JP6067884B2 - 動力伝達装置 - Google Patents

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Description

本発明は、てこクランク機構を備える動力伝達装置に関する。
従来、車両に設けられたエンジン等の走行用駆動源からの駆動力が伝達される入力部と、入力部の回転中心軸線と平行に配置された出力軸と、複数のてこクランク機構と、走行用駆動源及びてこクランク機構の作動を制御する制御部とを備える四節リンク機構型の無段変速機を備える動力伝達装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1のてこクランク機構は、入力部に設けられた回転半径調節機構と、出力軸に揺動自在に軸支される揺動リンクと、一方の端部に回転半径調節機構に回転自在に外嵌される入力側環状部を有し、他方の端部が揺動リンクの揺動端部に連結されるコネクティングロッドとで構成される。
揺動リンクと出力軸との間には、出力軸に対して一方側に相対回転しようとするときに出力軸に対して揺動リンクが空転する空転状態と、出力軸に対して他方側に相対回転しようとするときに出力軸に揺動リンクが固定される固定状態とに切替可能な一方向回転阻止機構としての一方向クラッチが設けられている。
このような動力伝達装置においては、車両の走行速度に応じて車両の駆動力を制御している。このときに用いる車両の走行速度を表す信号としては、例えば、特許文献2に記載されたように、回転速度センサの出力に基づいて、車両の走行速度を表すパルス信号(所謂車速信号)を用いることが考えられる。
特開2013−47492号公報 特開2009−92211号公報
しかしながら、特許文献2においては、回転速度センサの誤検知等を防止するために、所定時間内に所定数未満のパルスしか含まれていないとき(例えば、車両が非常に低速で走行しているとき)には、車両が停止していると判定される。
特許文献1に記載された動力伝達装置において、特許文献2の技術を用いると、所定時間内に所定数未満のパルスしか含まれていないときには、非常に低速ながら車両が走行しているにも拘らず、車両が停止している(すなわち、走行速度が0である)と判定されてしまう。
このように、車両の走行速度が低く走行速度を適切に検知できないときには、実際の車両の走行速度と検知した走行速度とが異なることになるので、車両の駆動力を車両の走行速度に応じた適切な駆動力に制御することができないおそれがあった。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、車両の走行速度が低く走行速度を適切に検知できないときであっても、車両の駆動力を適切に制御できる動力伝達装置を提供することを目的とする。
本発明は、車両の走行用駆動源の駆動力が伝達される入力部と、前記入力部の回転中心軸線と平行に配置された出力軸と、前記出力軸に軸支される揺動リンクを有し、前記入力部の回転を前記揺動リンクの揺動に変換するてこクランク機構と、前記揺動リンクが前記出力軸に対して一方側に相対回転しようとするときに前記出力軸に対して前記揺動リンクが空転する空転状態、及び前記揺動リンクが前記出力軸に対して他方側に相対回転しようとするときに前記出力軸に前記揺動リンクが固定される固定状態を切替可能な一方向回転阻止機構と、前記車両の走行速度の情報である車速情報に基づいて、前記出力軸から出力される目標駆動力を決定する制御部とを備え、前記てこクランク機構は、調節用駆動源、前記回転中心軸線を中心として回転するときの回転半径を調節自在な回転半径調節機構、及び該回転半径調節機構と前記揺動リンクとを連結するコネクティングロッドを有し、前記制御部で前記調節用駆動源の駆動力を制御して前記回転半径調節機構の前記回転半径を調節することにより、変速比を変更可能な動力伝達装置であって、前記制御部は、前記車速情報から判断すると前記車両の走行速度が0であると判断されるが、前記車両の所定の車両情報に基づき前記車両が走行していると判断される状態である低速走行状態の場合には、前記制御部が受信するアクセルペダルの操作量情報に基づき前記目標駆動力を決定し、該決定された目標駆動力が前記出力軸から出力されるように、前記回転半径調節機構の前記回転半径を制御する低速時制御を実行し、前記制御部は、前記低速時制御を実行中に、前記車速情報から前記車両の走行速度が0を超える通常走行状態となった場合には、前記低速時制御を終了することを特徴とする。
本願発明者は、上述した動力伝達装置の構成において、車両の走行速度が所定の速度より低い場合には、走行用駆動源の出力回転速度を変化させたとしても動力伝達装置から出力される駆動力が殆ど変化せず、回転半径を変化させることで、動力伝達装置から出力される駆動力が変化するという点を見出した。
そこで、本発明においては、低速走行状態の場合には、制御部は、出力軸から出力される駆動力が目標駆動力になるように、回転半径調節機構の回転半径を制御する低速時制御を実行する。これにより、車両の走行速度が低く走行速度を適切に検知できないときであっても、車両の駆動力を適切に制御できる。
本発明において、前記車速情報を表す信号は、前記車両の走行速度が大きくなるに従って、所定時間内に含まれるパルスが多くなる信号であり、前記車速情報から判断すると前記車両の走行速度が0であると判断される場合は、前記車速情報を表す信号が、所定時間内に含まれるパルスが所定数未満の信号である場合であると設定することができる。
本発明において、前記制御部は、前記車両のアクセルペダルの操作量に応じて、前記回転半径の最初の目標値である初期目標回転半径、及び前記回転半径を増加させる割合である回転半径増加率を決定し、前記低速時制御で、まず、前記回転半径が前記初期目標回転半径となるように前記回転半径を増加させ、前記回転半径が前記初期目標回転半径になった後に、前記回転半径増加率に従って、前記回転半径を増加させることができる。
この構成によれば、アクセルペダルの操作量に応じて駆動力を動力伝達装置から出力するために、車両の正確な走行速度を検出できない低速走行状態の場合であっても、運転者に与える違和感を低減させることができる。
本発明において、前記制御部は、前記アクセルペダルの操作量が所定量より大きく、前記車両の所定の車両情報に基づき前記車両が上り坂を走行していると判断される場合には、該上り坂の勾配が大きいほど前記回転半径増加率を減少させることができる。
車両が上り坂を走行しているときにおいては、平坦路を走行しているときに比べて大きな駆動力を動力伝達装置から出力する必要がある。更に、車両が走行する上り坂の勾配が大きくなるほど、大きな駆動力を動力伝達装置から出力する必要がある。そして、動力伝達装置から大きな駆動力が出力されるためには、走行用駆動源からも大きな駆動力が出力される必要がある。
しかしながら、車両が上り坂を走行する場合等の、出力軸の回転が停止した状態又は出力軸の回転速度が低い状態であるときに、走行用駆動源から大きな駆動力が出力されると、揺動リンクが大きな駆動力で揺動しているにも拘らず、出力軸が充分に回転せず、一方向回転阻止機構に大きな負荷が作用する可能性がある。
このとき、回転半径が小さいほど、揺動リンクの回転速度が小さくなり、揺動リンクと出力軸との間の相対的な回転速度差が低減する。これにより、一方向回転阻止機構に作用する負荷を軽減できる。
そこで、上記構成によれば、制御部は、アクセルペダルの操作量が所定量より大きく、車両が上り坂を走行している場合のように、一方向回転阻止機構に大きな負荷が作用し過ぎる可能性があるとき、すなわち、上り坂の勾配が大きいときほど、回転半径増加率を減少させる。これにより、車両が上り坂を走行する場合に、一方向回転阻止機構に作用する負荷を軽減できる。
本発明において、前記車両の所定の車両情報に基づき前記車両が走行していると判断される状態は、前記車両の制動装置が操作されておらず、前記車両のアクセルペダルが操作されている状態であるとすることができる。
本発明の動力伝達装置の実施形態を一部断面で示す説明図。 本実施形態の動力伝達装置のてこクランク機構を示す説明図。 本実施形態の動力伝達装置の回転半径調節機構の回転半径の変化を説明する図。図3Aは回転半径が最大、図3Bは回転半径が中、図3Cは回転半径が小、図3Dは回転半径が0の状態を夫々示す。 本実施形態の動力伝達装置の回転半径調節機構の回転半径の変化と、揺動リンクの揺動運動の揺動角θ2の関係を示す図であり、図4Aは回転半径が最大、図4Bは回転半径が中、図4Cは回転半径が小であるときの揺動リンクの揺動運動の揺動角を夫々示す。 本実施形態の動力伝達装置の回転半径調節機構の回転半径の変化に対する、揺動リンクの角速度ωの変化を示すグラフ。 本実施形態の動力伝達において、夫々60度ずつ位相を異ならせた6つのてこクランク機構により出力軸が回転される状態を示すグラフ。 本実施形態の動力伝達装置の制御部の構成を示す機能ブロック図。 本実施形態の動力伝達装置における車速と偏心量とに応じた等駆動力線を示す図。 図9Aは、本実施形態の動力伝達装置における車速が最低速V1のときのエンジン回転速度と偏心量と車両駆動力との関係を示す図。図9Bは、車速が最低速V1のときのエンジン回転速度と偏心量と必要入力トルクとの関係を示す図。図9Cは、車速が低速V2のときのエンジン回転速度と偏心量と車両駆動力との関係を示す図。図9Dは、車速が低速V2のときのエンジン回転速度と偏心量と必要入力トルクとの関係を示す図。図9Eは、車速が中速V3のときのエンジン回転速度と偏心量と車両駆動力との関係を示す図。図9Fは、車速が中速V3のときのエンジン回転速度と偏心量と必要入力トルクとの関係を示す図。図9Gは、車速が高速V4のときのエンジン回転速度と偏心量と車両駆動力との関係を示す図。図9Hは、車速が高速V4のときのエンジン回転速度と偏心量と必要入力トルクとの関係を示す図。 図10Aは、本実施形態の動力伝達装置における車速とエンジン回転速度とアクセル開度との関係を示す図。図10Bは、車速と偏心量とアクセル開度との関係を示す図。 本実施形態の動力伝達装置のアクセル開度に応じた偏心量の時間変化を示す図。 本実施形態の動力伝達装置の勾配とアクセル開度と偏心量増加率との関係を示す図。 本実施形態の動力伝達装置の制御装置の処理を示すフローチャート。 本実施形態の動力伝達装置の各種情報の時間変化を示すタイミングチャート。
(1.動力伝達装置の構成)
以下、本発明の動力伝達装置の実施形態を説明する。本実施形態の動力伝達装置1A(図7参照)は、変速比i(i=入力軸の回転速度/出力軸の回転速度)を無限大(∞)にして出力軸の回転速度を「0」にできる無段変速機、所謂IVT(Infinity Variable Transmission)を備える。
図1を参照して、無段変速機1は、車両C(図7参照)に搭載されており、内燃機関などのエンジンや電動機等の走行用駆動源50からの駆動力が伝達されることで回転中心軸線P1を中心に回転する入力軸端部2aと、回転中心軸線P1に平行に配置され、図示省略したデファレンシャルギヤを介して車両の駆動輪(図示省略)に回転動力を伝達させる出力軸3と、回転中心軸線P1上に設けられた6つの回転半径調節機構4とを備える。なお、デファレンシャルギヤの代わりにプロペラシャフトを設けてもよい。
図1及び図2を参照して、各回転半径調節機構4は、カム部としてのカムディスク5と、回転部としての回転ディスク6とを備える。カムディスク5は、円盤状であり、回転中心軸線P1から偏心されると共に、1つの回転半径調節機構4に対して2個1組となるように、各回転半径調節機構4に設けられている。また、カムディスク5には、回転中心軸線P1の方向に貫通する貫通孔5aが設けられている。また、カムディスク5には、回転中心軸線P1に対して偏心する方向とは逆の方向に開口し、カムディスク5の外周面と貫通孔5aを構成する内周面とを連通させる切欠孔5bが設けられている。
各1組のカムディスク5は、夫々位相を60度異ならせて、6組のカムディスク5で回転中心軸線P1の周方向を一回りするように配置されている。
カムディスク5は、隣接する回転半径調節機構4のカムディスク5と一体的に形成されて一体型カム部5cが構成されている。この一体型カム部5cは、一体成型で形成してもよく、または、2つのカム部を溶接して一体化してもよい。各回転半径調節機構4の2個1組のカムディスク5同士はボルト(図示省略)で固定されている。回転中心軸線P1上の最も走行用駆動源50側に位置するカムディスク5は入力軸端部2aと一体的に形成されている。このようにして、入力軸端部2aと複数のカムディスク5とで、カムディスク5を備える入力軸2(本発明の「入力部」に相当する)が構成されることとなる。
入力軸2は、カムディスク5の貫通孔5aが連なることによって構成される挿通孔60を備える。これにより、入力軸2は、走行用駆動源50とは反対側の一方端が開口し他方端が閉塞した中空軸形状に構成される。走行用駆動源50側の他方端に位置するカムディスク5は、入力軸端部2aと一体的に形成されている。このカムディスク5と入力軸端部2aとを一体的に形成する方法としては、一体成型を用いてもよく、また、カムディスク5と入力軸端部2aとを溶接して一体化してもよい。
また、各1組のカムディスク5には、カムディスク5を受け入れる受入孔6aを備える円盤状の回転ディスク6が偏心された状態で回転自在に外嵌されている。
図2に示すように、回転ディスク6は、カムディスク5の中心点をP2、回転ディスク6の中心点をP3として、回転中心軸線P1と中心点P2の距離Raと、中心点P2と中心点P3の距離Rbとが同一となるように、カムディスク5に対して偏心している。
回転ディスク6の受入孔6aには、1組のカムディスク5の間に位置させて内歯6bが設けられている。
カムシャフト51の挿通孔60には、回転中心軸線P1と同心に、且つ、回転ディスク6の内歯6bと対応する個所に位置させて、ピニオン70がカムディスク5を有する入力軸2と相対回転自在となるように配置されている。ピニオン70は、ピニオンシャフト72と一体に形成されている。なお、ピニオン70は、ピニオンシャフト72と別体に構成して、ピニオン70をピニオンシャフト72にスプライン結合で連結させてもよい。本実施形態においては、単にピニオン70というときは、ピニオンシャフト72を含むものとして定義する。
ピニオン70は、カムディスク5の切欠孔5bを介して、回転ディスク6の内歯6bと噛合する。ピニオンシャフト72には、隣接するピニオン70の間に位置させてピニオン軸受74が設けられている。このピニオン軸受74を介して、ピニオンシャフト72は、入力軸2を支えている。ピニオンシャフト72には、遊星歯車機構などで構成される差動機構8が接続されている。ピニオン70には、差動機構8を介して調節用駆動源14の駆動力が伝達される。
回転ディスク6は、カムディスク5に対して距離Raと距離Rbとが同一となるように偏心されているため、回転ディスク6の中心点P3を回転中心軸線P1と同一軸線上に位置するようにして、回転中心軸線P1と中心点P3との距離、即ち偏心量R1を「0」とすることもできる。
回転ディスク6の周縁には、一方(入力軸2側)の端部に大径の入力側環状部15aを備え、他方(出力軸3側)の端部に入力側環状部15aの径よりも小径の出力側環状部15bを備えるコネクティングロッド15の入力側環状部15aが、軸方向に2個並べて2個一組のボールベアリングからなるコンロッド軸受16を介して回転自在に外嵌されている。出力軸3には、一方向クラッチ17を介して、揺動リンク18がコネクティングロッド15に対応させて6個設けられている。本実施形態においては、揺動リンク18が一方向クラッチ17の外輪としての機能を兼ね備えている。
一方向クラッチ17は、揺動リンク18と出力軸3との間に設けられ、揺動リンク18が出力軸3に対して一方側に相対的に回転しようとするときに揺動リンク18を出力軸3に固定し(固定状態)、他方側に相対的に回転しようとするときに出力軸3に対して揺動リンク18を空転させる(空転状態)。
揺動リンク18は、環状に形成されており、その下方には、コネクティングロッド15の出力側環状部15bに連結される揺動端部18aが設けられている。揺動端部18aには、出力側環状部15bを軸方向で挟み込むように突出した一対の突片18bが設けられている。一対の突片18bには、出力側環状部15bの内径に対応する差込孔18cが穿設されている。差込孔18c及び出力側環状部15bには、揺動軸としての連結ピン19が挿入されている。これにより、コネクティングロッド15と揺動リンク18とが連結される。
なお、本実施形態の説明において、変速比は、入力軸の回転速度/出力軸の回転速度と定義する。
図3は、回転半径調節機構4の偏心量R1(回転半径)を変化させた状態のピニオンシャフト72と回転ディスク6との位置関係を示す。図3Aは偏心量R1を「最大」とした状態を示しており、回転中心軸線P1と、カムディスク5の中心点P2と、回転ディスク6の中心点P3とが一直線に並ぶように、ピニオンシャフト72と回転ディスク6とが位置する。このときの変速比iは最小となる。
図3Bは偏心量R1を図3Aよりも小さい「中」とした状態を示しており、図3Cは偏心量R1を図3Bよりも更に小さい「小」とした状態を示している。変速比iは、図3Bでは図3Aの変速比iよりも大きい「中」となり、図3Cでは図3Bの変速比iよりも大きい「大」となる。図3Dは偏心量R1を「0」とした状態を示しており、回転中心軸線P1と、回転ディスク6の中心点P3とが同心に位置する。このときの変速比iは無限大(∞)となる。本実施形態の動力伝達装置1Aは、回転半径調節機構4で偏心量R1を変えることにより、回転半径調節機構4の回転半径を調節自在としている。
図4は、回転半径調節機構4の偏心量R1を変化させた場合の揺動リンク18の揺動範囲の変化を示している。図4Aは、偏心量R1が最大のときの揺動リンク18の揺動範囲を示し、図4Bは、偏心量R1が中のときの揺動リンク18の揺動範囲を示し、図4Cは、偏心量R1が小のときの揺動リンク18の揺動範囲を示している。図4から偏心量R1が小さくなるにつれて揺動範囲が狭くなることが分かる。そして、偏心量R1が「0」になると、揺動リンク18は揺動しなくなる。
本実施形態においては、回転半径調節機構4と、コネクティングロッド15と、揺動リンク18とで、てこクランク機構20(四節リンク機構)が構成される。そして、てこクランク機構20によって、入力軸2の回転運動が揺動リンク18の揺動運動に変換される。本実施形態の動力伝達装置1Aは合計6個のてこクランク機構20を備えている。偏心量R1が「0」でないときに、入力軸2を回転させると共に、ピニオンシャフト72を入力軸2と同一速度で回転させると、各コネクティングロッド15が60度ずつ位相を変えながら、偏心量R1に基づき入力軸2と出力軸3との間で揺動端部18aを出力軸3側に押したり、入力軸2側に引いたりを交互に繰り返して、揺動リンク18が揺動する。
コネクティングロッド15の出力側環状部15bは、出力軸3に一方向クラッチ17を介して設けられた揺動リンク18に連結されているため、揺動リンク18がコネクティングロッド15によって押し引きされて揺動すると、揺動リンク18が押し方向側又は引張り方向側の何れか一方に揺動リンク18が回転するときだけ、出力軸3が回転し、揺動リンク18が他方に回転するときには、出力軸3に揺動リンク18の揺動運動の力が伝達されず、揺動リンク18が空回りする。各回転半径調節機構4は、60度毎に位相を変えて配置されているため、出力軸3は各回転半径調節機構4で順に回転させられる。
図5は、無段変速機1の回転半径調節機構4の回転角度θを横軸、角速度ωを縦軸として、回転半径調節機構4の偏心量R1の変化に伴う揺動リンク18の角速度ω_iの変化の関係を示す。図5から明らかなように、偏心量R1が大きい(変速比iが小さい)ほど揺動リンク18の角速度ω_iが大きくなることが分かる。
図6は、60度ずつ位相を異ならせた6つの回転半径調節機構4を回転させたとき(入力軸2とピニオンシャフト7とを同一速度で回転させたとき)における、回転半径調節機構4の回転角度θ1に対する、各揺動リンク18の角速度ω_iを示している。図6から、6つのてこクランク機構20により出力軸3がスムーズに回転されることが分かる。
また、図7に示されるように、無段変速機1は、制御装置40(本発明の「制御部」に相当する)を備える。制御装置40は、CPU及びメモリ等により構成された電子ユニットである。
制御装置40は、メモリに保持された走行用駆動源50及び無段変速機1の制御用プログラムをCPUで実行することによって、走行用駆動源50及び調節用駆動源14の作動を制御する。また、制御装置40は、調節用駆動源14の作動を制御することで、回転半径調節機構4の偏心量R1を制御する機能を実現している。
また、無段変速機1が搭載された車両Cは、車両Cを制動させる制動装置61と、無段変速機1から出力される駆動力(以下、「車両駆動力」という)を車両Cの運転者が調節するためのアクセルペダル62と、車両Cの走行速度(以下、「車速」という)Vに応じた信号である車速信号を生成する車速信号生成部41と、車両Cが走行している路面の水平面に対する傾きの度合(勾配)を検知する勾配検知部42とを備える。
制御装置40には、制動装置61の作動状態を表す信号、アクセルペダル62の作動状態を表す信号、車速信号生成部41が生成した車速信号、及び勾配検知部42が検知した勾配を表す信号が入力される。
制御装置40は、制動装置61の作動状態を表す信号に基づいて制動装置61が作動しているか否かを検知する。制御装置40は、アクセルペダル62の作動状態を表す信号に基づいてアクセル開度APを検知する。制御装置40は、勾配検知部42の出力信号に基づいて、車両Cが走行している路面の水平面に対する傾きの度合(勾配)を検知する。
車速信号生成部41は、車両Cの従動輪の回転軸(図示省略)等に設けられた回転速度センサ(図示省略)の出力等に基づいて、車速Vが大きくなるに従って、所定時間ΔT(図14の車速信号の箇所参照)内に含まれるパルスが多くなるような信号として生成する。そして、制御装置40は、所定時間ΔT内に含まれるパルスの個数に応じて車速Vを検知する。また、制御装置40は、入力された車速信号に、所定時間ΔT内に含まれるパルスが所定数未満の場合においては、測定精度が充分でないこと又は測定誤差の可能性が有ることを考慮して、「車速Vが0である」と判断する。
(2.動力伝達装置の制御の概要)
(2−1.車速、偏心量、及び車両駆動力の関係)
次に、図8を参照して、車速V(横軸)と偏心量R1(縦軸)に応じて決定される等駆動力線について説明する。ここで、等駆動力線とは、走行用駆動源50の出力駆動力を一定とした場合における、所定の車速Vと所定の偏心量R1との組み合わせによって規定される車両駆動力Toが、同一となる点(図8における横方向と縦方向との交点)を結んで得られる線である。図8には、車両駆動力Toがτ1,τ2,τ3の各々のときに対する各等駆動力線Lτ1,Lτ2,Lτ3が例示されている。ここで、これらの車両駆動力Toの大きさの関係は、「τ1<τ2<τ3」である。図8に例示されるように、車両駆動力Toが大きくなるほど、等駆動力線が図8の左上側に位置することになる。
ここで、各等駆動力線Lτ1,Lτ2,Lτ3において、例えば、車速Vが所定車速Vαより低い場合には、車速Vが変化しても偏心量R1は殆ど変化しない。一方、車速Vが一定の場合においては、偏心量R1の変化に伴って、車両駆動力Toが変化する。
(2−2.エンジン回転速度、偏心量、車両駆動力、及び必要入力トルクの関係)
図9A,図9C,図9E,図9Gは、走行用駆動源50の出力回転速度(以下、「エンジン回転速度」という)Ne(横軸)と、車両駆動力To(縦軸)と、偏心量R1との関係
を表す関係図である。図9A,図9C,図9E,図9Gは、図8に示された特性を、横軸及び縦軸を変更して各車速毎に表した図である。
また、図9B,図9D,図9F,図9Hが、エンジン回転速度Ne(横軸)と、必要入力トルクTi(縦軸)と、偏心量R1との関係を表す関係図である。
ここで、必要入力トルクTiとは、車両駆動力Toが、その目標値(以下、「目標車両駆動力」という。本発明の「目標駆動力」に相当する)To_cmdとなるために、入力軸2に入力されるべき最低限の駆動力である。必要入力トルクTiが小さいと、走行用駆動源50の出力駆動力を低くできるので、走行用駆動源50の燃料消費量を低減できる。
また、図9A及び図9Bは車速Vが最低速V1のときの各関係図であり、図9C及び図9Dは車速Vが低速V2のときの各関係図であり、図9E及び図9Fは車速Vが中速V3のときの各関係図であり、図9G及び図9Hは車速Vが高速V4のときの各関係図である。ここで、「V1<V2<Vα<V3<V4」である。
また、図9A〜図9Hには、偏心量R1として、r1〜r7までの7つの偏心量を例示している。ここで、偏心量の大きさとしては、r1〜r7をrx(x=1〜7)と表したときにおいて、「x」に入る数字が大きい方ほど偏心量が大きいことを示す(例えば、「r3<r4」である)。また、図示の関係上、これらの7つの偏心量のうち、図9A〜図9Dにおいてはr1〜r4までの4つのみを図示しており、図9E,図9Fにおいてはr2〜r5までの4つのみを図示しており、図9G,図9Hにおいてはr3〜r7までの5つのみを図示している。
車速Vが所定車速Vαよりも低いV1,V2のとき(図9A,図9C参照)においては、車速Vが所定車速Vαよりも高いV3,V4のとき(図9E,図9G参照)に比べて、エンジン回転速度Neが変化したときの車両駆動力Toの増加が小さい。特に、車速がV1のときにおいては、エンジン回転速度Neが変化した場合であっても車両駆動力Toが殆ど変化しない。一方、車速Vが所定車速Vαよりも低い(V1,V2)か高い(V3,V4)かに拘らず、偏心量R1が変化したときには、車両駆動力Toが大きく変化する。
このように、車両駆動力Toが目標車両駆動力To_cmdとなるように制御する場合において、所定車速Vαよりも低いとき(V1, V2)には、エンジン回転速度Neを変化させるのではなく偏心量R1を変化させることで、目標車両駆動力To_cmdとなるように車両駆動力Toを調節することができる。一方、車両駆動力Toが目標車両駆動力To_cmdとなるように制御する場合において、所定車速Vαよりも高いとき(V3, V4)には、エンジン回転速度Ne及び偏心量R1の少なくともいずれかを変化させることで、目標車両駆動力To_cmdとなるように車両駆動力Toを調節することができる。
また、車速Vが所定車速Vαよりも低いV1,V2のとき(図9B,図9D参照)においては、車速Vが所定車速Vαよりも高いV3,V4のとき(図9F,図9H参照)に比べて、偏心量R1を変化させたときの必要入力トルクTiの増加量が小さい。従って、車両駆動力Toを目標車両駆動力To_cmdにするために偏心量R1を変化させる場合において、車速Vが所定車速Vαよりも低いとき(V1,V2)には、車速Vが所定車速Vαよりも高いとき(V3,V4)に比べて、走行用駆動源50の出力駆動力を低くでき、ひいては、走行用駆動源50の燃料消費量を低減できる。
(2−3.低速時制御)
以上の特性より、車両駆動力Toを目標車両駆動力To_cmdにするときにおいて、車速Vが所定車速Vα以上の場合には、車速V及びアクセル開度APに応じてエンジン回転速度Ne及び偏心量R1を制御し、車速Vが所定車速Vαよりも小さい場合には、エンジン回転速度Neを所定の低速時回転速度Ne0(例えば、アイドリング回転速度)に固定して、偏心量R1を目標車両駆動力To_cmdに応じて制御することが考えられる。
ここで、制御装置40は、前述したように、入力された車速信号に、所定時間内に含まれるパルスが所定数未満の場合においては、測定精度が充分でないこと又は測定誤差の可能性が有ることを考慮して、「車速Vが0である」と判断する。
本実施形態では、所定車速Vαよりも多少高い車速(以下、「閾値車速」という)Vthにおいて、所定時間内に含まれるパルスが所定数となっている。すなわち、車速Vが閾値車速Vth未満の場合には、制御装置40は、車速Vが0であると検知している。
以下、実際の車速Vを実車速V_actといい、制御装置40が検知している車速Vを検知車速V_detということがある(実車速V_actが0よりも大きく閾値車速Vth未満の場合には、検知車速V_detが0である)。
そこで、制御装置40は、検知車速V_detが0であるが(すなわち、車速Vが0であると判断されるが)、車両Cの所定の車両情報に基づき車両Cが走行していると判断される状態である低速走行状態の場合には、制御装置40が受信するアクセルペダル62の操作量の情報(すなわち、アクセル開度AP)に基づき目標車両駆動力To_cmdを決定する。ここで、「車両Cの所定の車両情報」とは、例えば、「制動装置61の作動情報」及び「アクセル開度AP」等である。本実施形態では、「制動装置61が作動しておらず」且つ「アクセル開度APが0よりも大きい」状態が、「車両Cが走行していると判断される状態」と規定されている。制御装置40は、これらの車両情報を用いて、車両Cが走行しているか否かを適切に判定することができる。
そして、制御装置40は、低速走行状態の場合には、決定された目標車両駆動力To_cmdが出力軸3から出力されるように、偏心量R1を制御する低速時制御を実行する。
これにより、車速Vが低く車速Vを適切に検知できないときであっても、車両Cの駆動力を適切に制御できる。
より詳細には、制御装置40は、低速時制御を実行するときに、まず、アクセル開度APに応じて偏心量R1の初期の目標値(以下、「初期目標偏心量」という)R1_0_cmdを決定する。このとき、制御装置40は、アクセル開度APが大きいほど偏心量R1が大きくなるように決定する。アクセル開度APと偏心量R1との関係は、予め実験等によって得られたテーブル又はマップ等によって規定される。
そして、制御装置40は、偏心量R1が初期目標偏心量R1_0_cmdとなるように、回転半径調節機構4を制御する。制御装置40は、偏心量R1が初期目標偏心量R1_0_cmdとなった後は、アクセル開度APに応じて決定される偏心量増加率R1_rate(単位時間あたりの偏心量の増加量)に従って偏心量R1を増加させて、車両駆動力Toを増加させる。
このとき、制御装置40は、アクセル開度APが大きいほど偏心量増加率R1_rateが大きくなるように決定する。アクセル開度APと偏心量増加率R1_rateとの関係は、予め実験等によって得られたテーブル又はマップ等によって規定される。
以上のように、制御装置40は、車両駆動力Toを目標車両駆動力To_cmdにするときにおいて、車速Vが閾値車速Vth以上の場合には、車速V及びアクセル開度APに応じてエンジン回転速度Ne(図10AのVth以上の場合を参照)及び偏心量R1(図10BのVth以上の場合を参照)を制御し、車速Vが閾値車速Vthよりも小さい場合には、エンジン回転速度Neを所定の低速時回転速度Ne0(例えば、アイドリング回転速度)に固定して(図10AのVth未満の場合を参照)、偏心量R1を目標車両駆動力To_cmdに応じて制御する(図10BのVth未満の場合を参照)。
ここで、図11は、偏心量R1(縦軸)の時間(横軸)変化を示す図である。図11では、アクセル開度APとしてAP1〜AP3の3つを例示している。これらのアクセル開度APの大きさの関係は、「AP1<AP2<AP3」である。
制御装置40は、アクセル開度APがAP1のときには、偏心量R1をR1_0_cmd_1(初期目標偏心量R1_0_cmd)にして(時点t0)、その後、AP1に応じた偏心量増加率R1_rateで偏心量R1を増加させる。また、制御装置40は、アクセル開度APがAP2のときには、偏心量R1をR1_0_cmd_2(初期目標偏心量R1_0_cmd)にして(時点t0)、その後、AP2に応じた偏心量増加率R1_rateで偏心量R1を増加させる。また、制御装置40は、アクセル開度APがAP3のときには、偏心量R1をR1_0_cmd_3(初期目標偏心量R1_0_cmd)にして(時点t0)、その後、AP3に応じた偏心量増加率R1_rateで偏心量R1を増加させる。ここで、これらの偏心量増加率R1_rateの大きさの関係は、「r1_0_cmd_1<r1_0_cmd_2<r1_0_cmd_3」である。
(2−3−1.勾配に応じた偏心量増加率の設定)
但し、車両Cが上り坂を走行しているときにおいては、平坦路を走行しているときに比べて大きな車両駆動力Toが必要となる。更に、車両Cが走行する上り坂の勾配が大きいときには、大きな車両駆動力Toが必要となる。
大きな車両駆動力Toが出力されるためには、走行用駆動源50からも大きな駆動力が出力される必要がある。しかしながら、出力軸3の回転が停止した状態か又は出力軸3の回転速度が非常に低い状態であるときに(例えば、車両Cが上り坂で、発進するとき又は発進直後等の低い車速V(例えば、閾値車速Vth以下)のときにおいて、このような状態になりやすい)、走行用駆動源50から大きな駆動力が出力されると、揺動リンク18が大きな駆動力で揺動しようとするにも拘らず、出力軸3が充分に回転せず、一方向クラッチ17に大きな負荷が作用する可能性がある。
このとき、偏心量R1が相対的に小さいと、相対的に大きい場合に比べて、揺動リンク18の回転速度が小さくなり、揺動リンク18と出力軸3との間の相対的な回転速度差が低減する。これにより、一方向クラッチ17に作用する負荷を軽減できる。
そこで、制御装置40は、一方向クラッチ17に大きな負荷が作用し過ぎる可能性があるときには、一方向クラッチ17に作用する負荷を軽減するために、偏心量増加率R1_rateを減少させている。
詳細には、制御装置40は、アクセル開度APと勾配検知部42によって検知された勾配(すなわち、車両Cが走行する上り坂の勾配)とに応じて偏心量増加率R1_rateを決定している。
ここで、図12は、AP1〜AP3の3つのアクセル開度APに対して、勾配(横軸)に対する偏心量増加率R1_rate(縦軸)の変化について例示した図である。
アクセル開度APがAP1又はAP2のときにおいては、走行用駆動源50から出力される駆動力が小さいので、偏心量R1を増加させたとしても一方向クラッチ17に作用する負荷が比較的小さい状態を維持できる。従って、上り坂を走行するために、大きな車両駆動力Toを速く出力できるように、勾配が大きくなるほど偏心量増加率R1_rateを増加させている。
なお、アクセル開度APがAP2のときの方がAP1のときに比べて走行用駆動源50から出力される駆動力が大きいので、一方向クラッチ17に作用する負荷が比較的小さい状態を維持するために、勾配に対する偏心量増加率R1_rateの変化量を小さく設定している。これにより、アクセル開度AP(ひいては、走行用駆動源50から出力される駆動力)に対して偏心量R1が増加し過ぎることを防止し、車両Cが上り坂を走行しているときに、一方向クラッチ17に大きな負荷が作用し過ぎることを防止できる。
一方、アクセル開度APがAP3のときにおいては、AP1又はAP2のときに比べて走行用駆動源50から出力される駆動力が大きい。この場合に、偏心量R1を大きくし過ぎると、一方向クラッチ17に大きな負荷が作用し過ぎる可能性がある。従って、制御装置40は、アクセル開度APがAP3のときであり、上り坂の勾配が大きいときには、勾配が小さいときに比べて偏心量増加率R1_rateを減少させている。これにより、車両Cが上り坂を走行しているときに、一方向クラッチ17に大きな負荷が作用し過ぎて、一方向クラッチ17の耐久性低下を防止できる。
なお、図12に示された偏心量増加率R1_rateの設定方法は、別の見方をすると、アクセル開度APがAP2とAP3との間にある所定の値を閾値に規定したとき、アクセル開度APが閾値(本発明の「所定量」に相当する)より大きく、勾配検知部42によって検知された勾配(本発明の「所定の車両情報」に相当する)に基づき車両Cが上り坂を走行していると判断される場合において、上り坂の勾配が大きいほど偏心量増加率R1_rateを減少させていることでもある。このときの閾値は、一方向クラッチ17の耐久性に基づいて設定することができる。
アクセル開度APが、このように設定された閾値を超えているときに、偏心量増加率R1_rateを減少させることで、車両Cが上り坂を走行しているときに、一方向クラッチ17に大きな負荷が作用し過ぎることを防止できる。
(2−4.通常時制御)
制御装置40は、低速時制御を実行中に、検知車速V_detが閾値車速Vth以上(この場合には、実車速V_actも閾値車速Vth以上である)となる(制御装置40が車速Vが0を超えていると検知する)通常走行状態となった場合には、低速時制御を終了して、通常時制御を実行する。制御装置40は、通常時制御を実行するときには、例えば、車速Vとアクセル開度APとに応じて目標車両駆動力To_cmdを決定する。そして、制御装置40は、出力軸3から出力される駆動力が該決定した目標車両駆動力To_cmdとなるように、偏心量R1及びエンジン回転速度Neの少なくともいずれかを制御する。
(3.動力伝達装置の制御の詳細)
図13を参照して、制御装置40が実行する制御処理の詳細について説明する。図13は、制御装置40が実行する制御処理を示すフローチャートである。制御装置40は、図13に示されるフローチャートを所定周期毎に実行する。
制御装置40は、まずステップST1で、検知車速V_detが0か否かを判定する。
制御装置40は、ステップST1で検知車速V_detが0ではないと判定した場合(NOの場合)には、実車速V_actが閾値車速Vth以上であり、車速Vを充分に検知できている状態であるので、ステップST2に進む。制御装置40は、ステップST2で、上述した通常時制御を実行し、本フローチャートの処理を終了する。
制御装置40は、ステップST1で検知車速V_detが0であると判定した場合(YESの場合)には、ステップST3に進み、制動装置61がオフ(すなわち、作動していない状態(制動装置61を作動させる所謂ブレーキペダルが踏まれていない状態))か否かを判定する。
制御装置40は、ステップST3で制動装置61が作動していると判定した場合(NOの場合)には、ステップST4に進み、停車時制御を実行する。ここで、停車時制御とは、例えば、偏心量R1を0(ギヤニュートラル)に維持する制御である。制御装置40は、ステップST4の処理が終了すると、本フローチャートの処理を終了する。
制御装置40は、ステップST3で、制動装置61がオフであると判定した場合(YESの場合)には、ステップST5に進み、アクセル開度APが0よりも大きいか否かを判定する。制御装置40は、ステップST5で、アクセル開度APが0よりも大きくないと判定した場合(NOの場合)には、上記ステップST4に進む。
制御装置40は、ステップST5で、アクセル開度APが0よりも大きいと判定した場合(YESの場合)には、低速時制御を実行する(ステップST6〜ST9)。制御装置40は、上述したように、アクセル開度APに応じて目標車両駆動力To_cmdを決定し(ステップST6)、アクセル開度APに応じて初期目標偏心量R1_0_cmdを決定し(ステップST7)、アクセル開度AP及び勾配に応じて偏心量増加率R1_rateを決定する(ステップST8)。そして、制御装置40は、ステップST6〜ST8で決定された各パラメータに応じて偏心量R1を制御する(ステップST9)。
このように、低速時制御を実行することで、車速Vが低く車速Vを適切に検知できないときであっても、車両Cの駆動力を適切に制御できる。また、アクセル開度APに応じた車両駆動力Toを無段変速機1から出力するために、正確な車速Vを検出できない低速走行状態の場合であっても、運転者に与える違和感を低減させることができる。更に、車両Cが上り坂を走行する場合において、一方向クラッチ17に作用する負荷を軽減できる。
制御装置40は、ステップST9の処理が終了すると本フローチャートの処理を終了する。
ここで、制御装置40は、上記のようにステップST3及びST5の判定を行うことで、所定の車両情報を用いて、車両Cが走行しているか否かを適切に判定することができる。
次に、図14を参照して、以上のような制御装置40が図13に示された制御処理を実行することによる、各車両情報の時間変化について説明する。
時点t1で制動装置61が作動している状態(オン)から作動していない状態(オフ)に変化した後、時点t2でアクセル開度APが0(オフ)から0ではない状態(オン)に変化している。なお、図14では、便宜上アクセル開度APを「0(オフ)」か「0よりも大きい(オン)」かの2値で表している。
ここで、時点t2からは、制動装置61がオフでアクセル開度APが0ではなく、且つ車速信号に含まれたパルスが所定時間Δt内に所定数未満の低速走行状態である。また、時点t2よりも前においては、停車時制御が実行される停車状態である。
時点t2でアクセル開度APがオンになったことにより、制御装置40は、該アクセル開度APに応じてエンジン回転速度Neを低速時回転速度Ne0に固定すると共に、偏心量R1をアクセル開度APに応じて決定された初期目標偏心量R1_0_cmdまで増加させる。これにより、車両駆動力Toが目標車両駆動力To_cmdになるように増加する。
車両駆動力Toが増加することで、時点t2より後の時点t3において車両Cの実車速V_actが増加する。しかしながら、時点t3〜時点t4までの期間は、実車速V_actは非常に低速であり、車速信号に含まれるパルスの所定時間ΔTにおける個数が所定値よりも少なく、検
知車速V_detは0のままである。
時点t3以降、車両Cが加速することで時点t4になると、車速信号に含まれるパルスの所定時間ΔTにおける個数が所定値以上となり、検知車速V_detは0ではなくなる。なお、図14の図示例では、個数の所定値を「4」として例示しているが、この値は、これに限らず、適宜設定される。
このため、制御装置40は、時点t4において、低速時制御を停止して通常時制御の実行を開始する。
(4.変形例)
本実施形態では、車速Vが0であるか否かの判断を、制御装置40が、車速信号に所定時間ΔT内に含まれるパルスの個数を用いて判断しているが、これに限らず、他の車速を表す信号に基づいて、該信号に応じて適宜判断すればよい。
また、本実施形態では、所定の車両情報として、制動装置61の作動情報及びアクセル開度APの情報を用いている。しかしながら、所定の車両情報としては、これに限らず、車速情報から判断すると車速Vが0であると判断されるが、車両Cが走行していると判断することが可能な情報であれば、他の情報を用いてもよい。
また、本実施形態では、偏心量増加率R1_rateを、アクセル開度APと勾配とに応じて決定しているが、これに限らず、例えば、勾配に拘らずにアクセル開度APに応じて偏心量増加率R1_rateを決定してもよい。
また、本実施形態においては、一方向回転阻止機構として、一方向クラッチ17を用いているが、本発明の一方向回転阻止機構は、これに限らず、揺動リンク18から出力軸3にトルクを伝達可能な揺動リンク18の出力軸3に対する回転方向を切換自在に構成される二方向クラッチ(ツーウェイクラッチ)で構成してもよい。
また、本実施形態においては、回転半径調節機構4として、入力軸2と一体に回転するカムディスク5と、回転ディスク6とを備えるものを説明したが、本発明の回転半径調節機構4は、これに限らない。例えば、回転半径調節機構を、中心から偏心して穿設された貫通孔を有する円盤状の回転ディスクと、貫通孔の内周面に設けられたリングギアと、入力軸に固定されリングギアに噛合する第1ピニオンと、調節用駆動源からの駆動力が伝達されるキャリアと、キャリアで自転及び公転自在に夫々軸支されると共にリングギアに夫々噛合する2つの第2ピニオンとで構成してもよい。
1A…動力伝達装置、C…車両、2…入力軸(入力部)、3…出力軸、4…回転半径調節機構、14…調節用駆動源、15…コネクティングロッド、17…一方向クラッチ(一方向回転阻止機構)、18…揺動リンク、20…てこクランク機構、40…制御装置(制御部)、50…走行用駆動源、61…制動装置、62…アクセルペダル、i…変速比、Ne…エンジン回転速度(走行用駆動源の出力回転速度)、V…車速(車両の走行速度)、
AP…アクセル開度(アクセルペダルの操作量)、To_cmd…目標車両駆動力(目標駆動力)、R1_0_cmd…初期目標偏心量(初期目標回転半径)、R1_rate…偏心量増加率(回転半径
増加率)、ΔT…所定時間。

Claims (5)

  1. 車両の走行用駆動源の駆動力が伝達される入力部と、
    前記入力部の回転中心軸線と平行に配置された出力軸と、
    前記出力軸に軸支される揺動リンクを有し、前記入力部の回転を前記揺動リンクの揺動に変換するてこクランク機構と、
    前記揺動リンクが前記出力軸に対して一方側に相対回転しようとするときに前記出力軸に対して前記揺動リンクが空転する空転状態、及び前記揺動リンクが前記出力軸に対して他方側に相対回転しようとするときに前記出力軸に前記揺動リンクが固定される固定状態を切替可能な一方向回転阻止機構と、
    前記車両の走行速度の情報である車速情報に基づいて、前記出力軸から出力される目標駆動力を決定する制御部とを備え、
    前記てこクランク機構は、調節用駆動源、前記回転中心軸線を中心として回転するときの回転半径を調節自在な回転半径調節機構、及び該回転半径調節機構と前記揺動リンクとを連結するコネクティングロッドを有し、
    前記制御部で前記調節用駆動源の駆動力を制御して前記回転半径調節機構の前記回転半径を調節することにより、変速比を変更可能な動力伝達装置であって、
    前記制御部は、前記車速情報から判断すると前記車両の走行速度が0であると判断されるが、前記車両の所定の車両情報に基づき前記車両が走行していると判断される状態である低速走行状態の場合には、前記制御部が受信するアクセルペダルの操作量情報に基づき前記目標駆動力を決定し、該決定された目標駆動力が前記出力軸から出力されるように、前記回転半径調節機構の前記回転半径を制御する低速時制御を実行し、
    前記制御部は、前記低速時制御を実行中に、前記車速情報から前記車両の走行速度が0を超える通常走行状態となった場合には、前記低速時制御を終了することを特徴とする動力伝達装置。
  2. 請求項1に記載の動力伝達装置において、
    前記車速情報を表す信号は、前記車両の走行速度が大きくなるに従って、所定時間内に含まれるパルスが多くなる信号であり、
    前記車速情報から判断すると前記車両の走行速度が0であると判断される場合は、前記車速情報を表す信号が、所定時間内に含まれるパルスが所定数未満の信号である場合であることを特徴とする動力伝達装置。
  3. 請求項1に記載の動力伝達装置において、
    前記制御部は、前記車両のアクセルペダルの操作量に応じて、前記回転半径の最初の目標値である初期目標回転半径、及び前記回転半径を増加させる割合である回転半径増加率を決定し、前記低速時制御で、まず、前記回転半径が前記初期目標回転半径となるように前記回転半径を増加させ、前記回転半径が前記初期目標回転半径になった後に、前記回転半径増加率に従って、前記回転半径を増加させることを特徴とする動力伝達装置。
  4. 請求項3に記載の動力伝達装置において、
    前記制御部は、前記アクセルペダルの操作量が所定量より大きく、前記車両の所定の車両情報に基づき前記車両が上り坂を走行していると判断される場合には、該上り坂の勾配が大きいほど前記回転半径増加率を減少させることを特徴とする動力伝達装置。
  5. 請求項1に記載の動力伝達装置において、
    前記車両の所定の車両情報に基づき前記車両が走行していると判断される状態は、前記車両の制動装置が操作されておらず、前記車両のアクセルペダルが操作されている状態であることを特徴とする動力伝達装置。
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