上記特許文献2に記載の貯湯式給湯装置では、ヒートポンプにより貯湯タンクへの貯湯を行う際に、常に、浴槽を第2の蓄熱タンクとして利用することで貯湯タンクの小型化を図ろうとするものである。
しかし、常に浴槽内に湯を貯めると、浴室内の湿度が日常的に高い状態に維持され、かびの発生が促進されるなど衛生的に好ましいものではなく、また、日々浴槽へ自動給湯される前にユーザーが浴槽の排水栓を閉じるとともに浴槽に蓋をしておく必要があり、かかる日々の作業がユーザーにとって煩雑に過ぎるものである。
したがって、日常的には、日々の家族の生活に必要十分な量の貯湯を行える容量の貯湯タンクを設置し、深夜電力時間帯にその翌日の予測使用湯量の湯を沸き上げるようにすることが好ましく、一般家庭用としては例えばタンク容量は370L〜550Lまでの製品がラインアップされており、最大で7人家族が想定されている。
その一方、親戚の家族が揃って来客した場合など、日常で給湯使用することが想定されている人数を大きく超える人数による使用湯量となることが前日に分かっている場合でも、設置されたタンク容量を超える湯量の貯湯を行うことはできず、来客でその日のみ使用湯量が大きくなる場合は高い電気料金の昼間電力によって沸き増しを行うか、効率の悪い瞬間式ガス給湯器を補助熱源として並設して該ガス給湯器によって給湯を行う必要がある。
そこで、本発明は、日常的には翌日の予測使用湯量に応じて深夜電力時間帯に貯湯タンク内への貯湯を行う一方で、翌日に来客などにより貯湯タンクの容量を超える大湯量の使用が予定されている場合でも、極力深夜電力時間帯の安価な電力を利用して沸き増しを行えるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、次の技術的手段を講じた。
即ち、本発明は、貯湯タンクと、動作時に貯湯タンク内の湯水を加熱することにより貯湯タンクへの蓄熱を行う加熱手段と、動作時に前記貯湯タンク内の湯水を使用して所定の湯張り温度で浴槽への湯張りを行う湯張り手段と、前記湯張り手段並びに前記加熱手段の動作を制御する制御手段とを備える貯湯式給湯装置において、前記制御手段は、追加蓄熱量を設定する追加蓄熱量設定手段を備え、過去の湯水使用量の実績に基づく翌日の予測使用熱量と前記追加蓄熱量との合計熱量が前記貯湯タンクの最大蓄熱量を超過しているとき、超過分の熱量の全部若しくは一部を前記貯湯タンクから前記浴槽へ移動させるべく深夜電力時間帯の前記加熱手段による蓄熱途中で前記湯張り手段を動作させることによって予め設定された湯張り設定湯量を上限として浴槽の湯張りを行うとともに、その後深夜時間帯の終了時刻までに前記加熱手段を動作させることによって前記合計熱量から前記浴槽へ移動させた熱量を差し引いた残必要熱量を前記貯湯タンクに蓄熱するように構成されていることを特徴とするものである(請求項1)。
かかる本発明の貯湯式給湯装置によれば、貯湯タンクとしては日常的に家族が使用する予測使用熱量を蓄熱するに十分な容量のものを用いて、追加蓄熱量の設定を行わないことにより、従来と同様に深夜電力時間帯にその翌日の予測使用熱量に応じた貯湯を行うことができる。貯湯タンク内に貯湯された湯水は、翌日の浴槽への湯張りや、給湯栓からの給湯や、各種温水暖房機器における暖房用熱源として使用できる。また、翌日に来客があるなどの理由によって給湯使用量が突発的に大きく増大する予定のあるときは、追加蓄熱量設定手段によって追加蓄熱量を設定する。かかる設定された追加蓄熱量と過去の実績に基づく予定使用熱量との合計熱量が貯湯タンクの最大蓄熱量よりも少ない場合は、従来と同様に深夜電力時間帯に加熱手段を蓄熱運転することによって上記合計熱量のすべてを貯湯タンクに蓄熱できる。一方、上記合計熱量が最大蓄熱量を超えているときは、超過分の熱量の全部若しくは一部を前記貯湯タンクから前記浴槽へ移動させるべく深夜電力時間帯の前記加熱手段による蓄熱途中で前記湯張り手段を動作させることによって予め設定された湯張り設定湯量を上限として浴槽の湯張りを行うとともに、その後深夜時間帯の終了時刻までに前記加熱手段を動作させることによって前記合計熱量から前記浴槽へ移動させた熱量を差し引いた残必要熱量を前記貯湯タンクに蓄熱することにより、より多くの熱量を深夜電力時間帯の安価な電力によって蓄熱することが可能になり、ランニングコストの低減を図ることができる。
なお、本発明の貯湯式給湯装置において、「翌日」とは、深夜電力時間帯が終了した時刻が属する日のことを意味し、例えば、深夜電力時間帯が30日の朝7時に終了する場合は当該30日の朝から夜中までの予測使用熱量が翌日のものとなる。また、貯湯タンクには所定の沸き上げ温度(例えば80℃程度)で所定容量の湯を貯めることができ、この沸き上げ温度で満容量の貯湯がなされた状態が最大蓄熱量の蓄熱がなされている状態となる。すなわち、貯湯タンク内の蓄熱量は、沸き上げられた湯量とその沸き上げ温度とによって定められるものとなり、沸き上げ温度が高くなればそれに伴って最大蓄熱量も上昇し、沸き上げ温度が一定であれば貯湯タンクへの貯湯量と蓄熱量とは線形的な関係となる。浴槽への湯張りは予め設定された設定湯温で行うか、或いは、深夜に湯張りしてからその翌日の入浴予定時刻までの放熱による温度低下分を加味した温度で行うことが好ましく、かかる湯張り温度は上記沸き上げ温度よりも低いため、沸き上げられた高温の貯湯タンク内の湯を上水道等からの低温の水と混合温調して浴槽への湯張りを行うことができる。したがって、上記超過分の熱量を貯湯タンクから浴槽へ移動する場合、浴槽への湯張り湯量は、湯張りに使用される貯湯タンク内の湯量と混合される水との合計量となり、この場合の移動熱量と湯張り湯量とは混合される水の水温の影響も受けるため必ずしも線形的な関係ではない(但し、貯湯タンクから出湯された使用湯量と移動熱量とは線形的な関係となる)。また、翌日の予測使用熱量は、熱容量の値として算出されるものであってもよく、貯湯タンクの沸き上げ温度での貯湯湯量の値に換算したものとして算出されるものであってもよく、また、貯湯タンク内の湯水が給湯栓や浴槽への給湯(湯張りを含む。)にのみ使用される場合においては設定湯温での総給湯湯量(貯湯タンク内から出湯使用される湯量と混合される水の量との合計)の値に近似換算したものとして算出されるものであってもよい。
また、加熱手段による蓄熱途中とは、加熱手段による蓄熱運転を継続しつつ湯張りを行う場合も、湯張りを行うときは一旦加熱手段による蓄熱運転を中断する場合をも含むものである。また、浴槽への湯張りは、深夜電力時間帯に湯張り設定湯量まで行ってもよく、超過分の熱量が少ない場合には超過分のみを浴槽へ移動させるように湯張り設定湯量よりも少ない湯量で湯張りを行うこともできる。また、最後に残必要熱量を貯湯タンクに蓄熱させるが、本発明は残必要熱量を超える量の蓄熱を行うことを除外するものではなく、少なくとも残必要熱量の蓄熱がなされればよい。本発明は突発的な給湯量の増大に対応するものであるが、かかる突発的な給湯使用量の増大分は来客する人の生活習慣等によっても種々であって予測し難いものであるため、本発明の追加蓄熱制御を行う場合には深夜電力時間帯の終了時刻までに貯湯タンクが満蓄状態となるまで蓄熱しておくことも可能である。なお、上記残必要熱量が貯湯タンクの最大蓄熱量よりも大きい場合には、深夜電力時間帯が終了する時刻までに貯湯タンクが満蓄状態となるまで蓄熱すればよく、不足熱量分は日中に昼間電力によって沸き増ししたり瞬間式ガス給湯器などの補助熱源機によって補うことができる。
上記本発明の貯湯式給湯装置において、前記制御手段は、通常の湯張り動作時における浴槽への湯張り設定温度を設定するためのふろ温度設定手段を備え、前記深夜時間帯における超過熱量の移動のために前記湯張り手段を動作させるときは前記湯張り設定温度よりも高い温度で湯張りするように構成されているものとすることができる(請求項2)。これによれば、深夜に浴槽への湯張りを行ってから翌日の入浴予定時刻までの放熱分を加味した温度で湯張りすることによって、入浴時に浴槽内に予め湯張りされた湯温が設定温度となるようにすることができ、ユーザーの利便性が一層向上する。
また、前記追加蓄熱量設定手段の追加蓄熱量の設定はユーザー操作によって行われるように構成されており、前記制御手段は、ユーザー操作によって追加蓄熱量の設定が行われたとき前記合計熱量が前記最大蓄熱量を超えていればユーザーに対して所定の報知を行う報知手段をさらに備えているものとすることができる(請求項3)。これによれば、深夜に浴槽への湯張りが自動的に行われる場合に、ユーザーによる設定操作時に浴槽の栓や蓋を閉じるよう注意喚起する報知を行うことができ、排水栓の閉め忘れによって湯張りのために浴槽に落とし込まれた湯がそのまま排水されてしまったり、蓋の閉め忘れによって湯張りされた湯が自然放熱してしまうことを有効に防止できる。なお、浴槽としては断熱浴槽を用いることが好ましい。
また、前記追加蓄熱量設定手段は、追加人数をユーザーが指定すると該追加人数に応じた追加蓄熱量が自動設定されるように構成することができる(請求項4)。これによれば、予め追加人数に応じた平均的な追加蓄熱量を設定値として持たせておくことで、ユーザーによる追加蓄熱量の設定を簡便に行うことが可能になるとともに、ある程度妥当な追加蓄熱量を設定できる。
以上説明したように、本発明の請求項1に係る貯湯式給湯装置によれば、上記合計熱量が最大蓄熱量を超えているときは、超過分の熱量の全部若しくは一部を前記貯湯タンクから前記浴槽へ移動させるべく深夜電力時間帯の前記加熱手段による蓄熱途中で前記湯張り手段を動作させることによって予め設定された湯張り設定湯量を上限として浴槽の湯張りを行うとともに、その後深夜時間帯の終了時刻までに前記加熱手段を動作させることによって前記合計熱量から前記浴槽へ移動させた熱量を差し引いた残必要熱量を前記貯湯タンクに蓄熱することにより、より多くの熱量を深夜電力時間帯の安価な電力によって蓄熱することが可能になり、ランニングコストの低減を図ることができる。
また、本発明の請求項2に係る貯湯式給湯装置によれば、深夜に浴槽への湯張りを行ってから翌日の入浴予定時刻までの放熱分を加味した温度で湯張りすることによって、入浴時に浴槽内に予め湯張りされた湯温が設定温度となるようにすることができ、ユーザーの利便性が一層向上する。
また、本発明の請求項3に係る貯湯式給湯装置によれば、深夜に浴槽への湯張りが自動的に行われる場合に、ユーザーによる設定操作時に浴槽の栓や蓋を閉じるよう注意喚起する報知を行うことができ、排水栓の閉め忘れによって湯張りのために浴槽に落とし込まれた湯がそのまま排水されてしまったり、蓋の閉め忘れによって湯張りされた湯が自然放熱してしまうことを有効に防止できる。
また、本発明の請求項4に係る貯湯式給湯装置によれば、予め追加人数に応じた平均的な追加蓄熱量を設定値として持たせておくことで、ユーザーによる追加蓄熱量の設定を簡便に行うことが可能になるとともに、ある程度妥当な追加蓄熱量を設定できる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る貯湯式ヒートポンプ給湯装置を示しており、ヒートポンプ作動系2(加熱手段)及び貯湯タンク3により主構成されるヒートポンプ式貯湯装置と、外部から水道水等を貯湯タンク3等に給水するための給水路4と、貯湯タンク3からの貯湯又は瞬間式ガス給湯器6(バックアップ熱源機)で加熱後の湯を用いて給湯栓7等に給湯する給湯路5と、給湯路5からの湯を暖房熱源とする暖房回路8と、同様に給湯路5からの湯を追い焚き熱源とする風呂追い焚き回路9と、この貯湯式給湯システムの作動制御を行うコントローラ10(制御手段)とを備えている。
ヒートポンプ作動系2は、主熱源としてのヒートポンプ21の排熱との熱交換加熱により貯湯タンク3内の湯水を所定温度まで加熱昇温させて貯湯タンク3に蓄熱するためのものである。このヒートポンプ作動系2は、前記ヒートポンプ21と、循環ポンプ22と、沸き上げ切換弁23と、入側温度センサ24と、出側温度センサ25とからなる。そして、コントローラ10による制御による動作時に、例えば、ヒートポンプ21の凝縮用熱交換器(図示せず)において高温状態の冷媒と、循環ポンプ22により貯湯タンク3の底部から供給された水とを熱交換させることで、水が熱交換加熱され、加熱された湯が貯湯タンク3の頂部に戻されて貯湯タンク3内で温度成層を形成して蓄熱されることになる。この際、入側温度センサ24による貯湯タンク3の底部からの湯水温度と、出側温度センサ25による熱交換加熱後の湯水温度との差温の情報、ヒートポンプ21側の冷媒温度や、沸き上げ切換弁23によるヒートポンプ21側への通過流量の調整等に基づき、貯湯タンク3の頂部に戻される熱交換加熱後の湯水温度が所定の沸き上げ温度になるよう運転制御されることになる。
貯湯タンク3は、密閉式で外部との断熱構造を有しており、家族構成や家族の生活習慣等に合わせて日々使用する1日分の給湯量を賄える容量のもの、例えば370L〜550L程度の容量のものが用いられている。貯湯タンク3の上下方向の所定の各位置には、上下方向各位置での内部の貯湯温度を検出する貯湯温度センサ31a,31b,31c,31dが設置されている。
給水路4は、主給水路41の上流端が外部の上水道等に接続され、下流端が逆止弁42を介して貯湯タンク3の底部に接続されている。主給水路41の上流側から逆止弁43を介して分岐した混水用給水路44が給湯路5の後述の第1混合弁55に対し給水可能に接続されている。又、主給水路41の下流側から分岐した分岐給水路45が同じく給湯路5の後述の第2混合弁53に対し給水可能に接続されている。図1の符号46は給水路4により給水される水の温度を検出する給水温度センサである。
給湯路5は、貯湯タンク3の頂部から出湯される貯湯が補助熱源としての瞬間式ガス給湯器6に対し補助加熱のために供給される補助加熱路51と、上記貯湯がそのまま直接に出湯される貯湯直接給湯路52との2つに分岐可能とされている。補助加熱路51は、分岐給水路45からの給水との混合が可能な第2混合弁53及び加熱ポンプ54を経て瞬間式ガス給湯器6に貯湯を導き、この瞬間式ガス給湯器6で補助加熱した上で最終温調用の第1混合弁55まで出湯路60を通して導くようになっている。この際、瞬間式ガス給湯器6と第1混合弁55との間の出湯路60で補助加熱後の湯(補助加熱湯)が閉止機能付きの第1比例弁56を通過するようにされている。貯湯直接給湯路52は、下流端が上記の第1比例弁56の下流側の出湯路60に対し合流点50で合流することにより、上記の第1混合弁55に貯湯を供給し得るようになっている。図1中の符号58は第1混合弁55の下流側位置において最終的に給湯される湯の給湯温度を検出する給湯温度センサであり、符号59は機器異常の発生等に起因する高温水の給湯を阻止して回避するために開作動されて混水用給水路44からの水を供給するための高温出湯回避弁である。又、符号61は給湯のための第2比例弁、62は瞬間式ガス給湯器6により補助加熱された後の湯の温度を検出する加熱後温度センサである。
暖房回路8は、暖房循環路81内の暖房用の循環熱媒を熱交換器82で液−液熱交換により加熱し、加熱した循環熱媒を高温暖房端末(例えば浴室乾燥機)83や、低温暖房端末(例えば床暖房)84に対し循環供給するようになっている。そして、上記の熱交換器82での液−液熱交換の加熱源(暖房熱源)として、瞬間式ガス給湯器6から出湯される加熱後の湯、又は、非作動状態の瞬間式ガス給湯器6を素通りした貯湯タンク3内の湯が、熱交換器82の熱源側に循環供給されるようになっている。すなわち、瞬間式ガス給湯器6の下流側の出湯路60の分岐点80から分岐した熱源供給路85を通して熱源として湯が熱交換器82に暖房用熱源として供給され、液−液熱交換により温度低下した湯が開閉電磁弁86を経て分岐給水路45に導出され、通常時であれば、この分岐給水路45を介して第2混合弁53に導かれた後、加熱ポンプ54を介して瞬間式ガス給湯器6に戻されて再加熱されるというように循環されることになる。又、熱交換器82での液−液熱交換により加熱された循環熱媒は、高温暖房端末83又は低温暖房端末84に供給されて放熱された後、膨張タンク87及び暖房ポンプ88を経て上記熱交換器82に戻されて再加熱されることになる。
風呂追い焚き回路9は、追い焚きポンプ91を作動させることにより浴槽92内の湯水を追い焚き循環路93を通して熱交換器94との間で循環させ、この熱交換器94での液−液熱交換により追い焚き加熱するようになっている。熱交換器94の熱源側には、暖房回路8と同様に、瞬間式ガス給湯器6から出湯される加熱後の湯又は貯湯タンク3内の湯が分岐点90から分岐された熱源供給路95を通して追い焚き用の加熱源として循環供給され、熱交換器94での液−液熱交換により温度低下した湯が開閉電磁弁96を経て分岐給水路45に導出され、以後、通常時であれば、上記と同様に瞬間式ガス給湯器6に戻されて再加熱されるというように循環されることになる。上記追い焚き循環路93には、第1混合弁55で温調された後の湯水を給湯路5から分流させる注湯路97が接続されており、該注湯路97を介して温調された後の湯水が浴槽92に供給され、湯張りを行うことができるようになっている。注湯路97には電磁開閉弁からなるふろ落とし込み弁98(湯張り手段)が設けられ、該ふろ落とし込み弁98の動作時、即ち開弁によって貯湯タンク3から浴槽92への湯水供給路が開き、浴槽92に注湯可能となっている。
以上の各回路5,8,9が熱負荷作動系11を構成する。そして、ヒートポンプ作動系2と、熱負荷作動系11との運転動作は、リモコン100からの入力設定信号や操作信号の出力や、種々の温度センサ24,25,31a〜31d,46,58,62等からの検出信号の出力を受けて、コントローラ10により動作制御されるようになっており、特に、ヒートポンプ作動系2による貯湯タンク3内の湯水の沸き上げ動作(貯湯動作)は、夜11時〜朝7時までの深夜電力時間帯に行うようになっている。なお、本実施形態では、上記コントローラ10とリモコン100とによって、湯張り動作を行うための湯張り手段としての給湯路5及びふろ落とし込み弁98、並びに、貯湯タンク3内の湯水の加熱手段としてのヒートポンプ作動系2を制御する制御手段が構成されている。なお、図1においてはリモコン100は一つのみ示したが、台所リモコンと浴室リモコンなど2つ以上のリモコンを設けることも可能である。リモコン100は、ユーザーの操作によって給湯栓7及び浴槽92への給湯温度を設定可能に構成されており、かかる設定温度を最終給湯温度の目標温度として、コントローラ10が、給湯温度センサ58や給水温度センサ46等の検出値に基づいて第1混合弁55における湯と水との混合割合を制御するようになっている。而して、リモコン100によって、通常の湯張り動作時における浴槽92への湯張り設定温度を設定するためのふろ温度設定手段が構成されている。
コントローラ10は、CPUや書き換え可能メモリを備えるマイコンによって主構成されており、メモリに記憶されたプログラム及び各種データに基づいて貯湯タンク3への蓄熱動作制御や給湯制御、並びに、浴槽92への湯張り動作制御などを行うようになっている。かかる制御内容は従来公知の種々のものを採用できる。本実施形態では特に、ヒートポンプ作動系2による蓄熱動作制御に関連して、コントローラ10が過去の湯水使用量実績情報を記憶する実績情報記憶手段を備えている。該記憶手段は、例えば各曜日毎に設けることができ、各曜日の湯水使用量実績情報として、給湯栓7、暖房回路8、風呂追い焚き回路9及び浴槽92への貯湯タンク3内の湯水の曜日毎の1日分の総使用量実績値を記憶しておくことができ、上記瞬間式ガス給湯器6による補助加熱が行われた際には当該補助加熱分に相当する湯量をも使用量実績値に考慮することができる。各曜日の湯水使用量実績値は、過去の同じ曜日の実使用量に基づいて設定でき、ユーザーの生活習慣の変動に対応するために、コントローラ10は、直近の終了した日の実使用量を、給湯路5等の適宜の位置に設けた流量センサの検出値に基づいて算出取得し、取得した直近の日の実使用量と対応する曜日の湯水使用量実績値との平均値を、適宜丸め処理などを行った上で当該曜日の湯水使用量実績値として更新記憶させることができる。かかる湯水使用量実績の学習方法はその他適宜のものであってよく、特定の学習方法に限定されるものではない。
さらに、コントローラ10は、湯水使用量実績情報記憶手段に記憶された上記の湯水使用量実績情報に基づいて深夜電力時間帯の翌日の予測使用熱量を予測する。なお、この予測使用熱量の単位は、熱力学上の熱量の単位として用いられているジュール(J)やカロリー(cal)であっても良いが、本実施形態の給湯装置においては貯湯タンク3への貯湯温度(沸き上げ温度)が80℃などの所定温度となるように制御され、かかる貯湯温度で貯湯された貯湯量と蓄熱された熱量とはほぼ線形の関係となるから、貯湯タンク3における所定の貯湯温度での貯湯量を蓄熱された熱量とみなすとともに、翌日に貯湯タンク3から出湯されると予測される所定の貯湯温度の湯量を予測使用熱量とみなして制御することが可能である。なお、本実施形態では、暖房回路8やふろ追い焚き回路9との間の熱交換加熱のためにも貯湯タンク3内の貯湯を利用するものであるため、給湯栓7や浴槽92への1日の総給湯量と、その日に貯湯タンク3から出湯された湯量との間の関係は不定(暖房運転や追い焚き運転の程度による)であるが、これら暖房回路8やふろ追い焚き回路9を備えない給湯装置の場合には設定給湯温度での1日の総給湯量と貯湯タンク3からの出湯湯量との間もほぼ線形的な関係となるので、翌日の予測総給湯量を予測使用熱量とみなして制御することも可能である。
上記予測使用熱量の予測は、湯水使用量実績情報として記憶されている運転当日の曜日に対応する情報をそのまま予測使用熱量として用いるものであってもよいし、天候や気温や給水温度などに基づいて適宜補正した上で時間帯別予測使用湯量として予測するものであってもよく、また、深夜に貯湯されてから実際に使用されるまでの貯湯タンク3からの放熱分を加味して補正することも可能である。
このようにして求められた翌日の予測使用熱量に基づき、コントローラ10は、深夜電力時間帯にヒートポンプ作動系2を動作させることによって深夜電力時間帯の終了時刻までに予測使用熱量を貯湯タンク3に蓄熱するよう制御する。好ましくは、ヒートポンプ作動系2の出力(蓄熱速度)と貯湯タンク3内に残っている貯湯量とから、予測使用熱量(湯量)が蓄熱(貯湯)されるまでの沸き上げ必要時間を演算し、深夜電力時間帯の終了時刻から沸き上げ必要時間を逆算することによって沸き上げ開始時刻を求め、この沸き上げ開始時刻からヒートポンプ作動系2による蓄熱動作を開始することが好ましい。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、深夜電力時間帯の開始時刻からヒートポンプ作動系2を作動させても勿論構わない。
また、本実施形態に係る貯湯式給湯装置は、来客時などの臨時で大容量の給湯が必要になる場合に、リモコン100の所定の操作によって夜間の蓄熱量を大幅に追加できるように構成されており、該リモコン100が追加蓄熱量設定手段を構成している。また、コントローラ10は、追加蓄熱量と翌日の上記予測使用熱量との合計熱量が貯湯タンク3の最大蓄熱量を超過しているときにのみ深夜電力時間帯に沸き上げた湯を使用して深夜電力時間帯に予め翌日の湯張りの全部若しくは一部を行うように構成されている。かかるコントローラ10及びリモコン100からなる制御手段の追加貯湯設定時の処理フローチャートを図2に例示している。なお、追加蓄熱量が設定されていないときは、上述のように従来と同様の貯湯運転を行うことができる。
なお、追加蓄熱量の設定方法は種々のものとすることができ、例えば、リモコン100に設けた貯湯量追加操作部を操作すると一定量の追加蓄熱量(例えば設定給湯温度で100L分の熱量)が設定されるようにしてもよく、また、設定給湯温度での追加給湯量をリモコン100によって任意に数値指定することによって設定すると当該設定値に応じた追加蓄熱量が算出され設定されるようにしてもよく、また、予め用意された複数の設定項目からユーザーが選択することによって選択された設定項目に応じた追加蓄熱量が設定されるように構成することもできる。また、上記予測使用熱量(湯量)を表示して、ユーザーが合計蓄熱量(予測使用熱量+追加蓄熱量)を直接入力するようにして、この合計蓄熱量と予測使用熱量との差を求めることで追加蓄熱量を設定することもできる。さらに、リモコン100によって来客等による追加人数の指定をユーザーが行えるように構成しておき、追加人数をユーザーが指定すると該追加人数に応じて予め定められた追加蓄熱量が自動設定されるようにしてもよい。例えば、追加蓄熱量は、一人あたりの予想使用熱量に追加人数を乗算した値とすることができ、具体例としては、追加蓄熱量={(シャワー流量×シャワー時間×設定給湯温度)+(洗面流量×洗面時間×設定給湯温度)}×追加人数、のような計算指針に基づいて算出できる。
以下、図2を参照しつつ、本実施形態の給湯装置における制御構成の特徴並びにその動作について説明する。
リモコン100は、ユーザーの操作によって追加蓄熱量の設定変更がなされると(ステップS1)、設定された追加蓄熱量と翌日の予測使用熱量との合計熱量が貯湯タンク3の最大蓄熱量を超えていれば(ステップS2)、ユーザーに対して浴槽92の排水栓と蓋とを閉じるよう注意喚起を行うための報知を行うように構成されている(ステップS3)。而して、かかるリモコン100によって、ユーザー操作によって追加蓄熱量の設定が行われたとき前記合計熱量が前記最大蓄熱量を超えていればユーザーに対して所定の報知を行う報知手段が構成されている。
次に、現在時刻が深夜電力時間帯となるまで待機し(ステップS4)、深夜電力時間帯となった後にヒートポンプ作動系2を動作させることによって貯湯タンク3への蓄熱(貯湯)を開始する(ステップS5)。なお、上述したように、深夜電力時間帯が開始した直後から蓄熱を開始してもよいが、深夜電力時間帯の終了時刻に蓄熱が完了するように蓄熱完了までの所要時間を逆算して蓄熱を開始する開始時刻を設定することが好ましい。
蓄熱開始後、予想使用熱量と追加蓄熱量との合計熱量が貯湯タンク3の最大蓄熱量を超過していなければ(ステップS6)、ステップ11へ移行して合計熱量の蓄熱完了までヒートポンプ作動系2による蓄熱運転を継続させる。一方、上記合計熱量が貯湯タンク3の最大蓄熱量を超過している場合には、ステップS7〜ステップS10からなる湯張り制御を蓄熱途中で行うように構成されている。
すなわち、ステップS7では、蓄熱運転中にふろ落とし込み弁98を開制御することにより浴槽92への湯張りを開始し、また、給湯路5の第1混合弁55等を制御することによって浴槽92へ供給される湯温を湯張り設定温度に調整する。ここで、湯張りを開始するタイミングは、好ましくは浴槽への湯張りのための給湯量に応じた量の沸き上げられた湯が貯湯タンク3内に貯湯されるのを待って、その後一旦蓄熱運転を中断した状態で行うのがよいが、適温で湯張りが可能であるならば蓄熱開始直後に蓄熱運転を継続しつつ湯張りを開始しても構わない。また、浴槽92への給湯温度(落とし込み温度)は、翌日の入浴時間帯までの放熱を考慮して、かかる放熱による温度低下分を加味して設定給湯温度よりも若干高い温度とすることができる。
湯張り開始後、浴槽92への落とし込み湯量がリモコン100で設定された湯張り設定湯量を超えると(ステップS8)、ふろ落とし込み弁98を閉制御することで湯張りを停止する(ステップS10)。このように、予め設定された湯張り設定湯量を上限として浴槽92の湯張りを行うように制御することにより、浴槽92から湯が溢れて熱量を無駄にしてしまうことを防止できる。
落とし込み湯量が湯張り設定湯量以下である間は、浴槽92への湯張りのために使用された貯湯タンク3内の熱量(貯湯湯量)が、貯湯タンク3の最大蓄熱量に対する上記合計熱量の超過熱量を超えるまで浴槽92への落とし込みを継続し(ステップS9)、これにより超過熱量が、湯張りされた湯水の状態で浴槽92内に移動される。なお、かかるステップS9に代えて、上記湯張り使用熱量が上記超過熱量を超えても湯張りを継続させ、湯張り設定湯量まで浴槽92への落とし込みを行っておくことも可能である。
そして、ふろ落とし込み弁98を閉制御することで湯張りを停止し(ステップS10)、その後、貯湯タンク3内に、上記合計熱量から浴槽92へ移動した熱量を差し引いた残必要熱量の蓄熱が完了するまでヒートポンプ作動系2による蓄熱運転を継続させる。
なお、上記ステップS9の条件成立によって浴槽92への湯張り量が湯張り設定量よりも少ない湯張り途中の状態で湯張りが停止した場合には、リモコン100によって設定された沸き上がり時刻の直前に不足分の湯量の落とし込みを浴槽92に対して行うように制御構成することができる。また、保温浴槽を用いた場合でも深夜電力時間帯の終了時刻からその翌日の入浴時刻までは12時間程度もあるため浴槽92内の湯温が35℃程度まで低下することもあるが、その場合にはユーザーの追い焚き操作によって追い焚き運転を開始して適温にすればよく、この場合でも深夜電力を用いて予め湯張りすることなく入浴直前に湯張りするよりも効率がよく、光熱費の節減を図れるとともに、環境にも優しい製品とすることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。例えば、加熱手段としては、ヒートポンプに代えて電力効率は劣るが電熱器を採用することも可能である。