(1.動力伝達装置の構成)
以下、本発明の動力伝達装置の実施形態を説明する。本実施形態の動力伝達装置1A(図9参照)は、変速比i(i=入力軸の回転速度/出力軸の回転速度)を無限大(∞)にして出力軸の回転速度を「0」にできる無段変速機、所謂IVT(Infinity Variable Transmission)を備える。
図1を参照して、無段変速機1は、車両C(図9参照)に搭載されており、内燃機関であるエンジンや電動機等の走行用駆動源50(図9参照)からの回転駆動力を受けることで入力中心軸線P1を中心に回転する中空の入力軸2(本発明の「入力部」に相当する)とを備える。更に、無段変速機1は、入力軸2に平行に配置され、図外のデファレンシャルギアやプロペラシャフト等を介して車両Cの駆動輪60(図9参照)に回転動力を伝達させる出力軸3と、入力軸2に設けられた6つの回転半径調節機構4とを備える。
図2に示されるように、各回転半径調節機構4は、カムディスク5と、回転ディスク6とを備える。カムディスク5は、円盤状であり、入力中心軸線P1から偏心して入力軸2と一体的に回転するように入力軸2に2個1組で夫々設けられている。各1組のカムディスク5は、夫々位相を60度異ならせて、6組のカムディスク5で入力軸2の周方向を一回りするように配置されている。また、各1組のカムディスク5には、カムディスク5を受け入れる受入孔6aを備える円盤状の回転ディスク6が、カムディスク5に対して偏心した状態で回転自在に外嵌されている。
回転ディスク6は、カムディスク5の中心点をP2、回転ディスク6の中心点をP3として、入力中心軸線P1と中心点P2の距離Raと、中心点P2と中心点P3の距離Rbとが同一となるように、カムディスク5に対して偏心している。
回転ディスク6の受入孔6aには、1組のカムディスク5の間に位置させて内歯6bが設けられている。入力軸2(図1)には、1組のカムディスク5の間に位置させて、カムディスク5の偏心方向に対向する個所に内周面と外周面とを連通させる切欠孔2aが形成されている。
中空の入力軸2内には、ピニオンシャフト7が、入力軸2と同心に配置されている。ピニオンシャフト7は、回転ディスク6と対応する個所に外歯7aを備える。また、ピニオンシャフト7は、入力軸2と相対回転自在となるように配置されている。ピニオンシャフト7の外歯7aは、入力軸2の切欠孔2aを介して、回転ディスク6の内歯6bと噛合する。
ピニオンシャフト7には、差動機構8が接続されている。差動機構8は、遊星歯車機構で構成されており、サンギア9と、入力軸2に連結された第1リングギア10と、ピニオンシャフト7に連結された第2リングギア11と、サンギア9及び第1リングギア10と噛合する大径部12aと、第2リングギア11と噛合する小径部12bとから成る段付きピニオン12を自転及び公転自在に軸支するキャリア13とを備える。
サンギア9には、ピニオンシャフト7用の電動機から成る調節用駆動源14の回転軸14aが連結されている。調節用駆動源14の回転速度を入力軸2の回転速度と同一にすると、サンギア9と第1リングギア10とが同一速度で回転することになる。これにより、サンギア9、第1リングギア10、第2リングギア11及びキャリア13の4つの要素が相対回転不能なロック状態となって、第2リングギア11と連結するピニオンシャフト7が入力軸2と同一速度で回転する。
調節用駆動源14の回転速度を入力軸2の回転速度よりも遅くすると、サンギア9の回転数をNs、第1リングギア10の回転数をNR1、サンギア9と第1リングギア10のギア比(第1リングギア10の歯数/サンギア9の歯数)をjとして、キャリア13の回転数が(j・NR1+Ns)/(j+1)となる。
そして、サンギア9と第2リングギア11のギア比((第2リングギア11の歯数/サンギア9の歯数)×(段付きピニオン12の大径部12aの歯数/小径部12bの歯数))をkとすると、第2リングギア11の回転数が{j(k+1)NR1+(k−j)Ns}/{k(j+1)}となる。
カムディスク5が固定された入力軸2の回転速度とピニオンシャフト7の回転速度とが同一である場合には、回転ディスク6はカムディスク5と共に一体に回転する。入力軸2の回転速度とピニオンシャフト7の回転速度とに差がある場合には、回転ディスク6はカムディスク5の中心点P2を中心にカムディスク5の周縁を回転する。
図2に示すように、回転ディスク6は、カムディスク5に対して距離Raと距離Rbとが同一となるように偏心されている。このため、回転ディスク6の中心点P3を入力中心軸線P1と同一軸線上に位置するようにして、入力中心軸線P1と中心点P3との距離、即ち偏心量R1を「0」とすることもできる。
回転ディスク6の周縁には、一方の端部に大径の大径環状部15aを備え、他方の端部に大径環状部15aの径よりも小径の小径環状部15bを備えるコネクティングロッド15の大径環状部15aが、ボールベアリングからなるコンロッド軸受16を介して回転自在に外嵌されている。出力軸3には、一方向回転阻止機構としての一方向クラッチ17を介して、揺動リンク18がコネクティングロッド15に対応させて6個設けられている。
一方向回転阻止機構としての一方向クラッチ17は、揺動リンク18と出力軸3との間に設けられている。一方向クラッチ17は、出力軸3に対して一方側に相対回転しようとするときに出力軸3に揺動リンク18を固定し、他方側に相対回転しようとするときに出力軸3に対して揺動リンク18を空転させる。揺動リンク18は、一方向クラッチ17によって出力軸3に対して空転する状態のときに、出力軸3に対して揺動自在となる。
揺動リンク18は、環状に形成されており、その上方には、コネクティングロッド15の小径環状部15bに連結される揺動端部18aが設けられている。揺動端部18aには、小径環状部15bを軸方向で挟み込むように突出した一対の突片18bが設けられている。一対の突片18bには、小径環状部15bの内径に対応する貫通孔18cが穿設されている。貫通孔18c及び小径環状部15bには、連結ピン19が挿入されている。これにより、コネクティングロッド15と揺動リンク18とが連結される。
図3は、回転半径調節機構4の偏心量R1(入力中心軸線P1と中心点P3との距離)を変化させた状態のピニオンシャフト7と回転ディスク6との位置関係を示す。図3(a)は偏心量R1を「最大」とした状態を示している。このとき、ピニオンシャフト7と回転ディスク6との位置関係は、入力中心軸線P1と、カムディスク5の中心点P2と、回転ディスク6の中心点P3とが一直線に並ぶような位置関係となる。このときの変速比iは最小となる。
図3(b)は偏心量R1を図3(a)よりも小さい「中」とした状態を示しており、図3(c)は偏心量R1を図3(b)よりも更に小さい「小」とした状態を示している。変速比iは、図3(b)では図3(a)の変速比iよりも大きい「中」となり、図3(c)では図3(b)の変速比iよりも大きい「大」となる。
図3(d)は偏心量R1を「0」とした状態を示しており、入力中心軸線P1と、回転ディスク6の中心点P3とが同心に位置する。このときの変速比iは無限大(∞)となる。本実施形態の無段変速機1は、回転半径調節機構4で偏心量R1を変えることにより、回転半径調節機構4の回転運動の半径を調節自在としている。本実施形態では、偏心量R1が回転半径調節機構4の回転運動の半径(すなわち、本発明の「回転半径」)と実質的に同一である。
図2に示すように、本実施形態の回転半径調節機構4、コネクティングロッド15、揺動リンク18はてこクランク機構20(四節リンク機構)を構成する。そして、てこクランク機構20によって、入力軸2の回転運動が揺動リンク18の揺動運動に変換される。本実施形態の無段変速機1は合計6個のてこクランク機構20を備えている。
偏心量R1が「0」でないときに、入力軸2を回転させると共に、ピニオンシャフト7を入力軸2と同一速度で回転させると、各コネクティングロッド15が60度ずつ位相を変えながら、偏心量R1に基づき入力軸2と出力軸3との間で出力軸3側に押したり、入力軸2側に引いたりを交互に繰り返して揺動する。
コネクティングロッド15の小径環状部15bは、出力軸3に一方向クラッチ17を介して設けられた揺動リンク18に連結されている。このため、揺動リンク18がコネクティングロッド15によって押し引きされて揺動すると、揺動リンク18が押し方向側又は引張り方向側の何れか一方に回転するときだけ、出力軸3が回転する。
揺動リンク18が他方に回転するときには、出力軸3に揺動リンク18の揺動運動の力が伝達されず、揺動リンク18が空回りする。各回転半径調節機構4は、60度毎に位相を変えて配置されているため、出力軸3は各回転半径調節機構4で順に回転させられる。
図4(a)は偏心量R1が図3(a)の「最大」である場合(変速比iが最小である場合)、図4(b)は偏心量R1が図3(b)の「中」である場合(変速比iが中である場合)、図4(c)は偏心量R1が図3(c)の「小」である場合(変速比iが大である場合)の、回転半径調節機構4の回転運動に対する揺動リンク18の揺動範囲θ2を示している。
図4から明らかなように、偏心量R1が小さくなるにつれ、揺動リンク18の揺動範囲θ2が狭くなる。尚、偏心量R1が「0」であるときは、揺動リンク18は揺動しなくなる。また、本実施形態では、揺動リンク18の揺動端部18aの揺動範囲θ2のうち、入力軸2に最も近い位置を内死点、入力軸2から最も離れる位置を外死点とする。
図5は、無段変速機1の回転半径調節機構4の回転角度θを横軸、揺動リンク18の角速度ωを縦軸として、回転半径調節機構4の偏心量R1の変化に伴う角速度ωの変化の関係を示す。図5から明らかなように、偏心量R1が大きい(変速比iが小さい)ほど揺動リンク18の角速度ωが大きくなることが分かる。
図6は、60度ずつ位相を異ならせた6つの回転半径調節機構4を回転させたとき(入力軸2とピニオンシャフト7とを同一速度で回転させたとき)における、回転半径調節機構4の回転角度θ1に対する、各揺動リンク18の角速度ωを示している。図6から、6つのてこクランク機構20により出力軸3がスムーズに回転されることが分かる。
また、図9に示されるように、無段変速機1は、制御装置40を備える。制御装置40は、CPU及びメモリ等により構成された電子ユニットである。制御装置40は、メモリに保持された走行用駆動源50及び無段変速機1の制御用プログラムをCPUで実行することによって、走行用駆動源50及び調節用駆動源14の作動を制御する。また、制御装置40は、調節用駆動源14の作動を制御することで、回転半径調節機構4の偏心量R1を制御する機能を実現している。
また、無段変速機1が搭載された車両Cは、無段変速機1の入力軸2の回転速度(本実施形態においては走行用駆動源50の出力回転速度Neと同一)を検知する入力側回転速度検知部41(例えば、回転速度センサ)と、無段変速機1の出力軸3の回転速度を検知する出力側回転速度検知部42(例えば、回転速度センサ)と、アクセルペダル(図示省略)の操作量に応じたスロットル弁の開度を検知するスロットル弁開度検知部43と、操作スイッチ44(本発明における「運転モードスイッチ」に相当する)とを備える。
制御装置40には、入力側回転速度検知部41、出力側回転速度検知部42、スロットル弁開度検知部43、及び操作スイッチ44の各出力信号が入力される。
制御装置40は、入力側回転速度検知部41の出力信号から走行用駆動源50の出力回転速度Ne(単位は、例えば[rpm])を検知する。
また、制御装置40は、出力側回転速度検知部42の出力信号から車両Cの走行速度(以下、「車速」という)V(単位は、例えば[km/h])を検知する。詳細には、制御装置40は、「出力軸3の回転速度(単位は、例えば[rpm])」及び「出力軸3と駆動輪60との間の変速比」に基づいて車速Vを検知する。
また、制御装置40は、スロットル弁開度検知部43の出力信号から車両Cへの要求駆動力Td(単位は、例えば[Nm])を検知する。制御装置40は、スロットル弁の開度が0の場合には(誤差を考慮して、0と実質的に同等な値は0として扱う)、車両への要求駆動力が0であると検知する。また、制御装置40は、スロットル弁の開度が0よりも大きな値である場合には、スロットル弁の開度及びその時間変化量に応じて車両Cへの要求駆動力Tdを検知する。
また、制御装置40は、操作スイッチ44の出力信号から車両Cの運転モードを検知する。ここで、運転モードとは、車両Cの走行に関わる制御方法である。車両Cには複数の運転モードが規定されており、車両Cの運転者は、操作スイッチ44を操作することで複数の運転モードを選択できる。
本実施形態においては、運転モードとして、エコモード及びスポーツモードが規定されている。ここで、エコモードとは、エネルギー消費量を抑制することを優先して車両Cを制御する運転モードである。また、スポーツモードとは、駆動力を出力すること優先して車両Cを制御する運転モードである。
制御装置40は、操作スイッチ44によって選択されている車両Cの運転モードに応じて、走行用駆動源50及び無段変速機1(特に回転半径調節機構4の偏心量R1)を制御する。
(2.一方向クラッチの状態)
図7を参照して、一方向クラッチ17が、出力軸3に揺動リンク18を固定するとき(すなわち、入力軸2からの駆動力を出力軸3に伝達可能なとき)と、出力軸3に対して揺動リンク18を空転させるとき(すなわち、入力軸2からの駆動力を出力軸3に伝達不能なとき)について説明する。図7は、横軸が時間を示し、縦軸が角速度を示し、1つの揺動リンク18(揺動端部18a)の角速度ωと、出力軸3の角速度との関係を示している。
図7にハッチングで示すように、揺動リンク18の角速度ωが出力軸3の角速度を上回る領域、及び揺動リンク18の角速度ωが出力軸3の角速度を下回った後における、一方向クラッチ17の捩れ(数度の捩れ)が開放されるまでの領域で、てこクランク機構20を介して入力軸2から出力軸3に駆動力が伝達される。
以下、入力軸2からの駆動力を出力軸3に伝達不能な一方向クラッチ17の状態を「空転状態」という(空転状態は、所謂「ディスエンゲージ状態」である)。また、入力軸2からの駆動力を出力軸3に伝達可能な一方向クラッチ17の状態を「固定状態」という(固定状態は、所謂「エンゲージ状態」である)。
(2−1.状態が切り替わる境界線)
図8は、回転半径調節機構4の偏心量R1と走行用駆動源50の出力回転速度Neとに応じた境界線Lの車速Vに応じた特性図を示す。ここで、図8は、横軸が偏心量R1を示し、縦軸が走行用駆動源50の出力回転速度Neを示している。
一方向クラッチ17が空転状態及び固定状態のいずれであるかは、車速V、偏心量R1及び走行用駆動源50の出力回転速度Neに応じて変化する。
図8中に示されている線La,Lb,Lcは、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態へ移行するときの境界線である。なお、境界線L(La,Lb,Lc)の各々においては、車速Vが異なる境界線Lを示しており、境界線Lが図8の右上側に位置するほど(「La→Lb→Lc」となるほど)車速Vが大きくなる。
これは、すなわち、車速Vが大きくなるほど出力軸3の角速度が大きくなるので、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行するときの揺動リンク18の角速度ωは、車速Vが大きくなるほど大きくなるからである。
また、車速Vが一定の状態において(すなわち、各境界線La,Lb,Lcにおいて)、偏心量R1が大きくなるほど、無段変速機1の変速比iが小さくなるので揺動リンク18の角速度ωが大きくなる。従って、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行するときには、走行用駆動源50の出力回転速度Neは、偏心量R1が大きくなるほど小さくなる。
(3.制御)
(3−1.制御の概要)
図9は、本実施形態の動力伝達装置1Aを制御する制御装置40及び動力伝達装置1Aの機能ブロック図を示す。
まず、制御装置40の概略について説明する。制御装置40は、主な処理部として、境界線推定部71と、目標変速比決定部72と、速度制御部73と、移行時情報決定部74と、第1半径減少制御部75と、半径増加制御部76と、第2半径減少制御部77と、半径維持制御部78とを備える。
境界線推定部71は、図8の特性図に示されるような特性に従って、検知した車速Vに応じた境界線Lを推定する。
目標変速比決定部72は、車両Cへの要求駆動力Tdに対する目標変速比i_cmdを決定する。速度制御部73は、走行用駆動源50の出力回転速度Neを、目標変速比決定部72が決定した目標変速比i_cmdに応じた回転速度である目標回転速度Ne_cmdまで増加するように制御する。
移行時情報決定部74は、目標変速比決定部72が決定した目標変速比i_cmdに応じた偏心量R1である第1偏心量R1_cmd1(本発明における「第1回転半径」に相当する)、第1偏心量R1_cmd1よりも小さい第2偏心量R1_cmd2(本発明における「第2回転半径」に相当する)、移行時偏心量R1_tran、及び移行時回転速度Ne_tranを決定する。ここで、移行時偏心量R1_tran及び移行時回転速度Ne_tranの各々は、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行するときにおける、偏心量R1及び出力回転速度Neの目標値である。
第1半径減少制御部75は、回転半径調節機構4の偏心量R1を第2偏心量R1_cmd2まで減少するように制御する。半径増加制御部76は、回転半径調節機構4の偏心量R1を第1偏心量R1_cmd1まで増加するように制御する。第2半径減少制御部77は、回転半径調節機構4の偏心量R1を第1偏心量R1_cmd1まで減少するように制御する。半径維持制御部78は、回転半径調節機構4の偏心量R1が第1偏心量R1_cmd1に維持されるように制御する。
更に、制御装置40は、上記各処理部71〜78による制御を実行するための処理部として、第1制御を実行する第1制御実行部79と、第2制御を実行する第2制御実行部80と、判定部81とを備えている。
(3−1−1.第1制御)
第1制御とは、「一方向クラッチ17が空転状態で且つ回転半径調節機構4の偏心量R1が第2偏心量R1_cmd2より大きい場合に車両Cに対して駆動力を出力することが要求されたとき」に、「一方向クラッチ17の状態として空転状態を維持したままで第1半径減少制御部75による制御を実行」した後、「一方向クラッチ17の状態を空転状態から固定状態に移行させるように速度制御部73による制御と半径増加制御部76による制御とを並列に実行」する制御である。
制御装置40が第1制御実行部79によって第1制御を実行することで、走行用駆動源50の出力回転速度Neが車両Cの要求駆動力Tdに応じた目標回転速度Ne_cmdまで増加される。そして、これと共に、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行するときにおいて、回転半径調節機構4の偏心量R1が第1偏心量R1_cmd1(目標変速比i_cmdに応じた偏心量)よりも小さい偏心量となる。すなわち、このときの無段変速機1の変速比iが目標変速比i_cmdよりも大きな変速比となっている。
無段変速機1の変速比iが目標変速比i_cmdのときに一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行するように制御する場合に比べて、制御装置40が第1制御を実行する場合には、無段変速機1の変速比iが大きい状態である。従って、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行したときに、より大きな駆動力が出力軸3に伝達され、ひいては、車両Cの要求駆動力Tdまでより早く到達できる。
このように、一方向クラッチ17が空転状態の場合に車両Cに対して駆動力を出力することが要求されたときに、車両Cの運転者に対してより良い運転感覚を与えることができる。
(3−1−2.第2制御)
第2制御とは、「一方向クラッチ17が空転状態で且つ回転半径調節機構4の偏心量R1が第1偏心量R1_cmd1より大きい場合に車両Cに対して駆動力を出力することが要求されたとき」に、「一方向クラッチ17の状態として空転状態を維持したままで第2半径減少制御部77を実行」した後、「一方向クラッチ17の状態を空転状態から固定状態に移行させるように速度制御部73による制御と半径維持制御部78による制御とを並列に実行」する制御である。
制御装置40が第2制御実行部80によって第2制御を実行することにより、変速比iが目標変速比i_cmdのときに、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行する。このため、制御装置40が第1制御を実行する場合に比べて、第2制御を実行する場合には、車両Cから出力される駆動力が短時間で大きく変化することが抑制され、エネルギー消費量を抑制できる。
(3−1−3.状況に応じて第1制御又は第2制御を選択)
判定部81は、所定の車両情報に基づいて、車両Cの状況が「所定の状況」であるか否かを判定する。そして、制御装置40は、判定部81の判定によって、車両Cの状況が「所定の状況」であると判定されるときに第1制御実行部79によって第1制御を実行し、車両Cの状況が「所定の状況」でないと判定されるときに第2制御実行部80によって第2制御を実行する。
このように、制御装置40は、第1制御及び第2制御のうち、車両Cの状況に対して適切な制御を選択して実行する。従って、車両Cの運転者により良い運転感覚を与えるか、又はエネルギー消費量を抑制するかを適切に選択できる。
ここで、所定の車両情報とは、車両の走行状態又は走行環境等を表す情報である。本実施形態では、所定の車両情報が、車両への要求駆動力Td、当該要求駆動力Tdの変化量ΔTd、及び操作スイッチ44の操作状態に基づいた情報として規定されている。
また、「所定の状況」とは、本実施形態においては、車両が消費するエネルギー量を抑制することよりも車両から出力される駆動力を優先すべき状況(以下、「駆動力優先状況」という)である。
(3−2.制御の詳細)
次に、図10〜図12を参照して、「3−1.制御の概要」で説明した制御装置40によって実行される処理の詳細について説明する。
制御装置40は、スロットル弁開度が0又は0に近い状態、すなわち車両Cへの要求駆動力Tdが実質的に0とみなせる状態のときにおいて、図10に示される処理を所定の制御周期(例えば、10[msec])毎に実行している。なお、図10に示されるフローチャートが実行される時点においては、一方向クラッチ17の状態は空転状態になっている。
図10を参照して、制御装置40は、最初のステップST1において、出力側回転速度検知部42の出力信号に基づいて車速Vを検知する。制御装置40は、続くステップST2において、図8の特性図に示されるような特性に従って、ステップST1で検知した車速Vに応じて境界線Lを推定する。ここで、ステップST1及びST2が、境界線推定部71によって実行される処理に相当する。
制御装置40は、続くステップST3において、スロットル弁開度検知部43の出力信号に基づいてスロットル弁開度を検知する。制御装置40は、続くステップST4において、ステップST3で検知したスロットル弁開度に応じて、車両Cへの要求駆動力Tdを決定する。
制御装置40は、続くステップST5において、ステップST4で決定した要求駆動力Tdに対する目標変速比i_cmd及び目標回転速度Ne_cmdを決定する。詳細には、制御装置40は、図13の特性図に示されるような特性に従って、目標変速比i_cmd及び目標回転速度Ne_cmdを決定する。
図13では、横軸が走行用駆動源50の出力回転速度Neを示し、縦軸が偏心量R1を示している。また、第1制御によって変化する偏心量R1及び走行用駆動源50の出力回転速度Neの遷移を線Q1として示し、第2制御によって変化する偏心量R1及び走行用駆動源50の出力回転速度Neの遷移を線Q2として示している。
また、図13の線Ma,Mb,Mc,Mdは、車両Cから出力される駆動力が同じとなる点を結んだ線(等駆動力線)を示す。図13において右上側に行くほど(すなわち、「Ma→Mb→Mc→Md」となるほど)大きな駆動力となる。
制御装置40は、ステップST4で決定された要求駆動力Tdと等しい駆動力の線(図13では線Mc)を選択し、現時点の車両Cの状態等の様々な要因を考慮して、当該線上のいずれかの点Ptdを目標として決定する。
ここで、当該考慮される車両Cの状態とは、例えば、車両Cの機械的な特性による状態(例えば、走行用駆動源50の駆動力と回転速度との特性、及び偏心量R1の変更可能速度等)、及び時間と共に変化する車両Cの状況(例えば、偏心量R1、要求駆動力Td及び車両Cに搭載されたジャイロセンサ等によって検知される車両Cが走行している道路の勾配)等である。
点Ptd(図13)の決定に伴って、偏心量R1(すなわち、第1偏心量R1_cmd1。ひいては当該第1偏心量R1_cmd1に応じた目標変速比i_cmd)と出力回転速度Ne(すなわち、目標回転速度Ne_cmd)が決定される。
ここで、ステップST3〜ST5が、目標変速比決定部72によって実行される処理に相当する。
制御装置40は、続くステップST6において、車両Cの状況が駆動力優先状況か否かを図11に示される処理によって判定する。ここで、ステップST6が、判定部81によって実行される処理に相当する。制御装置40は、ステップST6によって車両Cの状況が駆動力優先状況と判定した場合には、ステップST7に進み、図12(a)に示される第1制御を実行する。ここで、ステップST7が、第1制御実行部79によって実行される第1制御に相当する。制御装置40は、ステップST6によって車両Cの状況が駆動力優先状況でないと判定した場合には、ステップST8に進み、図12(b)に示される第2制御を実行する。ここで、ステップST8が、第2制御実行部80によって実行される第2制御に相当する。
制御装置40は、ステップST7又はST8の処理が終了すると、図10のフローチャートを終了する。
(3−2−1.駆動力優先状況判定)
図11を参照して、図10のステップST6において実行される車両Cの状況が駆動力優先状況か否かを判定する処理について説明する。
制御装置40は、駆動力優先状況か否かを判定する処理における最初のステップST101では、操作スイッチ44の出力信号に基づいて運転モードがスポーツモードか否かを判定する。制御装置40は、ステップST101で、運転モードがスポーツモードであるという肯定的な判定をした場合には、ステップST102に進む。
制御装置40は、ステップST102で、車両Cの要求駆動力Tdが所定値以上か否かを判定する。ここで、所定値は、予め実験等によって、駆動力優先状況か否かを適切に判定できる値に設定される。制御装置40は、ステップST102で、車両Cの要求駆動力Tdが所定値以上であるという肯定的な判定をした場合には、ステップST103に進む。
制御装置40は、ステップST103で、車両Cの要求駆動力Tdの変化量ΔTdが所定量以上か否かを判定する。ここで、所定量は、予め実験等によって、駆動力優先状況か否かを適切に判定できる値に設定される。制御装置40は、ステップST103で、車両Cの要求駆動力Tdが所定値以上であるという肯定的な判定をした場合には、ステップST104に進み、車両Cの状況が駆動力優先状況であると判定する。
また、制御装置40は、ステップST101〜ST103のいずれかにおいて、肯定的な判定がなされなかった場合には、ステップST105に進み、車両Cの状況が駆動力優先状況ではないと判定する。
制御装置40は、ステップST104又はステップST105の処理が終了すると、図11のフローチャートの処理を終了する。
(3−2−2.第1制御)
図12(a)及び図14を参照して、図10のステップST7において実行される第1制御について説明する。
図14では、第1制御によって変化する、走行用駆動源50の出力回転速度Ne、駆動源駆動力Teng(走行用駆動源50から出力されている駆動力)、偏心量R1及び車両駆動力Tc(車両Cの駆動輪60から出力されている駆動力)が例示されている。図14(a)では、横軸が時間を示し、縦軸が走行用駆動源50の出力回転速度Ne及び駆動源駆動力Tengを示す。図14(b)では、横軸が時間を示し、縦軸が車両駆動力Tc及び偏心量R1を示す。
また、図14において、時点t0は、第1制御が開始された時点を示している。時点t11は、偏心量R1が第2偏心量R1_cmd2に到達した時点を示している。時点t12は、第2偏心量R1_cmd2から第1偏心量R1_cmd1へ偏心量R1を増加させる処理が開始された時点を示している。時点t_tran1は、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行した時点を示している。時点t_achieve1は、車両駆動力Tcが要求駆動力Tdに到達した時点を示している。
図12(a)を参照して、制御装置40は、第1制御における最初のステップST201では、図10のステップST5によって決定された点Ptdに応じて第1偏心量R1_cmd1を決定する。制御装置40は、続くステップST202において、第2偏心量R1_cmd2、移行時偏心量R1_tran、及び移行時回転速度Ne_tranを決定する。
詳細には、制御装置40は、点Ptdに対応した目標回転速度Ne_cmdよりも低い回転速度で且つ点Ptdに対応した第1偏心量R1_cmd1よりも小さい偏心量のときに、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行するように、移行時偏心量R1_tran及び移行時回転速度Ne_tranを決定する。そして、制御装置40は、当該移行時偏心量R1_tranよりも小さくなるように第2偏心量R1_cmd2を決定する。
ここで、ステップST201〜ST202が、移行時情報決定部74によって実行される処理に相当する。
制御装置40は、ステップST202の処理が終了すると、偏心量R1を制御する「処理P11」(ステップST211〜ST213)と、走行用駆動源50の出力回転速度Neを制御する「処理P12」(ステップST221〜ST222)とを並列に実行する。
まず、制御装置40は、「処理P11」のステップST211において、偏心量R1を第2偏心量R1_cmd2まで減少させると共に、「処理P12」のステップST221において、走行用駆動源50の出力回転速度Neを移行時回転速度Ne_tranに向けて増加させる(図14の時点t0〜時点t11)。
そして、制御装置40は、「処理P11」において、ステップST211の処理が終了すると続くステップST212で、第2偏心量R1_cmd2に維持されるように偏心量R1を制御する(図14の時点t11〜時点t12)。なお、このとき、制御装置40は、「処理P12」においては、ステップST221の処理を継続している。
そして、制御装置40は、現時点で空転状態となっている一方向クラッチ17が固定状態となるように、「処理P11」のステップST213において偏心量R1を第1偏心量R1_cmd1まで増加させると共に、「処理P12」のステップST222において走行用駆動源50の出力回転速度Neを目標回転速度Ne_cmdまで増加させる(図14の時点t12〜時点t_achieve1)。
制御装置40は、「処理P11」のステップST213及び「処理P12」のステップST222の処理が終了すると、図12(a)のフローチャートを終了する。
ここで、ステップST222が、速度制御部73によって実行される処理に相当する。また、ステップST211が、第1半径減少制御部75によって実行される処理に相当する。また、ステップST213が、半径増加制御部76によって実行される処理に相当する。
(3−2−3.第2制御)
図12(b)及び図15を参照して、図10のステップST8において実行される第2制御について説明する。
図15では、第2制御によって変化する、走行用駆動源50の出力回転速度Ne、駆動源駆動力Teng、偏心量R1及び車両駆動力Tcが例示されている。
図15(a)では、横軸が時間を示し、縦軸が走行用駆動源50の出力回転速度Ne及び駆動源駆動力Tengを示す。図15(b)では、横軸が時間を示し、縦軸が車両駆動力Tc及び偏心量R1を示す。
また、図15において、時点t0は、第2制御が開始された時点を示している。時点t21は、偏心量R1が第1偏心量R1_cmd1に到達した時点を示している。時点t_tran2は、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行した時点を示している。時点t_achieve2は、車両駆動力Tcが要求駆動力Tdに到達した時点を示している。
図12(b)を参照して、制御装置40は、第2制御における最初のステップST301では、第1偏心量R1_cmd1を決定する。なお、図12(b)のステップST301は、図12(a)のステップST201と同等の処理である。ここで、ステップST301の処理が、移行時情報決定部74によって実行される処理に相当する。
制御装置40は、ステップST301の処理が終了すると、偏心量R1を制御する「処理P21」(ステップST311〜ST312)と、走行用駆動源50の出力回転速度Neを制御する「処理P22」(ステップST321)とを並列に実行する。
制御装置40は、「処理P21」のステップST311において、ステップST301で算出された第1偏心量R1_cmd1まで偏心量R1を減少させると共に、「処理P22」のステップST321において、走行用駆動源50の出力回転速度Neを目標回転速度Ne_cmdに向かって増加させる(図15の時点t0〜時点t21)。
制御装置40は、「処理P21」において、ステップST312で、第1偏心量R1_cmd1に維持されるように偏心量R1を制御する(図15の時点t21〜時点t_achieve2)。また、このとき、制御装置40は、ステップST312と共に、現時点で空転状態となっている一方向クラッチ17が固定状態となるように、「処理P22」のステップST321を継続することで、走行用駆動源50の出力回転速度Neを目標回転速度Ne_cmdまで増加させる(図15の時点t21〜時点t_achieve2)。
制御装置40は、「処理P21」のステップST312及び「処理P22」のステップST321の処理が終了すると、図12(b)のフローチャートを終了する。
ここで、ステップST321が、速度制御部73によって実行される処理に相当する。また、ステップST311が、第2半径減少制御部77によって実行される処理に相当する。また、ステップST312が、半径維持制御部78によって実行される処理に相当する。
(3−3.第1制御と第2制御の比較)
図14と図15とを比較して、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行した時点から(すなわち、車両駆動力Tcが0より大きくなってから)、車両駆動力Tcが要求駆動力Tdに到達するまでの時間は、「時点t_tran1〜時点t_achieve1」の方が「時点t_tran2〜時点t_achieve2」よりも短い。このように、制御装置40が第1制御を実行することで、第2制御を実行する場合に比べて、車両駆動力Tcが要求駆動力Tdに到達するまでの時間が短くなる。
従って、制御装置40が第1制御を実行する場合には、第2制御を実行する場合に比べて、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行するときの駆動力が大きくなり、車両Cは駆動力を重視した走行が可能となる。
特に、所謂キックダウンのように要求駆動力Tdが大きく増加するような場合には、車両駆動力Tcを急激に増加させる必要がある。このような場合には、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行したときからの車両駆動力Tcを急激に増加させることができる制御装置40が第1制御を実行することで、車両Cの運転者の要望に適切に応えることができる。
また、図13に示されるように、偏心量R1が小さくなるほど、一方向クラッチ17が空転状態から固定状態に移行するときの、走行用駆動源50の出力回転速度Neが大きくなる。一方向クラッチ17が空転状態のときには、固定状態のときとは異なり、走行用駆動源50に負荷が作用しないので走行用駆動源50の出力回転速度Neを速やかに増加できる。
すなわち、制御装置40は、偏心量R1を小さくすることで、空転状態を維持したままでより大きな回転速度まで走行用駆動源50の出力回転速度Neを速やかに増加させることができる。
一方、制御装置40が第2制御を実行することで、第1制御を実行する場合に比べて、車両駆動力Tcの単位時間辺りの増加量が小さいので、車両Cはエネルギー消費量を抑制した走行が可能となる。
(4.変形例)
なお、本実施形態においては、制御装置40は、所定の車両情報が、車両への要求駆動力Td、当該要求駆動力Tdの変化量ΔTd、及び操作スイッチ44の操作状態に基づいた情報として規定されている態様である。しかしながら、本発明の制御装置の態様として、所定の車両情報が、車両への要求駆動力Td、当該要求駆動力Tdの変化量ΔTd、及び操作スイッチ44の操作状態の少なくともいずれかに基づいた情報として規定されている態様も取り得る。
更に、本発明の制御装置の態様としては上記の態様に限らず、車両の走行状態又は走行環境等を表す情報であれば所定の車両情報として規定され得る。すなわち、本発明の制御装置の態様として、上記の情報に加えて、例えば、所定の車両情報が、車両Cに搭載されたジャイロセンサ等に基づいて得られる道路の勾配、車両Cに搭載された加速度センサ等に基づいて得られる車両Cの加速度又はその時間変化量、及び車両Cに搭載されたFMアンテナ又はビーコン等によって得られる渋滞情報等の少なくともいずれかに基づいた情報として規定されている態様も取り得る。
また、本実施形態においては、車両Cの状況が所定の状況(すなわち、駆動力優先状況)であるか否かを、制御装置40が図11に示されるように判定している。しかしながら、本発明において制御装置が車両の状況が所定の状況であるか否かを判定する態様としては、これに限らず、図11のステップST101〜ST103の少なくともいずれかの判定結果が肯定的となった場合に、車両の状況が所定の状況であると判定する態様も取り得る。
また、当該態様としては、他の態様も取り得る。これは、例えば、制御装置が、図16の特性図に示されるような特性に基づいて、車両の状況が所定の状況であるか否かを判定する態様である。図16では、横軸が要求駆動力Tdを示し、縦軸が要求駆動力Tdの変化量ΔTdを示している。
図16では、要求駆動力Tdの値に応じて、制御装置が車両の状況が所定の状況(例えば、駆動力優先状況)であると判定するときの要求駆動力Tdの変化量ΔTdの閾値を変化させている。
すなわち、要求駆動力Tdが所定値Td1以上且つ所定値Td2未満の場合には、要求駆動力Tdが増加するほど少ない要求駆動力Tdの変化量ΔTdで駆動力優先状況として判定するように当該閾値が設定される。また、当該閾値は、要求駆動力Tdが所定値Td1未満の場合には、要求駆動力Tdの変化量ΔTdに拘らず駆動力優先状況ではないと判定されるように設定され、要求駆動力Tdが所定値Td2以上の場合には、要求駆動力Tdの変化量ΔTdに拘らず駆動力優先状況であると判定されるように設定される。
また、本実施形態においては、制御装置40は、判定部81の判定結果に応じて(すなわち、車両Cの状況に応じて)第1制御と第2制御とを選択する態様である。しかしながら、本発明の制御装置の態様としては、これに限らず、車両の状況に応じて第1制御と第2制御とを選択せずに、常に第1制御を実行する態様も取り得る。
この場合、制御装置は、本実施形態の制御装置40に比べて、第2半径減少制御部77と、半径維持制御部78と、第2制御実行部80と、判定部81とが省略される。この場合であっても、第1制御が実行されることで、一方向クラッチが空転状態の場合に車両に対して駆動力を出力することが要求されたときに、車両の運転者に対してより良い運転感覚を与えることができるという本発明の効果が得られる。
また、本実施形態においては、一方向回転阻止機構として、一方向クラッチ17を用いているが、本発明の一方向回転阻止機構は、これに限らず、揺動リンク18から出力軸3にトルクを伝達可能な揺動リンク18の出力軸3に対する回転方向を切換自在に構成される二方向クラッチ(ツーウェイクラッチ)で構成してもよい。
また、本実施形態においては、回転半径調節機構4として、入力軸2と一体に回転するカムディスク5と、回転ディスク6とを備えるものを説明したが、本発明の回転半径調節機構4は、これに限らない。例えば、回転半径調節機構を、中心から偏心して穿設された貫通孔を有する円盤状の回転ディスクと、貫通孔の内周面に設けられたリングギアと、入力軸に固定されリングギアに噛合する第1ピニオンと、調節用駆動源からの駆動力が伝達されるキャリアと、キャリアで自転及び公転自在に夫々軸支されると共にリングギアに夫々噛合する2つの第2ピニオンとで構成してもよい。