第1の発明は、貯湯槽と、浴槽と、前記貯湯槽内の湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯槽内の湯水と前記浴槽内の湯水とが熱交換する熱交換器と、前記熱交換器に前記浴槽内の湯水が循環するように接続された浴槽循環路と、前記貯湯槽内の略上部の湯が前記熱交換器に流れるように切換手段を介して前記熱交換器に接続された熱交往き管と、前記熱交換器で前記浴槽の湯水と熱交換された湯水が再び前記貯湯槽内へ戻るように前記貯湯槽に接続された熱交戻り管と、前記貯湯槽の略下部の湯水が前記熱交換器に流れるように、前記加熱手段、前記切換手段を順に介して前記熱交換器に接続された熱回収往き管と、前記加熱手段にて加熱された湯水が前記貯湯槽内に戻るように、前記切換手段から前記貯湯槽に接続された沸き上げ戻り管と、制御手段とを備え、前記熱交換器により前記浴槽の湯の有する熱を前記貯湯槽の湯水に回収する熱回収運転を行うときには、前記熱回収往き管、前記加熱手段、前記切換手段、前記熱交換器、前記熱交戻り管の順に前記貯湯槽からの湯水が流れるように、また、前記加熱手段により前記貯湯槽内の湯水を加熱する沸き上げ運転を行うときには、前記熱回収往き管、前記加熱手段、前記切換手段、前記沸き上げ戻り管の順に前記貯湯槽からの湯水が流れるように、また、前記貯湯槽の湯が有する熱を利用して前記熱交換器により前記浴槽の湯水を保温する保温運転を行うときには、前記浴槽の湯水を前記浴槽循環路で循環させるとともに、前記熱交往き管、前記切換手段、前記熱交換器、前記熱交戻り管の順に前記貯湯槽からの湯が流れるように、前記制御手段が前記切換手段を切り換える構成としたことを特徴とする給湯装置である。
これにより、熱回収時に使用する配管の一部を、貯湯槽内の湯水の沸き上げ運転時にも使用する構成とすることができ、低コスト化を実現した給湯装置を提供できる。
第2の発明は、前記熱回収運転停止後の前記加熱手段の加熱運転時における入力が略最小となるように、前記熱回収運転を停止させることを特徴とするものである。
これにより、熱回収運転中の貯湯槽の温度分布に基づき、加熱手段によって所定の貯湯量を沸き上げるための消費熱量(消費電力)が最小となる時点を判断して、熱回収運転を停止するので、本来の目的であるシステム全体としての効率向上を実現し、省エネルギー性を高める効果がある。
第3の発明は、前記貯湯槽の略上部に接続された第1の出湯管と、前記貯湯槽の下部に接続された給水管と、前記貯湯槽の上下方向において前記第1の出湯管が接続された位置と前記給水管が接続された位置との間に接続された第2の出湯管とを備え、前記熱交戻り管は、前記貯湯槽の上下方向において、前記第2の出湯管の前記貯湯槽の接続位置よりも高い位置にて、前記貯湯槽に接続されていることを特徴とするものである。
これにより、温度成層型の貯湯槽において不可避な貯湯槽上部の高温水と下部の低温水との間にできる中間程度の温度の水(以下、中温水)を有効に利用できる結果として、同じ蓄熱量でも貯湯槽下方に低温の水が多く確保できることから浴槽水からの回収熱量を大きくできる。
また、熱回収により発生した中温水を貯湯槽の比較的上部に流入させることは、増加しながら貯湯槽下方に移動する中温水を、熱回収した湯の流入位置よりも下にある第2の出湯管を通じて給湯に利用できるので、貯湯された湯の熱量を最大限有効に使うことができる。同時に加熱手段がヒートポンプユニットである場合には、沸き上げ効率の低下を招く貯湯槽内の中温水が減少することでシステム全体の効率低下を防ぐことができ、熱量の有効利用による良好な使い勝手と高い省エネルギー性とを実現する。
さらに、浴槽水がないかまたは少ない場合に熱回収運転を始めると、第2の出湯管と熱交戻り管を適切な位置に設置することによって中温水をうまく利用して貯湯槽下部に多くの低温の水を確保する構成にもかかわらず、第1の搬送ポンプを作動させることによって貯湯槽内に中温水を増大させることになる。
この場合は熱回収の効果が得られない上に、ヒートポンプユニットでの沸き上げの際に効率を低下させてしまうが、予め浴槽湯量を検知して熱回収運転の実行を判断するので、第2の出湯管と熱交戻り管の接続位置の最適化によって得られる高い省エネルギー性を損なわない。
第4の発明は、使用者が前記熱回収運転を起動するスイッチを備えたことを特徴とするもので、自動で設定されるなどした熱回収運転の起動スケジュールによらず、以降の入浴が発生しないと使用者が判断した時点で熱回収運転を始めることができるので、浴槽からの無駄な放熱が抑えられて省エネルギー性が高まるという効果がある。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における給湯装置の構成を示す図である。
図1において、給湯装置は、貯湯槽1と、この貯湯槽1の水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニット2と、熱回収を行う対象の浴槽3と、浴槽3の水と貯湯槽1の水とを熱交換するように構成された熱交換器4と、貯湯槽1に接続された給水管14と、貯湯槽1の略上部に接続された第1の出湯管22と、第1の出湯管22と給水管14とが接続された位置の間、すなわち、高さ方向において貯湯槽1の胴部略中央部に接続された第2の出湯管23とから構成されている。
また、給湯装置は、第1の出湯管22と第2の出湯管23とが入口側に接続された高温水混合弁24と、この高温水混合弁24の出口側に接続され、貯湯槽1内の高温水を供給する高温水供給管8と、給水管14から分岐され、貯湯槽1内または給水管14からの低温水を供給する低温水供給管9と、これら高温水供給管8と低温水供給管9とを入口側に接続された混合弁11と、この混合弁11の出口側に接続された給湯管10と、給湯管10の途中に接続された開閉弁13から構成されている。
また、貯湯槽1内の略上部の湯が前記熱交換器4に流れるように切換手段32を介して前記熱交換器4に接続された熱交往き管33と、前記熱交換器4で浴槽3の湯と熱交換し
た貯湯槽1の湯水を再び貯湯槽1へ戻すように、貯湯槽1の高さ方向において第1の出湯管22と第2の出湯管23との間の位置で、貯湯槽1の略中央部とに接続された熱交戻り管16とから構成されている。
また、貯湯槽1内の湯水を加熱して、再び貯湯槽1内に貯湯する沸き上げ運転時には、図1に示すように、前記加熱手段であるヒートポンプユニット2にて所定温度に加熱された湯が、前記貯湯槽1の略上部に戻るように、前記貯湯槽1の略下部に接続された熱回収往き管35が、前記ヒートポンプユニット2、前記三方弁37を順に介して、前記切換手段32に接続され、前記切換手段32は、前記貯湯槽1の略上部に接続された沸き上げ戻り管36に接続される。
また、熱回収運転時には、図8に示すように、前記貯湯槽1の略下部の湯水が前記熱交換器4に流れるように、前記貯湯槽1の略下部に接続された熱回収往き管35が、前記加熱手段であるヒートポンプユニット2、三方弁37を順に介して、前記沸き上げ運転時に対して流路を切り換えた前記切換手段32に接続され、前記切換手段32は、前記熱交戻り管16に接続される。
さらに、給湯装置は、貯湯槽1と熱交換器4の第1の流路内の水を循環させる第1の搬送ポンプとしての貯湯槽水搬送ポンプ5aと、熱交換器4の第2の流路内へ浴槽3の水が循環するように接続された浴槽水循環配管12と、浴槽3と熱交換器4の第2の流路内の水を循環させる第2の搬送ポンプとしての浴槽水搬送ポンプ5bとから構成されている。
ここで熱交戻り管16は、貯湯槽1の上下方向において第1の出湯管22と第2の出湯管23の間の位置で貯湯槽1に接続される。浴槽3への給湯の際は浴槽水循環配管12を利用する。
また、浴室内もしくは洗面、台所に設置されたリモコン25には、使用者が任意に熱回収運転を起動するための熱回収運転起動スイッチ26を設け、浴槽水循環配管12には、浴槽湯量検知手段として水圧を測定することにより浴槽3の湯の水位を検知する水位センサ27と、浴槽3の水温を検知するための浴槽水温検知手段17とを設けており、貯湯槽1には、貯湯槽1内の水温を検知するための複数の貯湯温検知手段28a〜28eを設けている。
また、浴槽水循環配管12には浴槽水検出手段31が設けてあり、浴槽水を循環した場合に浴槽水の有無を検出することができる。浴槽水検出手段31はフロースイッチもしくは流量センサでも用いることが可能である。
さらに、これら複数の貯湯温検知手段28a〜28eと水位センサ27と浴槽水温検知手段17の出力および熱回収運転起動スイッチ26の操作に基づいて、浴槽3への給湯およびそれ以降予め設定された時間だけ浴槽水の保温と水量維持を行う風呂自動運転を制御する給湯制御手段としての風呂自動運転制御手段29と、浴槽3内の水を加熱する追い焚き運転を制御する追い焚き運転制御手段30と、貯湯槽1に浴槽3の水の熱を回収する熱回収運転を制御する熱回収運転制御手段21とからなる運転制御手段18を設けている。
図2は熱回収運転制御手段21のブロック図を示し、水位センサ27の出力および風呂自動運転制御手段29の動作状態あるいは熱回収運転起動スイッチ26などから熱回収運転制御手段21が起動した場合、熱回収運転の開始を判断する熱回収運転開始判断部50と、ヒートポンプユニット2による沸上運転を制御する沸上運転制御手段(図示せず)から貯湯後の給湯利用に必要な貯湯熱量を取得する所要貯湯熱量取得部51と、貯湯温検知手段28a〜28eにより貯湯温度分布を測定する貯湯温度分布測定部52と、これら所
要貯湯熱量取得部51と貯湯温度分布測定部52で得られた結果に基づいて必要な沸上熱量を算出する必要沸上熱量算出部53と、貯湯温度分布測定部52による現在の温度分布と必要沸上熱量算出部53から沸上完了時の温度分布を推定する沸上完了時貯湯温度分布推定部55とからなる。
さらに、貯湯温度分布測定部52による現在の温度分布から沸上完了時貯湯温度分布推定部54での沸き上げ完了時の推定温度分布に至る間のヒートポンプユニット2への入力を推定する沸上所要入力推定部55と、この沸上所要入力推定部55による入力推定値の時間変化に基づいて貯湯槽水搬送ポンプ5a、浴槽水搬送ポンプ5bとを制御するポンプ制御部56とからなる。
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。
一般的な家庭での湯の利用における基本的な動作として、朝には貯湯槽1にその日使う分の湯が貯えられており、活動している時間帯に順次給湯に利用される。給湯利用中に貯湯量が不足する場合には必要に応じてヒートポンプユニット2を運転し、追加で貯湯運転を行うこともある。
近年では、浴槽3への給湯から保温までを自動で行う風呂自動運転の機能を備えている給湯装置が多くなっている。風呂自動運転制御手段29により浴槽3への給湯および保温運転を行う場合は、貯湯槽1内に貯えられている湯を用いて浴槽3へ給湯し、浴槽水温が低下した場合には、貯湯槽1内に貯えられている湯の熱を利用して保温運転をおこない、浴槽水温を予め設定された温度に保つ。また、追い焚き運転制御手段30により追い焚き運転をおこなって浴槽3内の湯を加温する場合も、貯湯槽1内に貯えられている湯の熱を利用して行う。
これら一日の給湯などの熱利用が終わる時点で貯湯槽1内の湯は大部分が給水と置換され、その後の深夜に再び次の利用のための貯湯するための加熱運転がおこなわれる。このとき、入浴のために浴槽3に供給された湯は、給湯利用終了時には貯湯槽1内の水温に対して比較的高温で残されていることが多いので、熱回収運転制御手段21が、ヒートポンプユニット2による深夜の沸上運転の前、あるいは運転中に熱回収運転をおこなって貯湯槽1内に熱を回収する。
次に、風呂自動運転、追い焚き運転、および熱回収運転の制御方法について説明する。風呂自動運転制御手段29は、浴槽3へ所定量の湯を所定温度で自動で給湯し、その後、浴槽水温を予め設定された時間だけ予め設定された温度に保つように間欠的に保温動作を行う(風呂自動運転)。
風呂自動運転をおこなっている間は、保温動作を行う必要があるかないかを判断するために、定期的に浴槽湯温を検出するための浴槽湯温検知動作を行う。浴槽水温の検知は浴槽水温検知手段17でおこない、その結果、浴槽水温が予め設定された温度より所定温度以上(例えば1K以上)低い場合には、保温運転をおこなって浴槽水温を保ち、所定温度未満の場合には、保温運転をおこなわない。
この際、風呂自動運転と熱回収運転の関係は、どちらも同等であり、使用者による熱回収運転起動スイッチ26の操作で、熱回収運転制御手段21が起動した場合は、熱回収運転開始の指示を受けて熱回収運転は行う。
ただし、風呂自動運転を優先とし、使用者による熱回収運転起動スイッチ26の操作で熱回収運転開始の指示を受けても熱回収運転制御手段21は熱回収運転を行わず、一旦待
機を行い、ふろ自動運転が終了した後に、熱回収運転を行うように制御することも可能である。
逆に、熱回収運転中に風呂自動運転制御手段29が風呂自動運転開始の指示を受けた場合にも、使用者による、風呂自動運転操作を優先として、熱回収運転制御手段21は熱回収運転を停止し、風呂自動運転制御手段29が風呂自動運転を開始する(図3に概念図を示す)。
追い焚き運転制御手段30は、浴槽3内の湯を循環加温し、浴槽水温検知手段17が検知する浴槽水温が所定の温度になる、または動作開始から所定の時間経過すると終了する(追い焚き運転)。
追い焚き運転制御手段30が追い焚き運転を行っている間も、追い焚き運転と熱回収運転との関係は、使用者による操作を優先とし、使用者による熱回収運転起動スイッチ26の操作で熱回収運転制御手段21が起動した場合は、追い焚き中でも熱回収運転開始の指示を受けて、熱回収運転は行うように制御する。
ただし、追い焚き運転を行っている間は、追い焚き運転を優先とし、熱回収運転制御手段21は熱回収運転を行わず、追い焚き運転が終了した後に、熱回収運転を行うように制御することも可能である。
逆に、熱回収運転中に追い焚き運転制御手段30が追い焚き運転の指示を受けた場合にも、追い焚き運転を優先として、熱回収運転制御手段21は熱回収運転を停止し、追い焚き運転制御手段30が追い焚き運転を開始する(図4に概念図を示す)。
各々の運転を行う場合の弁およびポンプの動作と、それに伴う水および湯の流れについて図5〜図8を用いて説明する。図中、流れのある経路は太線で示してある。
まず、風呂自動運転制御手段29が風呂自動運転を行うときの動作について説明する。最初に浴槽3へ給湯を行う場合における回路中の水および湯の流れを図5に示す。貯湯槽1からは、第1の出湯管22と第2の出湯管23からの湯を高温水混合弁24で混合して高温水供給管8へ供給する。
この高温水供給管8に供給された湯と給水管14から低温水供給管9へと供給される給水とが混合弁11にて給湯所望温度の湯に混合され、給湯管10へと供給される。ここで、高温水混合弁24から高温水供給管8に供給される湯の温度は、上記の給湯所望温度よりも所定温度以上高い温度(たとえば給湯所望温度が40℃の場合に45℃以上)に調節されている。
開閉弁13は開かれ、給湯管10へと供給された所望温度の湯は、浴槽水循環配管12より浴槽3へと給湯される。なお、高温水混合弁24と混合弁11の開度は、それぞれ出口側に接続された高温水供給管8と給湯管10に供給される湯の温度に基づいてフィードバック制御されるのが一般的であり、高温水混合弁24については第1の出湯管22と第2の出湯管からの湯、混合弁11については高温水供給管8からの湯と低温水供給管9からの給水の温度により変化する。
浴槽3内の湯を保温する場合における回路中の水および湯の流れを図6に示す。貯湯槽水搬送ポンプ5aと浴槽水搬送ポンプ5bとが運転を開始し、貯湯槽水搬送ポンプ5aの運転により、貯湯槽1の略上部より高温のお湯が第1の出湯管22から熱交往き管33を経て切換手段32へと湯が供給され、熱交換器4へと供給される。
このとき、熱交換器4にて浴槽水循環配管12を循環する浴槽3の湯を加熱して、浴槽水温を上昇させる。一方、熱交換器4を出て比較的低温となった湯は熱交戻り管16を経て貯湯槽1の略中央部へと還流する。
浴槽3内の水温を検知するための浴槽水温検知動作を行う場合における回路中の水および湯の流れを図7に示す。浴槽水搬送ポンプ5bが運転を開始し、浴槽水循環配管12内を浴槽3内の湯が循環する。このとき、貯湯槽水搬送ポンプ5aは運転をおこなわない。浴槽水温検知手段17が浴槽水温を検知し、保温動作をするかしないかを判断する。
次に、追い焚き運転制御手段30が追い焚き運転を行う場合の動作であるが、追い焚き運転を行う場合における回路中の水および湯の流れは風呂自動運転制御手段29が保温動作を行う場合と同じで図6に示す通りであるので省略する。
最後に、熱回収運転制御手段21が、浴槽3に残された湯の熱回収運転を行う場合における回路中の水および湯の流れを図8に示す。浴槽水搬送ポンプ5bを運転させ、その後、貯湯槽水搬送ポンプ5aの運転させ、熱回収運転を開始すると、貯湯槽1の略下部からの湯水が前記熱交換器4に流れるように、熱回収往き管35、前記加熱手段であるヒートポンプユニット2、三方弁37を順に介して前記熱交換器4に接続された熱回収往き管35から供給される。
このとき、貯湯槽1の略下部から供給された湯水は上記記載の経路への供給により、熱交換器4へと供給される。供給された湯水は、熱交換器4にて浴槽水循環配管12を循環する浴槽3の湯と熱交換をおこなって熱を回収する。一方、熱交換器4を出て比較的高温となった湯は熱交戻り管16を経て貯湯槽1へと還流する。
なお、浴槽水搬送ポンプ5bによる湯の搬送量を貯湯槽水搬送ポンプ5aによる湯水の搬送量より大きくすることで、浴槽水搬送ポンプ5bによる必要流量が確保されて、浴槽3内の温度分布が均一化され、浴槽3から安定的に熱回収を行うことができるとともに、貯湯槽水搬送ポンプ5aによる搬送流量が過大になって、貯湯槽1内の湯水が攪拌されることなく、温度成層を保持できるため、後述する貯湯槽1内の湯水の沸き上げ運転を効率的に行うことが可能となる。
熱回収運転をおこなった場合の貯湯槽1内の温度分布は図9に示す40、41、42の順に変化する。つまり、浴槽3と熱交換されて熱交戻り管16から貯湯槽1に流入する水43の温度は貯湯槽1の貯湯温よりも低い場合が多く、貯湯槽水搬送ポンプ5aの作用によって貯湯槽1の湯と混合しつつ貯湯槽1の下方に向けて移動する。
第2の出湯管23の接続位置は熱交戻り管16の接続位置よりも下部にあるので、給湯が発生すると、下がってきた中温の水44を第2の出湯管23から出湯し、第1の出湯管からの高温水46と混合して利用することができる。図9に示す45は、熱回収後に給湯が発生した場合の温度分布を示している。このように第2の出湯管23が熱交戻り管16の貯湯槽への接続位置よりも下にあることで、回収した熱を効果的に利用することができる。
給湯の発生が比較的少なく、使い切れないで残った中温の水は、ヒートポンプユニット2で再加熱して利用することになるが、ヒートポンプユニット2の運転効率は、図10に示すように加熱前の水温が高いほど低下する。
図9に示した貯湯槽1の温度分布からわかるように、熱回収運転後のヒートポンプユニ
ット2による必要加熱量は、浴槽3からの回収熱量が増加するほど少なくなるものの、それと同時にヒートポンプユニット2で加熱する前の水温は高くなって、再加熱時の運転効率は低下するので、できるだけ多くの熱回収を行うことが必ずしも省エネルギーにつながらない。
すなわち、ヒートポンプユニット2への入力(消費熱量あるいは消費電力)は、所要貯湯熱量を得るための熱回収前の必要加熱量から熱回収運転によって得られた回収熱量を減じたものを、ヒートポンプユニット2による貯湯運転中の平均効率で除したものとなり、この値は図11に示すように、回収熱量に対して最小値を有する場合がある。
したがって、浴槽3からの熱回収運転を、熱回収運転停止後に行われる再加熱運転において、ヒートポンプユニット2への入力が略最小となる時点で停止することが、より高い省エネルギー効果を得るために必要である。
最小値となる時点を見つける具体的な方法としては、所定の時間間隔で測定される貯湯槽1の温度分布に基づいて予想されるヒートポンプユニット2への入力値の刻々の変化の推移を求めて、その値の減少度合いが小さいか減少しなくなる、あるいは増加に転じることで判断する。
図10に示したように、貯湯槽1内の湯水をヒートポンプユニット2にて加熱する場合、貯湯槽1からヒートポンプユニット2に水を搬送させる部位の温度(本実施の形態においては、貯湯槽1の下部の温度)が低くなるにつれて、ヒートポンプユニット2の運転効率は高くなるが、浴槽3からの熱回収運転時、浴槽3から熱回収した水が貯湯槽1内に流入してくることで、貯湯槽1からヒートポンプユニット2に水を搬送させる部位の温度が上昇し始める状態が存在する。
したがって、浴槽3からの熱回収運転時に、貯湯槽1のヒートポンプユニット2に水を搬送させる部位の温度を測定し、その温度の上昇度合いが増加に転じる付近で、浴槽3からの熱回収運転動作を停止させることで、熱回収運転後の加熱運転時におけるヒートポンプユニット2の運転効率の略最大を実現できるのである。
上記を勘案して高い省エネルギー効果を得るための熱回収運転制御手段21の制御方法について説明する。
図12は熱回収運転制御手段21の動作のフローチャートである。使用者による熱回収運転起動スイッチ26の操作を行った場合、あるいは風呂自動運転制御手段29による風呂自動運転終了後の所定時間経過後などで自動で熱回収する設定を行うことも可能である。熱回収運転の開始を熱回収運転開始判断部50が判断すると、浴槽3内に水(お湯)があるかどうかを行うために、浴槽水搬送ポンプ5bを駆動させる。
このとき浴槽水検出手段31により、浴槽3内の水(お湯)の有無を検出し(ステップ1)、浴槽3内に水(お湯)があると判断した場合はステップ3へ、浴槽3内に水(お湯)がないと判断した場合は、熱回収運転を開始しないで終了する(ステップ2)。
ここで、浴槽内に水(お湯)があるかどうかを行うために、最初に水位センサ27によって浴槽の湯量に比例する水位を検知し(ステップ1)、ここで予め設定された水位以下であれば、熱回収運転を開始しないで終了する(ステップ2)ことも可能である。
ステップ1で浴槽水検出手段31により、浴槽3内の水(お湯)があると判断した場合、もしくはステップ1で水位が予め設定された水位を超えており、浴槽3内に十分に水(
お湯)があると判断した場合、所要貯湯熱量取得部51で取得された所要貯湯熱量と貯湯温検知手段28a〜28eにより測定された現在の貯湯槽1の温度分布、およびヒートポンプユニット2の沸き上げ温度等の運転条件から貯湯運転完了時の貯湯槽1内の温度分布を予測し、それを現在の温度分布と比較して、その時点からヒートポンプユニット2で加熱する場合の残りの加熱量Qrを求める(ステップ3)。
次に、測定された現在の温度分布から、予測された貯湯運転完了時の温度分布に達するまでの間にヒートポンプユニット2で沸き上げる前の平均水温を推定する(ステップ4)。
さらにステップ4で求めた平均水温と図10で示したヒートポンプユニット2の特性とから貯湯運転時の平均効率を求め、ステップ3で求めた残りの加熱量Qrをこの平均効率で除して、貯湯運転時の入力Qinを推定する(ステップ5)。
Qinは前回の評価時刻において求めた値であるQin−fとの差を求め、それが予め定めた偏差qより小さい場合、すなわち推定入力の変化が次第に小さくなって最小値と判断されたら(ステップ6)、ステップ2で貯湯槽水搬送ポンプ5aと浴槽水搬送ポンプ5bとを停止して熱回収運転を終了する。QinとQin−fとの差がq以上の場合は熱回収運転を継続し、次の評価時刻になれば(ステップ8)、以上の動作を繰り返す。
なお、補足として熱回収運転開始後一回目の動作時は、ステップ6での比較はおこなわずにステップ7を実行する。
ここで、浴槽水検出手段31により、浴槽3内の水(お湯)の有無を検出する動作を説明したが、浴槽水検出手段31により、ステップ1では熱回収運転が開始された後で浴槽3内の水(お湯)がないと判断した場合にも、熱回収運転は停止されることになる(ステップ2)。
また、熱回収運転の開始時の浴槽3内の水の検出に水位による動作を説明したが、同様に熱回収運転が開始された後で水位が予め設定された水位以下となった場合にも、熱回収運転は停止されることになる(ステップ2)。これにより、浴槽3内の水(お湯)が途中でなくなった場合に熱回収運転を停止させることができる。
以上が動作の説明であるが、浴槽3の湯量によらない熱回収運転の停止は、ヒートポンプユニット2の入力の最小値の判断を減少度合いが小さくなったことでおこなっている。この方法以外に、評価時刻間の入力の差qが0となる場合、またはqの符号が前回の評価時刻と逆になる場合、すなわち推定入力が増加に転じるときを最小値として、熱回収運転を停止してもよい。
また、測定される貯湯槽1の温度の値の測定誤差等により、推定入力は最小値に至る間に増減のあることも多い。したがって、最近の数回の評価時刻における推定入力を記憶しておき、その移動平均値を用いて最小値に達したかどうかを判断することによって、最小値に達したかどうかの判定精度をより高められる場合もある。
さらには、以上説明したような、その都度温度分布を評価して入力を求める方法は精度が高いものの計算が煩雑となり、熱回収運転制御手段21の負荷が大きい。
その場合は、入力に対して最も影響を与える位置の貯湯温の変化を予め把握しておき、その位置に対応する貯湯温検知手段28a〜28eのうち、いずれかの温度が上昇し始めたときや所定の温度上昇がみられたとき、あるいは、たとえば貯湯温検知手段28dの検
知温度が上昇し、かつ貯湯温検知手段28eの検知温度は上昇しない間は熱回収運転を継続するというように、二つ以上の温度の組み合わせに応じて停止の判断をしてもよい。
具体的には、比較的貯湯槽1の下部に近い温度が上昇してくることを検出して熱回収運転を停止させることによってもヒートポンプユニット2の効率を損なうことが少なくなって所望の効果を得ることができる。さらに、貯湯槽1のより上部の温度の変化を考慮すれば、熱回収運転による回収熱量の確保を同時に評価でき、精度は向上する。
このように、本発明の実施の形態によれば、浴槽3に湯がないか、または少ない状態では熱回収運転をせず、熱回収運転自体ができないか、しても効果が得られない条件での運転を防止できる。
このとき、熱回収運転を開始するタイミングで湯がないか少ない場合には熱回収運転を開始せず、また熱回収運転中に湯が減少してそのような状態になった場合にも即座に熱回収運転を停止する。さらに、湯量が回復すれば熱回収運転を改めて開始、あるいは再開することにより、省エネルギー性を損なわない運転ができる。
熱回収運転の再開は、湯量が回復してから所定の時間が経過することなどで自動でもおこなわれるが、使用者が浴槽3の湯量を確認して熱回収運転起動スイッチ26を操作することによって即座に再開することができるので、時間経過による浴槽3からの無駄な放熱が抑えられ、省エネルギー性が高まる。
また、風呂自動運転と追い焚き運転と熱回収運転を実現するための配管系の構成において、前記熱交換器4により前記浴槽3の湯の有する熱を前記貯湯槽1の湯水に回収する熱回収運転を行うときには、前記熱回収往き管35、前記加熱手段であるヒートポンプユニット2、前記切換手段32、前記熱交換器4、前記熱交戻り管16の順に前記貯湯槽1からの湯水が流れるように構成することで、熱回収時に使用する配管の一部を、上述した貯湯槽内の湯水の沸き上げ運転時にも使用する構成とすることができ、低コスト化を実現した給湯装置を提供できる。
また、筐体内に新たな部材の設置スペースを確保する必要がなく、重量や材料の増加、さらには待機電力の増大もなく、省資源、省エネルギーにも寄与する。また、併せて熱交換器4は熱交換効率の高いプレート式とするとともに、貯湯槽1の熱交戻り管16の接続位置近傍に設置することで、熱交換器4自体をコンパクトにした上で最小限の配管長として、同様に省資源となる。
そして、熱回収運転を行う際には、所要貯湯熱量を沸き上げるためのヒートポンプユニット2への入力が最小となる時点で熱回収運転を停止することによって、本来の目的であるシステム全体としての効率向上を実現し、省エネルギー性を高めることができる。
構成としては、貯湯槽1下部の水を取り出して熱交換器4で加熱し、貯湯槽1の比較的上部へ戻しているが、熱回収運転による貯湯槽1内の温度分布はこの取り出し位置や戻し位置の違いによって変わる。
さらに、貯湯槽水搬送ポンプ5aの能力制御によって熱回収の速度なども制御でき、これら構成や制御の違いに応じて運転効率も変化する。
したがって、この実施の形態では、使われ方や貯湯槽1の容量などを考慮して適切な取り出し位置や戻り位置を設定したり、貯湯槽水搬送ポンプ5aの能力制御をおこなえるといった最適化設計の自由度が高いために複数の異なる機種に適用しやすく、その結果、多
くの使用者に提供することによって大きな省エネルギー効果を得ることができる。
さらに、貯湯槽1からの給湯において、第1の出湯管22と第2の出湯管23とからの湯を高温水混合弁24で適切に混合して貯湯槽1内の中温水を有効に利用するとともに、熱交戻り管16の貯湯槽1への接続位置を第2の出湯管23よりも上にすることによって、温度成層型の貯湯槽において不可避な貯湯槽上部の高温水と下部の低温水との間にできる中温水を有効に利用できる結果、同じ蓄熱量でも貯湯槽下方に低温の水が多く確保できることから浴槽水からの回収熱量を大きくできる。
また、熱回収により発生した中温水を貯湯槽1の比較的上部に流入させることは、増加しながら貯湯槽1下方に移動する中温水を、熱回収した湯の流入位置よりも下にある第2の出湯管23を通じて給湯に利用できるので、貯湯された湯の熱量を最大限有効に使うことができる。
同時にヒートポンプユニット2の沸き上げ効率の低下を招く貯湯槽1内の中温水が減少することでシステム全体の効率低下を防ぐことができ、熱量の有効利用による良好な使い勝手と高い省エネルギー性とを実現する。
さらに、浴槽水がないかまたは少ない場合に熱回収運転を始めると、第2の出湯管23と熱交戻り管16を適切な位置に設置することによって中温水をうまく利用して貯湯槽1下部に多くの低温の水を確保する構成にもかかわらず、貯湯槽水搬送ポンプ5aを作動させることによって貯湯槽内に中温水を増大させることになる。
この場合は熱回収の効果が得られない上に、ヒートポンプユニット2での沸き上げの際に効率を低下させてしまうが、予め浴槽湯量を検知して熱回収運転の実行を判断するので、第2の出湯管23と熱交戻り管16の接続位置の最適化によって得られる高い省エネルギー性を損なわない。
すなわち、熱回収運転を適切に制御し、高い省エネルギー性能を実現した給湯装置を提供することができるものである。