JP6014345B2 - 錠受金具 - Google Patents

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Description

本発明は、扉用錠受金具に関する。さらに詳しくは、地震発生時においてドア枠が変形した状態においてもドアの開閉機能を維持することができるドアの錠受金具に関する。
マンション等の集合住宅や戸建家屋などの建築物に設けられるドアでは、ドアをスムースに開閉させるためにドアとドア枠の間に所定の隙間(以下開閉用クリアランスという)が設けられている。なお、一般的なドアでは、この開閉用クリアランスの幅が数3mm〜4mm程度のものが使用されている。
近年、日本の各地において、地震が頻発するようになってきている。地震が発生した場合、建築物は、その柱や壁などに変形をきたすおそれがある。とくに建築物の玄関部の壁が変形するような地震が発生した場合、玄関開口部に配設したドア枠に変形が生じる場合がある。このドア枠が変形する変形量が開閉用クリアランスの幅よりも大きい場合、変形したドア枠によってドアの端面が圧接されるように挟み込まれる。すると、通常の力ではかかるドアを開放することが困難となる。そうすると、屋内の人は、ドアを開放して屋外へ避難できなくなり、屋内に閉じ込められた状態となるから、建築物の倒壊や火災などの二次災害に見舞われる可能性が高くなる。
そこで、耐震用ドアでは、ドアとドア枠の間の隙間を広くしており、地震によってドア枠が変形した場合であっても、ドアをスムースに開放することができるように設計されている。
一方、玄関用のドアでは、防犯上の観点から錠前が設けられており、平常時には、この錠前によってドアは施錠されている。
錠前は、ドアを閉じた状態において、ドア側に取り付けられた錠からデッドボルトを突出させて、デッドボルトの先端部をドア枠側に取り付けられた錠受金具の開口部に挿入することによって、デッドボルトを介してドアをドア枠に固定することができる構造となっている。
しかし、ドアとドア枠の隙間が広くなりすぎると、デッドボルトと錠受金具の掛合量を十分にとるには、デッドボルトを長くしたりしなければならない。すると、通常の剛性のデッドボルトを使用した場合、撓み易くなる等の防犯上問題が生じる可能性があり、防犯性を維持するには、非常に剛性の強い素材で形成されたデッドボルトや錠受金具等を使用することが必要となる。
通常の剛性を有するデッドボルトを有する錠前を使用しても防犯性を維持でき、かつ、ある程度のドア枠の変形に対しても対応可能な耐震用のドア枠が提案されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1の錠受金具は、ドア枠に錠受金具を取り付けた状態において、カバー部材をドア枠のドア枠取付面から突出するように取り付けるので、カバー部材と錠との距離をドアとドア枠の間の隙間部分よりも短くできる。すると、通常の剛性を有するデッドボルトを使用しても、ドアに対して所定以上の面外外力(奥行き方向に直交する水平方向の力)に対抗できるので、防犯性を維持することができる。しかも、地震によってドア枠が変形した場合、カバー部材が所定以上の面内外力(錠受金具の奥行き方向に加わる力)によって押圧されると、カバー部材が変形して、ドアとドア枠との間に隙間が確保される。また、カバー部材が変形することによって錠受金具の損傷も防止できる。すると、係合状態のカンヌキ(デッドボルト)を錠受金具から確実に離脱(解錠)させることが可能となるし、解錠すればドアを開けることができる。
しかしながら、特許文献1の錠受金具では、使用するデッドボルトは通常の(鎌のない)デッドボルトを想定しており、鎌形デッドボルトは想定されていない。具体的には、鎌形デッドボルトを使用する場合には、特許文献1の錠受金具の開口面には鎌形デッドボルトの鎌片を引っ掛けるための引っ掛かり部を必要であるが、特許文献1の錠受金具には、引っ掛かり部が設けられていないので、鎌形デッドボルトには対応できない。
一方、特許文献2には、耐震性を有しつつ鎌形デッドボルトも対応可能な錠受金具が開示されており、奥行き方向の押圧だけでなく鉛直方向の移動にも対応可能な構成が開示されている。
また、奥行き方向の押圧だけでなく鉛直方向の移動にも対応可能な錠受金具は特許文献3にも開示されている。
特許文献2の錠受金具は、受箱と、この受箱内に上下方向及び前後方向に移動可能に設けられる可動枠体と、を備えており、この可動枠体を受箱の前面に被せるカバープレートの表面から突出させるように受箱の底部と可動枠体の側壁の後側端縁との間に板バネが設けられていている。すると、平常時では、可動枠体の前壁をカバープレートの面よりも突出させることができるので、可動枠体の正面壁と錠の正面壁の距離を短くできる。しかも、地震発生時において、奥行き方向の力で押圧されたときに板バネが変形して奥行き方向の力を十分に吸収することができる。また、可動枠体が受箱内で上下方向に移動可能であるので、ドアの鉛直方向への移動にも対応することができる。
また、特許文献3の錠受金具は、ドア枠に固定される箱状の固定部材と、固定部材内にその内面と所定の間隔をおいて保持される可動筒と、固定部材および可動筒を覆うカバーと、を備えている。そして、可動筒の上下壁と固定部材の上下内壁面の間には、3枚の板片を断面T字状に一体成形した保持ピースが設けられている。この保持ピースは、2枚の板片(T字の横バー、以下、横板という)は鉛直方向と平行となり、1枚の板片(T字の縦バー、以下縦板という)は奥行き方向と平行となるように配設される。このため、特許文献3の錠受金具では、この保持ピースによって可動筒が固定部材の内壁から離間した状態で可動筒が取り付けられるのである。そして、奥行き方向や鉛直方向に力がかかると保持ピースの各板片が変形することによって、可動筒が移動可能となる。
特開平11−62337号公報 特開2004−293100号公報 特開2006−257738号公報
しかるに、特許文献2の錠受金具では、平常時は可動枠体の前壁をカバープレートの面よりも突出させた状態で維持しなければならないので、板バネの剛性を高くする必要がある。すると、地震発生後において、可動枠体がドアによって奥行き方向に押されて後退する一方、板バネの強力な復元力によって可動枠体の正面壁はドアの側端面に向かって押圧された状態となる。かかる状態では、ドアを開けようとしても、ドアと可動枠体との間には大きな摩擦力が発生しているので、通常の力ではドアを開放することができない場合が生じる。
また、特許文献3の錠受金具では、保持ピースのうち1枚の板片が固定部材の下内壁に立設し、2枚の板片が固定部材の内底面に対して直交するように立設されている。すると、保持ピースの縦板は、可動筒に対して水平方向の力が加わったときに、可動筒の移動抵抗となる。言い換えれば、保持ピースの縦板は奥行き方向の力に対する強度部材となる。一方、保持ピースの横板は、可動筒の鉛直方向の移動が生じた場合、可動筒の移動抵抗となる。言い換えれば、保持ピースの横板は鉛直方向の力に対する強度部材となる。つまり、特許文献3の錠受金具では、固定部材の下内壁に立設した保持ピースの板片が抵抗となり、移動させることができない可能性がある。しかも、可動筒が移動できない状態でさらに力が加え続けられると、錠受金具自体が破損するおそれがある。つまり、特許文献3の錠受金具では、地震が発生した場合、ドア枠等にかかる奥行き方向や鉛直方向の力に対して可動筒をねじ込むように奥行き方向または鉛直方向に対してやや斜めに向かって後退させることしかできない。つまり、可動筒を奥行き方向または鉛直方向に沿って移動させることができない可能性がある。すると、地震によってドア枠が変形したときに、デッドボルトの先端部が可動筒等に干渉し、地震発生後の解錠が不可能となるおそれがある。とくに、鎌状デッドボルトを使用する場合には、解錠不能となるおそれがより高くなる。
本発明は上記事情に鑑み、ドアを施錠した状態で地震等によってドア枠の変形が生じた場合であってもドアを確実に開放することができる錠受金具を提供することを目的とする。
第1発明の錠受金具は、デッドボルトが挿入される挿入開口を有する錠受金具であって、一面に開口を有し内部に中空な空間を有する本体部と、該本体部内に収容された、前記挿入開口が形成された錠受面を有する可動部と、を備えており、前記可動部は、前記錠受面が前記本体部の開口から出没可能となるように設けられており、該可動部の錠受面を前記本体部の開口から突出させた状態で保持する位置決め機構が設けられており、該位置決め機構は、前記本体部の一面と交差する該本体部の支持壁と前記可動部との間に設けられ、その基端が該可動部に連結された位置決め部材と、該位置決め部材の先端部を保持する保持手段と、を備えており、前記位置決め部材は、前記可動部の出没方向における前記可動部に対する該位置決め部材の基端の相対的な移動が固定されるように、その基端が前記可動部に連結されており、前記保持手段は、前記可動部の出没方向における前記本体部に対する前記位置決め部材の先端部の相対的な移動を固定するように、前記位置決め部材の先端部を保持するものであり、前記支持壁には、前記本体部の内部と外部を連通する保持孔が形成されており、前記保持手段は、前記保持孔に前記位置決め部材の先端部を挿入することによって、該位置決め部材の先端部を保持していることを特徴とする。
第2発明の錠受金具は、第1発明において、前記支持壁と前記可動部との間には、可動スペースが設けられており、該可動スペースには、前記支持壁に対して接近離間する方向における前記可動部の移動を制限する移動固定部材が設けられていることを特徴とする。
第3発明の錠受金具は、第2発明において、前記移動固定部材は、断面視略コ字状に形成された部材であって、前記支持壁の内面側に配設される本体部側壁と、該本体部側壁と互いに略平行であって、前記支持壁の内面に対向する前記可動部の対向面側に配設される可動部側壁と、前記本体部側壁の一端と前記可動部側壁の一端とを連結する連結壁と、から形成されており、該連結壁は、前記本体部側壁および前記可動部側壁に対して傾斜するように形成されていることを特徴とする。
第4発明の錠受金具は、第3発明において、前記位置決め部材が、前記可動部の対向面から前記錠受面の面方向に沿って前記本体部の支持壁に向かって延びた板状の部材であって、前記支持壁には、前記本体部の内部と外部を連通する保持孔が形成されており、前記保持手段は、前記保持孔に前記位置決め部材の先端部を挿入することによって、該位置決め部材の先端部を保持しており、前記移動固定部材の本体部側壁には、その先端に板状の舌状部が設けられており、該舌状部は、その先端部が、前記保持孔に挿入された状態における前記位置決め部材の先端部の前記錠受面に対向する面と、前記保持孔の内端面との間に挿入されていることを特徴とする。
第1発明によれば、本体部の支持壁に形成した保持孔に位置決め部材の先端部を挿入するだけで、位置決め機構によって、可動部の錠受面を本体部の開口から所定の量だけ突出させた状態で可動部を本体部に保持させておくことができる。しかも、位置決め機構の位置決め部材は、その基端が可動部に連結しており、先端部が本体部に設けられた位置決め機構の保持手段によって保持されているので、可動部の錠受面を所定以上の力で出没方向に向かって押圧(つまり、奥行き方向の押圧)すれば、位置決め部材を変形させながら可動部を没方向に向かって移動させることができる。つまり、平常時では、可動部の錠受面を本体部の開口から突出させた状態を維持することができ、地震などによって可動部の錠受面が所定以上の力で押圧されれば可動部を没方向に向かって後退させることができる。すると、ドアを施錠した状態で地震が発生した場合であって、ドア枠などが変形し可動部の錠受面にドアの側端面が接するような状態となっても、ドアを開放することができる。つまり、ドア枠などが変形するような地震であっても、建築物の屋内にいる人はデッドボルトを可動部からスムースに脱離させることができるので、地震によって解錠できなくて屋内に人が閉じ込められるといった状況を回避することができる。しかも、支持壁に形成する保持孔の位置を調整するだけで、本体部に対する可動部の位置、つまり、本体部の開口から突出する可動部の突出量を調整することができる。また、保持孔に位置決め部材の先端部を挿入しているので、位置決め部材の大きさや形状を調整すれば(例えば、切り込みや貫通孔を有する形状にするなどすれば)、出没方向(つまり、奥行き方向)へ向かって加えられた力に対する強度を調整できるので、どの程度の力が加わったときに可動部を移動させるかを容易に調整することができる。
第2発明によれば、移動固定部材が可動スペース内に設けられているので、可動部の錠受面の面方向(ドア枠に取り付けた場合では鉛直方向)の移動を制限することができる。つまり、移動固定部材によって、本体部内における可動部の錠受面の面方向における可動部の位置を調整することができる。しかも、移動固定部材に対して可動部の錠受面の面方向に向かって所定以上の力が加わって移動固定部材が変形すれば、可動部を錠受面の面方向に向かって移動させることができる。すると、施錠した状態において、地震によって錠受面の面方向に向かってドアやドア枠が移動する場合であっても、錠受面の面方向に沿って可動部を移動させることができるので、デッドボルトが可動部に干渉することによって解錠ができないといった状況を回避できる。
第3発明によれば、移動固定部材の連結壁が本体側壁および可動部側壁に対して傾斜するように形成されているので、可動部が所定以上の力で錠受面の面方向(ドア枠に取り付けた場合では鉛直方向)に向かって力が加えられた場合、本体側壁と可動部側壁とが互いに接近するように変形させやすくなる。しかも、本体側壁を本体部の支持壁の内面側に、可動部側壁を可動部の対向面側に配設しているので、本体側壁は支持壁に対し、可動部側壁は可動部に対して反力を発揮させながら変形させることができる。すると、かかる移動固定部材によって可動部に加えられた錠受面の面方向の力を吸収しながら可動部に対して反力を働かせることができるので、可動部にデッドボルトの先端部を挿入した状態であってもデッドボルトつまりドアまたはドア枠の錠受面の面方向の移動に対応することができる。そうすると、(鎌形の)デッドボルトの先端部が可動部に干渉するのを確実に防止することができる。さらに、連結壁の本体側壁および可動部側壁に対する傾斜角度を調整すれば、錠受面の面方向に向かって加えられた力に対して抵抗する反力を調整できる。
第4発明によれば、移動固定部材の舌状部を、保持孔に挿入された状態における位置決め部材に対して、舌状部の位置決め部材に対向する面と位置決め部材の錠受面に対向する面によって形成されるなす角度が鋭角になるように、保持孔に挿入することができる。つまり、移動固定部材の舌状部をくさび状に保持孔に挿入することができるのである。すると、保持孔に挿入した移動固定部材の舌状部によって、位置決め部材の出没方向における移動を制限できる。言い換えれば、可動部の出没方向における位置を確実に位置決めすることができる。しかも、移動固定部材の舌状部を保持孔に押し込むように挿入すれば、移動固定部材に対して反力を発生させることができる。つまり、可動部に対して可動部が本体部の支持壁から離れる方向に向かって反力を働かせるのである。すると、錠受面の面方向に対する可動部の移動をより制限することができる。言い換えれば、可動部の錠受面の面方向における位置を確実に決めることができる。
本実施形態の錠受金具1をドア枠Fに取り付けた状態における本実施形態の錠受金具1の要部概略縦断面図である。 本実施形態の錠受金具1をドア枠Fに取り付けた状態における本実施形態の錠受金具1の概略正面図である。 本実施形態の錠受金具1をドア枠Fに取り付けた状態における本実施形態の錠受金具1の要部概略拡大縦断面図である。 本実施形態の錠受金具1をドア枠Fに取り付けた状態において、可動部5の出没方向に向かって押圧された状況(図4では右から左へ向かって押圧された状況)を本実施形態の錠受金具1の要部概略拡大縦断面図で説明した概略説明図である。 本実施形態の錠受金具1をドア枠Fに取り付けた状態において、可動部5の錠受面の面方向に向かって押圧された状況(図5では下から上へ向かって押圧された状況)を本実施形態の錠受金具1の要部概略拡大縦断面図で説明した概略説明図である。 本実施形態の錠受金具1において、本体部2の支持壁の保持孔2sを説明した概略説明図であり、(A)は概略正面図であり、(B)は保持孔2sを有する本体部2の支持壁の要部概略拡大縦断面図である。 本実施形態の錠受金具1をドア枠Fに取り付ける際の取付手順を説明した概略説明図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の錠受金具は、マンション等の集合住宅の住戸や戸建住宅などの玄関用のドア枠などに取り付けて使用される錠受金具であって、平常時には、確実にドアをドア枠に対して固定(つまりドアをロック)することができ、地震時には、確実にドアを解錠できる構造としたことに特徴を有する。
なお、以下では、本発明の錠受金具をマンション等の集合住宅や戸建住宅のなどの玄関用のドア枠に取り付けて使用する場合を説明するが、本発明の錠受金具を取付けて使用することができるのは、住宅用の玄関ドア(ドア枠を含む)に限定されず、例えば、錠前を取付けて使用する非常階段用ドアや事務所用ドアなどにも使用することができる。
また、本発明の錠受金具を取り付ける場所はドア枠に限られない。例えば、錠前を取付けて使用する親子ドアにおける一方のドアや、袖パネル付ドアにおける袖パネルなどに取り付けて使用することも可能である。
さらに、本願明細書のデッドボルトやラッチボルトは、錠前を構成するドア側に取り付けて使用される一般的な錠に設けられるデッドボルト等を使用することができ、その形状等はとくに限定されない。
つぎに、本実施形態の錠受金具1を説明する。
図7に示すように、本実施形態の錠受金具1は、本体部2と、この本体部2の内部に収容される可動部10と、この可動部10を本体部2内において所定の位置に保持する位置決め機構、具体的には、可動部10を本体部2から突出させた状態で保持しておく位置決め機構を備えている。
まず、本実施形態の錠受金具1の特徴である位置決め機構について説明する前に、本実施形態の錠受金具1の本体部2と可動部10の概略について説明する。
(本体部2の説明)
図7に示すように、本体部2は、その一面に開口を有し、かつ内部に断面矩形状に形成された中空な空間2hを有する箱状の部材である。
具体的には、本体部2は、底壁と、この底壁における一対の長手方向の端縁に沿って立設された一対の側壁(長側壁)と、底壁における長手方向の一対の端縁に立設された一対の側壁(以下、支持壁2wという)と、を備えている。つまり、底壁と一対の長側壁と、この長側壁を連結する一対の支持壁2wの端縁によって囲まれた空間に開口が形成されているのである。
なお、詳細は後述するが、この開口から錠受面11fが突出するように、可動部10の可動部本体部11は本体部2に取り付けられるのである。
(保持孔2sについて)
図7に示すように、一対の支持壁2wには、それぞれ本体部2の内部と外部を貫通する保持孔2sが形成されている。具体的には、この保持孔2sは、本体部2内に後述する可動部本体部11を配置した状態において、後述する位置決め部材12の先端部が挿通される孔である。
また、図1に示すように、保持孔2sは、後述する位置決め部材12の先端部を保持した状態において、後述する可動部本体部11の底部と本体部2の内底面が離間し、かつ、本体部2の開口から可動部本体部11の錠受面11fが突出するような位置に形成されている。
なお、図3に示すように、本体部2の一対の支持壁2wの端縁には、略板状のフランジ部材2aが設けられている。つまり、フランジ部材2aは、上記開口から外方に向かうように形成されている。このフランジ部材Faには、貫通穴が形成されている。
(カバー部材3について)
図2において、符号3はカバー部材3を示している。このカバー部材3は、本体部2内に後述する可動部10を収容した状態において、本体部2の開口外縁部を覆うように取付けられるものである。図1に示すように、カバー部材3は、その厚みや形状がドア枠Fに本実施形態の錠受金具1を取り付けた状態において、カバー部材3の表面とドア枠F表面とが略面一になるように形成されている。
図2に示すように、カバー部材3には、本体部2の開口と対応した開口3hが設けられており、この開口3hを通して、可動部10の可動部本体部11が突出するのである。
(可動部10について)
図1に示すように、可動部10は、断面視略矩形状に形成された可動部本体部11と、この可動部本体部11の側壁から外方に向かって板状の位置決め部材12と、を備えている。
具体的には、図7に示すように、可動部本体部11は、矩形状の部材であって、一の面には、ラッチボルトLBやデッドボルトDBが挿入される挿入開口11a、11bが形成されたものである。なお、この挿入開口11a、11bを有する面が錠受面11fである。
例えば、可動部本体部11は、錠受面11fの長手方向の辺に連結された一対の側壁(以下、長辺壁という)と、この一対の長辺壁間に設けられた一対の側壁(以下、短辺壁11wという)と、から形成されている。
図1に示すように、可動部本体部11は、その長手方向(図1では上下方向)の距離が本体部2の長手方向の距離よりも短くなるように形成されており、短辺壁11w間の距離が本体部2の支持壁2w間の距離よりも短くなるように形成されている。つまり、図1に示すように、本体部2内に可動部本体部11を取り付けた状態において、後述するように本体部2の支持壁2wと可動部本体部11の短辺壁11wとの間に可動スペースが設けられるように可動部本体部11は形成されているのである。
一方、可動部本体部11は、長辺壁間の距離(つまり、可動部本体部11の幅)が本体部2の長側壁間の距離(つまり、本体部2の中空な空間2hの内幅)とほぼ同じとなるように形成されている。つまり、本体部2内に可動部本体部11を取り付けた状態において、可動部本体部11の長辺壁の外壁と本体部2の長側壁の内面と間には、ほとんど隙間が生じないように取り付けられているのである。
したがって、可動部本体部11を本体部2内に取り付けた状態において、可動部本体部11は、本体部2内において、その長手方向ではその長手方向に沿って可動スペース分移動可能であり、その長手方向に略直交する方向では移動が制限されるように取り付けられている。
(位置決め部材12について)
可動部本体部11は、一対の位置決め部材12を介して、本体部2内に取り付けられている。
図1に示すように、一対の位置決め部材12は、その基端が可動部本体部11の短辺壁11wの下端部(つまり底部側)にそれぞれ連結され、かつこの基端から先端に向かって錠受面11fと略平行になるように延びた板状の部材である。
また、一対の位置決め部材12は、いずれも、可動部本体部11の錠受面11fからの距離L1(図3参照)が、保持孔2sから本体部2の開口面からの距離L2(図6参照)よりも長くなるように可動部本体部11に設けられている。
そして、一対の位置決め部材12は、その基端から先端までの距離が、一の位置決め部材12の先端部を一の保持孔2sに挿入した状態で、他の位置決め部材12の先端部を他の保持孔2sに挿入することができるように形成されている。つまり、一対の位置決め部材12は、いずれも可動スペース(つまり支持壁2w内面と短辺壁11w外面との距離)よりもやや長くなるように形成されているのである。このため、図1に示すように、両方の位置決め部材12の先端部を、同時に一対の保持孔2sに貫通させることができるのである。
なお、位置決め部材12を保持孔2sから突出させる突出量はとくに限定されない。
(移動固定部材20の説明)
図1に示すように、可動スペースには、移動固定部材20が設けられている。
図1および図7に示すように、移動固定部材20は、断面略コ字状の板状の部材であって、本体部側壁21bと、可動部側壁21cと、連結壁21aと、から形成されている(図3参照)。
本体部側壁21b壁は、本体部2の短辺壁11wの内壁側に配設される壁である。
可動部側壁21cは、本体部側壁21b壁と略平行であって、本体部2の長手方向に略直交する側壁の内壁に対向する可動部本体部11の対向面側に配設される壁である。
連結壁21aは、本体側壁21bの一端と可動部側壁21cの一端とを連結する壁である。
また、図3に示すように、移動固定部材20の本体側壁21bの他端には、板状の舌状部22が設けられている。
具体的には、図1に示すように、舌状部22は、本体側壁21bに対して略直交するよう本体側壁21b先端に連結するように形成されている。
以上のごとき構成であるので、可動部本体部11の短辺壁11wに設けられた位置決め部材12の先端部を本体部2の支持壁2wに形成された保持孔2sに挿入すれば、可動部本体部11の錠受面11fを本体部2の開口から所定の量だけ突出させた状態で可動本体部11を本体部2内に収容した状態で保持させておくことができる。
しかも、かかる状態において、可動部本体部11の底部は、本体部2内底面から離間した状態で保持させておくことができる。つまり、可動部本体部11の短辺壁11wに位置決め部材12を設ける位置と、本体部2の支持壁2wに保持孔2sを形成する位置を調整すれば、本体部2の開口から突出する可動部本体部11の錠受面11fの突出量を調整することができるのである。
なお、本明細書の可動部本体部が、特許請求の範囲の可動部に相当し、本明細書の保持孔2sを有する本体部2の支持壁2wが、特許請求の範囲の保持手段に相当し、位置決め部材12と保持孔2sを有する支持壁2wとが特許請求の範囲の位置決め機構に相当する。
(錠受金具1の組立方法の説明)
本実施形態の錠受金具1は、錠受金具1をドア枠F等に取り付ける現場で組み立てもよいが、事前に組み立ておけば、ドア枠F等への取り付けが容易になる。
以下、錠受金具1の組立方法を、図7に基づいて説明する。
まず、本体部2の開口から可動部本体部11の底部が本体部2の内底面に対向するように内部に挿入する。そして、位置決め部材12の先端部を本体部2の保持孔2sに挿入する。ついで、本体部2の内壁と可動部本体部11の外壁との両者間に形成された可動スペースに移動固定部材20を配設する。
移動固定部材20は、本体部2内壁側に配設するときに、本体部側壁21b壁の先端に設けられた板状の舌状部22を保持孔2sに挿入するように配設する。つまり、舌状部22の先端部を、保持孔2sに挿入された状態における位置決め部材12の先端部の錠受面11fに対向する面と、保持孔2sの内端面との間に挿入するのである。
このとき、図3に示すように、移動固定部材20の舌状部22を、保持孔2sに挿入された状態における位置決め部材12に対して、舌状部22の位置決め部材12に対向する面と位置決め部材12の錠受面11fに対向する面によって形成される角度が鋭角になるように、保持孔2sに挿入する。つまり、移動固定部材20の舌状部22をくさび状に保持孔2sに挿入するのである。
すると、保持孔2sに挿入した移動固定部材20の舌状部22によって、位置決め部材12の出没方向における移動を制限できる。言い換えれば、可動部本体部11の出没方向における位置を確実に決めることができる。
しかも、移動固定部材20の舌状部22を保持孔2sに押し込むように挿入すれば、移動固定部材20に対して反力を発生させることができる。つまり、可動部本体部11に対して可動部本体部11が本体部2の支持壁2wから離れる方向に向かって反力を働かせるのである。すると、錠受面11fの面方向に対する可動部本体部11の移動をより制限することができる。言い換えれば、可動部本体部11の錠受面11fの面方向における位置を確実に決めることができる。
そして、本体部2を覆うようにカバー部材3を取付ければ、錠受金具1の組立が完了する。
(錠受金具1の設置方法の説明)
以上のごとき、本実施形態の錠受金具1を、マンション等の集合住宅などの住戸の玄関ドア枠に取り付ける手順を図7に基づいて説明する。
図7において、符号Fは玄関用ドア枠を示しており、取付開口部Fhが形成された壁面は、ドアを閉じた状態にいて、ドアの側端面と対向する面である。
この取付開口部Fhは、その形状および大きさが本実施形態の錠受金具1の本体部2を収容することができるように形成されている。そして、取付開口部Fhを囲む一対のドア枠F端面から鉛直方向と略平行になるように内方に向かってフランジ状の固定部材Faが設けられている。この固定部材Faには、表裏を貫通する貫通孔が形成されている。
したがって、図1および図2に示すように、ドア枠Fの取付開口部Fhに組み立てた錠受金具1を配置し、本体部2のフランジ部材2aおよびカバー部材3に設けられている孔と、固定部材Faの貫通孔とを合わせて、ネジ等を挿通させる。すると、カバー部材3の表面とドア枠Fの内壁表面とが略面一となるように、ドア枠Fに錠受金具1を取付けることができる。
錠受金具1は、本体部2から可動部本体部11の錠受面11fが突出しているので、ドア枠Fに本実施形態の錠受金具1を取り付けた状態において、図1に示すように、ドア枠Fの内壁表面から可動部本体部11の錠受面11fが突出した状態となる。
すると、ドアDの端面との間の隙間を大きくしても、錠受面11fからドアDの端面までの距離を短くできるので、通常のデッドボルトDBを使用しても、しっかりと施錠することができるのである。
本実施形態の錠受金具1では、位置決め部材12と保持孔2sによって可動部本体部11を位置決めしているので、ドア枠F等の変形や地震等によるドアDの移動などがあっても、可動部本体部11を移動させて、解錠やドアDの開閉ができるようになっている。
そこで、以下では、かかる機能を錠受金具1に付与する、位置決め部材12および保持孔2sの構成(つまり、特許請求の範囲にいう位置決め機構)についてより詳細に説明する。
(位置決め部材12の詳細な説明)
図3に示すように、位置決め部材12は、可動部本体部11の短辺壁11wに基端が連結されている。
なお、位置決め部材12の形成方法は、とくに限定されず、例えば、可動部本体部11を形成する際に併せて一体形成してもよい。具体的には、可動部本体部11を一枚の板部材から形成する場合、支持壁2wとなる部分の先端部が他の側壁の基端から先端までの距離よりも長くなるように形成する。そして、各側壁を挿入開口11a、11bを有する錠受面11fを中心に折り曲げれば、可動部本体部11を形成することができる。しかも、このとき支持壁2wに対して略直交するように折り曲げるだけで、位置決め部材12を形成することができる。
位置決め部材12は、その先端部を保持孔2sに挿入した状態において、可動部本体部11の錠受面11fが本体部2の開口から突出するように設けられている。
例えば、図3に示すように、可動部本体部11の錠受面11fから位置決め部材12の本体部2の内底面に対向する面までの距離L1が、本体部2の支持壁2wに形成された保持孔2sの下端から本体部2の開口面までの距離とカバー部材の厚さtを足した距離よりも長くなるように形成する。
また、例えば、図6に示すように、保持孔2sを正面視長方形に形成する場合、長手方向の長辺のうち本体部2の底壁に近い長辺を有する内端面から本体部2の開口面までの距離とカバー部材の厚さtを足した距離L2よりも長くなるように形成する。かかる場合、位置決め部材12を保持孔2sに挿入した状態において、可動部本体部11の錠受面11fを常に本体部2の開口から突出させた状態に保持することができる。つまり、L1からL2を引いた距離だけ、可動部本体部11の錠受面11fを開口から突出させることができるのである。言い換えれば、L1をL2よりも常に長くしつつその差を調整することによって、可動部本体部11の本体部2の開口からの突出量を調整することができる。
(可動部本体部11の移動についての説明)
つぎに、本実施形態の錠受金具1をドア枠Fに取り付けた状態において、本実施形態の錠受金具1に対して、可動部本体部11の錠受面11fの面方向(鉛直方向)に向かって押圧された場合と、錠受面11fの面方向に対して略直交する方向(奥行き方向)に向かって力加えられた場合について、錠受金具1の作動を説明する。
(奥行き方向の移動について)
まず、錠受面11fの面方向に対して略直交する方向に向かって押圧(以下、奥行き方向の押圧という)された場合について説明する。
図4に示すように、位置決め部材12はその先端部が保持孔2sに挿通されているので、位置決め部材12の先端部は、本体部2に対して奥行き方向に移動できないように保持孔2sによって保持されている。つまり、本体部2の奥行き方向に対して、本体部2に対する位置決め部材12の先端部の相対的な移動が固定されている。
一方、位置決め部材12の基端は、可動部本体部11の短辺壁11wに連結されているので、可動部本体部11の奥行き方向における可動部本体部11に対する位置決め部材12の基端の相対的な移動が固定されている。
しかも、可動部本体部11は、その底部と本体部2の内底面との間に隙間が形成されるように、位置決め部材12の先端部は、保持孔2sによって保持されている。
すると、可動部本体部11に対して奥行き方向の力で押圧された場合(図4では右から左への矢印の方向)、その押圧する力によって位置決め部材12に発生する応力が弾性限界を超えれば、図4に示すように、位置決め部材12が塑性変形して、可動部本体部11を奥行き方向に後退させることができる。そうすると、ドア枠F等の変形や地震等によるドアDの移動などがあっても、可動部本体部11が解錠やドアDの開閉の邪魔とならない。
なお、可動部本体部11の形状などを変更しなくても、位置決め部材12が有する塑性変形する力を調整すれば、可動部本体部11を奥行き方向に後退させる力を調整することができる。言い換えれば、位置決め部材12の大きさや形状を調整すれば、可動部本体部11を奥行き方向に後退させる力を調整することができる。つまり、デッドボルトが掛合される可動部本体部11の強度は一定以上に維持しつつ、可動部本体部11を奥行き方向に後退させる力を弱めたりすることも可能である。
例えば、可動部本体部11と位置決め部材12を一体で形成した場合(一枚の板で形成した場合など)でも、位置決め部材12の幅を細くしたり、適宜切り込みを入れしたり、位置決め部材12の基端と可動部本体部11の短辺壁11wが連結する連結部に貫通する貫通孔を形成したり(図7参照)、するなどすれば、位置決め部材12の強度を調整することができる。とくに、位置決め部材12と短辺壁11wとの連結部に貫通孔を形成すれば、貫通孔の大きさおよび/または数によって位置決め部材12の強度の調整がしやすくなる。しかも、可動部本体部11と併せて一体成型する際に位置決め部材12を折り曲げやすくなるので、位置決め部材12の短辺壁11wに対する角度調整を行いやすくなる。もちろん、可動部本体部11とは別に形成した位置決め部材12を可動部本体部11に取り付けるような場合には、所望の強度を発揮させるように位置決め部材12の形状や使用する素材などを調整すればよい。
(鉛直方向の移動について)
つぎに、可動部本体部11の錠受面11fの面方向(以下、鉛直方向という)に向かって力が加えられた場合について説明する。なお、可動部本体部11に対して鉛直方向の力が加えられる場合として、地震発生時のドアDまたはドア枠Fが鉛直方向に移動した場合が想定される。この場合、デッドボルトDBと可動部本体部11との干渉が問題となる。具体的には、デッドボルトDBの先端部の上端部や下端部を、可動部本体部11との干渉が問題となる。
したがって、以下では、ドアDを施錠した状態(デッドボルトDBを可動部本体部11内に挿入した状態)における可動部本体部11の移動について説明する。なお、デッドボルトDBの先端部とは、デッドボルトDBの先端近傍のほか、可動部本体部11内に挿入されているデッドボルト部分全体や鎌状デッドボルトの鎌状部分も含む概念である。
図5に示すように、可動部本体部11に対して鉛直方向の力が加えられた場合(図5では下から上への矢印の方向)には、本体部2の支持壁2wと可動部本体部11の短辺壁11wの間に形成された可動スペースに配置された移動固定部材20が変形する。
具体的には、移動固定部材20の連結壁21aが本体側壁21bおよび可動部本体部側壁21cに対して傾斜するように形成されているので、可動部本体部11に対して鉛直方向の力が加えられた場合、本体側壁21bおよび可動部本体部側壁21cは互いに接近するように変形する。
すると、可動部本体部11にデッドボルトDBの先端部が挿入された状態において、デッドボルトDB、つまりドアまたはドア枠の錠受面11fの面方向の移動に対応させて、可動部本体部11を移動させることができる。
そうすると、デッドボルトDBの先端部が可動部本体部11に食い込んだりすることを防止することができる。とくに、デッドボルトDBの先端部に鎌状部材等を有する鎌状デッドボルトを使用する場合には、鎌状部材等が可動部本体部11に食い込んで外れなくなることを防ぐことができる。よって、鎌状デッドボルトを使用した場合において、地震によって鉛直方向の力が可動部本体部11に加えられても確実に解錠することができ、ドアDを開放することができる。
また、移動固定部材20は、その本体側壁21bを本体部2の支持壁2wの内面側に配設しており、その可動部本体部側壁21cを可動部本体部11の本体部2の支持壁2wの内面に対抗する対向面側(つまり短辺壁11w側)に配設している。このため、移動固定部材20が変形するときに、本体側壁21bは支持壁2wに対して、また、可動部本体部側壁21cは可動部本体部11の短辺壁11wに対して反力を発揮させながら変形させることができる。すると、かかる移動固定部材20によって可動部本体部11に加えられた鉛直方向の力をある程度吸収しながら可動部本体部11に対して反力を働かせることができるので、ドアD等の急激な移動によって可動部本体部11と本体部2とが急激に衝突するなどして損傷することを防止することができる。
さらに、連結壁21aが本体側壁21bおよび可動部本体部側壁21cに対して傾斜しているので、移動固定部材20がより変形しやすくなっているが、連結壁21aの本体側壁21bおよび可動部本体部側壁21cに対する傾斜角度を調整すれば、可動部本体部11の鉛直方向に向かって加えられた力に対して抵抗する反力を調整できる。
また、移動固定部材20を可動部本体部11や本体部2等の位置決めしておく構成を採用してもよい。例えば、移動固定部材20の本体側壁21bや可動部本体部側壁21cに凹みや孔を設けて、この凹みや孔と係合する突起を本体部2の支持壁2wや可動部本体部11の短辺壁11wに設けておけば、移動固定部材20を位置決めすることができる。
さらに、移動固定部材20の本体側壁21bや可動部本体部側壁21cに凹みや孔を設けずに、突起を本体部2の支持壁2wや可動部本体部11の短辺壁11wに設けておけば、この突起が移動固定部材20と干渉して、移動固定部材20からの反力が強くなるので、可動部本体部11の移動をしっかりと固定することができる。
(本実施形態の錠受金具1の作用効果のまとめ)
以上のごとき構造であるので、本実施形態の錠受金具1をマンション等の集合住宅などの玄関用のドア枠Fに取り付けて使用すれば、平常時では、確実にドアをドア枠に対して固定(つまりドアをロック)することができる。
具体的には、可動部本体部11に設けられた位置決め部材12および支持壁2wに形成された保持孔2sによって、本体部2内において、可動部本体部11が所定の位置に保持することができる。すると、ドア枠Fの内壁面から可動部本体部11の錠受面11fを突出させた状態で保持し、かかる錠受面11fからデッドボルトDBを可動部本体部11内へ挿入させることができる。かかる状態において、錠受面11fとドアD側端面の錠の表面の距離は、一般的なドアの場合と同等の距離にできる。つまり、耐震用のドア枠Fであっても本実施形態の錠受金具1を使用すれば、一般的なデッドボルトを使用して通常と同等の防犯性能を備えることができる。
しかも、地震時には、確実にドアを解錠できる。
具体的には、可動部本体部11の錠受面11fに向かって所定以上の力が加わる地震などの災害では、可動部本体部11を奥行き方向に向かって後退させることができる。また、可動部本体部11に対して鉛直方向に向かって所定以上の力が加えられた場合、移動固定部材20を変形させることによって、可動部本体部11を鉛直方向に向かって移動させることができる。
すると、ドアDを施錠した状態において、地震によって奥行き方向および/または鉛直方向に向かう力が発生した場合であっても、可動部本体部11が奥行き方向および/または鉛直方向に移動できるので、デッドボルトDB(鎌状デッドボルトを含む)が可動部本体部の錠受面11fに干渉して解錠できなくなるような場合を回避することができる。つまり、ドア枠Fなどが変形するような地震であっても、建築物の屋内にいる人はデッドボルトDBを可動部本体部11からスムースに脱離させることができるので、地震によって解錠できなくて屋内に人が閉じ込められる状況を回避することができる。例えば、ドア枠Fが変形し、可動部本体部11の錠受面11fにドアDの側端面が接するような状態となっても、建築物の屋内にいる人はドアを開放することができる。
なお、本体部2には、その支持壁2wに保持孔2sが設けられているが、この保持孔2sには防水性のコーキング部材を設けるのが好ましい。この場合、本実施形態の錠受金具1をドア枠Fに取り付けて使用する場合、保持孔2sからドア枠F内に雨水等の水が浸入することを防ぐことができるので、ドア枠F内に水が入ってサビ等により劣化することを防止することができる。
また、本体部2の支持壁2wに保持孔2sを形成しない構造も採用することが可能である。例えば、支持壁2wの内壁に、可動部本体部11の短辺壁11wに設けられた位置決め部材12の先端部を掛合するような保持部材を設けてもよい。この場合、保持部材と位置決め部材12の先端部の掛合する掛合量によって、保持孔2sが位置決め部材12の先端部を保持する場合と同様の効果を奏することが可能である。
例えば、可動部本体部11を錠受面11fと平行な方向に移動させなくて良い場合であれば、本体部2の支持壁2wの内面に突起を設けてその突起の開口側の面に位置決め部材12の先端部が載せられるような構造としてもよい。ただし、この場合には、可動部本体部11が開口側に向かって移動することを止めるために、カバー部材3と位置決め部材12との間に、移動を制限する部材(例えば、移動固定部材20)を設けることが必要である。もちろん、突起の開口側の面に位置決め部材12の先端部を載せたあとで、溶接等の方法によって位置決め部材12を本体部2に固定してもよい。
さらに、移動固定部材20に舌状部22を設けない構成も採用すること可能である。例えば、保持孔2sの内面(つまり保持孔2sを囲む支持壁2w内面)と保持孔2sに挿入した位置決め部材12の先端部の表面との間に摩擦抵抗が生じるように保持孔2sおよび/または位置決め部材12の先端部を形成する。例えば、保持孔2sの形状が位置決め部材12の先端部と略相似形であり、その大きさもほぼ同じ大きさに形成する。すると、位置決め部材12の先端部が移動すれば、保持孔2sの内面との間で摩擦抵抗が生じるので、舌状部22を設けている場合と同様の効果を奏する。
さらになお、上記のごとき構造を採用すれば、移動固定部材20を設けなくても可動部本体部11の鉛直方向への移動をある程度制限することが可能となる。
本発明の錠受金具は、耐震用のドア枠に使用される錠受金具として適している。
1 錠受金具
2 本体部
2s 保持孔
2w 支持壁
10 可動部
11 可動本体部
11f 鍵受面
12 位置決め部材
1 位置決め部材
20 移動固定部材
D ドア
DB デッドボルト
F ドア枠

Claims (4)

  1. デッドボルトが挿入される挿入開口を有する錠受金具であって、
    一面に開口を有し内部に中空な空間を有する本体部と、
    該本体部内に収容された、前記挿入開口が形成された錠受面を有する可動部と、を備えており、
    前記可動部は、
    前記錠受面が前記本体部の開口から出没可能となるように設けられており、
    該可動部の錠受面を前記本体部の開口から突出させた状態で保持する位置決め機構が設けられており、
    該位置決め機構は、
    前記本体部の一面と交差する該本体部の支持壁と前記可動部との間に設けられ、その基端が該可動部に連結された位置決め部材と、
    該位置決め部材の先端部を保持する保持手段と、を備えており、
    前記位置決め部材は、
    前記可動部の出没方向における前記可動部に対する該位置決め部材の基端の相対的な移動が固定されるように、その基端が前記可動部に連結されており、
    前記保持手段は、
    前記可動部の出没方向における前記本体部に対する前記位置決め部材の先端部の相対的な移動を固定するように、前記位置決め部材の先端部を保持するものであり、
    前記支持壁には、
    前記本体部の内部と外部を連通する保持孔が形成されており、
    前記保持手段は、
    前記保持孔に前記位置決め部材の先端部を挿入することによって、該位置決め部材の先端部を保持している
    ことを特徴とする錠受金具。
  2. 前記支持壁と前記可動部との間には、可動スペースが設けられており、
    該可動スペースには、
    前記支持壁に対して接近離間する方向における前記可動部の移動を制限する移動固定部材が設けられている
    ことを特徴とする請求項1記載の錠受金具。
  3. 前記移動固定部材は、
    断面視略コ字状に形成された部材であって、
    前記支持壁の内面側に配設される本体部側壁と、
    該本体部側壁と互いに略平行であって、前記支持壁の内面に対向する前記可動部の対向面側に配設される可動部側壁と、
    前記本体部側壁の一端と前記可動部側壁の一端とを連結する連結壁と、から形成されており、
    該連結壁は、
    前記本体部側壁および前記可動部側壁に対して傾斜するように形成されている
    ことを特徴とする請求項2記載の錠受金具。
  4. 前記位置決め部材が、
    前記可動部の対向面から前記錠受面の面方向に沿って前記本体部の支持壁に向かって延びた板状の部材であって、
    前記支持壁には、前記本体部の内部と外部を連通する保持孔が形成されており、
    前記保持手段は、
    前記保持孔に前記位置決め部材の先端部を挿入することによって、該位置決め部材の先端部を保持しており、
    前記移動固定部材の本体部側壁には、
    その先端に板状の舌状部が設けられており、
    該舌状部は、
    その先端部が、前記保持孔に挿入された状態における前記位置決め部材の先端部の前記錠受面に対向する面と、前記保持孔の内端面との間に挿入されている
    ことを特徴とする請求項3記載の錠受金具。
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