方法が種々提案されている。特開平10−92624号公報には、SiO2とPbOを含有させることによって焼結密度が4.6〜4.9×103kg/m3であって、体積固有抵抗が104Ωm以上である軟磁性六方晶フェライト焼結体が記載されている。
【0012】
また、特開平9−110432号公報には、SiO2とCaOを含有させることによって、焼結密度が4.6×103〜5.3×103kg/m3であって、体積固有抵抗が1×105〜1×106Ωmである軟磁性六方晶フェライト焼結体が記載されている。
【0013】
更に、前出特開2001−39718号公報には、Mn34、Bi23及びCuOを添加した軟磁性六方晶フェライト焼結体が記載されている。
【0014】
特開2002−15913号公報には、硼珪酸ガラス、硼珪酸亜鉛ガラス、CuO及びBi23のうち1種又は2種以上を添加したZ相を主相とする軟磁性六方晶系フェライトを用いた磁性層用シート又はペーストとAgまたはAg合金を材料とする内部電極用ペーストとを積層一体化した後、焼成して焼結体とする積層チップ部品の製造工程において、上記Ag又はAg合金の融点以下の低温即ち、960℃以下で同時焼成が可能な焼結体が記載されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
高い焼結密度と体積固有抵抗とを有し、且つ、数百MHz帯での透磁率の虚数部が十分小さく、数GHz付近の周波数において透磁率の虚数部が大きくなるような周波数特性を示すと共に、低周波から数百MHz帯までにおける透磁率の実数部が低下することなくほぼ一定に保持できる軟磁性六方晶フェライト焼結体は、現在最も要求されているところであるが、このような特性を有する軟磁性六方晶フェライト焼結体は未だ得られていない。
【0016】
即ち、前出特開平10−92624号公報記載の軟磁性六方晶フェライト焼結体は、高い焼結密度と体積固有抵抗の両立を目指したものであるが、未だ十分な特性を有しているとは言い難い。また、PbOを含有する為、人体に対する毒性を慎重に考慮する必要がある。
【0017】
前出特開平9−110432号公報記載の軟磁性六方晶フェライト焼結体は、同様に高い焼結密度と体積固有抵抗の両立を目指したものであるが、特に体積固有抵抗において未だ十分とは言い難い。
【0018】
前出特開2001−39718号公報記載の軟磁性六方晶フェライト焼結体は、焼結密度と体積固有抵抗の改善を図ると共に透磁率の周波数特性をも考慮したものであるが、数百MHz帯の透磁率の虚数部が十分低減されているとは言い難い。
【0019】
前出特開2002−15913号公報記載の軟磁性六方晶系フェライトは960℃以下の低い焼成温度で製造することができるが、後出比較例11に示す通り、体積固有抵抗値が十分ではないという問題がある。
【0020】
そこで、本発明は、高い焼結密度と体積固有抵抗とを有し、且つ、数百MHz帯での透磁率の虚数部が十分小さく、数GHz付近の周波数において透磁率の虚数部が大きくなるような周波数特性を示すと共に、低周波から数百MHz帯までにおける透磁率の実数部が低下することなくほぼ一定に保持できる周波数特性を示す軟磁性六方晶フェライト焼結体を960℃以下の低い温度で焼成することによって得る為に用いられる軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
【0021】
【課題を解決する為の手段】
前記技術的課題は次の通りの本発明によって達成できる。
即ち、本発明は、Z型フェライト、Y型フェライト又はW型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末100重量部に対し、炭酸バリウム粒子粉末又は炭酸ストロンチウム粒子粉末若しくは当該両炭酸塩粒子粉末0.3〜7重量部と二酸化ケイ素粒子粉末0.1〜5重量部、酸化ビスマス粒子粉末1〜20重量部及び酸化銅粒子粉末0.3〜7重量部とを配合したことを特徴とする軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末である。(発明1)
【0022】
また、本発明は、発明1の軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末と結合材料とを用いてシート状に成膜してなるグリーンシートである。(発明2)
【0023】
また、本発明は、発明1の軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を成型した後、800〜960℃の温度範囲で焼成してなる焼結密度が5.0×103kg/m3以上であって体積固有抵抗が1×106Ωm以上であり、400MHzにおける透磁率の虚数部が1以下であることを特徴とする軟磁性六方晶フェライト焼結体である。(発明3)
【0024】
また、本発明は、発明2のグリーンシートを積層した後、800〜960℃の温度範囲で焼成してなる焼結密度が5.0×103kg/m3以上であって体積固有抵抗が1×106Ωm以上であり、400MHzにおける透磁率の虚数部が1以下であることを特徴とする軟磁性六方晶フェライト焼結体である。(発明4)
【0025】
本発明の構成をより詳しく説明すれば、次の通りである。
【0026】
先ず、本発明に係る軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末について述べる。
本発明に係る軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末は、Z型フェライト、Y型フェライト又はW型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末に対し、炭酸バリウム粒子粉末又は炭酸ストロンチウム粒子粉末若しくは当該両炭酸塩粒子粉末と二酸化ケイ素粒子粉末、酸化ビスマス粒子粉末及び酸化銅粒子粉末とを配合したものである。
【0027】
Z型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末は、組成が酸化物換算で15〜25mol%のAO(AはBa、Sr又はBa−Sr)、5〜15mol%のMe1O(Me1はCoとNi、Zn,Cu,Mg,Mnから選ばれた1種又は2種以上の元素とからなり、Co量はMe1総量に対して少なくとも30mol%である。)及び65〜75mol%のFe23からなることが好ましく、より好ましくは、16〜22mol%のAO、8〜14mol%のMe1O及び67〜73mol%のFe23である。組成が上記範囲外である場合には、主相以外のY型フェライト及びW型フェライトの生成量が多くなり、得られる軟磁性六方晶フェライト焼結体本来の透磁率の周波数特性を実現できない。
【0028】
Y型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末は、組成が酸化物換算で10〜30mol%のAO(AはBa、Sr又はBa−Sr)、10〜30mol%のMe2O(Me2はNi、Zn、Cu、Mg、Mnから選ばれた1種又は2種以上の元素)及び55〜65mol%のFe23からなることが好ましく、より好ましくは、13〜27mol%のAO、13〜27mol%のMe2O及び57〜63mol%のFe23である。組成が上記範囲外である場合には、主相以外のZ型フェライト及びW型フェライトの生成量が多くなり、得られる軟磁性六方晶フェライト焼結体本来の透磁率の周波数特性を実現できない。
【0029】
W型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末は、組成が酸化物換算で5〜14mol%のAO(AはBa、Sr又はBa−Sr)、10〜30mol%のMe3O(Me3はCoとNi、Zn,Cu,Mg,Mnから選ばれた1種又は2種以上の元素とからなり、Co量はMe3総量に対して少なくとも30mol%である。)及び65〜80mol%のFe23からなることが好ましく、より好ましくは、7〜13mol%のAO、13〜27mol%のMe3O及び66〜77mol%のFe23である。組成が上記範囲外である場合には、主相以外のZ型フェライト及びY型フェライトの生成量が多くなり、得られる軟磁性六方晶フェライト焼結体本来の透磁率の周波数特性を実現できない。
【0030】
軟磁性六方晶フェライト粒子粉末の主相は、X線回折により決定する。即ち、Z型フェライト相の(1 0 16)面の反射強度、Y型フェライト相の(1 0 13)面の反射強度及びW型フェライト相の(1 1 6)面の反射強度のうち、最も強い反射強度を示す相を主相とする。
【0031】
Z型フェライト、Y型フェライト又はW型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末における副相の生成量は、上記反射面のうち最も強い反射強度を示す主相を1とした場合の相対強度で表され、相対強度が副相の合計で0.7以下が好ましい。相対強度が上記範囲を越えた場合には、主相本来の透磁率の周波数特性を実現できない。副相の生成量は、より好ましくは副相の合計で0.6以下である。その下限値は0である。
【0032】
Z型フェライト、Y型フェライト又はW型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末は、上記組成割合になるように配合した各元素の酸化物原料、炭酸塩原料、シュウ酸塩原料及び水酸化物原料等の原料粒子粉末の混合物を常法により、大気中において1100〜1300℃の温度範囲で1〜20時間仮焼成した後粉砕することによって得ることができる。Z型フェライト、Y型フェライト及びW型フェライトのそれぞれを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末を得る場合の最適な焼成温度は、それぞれ1250℃、1200℃及び1250℃付近である。
【0033】
本発明において配合される炭酸バリウム粒子粉末又は炭酸ストロンチウム粒子粉末は、平均粒子径が好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは0.5〜40μmであって、BET比表面積が好ましくは0.1〜40m2/g、より好ましくは0.1〜30m2/gである。
【0034】
炭酸バリウム等の配合量は、軟磁性六方晶フェライト粒子粉末100重量部に対して0.3〜7重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。配合量が該範囲外である場合は、目的とする焼結密度が5.0×103kg/m3以上の軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることが困難となり、機械的強度の点で不十分となる。
【0035】
本発明において配合される二酸化ケイ素粒子粉末は、平均粒子径が好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは1〜40μmである。
【0036】
二酸化ケイ素粒子粉末の配合量は、軟磁性六方晶フェライト粒子粉末100重量部に対し0.1〜5重量部、より好ましくは0.1〜4重量部である。0.1重量部未満の場合は、目的とする体積固有抵抗が1×106Ωm以上の軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることが困難である。また、本発明に係る軟磁性六方晶フェライト焼結体の400MHzにおける透磁率の虚数部は1を越え、数百MHz帯で磁気的損失が増加する為、その帯域の信号を利用することができない。配合量が5重量部を越える場合は、400MHzにおける透磁率の虚数部は1より小さくなるが、目的とする焼結密度が5.0×103kg/m3以上の軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることが困難となり、機械的強度の点で不十分となる。
【0037】
本発明において配合される酸化ビスマス粒子粉末は、平均粒子径が好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜20μmであって、BET比表面積が好ましくは0.1〜30m2/g、より好ましくは0.1〜20m2/gである。
【0038】
酸化ビスマス粒子粉末の配合量は、軟磁性六方晶フェライト粒子粉末100重量部に対し1〜20重量部、好ましくは2〜17重量部である。
1重量部未満の場合には、目的とする焼結密度が5.0×103kg/m3以上の軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることが困難となり、機械的強度の点で不十分となる。
20重量部を超える場合には、透磁率の実数部、虚数部共に小さくなり、インピーダンス素子、電波吸収体及びインダクター素子としての機能を示さなくなる。
【0039】
本発明において配合される酸化銅粒子粉末は、平均粒子径が好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.1〜20μmであって、BET比表面積が好ましくは0.1〜30m2/g、より好ましくは0.1〜20m2/gである。
【0040】
酸化銅粒子粉末の配合量は、軟磁性六方晶フェライト粒子粉末100重量部に対し0.3〜7重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
0.3重量部未満の場合には、目的とする焼結密度が5.0×103kg/m3以上の軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることが困難となり、機械的強度の点で不十分となる。
7重量部を超える場合には、透磁率の実数部、虚数部共に小さくなり、インピーダンス素子、電波吸収体及びインダクター素子としての機能を示さなくなる。更に、目的とする体積固有抵抗が1×106Ωm以上の軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることが困難になる。
【0041】
本発明における酸化ビスマス粒子粉末と酸化銅粒子粉末との配合割合は、酸化銅粒子粉末1重量部に対して酸化ビスマス粒子粉末1.5〜20重量部であ、好ましくは〜18重量部である。1.5重量部未満の場合には、目的とする体積固有抵抗が1×106Ωm以上の軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることが困難になる。20重量部を超える場合には、目的とする焼結密度が5.0×103kg/m3以上の軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることが困難になり、機械的強度の点で不十分となる。
【0042】
本発明に係る軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末は、平均粒子径が好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.1〜20μmであって、BET比表面積が好ましくは0.1〜40m2/g、より好ましくは0.5〜40m2/gである。磁気特性は、飽和磁化が好ましくは20〜60Am2/kg、より好ましくは25〜55Am2/kgであって、保磁力が好ましくは0.50〜50kA/m、より好ましくは1.0〜30kA/mである。
【0043】
上記平均粒子径及びBET比表面積の各特性が上記範囲外である場合は、後述するグリーンシート製造過程における軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末の塗料中への均一分散が困難となり、特性にバラツキがある焼結体となりやすい。
【0044】
上記飽和磁化及び保磁力の各磁気特性が上記範囲外である場合には、本発明の目的とする軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることが困難となる。
【0045】
次に、本発明に係る軟磁性六方晶フェライト焼結体について述べる。軟磁性六方晶フェライト焼結体は、用いたZ型フェライト、Y型フェライト又はW型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末の前記組成とほぼ同じである。組成が範囲外である場合には、副相の生成量が多くなり、主相本来の透磁率の周波数特性を実現できない
【0046】
本発明に係る軟磁性六方晶フェライト焼結体は、焼結密度が5.0×103kg/m3以上であって体積固有抵抗が1×106Ωm以上である。
【0047】
焼結密度が5.0×103kg/m3未満の場合は、機械的強度の点で不十分となる。機械的強度の点から焼結密度は高い方が良いが、その上限は5.3×103kg/m3である。体積固有抵抗が1×106Ωm未満の場合は、絶縁不良を引き起こす。絶縁不良を改善するためには体積固有抵抗は高い方が良い。
【0048】
本発明に係る軟磁性六方晶フェライト焼結体は、400MHzにおける透磁率の虚数部は1以下、好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.5以下であって、低周波から数百MHz帯までにおける透磁率の実数部が低下することなくほぼ一定に保持できる。
【0049】
本発明に係る軟磁性六方晶フェライト焼結体の透磁率の周波数特性について以下に具体的に説明する。後出発明の実施の形態で得られた軟磁性六方晶フェライト焼結体の透磁率の周波数特性を図1に示す。図1中、細線が透磁率の実数部(以下、μ′で示す。)であり、太線が虚数部(以下、μ″で示す。)である。μ′は低周波側では低下することなく一定の値を保持しているが、約450MHzから一旦増加した後約1.7GHzで減少を始め、約10GHzでほぼ1となる。μ″は低周波側では殆ど0であるが、約450MHzから増加を始め、共鳴周波数(fr=4.2GHz)で最大値を示した後高周波側では次第に減少していく。
【0050】
一方、従来から用いられている後出比較例9で得られた軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体の場合には、図2に示す通り、μ′が約15MHzから一旦増加した後約50MHz付近から減少し始め、数GHzでほぼ1となる。また、μ″は約20MHzから増加を始め、共鳴周波数(fr=約100MHz)で最大値を示した後高周波側では次第に減少していく。
【0051】
即ち、本発明に係る軟磁性六方晶フェライト焼結体のμ″のピークは、従来から用いられている軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体のそれより高周波側にずれていることが分かる。また、μ′が低下することなく一定の値を保持している周波数範囲が高周波側に伸びていることが分かる。
【0052】
ここで重要なのは磁気的損失に対応するμ″の周波数特性であって、これが大きい範囲においてインピーダンス素子がノイズを減衰させるという事実である。つまり、現在利用が進められようとしている数百MHz帯の信号を減衰させずに通過させる為には、その周波数帯のμ″をできるだけ小さくする必要があり、更に、その信号の高調波として生じる数GHz付近のノイズを減衰させる為には、数GHz付近の周波数帯でμ″が大きくなるように、即ち、共鳴周波数が数GHz付近になるように透磁率の周波数特性を調節する必要がある。
【0053】
本発明によれば、図1に示したように400MHzにおけるμ″を1以下、好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.5以下にすることができると共に共鳴周波数を数GHz以上にすることができ、更に共鳴周波数におけるμ″を0.3以上にすることができる。
【0054】
更に、ここで重要なのはインダクタンス成分に対応するμ′の周波数特性で
あって、インダクター素子が数百MHz帯で動作する為には、その周波数範囲でμ′がほぼ一定であり減少しないことが必要である。本発明によれば、図1に示したようにμ′が減少し始める周波数を数百MHz以上にすることができる。
【0055】
本発明においては、透磁率の虚数部の大きさの指標として、400MHz及び共鳴周波数における透磁率の虚数部(μ″)の値で示した。また、透磁率の実数部が低下することなく一定である周波数範囲の上限の指標として、透磁率の実数部(μ′)が減少し始める周波数で示した。従来の軟磁性六方晶フェライト焼結体及び軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体では400MHzにおけるμ″が1を越えており、数百MHz帯における磁気損失が大きいことから、これを用いたインピーダンス素子では数百MHz帯の信号を減衰させずに通過させることはできなかった。
【0056】
共鳴周波数は、好ましくは1GHz以上、更に好ましくは2GHz以上である。1GHz未満の場合は、数百MHz帯の透磁率の虚数部、即ち、磁気的損失が大きくなる為、数百MHz帯の信号を減衰させてしまう。
【0057】
共鳴周波数における透磁率の虚数部は、好ましくは0.3以上である。0.3未満の場合は、数GHz付近のノイズを十分に減数させることができない。
【0058】
透磁率の実数部が減少し始める周波数は、好ましくは1GHz以上である。1GHz未満の場合は、低周波から数百MHz帯まで透磁率の実数部を低下することなく一定にすることができない。
【0059】
本発明に係る軟磁性六方晶フェライト焼結体は、本発明に係る軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を金型を用いて0.3〜3×104t/m2の圧力で加圧する、所謂、粉末加圧成型法により得られた成型体又は本発明に係る軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を含有するグリーンシートを積層して得られた、所謂、グリーンシート法により得られた積層体を好ましくは800〜960℃、より好ましくは830〜930℃で1〜20時間、好ましくは1〜10時間焼成することによって得ることができる。成型方法としては、公知のいずれの方法をも使用することができるが、上記粉末加圧成型法や、グリーンシート法が好ましい。
【0060】
焼成温度が800℃未満の場合は、本発明の目的とする焼結密度が5.0×103kg/m3以上の軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることが困難となる。 また、積層チップ部品を製造する際に軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末と同時焼成される銀導体の融点は960℃であるので、焼成温度が960℃を超える場合には同時焼成が不可能になる。
【0061】
次に、本発明に係るグリーンシートについて述べる。グリーンシートとは積層チップ部品を製造する際の被焼成物となるもので、軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を結合材料、可塑剤及び溶剤等と混合することによって塗料とし、該塗料をドクターブレード式コーター等で数μmから数百μmの厚さに成膜した後乾燥してなるシートである。このグリーンシートをその表面に銀ペーストで配線を描きながら積層し、得られた積層体を焼成することで積層チップ部品を得ることができる。
【0062】
本発明に係るグリーンシートは、Z型フェライト、Y型フェライト又はW型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末100重量部と結合材料が好ましくは2〜20重量部、より好ましくは4〜15重量部と可塑剤が好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは2〜10重量部とからなる。また、成膜後の乾燥が不十分なことによって溶剤が残留していてもよい。
【0063】
結合材料の種類は、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル、ポリメタクリル酸エステル、エチルセルロース、アビエチン酸レジン等であり、ポリビニルブチラールが好ましい。
【0064】
結合材料が2重量部未満の場合は、グリーンシートが脆くなりやすい。強度の点からその上限値は20重量部で十分である。
【0065】
可塑剤の種類は、フタル酸ベンジルn−ブチル、ジブチルフタレート、ジメチルフタレート、ポリエチレングリコール、フタール酸エステル、ブチルステアレート、メチルアジテート等であり、フタル酸ベンジルn−ブチルが好ましい。
【0066】
可塑剤が0.5重量部未満の場合は、グリーンシートが固くなり、ひび割れを生じやすくなる。可塑剤が15重量部を越える場合は、グリーンシートが軟らかくなる。
【0067】
本発明に係るグリーンシートの製造にあたっては、Z型フェライト、Y型フェライト又はW型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末100重量部に対して、20〜150重量部の溶剤を使用する。より好ましくは30〜120重量部である。溶剤が上記範囲外である場合は、均一なグリーンシートが得られないので、得られる焼結体は、特性にバラツキがあるものとなりやすい。
【0068】
グリーンシートの製造に用いる溶剤の種類は、アセトン、エチルアルコール、ベンゼン、ブタノール、エタノール、メチルエチルケトン、トルエン、プロピルアルコール等であり、メチルエチルケトン、トルエンが好ましい。
【0069】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
尚、以下の発明の実施の形態並びに後出実施例及び比較例における軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(Sympatec GmbH製)で測定したx50の値で示した。
【0070】
BET比表面積はMonoSorb MS−II(湯浅アイオニックス(株)製)を用いてBET法により求めた。
【0071】
飽和磁化と保磁力は、振動試料型磁力計VSM−3S(東英工業(株)製)で測定し、印可磁場を10kOeとした時の値で示した。
【0072】
生成相の同定には、X線回折装置RAD−AII(理学電機(株)製)を用いた。
【0073】
焼結密度は、円柱状試料(高さ2mm×直径25mm)の外径寸法から求めた体積と重量から算出した。
【0074】
体積固有抵抗は、ハイ・レジスタンス・メーター4329A(アジレント・テクノロジー(株)製)を用いて測定した値と上記試料の外径寸法から算出した。
【0075】
透磁率の周波数特性は、サンプルホルダー((株)関東電子応用開発 製)に外径7mm内径3mmのリング状焼結体試料を挿入した後、ネットワークアナライザーHP8753C及びHP8720D(アジレント・テクノロジー(株)製)を用いてSパラメーターを測定し、これより算出した。
【0076】
〈軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末の製造〉
α−Fe23とCoCO3とBaCO3とを組成がBaO=18.6mol%、CoO=11.6mol%、Fe23=69.8mol%となるように秤量して、湿式アトライターで1時間混合した後、濾過、乾燥した。この混合原料粉末を大気中、1250℃で5時間仮焼成した。得られた軟磁性六方晶フェライトの主相はZ型であって、Z型フェライト相の(1 0 16)面のピーク強度1に対して、Y型フェライト相の(1 0 13)面のピーク強度は0.55、W型フェライト相の(1 1 6)面のピーク強度は0であった。この軟磁性六方晶フェライト100重量部に炭酸バリウム粒子粉末2.0重量部、二酸化ケイ素粒子粉末1.0重量部、酸化ビスマス粒子粉末8重量部及び酸化銅粒子粉末3重量部を添加した後、湿式ボールミルで微粉砕して軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を得た。得られた軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末は、平均粒子径が1.2μmであり、BET比表面積が6.2m2/g、飽和磁化が35.2Am2/kg、保磁力が14.7kA/mであった。
【0077】
〈グリーンシート及びこれを積層したグリーンシート積層体の製造〉
上記軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末100重量部に対して結合材料ポリビニルブチラール「エスレックB BL−S」(商品名、積水化学工業(株)製))7重量部と可塑剤フタル酸ベンジルn−ブチル(東京化成工業(株)製試薬)4.4重量部と溶剤として酢酸n−ブチル試薬特級(米山薬品工業(株)製)30重量部及びメチルエチルケトン(日本化成品(株)製)30重量部とを加えて、ボールミルで15時間混合して塗料を製造した。この塗料をドクターブレード式コーターを用いてPETフィルム上に塗布して塗膜を形成した後乾燥することにより膜厚100μmのグリーンシートを得た。これを縦5cm横5cmの大きさに切断して20枚を積層した後、0.5×104t/m2の圧力で加圧してグリーンシート積層体を得た。得られたグリーンシート積層体の厚みは1.2mmであった。
【0078】
〈軟磁性六方晶フェライト焼結体の製造〉
上記グリーンシート積層体を大気中900℃で3時間焼成して軟磁性六方晶フェライト焼結体を得た。得られた焼結体の密度は5.1×103kg/m3、体積固有抵抗は5×106Ωmであり、400MHzにおける透磁率の実数部は2.6であって透磁率の虚数部は0.05であった。
また、共鳴周波数は4.2GHz、その共鳴周波数における透磁率の虚数部は1.3、透磁率の実数部が減少し始める周波数は1.7GHzであった。
【0079】
【作用】
本発明において最も重要な点は、Z型フェライト、Y型フェライト又はW型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末と炭酸バリウム粒子粉末又は炭酸ストロンチウム粒子粉末若しくは当該両炭酸塩粒子粉末と二酸化ケイ素粒子粉末とを特定の割合で配合すると共に更に酸化ビスマス粒子粉末と酸化銅粒子粉末とを特定の割合で配合した軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を用いて軟磁性六方晶フェライト焼結体を得た場合には、5.0×103kg/m3以上の高い焼結密度と1×106Ωm以上の高い体積固有抵抗とを維持しながら、400MHzにおける透磁率の虚数部が1以下であって低周波から数百MHz帯まで透磁率の実数部が低下することなくほぼ一定である軟磁性六方晶フェライト焼結体を960℃以下の低い焼成温度で得ることができるという事実である。
【0080】
高い焼結密度と体積固有抵抗とを有する軟磁性六方晶フェライト焼結体を低い焼成温度で得ることができた理由について、本発明者は、焼成にあたってあらかじめ配合した特定量の炭酸塩、酸化ビスマス及び酸化銅が焼成時に結晶粒相互の焼結を促進して焼結密度を高めると共に、同様に焼成にあたってあらかじめ配合した特定量の二酸化ケイ素が焼成時に結晶粒界部分に選択的に析出して、絶縁層として機能したことにより体積固有抵抗値を高めることができたものと考えている。
【0081】
400MHzにおける透磁率の虚数部が1以下である軟磁性六方晶フェライト焼結体を得ることができた理由について、本発明者は、結晶粒界に選択的に析出した二酸化ケイ素が該焼結体の磁気回路を分断することで反磁界が生じ、これが共鳴現象を高周波側に移動させたことによるものと考えている。
【0082】
【実施例】
次に、実施例並びに比較例を挙げる。
実施例1〜4、6〜7、10〜12、14〜17 比較例1〜3、7〜10
軟磁性六方晶フェライト粒子粉末の組成、配合する炭酸バリウム粒子粉末、炭酸ストロンチウム粒子粉末、二酸化ケイ素粒子粉末、酸化ビスマス粒子粉末及び酸化銅粒子粉末の平均粒子径、BET比表面積及び配合量、軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を用いたグリーンシートの積層時の圧力、焼成温度及び焼成時間を種々変化させた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして軟磁性六方晶フェライト焼結体を製造した。この時の主要製造条件及び諸特性を表1乃至表4に示す。
なお、比較例9は、酸化ビスマス粒子粉末の添加量を0.5重量部とした以外は比較例7と同様にして得た焼結体である。この焼結体は、焼結密度が4.1×103kg/m3であって、体積固有抵抗値が1×106Ωmであった。そして、測定限度の20GHzまでにおける透磁率の実数部μ′はほぼ1であり、透磁率の虚数部μ″はほぼ0であった。また、比較例10は、公知の代表的な軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体である。
【0083】
比較例11
仮焼成後にZ型フェライト相の(1 0 16)面のピーク強度1に対してY型フェライト相の(1 0 13)面のピーク強度が約0.45となるようにα―Fe23とCoCO3とBaCO3とを秤量して、ステンレスボールミルポットとスチールボールを用いて16時間混合した後、濾過、乾燥した。得られた混合原料粉末を大気中、1250℃で2時間仮焼成した。得られた軟磁性六方晶フェライトの主相はZ型であって、Z型フェライト相の(1 0 16)面のピーク強度1に対して、Y型フェライト相の(1 0 13)面のピーク強度は0.46、W型フェライト相の(1 1 6)面のピーク強度は0であった。この軟磁性六方晶フェライトにBi23を5.00wt%、CuOを5.00wt%添加した後、ポリポットとZrO2ボールを用いて90時間粉砕して軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を得た。得られた軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末は、平均粒径が0.8μmであり、BET比表面積が13.8m2/g、飽和磁化が37.8Am2/kg、保磁力が12.1kA/mであった。得られた軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を用いて、発明の実施の形態と同様にしてグリーンシート積層体を製造し、該積層体を大気中910℃で2時間焼成して軟磁性六方晶フェライト焼結体を得た。得られた焼結体の密度は5.2×103kg/m3、体積固有抵抗は2×105Ωm、400MHzにおける透磁率の実数部は3.7であって透磁率の虚数部は0.21であった。また、共鳴周波数は1.6GHz、その共鳴周波数における透磁率の虚数部は1.6、透磁率の実数部が減少し始める周波数は0.69GHzであった。
【0084】
実施例5
前記発明の実施の形態と同様にして得られた軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を金型に充填した後、1×104t/m2の圧力で加圧して直径30mm、厚さ2.5mmの円盤状試料を作成した。上記円盤状試料を大気中900℃で3時間焼成して軟磁性六方晶フェライト焼結体を得た。得られた焼結体は、焼結密度が5.1×103kg/m3、体積固有抵抗は7×106Ωmであり、400MHzにおける透磁率の実数部は2.1であって透磁率の虚数部は0.03であった。
また、共鳴周波数は5.4GHz、その共鳴周波数における透磁率の虚数部は1.0、透磁率の実数部が減少し始める周波数は2.0GHzであった。
【0085】
実施例8、9、13 比較例4〜6
軟磁性六方晶フェライト粒子粉末の組成、配合する炭酸バリウム粒子粉末、炭酸ストロンチウム粒子粉末、二酸化ケイ素粒子粉末、酸化ビスマス粒子粉末及び酸化銅粒子粉末の平均粒子径、BET比表面積及び配合量、成型時の圧力、本焼成の温度及び時間を種々変化させた以外は、上記実施例5と同様にして、軟磁性六方晶フェライト焼結体を得た。このときの主要製造条件及び諸特性を表1乃至表4に示す。
【0086】
【表1】
Figure 0004045410
【0087】
【表2】
Figure 0004045410
【0088】
【表3】
Figure 0004045410
【0089】
【表4】
Figure 0004045410
【0090】
【発明の効果】
本発明に係る軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を用いた場合には、高い焼結密度と体積固有抵抗とを有し、且つ、数百MHz帯での透磁率の虚数部が十分小さく、数GHz付近の周波数において透磁率の虚数部が大きい周波数特性を有すると共に低周波から数百MHz帯までにおける透磁率の実数部が低下することなくほぼ一定であるような周波数特性を示す軟磁性六方晶フェライト焼結体を960℃以下の低い焼成温度で工業的、経済的に有利に得ることができるので、数GHz付近のノイズを減衰させるインピーダンス素子や電磁波を吸収する電波吸収体用の材料として、また、数百MHz帯の周波数を信号として使用するインダクター素子等として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態で得られた軟磁性六方晶フェライト焼結体の透磁率の周波数特性である。
【図2】比較例10で得られた軟磁性立方晶スピネル型フェライト焼結体の透磁率の周波数特性である。

Claims (4)

  1. Z型フェライト、Y型フェライト又はW型フェライトを主相とする軟磁性六方晶フェライト粒子粉末100重量部に対し、炭酸バリウム粒子粉末又は炭酸ストロンチウム粒子粉末若しくは当該両炭酸塩粒子粉末0.3〜7重量部と二酸化ケイ素粒子粉末0.1〜5重量部、酸化ビスマス粒子粉末1〜20重量部及び酸化銅粒子粉末0.3〜7重量部とを配合したことを特徴とする軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末。
  2. 請求項1記載の軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末と結合材料とを用いてシート状に成膜してなるグリーンシート。
  3. 請求項1記載の軟磁性六方晶フェライト複合粒子粉末を成型した後、800〜960℃の温度範囲で焼成してなる焼結密度が5.0×103kg/m3以上であって体積固有抵抗が1×106Ωm以上であり、400MHzにおける透磁率の虚数部が1以下であることを特徴とする軟磁性六方晶フェライト焼結体。
  4. 請求項2記載のグリーンシートを積層した後、800〜960℃の温度範囲で焼成してなる焼結密度が5.0×103kg/m3以上であって体積固有抵抗が1×106Ωm以上であり、400MHzにおける透磁率の虚数部が1以下であることを特徴とする軟磁性六方晶フェライト焼結体。
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