以下、本発明の一実施の形態に係るチェーンブロック10について、図面に基づいて説明する。
<チェーンブロックの構成について>
図1〜図5等に示すように、チェーンブロック10は、第1フレーム11と、第2フレーム12と、ギヤケース13と、ホイルカバー14と、ロードシーブ中空軸20と、減速機構30とを備えていて、これらがステイボルトSB(固着具に対応)およびナットNを介して固定されている。そして、これら第1フレーム11と第2フレーム12の間、第1フレーム11とギヤケース13との間、および第2フレーム12とホイルカバー14との間に、各部材が取り付けられているが、一部の部材はこれらの間から突出している。以下、各部材等について説明する。
第1フレーム11と第2フレーム12との間には、ロードシーブ中空軸20の一部、上フック40、ガイドローラ42、留め金具43、ストリッパ44等が位置している。図4、図5に示すように、ロードシーブ中空軸20は、第1フレーム11および第2フレーム12のそれぞれの挿通孔11a、12aに嵌め込まれるボールベアリング等の軸受B1,B2を介して、第1フレーム11および第2フレーム12に支持される。すなわち、ロードシーブ中空軸20のうち軸受嵌合部21a,21bの外周には軸受B1,B2が位置し、さらに軸受B1,B2が挿通孔11a,12aに位置する。それによって、ロードシーブ中空軸20が第1フレーム11および第2フレーム12に支持される。なお、ロードシーブ中空軸20は、ロードシーブ部材に対応する。
図6および図9に示すように、第1フレーム11は、円形状の輪郭を描く円形状部110と共に、この円形状部110から突出するフレーム突出部111とを有している。フレーム突出部111は、上方側(Z1側)に2つ、下方側(Z2側)に1つ、合計3つ設けられている。
このフレーム突出部111は、後述するように、チェーンブロック10の転がりを防止するための部分であり、転動規制部として機能する部分である。すなわち、チェーンブロック10が第1フレーム11と第2フレーム12とが地面に接触するような立った姿勢(以下、このような姿勢を、起立姿勢とする。)のときに、ロードチェーンC1を介してチェーンブロック10が引き摺られる場合を考える。この場合、ロードチェーンC1を介しての引っ張り力によって、チェーンブロック10は転がろうとする。しかし、本実施の形態のように、フレーム突出部111が存在する場合には、そのような転がりを防止され、しかもフレーム突出部111が地面に突っかかった状態のまま、ロードチェーンC1が引き摺られる。
なお、本実施の形態では、3つのフレーム突出部111の側縁の直線部分を結ぶと、二等辺三角形を構成するように設けられている。しかしながら、チェーンブロック10が引き摺られたときに転がりが防止され、さらには地面に突っかかった状態でチェーンブロック10が引き摺られるものであれば、フレーム突出部111は、円形状部110からどのように突出していても良い。また、本実施の形態では、チェーンブロック10が置かれる部位(設置部位)を地面としているが、地面以外の設置部位(床など)も、地面に含まれるものとしても良い。
また、それぞれのフレーム突出部111には、ステイボルトSBを挿通させるための挿通孔112が設けられている。そして、合計3つの挿通孔112を結ぶと、二等辺三角形を構成するように設けられているが、正三角形または略正三角形を構成するように設けられていても良い。また、合計3つの挿通孔112を結んだ場合に、二等辺三角形状以外の三角形状を構成するように設けられていても良い。
図6および図9に示すように、上述のフレーム突出部111のうち、上方側(Z1側)に位置する一対のフレーム突出部111aは、Y方向に沿って配置されている。そして、一対のフレーム突出部111aの外周縁部の下方側(Z2側)の部位と、円形状部の外周縁部とにより、凹部113が構成されている。凹部113は、円形状部110からフレーム突出部111aの下方側(Z2側)の側辺の間において、第1フレーム11の幅寸法を小さくする部分となっている。そのため、一対の凹部113の双方に別々の指等を位置させる等により、チェーンブロック10を把持することが可能となっている。すなわち、チェーンブロック10は、上フック40以外でも、凹部113によって把持または保持することが可能となっている。なお、指に代えて、別途の把持具や保持具を一対の凹部113のそれぞれに位置させて、チェーンブロック10を持ち運び、保管または梱包等のために、把持または保持することも可能である。
また、チェーンブロック10が起立姿勢の状態で引き摺られる場合、凹部113は地面に接触しない。そのため、凹部113は、円形状部110のうち地面に接触する部分と、フレーム突出部111のうち地面に接触する部分との距離を離す機能を有している。このように、円形状部110側とフレーム突出部111側とで、離れた位置で地面に接触することにより、起立姿勢でチェーンブロック10を引き摺る際に、チェーンブロック10が転がり難いものとなっている。
なお、下方側(Z2側)に存在するフレーム突出部111は、必要に応じてフレーム突出部111bと称呼する。このフレーム突出部111bのZ2側の端面は、Y軸と平行な平坦部111b1となっており、その平坦部111b1の存在により、チェーンブロック10は、倒れずに自立可能となっている。それにより、チェーンブロック10の持ち運び、保管または梱包等が容易となっている。
また、フレーム突出部111bのY方向の両側にも、凹部113が設けられている。この凹部113の存在により、円形状部110のうち地面に接触する部分と、フレーム突出部111bのうち地面に接触する部分との距離が離されている。それにより、起立姿勢でチェーンブロック10を引き摺る際に、チェーンブロック10が転がり難いものとなっている。以下の説明では、必要に応じて、フレーム突出部111aに隣接する凹部113を、凹部113aと称呼し、フレーム突出部111bの両側の凹部113を凹部113bと称呼する。
また、図8に示すように、第2フレーム12にも、上述した第1フレーム11におけるものと同様の円形状部120、フレーム突出部121(121a,121b)、挿通孔122、凹部123(123a,123b)も設けられているが、これらは、第1フレーム11における各部位の構成と同様の構成であるので、それぞれの部位についての説明は省略する。また、第2フレーム12は、フレーム部材に対応する。しかしながら、第1フレーム11がフレーム部材に対応するものとしても良く、第1フレーム11と第2フレーム12の双方がフレーム部材に対応するものとしても良い。
また、図4および図5に示すように、ロードシーブ中空軸20のうち第1フレーム11側の軸受嵌合部21aよりもギヤケース13側にはギヤ嵌合部22が設けられていて、このギヤ嵌合部22には、減速機構30を構成するロードギヤ31がスプライン結合状態で保持される。なお、ギヤ嵌合部22のギヤケース13側には、スナップリングEを取り付ける溝部22aが設けられている。この溝部22aにスナップリングEが取り付けられることで、ロードギヤ31のX2側への移動が規制される。一方、ギヤ嵌合部22の軸受嵌合部21a側の部位には、スプライン加工の逃げ溝22bが形成され、さらに逃げ溝22bよりも軸受嵌合部21a側の部位には、ギヤ嵌合部22よりも大径となる固定段部22cが設けられ、この固定段部22cによってロードギヤ31がX1側に移動するのが規制される。
ここで、ロードギヤ31には、上述のギヤ嵌合部22が挿入される中心孔31aが設けられている。加えて、図4および図5に示すように、ロードギヤ31の両端側のうち中心孔31aの周囲には、凹部31bが設けられている。凹部31bは、ロードギヤ31の両端面を所定だけ窪ませた形状に設けられている。すなわち、図4および図5に示すように、ロードギヤ31のうちX1側の端面から窪む凹部31b1は、軸受B1と対向しているが、かかる凹部31b1の存在によりロードギヤ31と軸受B1との間の隙間を大きくすることが可能となっている。それにより、ロードギヤ31と軸受B1との間に機械油(グリス)が存在する状態でロードギヤ31が回転する場合において、ロードギヤ31の回転に際して機械油(グリス)の粘性によって生じる機械損失を低減できると共に、機械油(グリス)の流動性を向上させることが可能となる。同様に、ロードギヤ31のうちX2側の端面から窪む凹部31b2は、減速ギヤ部材60の大径ギヤ61と対向しているが、かかる凹部31b2の存在によりロードギヤ31と大径ギヤ61との間の隙間を大きくすることが可能となっている。この場合も、ロードギヤ31が回転する場合において、ロードギヤ31の回転に際して機械油(グリス)の粘性によって生じる機械損失を低減できると共に、機械油(グリス)の流動性を向上させることが可能となる。
なお、ロードギヤ31、減速ギヤ部材60、ピニオンギヤ72は、ギヤ部材に対応する。
また、ロードシーブ中空軸20は、ロードシーブ23を構成する一対のフランジ部23aを有していて、さらに一対のフランジ部23aの間には、ロードシーブ23を構成するチェーンポケット23b(図4参照)を有している。チェーンポケット23bは、ロードチェーンC1の金属輪C1aが嵌り込む部分であり、当該金属輪C1aの扁平となる向きが軸線方向(X方向)と平行となる状態で金属輪C1aが嵌め込まれる横ポケット(図示省略)と、その横ポケットよりも深溝状であり金属輪C1aの扁平となる向きが軸線方向(X方向)と交差する状態で金属輪C1aが嵌め込まれる縦ポケット(図示省略)とを有している。
また、ロードシーブ中空軸20には、中空孔24が設けられている。中空孔24には、駆動軸70が差し込まれるが、その中空孔24の第2フレーム12側の端部には、駆動軸70を軸支する軸受B3を受け止めるための軸受段部26が設けられている。ここで、中空孔24のギヤ嵌合部22側の端部には、駆動軸70のフランジ部71を受け止めるための収容凹部27が設けられている。この収容凹部27に駆動軸70のフランジ部71が位置することにより、駆動軸70の軸線方向(X方向)に沿う長さが短くなり、チェーンブロック10のうちX方向(駆動軸70の軸線方向)に沿う寸法を低減することが可能となっている。また、駆動軸70の軸線方向に沿う長さが短くなることで、当該駆動軸70の強度を向上させることが可能となる。
図1〜図6に示すように、上フック40は、繋ぎ軸41(図6、図8参照)を介して第1フレーム11および第2フレーム12に取り付けられており、当該繋ぎ軸41に対して回動自在な状態で取り付けられている。この上フック40には、不図示の付勢手段で閉じ方向に付勢されるフックラッチ40aが取り付けられている。
図2および図8に示すガイドローラ42は、その一端側および他端側がそれぞれ第1フレーム11および第2フレーム12に対して回転自在に軸支されていて、たとえばロードシーブ中空軸20の中心を挟んで180度間隔で一対設けられている。このガイドローラ42は、ロードチェーンC1の巻き上げ等に伴って回転する部材であると共に、ロードチェーンC1がチェーンポケット23bから外れるのを防ぐ距離だけ離れてロードシーブ23に対向して取り付けられている。
図1〜図4、図9に示す留め金具43は、ロードチェーンC1のうち下フック45が取り付けられる側とは反対の端部の金属輪C1aに差し込まれる金具ピン43aを取り付ける部分である。この留め金具43も、その一端側および他端側がそれぞれ第1フレーム11および第2フレーム12に対して回転自在に軸支されている。
図4に示すストリッパ44は、ロードシーブ23に掛け回されているロードチェーンC1が必要以上にロードシーブ23に追従してロードシーブ23が回らなくなるロック状態が発生するのを防止する部材である。このストリッパ44の一端側および他端側のそれぞれの端部は、第1フレーム11および第2フレーム12に存在するそれぞれの支持孔11b,12bに差し込まれることで、ストリッパ44が第1フレーム11および第2フレーム12に取り付けられる。
また、図4〜図6に示すように、第1フレーム11のうち、ギヤケース13と対向する側の端面には、図7に示すような補助プレート50が取り付けられている。補助プレート50には、フランジ部51および絞り加工部52が設けられている。フランジ部51は第1フレーム11の端面に接触する部分であり、当該フランジ部51には固定孔53が設けられている。そして、固定孔53および第1フレーム11に設けられている取付孔11cにリベット等の固定具55(図5参照)を挿通させることで、補助プレート50は第1フレーム11に取り付けられる。また、絞り加工部52は、フランジ部51よりも中央側に位置する部分であり、補助プレート50の中央側を第1フレーム11の端面から所定距離、離隔するようにたとえば絞り加工によって形成される部分である。本実施の形態では、絞り加工部52は、図6および図7に示す構成では、固定孔53の存在によってその外周側に窪んだ部分は存在するものの、その窪んだ部分を除いては、絞り加工部52は角部がR形状の略菱形をなしている。
ここで、上述した固定具55と、ガイドローラ42の第1フレーム11に対する取付位置とは、図8に示すような位置関係となっている。すなわち、一対のガイドローラ42は、それぞれいずれかの固定具55に近接して取り付けられていて、ガイドローラ42の互いに中心を挟んで対称となる位置に配置されている。また、ガイドローラ42は、ロードシーブ23等の回転中心から離れる固定具55(55a)に近接して設けられていて、しかも中心に近い固定具55(55b)からY方向を挟んで離間した位置に設けられている。このような配置とすることにより、ロードチェーンC1を巻き上げるときには、互いに近接する固定具55同士を結ぶ線Lに対して、ロードチェーンC1から受ける力の向きFが直交する向きとなるように、チェーンブロック10の全体が図8の回動方向Mに沿って回動しようとする。そのような回動において、図8に示すようなガイドローラ42の配置とする場合には、一対のガイドローラ42を結ぶ線が水平に近づく状態となり、ロードチェーンのガイド性を良好に維持することが可能となる。
また、図6および図7に示すように、絞り加工部52の中央側には、中心孔56が設けられている。中心孔56は、上述した挿通孔11aと同軸上に設けられていると共に、当該挿通孔11aと同等の直径を有している。そして、中心孔56には、上述した軸受B1が位置して、ロードシーブ中空軸20を支持している。また、絞り加工部52には、当該のうち略菱形の長い方向の対角線に沿って、軸受孔57が設けられている。軸受孔57は、中心孔56の中心から等距離の位置にたとえば一対設けられていて、たとえばバーリング加工によって立上がり部57aを有する形状に形成される。この軸受孔57は、減速ギヤ部材60のうち一端側(図5でX1側)の軸支部63を挿入して、当該減速ギヤ部材60を軸支する。なお、減速ギヤ部材60の他端側の軸支部64(図5でX2側)は、ブッシュ等の軸受B4を介してギヤケース13の軸受孔13aに挿入され、その軸受孔13aによって減速ギヤ部材60が軸支される。
図5および図10に示すように、一対の減速ギヤ部材60(一対の減速ギヤ部材60の配置は図9にも図示)には、大径ギヤ61(第1減速ギヤ部に対応)と小径ギヤ62(第2減速ギヤ部に対応)とが設けられていて、その他に上述した軸受孔57に挿入される軸支部63と、軸受孔13aに挿入される軸支部64とが設けられている。大径ギヤ61は駆動軸70のピニオンギヤ72と噛み合い、第1の減速比で駆動軸70からの駆動力が減速ギヤ部材60に伝達される。また、大径ギヤ61には、面取り部61aが設けられている。面取り部61aは、大径ギヤ61の外周側のうちX1側の部位に設けられていて、当該大径ギヤ61の他の部位よりも小径に設けられている。この面取り部61aの存在により、大径ギヤ61が駆動軸70の傾斜部73および曲面部74と干渉するのが防止される。
また、小径ギヤ62は、ロードギヤ31と噛み合い、減速ギヤ部材60に伝達された駆動力を第2の減速比でロードギヤ31に伝達する。なお、この小径ギヤ62と上述した大径ギヤ61とは、たとえば冷間鍛造によって一体的に形成される。しかしながら、小径ギヤ62と大径ギヤ61は、たとえば精密鍛造や切削加工等のような他の加工の組み合わせによって一体で形成されても良く、上記の加工の組み合わせによって別体で形成の後に結合して形成されても良い。
図10(A)に示すように、減速ギヤ部材60のうち、軸支部64よりも大径ギヤ61側(X1側)には、膨出部65が設けられている。膨出部65は、減速ギヤ部材60の端面の中央部分に設けられた凹部60aに設けられているが、この膨出部65は軸支部64よりも大径となるように径方向外側に向かい膨出している部分であり、周方向に沿って間欠的に膨出している(図10(A)では3つの膨出部65が設けられている。)。そして、隣り合う膨出部65の間には当該膨出部65よりも相対的に小径となる窪み部66が存在している。また、軸支部64の外周側には、減速ギヤ部材60の軸線方向(X方向)に沿う油溝64aが設けられていて、この油溝64aは、いずれかの窪み部66と連通している。それにより、凹部60aと油溝64aを介してブッシュ等の軸受B4に機械油(グリス)を供給することが可能となっている。また、上述した膨出部65の存在によって大径ギヤ61を軸受B4から離間させることが可能となると共に、凹部60aおよび油溝64aの存在により、大径ギヤ61と軸受B4,B5との間において機械油(グリス)の粘性によって生じる機械損失を低減できると共に、機械油(グリス)の流動性を向上させることが可能となる。
図4および図5に示すように、駆動軸70(図11参照)は、ギヤケース13側からハンドホイール80側までX方向に沿って延伸している部材である。この駆動軸70は、上述したようにロードシーブ中空軸20の中空孔24に挿通していて、軸受段部26の軸受B3を介してロードシーブ23に対して回転自在に設けられている。また、駆動軸70にはフランジ部71が設けられていて、このフランジ部71が収容凹部27に位置する。そして、フランジ部71が収容凹部27の底部27aで受け止められることにより、駆動軸70がハンドホイール80側に移動するのが規制されると共に、駆動軸70の軸線方向の寸法を低減することが可能となる。
この駆動軸70のうち中空孔24からギヤケース13側(X2側)に突出する部分には、上述した大径ギヤ61に噛み合うピニオンギヤ72(第1ギヤに対応)が設けられている。図12(A)では、ピニオンギヤ72は、5枚の歯721を有している。このピニオンギヤ72の歯721の歯厚Daは、図13(B)に示すような従来のピニオンギヤ72Hの歯721Hの歯厚Dbと異なるように設定されている。すなわち、本実施の形態におけるピニオンギヤ72では、各歯721の歯先722の歯厚Da(以下では、図13(A)に示すように歯先722の歯厚Daを歯厚Da2とする。)は、従来の各歯721Hの歯先722Hの歯厚Db(以下では、図13(B)に示すように歯先722Hの歯厚Dbを歯厚Db2とする。)よりも大きくなるように設けられている。
なお、上述のように、歯先722の歯厚Da2を、従来の歯先722Hの歯厚Db2よりも大きくする場合においては、各歯721の歯厚Daは、以下のようにすることが可能である。すなわち、本実施の形態におけるピニオンギヤ72では、隣り合う歯721の間に存在する歯底723の寸法Ba(図示省略)は、従来のピニオンギヤ72Hの歯底723Hの寸法Bb(図示省略)よりも小さく設けられている。そのため、歯底723側においては、歯721の歯厚Da(以下では、図13(A)に示すように歯底723側の歯厚Daを歯厚Da1とする。)は、従来の歯721の歯厚Db(以下では、図13(B)に示すように歯底723側の歯厚Dbを歯厚Db1とする。)よりも大きく設けられている。
それに加えて、図13(A),(B)に示すように、歯721,721Hの各部位における歯厚Da,Dbを考える。この場合、図13(A)に示す構成では、従来の歯721Hの歯厚Dbに対して、本実施の形態の歯721の歯厚Daに占める増肉部724の割合は、歯底723側から歯先722側に向かうにつれて大きくなるように設けられている。それにより、歯先722側では、増肉部724の割合が大きくなるため、歯先722側での歯721の強度を大幅に向上させることが可能となっている。
なお、各歯721の歯厚Daは、以下のように設定しても良い。すなわち、歯底723側の歯厚Da1は、従来の歯721Hの歯底723H側の歯厚Db1と同等となるように設けても良い。ただし、この場合においては、歯底723側でアンダーカットが生じないようにすることが必要である。なお、上述のように歯底723側の歯厚Da1は、従来の歯721Hの歯底723H側の歯厚Db1と同等となるように設ける場合、歯底723から歯先722に向かうにつれて、増肉部724の寸法が大きくなるように設定しても良い。
また、上述のようなピニオンギヤ72に噛み合う大径ギヤ61の各歯611では、歯721の増肉部724の増肉に対応する分だけ、減肉している。すなわち、大径ギヤ61においては、ピニオンギヤ72の歯721の歯厚Daが従来のピニオンギヤ72Hの歯721Hの歯厚Dbから増加する分だけ、歯611の歯厚Dc(図13(A)参照)が従来の歯611Hの歯厚Dd(図13(D)参照)よりも減少している。このとき、ピニオンギヤ72の歯先722の歯厚Da2は、大径ギヤ61の歯先612の歯厚Dc1よりも大きく設けられている。ここで、歯721と歯611とは互いに接触する部分においては、ピニオンギヤ72において歯底723側から歯先722側へ向かうときの歯721の歯厚Da(増肉部724)の変化分が、大径ギヤ61において歯先612側から歯底613側へ向かうときの歯611の歯厚Dcの変化分に対応している。それにより、ピニオンギヤ72と大径ギヤ61の間での良好な噛合を実現している。
なお、図12および図13に示す構成では、ピニオンギヤ72には、5枚の歯721が設けられていると共に、大径ギヤ61には35枚の歯611が設けられている。しかも、一対の大径ギヤ61(減速ギヤ部材60)は、ピニオンギヤ72を挟んで対称となる位置に配置されていて、ピニオンギヤ72は一対の大径ギヤ61の双方に噛み合っている。このため、大径ギヤ61の歯611が1回転すると、その大径ギヤ61の歯611は1回だけピニオンギヤ72の歯721に接触するが、その大径ギヤ61の1回転の間に、ピニオンギヤ72の歯721は、大径ギヤ61の歯611に14回接触することになる。
また、減速ギヤ部材60および駆動軸70は、共に金属から形成されているが、これら減速ギヤ部材60および駆動軸70は、耐摩耗性等の観点から、鉄系の金属から形成されることが好ましい。また、減速ギヤ部材60および駆動軸70は、共に同等の材質から形成されることが好ましい。ただし、駆動軸70のうち少なくともピニオンギヤ72を、減速ギヤ部材60の大径ギヤ61よりも耐摩耗性に優れる材質から形成するようにしても良い。
駆動軸70のうち中空孔24からギヤケース13側(X2側)に突出する部分には、上述した大径ギヤ61に噛み合うピニオンギヤ72(ギヤ部に対応)が設けられている。図11(A),(C)に示すように、ピニオンギヤ72のうちフランジ部71に対する付け根部分には、傾斜部73が設けられている。さらにピニオンギヤ72の各歯部と傾斜部73の間には、所定の曲面部74が設けられている。曲面部74は、たとえばRを有する形状に形成されている。そして、これら傾斜部73および曲面部74が存在することにより、ピニオンギヤ72とフランジ部71の境界部分に応力集中が生じるのを防ぐことが可能となっている。なお、曲面部74は、たとえば傾斜部73の1/10以上であれば良く、傾斜部73に占める割合が1/10以上であれば応力集中を良好に防止可能となる。
ここで、ピニオンギヤ72の歯部の先端側の歯厚は、そのピニオンギヤ72と噛み合う大径ギヤ61の先端側の歯厚よりも大きく設けられている。そのため、ピニオンギヤ72の長寿命化を図ることが可能となっている。すなわち、ピニオンギヤ72の歯数は、大径ギヤ61の歯数よりも少ないため、ピニオンギヤ72の各歯は、大径ギヤ61の各歯よりも摺動する回数が多い。それにより、ピニオンギヤ72の各歯は、大径ギヤ61の各歯よりも早く摩耗する。しかしながら、上述のようにピニオンギヤ72の歯部の先端側の歯厚を、大径ギヤ61の先端側の歯厚よりも厚く、さらに歯幅も大きく設けることで、ピニオンギヤ72の長寿命化を図ることが可能となる。
また、駆動軸70のうちピニオンギヤ72よりもギヤケース13側(X2側)には軸支部75が設けられている。軸支部75は、その外周側に軸受B5が取り付けられる部分であり、この軸受B5は、ギヤケース13に設けられている軸受取付部13bに取り付けられる。それにより、駆動軸70のX2側の端部は、軸受B5を介してギヤケース13により回転自在に支持される。さらに、駆動軸70のうちハンドホイール80側には雄ネジ部76が設けられている。雄ネジ部76は、後述するハンドホイール80の雌ネジ部81やブレーキ受け91の雌ネジ部91aが捻じ込まれる部分である。なお、雄ネジ部76のX2側の端部には段部77が設けられていて、後述するブレーキ受け91がこの段部77に係止される。また、雄ネジ部76よりもX1側にはピン孔78aを有するストッパ受け部78が設けられていて、後述するホイルストッパ84がこのストッパ受け部78に配置され、ストッパピン79によって抜け止めされる。
図1、図2および図4に示すように、ギヤケース13は、減速ギヤ部材60、ロードギヤ31といった減速機構30を覆う部材であり、当該ギヤケース13は第1フレーム11に対して、ステイボルトSBおよびナットNを介して固定されている。このギヤケース13は、転倒防止部として機能する。また、ギヤケース13は、取付板部130と、ギヤ収納部131とを有している。取付板部130は、第1フレーム11に対して面状に接触する部分である。なお、ギヤケース13は、たとえば板等を深絞り加工することによって形成しても良い。
本実施の形態では、取付板部130は、上述した3つのフレーム突出部111の直線部分を結んだ形状と同等の形状に設けられている。しかしながら、チェーンブロック10の引き摺りの際には、ギヤケース13が引き摺られるよりも第1フレーム11が引き摺られる方が好ましい。そのため、フレーム突出部111付近では、取付板部130よりもフレーム突出部111の方が、外方に突出するように設けられている。
図1、図2および図4に示すように、ギヤ収納部131は、取付板部130からX2側に隆起する形状に設けられている。本実施の形態では、ギヤ収納部131の取付板部130からの突出高さは、第1フレーム11と第2フレーム12との間の間隔以上となるように設けられている。しかしながら、チェーンブロック10の転倒および転倒した場合の姿勢復帰を良好に行えるものであれば、ギヤ収納部131の高さは、どのような高さに設けられていても良い。
図1に示すように、ギヤ収納部131には、ネームプレート132がリベット133を介して取り付けられている。このような取り付けを可能とするために、ギヤ収納部131には、リベット133を挿通させるための不図示の孔部が設けられている。
また、図1に示すように、第1フレーム11の外周縁部とギヤケース13の外周縁部との位置関係は、次のようになっている。すなわち、フレーム突出部111付近では、第1フレーム11の外周縁部は、ギヤケース13の外周縁部に対する突出量が小さく設けられている。しかしながら、凹部113aの下方側、および凹部113bの上方側では、第1フレーム11の外周縁部は、ギヤケース13の外周縁部に対する突出量が大きく設けられている。以下では、第1フレーム11のうち、ギヤケース13の外周縁部に対する突出量がフレーム突出部111付近よりも大きい部分を、張出部114とする。張出部114は、凹部113bの上方側の方が、凹部113aの下方側の方よりも、ギヤケース13の外周縁部から大きく突出している。このような張出部114の存在により、チェーンブロック10が引き摺られた場合でも、引き摺り箇所をギヤ収納部131から離すことを可能としている。
図4および図5に示すように、第2フレーム12のうち、第1フレーム11と対向しない側の端面には、ハンドホイール80およびブレーキ機構90が設けられている。ハンドホイール80は、その中心側に雌ネジ部81を有していて、この雌ネジ部81が駆動軸70の雄ネジ部76に捻じ込まれる。また、ハンドホイール80の外周側のうち、一対のフランジ部80aが対向する部位の間には、上述したロードシーブ23と同様のチェーンポケット82が設けられている。チェーンポケット82は、ハンドチェーンC2の金属輪C2aが嵌り込む部分であり、当該金属輪C2aの扁平となる向きが軸線と平行となる状態で金属輪C2aが嵌め込まれる横ポケット(図示省略)と、その横ポケットよりも深溝状であり金属輪C2aの扁平となる向きが軸線と交差する状態で金属輪C2aが嵌め込まれる縦ポケット(図示省略)とを有している。なお、ハンドホイール80よりも雄ネジ部76の先端側(X1側)にはカラー83等を介してホイルストッパ84が設けられる。ホイルストッパ84は、リング状の部材であり、径方向に沿う貫通孔84aを有している。そして、この貫通孔84aとストッパ受け部78のピン孔78aにストッパピン85を差し込むことにより、ホイルストッパ84は駆動軸70のX方向に対して移動するのが規制される。このホイルストッパ84の存在によってハンドホイール80がX1側に移動するのが規制される。
また、ブレーキ機構90は、ブレーキ受け91、ブレーキ板92、爪車94、爪部材95等を主要な構成要素としている。図4および図5に示すように、駆動軸70の雄ネジ部76のうち第2フレーム12側にはブレーキ受け91が配置される。ブレーキ受け91は、その中心側に雌ネジ部91aを有していて、さらにフランジ部91bと中空ボス部91cとを有している。雌ネジ部91aは、駆動軸70の雄ネジ部76に捻じ込まれる部分であり、その捻じ込みによってブレーキ受け91のフランジ部91bが段部77に係止される。フランジ部91bは、中空ボス部91cよりも大径に設けられている部分であり、後述するブレーキ板92を受け止めることが可能となっている。中空ボス部91cは、フランジ部91bよりもハンドホイール80側(X1側)に位置し、後述するブッシュ93を介して爪車94を支持する。
ブレーキ板92(92a)は、フランジ部91bと後述する爪車94との間に位置し、ハンドホイール80側から圧接される場合にはフランジ部91bと後述する爪車94との間に大きな摩擦力を与え、その大きな摩擦力によって爪車94に対してブレーキ受け91が一体的に回転する状態となる。なお、爪車94とハンドホイール80の間にもブレーキ板92(92b)が配置され、ハンドホイール80側からの圧接によって爪車94とハンドホイール80の間に大きな摩擦力を与え、その大きな摩擦力によって爪車94に対してハンドホイール80が一体的に回転する状態となる。
図4および図5に示すように、ブレーキ受け91の中空ボス部91cには、ブッシュ93が取り付けられ、このブッシュ93の外周側には爪車94が設けられている。それにより、爪車94はブレーキ受け91に対して回転自在に設けられている。図14に示すように、爪車94の爪部94aには、爪部材95の先端が噛み合い、その噛み合いによって爪車94の逆転(巻き上げ方向への回転)を防止するラチェット機構が構成される。なお、爪部材95は爪軸95aを介して回動可能に設けられていると共に、この爪部材95には付勢バネ95bの一端が取り付けられていて、当該爪部材95の先端が常に爪車94の爪部94aに噛み合うような付勢力を与えている。
また、爪部材95は、一対設けられているものの、図14に示す構成では、一方の爪部材95は鉛直方向からたとえば30度といった所定の角度だけ傾斜した位置に配置されている。また、他方の爪部材95は一方の爪部材95に対して隣接する位置に設けられているが、その配置態様は、一対の爪部材95が共に直交座標系のたとえば第1象限といった同じ象限内に収まる配置となっている。それにより、直交座標系の第1象限に対する第3象限に対応する位置(図14ではZ2側かつY2側の位置)にスペースSが形成され、ロードチェーンC1aを巻き上げた場合に下フック45をこのスペースSに位置させることが可能となっている。ただし、一対の爪部材95の配置は他の配置を採用しても良く、たとえば爪車94の回転中心を挟んで対角線方向にそれぞれ配置される構成を採用しても良い。
ホイルカバー14は、ハンドホイール80の上方側およびブレーキ機構90の上方側を覆う部材であり(図1〜図3等参照)、当該ホイルカバー14は第2フレーム12に対して、ステイボルトSBおよびナットNを介して固定されている。このホイルカバー14は、転倒防止部として機能する。また、ホイルカバー14は、たとえばプレス加工等のような塑性加工によって形成され、その塑性加工により、図15に示すように、フランジ部141と、側面部142と、端面部143とを備えている。フランジ部141は、第2フレーム12に当接する部分である。このフランジ部141は、第2フレーム12に対して面接合し、それによってステイボルトSBとナットNの間の締め付け力に良好に抗する状態に設けられている。そのような面接合を実現するべく、フランジ部141は、端面部143から離間する先端側(X2側)に向かうにつれて、第2フレーム12に対して平行をなすように側面部142に対して外側に拡開して形成されている。
なお、フランジ部141は、側面部142に対して垂直近傍の角度で折り曲げられているものの、ホイルカバー14の取付状態においては、側面部142は第2フレーム12に対して必ずしも垂直をなすとは限らない。このため、フランジ部141は側面部142に対して垂直をなす角度で折り曲げられていても良いが、必ずしも垂直に折り曲げられる必要はない。
また、図15等に示すホイルカバー14は、たとえば鋼板等を深絞り加工することによって形成しても良い。
側面部142は、フランジ部141と端面部143の外周縁部との間を結ぶ部分であり、図1等に示すように、第2フレーム12に対して接離する方向(X方向)に大きな寸法を有するように形成されている。また、側面部142は、端面部143の外周縁部の全周に亘って設けられてはいない。すなわち、側面部142は、上方側に位置する部分(以下、必要に応じて上方側面部142aとする。)と、下方側に位置する部分(以下、必要に応じて下方側面部142bとする。)とを有している。なお、ステイボルトSBとナットNの組は、ホイルカバー14の上方側(Z1側)では、Y方向に沿って一対設けられている。一方、ステイボルトSBとナットNの組は、ホイルカバー14の下方側(Z2側)では、1つしか存在していない。そのため、上方側面部142aは、下方側面部142bよりもY方向における寸法が長く設けられ、上方側面部142aに一対の回り込み部148(後述)も存在するものとしている。
なお、上方側面部142aと下方側面部142bとの間の切欠部144からは、ハンドチェーンC2が延出可能となっている。また、切欠部144よりも端面部143側の部位には、左右側面部145が設けられている。左右側面部145は、上方側面部142aおよび下方側面部142bと同様に、端面部143よりも第2フレーム12に向かって延出する部分であるが、左右側面部145は、切欠部144の存在により、第2フレーム12に向かう長さが上方側面部142aおよび下方側面部142bよりも大幅に小さく設けられている。
また、端面部143は、ホイルカバー14のうちハンドホイール80と対向する部分である。この端面部143は、その外周縁部において上方側面部142aおよび下方側面部142bおよび左右側面部145と連続するように設けられている。また、端面部143は、図15においてY方向およびZ方向(垂下方向に対応)に大きな寸法を有している。この端面部143は、平面状に設けられていても良いが、図15に示すように、デザイン性を向上させたり、ホイルカバー14の強度を向上させるために、凹凸が存在する構成を採用しても良い。図2、図3および図15に示す構成では、端面部143にはX1側に向かって突出する凸部143aが設けられていて、その凸部143aを平面視すると略三角形状に設けられている。また、凸部143aの内部側には、X2側に向かって窪んだ凹部143bが設けられていて、その凹部143bを平面視すると略三角形状に設けられている。
また、図3および図15に示すように、本実施の形態では、端面部143は、中心から縁部までの半径がR1の円形状の円形状部T1(図3および図15では、円形状の部分は、上方側の部分が切り欠かれた部分円形状となっているが、以下では、このような部分円形状も、円形状に含めて説明する。)と、同じ中心から縁部までの距離がR2の三角形状の三角形状部T2とが重なるように設けられている。ここで、半径R1と距離R2の間には、R2>R1の関係がある。それにより、三角形状部T2の隅角部側は、円形状部T1から突出して設けられている。以下では、この円形状部T1から突出している部分を、突出部分146とする。
また、三角形状部T2は、本実施の形態では、底辺が上方に位置し頂点が下方に位置する二等辺三角形状に設けられているが、正三角形状または略正三角形状に設けられていても良い。また、三角形状の部分は、二等辺三角形状以外の三角形状に設けられていても良い。
ここで、図15、および図3から明らかなように、ホイルカバー14の回り込み部148の外周縁部は、第2フレーム12の外周縁部に対して、同等の位置に設けられている。しかしながら、チェーンブロック10の引き摺りの際には、ホイルカバー14が引き摺られるよりも第2フレーム12が引き摺られる方が好ましい。そのため、フレーム突出部121付近では、回り込み部148の外周縁部よりもフレーム突出部121の外周縁部の方が、外方に突出するように設けられている。
図3および図15に示すように、突出部分146には、ボルト孔147(固着孔に対応)が設けられている。突出部分146にボルト孔147が設けられているため、本実施の形態では、ボルト孔147は、ホイルカバー14の外周縁部側に3つ設けられていて、そのうちの2つは上方側(Z1側)においてY方向に沿うように設けられている。
図3、図15および図16に示すように、上方側面部142aには、回り込み部148が設けられている。この回り込み部148は、その上縁側(Z1側の縁部)が突出部分146に連続するように設けられている。また、回り込み部148においては、図16における接線A1(面状の接面A1としても良い。)と、接線A2(面状の接面A2としても良い。)とがなす角度θが、鋭角となるように設けられている。
図16に示す構成では、接線A1(接面A1)と接線A2(接面A2)とがなす角度は、60度程度に設けられている。また、接線A1(接面A1)と接線A2(接面A2)との交点と、中心とを結ぶ線とは、接線A1(接面A1)と接線A2(接面A2)とがなす角の二等分線A3か、または二等分線A3に近似する状態となっている。
ここで、従来のホイルカバー14Hでは、図17および図25に示すように、上方側面部142Hにおいては、接線A1(接面A1)と接線A2(接面A2)とがなす角度αは、鈍角となるように設けられている。そのため、本実施の形態におけるホイルカバー14の回り込み部148と、従来のホイルカバー14HのスタットボルトSBの取り付け部位付近(回り込み部148に対応する部分;以下、コーナー部148Hとする。)を比較すると、本実施の形態のホイルカバー14の方が、強度が大きい、という特徴がある。
この点を詳述すると、図25に示すような従来の構成においては、コーナー部148Hは、図15および図16に示すような本実施の形態の回り込み部148と比較して、ステイボルトSBおよびボルト孔147から離れるように設けられている。そのため、ボルト孔147の周囲の端面部143では、荷重が作用した場合に、本実施の形態の回り込み部148が存在する場合よりも変形し易い状態となっている。これに対して、本実施の形態では、回り込み部148は、図25に示す従来構成と比較して、端面部143の内部側に位置していて、スタットボルトSBおよびボルト孔147に近接するように設けられている。そのため、ボルト孔147の周囲の端面部143において、荷重が作用した場合でも、端面部143および回り込み部148は変形し難くなる。
ここで、回り込み部148および端面部143に外力が作用するときのイメージを、図17に示す。図17(A)に示すように、回転中心に向かうFが従来構成の回り込み部148に対応する部分に作用し、同じく図17(B)に示すように、本実施の形態における回り込み部148にも回転中心に向かうFが作用した場合を考える。図17(A),(B)から明らかなように、上方側面部142aに沿う力の分力は、従来構成の方が大きくなる。それにより、本実施の形態のような回り込み部148が存在する場合には、図17(A)および図25に示すような従来構成と比較して、強度が大きくなっている。
また、図2および図15に示すように、回り込み部148には、チェーンガイド部149が連続する状態で設けられている。チェーンガイド部149は、ハンドチェーンC2に近接して設けられる部分であり、ハンドチェーンC2が大きく動いても(いわゆるハンドチェーンC2が暴れても)、そのハンドチェーンC2がチェーンポケット82から抜けないように抑え込むための部分である。このチェーンガイド部149は、回り込み部148よりも下方側(Z2側)に位置するように設けられていて、当該チェーンガイド部149は、ガイド湾曲部149aと、脚部149bと、先端突出部149cとを有している。ガイド湾曲部149aは、ハンドホイール80のチェーンポケット82と対向する部分である。このガイド湾曲部149aのうちX方向に沿う端部は、それぞれフランジ部80aと対向して設けられている。
なお、ガイド湾曲部149aの端部とフランジ部80aとの間の隙間は、ハンドチェーンC2の金属輪C2aの直径よりも小さいことが好ましい。このように構成する場合には、ハンドチェーンC2が大きく動いた場合(ハンドチェーンC2が暴れた場合)でも、そのハンドチェーンC2がチェーンポケット82から抜けるのが防止される。
また、脚部149bは、そのX2側の端部がフランジ部141と同等の位置に設けられていて、その脚部149bの端面が第2フレーム12に当接することを可能としている。また、脚部149bの端面には、先端突出部149cが設けられている。先端突出部149cは、第2フレーム12に設けられている差込孔124(図14参照)に差し込まれる部分である。かかる先端突出部149cが差込孔124に差し込まれることにより、チェーンガイド部149の強度を向上させることが可能となっている。
ここで、図18に示すように、チェーンガイド部149のうち下方側の外縁部には、ヘミング加工による折り返し部150が存在している。折り返し部150は、ガイド湾曲部149aと脚部149bの全体に亘って設けられている。そして、かかる折り返し部150の存在により、チェーンガイド部149の強度を向上させることが可能となっている。また、折り返し部150の存在により、当該折り返し部150にたとえば手等の部位が接触した際に、安全性を高めることが可能となっている。しかしながら、折り返し部150は、ガイド湾曲部149aと脚部149bの全体に亘って設けられる必要はなく、それらの少なくとも一部の部位に折り返し部150が存在しない構成を採用しても良い。
(チェーンブロック10の引き摺り時の転倒を防止する構成について)
次に、上述したような構成のチェーンブロック10について、そのチェーンブロック10を引き摺ったときに転倒を防止するための構成について説明する。
まず、転倒を防止するための構成としては、上述したフレーム突出部111,121の存在がある。このフレーム突出部111,121が存在することにより、第1フレーム11および第2フレーム12の周方向に沿った転がりが阻止され、チェーンブロック10の転がりにより生じる勢いを減じさせることが可能となっている。
また、図19に示すように、チェーンブロック10のY方向の寸法aと、X方向の寸法bとの間には、次のような関係が生じるように構成されている。
b≧a (式1)
なお、チェーンブロック10においては、寸法aは、第1フレーム11および第2フレーム12のY方向における外周縁部の端部間の長さである。また、寸法bは、チェーンブロック10のX方向における端部間の長さである。その場合、寸法bは、凸部143aのX1側の縁部から、ギヤケース13のX1側の縁部までの寸法となっている。しかしながら、凸部143aのX1側の縁部ではなく、端面部143の平坦部分から、ギヤケース13のX1側までの寸法としても良く、その他の部分(たとえばホイルカバー14のX1側の内壁面やギヤケース13のX2側の内壁面)を基準とした寸法としても良い。
また、ギヤケース13側の質量W1と、ホイルカバー14側の質量W2との間には、次のような関係が生じるように構成されている。
W2≧W1 (式2)
なお、(式2)に関連して、ホイルカバー14側に作用するモーメントの方が、ギヤケース13側に作用するモーメントよりも大きい、という関係があるとしても良い。また、第1フレーム11に取り付けられて、ギヤケース13側の質量W1となるものは、ギヤケース側構造体に対応すると共に、第2フレーム12に取り付けられてホイルカバー14側の質量W2となるものは、ホイルカバー側構造体に対応する。
また、ギヤ収納部131の高さについては、次のように構成されている。すなわち、ギヤ収納部131側が下になるように傾いたときに、そのまま引き摺ってしまうと、さらにチェーンブロック10が転倒して、ネームプレート132が地面と対向する状態で、地面と接触する虞がある。
ここで、チェーンブロック10は、図20に示すような場合に、転倒してしまう可能性が最も高くなっている。その理由を、図19に基づいて説明する。まず、フレーム突出部111b側の地面への接触部分を接触部分Q11とし、凹部113bを挟んだ第1フレーム11の外周縁部の地面への接触部分を接触部分Q21とし、これらを結ぶ直線を直線P1とする。すると、接触部分Q11,Q21と同時に地面に接触するギヤ収納部131側の接触部分Q31は、直線P1に垂直な直線上にある。
同様に、フレーム突出部111a側の地面への接触部分を接触部分Q12とし、凹部113aを挟んだ第1フレーム11の外周縁部の地面への接触部分を接触部分Q22とし、これらを結ぶ直線を直線P2とする。すると、接触部分Q12,Q22と同時に地面に接触するギヤ収納部131側の接触部分Q32は、直線P2に垂直な直線上にある。ここで、図19(A)から明らかなように、直線P1と接触部分Q31の間の距離K1は、直線P2と接触部分Q32の間の距離K2よりも大きい。そのため、図20に示すような傾斜の場合(すなわち接触部分Q11,Q21,Q31の3点で接触する場合)に、チェーンブロック10の傾斜角度θが最も大きくなり、チェーンブロック10が転倒してしまう可能性が最も高くなる。
そこで、以下では、接触部分Q11,21,31が地面に接触した場合のチェーンブロック10の傾斜について考える。この場合において、チェーンブロック10のさらなる転倒を防止するためには、ギヤ収納部131の高さSが十分に高ければ良い。すなわち、ギヤ収納部131の高さSが高くなれば、その分だけ、チェーンブロック10の傾斜角度θが小さくなる。したがって、ギヤ収納部131の高さSとしては、ギヤ収納部131の天面(ネームプレート132が取り付けられている面)が地面と接触する向きに、さらに回転するのを防げる程度の高さに設定すれば良い。なお、高さSは、地面に接触する部位である接触部分Q31での、第1フレーム11からギヤ収納部131までの高さである、としても良い。
ここで、図21に示すように、チェーンブロック10においては、ギヤケース13側の質量W1と、ホイルカバー14側の質量W2とが、第1フレーム11および第2フレーム12を挟んで、天秤状となる配置となっている。このため、ギヤ収納部131が下になるように傾いたとしても、ホイルカバー14側の質量W2の作用により、傾いた状態から起立姿勢へと戻り易くなっている。また、仮にギヤ収納部131が下になるように傾いたとしても、ギヤ収納部131は、転倒防止部して機能し、接触部分Q31で地面に接触して、それ以上の転倒が阻止される。
なお、フレーム突出部111aが地面に突っかかって転がりを防止する状態で、ギヤ収納部131が下になるように傾く場合については、上述したように、直線P1と接触部分Q31の間の距離K1は、直線P2と接触部分Q32の間の距離K2よりも大きい(図19(A)参照)。そのため、フレーム突出部111aが地面に突っかかって転がりを防止する状態のときには、フレーム突出部111bが地面に突っかかって転がりを防止する状態の場合よりも、チェーンブロック10が転倒し難い状態となっている。
また、フレーム突出部121aまたはフレーム突出部121bが地面に突っかかって転がりを防止する状態で、ホイルカバー14側が下になるように傾くときにも、フレーム突出部111bが地面に突っかかって転がりを防止する状態の場合よりも、チェーンブロック10が転倒し難い状態となっている。
この点について説明すると、図22に示すように、フレーム突出部121b側の地面への接触部分を接触部分Q13とし、凹部123bを挟んだ第2フレーム12の外周縁部の地面への接触部分を接触部分Q23とし、これらを結ぶ直線を直線P3とする。すると、接触部分Q13,Q23と同時に地面に接触するホイルカバー14側の接触部分Q33は、直線P3に垂直な直線上にある。しかし、直線P3と接触部分Q33の距離K3は、上述した距離K1よりも小さい。
しかも、図2等から明らかなように、第2フレーム12からホイルカバー14の端面部143までの距離K5(高さ)は、第1フレーム11からギヤ収納部131の天面までの距離K6(高さ)と同等か、またはそれよりも大きい。したがって、フレーム突出部121bが地面に突っかかって転がりを防止する状態で、ホイルカバー14側が下になるように傾くときには、フレーム突出部111bが地面に突っかかって転がりを防止する状態の場合よりも、チェーンブロック10が転倒し難い状態となっている。
同様に、フレーム突出部121a側の地面への接触部分を接触部分Q14とし、凹部123aを挟んだ第2フレーム12の外周縁部の地面への接触部分を接触部分Q24とし、これらを結ぶ直線を直線P4とする。すると、接触部分Q14,Q24と同時に地面に接触するホイルカバー14側の接触部分Q34は、直線P4に垂直な直線上にある。しかし、直線P4と接触部分Q34の距離K4は、上述した距離K1よりも小さい。さらに、上述したように、距離K5は距離K6と同等か、またはそれよりも大きい。そのため、フレーム突出部121aが地面に突っかかって転がりを防止する状態で、ホイルカバー14側が下になるように傾くときには、フレーム突出部111bが地面に突っかかって転がりを防止する状態の場合よりも、チェーンブロック10が転倒し難い状態となっている。
なお、接触部分Q11〜Q14は、接触部分Q21〜Q24に対し所定の転動防止距離だけ離れた位置で、接触部分Q21〜Q24と共に同時に地面に接触するように構成されている。それにより、接触部分Q11〜Q14は、転動規制部としての機能を果たしている。
<チェーンブロックの作用について>
(1)チェーンブロック10での荷を上下させるときの作用について
以上のような構成のチェーンブロック10を用いて、荷を上下させるときの作用について、以下に説明する。上述のチェーンブロック10で荷を上げる場合には、下フック45に荷を掛けた状態でハンドチェーンC2を巻き上げ方向に操作すると、ハンドホイール80が回転するが、このとき駆動軸70の雄ネジ部76に対する雌ネジ部81の噛み合いにより、ハンドホイール80はブレーキ板92(92b)を圧接する向き(図3、図4におけるX2に向かう向き)に向かって進行し、ブレーキ板92(92b)を強く圧接する。その後、ハンドホイール80と駆動軸70とが一体的に回転し、その回転による駆動力はピニオンギヤ72、大径ギヤ61および小径ギヤ62を経てロードギヤ31へと伝達され、ロードシーブ中空軸20が回転させられる。それにより、ロードチェーンC1が巻き上げられ、荷が上昇する。
これとは逆に、吊り上げられている荷を下ろす場合、ハンドチェーンC2を荷を上昇させるときとは逆向きに送るようにする。すると、ハンドホイール80はブレーキ板92bに対する圧接を緩めることになる。この緩めた分だけ駆動軸70が荷の巻き上げ方向とは逆に回転する。それにより、荷が徐々に下げられていく。
なお、爪車94の停止状態では、爪車94の爪部94aに爪部材95の先端が噛み合う。しかも巻き上げ時にハンドチェーンC2から手を離して、荷から作用する重力によって駆動軸70を逆転させようとしても、ハンドホイール80が回転しない状態ではハンドホイール80によってブレーキ板92bが爪車94に押し付けられ、さらにブレーキ板92aが爪車94によってブレーキ受け91のフランジ部91bに押し付けられる。それにより、荷の重力に抗するブレーキ力が与えられ、荷が下がるのが防止される。
(2)チェーンブロック10を引き摺る場合の動作について
次に、上述したようなチェーンブロック10を引き摺る場合の動作について、以下に説明する。ユーザがロードチェーンC1を把持した状態で、チェーンブロック10を引き摺る場合、チェーンブロック10は、第1フレーム11と第2フレーム12とが地面に接触する起立姿勢で引き摺られるか、ギヤケース13の天面が下になる姿勢で引き摺られるか、またはホイルカバー14の凸部143aが下になる姿勢で引き摺られるか、のいずれかの姿勢で引き摺られる。
ここで、ギヤケース13の天面が下になる転倒姿勢でチェーンブロック10が引き摺られる場合には、ロードチェーンC1によるチェーンブロック10の力の作用点が凸部143aよりも上方となる。さらに、ホイルカバー14側の質量W2が凸部143aよりも上方に存在することになる。そのため、チェーンブロック10全体の中心(第1フレーム11と第2フレーム12の間)よりも高い位置に、質量W2が存在して、バランスが悪い状態となる。それにより、引き摺りを行うと、いずれはチェーンブロック10は起立姿勢となる。
また、ホイルカバー14が下になる転倒姿勢でチェーンブロック10を引き摺る場合にも、ロードチェーンC1によるチェーンブロック10の力の作用点が上方であることと、ギヤケース13側の質量W1がさらに上方に存在することになる。そのため、チェーンブロック10全体の中心よりも高い位置に、質量W1が存在して、バランスが悪い状態となる。それにより、引き摺りを行うと、いずれはチェーンブロック10は起立姿勢となる。
なお、上述した(式1)より、チェーンブロック10のX方向の寸法bは、チェーンブロック10のY方向の寸法a以上となっている。この場合、ギヤケース13の天面が下になる転倒姿勢の場合、およびホイルカバー14が下になる転倒姿勢の場合よりも、起立姿勢の方が、重心位置が低くなるように構成されている。しかも、起立姿勢では、ギヤケース13の天面が下になる転倒姿勢の場合、およびホイルカバー14が下になる転倒姿勢の場合と比べて、その起立姿勢の重心よりも高い位置に、質量の塊(質量W1、質量W2等)が存在していない。そのため、起立姿勢で引き摺る場合、その姿勢は安定したものとなっている。
ここで、チェーンブロック10が起立姿勢で引き摺られる場合には、その挙動は、次のようなものとなる。まず、チェーンブロック10が起立姿勢で引き摺られると、第1フレーム11および第2フレーム12の外周縁部の円弧形状に従って、チェーンブロック10は地面を転がる。しかし、少し転がると、フレーム突出部111a、111b,121a、121bのいずれかが、地面に突っかかる状態となる。そのため、それ以上のチェーンブロック10の転がりが阻止される。
ここで、フレーム突出部111b,121bが、地面に突っかかる状態で、さらにギヤ収納部131が下になるように傾いても、ギヤ収納部131は接触部分Q31にて地面に接触し、それ以上のチェーンブロック10の傾きが阻止される。また、図21に示すように、ホイルカバー14側の質量W2の作用により、傾いた状態から起立姿勢へと戻り易くなっている。したがって、チェーンブロック10がギヤケース13側に傾いても、ホイルカバー14側の質量W2の作用により起立姿勢へと復帰させられる。
これとは逆方向へ傾く場合、すなわち、フレーム突出部121bが地面に突っかかる状態で、ホイルカバー14が下になるようにチェーンブロック10が傾いても、ホイルカバー14は接触部分Q33にて地面に接触し、それ以上のチェーンブロック10の傾きが阻止される。しかも、図21に示すように、ギヤケース13側の質量W1の作用により、傾いた状態から起立姿勢へと戻り易くなっている。したがって、チェーンブロック10がホイルカバー14側に傾いても、ギヤケース13側の質量W1の作用により起立姿勢へと復帰させられる。
そして、チェーンブロック10は、フレーム突出部111b,121bが地面に突っかかった状態を維持しつつ、ギヤケース13側またはホイルカバー14側のいずれかに傾いては起立姿勢へと復帰し、若干左右に揺れながら、引き摺られていく。
また、フレーム突出部111a,121aが、地面に突っかかる状態で、さらにギヤ収納部131が下になるように傾いた場合、およびフレーム突出部111a,121aが、地面に突っかかる状態で、さらにホイルカバー14が下になるように傾いた場合においても、その挙動は、上述した場合と同様である。すなわち、フレーム突出部111a,121aが地面に突っかかった状態を維持しつつ、ギヤケース13側またはホイルカバー14側のいずれかに傾いては起立姿勢へと復帰し、若干左右に揺れながら、引き摺られていく。
<効果について>
以上のような構成のチェーンブロック10によると、第1フレーム11および第2フレーム12の側面(外周縁部)が引き摺られる状態を維持することが可能となる。
すなわち、第1フレーム11および第2フレーム12には、起立姿勢のときに、第1フレーム11および第2フレーム12の外周に沿った転動を規制する、転動規制部としてのフレーム突出部111a、111b,121a,121bが設けられている。そのため、チェーンブロック10を引き摺っても、フレーム突出部111a、111b,121a,121bのいずれかが地面と接触することにより、それ以上のチェーンブロック10の転動(転がり)を防止可能となる。それにより、従来のチェーンブロックのように、チェーンブロックが比較的長く転がることで、勢いがつく等によってギヤケース13が下になったり、ホイルカバー14が下になるように倒れるのを防止することができ、起立姿勢のままチェーンブロック10を引き摺ることが可能となる。
そのため、ギヤケース13が下になってチェーンブロック10が引き摺られる場合のように、ネームプレート132を取り付けているリベット133の頭部が傷付いて、リベット133が取れてしまうのを防止可能となる。それにより、ギヤケース13のリベット孔から埃等が侵入し、各種のギヤの噛合に影響を与えるのを防止可能となる。
また、ホイルカバー14が下になってチェーンブロック10が引き摺られる場合のように、ステイボルトSBの先端側やナットNが傷付いてしまい、ナットNやステイボルトSBが取れて、ホイルカバー14が外れてしまうのを防止可能となる。
また、本実施の形態では、接触部分Q11〜Q14、および接触部分Q21〜Q24の2点が、所定の転動防止距離だけ離れる状態で、同時に地面に接触している。そのため、チェーンブロック10の外周縁部に沿った転動を良好に防止して、チェーンブロック10を引き摺ることが可能となる。
さらに、本実施の形態では、ホイルカバー側構造体の質量W2は、ギヤケース側構造体の質量W1よりも大きい。そのため、ギヤケース13が下になる向きにチェーンブロック10が傾いても、ホイルカバー側構造体の質量W2の作用により、起立姿勢へと復帰させることが可能となる。それにより、ギヤケース13に取り付けられているリベット133が取れてしまうのを、一層良好に防止可能となる。
また、本実施の形態では、ギヤ収納部131は、フレーム突出部111a,111b,121a,121bでの第1フレーム11および第2フレーム12の転動が規制された状態でギヤ収納部131側が下になるように傾いた際に、それ以上傾いてギヤ収納部131が下になるように倒れるのを防止する程度の高さに設けられている。そのため、ギヤケース13が下になるように倒れるのを防止することができる。それにより、ギヤケース13が下になってチェーンブロック10が引き摺られる場合のように、ネームプレート132を取り付けているリベット133の頭部が傷付いて、リベット133が取れてしまうのを防止可能となる。それにより、ギヤケース13のリベット孔から埃等が侵入し、各種のギヤの噛合に影響を与えるのを防止可能となる。
さらに、本実施の形態では、ホイルカバー14は、フレーム突出部111a,111b,121a,121bでの第1フレーム11および第2フレーム12の転動が規制された状態でホイルカバー14側が下になるように傾いた際に、それ以上傾いてホイルカバー14が下になるように倒れるのを防止する程度の高さに設けられている。それにより、ホイルカバー14が下になってチェーンブロック10が引き摺られる場合のように、ステイボルトSBの先端側やナットNが傷付いてしまい、ナットNやステイボルトSBが取れて、ホイルカバー14が外れてしまうのを防止可能となる。
また、本実施の形態では、第1フレーム11には、円弧状の外周縁部を有する円形状部110があり、その円形状部110から外周側に突出して、転動規制部としてのフレーム突出部111a,111bとが設けられている。このように、円形状部110から突出させたフレーム突出部111a,111bを設けることで、転動規制部として、チェーンブロック10の転動を良好に防止可能となる。
また、本実施の形態では、第1フレーム11を平面視した場合に、第1フレーム11には、ギヤケース13の外周縁部に対する突出量がフレーム突出部111a,111b側よりも大きい張出部114が設けられている。かかる張出部114の存在により、チェーンブロック10が引き摺られた場合でも、引き摺り箇所を、第1フレーム11とギヤケース13の合わせ面から離すことが可能となる。ここで、合わせ面に傷がつくと、ギヤケース13の内部に埃が入る等の不具合が発生するが、上述のような張出部114の存在により、合わせ面が引き摺り箇所から離されるので、ギヤケース13の内部に埃が入るのを防止可能となる。
また、本実施の形態では、第2フレーム12は、ホイルカバー14よりも外周側に突出する状態で当該ホイルカバー14を取り付けている。加えて、第2フレーム12も、円形状部120と、フレーム突出部121a,121bとを有している。そのため、フレーム突出部111a,111bの存在により、チェーンブロック10の転動を良好に防止可能となる。加えて、チェーンブロック10が引き摺られた場合でも、引き摺り箇所を、第2フレーム12とホイルカバー14の合わせ面から離すことが可能となる。それにより、合わせ面が引き摺り箇所から離されるので、ホイルカバー14の内部に埃が入るのを防止可能となる。
また、本実施の形態では、チェーンブロック10の起立姿勢のときの重心位置は、ホイルカバー14が下になるような転倒姿勢の重心位置およびギヤケース13が下になるような転倒姿勢の重心位置よりも低い位置に存在している。そのため、起立姿勢でチェーンブロック10を引き摺る場合、その姿勢を安定化させることができる。逆に、ホイルカバー14が下になるような転倒姿勢や、ギヤケース13が下になるような転倒姿勢で、チェーンブロック10を引き摺ると、チェーンブロック10のバランスが悪いので、起立姿勢へと復帰させ易くなる。
<変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態においては、第1フレーム11には、フレーム突出部111a,111bが設けられ、第2フレーム12には、フレーム突出部121a,121bが設けられていて、これらが転動規制部として機能している。しかしながら、転動規制部は、かかる構成には限られない。たとえば、第1フレーム11および第2フレーム12の外周縁部を直線状に設けて、転動しない構成とし、その直線状の外周縁部を、転動規制部としても良い。それ以外にも、第1フレーム11の外周縁部のうち、所定の転動防止距離だけ離れた位置で、少なくとも2点が地面に接触すれば何点接触しても良い。また、第2フレーム12の外周縁部のうち、所定の転動防止距離だけ離れた位置で、少なくとも2点が地面に接触すれば何点接触しても良い。
なお、第1フレーム11および第2フレーム12の外周縁部を直線状に設ける場合のように、第1フレーム11および第2フレーム12の外周縁部に、凹部113,123を設けないように構成しても良い。
また、転動規制部としては、別途の部材を第1フレーム11および第2フレーム12に取り付けることによって構成しても良い。同様に、転倒防止部としては、別途の部材を第1フレーム11および第2フレーム12に取り付けることによって構成しても良い。
また、上述の実施の形態においては、チェーンガイド部149は、回り込み部148に対して連続する状態で一体的に設けられている。しかしながら、図23および図24に示すように、チェーンガイド部149は、回り込み部148とは連続せずに別体的に設けられる構成を採用しても良い。すなわち、たとえば溶接等の手法によってチェーンガイド部149を端面部143に取り付けることにより、回り込み部148とは別体的なチェーンガイド部149を設けるように構成しても良い。
このように構成する場合には、チェーンガイド部149の端面部143に対する配置位置の自由度を向上させることが可能となる。また、このように構成しても、側面部142には回り込み部148が存在するため、その回り込み部148の存在によってホイルカバー14の強度を向上させることが可能となる。
このように構成する場合には、チェーンガイド部149の端面部143に対する配置位置の自由度を向上させることが可能となる。また、このように構成しても、側面部142には回り込み部148が存在するため、その回り込み部148の存在によってホイルカバー14の強度を向上させることが可能となる。
また、上述の実施の形態では、固定孔53および固定具55によって補助プレート50を第1フレーム11に固定する構成について説明している。しかしながら、固定孔53と固定具55の組み合わせに代えて、たとえばボス孔とボスの組み合わせを少なくとも1つ用いるようにしても良く、その他、溶接等によって補助プレート50を第1フレーム11に対して固定するようにしても良い。