JP2015117174A - フェライトプレート、アンテナ素子用部材、およびアンテナ素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】高周波数帯(たとえば13.56MHz)において複素透磁率の実部μ’が高く、かつ虚部μ”が低い、該フェライト組成物からなるフェライトプレートと、該フェライトプレートからなるアンテナ素子用部材と、これらのいずれかを備えたアンテナ素子とを、提供すること。【解決手段】分割前の焼結体の結晶粒径が1μm〜20μmであるNiCuZnフェライトで、主成分が、酸化鉄をFe2O3換算で43.0モル%〜50.0モル%、酸化銅をCuO換算で2.0モル%〜20.0モル%、酸化亜鉛をZnO換算で16.0モル%〜28.0モル%を含有し、残部が酸化ニッケルで構成されており、前記主成分に対して、不可避不純物を除き、副成分として、酸化チタンをTiO2換算で0.2質量%〜3.0質量%、酸化コバルトをCoO換算で0.25質量%〜3.0質量%含有することを特徴とするフェライトプレート。【選択図】図1
Description
本発明は、アンテナ素子に好適なフェライトプレートと、該フェライトプレートを備えたアンテナ素子に関する。
13.56MHz帯RFID(Radio Frequency IDentification)システム、或いはNFC(Near Field Communication)システムは、ICカードやICタグと、リーダ/ライタとの間で、非接触での近距離無線通信を行う技術である。このようなICカードやICタグは、ICチップおよびアンテナコイルを備えており、リーダ/ライタにもアンテナコイルが備えられている。
ICカード等をリーダ/ライタに近づけることで、これらのアンテナコイルの間で生じる電磁誘導により磁束が発生する。この磁束をICカード等とリーダ/ライタとの間でやりとりすることにより、電力の供給およびICチップに書き込まれた情報のやりとりが可能となる。
このとき、アンテナコイルの背面等に通信回路などの金属が筐体内に一体的に配置されていると、発生した磁束により金属に渦電流が生じ、この渦電流が、発生した磁束とは逆向きの磁界を発生させてしまう。その結果、発生した磁束が弱まり通信距離が短くなる、あるいは通信ができなくなるという不具合が生じる。また、渦電流が生じることにより、熱的な損失も発生する。
このような問題を解決するために、アンテナコイルと金属との間に透磁率の高い材料から構成される磁性体を配置することが提案されている。一般的に透磁率μは、複素透磁率μ=μ’−jμ”として表現される(jは虚数単位)。複素透磁率の実部μ’は通常の透磁率成分を、虚部μ”は損失を表す材料定数である。これらの材料定数が、近距離無線通信における通信距離を支配する因子となる。通信距離を向上させるためには低μ”で熱的な損失を抑えつつ、高いμ’で磁束を収束させることが重要となる。
NiZn系のフェライト材料は、高い抵抗率を有することから高周波帯域での損失を抑制でき、高周波用の磁性体材料として用いられることが多い。特にCoOを含有させることで高周波特性を改善するための各種工夫がなされている。例えば特許文献1ではCoOを含有させることでアンテナモジュール用磁芯部材としての特性改善がなされている。また特許文献2では、Coの分散性向上のため、予めスピネル化させたコバルトフェライト(CoFe2O4)の添加が開示されている。特許文献3ではCo2O3・Fe2O3として添加することでCoOの選択的反応を制御している。
従来、電子部品の電磁波を遮断するために、その外表面に非常に薄い磁性シートが貼り付けられている。特許文献4で記載される薄い磁性シートは、フェライトプレートを特定の大きさの多数個の小片に分割した構造であることによって、柔軟性を有している。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、高周波数帯(たとえば13.56MHz)においてフェライトプレート分割後であっても、複素透磁率の実部μ’が高く、かつ虚部が低いフェライトプレート、該フェライトプレートからなるアンテナ素子用部材、または該フェライトプレートを有するアンテナ素子とを、提供することを目的とする。
分割前の焼結体の結晶粒径が1μm〜20μmであるNiCuZnフェライトで、主成分が、酸化鉄をFe2O3換算で43.0モル%〜50.0モル%、酸化銅をCuO換算で2.0モル%〜20.0モル%、酸化亜鉛をZnO換算で16.0モル%〜28.0モル%を含有し、残部が酸化ニッケルで構成されており、前記主成分に対して、不可避不純物を除き、副成分として、酸化チタンをTiO2換算で0.2質量%〜3.0質量%、酸化コバルトをCoO換算で0.25質量%〜3.0質量%含有することにより、分割後も高いμ’を維持しながらμ”の低減が可能なフェライトプレートが得られる
また、本発明に関わるアンテナ素子用部材はフェライトプレートの一方の表面に粘着材層、他方の表面に保護層が設けられており、この2層によって保持された状態でフェライトプレートが多数個の面状小片に分割されている。こうすることにより、非接触通信において長い通信距離を有する薄いアンテナ素子用部材として使用することができる。
また、本発明に関わるアンテナ素子はフェライトプレート、或いはアンテナ素子用部材とアンテナコイルから構成されている。こうすることにより、非接触通信において長い通信距離を有する薄いアンテナ素子として使用することができる。
本発明によれば、分割前の結晶粒径を上記の範囲にすることにより、高周波帯域(特に13.56MHz近傍)において、分割後であっても高いμ’を維持しながらμ”の低減が可能なフェライトプレートが得られる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るアンテナ素子1は、粘着材層18と、ループ形状のアンテナコイル14と、保護層16と、フェライトプレート12とを有している。なお、図1では、外部との接続端子、通信処理回路等の図示を省略している。
分割前のフェライトプレートの結晶粒径は1μm〜20μm、好ましくは2μm〜10μmである。分割前の結晶粒径が1μm未満では、高周波帯域のみならず低周波帯域においても、分割前の複素透磁率の実部μ’が低下する傾向がある。分割により、フェライトプレート12に空隙19が発生するため、さらに複素透磁率の実部μ’が低下する。分割前の結晶粒径が2μmを超えると、分割前の複素透磁率の実部μ’が安定しているため、より好ましい。一方、分割前の結晶粒径が20μmを超えると、フェライトプレート分割による、フェライトプレート12に空隙19が発生するだけではなく、分割される結晶粒子の割合が増加するため、磁壁移動の寄与が減少し、複素透磁率の実部μ’が低下する傾向がある。分割前の結晶粒径が10μm以下では、分割される結晶粒子の割合が少なく、分割後の複素透磁率の実部μ’が安定しているため、より好ましい。分割前の結晶粒径が1μm未満、若しくは20μmを超えるフェライトプレートをアンテナ素子1として使用する場合、いずれも分割後のフェライトプレート12の複素透磁率の実部μ’が低下しているため、通信距離の低下を招く要因となる。
主成分100モル%中、酸化鉄の含有量は、Fe2O3換算で、43.0モル%〜50.0モル%が好ましい。分割前の結晶粒径が1μm〜20μmの範囲内であっても、酸化鉄の含有量が43.0モル%未満であった場合、高周波帯域のみならず低周波帯域においても複素透磁率の実部μ’が低下する傾向がある。一方、酸化鉄の含有量が50.0モル%より多かった場合、複素透磁率の共鳴周波数が低周波側へシフトし、その結果、高周波帯域の複素透磁率の虚部μ”が増大する傾向がある。いずれもアンテナ素子1として使用する場合、通信距離の低下を招く要因となる。
主成分100モル%中、酸化銅の含有量は、CuO換算で、2.0モル%〜20.0モル%が好ましい。分割前の結晶粒径が1μm〜20μmの範囲内であっても、酸化銅の含有量が2.0モル%未満であった場合、高周波帯域のみならず低周波帯域においても複素透磁率の実部μ’が低くなる傾向がある。一方、酸化銅の含有量が20.0モル%より多かった場合、複素透磁率の共鳴周波数が低周波側へシフトし、その結果、高周波帯域の複素透磁率の虚部μ”が増大する傾向がある。いずれもアンテナ素子1として使用する場合、通信距離の低下を招く要因となる。
主成分100モル%中、酸化亜鉛の含有量は、ZnO換算で、16.0モル%〜28.0モル%が好ましい。分割前の結晶粒径が1μm〜20μmの範囲内であっても、酸化亜鉛の含有量が16.0モル%未満であった場合、高周波帯域のみならず低周波帯域においても複素透磁率の実部μ’が低下する傾向がある。一方、酸化銅の含有量が28.0モル%より多かった場合、複素透磁率の共鳴周波数が低周波側へシフトし、その結果、高周波帯域の複素透磁率の虚部μ”が増大する傾向がある。いずれもアンテナ素子1として使用する場合、通信距離の低下を招く要因となる。
主成分の残部は、酸化ニッケルのみから構成されていてもよいし、不可避的不純物である酸化マンガンなどを含有していてもよい。
本実施形態に係るフェライト組成物は、上記の主成分に加え、副成分として、酸化チタン、および酸化コバルトを含有している。
酸化チタンの含有量は、主成分に対して、TiO2換算で、0.2質量%〜3.0質量%が好ましい。分割前の結晶粒径が1μm〜20μmの範囲内であっても、酸化チタンの含有量が0.2質量%未満であった場合、高周波帯域の複素透磁率の実部μ’が低くなる傾向にある。一方、酸化チタンの含有量が3.0質量%より多かった場合、複素透磁率の共鳴周波数が著しく低周波側へシフトし、その結果、高周波帯域の複素透磁率の虚部μ”が増大する傾向がある。いずれもアンテナ素子1として使用する場合、通信距離の低下を招く要因となる。
酸化コバルトの含有量は、主成分に対して、CoO換算で、0.25質量%〜3.0質量%が好ましい。分割前の結晶粒径が1μm〜20μmの範囲内であっても、酸化コバルトの含有量が0.25質量%未満であった場合、複素透磁率の共鳴周波数が低周波側に存在し、その結果、高周波帯域の複素透磁率の虚部μ”が急激に増大する傾向がある。一方、酸化チタンの含有量が3.0質量%より多かった場合、高周波帯域のみならず低周波帯域においても複素透磁率の実部μ’が低くなる傾向がある。いずれもアンテナ素子1として使用する場合、通信距離の低下を招く要因となる。
なお、酸化チタンが単独で含有されている場合には上記の効果は十分に得られない。すなわち、上記の効果は、酸化チタンおよび酸化コバルトの2種が含有され、さらに酸化チタンと酸化コバルトの含有量が本発明の範囲内に制御された場合に初めて得られる複合的な効果である。
また、本実施形態に係るフェライト組成物には、マンガン以外の不可避的不純物元素の酸化物が、粒径、特性に影響が出ない程度に含まれ得る。
具体的には、B、C、Si、S、Cl、As、Se、Br、Te、Iや、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ga、Ge、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Pb、Bi等の典型金属元素や、Sc、V、Cr、Y、Nb、Mo、Pd、Ag、Hf、Ta等の遷移金属元素が挙げられる。
次に、本実施形態に係るフェライト組成物から構成されるフェライトプレートの製造方法の一例を説明する。
まず、出発原料(主成分の原料および副成分の原料)を、所定の組成比となるように秤量して混合し、原料混合物を得る。混合する方法としては、たとえば、ボールミルを用いて行う湿式混合や、乾式ミキサーを用いて行う乾式混合が挙げられる。なお、平均粒径が0.1μm〜3μmの出発原料を用いることが好ましい。
主成分の原料としては、酸化鉄(α−Fe2O3 )、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)、あるいはこれらを含む複合酸化物などを用いることができる。さらに、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物等を用いることができる。焼成により上記した酸化物になるものとしては、たとえば、金属単体、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、有機金属化合物等が挙げられる。
副成分の原料としては、酸化チタン(TiO2)、および酸化コバルト(Co3O4)を用いることができる。酸化コバルトについては、CoO、コバルトフェライト(CoFe2O4)でもよいが、Co3O4は、保管や取り扱いが容易であること、空気中でも価数が安定していること、量産性に優れていることから酸化コバルトの原料として好ましい。
次に、原料混合物の仮焼きを行い、仮焼き材料を得る。仮焼きは、原料の熱分解、成分の均質化、フェライトの生成、焼結による超微粉の消失と適度の粒子サイズへの粒成長を促し、原料混合物を後工程に適した形態に変換するために行われる。こうした仮焼きは、好ましくは800℃〜1100℃の温度で、通常1時間〜3時間程度行う。仮焼きは、大気(空気)中で行ってもよく、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気や純酸素雰囲気で行っても良い。なお、主成分の原料と副成分の原料との混合は、仮焼きの前に行なってもよく、仮焼き後に行なってもよい。
次に、仮焼き材料の粉砕を行い、粉砕材料を得る。粉砕は、仮焼き材料の凝集をくずして適度の焼結性を有する粉体とするために行われる。仮焼き材料が大きい塊を形成しているときには、粗粉砕を行ってからボールミルやアトライターなどを用いて湿式粉砕を行う。湿式粉砕は、粉砕材料の平均粒径が、好ましくは1μm〜2μm程度となるまで行う。
得られた粉砕材料を用いて、本実施形態に係るフェライトプレートを製造する。該フェライトプレートを製造する方法については制限されないが、以下では、シート法を用いる。
まず、得られた粉砕材料を、溶媒、バインダ、分散剤、可塑剤等の添加剤とともにスラリー化し、ペーストを作製する。そして、このペーストを用いて50μm〜350μmの厚みを有するグリーンシートを形成する。なお、得られたグリーンシートを複数枚積層してもよい。次いで、形成されたグリーンシートを所定の形状に加工し、脱バインダ工程、焼成工程を経て、本実施形態に係る30μm〜300μmの厚みを有するフェライトプレート12が得られる。焼成は、好ましくは900℃〜1300℃の温度で、通常2時間〜5時間程度行う。また、焼成は、大気(空気)中で行ってもよく、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気で行っても良い。このようにしてフェライトプレート12は得られる。
結晶粒径は、酸化銅(CuO)の配合量、および焼成温度により決定する。酸化銅(CuO)の混合量が多く、焼成温度を高いほど、結晶粒径が大きくなる。酸化銅(CuO)の混合量を増やし、焼成温度を低くする、若しくは酸化銅(CuO)の混合量を減らし、焼成温度を高くするなどの、結晶粒径の制御が行なわれる。
上述した実施形態では、フェライトプレートをシート法により製造したが、例えば、フェライト粉末とバインダ樹脂を混合した後、粉末圧縮成形法、射出成形法、カレンダー法、押し出し法等の公知の方法により製造してもよい。
図2に示すように、図1に示した粘着材層18、保護相16によって保持され多数個の面状小片に分割されたアンテナ素子用部材20の部分断面図A―A’である。前述で得られたフェライトプレート12の片面(一方の面)に粘着材層18、例えば、両面粘着テープを設ける。そして、粘着材層18が形成されている面と反対側の表面(他方の表面)には、小片に分割されたフェライトプレート12の欠損及び脱落を防ぐための保護層16を設ける。保護層16の形成は、保護層16を構成する樹脂のフイルムまたはシートを、必要により接着剤を介してフェライトプレート12の表面に接着する、または、保護層16を構成する樹脂を含有する塗料をフェライトプレート12の表面に塗布することにより行う。フェライトプレート12の両面をこの2層(保護層16と粘着材層18)で保持した状態にして、GAP量:150μmに調整した圧延装置のローラーに対し、0度方向と90度方向に1回ずつ通すことにより、フェライトプレート12が格子状に多数個の面状小片に分割され、空隙19が生ずる。このようにして本実施形態に関わる、屈曲性および柔軟性を持つアンテナ素子用部材20が得られる。
次いで、得られたアンテナ素子用部材20の粘着材層18の面に対し、非接触通信用のアンテナコイル14を張り付ける。アンテナコイル14は、中央に開口部を備えたループ形状のループアンテナ構造となっており、ループ形状は円形または略矩形または多角形のいずれであってもよい。さらに、アンテナコイル14の材質としては、導電性の金属製線材、金属製板材、金属製箔材、または金属製筒材等から適宜選択することができ、例えば金属線、金属箔、導電体ペースト、めっき転写、スパッタ、蒸着、もしくはスクリーン印刷によりアンテナコイル14を形成することができる。このようにして本実施形態に係るアンテナ素子1が得られる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
まず、主成分の原料として、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、を、副成分の原料として、TiO2およびCo3O4を準備し、表1に記載の所定の配合となるように秤取し、これに500mlのイオン交換水を溶媒として加えてボールミルにて16時間混合した。
得られた原料混合物を加熱炉を用いて最高温度800℃で2時間仮焼した後、これを炉冷し、仮焼き原料粉を30メッシュのふるいで解砕した。その後、再び500mlのイオン交換水を溶媒として加え、ボールミルにて8時間微粉砕を行った。
得られた粉砕材料のフェライト粉末100質量%に、アジビン酸ジオクチル3.5質量%、ブチラール樹脂8質量%、および溶媒としてキシレンとイソブチルアルコールの混合溶液(キシレン:イソブチルアルコール=6:4(質量比))72質量%をボールミルで混合、溶解、分散して、混合物(ペースト) を得た。油ロータリー真空ポンプで減圧脱泡した後、ポリエチレンテレフタレート(PET)フイルムに、得られた混合物をドクターブレードで一定の厚さに塗布し、100℃熱風で30分間乾燥して、厚さ120μmのグリーンシートを得た。
次いで、得られたグリーンシートを昇温速度1℃/分で室温から500℃まで昇温し、500℃で3時間保持して脱脂した後、800℃〜1400℃に加熱して2時間焼結を行い、厚さ約100μmのフェライトプレートを得た。
得られたフェライトプレートの一方の表面に粘着材層として市販のアクリル系両面テープ(30μm)を、他方の表面に保護層として、市販のアクリル系粘着剤を塗布した片面粘着シート(30μm)を貼って、粘着材層と保護層によって保持された状態のフェライトプレートをGAP量:150μmに調整した圧延装置のローラーに対し、0度方向と90度方向に1回ずつ通すことにより、フェライトプレートが格子状に多数個の面状小片に分割されたアンテナ素子用部材を得た。
アンテナ素子用部材の片面粘着シートを剥離し、分割されたフェライトプレートの形状とサイズを確認したところ、2mm〜3mmの格子状に分割されていた。
<結晶粒径測定>
SEM(走査型電子顕微鏡;Scanning Electron Microscope)を用いて、焼成した分割前のフェライトプレート表面(500倍または1000倍)を撮影した。観察したSEM像を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Mountech社製、商品名「Mac View」 型式「Ver.4.0」)を用いて、結晶粒子200個〜250個の結晶粒径を測定した。結晶粒径はHeywood径をπ/2倍したものを使用した。
SEM(走査型電子顕微鏡;Scanning Electron Microscope)を用いて、焼成した分割前のフェライトプレート表面(500倍または1000倍)を撮影した。観察したSEM像を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Mountech社製、商品名「Mac View」 型式「Ver.4.0」)を用いて、結晶粒子200個〜250個の結晶粒径を測定した。結晶粒径はHeywood径をπ/2倍したものを使用した。
<磁気特性評価>
複素透磁率は、多数個の面状小片に分割された厚み160μmのアンテナ素子用部材(フェライトプレートの厚みは100μm)から、外径18mm、内径10mmのピナクル金型を用いてトロイダル形状に打ち抜き、打ち抜いたアンテナ素子用部材6枚を互いに張り合わせたものを用い、インピーダンスアナライザ(Agilent Technologies社製、商品名「インピーダンス・マテリアルアナライザ」 型式「E4991A」)を用いて、測定温度25℃で評価した。
複素透磁率は、多数個の面状小片に分割された厚み160μmのアンテナ素子用部材(フェライトプレートの厚みは100μm)から、外径18mm、内径10mmのピナクル金型を用いてトロイダル形状に打ち抜き、打ち抜いたアンテナ素子用部材6枚を互いに張り合わせたものを用い、インピーダンスアナライザ(Agilent Technologies社製、商品名「インピーダンス・マテリアルアナライザ」 型式「E4991A」)を用いて、測定温度25℃で評価した。
<アンテナ通信距離>
多数個の面状小片に分割された厚み160μmのアンテナ素子用部材(フェライトプレートの厚みは100μm)から、ピナクル金型により、50mm×40mmの寸法を有する長方形を打ち抜いて通信距離測定用の試料とした。アンテナ素子用部材の保護層を有する面に筐体セル、電池パックなどの金属を模した銅版を配置し、そして粘着材層を有する面にNFCシステム用のアンテナコイル(ループアンテナ構造、パターン:略矩形)を貼り付けて測定用のタグとした。タグとNFC用リーダーライター(ID Tech社製 商品名「コンタクトレスリーダー」 型式「ViVOpay5000」)との間でアンテナモジュールを構成して、13.56MHzの共振周波数における25℃の通信距離を測定した。
多数個の面状小片に分割された厚み160μmのアンテナ素子用部材(フェライトプレートの厚みは100μm)から、ピナクル金型により、50mm×40mmの寸法を有する長方形を打ち抜いて通信距離測定用の試料とした。アンテナ素子用部材の保護層を有する面に筐体セル、電池パックなどの金属を模した銅版を配置し、そして粘着材層を有する面にNFCシステム用のアンテナコイル(ループアンテナ構造、パターン:略矩形)を貼り付けて測定用のタグとした。タグとNFC用リーダーライター(ID Tech社製 商品名「コンタクトレスリーダー」 型式「ViVOpay5000」)との間でアンテナモジュールを構成して、13.56MHzの共振周波数における25℃の通信距離を測定した。
得られた測定評価結果を表1に示す。参考例としてIBF10(シリーズ名 TDK社製)を記載した。本実施例では、通信距離がIBF10より良好であることが望ましい。
表1より分割前の結晶粒径が1μm〜20μmの範囲内である場合(実施例1〜12)、フェライトプレート分割後も高いμ’を維持しつつ低μ”化可能となり、良好な通信距離が得られることが確認された。分割前の結晶粒径が1μm未満では、高周波帯域のみならず低周波帯域においても、分割前の複素透磁率の実部μ’が低下する傾向がある。分割により、フェライトプレートに空隙が発生するため、さらに複素透磁率の実部μ’が低下する。一方、分割前の結晶粒径が20μmを超えると、フェライトプレート分割による、フェライトプレートの空隙発生だけではなく、分割される結晶粒子の割合が増加するため、磁壁移動の寄与が減少し、複素透磁率の実部μ’が低下する傾向がある。いずれもアンテナ素子として使用する場合、フェライトプレートの複素透磁率の実部μ’が低下しているため、通信距離の低下を招く要因となる。
またFe2O3、CuO、ZnO、TiO2及びCoOいずれかの含有量が本発明の範囲外となる場合(比較例3〜12)、分割前の結晶粒径が1μm〜20μmの範囲内であってもμ’の低下、或いはμ”の増大を招き、通信距離の低下が確認された。
これらの結果より、本発明による実施例の分割後のフェライトプレートは、比較例及び参考例のものと比較して、高μ’化、低μ”化で優位性が示され、アンテナ素子用として適用することで通信距離が格別に向上することが確認された。
以上のように、本発明に係るフェライトプレートを、アンテナ素子に適用することで、通信距離を飛躍的に向上させることが確認できた。また一定の通信距離を維持したまま、アンテナの薄型化も可能になることから、省スペース化という意味でも有用である。
1 ・・・アンテナ素子
12・・・フェライトプレート
14・・・アンテナコイル
16・・・保護層
18・・・粘着材層
19・・・空隙
20・・・アンテナ素子用部材
12・・・フェライトプレート
14・・・アンテナコイル
16・・・保護層
18・・・粘着材層
19・・・空隙
20・・・アンテナ素子用部材
Claims (4)
- 分割前の焼結体の結晶粒径が1μm〜20μmであるNiCuZnフェライトで、主成分が、酸化鉄をFe2O3換算で43.0モル%〜50.0モル%、酸化銅をCuO換算で2.0モル%〜20.0モル%、酸化亜鉛をZnO換算で16.0モル%〜28.0モル%を含有し、残部が酸化ニッケルで構成されており、前記主成分100質量部に対して、不可避不純物を除き、副成分として、酸化チタンをTiO2換算で0.2質量%〜3.0質量%、酸化コバルトをCoO換算で0.25質量%〜3.0質量%含有することを特徴とするフェライトプレート。
- フェライトプレートの一方の表面に粘着材層、他方の表面に保護層が設けられており、この2層によって保持された状態で、フェライトプレートが多数個の面状小片に分割された、請求項1に記載のフェライトプレートを用いたアンテナ素子用部材。
- 請求項1に記載のフェライトプレーを有するアンテナ素子。
- 請求項2に記載されるアンテナ素子用部材を有するアンテナ素子。
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