以下、図面を参照して、本発明の超音波測定装置および超音波測定方法を実施するための一形態について説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明が適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付す。
[概要]
図1は、本実施形態における超音波測定装置1の適用例を示す図である。本実施形態の超音波測定装置1は、超音波測定を利用して測定対象の被検者の脂肪層や筋肉層といった生体組織層の厚みを測定するものであり、超音波プローブ3と、本体装置5とを備える。
生体組織層の厚みを測定する際には、超音波プローブ3を被検者に接触させる。超音波測定装置1は、この超音波プローブ3により生体表面から生体内部に向けて超音波パルスを発信し、被検者の生体内部で反射した超音波の反射波を受信する。そして、受信した反射波を増幅・信号処理することにより、反射波データとしていわゆるAモード、Bモード、Mモード、カラードップラーといった各表示モードの画像を取得する。
ここで、Aモードは、第1軸を生体表面内の測定位置からの深さ方向の距離とし、第2軸を反射波の信号強度として、反射波の振幅(Aモード像)を表示する表示モードである。また、Bモードは、生体表面位置を走査させながら得た反射波振幅(Aモード像)を輝度値に変換することで可視化した生体内構造の二次元画像(Bモード像)を表示する表示モードである。
本実施形態では、フィットネスクラブでの超音波測定装置1の利用を想定しており、超音波測定装置1は、例えば、被検者の腹部を測定部位として定期的に超音波測定を行い、反射波データを生成する。そして、超音波測定装置1は、取得した反射波データを用いて皮下脂肪層の厚み(皮下脂肪厚)および腹直筋組織層の厚み(腹直筋組織厚)を測定し、測定結果を表示処理することでトレーニングの達成度やトレーニングの効果を被検者に提示する。
具体的には、図1に示すように、毎回同じ位置において超音波測定を行って反射波データを生成するために、初回の測定時において測定位置にマークM11を付す。マーキングは、腹直筋の解剖学的位置に基づき行う。そして、図1中に一点鎖線で示すように、測定は、マークM11を目印にして超音波プローブ3を被検者の腹部に接触させ、モニター表示されるBモード画像を適宜視認する等して超音波プローブ3の位置を各生体組織層の境界が鮮明な位置に微調整して行う。なお、測定位置を、例えば臍の位置を基準に拳や手指の長さを用いて特定することとして、マークM11のマーキングを省略することとしてもよい。
図2(a)は、Bモード像として取得される腹部の断層画像の一例を示す図である。また、図2(b)は、図2(a)のBモード像に対応するAモード像を示す図であり、このAモード像は、図2(a)中に白色の破線で示すラインL21上の反射波振幅に相当する。図2中上側が生体表面側であり、図2(a)では、断層画像内の皮下脂肪層と腹直筋組織層との境界B21を一点鎖線で、腹直筋組織層とその下層領域(腹腔)との境界B23を二点鎖線でそれぞれ囲って示している。
ここで、各境界B21,B23は、対応するAモード像においてピークP21,P23となって現れる。したがって、各境界B21,B23は、Aモード像中で対応するピークP21,P23を特定することによって検出することができる。超音波測定装置1は、このようにして各境界B21,B23を検出した上で、生体表面から境界B21までの深さ方向の距離T21を皮下脂肪厚とし、各境界B21,B23間の深さ方向の距離T23を腹直筋組織厚(筋肉層の厚み)として測定する。
しかしながら、図2(b)にも示すように、Aモード像には、各境界に対応するピークP21,P23の他にもピークが出現し得る。そのため、境界を誤検出してしまい、その結果皮下脂肪厚や腹直筋組織厚の測定精度が低下する問題があった。特に、トレーニング達成度の低い被検者ほど多数のピークが出現する傾向にあり、境界の誤検出を招き易い。皮下脂肪厚や腹直筋組織厚の測定精度が低下すると、トレーニングの達成度を被検者に正しく提示できず、被検者にとっては、トレーニングに対するモチベーション低下の要因となる。
そこで、本実施形態では、超音波測定装置1は、測定対象の被検者の皮下脂肪厚および腹直筋組織厚を初めて測定する初回測定時において反射波データ(例えばAモード像)の深さ方向の全域でピーク検出を行い、検出したピークの各々を境界候補とする。そして、超音波測定装置1は、境界候補を2つ組み合わせて一方を皮下脂肪層と腹直筋組織層との境界(以下、適宜「第1の境界」という。)、他方を腹直筋組織層と下層領域との境界(以下、適宜「第2の境界」という。)とした場合の当該組合せの信頼度を算出し、この信頼度に基づいて各境界に対応する境界候補を特定することによって各境界を検出する。
図3は、初回測定時における境界検出原理を説明する図である。例えば、図3(a)に示す腹部の断層画像(Bモード像)に対応するAモード像についてピーク検出を行った結果、図3(a)中に破線で囲って示す3つの境界候補B31,B32,B33が検出されたとする。この場合は、これら3つの境界候補B31,B32,B33のうちの1つを第1の境界、残りの境界候補のうちの1つを第2の境界とする全ての組合せを作成し、組合せ毎に信頼度を算出する処理(信頼度算出処理)を行う。ただし、第2の境界が必ず第1の境界よりも深い位置となる組合せとする。図3では、境界候補B31を第1の境界、境界候補B32を第2の境界とした場合(図3(b))の信頼度を65%、境界候補B32を第1の境界、境界候補B33を第2の境界とした場合(図3(c))の信頼度を95%としている。
実際には、境界候補B31,B32,B33のうちの1つを第1の境界とし、残りの境界候補のうちの1つを第2の境界とする組合せは3通りあり、図3(b)および図3(c)に示す組合せの他に、境界候補B31を第1の境界、境界候補B33を第2の境界とする組合せも存在する。信頼度算出処理では、これら3通りの全ての組合せについて信頼度を算出する。その結果、図3(c)に示す組合せの信頼度(95%)が最も大きい場合には、境界候補B32を第1の境界、境界候補B33を第2の境界として特定する。
図4は、境界候補の1つの組合せに着目した信頼度算出処理を説明する図であり、断層画像内の着目する組合せにかかる第1の境界の境界候補B41および第2の境界の境界候補B43を模式的に示している。実際に境界候補B41が第1の境界に対応し、境界候補B43が第2の境界に対応するならば、これら境界候補B41,B43によって区画された上段の領域A41が皮下脂肪層、中段の領域A43が腹直筋組織層、下段の領域A45が腹直筋組織層の下層領域となる。
信頼度算出処理では、領域A41,A43,A45毎に所定の特徴量を算出し、この特徴量を、境界候補B41が第1の境界であり、且つ、境界候補B43が第2の境界である確度を示す指標値として得る。特徴量の算出は、例えば、各領域A41,A43,A45の上側のハッチングを付した所定範囲(注目領域)A411,A431,A451を対象に行う。注目領域A411,A431,A451とする範囲については、事前にその大きさ(深さ方向の幅)を定める等して設定しておく。そして、所定の特徴量算出処理を行い、注目領域A411の断層画像データ(注目領域A411内の各画素の輝度値)から特徴量A1を算出する。同様に、注目領域A431の断層画像データから特徴量A2を算出し、注目領域A451の断層画像データから特徴量A3を算出する。
所定の特徴量算出処理は公知の処理を利用することができる。例えば、算出する特徴量としては、同時生起行列に基づくテクスチャ特徴量(例えば相関(Correlation)等)を用いることができ、注目領域毎にその断層画像データから同時生起行列を生成し、テクスチャ特徴量を算出する。この同時生起行列に基づくテクスチャ特徴量の算出については従来公知であるため詳細な説明は省略するが、同時生起行列は、ある濃度の点から一定の変位だけ離れた点の濃度が所定値である確率を要素とするものであり、角度θの方向にr離れる一定の変位(例えば(r,θ)=(1,90°))を指定することで生成できる。
そして、前述のように注目領域A411,A431,A451毎に算出した特徴量A1,A2,A3から、該当する境界候補の組合せ全体の特徴量Aを次式(1)に従って算出する。次式(1)において、K1,K2,K3は、特徴量A1,A2,A3に対する重み値である。重み値K1,K2,K3の各値は適宜設定してよいが、例えば、下段の領域A45の重みが最も大きくなるように設定される。その後は、算出した特徴量Aを0[%]〜100[%]の値に換算して信頼度とする。
A=K1×A1+K2×A2+K3×A3(K1<K2<K3) ・・・(1)
なお、注目領域を領域A41,A43,A45内のどの範囲とするのかは、例示した領域A41,A43,A45の上側の範囲に限らず、中央や下側の範囲等、適宜設定してよい。また、領域A41,A43,A45の全域を注目領域としてもよい。また、全ての領域A41,A43,A45に注目領域を設定するのではなく、領域A41,A43,A45の中から事前に設定される一部の領域のみに注目領域を設定し、特徴量を算出する構成としてもよい。例えば、中段の領域A43のみに注目領域を設定して特徴量を算出するようにしてもよい。また、特徴量を信頼度に換算することなくそのまま用い、境界候補を特定するようにしてもよい。
ところで、どの程度日数をあけて測定を行うのかは被検者によって異なり、固定的に決められるものではないが、フィットネスクラブの会員は、定期的にトレーニングに通い、随時トレーニングの達成度を確かめるであろうから、各境界の生体表面からの深さ方向の位置(以下、「境界位置」という。)は、前回の測定時から大きくは変化しないと考えられる。そのため、2回目以降の測定時に各境界を検出するにあたっては、前回検出した各境界の境界位置(最新値)を目安にすることができる。また、初回測定時に境界として特定されなかった境界候補の生体表面からの深さ方向の位置(以下、「誤検出位置」という。)については、2回目以降の測定時は各境界の探索範囲から除外することができる。そこで、2回目以降の測定時では、初回測定時や前回測定時における各境界の検出結果に基づいて、探索範囲およびマスク範囲を境界毎に決定する。
例えば、図3の例では、境界候補B32は第1の境界とされ、境界候補B33は第2の境界とされる一方、何れの境界にも対応しない境界候補B31は誤検出位置となる。この場合、次回の測定時は、図3(c)に示すように、第1の境界の境界位置(境界候補B32の位置)に基づいてその近傍範囲L31を第1の境界の探索範囲として決定するとともに、第2の境界の境界位置(境界候補B33の位置)に基づいてその近傍範囲L33を第2の境界の探索範囲として決定する。加えて、2回目以降の測定時は、図3(b)に示すように、誤検出位置(境界候補B31の位置)に基づいてその近傍範囲L35をマスク範囲として決定する。
[機能構成]
図5は、超音波測定装置1の主要な機能構成例を示すブロック図である。図5に示すように、超音波測定装置1の本体装置5は、操作部51と、画像表示部52と、処理部53と、記憶部60とを備え、この本体装置5が超音波送受信部30と接続されて構成される。
超音波送受信部30は、図1の超音波プローブ3に内蔵されるものであり、送信部31は、処理部53の送受信制御部542から入力されるパルス電圧で超音波を発信する。そして、受信部33は、送信部31によって発信された超音波が被検体の生体内で反射した反射波を受信して反射波信号に変換し、送受信制御部542に出力する。
操作部51は、ボタンスイッチやレバースイッチ、ダイヤルスイッチ等の各種スイッチ、タッチパネル、トラックパッド、マウス等の入力装置によって実現されるものであり、操作入力に応じた操作信号を処理部53に出力する。
画像表示部52は、LCD(Liquid Crystal Display)やELディスプレイ(Electroluminescence display)等の表示装置によって実現されるものであり、処理部53の表示画像生成部58から入力される表示信号に基づいて各種画面を表示する。この画像表示部52には、Aモード像や、断層画像であるBモード像、測定した被検者の皮下脂肪厚および腹直筋組織厚等が表示される。
処理部53は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のマイクロプロセッサー、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の制御装置および演算装置によって実現されるものであり、超音波測定装置1の各部を統括的に制御する。この処理部53は、超音波測定制御部54と、ユーザー情報取得部55と、境界検出部56と、厚み測定部としての生体組織厚測定部57と、表示画像生成部58とを備える。なお、処理部53を構成する各部は、専用のモジュール回路等のハードウェアで構成することとしてもよい。
超音波測定制御部54は、駆動制御部541と、送受信制御部542と、受信合成部543とを含み、超音波測定を統合的に制御する。この超音波測定制御部54は、超音波送受信部30とともに超音波測定部2を構成し、この超音波測定部2によって超音波測定が実現される。
駆動制御部541は、超音波送受信部30からの超音波パルスの発信タイミングを制御し、送信制御信号を送受信制御部542に出力する。
送受信制御部542は、駆動制御部541からの送信制御信号に従ってパルス電圧を発生させて送信部31に出力する。その際、送信遅延処理を行って各超音波振動子へのパルス電圧の出力タイミングの調整を行う。また、送受信制御部542は、受信部33から入力された反射波信号の増幅やフィルター処理を行い、処理結果を受信合成部543に出力する。
受信合成部543は、必要に応じて遅延処理等を行っていわゆる受信信号のフォーカスに係る処理等を行い、反射波データを生成する。
ユーザー情報取得部55は、測定対象の被検者(ユーザー)に個人IDを割り当てて身体属性値を取得する。
境界検出部56は、反射波データに基づいて第1の境界および第2の境界を検出する。この境界検出部56は、境界候補検出部561と、境界特定部563と、探索範囲決定部およびマスク範囲決定部としてのパラメーター決定部567とを含む。境界候補検出部561は、境界候補を複数検出する。境界特定部563は、境界候補の何れかを第1の境界および第2の境界とする組合せ毎に信頼度を算出する信頼度算出部565を備え、信頼度が最大の組合せに従って各境界を特定する。パラメーター決定部567は、各境界の境界位置(最新値)およびマスク範囲を決定する。これらの各値は、後述する境界検出プログラム613に設定パラメーターとして与えられる。
生体組織厚測定部57は、境界検出部56によって検出された各境界の境界位置に基づいて、皮下脂肪厚および腹直筋組織厚を測定する。
表示画像生成部58は、皮下脂肪厚および腹直筋組織厚の測定結果を測定結果画面として表示するための表示画像を生成する。例えば、表示画像生成部58は、断層画像上に境界検出部56によって検出された各境界の境界位置を合成する処理等を行う。
記憶部60は、ICメモリーやハードディスク、光学ディスク等の記憶媒体により実現されるものである。この記憶部60には、超音波測定装置1を動作させ、この超音波測定装置1が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、このプログラムの実行中に使用されるデータ等が事前に記憶され、あるいは処理の都度一時的に記憶される。
この記憶部60には、処理部53を超音波測定制御部54、ユーザー情報取得部55、境界検出部56、生体組織厚測定部57、および表示画像生成部58として機能させ、測定処理(図9を参照)を実行するための測定プログラム61が記憶される。この測定プログラム61は、境界候補検出プログラム611と、境界検出プログラム613とを含む。境界候補検出プログラム611は、深さ方向の全域を対象に例えばAモード像を解析してピーク検出を行い、全てのピークを境界候補として検出する手順を定めたものである。一方、境界検出プログラム613は、マスク範囲を除外し、その上で境界毎の探索範囲を対象にAモード像を解析してピーク検出を行い、各探索範囲内で対応する境界を検出する手順を定めたものである。
また、記憶部60には、データとして、ユーザー情報63と、信頼度算出テーブル65とが記憶される。
ユーザー情報63は、属性情報テーブル631と、測定結果テーブル633とを含む。なお、このユーザー情報63については、超音波測定装置1の記憶部60に記憶される構成に限らず、例えば、超音波測定装置1と通信接続される外部装置に記憶するようにし、この外部装置との間で通信を行って必要なデータを取得または更新する構成としてもよい。
属性情報テーブル631は、フィットネスクラブの利用者として会員登録された被検者の身体属性値を記憶する。図6は、属性情報テーブル631のデータ構成例を示す図である。図6に示すように、属性情報テーブル631は、会員登録時に個々の被検者に固有に割り当てられる個人IDと対応付けて、会員登録時に入力される性別や年齢、身長、体重等の各身体属性値が設定されたデータテーブルである。各身体属性値は、フィットネスクラブに新規に通う被検者が会員登録に際して顧客情報として入力し、トレーニングの過程で随時更新する値等であり、図6に例示する項目に限らず、必要に応じた項目を事前に定めて収集することとしてよい。
測定結果テーブル633は、被検者毎に皮下脂肪厚および腹直筋組織厚の測定結果を記憶する。図7は、測定結果テーブル633のデータ構成例を示す図である。図7に示すように、測定結果テーブル633は、被検者の個人IDと対応付けて、測定結果履歴と、前回測定時に得られた皮下脂肪層と腹直筋組織層との境界(第1の境界)および腹直筋組織層と下層領域との境界(第2の境界)の各境界位置である境界位置(最新値)と、初回測定時に得られた誤検出位置とを記憶する。測定結果履歴は、皮下脂肪厚および腹直筋組織厚の測定結果を測定日時と対応付けて蓄積・記憶する。境界位置(最新値)の測定日時は、対応する測定結果履歴の最新の測定日時によって特定できる。
信頼度算出テーブル65は、上記式(1)で算出した組合せ全体の特徴量Aを信頼度(0[%]〜100[%])に換算するためのものである。図8は、信頼度算出テーブル65として定められる特徴量Aと信頼度との対応関係例をグラフ化した図である。なお、この特徴量Aと信頼度との対応関係は、データテーブルとして定める場合に限らず、これらの関係式として定めておくこととしてもよい。
[処理の流れ]
図9は、測定処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、ここで説明する処理は、処理部53が記憶部60から測定プログラム61を読み出して実行することで実現できる。超音波測定装置1は、図9の処理手順に従って処理を行うことで超音波測定方法を実施する。
図9に示すように、測定処理では、処理部53は先ず、測定対象の被検者が新規会員か否かを判定する。新規会員であれば(ステップS1:YES)、処理部53は、各身体属性値の入力操作を受け付ける。そして、ユーザー情報取得部55が、この新規会員の被検者に個人IDを割り当て、入力された各身体属性値と対応付けたレコードを属性情報テーブル631に追加して該当する被検者の各身体属性値を登録する(ステップS3)。一方、登録済みの会員の場合は(ステップS1:NO)、処理部53は、個人IDの入力操作を受け付ける等して測定対象の被検者に割り当てられた個人IDを取得する(ステップS5)。
続いて、超音波測定部2が超音波測定を行い、反射波データを生成する(ステップS7)。
その後、境界検出部56が、今回の測定が初回測定時なのか2回目以降の測定時なのかに応じて処理を分岐する。例えば、境界検出部56は、測定結果テーブル633を参照し、測定対象の被検者の個人IDが設定されたレコードがなければ初回測定時と判定し(ステップS9:YES)、ステップS11に移行する。一方、測定対象の被検者の個人IDが設定されたレコードがある場合は、2回目以降の測定時と判定して(ステップS9:NO)、ステップS21に移行する。
そして、初回測定時の場合に移行するステップS11では、境界候補検出部561が、ステップS7で生成した反射波データ(例えばAモード像)を解析し、その深さ方向の全域でピークを検出して境界候補とする。
続いて、境界特定部563が、得られた境界候補の何れかを第1の境界および第2の境界とする全ての組合せを作成する(ステップS13)。そして、信頼度算出部565が、信頼度算出処理を行う(ステップS15)。図10は、信頼度算出処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。図10に示すように、信頼度算出処理では、信頼度算出部565は、図9のステップS13で作成した全ての組合せを順次処理対象としてループAの処理を実行する(ステップS131〜ステップS136)。
すなわち先ず、信頼度算出部565は、図4を参照して説明した要領で、処理対象の組合せの境界候補を用いて断層画像を区画した各領域に注目領域を設定する(ステップS132)。続いて、信頼度算出部565は、注目領域毎にその断層画像データから同時生起行列を生成し、特徴量(テクスチャ特徴量)を算出する処理(特徴量算出処理)を注目領域毎に行う(ステップS133)。そして、信頼度算出部565は、上記式(1)に従い、注目領域毎の特徴量から処理対象の組合せ全体の特徴量を算出する(ステップS134)。その後、信頼度算出部565は、信頼度算出テーブル65を参照し、ステップS134で算出した組合せ全体の特徴量Aを信頼度に換算して(ステップS135)、処理対象の組合せについてループAの処理を終える。全ての組合せについてループAの処理を行ったならば、図9のステップS15にリターンし、その後ステップS17に移行する。
ステップS17では、境界特定部563は、信頼度の値が最も大きい組合せに従い、第1の境界および第2の境界に対応する境界を特定することによって境界を検出する。そして、境界特定部563は、特定した各境界の境界位置を最新の境界位置(最新値)とし、境界とされなかった境界候補の境界位置を誤検出位置として、測定結果テーブル633において測定対象の被検者の個人IDと対応付けられた該当する各値を更新する(ステップS19)。その後ステップS29に移行する。
一方、2回目以降の測定時の場合に移行するステップS21では、パラメーター決定部567が、測定結果テーブル633から測定対象の被検者の個人IDと対応付けられた各境界の境界位置(最新値)を読み出して用い、各境界位置(最新値)の近傍範囲をそれぞれ対応する境界の探索範囲として決定する。加えて、パラメーター決定部567は、測定結果テーブル633から測定対象の被検者の個人IDと対応付けられた誤検出位置を読み出して用い、誤検出位置の近傍範囲をマスク範囲として決定する(ステップS23)。探索範囲やマスク範囲の幅(深さ方向の広狭)は、測定部位(本実施形態では腹部)を考慮して経験的に決めておくことができる。ここでは、例えば、各境界の境界位置(最新値)を基準として深さ方向に±2mmの範囲を、それぞれ該当する境界の探索範囲とする。マスク範囲ついても同様に決定する。
続いて、境界検出部56は、ステップS21で決定した境界毎の探索範囲およびステップS23で決定したマスク範囲を設定パラメーターとして境界検出プログラム613に与えて実行し、ステップS7で生成した反射波データ(例えばAモード像)を解析して第1の境界および第2の境界を検出する(ステップS25)。ここでの処理により、マスク範囲を除外した上で境界毎の探索範囲を対象にピーク検出が行われ、各探索範囲内で対応する境界が検出される。そして、境界検出部56は、検出した各境界の境界位置を最新の境界位置(最新値)とし、測定結果テーブル633において測定対象の被検者の個人IDと対応付けられた該当する各値を更新する(ステップS27)。その後ステップS29に移行する。
そして、ステップS29では、生体組織厚測定部57が、ステップS17またはステップS25で検出した各境界の境界位置に基づき皮下脂肪厚および腹直筋組織厚を測定する。
その後、表示画像生成部58が、ステップS17またはステップS25で検出した各境界の境界位置や、ステップSS29で測定した皮下脂肪厚および腹直筋組織厚等に基づいて測定結果画面の表示画像を生成し、測定結果画面を画像表示部52に表示する処理を行う(ステップS31)。
図11は、測定結果画面の一例を示す図である。図11に示すように、測定結果画面には、今回の皮下脂肪厚の測定値V51および腹直筋組織厚の測定値V53が表示される。この測定結果画面は、画像表示エリアA51と、測定履歴表示エリアA53とを備える。画像表示エリアA51には、断層画像上に皮下脂肪層と腹直筋組織層との境界を指し示すマークM51と、腹直筋組織層とその下層領域との境界を指し示すマークM53とが合成された表示画像が表示される。測定履歴表示エリアA53には、過去の皮下脂肪厚および腹直筋組織厚の測定履歴が一覧表示される。フィットネスクラブの会員である被検者は、トレーニングの過程でモチベーション向上等のために随時皮下脂肪厚および腹直筋組織厚を測定することができる。そして、被検者は、測定結果画面において、画像表示エリアA51に表示された各境界を確認し、現在の皮下脂肪厚および腹直筋組織厚を測定履歴表示エリアA53に表示された過去の測定値の推移と見比べながらトレーニング達成度を確認する。
なお、断層画像に対する境界位置の合成は、図11に示したマークM51,M53の合成に限らず、皮下脂肪層と腹直筋組織層との境界および腹直筋組織層とその下層領域との境界を断層画像内で識別可能な態様であればよい。例えば、断層画像に基づいて、皮下脂肪層、腹直筋組織層、およびその下層領域を色分けすることで各境界を識別可能な表示画像を合成し、画像表示エリアA51に表示する構成としてもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、初回測定時では、Aモード像に出現するピークを境界候補として検出し、信頼度を算出することによって境界候補の中から皮下脂肪層と腹直筋組織層との境界および腹直筋組織層と下層領域との境界に対応する境界候補を特定することができる。したがって、Aモード像において各境界に対応するピークとは別のピークを含む多数のピークが出現した場合であっても、各境界を精度よく検出することができる。一方、2回目以降の測定時では、前回測定時に検出された各境界の境界位置を含む近傍範囲をそれぞれ対応する境界の探索範囲として決定するとともに、初回測定時の誤検出位置を含む近傍範囲をマスク範囲として決定することができる。そして、マスク範囲を除外した上で、各境界を対応する探索範囲内で検出することができる。これによれば、2回目以降の測定時は、境界毎に探索範囲を絞って各境界を検出することができるので、初回測定時と比べて簡単に各境界の誤検出を低減し、境界検出の精度向上を図ることができる。結果、本実施形態の超音波測定装置1によれば、皮下脂肪厚および腹直筋組織厚を高精度に測定できる。
なお、上記した実施形態では、各境界候補が第1の境界および第2の境界である確度を示す指標値として同時生起行列に基づくテクスチャ特徴量を例示した。そして、境界候補によって区画される断層画像内の領域毎に注目領域を設定し、注目領域毎にテクスチャ特徴量を算出して信頼度に換算することとした。これに対し、別のテクスチャ特徴量等の特徴量を採用して信頼度の算出に用いることとしてもよい。
別の特徴量の例としては、例えば、濃度ヒストグラムを作成・正規化して用い、平均、分散、歪度、尖度等の特徴量を注目領域毎に算出して信頼度に換算することとしてもよい。また、差分統計量を利用して一定の変位だけ離れた2点の濃度差の確率を求め、コントラスト(contrast)、エントロピー(entropy)、平均値(mean)等の特徴量を注目領域毎に算出して信頼度に換算することとしてもよい。また、注目領域内で角度θの方向にある濃度の点が幾つ続くかの頻度を要素とするランレングス行列を生成し、短いランレングスの発生頻度(short runs emphasis)、長いランレングスの発生頻度(long runs emphasis)等の特徴量を注目領域毎に算出して信頼度に換算することとしてもよい。
また、例示したような複数種類の特徴量を算出し、これらを組み合わせて用いてもよい。例えば、図4に示した特徴量A1,A2,A3の各々に相当する注目領域毎の特徴量ANを次式(2)に従って算出するようにしてもよい。次式(2)において、AM1は該当する注目領域の同時生起行列に基づく特徴量、AM2は該当する注目領域の濃度ヒストグラムに基づく特徴量、AM3は該当する注目領域の差分統計量に基づく特徴量、AM4は該当する注目領域のランレングス行列に基づく特徴量である。また、aM1〜aM4は、所定の係数である。
AN=aM1×AM1+aM2×AM2+aM3×AM3+aM4×AM4 ・・・(2)
また、上記した実施形態では、2回目以降の測定時は前回の測定で検出した各境界の最新の境界位置(最新値)に基づいて境界毎に探索範囲を決定することとしたが、その際に、前回測定時からの経過日数を考慮するようにしてもよい。例えば、事前に経過日数と探索範囲幅との対応関係を定義しておき、経過日数に応じて探索範囲幅の広狭を変更して決定するようにしてもよい。
図12は、経過日数と探索範囲幅との対応関係例をグラフ化した図である。図12に示すように、経過日数と探索範囲幅との対応関係は、例えば、経過日数が長いほど探索範囲幅が広くなるように設定しておく。そして、本変形例では、パラメーター決定部567は、図12に例示する対応関係に従い、経過日数に応じた探索範囲幅を用いて境界毎の探索範囲を決定する。経過日数が長いと、この間のトレーニングの進捗等によって各境界の位置の変動が大きい場合もある。本変形例によれば、このような事態に適切に対処しつつ、経過日数が短い場合には探索範囲を必要以上に広げることなく適度に絞って各境界を検出でき、各境界の誤検出を低減できる。
また、上記した実施形態では、初回測定時においてAモード像の深さ方向の全域を対象に境界候補を検出し、境界候補の組合せの中から信頼度が最大の組合せを選んで境界を特定することとした。これに対し、初回測定時以外でも、例えば、前回境界候補を検出し境界を特定する処理を行ってから所定期間が経過した場合や、前回測定時から所定期間が経過した場合といった所定のタイミングを判定し、この所定のタイミングと判定した場合においても、境界候補を検出し境界を特定する処理を行ってもよい。
また、上記した実施形態では、境界候補の何れかを第1の境界および第2の境界とする全ての組合せについて信頼度を算出し、信頼度が最大の組み合わせに従って各境界を特定することとしたが、境界の特定方法はこれに限定されるものではない。図13は、本変形例における測定処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、図13において、図9の測定処理と同様の処理工程には、同一の符号を付している。
図13に示すように、本変形例では、今回の測定が初回測定時と判定した場合に(ステップS9:YES)、境界候補検出部561が、境界検出プログラム613に従ってステップS7で生成した反射波データ(例えばAモード像)を解析し、第1の境界および第2の境界を検出してこれら各境界の組合せを境界候補とする(ステップS101)。このとき、境界検出プログラム613の設定パラメーターである境界毎の探索範囲はAモード像の深さ方向の全域とし、マスク範囲については指定しない。ここでの処理により、深さ方向の全域を対象にピーク検出が行われ、各境界が検出される。
続いて、信頼度算出部565が、信頼度算出処理を行う(ステップS103)。本変形例では、信頼度算出部565は、ステップS101で境界候補とされた組合せについて図10に示したループAの処理を行い、信頼度を算出する。
その後、境界特定部563が、ステップS103で算出した信頼度を閾値処理する。そして、境界特定部563は、信頼度が所定の閾値以上であれば(ステップS105:YES)、各境界候補を第1の境界および第2の境界として特定し、測定結果テーブル633において測定対象の被検者の個人IDと対応付けられた最新の境界位置(最新値)を更新する(ステップS111)。一方、境界特定部563は、信頼度が所定の閾値に満たない場合は(ステップS105:NO)、境界候補の少なくとも一方(例えば生体表面側の境界候補)を誤検出位置とし、誤検出位置の近傍範囲をマスク範囲として決定する(ステップS107)。また、このとき、境界特定部563は、測定結果テーブル633において測定対象の被検者の個人IDと対応付けられた誤検出位置を更新する。
そして、境界候補検出部561が、境界検出プログラム613に従って第1の境界および第2の境界を検出し、これら各境界の組合せを境界候補とする(ステップS109)。このとき、設定パラメーターとしてステップS107で決定したマスク範囲を境界検出プログラム613に与える。ここでの処理により、マスク範囲を除外したAモード像の深さ方向の範囲を対象にピーク検出が行われ、各境界が検出される。その後は、ステップS103に戻って上記した処理を繰り返す。
本変形例によれば、信頼度が所定の閾値に満たない場合は、境界候補の少なくとも一方を誤検出位置とすることができる。そして、誤検出位置の近傍範囲をマスク範囲として探索範囲から除外しながら各境界を検出する処理を繰り返し行い、信頼度の高い境界候補の組合せを各境界として特定することができる。
また、上記した実施形態では、境界毎の探索範囲およびマスク範囲の両方を用いて境界検出を行うこととした。これに対し、境界毎の探索範囲のみを用いて各境界を検出することとしてもよい。あるいは、マスク範囲のみを用い、マスク範囲を除外した断層画像の深さ方向の範囲を解析して各境界を検出するようにしてもよい。
また、上記した実施形態では、Aモード像に基づいて境界候補を検出し、あるいは境界を検出する場合を例示したが、境界候補検出プログラム611や境界検出プログラム613として断層画像(Bモード像)を解析対象とするものを用意しておき、断層画像を解析して境界候補等を検出する構成としてもよい。断層画像を解析対象とする境界候補検出プログラム611等は、例えば、図2(a)等に示す断層画像の横軸方向の位置(測定位置)毎に各境界を検出し、これらの測定位置毎の各境界の境界位置の平均値をそれぞれ算出して出力するものとして用意しておく。あるいは、これに限らず、適宜公知技術を適用してよい。
また、上記した実施形態では、被検者の腹部を測定部位として皮下脂肪厚および腹直筋組織厚を測定する場合について例示したが、測定する部位は腹部に限定されるものではない。例えば、二の腕や太腿等、別の部位の皮下脂肪層や筋肉層の厚みを測定する場合にも同様に適用できる。
また、上記した実施形態では、境界候補特定部563が特定した境界候補の全ての組合せについて信頼度算出処理を行うこととして説明した(例えば図9のステップS11〜S15)。しかし、境界候補の組合せの中に、明らかに不適切な組合せが含まれ得る。例えば、皮下脂肪層と腹直筋組織層との境界である第1の境界と、腹直筋組織層と下層領域との境界である第2の境界との間の厚みである腹直筋組織厚は、人間の最大として想定される長さが15mm程度と考えられる。そこで、図9のステップS12において、組み合わせる境界候補間の距離(厚さ)が、例えば20mm未満を適切組合せ条件(換言すると20mm超を不適切組合せ条件)として、組合せを作成することが可能である。適切組合せ条件を用いて、以降の信頼度算出処理の対象とする組合せを絞ることができるため、多数の境界候補が検出された場合には、演算量を低減することが可能となる。なお、勿論、測定対象とする境界間を腹直筋組織厚とするのではなく、皮下脂肪厚とする場合や、測定する部位を太腿などの別の部位とする場合には、適切組合せ条件を適宜変更設定すればよい。