(1.動力伝達装置の構成)
以下、本発明の動力伝達装置の実施形態を説明する。本実施形態の動力伝達装置1A(図9参照)は、変速比i(i=入力軸の回転速度/出力軸の回転速度)を無限大(∞)にして出力軸の回転速度を「0」にできる無段変速機、所謂IVT(Infinity Variable Transmission)を備える。
図1を参照して、無段変速機1は、車両C(図9参照)に搭載されており、内燃機関であるエンジンや電動機等の走行用駆動源50(図9参照)からの回転駆動力を受けることで入力中心軸線P1を中心に回転する中空の入力軸2(本発明の「入力部」に相当する)とを備える。更に、無段変速機1は、入力軸2に平行に配置され、図外のデファレンシャルギアやプロペラシャフト等を介して車両Cの駆動輪60(図9参照)に回転動力を伝達させる出力軸3と、入力軸2に設けられた6つの回転半径調節機構4とを備える。
図2に示されるように、各回転半径調節機構4は、カムディスク5と、回転ディスク6とを備える。カムディスク5は、円盤状であり、入力中心軸線P1から偏心して入力軸2と一体的に回転するように入力軸2に2個1組で夫々設けられている。各1組のカムディスク5は、夫々位相を60度異ならせて、6組のカムディスク5で入力軸2の周方向を一回りするように配置されている。また、各1組のカムディスク5には、カムディスク5を受け入れる受入孔6aを備える円盤状の回転ディスク6が、カムディスク5に対して偏心した状態で回転自在に外嵌されている。
回転ディスク6は、カムディスク5の中心点をP2、回転ディスク6の中心点をP3として、入力中心軸線P1と中心点P2の距離Raと、中心点P2と中心点P3の距離Rbとが同一となるように、カムディスク5に対して偏心している。
回転ディスク6の受入孔6aには、1組のカムディスク5の間に位置させて内歯6bが設けられている。入力軸2(図1)には、1組のカムディスク5の間に位置させて、カムディスク5の偏心方向に対向する個所に内周面と外周面とを連通させる切欠孔2aが形成されている。
中空の入力軸2内には、ピニオンシャフト7が、入力軸2と同心に配置されている。ピニオンシャフト7は、回転ディスク6と対応する個所に外歯7aを備える。また、ピニオンシャフト7は、入力軸2と相対回転自在となるように配置されている。ピニオンシャフト7の外歯7aは、入力軸2の切欠孔2aを介して、回転ディスク6の内歯6bと噛合する。
ピニオンシャフト7には、差動機構8が接続されている。差動機構8は、遊星歯車機構で構成されており、サンギア9と、入力軸2に連結された第1リングギア10と、ピニオンシャフト7に連結された第2リングギア11と、サンギア9及び第1リングギア10と噛合する大径部12aと、第2リングギア11と噛合する小径部12bとから成る段付きピニオン12を自転及び公転自在に軸支するキャリア13とを備える。
サンギア9には、ピニオンシャフト7用の電動機から成る調節用駆動源14の回転軸14aが連結されている。調節用駆動源14の回転速度を入力軸2の回転速度と同一にすると、サンギア9と第1リングギア10とが同一速度で回転することになる。これにより、サンギア9、第1リングギア10、第2リングギア11及びキャリア13の4つの要素が相対回転不能なロック状態となって、第2リングギア11と連結するピニオンシャフト7が入力軸2と同一速度で回転する。
調節用駆動源14の回転速度を入力軸2の回転速度よりも遅くすると、サンギア9の回転数をNs、第1リングギア10の回転数をNR1、サンギア9と第1リングギア10のギア比(第1リングギア10の歯数/サンギア9の歯数)をjとして、キャリア13の回転数が(j・NR1+Ns)/(j+1)となる。
そして、サンギア9と第2リングギア11のギア比((第2リングギア11の歯数/サンギア9の歯数)×(段付きピニオン12の大径部12aの歯数/小径部12bの歯数))をkとすると、第2リングギア11の回転数が{j(k+1)NR1+(k−j)Ns}/{k(j+1)}となる。
カムディスク5が固定された入力軸2の回転速度とピニオンシャフト7の回転速度とが同一である場合には、回転ディスク6はカムディスク5と共に一体に回転する。入力軸2の回転速度とピニオンシャフト7の回転速度とに差がある場合には、回転ディスク6はカムディスク5の中心点P2を中心にカムディスク5の周縁を回転する。
図2に示すように、回転ディスク6は、カムディスク5に対して距離Raと距離Rbとが同一となるように偏心されている。このため、回転ディスク6の中心点P3を入力中心軸線P1と同一軸線上に位置するようにして、入力中心軸線P1と中心点P3との距離、即ち偏心量R1を「0」とすることもできる。
回転ディスク6の周縁には、一方の端部に大径の大径環状部15aを備え、他方の端部に大径環状部15aの径よりも小径の小径環状部15bを備えるコネクティングロッド15の大径環状部15aが、ボールベアリングからなるコンロッド軸受16を介して回転自在に外嵌されている。出力軸3には、一方向回転阻止機構としての一方向クラッチ17を介して、揺動リンク18がコネクティングロッド15に対応させて6個設けられている。
一方向回転阻止機構としての一方向クラッチ17は、揺動リンク18と出力軸3との間に設けられている。一方向クラッチ17は、出力軸3に対して一方側に相対回転しようとするときに出力軸3に揺動リンク18を固定し、他方側に相対回転しようとするときに出力軸3に対して揺動リンク18を空転させる。揺動リンク18は、一方向クラッチ17によって出力軸3に対して空転する状態のときに、出力軸3に対して揺動自在となる。
揺動リンク18は、環状に形成されており、その上方には、コネクティングロッド15の小径環状部15bに連結される揺動端部18aが設けられている。揺動端部18aには、小径環状部15bを軸方向で挟み込むように突出した一対の突片18bが設けられている。一対の突片18bには、小径環状部15bの内径に対応する貫通孔18cが穿設されている。貫通孔18c及び小径環状部15bには、連結ピン19が挿入されている。これにより、コネクティングロッド15と揺動リンク18とが連結される。
図3は、回転半径調節機構4の偏心量R1(入力中心軸線P1と中心点P3との距離)を変化させた状態のピニオンシャフト7と回転ディスク6との位置関係を示す。図3(a)は偏心量R1を「最大」とした状態を示している。このとき、ピニオンシャフト7と回転ディスク6との位置関係は、入力中心軸線P1と、カムディスク5の中心点P2と、回転ディスク6の中心点P3とが一直線に並ぶような位置関係となる。このときの変速比iは最小となる。
図3(b)は偏心量R1を図3(a)よりも小さい「中」とした状態を示しており、図3(c)は偏心量R1を図3(b)よりも更に小さい「小」とした状態を示している。変速比iは、図3(b)では図3(a)の変速比iよりも大きい「中」となり、図3(c)では図3(b)の変速比iよりも大きい「大」となる。
図3(d)は偏心量R1を「0」とした状態を示しており、入力中心軸線P1と、回転ディスク6の中心点P3とが同心に位置する。このときの変速比iは無限大(∞)となる。本実施形態の無段変速機1は、回転半径調節機構4で偏心量R1を変えることにより、回転半径調節機構4の回転運動の半径を調節自在としている。本実施形態では、偏心量R1が回転半径調節機構4の回転運動の半径(すなわち、本発明の「回転半径」)と実質的に同一である。
図2に示すように、本実施形態の回転半径調節機構4、コネクティングロッド15、揺動リンク18はてこクランク機構20(四節リンク機構)を構成する。そして、てこクランク機構20によって、入力軸2の回転運動が揺動リンク18の揺動運動に変換される。本実施形態の無段変速機1は合計6個のてこクランク機構20を備えている。
偏心量R1が「0」でないときに、入力軸2を回転させると共に、ピニオンシャフト7を入力軸2と同一速度で回転させると、各コネクティングロッド15が60度ずつ位相を変えながら、偏心量R1に基づき入力軸2と出力軸3との間で出力軸3側に押したり、入力軸2側に引いたりを交互に繰り返して揺動する。
コネクティングロッド15の小径環状部15bは、出力軸3に一方向クラッチ17を介して設けられた揺動リンク18に連結されている。このため、揺動リンク18がコネクティングロッド15によって押し引きされて揺動すると、揺動リンク18が押し方向側又は引張り方向側の何れか一方に回転するときだけ、出力軸3が回転する。
揺動リンク18が他方に回転するときには、出力軸3に揺動リンク18の揺動運動の力が伝達されず、揺動リンク18が空回りする。各回転半径調節機構4は、60度毎に位相を変えて配置されているため、出力軸3は各回転半径調節機構4で順に回転させられる。
図4(a)は偏心量R1が図3(a)の「最大」である場合(変速比iが最小である場合)、図4(b)は偏心量R1が図3(b)の「中」である場合(変速比iが中である場合)、図4(c)は偏心量R1が図3(c)の「小」である場合(変速比iが大である場合)の、回転半径調節機構4の回転運動に対する揺動リンク18の揺動範囲θ2を示している。
図4から明らかなように、偏心量R1が小さくなるにつれ、揺動リンク18の揺動範囲θ2が狭くなる。尚、偏心量R1が「0」であるときは、揺動リンク18は揺動しなくなる。また、本実施形態では、揺動リンク18の揺動端部18aの揺動範囲θ2のうち、入力軸2に最も近い位置を内死点、入力軸2から最も離れる位置を外死点とする。
図5は、無段変速機1の回転半径調節機構4の回転角度θを横軸、揺動リンク18の角速度ωを縦軸として、回転半径調節機構4の偏心量R1の変化に伴う角速度ωの変化の関係を示す。図5から明らかなように、偏心量R1が大きい(変速比iが小さい)ほど揺動リンク18の角速度ωが大きくなることが分かる。
図6は、60度ずつ位相を異ならせた6つの回転半径調節機構4を回転させたとき(入力軸2とピニオンシャフト7とを同一速度で回転させたとき)における、回転半径調節機構4の回転角度θ1に対する、各揺動リンク18の角速度ωを示している。図6から、6つのてこクランク機構20により出力軸3がスムーズに回転されることが分かる。
また、図9に示されるように、無段変速機1は、制御装置40を備える。制御装置40は、CPU及びメモリ等により構成された電子ユニットである。
制御装置40は、メモリに保持された走行用駆動源50及び無段変速機1の制御用プログラムをCPUで実行することによって、走行用駆動源50及び調節用駆動源14の作動を制御する。また、制御装置40は、調節用駆動源14の作動を制御することで、回転半径調節機構4の偏心量R1を制御する機能を実現している。
また、無段変速機1が搭載された車両Cは、無段変速機1の入力軸2の回転速度(本実施形態においては走行用駆動源50の出力回転速度Neと同一)を検知する入力側回転速度検知部41(例えば、回転速度センサ)と、無段変速機1の出力軸3の回転速度を検知する出力側回転速度検知部42(例えば、回転速度センサ)と、アクセルペダル(図示省略)の操作量に応じたスロットル弁の開度APを検知するスロットル弁開度検知部43とを備える。
制御装置40には、入力側回転速度検知部41、出力側回転速度検知部42、及びスロットル弁開度検知部43の各出力信号が入力される。
制御装置40は、入力側回転速度検知部41の出力信号から走行用駆動源50の出力回転速度Ne(単位は、例えば[rpm])を検知する。
また、制御装置40は、出力側回転速度検知部42の出力信号から車両Cの走行速度(以下、「車速」という)V(単位は、例えば[km/h])を検知する。詳細には、制御装置40は、「出力軸3の回転速度(単位は、例えば[rpm])」及び「出力軸3と駆動輪60との間の変速比」に基づいて車速Vを検知する。
また、制御装置40は、スロットル弁開度検知部43の出力信号から車両Cへの要求駆動力Td(単位は、例えば[Nm])を検知する。制御装置40は、スロットル弁の開度が0の場合には(誤差を考慮して、0と実質的に同等な値は0として扱う)、車両への要求駆動力が0であると検知する。また、制御装置40は、スロットル弁の開度APが0よりも大きな値である場合には、スロットル弁の開度AP及びその時間変化量に応じて車両Cへの要求駆動力Tdを検知する。
(2.一方向クラッチの状態)
図7を参照して、一方向クラッチ17が、出力軸3に揺動リンク18を固定するとき(すなわち、入力軸2からの駆動力を出力軸3に伝達可能なとき)と、出力軸3に対して揺動リンク18を空転させるとき(すなわち、入力軸2からの駆動力を出力軸3に伝達不能なとき)について説明する。図7は、横軸が時間を示し、縦軸が角速度を示し、1つの揺動リンク18(揺動端部18a)の角速度ωと、出力軸3の角速度との関係を示している。
図7にハッチングで示すように、揺動リンク18の角速度ωが出力軸3の角速度を上回る領域、及び揺動リンク18の角速度ωが出力軸3の角速度を下回った後における、一方向クラッチ17の捩れ(数度の捩れ)が開放されるまでの領域で、てこクランク機構20を介して入力軸2から出力軸3に駆動力が伝達される。
以下、入力軸2からの駆動力を出力軸3に伝達不能な一方向クラッチ17の状態を「空転状態」という(空転状態は、所謂「ディスエンゲージ状態」である)。また、入力軸2からの駆動力を出力軸3に伝達可能な一方向クラッチ17の状態を「固定状態」という(固定状態は、所謂「エンゲージ状態」である)。
(2−1.状態が切り替わる境界線)
図8は、回転半径調節機構4の偏心量R1と走行用駆動源50の出力回転速度Neとに応じた境界線Lの車速Vに応じた特性図を示す。ここで、図8は、横軸が偏心量R1を示し、縦軸が走行用駆動源50の出力回転速度Neを示している。
一方向クラッチ17が空転状態及び固定状態のいずれであるかは、車速V、偏心量R1及び走行用駆動源50の出力回転速度Neに応じて変化する。
図8中に示されている線La,Lb,Lcは、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態へ移行するときの境界線である。なお、境界線L(La,Lb,Lc)の各々においては、車速Vが異なる境界線Lを示しており、境界線Lが図8の右上側に位置するほど(「La→Lb→Lc」となるほど)車速Vが大きくなる。
これは、すなわち、車速Vが大きくなるほど出力軸3の角速度が大きくなるので、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行するときの揺動リンク18の角速度ωは、車速Vが大きくなるほど大きくなるからである。
また、車速Vが一定の状態において(すなわち、各境界線La,Lb,Lcにおいて)、偏心量R1が大きくなるほど、無段変速機1の変速比iが小さくなるので揺動リンク18の角速度ωが大きくなる。従って、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行するときには、走行用駆動源50の出力回転速度Neは、偏心量R1が大きくなるほど小さくなる。
(3.制御)
(3−1.制御の概要)
図9は、本実施形態の動力伝達装置1Aを制御する制御装置40及び動力伝達装置1Aの機能ブロック図を示す。
まず、制御装置40の概略について説明する。制御装置40は、主な処理部として、境界線推定部71と、最終目標変速比決定部72と、回転速度増加部73と、負荷推定部74と、中間目標変速比決定部75と、最終回転半径調整部76と、中間回転半径調整部77とを備える。
境界線推定部71は、図8の特性図に示されるような特性に従って、検知した車速Vに応じた境界線Lを推定する。
最終目標変速比決定部72は、車両Cへの要求駆動力Tdに対する目標変速比である最終目標変速比i_cmd_lastを決定する。回転速度増加部73は、走行用駆動源50の出力回転速度Neを、最終目標変速比決定部72が決定した最終目標変速比i_cmd_lastに応じた回転速度である目標回転速度Ne_cmdまで増加するように制御する。
負荷推定部74は、回転半径調節機構4の実際の偏心量R1に応じた変速比である実変速比iに基づいて調節用駆動源負荷Tpを推定する。ここで、調節用駆動源負荷Tpとは、回転半径調節機構4の実変速比iを維持するために調節用駆動源14に要求される駆動力に対して同じ大きさで且つ反対方向で、調節用駆動源14に作用する力である。
中間目標変速比決定部75は、最終目標変速比決定部72が決定した最終目標変速比i_cmd_lastと、負荷推定部74によって推定される調節用駆動源負荷Tpとに基づいて、一方向クラッチ17を空転状態から固定状態に移行させるときの目標変速比である中間目標変速比i_cmd_midを決定する。
中間目標変速比i_cmd_midは、最終目標変速比i_cmd_lastと調節用駆動源負荷Tpとに基づいて決定される。ここで、負荷推定部74が推定した調節用駆動源負荷Tpは、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行したときに、調節用駆動源14に作用する負荷である。すなわち、中間目標変速比i_cmd_midは、調節用駆動源14に調節用駆動源負荷Tpが作用することで、回転半径調節機構4の偏心量R1が変化することを考慮した変速比となる。
最終回転半径調整部76は、回転半径調節機構4の偏心量R1を、最終偏心量R1_cmd_last(本発明における「最終回転半径」に相当する)となるように制御する。ここで、最終偏心量R1_cmd_lastとは、最終目標変速比i_cmd_lastに応じた偏心量R1である。
中間回転半径調整部77は、回転半径調節機構4の偏心量R1を、中間偏心量R1_cmd_mid(本発明における「中間回転半径」に相当する)となるように制御する。ここで、中間偏心量R1_cmd_midとは、中間目標変速比i_cmd_midに応じた偏心量R1である。
制御装置40は、一方向クラッチ17が空転状態の場合に車両Cに対して駆動力を出力することが要求されることで一方向クラッチ17を空転状態から固定状態に移行させる必要が生じたときに、回転速度増加部73による制御を実行すると共に、一方向クラッチ17が空転状態においては、中間回転半径調整部77によって、回転半径調節機構4の偏心量R1が中間偏心量R1_cmd_midとなるように制御する。
すなわち、回転半径調節機構4の偏心量R1が中間偏心量R1_cmd_midのときに、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行する。中間偏心量R1_cmd_midは、当該移行時に調節用駆動源14に作用する調節用駆動源負荷Tpを考慮した偏心量となっている。
そして、制御装置40は、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行した後では、回転速度増加部73による制御を実行すると共に、最終回転半径調整部76によって、回転半径調節機構4の偏心量R1が最終偏心量R1_cmd_lastとなるように制御する。従って、最終偏心量R1_cmd_lastに速やかに到達するように当該偏心量R1が制御される。これにより、ドライバビリティの低下を抑制できる。
また、中間目標変速比決定部75は、より詳細には、負荷推定部74が推定した調節用駆動源負荷Tpが、回転半径調節機構4の偏心量R1を減少させる方向に(すなわち、所謂ギヤードニュートラル側に(より変速比iが大きくなる側に))作用する駆動力(以下、このような調節用駆動源負荷Tpを「減少負荷」という)である場合には、最終目標変速比i_cmd_lastよりも小さくなるように(すなわち、所謂オーバードライブレシオ側に(より変速比iが小さくなる側に))中間目標変速比i_cmd_midを決定する。
この場合、制御装置40は、回転半径調節機構4の偏心量R1が、最終目標変速比i_cmd_lastに応じた最終偏心量R1_cmd_lastよりも大きいときに(最終目標変速比i_cmd_lastよりも小さいときに)、一方向クラッチ17を空転状態から固定状態に移行させる。
このとき、調節用駆動源14に調節用駆動源負荷Tpが作用することで、回転半径調節機構4の偏心量R1が減少した場合(実変速比iが大きくなった場合)、実際の偏心量R1は、最終偏心量R1_cmd_lastよりも大きい状態から最終偏心量R1_cmd_lastに向かって減少する。この後、制御装置40が、最終回転半径調整部76によって、最終偏心量R1_cmd_lastとなるように回転半径調節機構4の偏心量R1を減少させる。
これにより、一方向クラッチ17が固定状態になった後においては(図12の線Q1の白丸よりも右側においては)、回転半径調節機構4の偏心量R1が減少するだけとなる(図12の線Q1の白丸よりも右側を参照)。
ここで、仮に、回転半径調節機構4の中間偏心量R1_cmd_midを最終偏心量R1_cmd_lastと同一として、一方向クラッチ17を空転状態から固定状態に移行させた場合には、調節用駆動源負荷Tpによって偏心量R1が減少する。そこで、この減少分を補うために(すなわち、最終偏心量R1_cmd_lastとなるように)、回転半径調節機構4の偏心量R1が増加される。すなわち、このような場合には、一方向クラッチ17が固定状態に移行した状態で、回転半径調節機構4の偏心量R1の増加及び減少の両方が生じる(図12の線Q01を参照)。
一方、本実施形態においては、一方向クラッチ17が固定状態になった後では、回転半径調節機構4の偏心量R1が減少するだけであるので(図12の線Q1の白丸よりも右側を参照)、固定状態において当該偏心量R1の増加及び減少の両方が生じるものに比べて(図12の線Q01を参照)、ドライバビリティの低下を抑制できる。
また、中間目標変速比決定部75は、負荷推定部74が推定した調節用駆動源負荷Tpが、回転半径調節機構4の偏心量R1を増加させる方向に作用する駆動力(以下、このような調節用駆動源負荷Tpを「増加負荷」という)である場合には、最終目標変速比i_cmd_lastよりも大きくなるように中間目標変速比i_cmd_midを決定する。
この場合、制御装置40は、回転半径調節機構4の偏心量R1が、最終目標変速比i_cmd_lastに応じた最終偏心量R1_cmd_lastよりも小さいときに(最終目標変速比i_cmd_lastよりも大きいときに)、一方向クラッチ17を空転状態から固定状態に移行させる。
このとき、調節用駆動源14に調節用駆動源負荷Tpが作用することで、回転半径調節機構4の偏心量R1が増加した場合(実変速比iが小さくなった場合)、実際の偏心量R1は、最終偏心量R1_cmd_lastよりも小さい状態から最終偏心量R1_cmd_lastに向かって増加する。この後、制御装置40が、最終回転半径調整部76によって、回転半径調節機構4の偏心量R1となるように最終偏心量R1_cmd_lastを増加させる。
これにより、一方向クラッチ17が固定状態になった後においては(図12の線Q2の白丸よりも右側においては)、回転半径調節機構4の偏心量R1が増加するだけとなる(図12の線Q2の白丸よりも右側を参照)。
ここで、仮に、回転半径調節機構4の中間偏心量R1_cmd_midを最終偏心量R1_cmd_lastと同一として、一方向クラッチ17を空転状態から固定状態に移行させた場合には、調節用駆動源負荷Tpによって偏心量R1が増加する。そこで、この増加分を補うために(すなわち、最終偏心量R1_cmd_lastとなるように)、回転半径調節機構4の偏心量R1が減少される。すなわち、このような場合には、一方向クラッチ17が固定状態に移行した状態で、回転半径調節機構4の偏心量R1の増加及び減少の両方が生じる(図12の線Q02を参照)。
一方、本実施形態においては、一方向クラッチ17が固定状態になった後では、回転半径調節機構4の偏心量R1が増加するだけであるので(図12の線Q2の白丸よりも右側を参照)、当該偏心量R1の増加及び減少の両方が生じるものに比べて(図12の線Q02を参照)、ドライバビリティの低下を抑制できる。
(3−2.制御の詳細)
次に、図10及び図11を参照して、制御装置40によって実行される処理の詳細について説明する。
図11では、横軸が時間を示し、縦軸が「各値」を示している。詳細には、「各値」は、図11(a)においては、スロットル弁開度APである。図11(b)においては、車速Vである。図11(c)においては、走行用駆動源50の出力回転速度Neである。図11(d)においては、回転半径調節機構4の偏心量R1である。図11(e)においては、一方向クラッチ17の状態である。
また、図11において、時点t1は、車両Cに対して駆動力を出力することが要求(以下、「駆動力出力要求」という)された時点を示している。時点t2は、第2偏心量R1_cmd2から第1偏心量R1_cmd1へ偏心量R1を増加させる処理が開始された時点を示している。時点t3は、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行した時点を示している。
図10を参照して、制御装置40は、スロットル弁開度APが0又は0に近い状態、すなわち車両Cへの要求駆動力Tdが実質的に0とみなせる状態のときにおいて、図10に示される処理を所定の制御周期(例えば、10[msec])毎に実行している。なお、図10に示されるフローチャートが実行される時点においては、一方向クラッチ17の状態は空転状態になっている。
制御装置40は、最初のステップST1において、出力側回転速度検知部42の出力信号に基づいて車速Vを検知する。制御装置40は、続くステップST2において、図8の特性図に示されるような特性に従って、ステップST1で検知した車速Vに応じて境界線Lを推定する。ここで、ステップST1及びST2が、境界線推定部71によって実行される処理に相当する。
制御装置40は、続くステップST3において、スロットル弁開度検知部43の出力信号に基づいてスロットル弁開度APを検知する。制御装置40は、続くステップST4において、ステップST3で検知したスロットル弁開度APに応じて、車両Cへの要求駆動力Tdを決定する。
制御装置40は、続くステップST5において、車両Cに対して駆動力出力要求が有るか否かを判定する。詳細には、制御装置40は、ステップST4で決定された要求駆動力Tdが0よりも大きい場合に、駆動力出力要求が有ると判定する。
制御装置40は、ステップST5で駆動力出力要求が無いと判定した場合には、本フローチャートの処理を終了し、慣性走行を継続する(図11の時点t1より前)。制御装置40は、ステップST5で駆動力出力要求が有ると判定した場合には、ステップST6に進む(図11の時点t1以降)。制御装置40は、ステップST6において、要求駆動力Tdに対する、最終目標変速比i_cmd_last及び目標回転速度Ne_cmdを決定する。
詳細には、制御装置40は、図12の特性図に示されるような特性に従って、最終目標変速比i_cmd_last及び目標回転速度Ne_cmdを決定する。
図12では、横軸が走行用駆動源50の出力回転速度Neを示し、縦軸が偏心量R1を示している。また、図12の線Ma,Mb,Mc,Mdは、車両Cから出力される駆動力が同じとなる点を結んだ線(等駆動力線)を示す。図12において右上側に行くほど(すなわち、「Ma→Mb→Mc→Md」となるほど)大きな駆動力となる。
また、図12では、線Q0は、調節用駆動源負荷Tpが0であるときの、偏心量R1及び走行用駆動源50の出力回転速度Neの遷移を示す。線Q1は、調節用駆動源負荷Tpが減少負荷であるときの、偏心量R1及び走行用駆動源50の出力回転速度Neの遷移を示す。また、線Q2は、調節用駆動源負荷Tpが増加負荷であるときの、偏心量R1及び走行用駆動源50の出力回転速度Neの遷移を示す。
制御装置40は、ステップST4で決定した要求駆動力Tdと等しい駆動力の線(図12では線Mc)を選択し、現時点の車両Cの状態等の様々な要因を考慮して、当該線上のいずれかの点Ptdを目標として決定する。
ここで、当該考慮される車両Cの状態とは、例えば、車両Cの機械的な特性による状態(例えば、走行用駆動源50の駆動力と回転速度との特性、及び偏心量R1の変更可能速度等)、及び時間と共に変化する車両Cの状況(例えば、偏心量R1、要求駆動力Td及び車両Cに搭載されたジャイロセンサ等によって検知される車両Cが走行している道路の勾配)等である。
点Ptd(図12)の決定に伴って、当該点Ptdに応じた偏心量R1(すなわち、最終目標変速比i_cmd_last)と出力回転速度Ne(すなわち、目標回転速度Ne_cmd)が決定される。
ここで、ステップST6が、最終目標変速比決定部72によって実行される処理に相当する。
制御装置40は、続くステップST7において、現時点の出力回転速度Ne及び変速比iを検知する。詳細には、制御装置40は、入力側回転速度検知部41の出力信号から出力回転速度Neを検知する。
また、制御装置40は、無段変速機1の変速比iを、上記のようにして検知した出力回転速度Neと、出力側回転速度検知部42の出力信号から検知した車速Vとに基づいて検知する。なお、制御装置40の変速比iを検知する態様としては、例えば、特開2012−251608号公報に記載された方法によって偏心量R1を検知することで、当該偏心量R1に応じた変速比iを検知する態様も取り得る。
制御装置40は、続くステップST8において、出力回転速度Ne及び偏心量R1に基づいて、図13の特性図に示されるような特性に従って、調節用駆動源負荷Tpを推定する。
ここで、図13は、横軸が変速比iを示し、縦軸が調節用駆動源負荷Tp(単位は、[Nm])を示す。図13の縦軸において0が、調節用駆動源負荷Tpの大きさが0であることを示す。また、図13の縦軸において0よりも離れるほど、調節用駆動源負荷Tpの大きさが大きくなる。
図13の縦軸において0よりも上側が、調節用駆動源負荷Tpが減少負荷であることを示す。図13の縦軸において0よりも下側が、調節用駆動源負荷Tpが増加負荷であることを示す。
また、図13の線N1,N2,N3,N4は、走行用駆動源50の出力回転速度Neがn1,n2,n3,n4のときの、変速比iと調節用駆動源負荷Tpとの関係を示す線(以下、「変速比負荷特性線」という)である。各回転速度n1〜n4は、「n1→n2→n3→n4」となるほど大きくなる。
なお、回転速度n1は、走行用駆動源50のアイドリング回転速度(走行用駆動源50の作動を維持するために最低限必要な回転速度)より若干大きい回転速度である。また、回転速度n4は、所謂レッドゾーンの回転速度より若干小さい回転速度(走行用駆動源50に過大な負荷がかかる回転速度よりも小さい回転速度)である。
図13に示されるように、調節用駆動源負荷Tpは、変速比iと出力回転速度Neとに応じて決定される。
変速比負荷特性線は、走行用駆動源50の出力回転速度Neが、n1又はn2のときのように変速比iが変化に応じて値が変化しても減少負荷が維持される線と、n3又はn4のときのように変速比iの変化に応じて値が変化したときに、変速比が所定の変速比(切替変速比)において減少負荷と増加負荷とが切り替わる線(以下、「切替特性線」という)とがある。
切替特性線は、以下の特性となる。
・変速比iが切替変速比のときに、調節用駆動源負荷Tpが0である。
・変速比iが切替変速比よりも大きいときに、調節用駆動源負荷Tpが減少負荷である。
・変速比iが切替変速比よりも小さいときに、調節用駆動源負荷Tpが増加負荷である。
・変速比iが切替変速比よりも小さい変速比である増加時切替変速比のときに、調節用駆動源負荷Tpの大きさが最も大きくなる(最も縦軸の下側となる)。
・変速比iが切替変速比よりも小さく且つ増加時切替変速比よりも大きいとき、変速比iが大きくなるほど、調節用駆動源負荷Tpの大きさが小さくなる。
・変速比iが増加時切替変速比よりも小さいとき、変速比iが小さくなるほど、調節用駆動源負荷Tpの大きさが小さくなる。
以下、変速比負荷特性線の詳細について説明する。走行用駆動源50の出力回転速度Neがn1のとき、変速比負荷特性線は、変速比iが増加するほど(偏心量R1が小さくなるほど)調節用駆動源負荷Tpが大きくなる線である。
走行用駆動源50の出力回転速度Neがn2のとき、変速比負荷特性線は、以下の特性の線となる。
・変速比iが所定値i1のときに、調節用駆動源負荷Tpが0となる。
・変速比iが所定値i1よりも大きいときに、変速比iが増加するほど(偏心量R1が小さくなるほど)調節用駆動源負荷Tpが大きくなる。
・変速比iが所定値i1未満のときに、変速比iの減少に伴って調節用駆動源負荷Tpがやや大きくなる。
また、走行用駆動源50の出力回転速度Neがn3のとき、切替特性線となる変速比負荷特性線は、増加時切替変速比がi2となる。また、走行用駆動源50の出力回転速度Neがn4のとき、切替特性線となる変速比負荷特性線は、増加時切替変速比がi3となる(但し、「i2 < i3」)。
ここで、ステップST8が、負荷推定部74によって実行される処理に相当する。
制御装置40は、続くステップST9において、調節用駆動源負荷Tpが0か否かを判定する。制御装置40は、ステップST9で調節用駆動源負荷Tpが0と判定された場合には、ステップST10に進み、中間目標変速比i_cmd_midを最終目標変速比i_cmd_lastと同じ値に決定する(例えば、図12の線Q0)。
制御装置40は、ステップST9で調節用駆動源負荷Tpが0ではないと判定された場合には、ステップST11に進み、調節用駆動源負荷Tpが減少負荷か否かを判定する。
制御装置40は、ステップST11で、調節用駆動源負荷Tpが減少負荷(偏心量R1を減少させる負荷)と判定された場合には、ステップST12に進み、中間目標変速比i_cmd_midを最終目標変速比i_cmd_lastよりも小さくなるように決定する(すなわち、図12の線Q1のように、中間偏心量R1_cmd_midを、「最終目標変速比i_cmd_lastに応じた偏心量である最終偏心量R1_cmd_lastよりも大きい第1中間偏心量R1_cmd_l」に決定することと実質的に同一である)。
このとき、制御装置40は、中間目標変速比i_cmd_midと最終目標変速比i_cmd_lastとの偏差i_dを、図14の特性図に示されるような特性に従って、スロットル弁開度APに応じて決定する(これは、要求駆動力Tdに応じて偏差i_dを決定することと実質的に同等である)。図14では、横軸がスロットル弁開度APを示し、縦軸が偏差i_dを示す。制御装置40は、スロットル弁開度APが、所定値α未満のときには偏差i_dがβとなるように中間目標変速比i_cmd_midを決定し、所定値α以上のときには当該スロットル弁開度APが大きくなるほど偏差i_dが大きくなるように中間目標変速比i_cmd_midを決定する。
通常、スロットル弁開度APが大きいときには、走行用駆動源50の負荷が大きく、走行用駆動源50から出力される駆動力も大きくなる。ここで、走行用駆動源50から出力される駆動力は、走行用駆動源50の出力回転速度Neが小さくなるほど大きくなる。図13に示されるように、走行用駆動源50の出力回転速度Neが小さいときほど(n1に近いほど)、大きいとき(n4に近いとき)に比べて、調節用駆動源負荷Tpの大きさが大きくなる(図13の縦軸において、0より遠くなる)。
従って、スロットル弁開度APが大きいときには、一方向クラッチ17を空転状態から固定状態に移行させたときに、調節用駆動源負荷Tpの作用によって、回転半径調節機構4の偏心量R1が変化する量が大きくなりやすい。
このため、制御装置40が、スロットル弁開度APが所定値α以上のときに、当該スロットル弁開度APが大きくなるほど偏差i_dが大きくなるように中間目標変速比i_cmd_midを決定することにより、調節用駆動源負荷Tpの作用によって回転半径調節機構4の偏心量R1が大きく変化して、変速比iが大きく変化した場合であっても、当該変速比iの変化を当該偏差i_d以下とすることができる。
これにより、一方向クラッチ17が固定状態になった後では、回転半径調節機構4の偏心量R1が減少するだけか又は増加するだけであるので、固定状態において当該偏心量R1の増加及び減少の両方が生じるものに比べて、ドライバビリティの低下を抑制できる。
制御装置40は、ステップST11で、調節用駆動源負荷Tpが減少負荷ではないと判定された場合には(この場合、調節用駆動源負荷Tpは増加負荷(偏心量R1を増加させる負荷)である)、ステップST13に進み、中間目標変速比i_cmd_midを最終目標変速比i_cmd_lastよりも大きくなるように決定する(すなわち、図12の線Q2のように、中間偏心量R1_cmd_midを、「最終偏心量R1_cmd_lastよりも小さい第2中間偏心量R1_cmd_s」に決定することと実質的に同一である)。
このとき、制御装置40は、中間目標変速比i_cmd_midと最終目標変速比i_cmd_lastとの偏差i_dを、ステップST12と同様に、図14の特性図に示されるような特性に従って決定する。
ここで、ステップST9〜ST13が、中間目標変速比決定部75によって実行される処理に相当する。
制御装置40は、ステップST10,ST12又はST13の処理が終了すると、回転半径調節機構4の偏心量R1を制御する「処理P1」(ステップST101〜ST103)と、走行用駆動源50の出力回転速度Neを制御する「処理P2」(ステップST201)とを並列に実行する。
まず、処理P2について説明する。 制御装置40は、「処理P2」のステップST201において、走行用駆動源50の出力回転速度Neを目標回転速度Ne_cmdに向けて増加させる(図11の時点t1以降)。ここで、ステップST201が、回転速度増加部73によって実行される処理に相当する。ステップST201が終了すると「処理P2」が終了する。
次に、処理P1について説明する。制御装置40は、「処理P1」のステップST101において、一方向クラッチ17が固定状態か否かを判定する。制御装置40は、ステップST101で一方向クラッチ17が固定状態ではないと判定した場合には、ステップST102に進む。
制御装置40は、ステップST102において、変速比iが中間目標変速比i_cmd_midとなるように(換言すると、偏心量R1が中間目標変速比i_cmd_midに応じた偏心量である中間偏心量R1_cmd_midとなるように)、回転半径調節機構4の偏心量R1を制御する(図11の時点t1〜t3)。
ここで、ステップST102が、中間回転半径調整部77によって実行される処理に相当する。
なお、図11においては、時点t1と時点t3との間の時点t2において、偏心量R1が中間偏心量R1_cmd_midとなっている。
制御装置40は、ステップST101で一方向クラッチ17が固定状態と判定した場合には、ステップST103に進む。制御装置40は、ステップST103において、変速比iが最終目標変速比i_cmd_lastとなるように(換言すると、偏心量R1が最終目標変速比i_cmd_lastに応じた偏心量である最終偏心量R1_cmd_lastとなるように)、回転半径調節機構4の偏心量R1を制御する(図11の時点t3以降)。ここで、ステップST103が、最終回転半径調整部76によって実行される処理に相当する。
ステップST102及びST103が終了すると、「処理P1」が終了する。
制御装置40は、「処理P1」及び「処理P2」が終了すると、本フローチャートの処理を終了する。
図11において、時点t3のときに、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行する。これにより、調節用駆動源14に調節用駆動源負荷Tpが作用して(図11は、調節用駆動源負荷Tpが減少負荷の場合の例を示している)、急激に偏心量R1が変化している。
このように調節用駆動源負荷Tpが減少負荷の場合(図11の例又は図12における線Q1の場合)、制御装置40は、図10のフローチャートに示されたように、回転半径調節機構4の偏心量R1が、最終偏心量R1_cmd_lastよりも大きな第1中間偏心量R1_cmd_lの状態で、一方向クラッチ17を空転状態から固定状態に移行させる。
このため、一方向クラッチ17が固定状態のときに、回転半径調節機構4の偏心量R1が減少するだけとなり(図12における線Q1の白丸よりも右側を参照)、固定状態において偏心量R1の増加及び減少の両方が生じるものに比べて(図12における線Q01を参照)、ドライバビリティの低下を抑制できる。
また、調節用駆動源負荷Tpが増加負荷の場合(図12における線Q2の場合)、制御装置40は、図10のフローチャートに示されたように、回転半径調節機構4の偏心量R1が、最終偏心量R1_cmd_lastよりも小さな第2中間偏心量R1_cmd_sの状態で、一方向クラッチ17を空転状態から固定状態に移行させる。
このため、一方向クラッチ17が固定状態のときに、回転半径調節機構4の偏心量R1が増加するだけとなり(図12における線Q2の白丸よりも右側を参照)、固定状態において偏心量R1の増加及び減少の両方が生じるものに比べて(図12における線Q02を参照)、ドライバビリティの低下を抑制できる。
(4.変形例)
なお、本実施形態においては、偏差i_dを決定する態様は、スロットル弁開度APに応じて決定している態様であるが(図14参照)、当該偏差i_dを決定する態様としては、スロットル弁開度APの単位時間辺りの変化量ΔAPに応じて、偏差を決定する態様も取り得る(これは、すなわち、要求駆動力Tdの変化量ΔTdに応じて、偏差を決定することと実質的に同一である)。この場合、制御装置は、スロットル弁開度APの変化量ΔAPが所定値よりも大きい場合に、当該スロットル弁開度APの変化量ΔAPが大きいほど、最終目標変速比i_cmd_lastとの偏差i_dが大きくなるように中間目標変速比i_cmd_midを決定する。
また、制御装置40は、偏差i_dを決定する態様としては、一方向回転阻止機構が固定状態に移行してから、回転半径調節機構の回転半径が、減少するだけか又は増加するだけとなるように決定されるものであれば、スロットル弁開度AP及びその時間変化量ΔAP以外に基づいて、偏差を決定する態様も取り得る。
また、偏差i_dを決定する他の態様としては、調節用駆動源負荷Tpが大きくなるほど、偏差i_dを大きくするような態様も取り得る。更に、当該態様で決定された偏差i_dに、「補正係数」を乗算して、最終的な偏差i_dを決定する態様も取り得る。この「補正係数」は、例えば、スロットル弁開度AP又はスロットル弁開度APの単位時間辺りの変化量ΔAPが所定値よりも大きい場合に、当該スロットル弁開度AP又は当該スロットル弁開度APの単位時間辺りの変化量ΔAPが大きいほど、大きくなるように決定される。
また、本実施形態においては、制御装置40が、実変速比iと、走行用駆動源50の出力回転速度Neとに基づいて、調節用駆動源負荷Tpを推定している態様である。しかしながら、制御装置の調節用駆動源負荷を推定する態様としては、実変速比と、走行用駆動源からの出力駆動力とに基づいて調節用駆動源負荷を推定する態様も取り得る。
また、本実施形態においては、一方向回転阻止機構として、一方向クラッチ17を用いているが、本発明の一方向回転阻止機構は、これに限らず、揺動リンク18から出力軸3にトルクを伝達可能な揺動リンク18の出力軸3に対する回転方向を切換自在に構成される二方向クラッチ(ツーウェイクラッチ)で構成してもよい。
また、本実施形態においては、回転半径調節機構4として、入力軸2と一体に回転するカムディスク5と、回転ディスク6とを備えるものを説明したが、本発明の回転半径調節機構4は、これに限らない。例えば、回転半径調節機構を、中心から偏心して穿設された貫通孔を有する円盤状の回転ディスクと、貫通孔の内周面に設けられたリングギアと、入力軸に固定されリングギアに噛合する第1ピニオンと、調節用駆動源からの駆動力が伝達されるキャリアと、キャリアで自転及び公転自在に夫々軸支されると共にリングギアに夫々噛合する2つの第2ピニオンとで構成してもよい。