JP6006191B2 - 単結晶製造装置および単結晶製造方法 - Google Patents

単結晶製造装置および単結晶製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、単結晶製造装置および単結晶製造方法に関し、詳しくは、赤外線を用いて原料を溶融させることにより単結晶を製造する装置および方法に関する。
蛍光体、発光素子、放射線シンチレーターおよび固体レーザー等の機能性酸化物は高融点を有する物が多い。
一般に、このような物質の単結晶は産業的要望からチョクラルスキー法、ブリッジマン法およびEFG法などのるつぼを用いた融液成長法により作成される。
このときのるつぼとしては、高融点金属であるイリジウムが多く用いられる。しかし、イリジウムは非常に高価であるほか、るつぼが変形した際の改鋳にも多大な費用がかかり、デバイスの高価格化の要因となっている。
また、イリジウムは高温で酸化イリジウムとなり揮発する。そのため、イリジウム製るつぼを使用して単結晶を製造する際、酸素分圧を低くしなければならない(例えば、非特許文献1参照)。
なお、特許文献1では、イリジウム製るつぼ及びダイを用いて酸化ガリウム単結晶の融液成長方法を提案している。ただ、酸化ガリウム単結晶の成長には高濃度酸素の存在が必要であり、単結晶の成長過程で酸化イリジウムが生じ、生じたイリジウム酸化が異相となり結晶内に混入し、結晶を汚染してしまう危険性がある。その一方、酸化イリジウムの発生を防止するために、結晶成長中に導入する酸素分圧を低く抑えると、酸化ガリウムが激しく蒸発し、結晶が成長する部分(成長部分)と融液との界面やるつぼ、ダイなどに付着し、単結晶内への異相の混入の原因となる。
酸化ガリウムは高耐圧半導体デバイスとして注目されているが、異相の混入は絶縁破壊等デバイスとしての性能に致命的な欠陥となりうることから、その除去は重要な課題である。
酸化ガリウムに限定されず、機能性高融点酸化物単結晶の製造では、るつぼ金属の保護のため、酸化物単結晶を製造するプロセスであるにも関わらず、低分圧に抑えられた酸素に窒素やアルゴンなどの不活性なガスを多く導入する。このため、結晶成長の際に酸素欠損や異相を生じやすく、製造されたデバイスにおいて材料の有する特性を十分に発揮できているとは言い難い。
るつぼを用いずにこれらの単結晶を作成する方法としては、赤外線ランプによる集中加熱を用いた溶融帯域法(フローティングゾーン法、以降、FZ法とも言う。)が知られている(例えば特許文献2)。
特許文献2に記載の構成は、回転楕円面鏡の一方の焦点に赤外線ランプを配置している。そして、もう一方の焦点には棒状の原料が配置されている。その際、天地方向の天の方向(以降、上方とも言う。)に棒状の原料を配置し、天地方向の地の方向(以降、下方とも言う。)に棒状の種結晶を配置し、その上で、原料と種結晶とを近接させる。そして、赤外線ランプにより照射される赤外線を用いて溶融帯域を形成し、当該溶融帯域を冷却することにより、単結晶を成長させる。この方法では、比較的廉価な赤外線ランプを用いるため、かつ、単結晶製造装置にもかかわらずるつぼを用いないため、単結晶の製造コストを低減させることが可能となる。
FZ法は以下の特徴を有しており、高純度の単結晶の研究目的で多く使用されている。
・るつぼを用いないため、るつぼから単結晶への汚染が無い。
・結晶成長中に導入する雰囲気の自由度が高い。
・集光加熱であるため結晶成長方向に対する温度勾配が大きく、多元素からなる単結晶の合成が容易である。
しかし、FZ法は表面張力のみで融液を支持する浮遊溶融帯域から単結晶を成長させる方法であるため、るつぼを用いた融液成長法に比べて結晶成長工程が不安定である。このため、融液の安定化のために、溶融帯域と原料との界面、そして溶融帯域と種結晶との界面における温度勾配を急峻にすることが記載されており、それを目的とした様々な改良が提案されている(例えば、特許文献3〜4)。
特開2013−124216号公報 特開昭63−274685号公報 特許第2982642号公報 特許第4738966号公報
日本金属学会誌第75巻第1号(2011)13頁右段
特許文献3および4に共通した課題として、溶融帯域と原料との界面、そして溶融帯域と種結晶との界面における温度勾配を急峻にすることが挙げられている。確かに、固液界面の温度勾配を急峻にすることができれば、溶融帯域を不用意に長くせずにすむため、製造される単結晶の品質に加え、溶融帯域の垂れにより下方に配置された種結晶を台無しにするおそれも少なくなる。
しかしながら、上記の単結晶製造方法が万能と言うわけではないことが、本発明者により見出された。本発明者により見出された課題は、以下の通りである。
(課題1)結晶成長の初期段階では小口径の種結晶から単結晶を成長することが多い。その様子を示したのが図1(a)(b)である。仮に、例えば直径1mm以上の大口径の結晶を成長させなければならない場合、小口径の種結晶Sに口径を合わせた溶融帯域Mlを形成する。その直後である結晶成長初期に、更に成長部分Mcの口径を著しく細くして結晶欠陥や転位を除去するいわゆるネッキング工程を施さなければならない。その後、大口径の結晶を成長させるために、急いで結晶径の拡大を図る必要がある。ここで言う「ネッキングMcn」とは、成長させる結晶に対して水平方向に形成するくびれのことである。しかしながら、ネッキング工程を確実に行うことを可能とする構成はいずれの特許文献にも開示がない。そのため、特許文献3〜4では、確実にネッキング工程を施すことは困難と言わざるを得ず、結果として、大口径の良質な単結晶を製造することが困難である。
(課題2)また、本来、単結晶の成長においては、結晶成長部分の温度勾配は急峻であるよりも緩やかであるほうが良質の結晶育成が可能である。ところが、従来のFZ法にて単結晶を成長させる場合、溶融帯域の維持を念頭に置くと、固液界面(結晶成長部分)の温度勾配が急峻とならざるを得ない。そのため、良質な単結晶を成長させようとしても、その品質については自ずと限界が生じる。
上記の課題は、単結晶に求められる品質のレベルが飛躍的に向上していること、および、精密機器に求められる単結晶のサイズが徐々に大きくなっていることから、解決すべき喫緊の課題である。
本発明は、赤外線を用い、かつ、るつぼを用いないFZ法を採用しつつも、小口径から大口径に至るまでの結晶成長における溶融帯域の安定制御を可能とし、産業用途に適した大口径かつ長尺な高品質単結晶を製造可能とする単結晶製造装置および単結晶製造方法を提案することを課題とするものである。
上記の課題を解決すべく、本発明者は鋭意検討を行った。先ほど述べたように、本発明者の調べたところによると、本来、単結晶の成長においては、結晶成長部分の温度勾配は急峻であるよりも緩やかであるほうが良質の結晶育成が可能である。ただ、従来の発想だと、溶融帯域を維持しなければ、溶融帯域が崩れて下方に流れ落ちてしまい、落ちた先にある種結晶が台無しになる。
そこで本発明者は、発想を逆転させ、溶融帯域を維持する必要を無くする手法について思案した。溶融帯域を維持する必要が無くなれば、少なくとも上記の課題1および2を解決できる。
その結果、本発明者は、溶融帯域を維持することに腐心するのではなく、いっそのこと溶融帯域が冷却されて結晶となり、溶融帯域が原料から切り離されても構わないような構成を想到する方が得策なのではないか、という全く新たな発想を着想した。その着想を実現する一つの具体例が、図2(a)である。図2(a)は、後述の実施形態における溶融帯域Mlの内部に対する冷却具合を示す図である。斜め上の方向に配置された赤外線発生手段41から赤外線が照射されるようにする一方、当該赤外線を遮蔽筒51により遮蔽する。斜め上の方向から照射される赤外線を遮蔽することにより、溶融帯域Mlの内部に陰の部分(図中斜線部)が形成される。この陰の部分により、当該溶融帯域Mlを内部からマイルドかつ迅速に冷却するという手法を想到した。
なお、図2(b)には特許文献3と同様に、遮蔽壁を設けつつも赤外線発生手段41を溶融帯域Mlの水平方向に配置する場合を記載しているが、水平方向から赤外線を照射するため、溶融帯域Mlの内部の陰の部分はほぼ形成されない。また、図2(c)には特許文献4と同様に遮蔽筒51を設けない場合を記載しているが、原料自体が赤外線を遮蔽することにより溶融帯域Mlの内部はある程度冷却される。しかし、遮蔽筒51を設けていないため、溶融帯域Mlの内部の陰の部分の大きさは常にほぼ一定であり、当該溶融帯域Mlの冷却具合は調節されない。
以上の知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
原料把持部を天地方向の天の位置、種結晶把持部を天地方向の地の位置に配置させた上で両者を近接させることにより、前記原料把持部に把持された原料と前記種結晶把持部に把持された種結晶とを近接させ、加熱部により溶融帯域を形成し、当該溶融帯域を冷却することにより単結晶を製造する単結晶製造装置において、
前記加熱部は、赤外線発生手段を複数有し、かつ、反射手段として複数の回転楕円鏡を有し、当該回転楕円鏡は共通の焦点を有しつつ、もう一方の焦点は当該共通の焦点から見て天地方向の天の方向に存在するとともに、前記赤外線発生手段は、当該もう一方の焦点に配置されており、
天地方向に移動自在な赤外線の遮蔽筒を備え、かつ、前記原料把持部にて把持される原料における少なくとも一部を当該遮蔽筒によって水平方向に包囲自在であり、かつ、当該遮蔽筒が、前記赤外線発生手段から照射される赤外線を遮蔽することにより溶融帯域の内部に陰の部分を形成し、当該溶融帯域の冷却具合および形状を調節する冷却具合調節部を有する、単結晶製造装置である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記回転楕円鏡の傾斜角は、前記回転楕円鏡の中心軸を水平とした配置から天地方向の地の方向に向かって10度以上20度以下である。
本発明の第3の態様は、第1またま第2の態様に記載の発明において、
前記赤外線発生手段が、2.5kW以上のハロゲンランプ、または、デフォーカス自在な配置のキセノンアークランプである。
本発明の第4の態様は、第1ないし第3のいずれかの態様に記載の発明において、
製造される単結晶の直径は45mmよりも大きい。
本発明の第5の態様は、第1ないし第4のいずれかの態様に記載の発明において、
前記遮蔽筒の下端部が、天地方向において前記共通の焦点と前記もう一方の焦点との間に存在するように、前記遮蔽筒は配置される。
本発明の第6の態様は、
原料把持部を天地方向の天の位置、種結晶把持部を天地方向の地の位置に配置させた上で両者を近接させることにより、前記原料把持部に把持された原料と前記種結晶把持部に把持された種結晶とを近接させ、加熱部により溶融帯域を形成し、当該溶融帯域を冷却することにより単結晶を製造する単結晶製造方法において、
前記加熱部は、赤外線発生手段を複数有し、かつ、反射手段として複数の回転楕円鏡を有し、当該回転楕円鏡は共通の焦点を有しつつ、もう一方の焦点は当該共通の焦点から見て天地方向の天の方向に存在するとともに、前記赤外線発生手段は、当該もう一方の焦点に配置されており、
単結晶を製造する際に、前記原料把持部にて把持される原料における少なくとも一部を水平方向に包囲するような位置に赤外線の遮蔽筒を配置し、前記赤外線発生手段から照射される赤外線を遮蔽することにより溶融帯域の内部に陰の部分を形成し、当該溶融帯域の冷却具合および形状を調節してネッキングを形成する、単結晶製造方法である。
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の発明において、
前記回転楕円鏡の傾斜角は、前記回転楕円鏡の中心軸を水平とした配置から天地方向の地の方向に向かって10度以上20度以下である。
本発明の第8の態様は、第6または第7の態様に記載の発明において、
前記赤外線発生手段が、2.5kW以上のハロゲンランプ、または、デフォーカス自在な配置のキセノンアークランプである。
本発明の第9の態様は、第6ないし第8のいずれかの態様に記載の発明において、
製造される単結晶の直径は45mmよりも大きい。
本発明の第10の態様は、第6ないし第9のいずれかの態様に記載の発明において、
溶融帯域の冷却具合を調節して原料と溶融帯域との接触を解き、当該溶融帯域または当該溶融帯域が冷却されて成長した結晶に対し、溶融された原料の液滴を供給する。
本発明の第11の態様は、第6ないし第10のいずれかの態様に記載の発明において、
前記遮蔽筒の下端部を、天地方向において前記共通の焦点と前記もう一方の焦点との間に存在するように、前記遮蔽筒を配置する。
本発明によれば、赤外線を用い、かつ、るつぼを用いないFZ法を採用しつつも、小口径から大口径に至るまでの結晶成長における溶融帯域の安定制御を可能とし、産業用途に適した大口径かつ長尺な高品質単結晶を製造可能とする。
本実施形態における単結晶製造の様子を示す概略説明図である。 溶融帯域の内部に対する冷却具合を示す図である。 本実施形態における単結晶製造装置の概略断面図である。 本実施形態における単結晶製造装置の内部の概略平面図である。 本実施形態における単結晶製造方法の手順を示したフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、次の順序で説明を行う。
1.単結晶製造装置
1−A)単結晶製造装置の概要
1−B)原料把持部
1−C)種結晶把持部
1−D)加熱部
1−E)冷却具合調節部
2.単結晶製造方法
2−A)準備工程
2−B)加熱工程
2−C)単結晶成長工程
3.実施の形態による効果
4.先行技術文献と本発明との相違
5.変形例等
なお、以下に記載が無い内容については、FZ法による単結晶製造装置およびその方法に関する技術における公知の構成(例えば特許文献2〜4に記載の構成)を適宜採用しても構わない。
<1.単結晶製造装置>
1−A)単結晶製造装置の概要
本実施形態における単結晶製造装置1の基本的構成について、図3および図4を用いて説明する。図3は、本実施形態における単結晶製造装置1の概略断面図である。図4は、本実施形態における単結晶製造装置1の内部の概略平面図であり、種結晶把持部から上方へと見上げた時の図である。
本実施形態における単結晶製造装置1は、主に、以下の構成を有する。
・天地方向の天の位置に配置され、天地方向に移動自在かつ天地方向を中心軸として回転自在な原料把持部2
・天地方向の地の位置に配置され、天地方向に移動自在かつ天地方向を中心軸として回転自在な種結晶把持部3
・原料把持部2に把持された原料Mを加熱して原料Mを溶融させる加熱部4
・天地方向に移動自在な赤外線の遮蔽筒51を備え、原料把持部2にて把持される原料Mにおける少なくとも一部を当該遮蔽筒51によって水平方向に包囲自在であり、溶融帯域Mlの内部に陰の部分を形成し、当該溶融帯域Mlの冷却具合を調節する冷却具合調節部5
なお、単結晶を成長させる結晶成長炉は石英炉心管11で密閉されており、下部シャフトフランジ12、上部シャフトフランジ13とともに炉内の成長雰囲気を外界から隔離している。炉内には雰囲気導入口14から適切な組成の雰囲気を導入し、雰囲気排出口15から排出し、炉内の雰囲気成分ならびに圧力を適切に保つことができる。
なお、上記の構成以外にも、単結晶製造装置1として用いられる構成が存在する。ただ、当該構成は、上記の特許文献2〜4に示されるような公知の構成を適宜用いても構わない。そのため、本実施形態においては、その説明を省略する。
以下、上記で列挙した各構成について主に説明する。
1−B)原料把持部2
本実施形態における原料把持部2は、天地方向の天の位置に配置されており、原料Mを把持自在な構成を有する。なお、本明細書における「原料を把持」は、その名の通り原料Mをしっかりと掴むことを意味し、るつぼに原料Mを単に収納することとは全く異なる。そのため、「原料把持部」という表現により、るつぼを用いないことは一義的に導き出される。本実施形態の原料把持部2は、原料Mを把持する「原料ホルダー21」と原料ホルダー21の回転軸および上下移動軸となる「上部シャフト22」とで構成されている。なお、原料Mの形状としては棒状のもの(例えば直径20mm、長さ200mm)など、公知のものを用いても構わない。ただ、先に述べたように、本発明の原料ホルダー21は、るつぼとは全く異なる。
また、原料ホルダー21の素材としては、公知のものを用いても構わない。例えば、耐火材を用いても構わない。耐火材としては、アルミナ、ジルコニアおよびシリカ、さらにはそれらの混合物から構成されているものを用いても構わない。
そして、原料把持部2は、天地方向に移動自在かつ天地方向を中心軸として回転自在な構成を有している。本実施形態においては、上部シャフト22が中心軸となる。なお、原料把持部2を駆動する駆動源の図示は省略する。
1−C)種結晶把持部3
本実施形態における種結晶把持部3は、天地方向の地の位置に配置されており、種結晶Sを把持自在な構成を有し、例えば種結晶ホルダー31と下部シャフト32とを有する。なお、種結晶把持部3は、公知の構成を採用しても構わない。
なお、本実施形態における種結晶Sの形状は、最終的に良質な単結晶を製造可能なものならば任意で構わない。本実施形態においては、従来と同様、棒状の種結晶Sを用いる場合について述べる。また、種結晶Sの結晶構造としては単結晶がもちろん好ましいが、単結晶が入手できない場合には、原材料と同質のセラミックスや組成や結晶構造が目的の単結晶に類似している単結晶を用いても構わない。
なお、種結晶把持部3も、天地方向に移動自在かつ天地方向を中心軸として回転自在な構成を有している。なお、種結晶把持部3を駆動する駆動源の図示は省略する。
なお、本実施形態においては、原料把持部2も種結晶把持部3も共に天地方向に移動自在かつ天地方向を中心軸として回転自在な例を挙げた。その一方、原料把持部2および種結晶把持部3のうちどちらか一方が天地方向に移動自在な構成を採用しても構わない。FZ法において単結晶を製造するには、原料Mと種結晶Sを接触させた後に両者を離間する必要がある。そのため、一方が天地方向に移動自在であれば済む。ただ、良質な単結晶を欠陥なく製造するためには、原料把持部2も種結晶把持部3も共に天地方向に移動自在であるのが非常に好ましい。また、両者とも天地方向を中心軸として回転自在でなくとも構わないが、同じく、両者とも、良質な単結晶を欠陥なく製造するためには回転自在な構成を有するのが好ましい。
その他の構成については、原料把持部2と同様の構成を適宜採用しても構わない。
1−D)加熱部4
本実施形態における加熱部4は、赤外線発生手段41a〜dを有し、原料把持部2に把持された原料Mを加熱して原料Mを溶融させる機能を有する。また、本実施形態における加熱部4は、赤外線発生手段41の他に、赤外線を原料Mへと反射して照射効率を向上させるための反射手段42a〜dも有している。
図3に示すように、まず、反射手段42としての回転楕円鏡42a,42bは、共通の焦点F0を有している。それに加え、もう一方の焦点として、回転楕円鏡42aは焦点F1を、焦点F0の上方に有している。同様に、回転楕円鏡42bは焦点F2を、焦点F0の上方に有している。なお、ここでは赤外線発生手段41a〜dのうち41a,41b、および、回転楕円鏡42a〜dのうち42a,42bを例にとって説明する。以降、まとめて称するときには赤外線発生手段41、回転楕円鏡42と言う。また、本実施形態においては焦点F1〜4が存在するが、代表してF1を記載する。
焦点F1およびF2にはそれぞれ赤外線発生手段41a,41bが配置されている。赤外線加熱発生手段そのものは、公知の構成を採用しても構わない。例えば、ハロゲンランプもしくはキセノンアークランプあるいはその併用で構わない。回転楕円鏡42の共通の焦点F0が被加熱部分となり、この被加熱部分に、溶融した原料Mと種結晶Sとが接触することにより形成される溶融帯域Mlを配置するような構成を採用する。そして、溶融帯域Mlが被加熱部分からずれるように、原料把持部2と種結晶把持部3とを互いに離間させることにより溶融帯域Mlを冷却させ、単結晶を成長させる。
また、本実施形態における特徴の一つに、赤外線発生手段41を、溶融帯域Mlよりも天地方向の天の位置(上方)に配置していることがある。別の言い方をすると、各回転楕円鏡42の共通の焦点F0よりも、各赤外線発生手段41が上方に配置されるように赤外線発生手段41および回転楕円鏡42を構成することにより、以下の効果を奏する。
まず、原料Mの下端と種結晶Sとを接触させ、赤外線を用いた加熱により溶融帯域Mlを形成する。この際、種結晶Sも溶融している。その後、原料Mと種結晶Sと間の距離を広げつつ、溶融帯域Mlを赤外線の集光部分(F0)からずらすことにより、これを冷却する。ただ、上方に原料把持部2を配置する関係上、溶融帯域Mlから単結晶へと成長する成長部分Mc(以降、単結晶についてもMcと呼ぶ場合がある。)が下方に移動するように、原料把持部2および種結晶把持部3を相対移動させる。
もし、赤外線発生手段41を、溶融帯域Mlの水平位置に配置していた場合、原料Mの固体部分Msの側面を近距離から赤外線により照射される。そのため、赤外線発生手段41と最も近い部分の温度が著しく高くなってしまう。これは別の言い方をすると、焦点F0から溶融帯域Mlが外れると、著しく高い温度から一気に温度が低下してしまうことになる。そうなると、溶融帯域Mlひいては成長部分Mcは一気に冷却されてしまい、ひいては単結晶の成長において温度勾配が急峻となってしまう。
しかしながら本実施形態のように、赤外線発生手段41を溶融帯域Mlよりも上方に配置すると、原料Mの固体部分Msの側面は近距離からの照射ではなくなる。その結果、焦点F0から溶融帯域Mlが外れても、ほどほどに高い温度から温度が低下してしまう程度に温度勾配を抑えることができる。そのため、単結晶の成長において温度勾配が緩くなる。
以下、温度勾配を緩めることの有効性について説明する。
本来、製造の際の困難性を度外視すれば、良質な単結晶を製造するためには、原料Mにおける溶融帯域Mlを適切に維持する必要がある。また、原料Mの内部における急峻な温度勾配は、結晶格子の歪みを招来するなど不具合が生じるおそれが増大するため、本来は好ましくない。
しかしながら、従来だと、特許文献2〜4に記載されているように、温度勾配を急峻にしないと、溶融帯域Mlが膨張したり長くなってしまったりして種結晶Sまで垂れが生じてしまう。そのため、製造の際の困難性を考慮に入れると、原料Mの内部において急峻な温度勾配を設けざるを得なかったという事情がある。
その一方、本実施形態のように、そもそも溶融帯域Mlを維持することを必須でなくしてしまえば、温度勾配を急峻にする必然性がなくなる。そうなると、単結晶の質に着目し、原料Mの内部における温度勾配を緩め、原料Mにおける溶融帯域Mlを適切に維持することが可能となる。この温度勾配を緩めるための具体的な構成の一つが、上記のような赤外線発生手段41の配置である。この配置により、原料Mの内部における温度勾配を緩めることが可能となり、原料Mにおける溶融帯域Mlを適切に制御できる。ひいては、良質な単結晶を製造することが可能となる。
ちなみに、赤外線発生手段41の具体的な配置としては、原料Mの溶融帯域Mlの水平方向から見て10度〜20度上方の位置に赤外線発生手段41を配置するのが好ましい。
10度以上ならば、溶融帯域Mlが上方に移動しつつ単結晶が成長する際に、溶融帯域Mlをある程度加熱し続けることが可能となり、温度勾配が緩くなる。その結果、結晶界面および小傾角粒界の発生が抑制され、結晶性が向上する。
20度以下ならば、溶融帯域Mlに対して適度に赤外線を集中することが可能となり、溶融帯域Mlを適切に形成および制御することが可能となる。
また、回転楕円鏡42の傾斜角は、赤外線発生手段41の配置と同じく回転楕円鏡42の中心軸を水平とした配置から天地方向の地の方向に向かって10度〜20度であるのが好ましい。10度以上ならば、原料Mを溶融する際に原料Mに対する赤外線の直接照射を十分回避することが可能となり、温度勾配を緩やかにすることが可能となる。20度以下ならば、後述する冷却具合調節部5によって赤外線が遮蔽され過ぎることがなくなる。別の言い方をすると、溶融帯域の内部における陰の部分を過剰に形成しなくて済む。
また、赤外線発生手段41が、2.5kW以上のハロゲンランプ、または、デフォーカス自在な配置のキセノンアークランプであるのが好ましい。大出力でありながらも、原料Mに対し集光を甘くすることにより、温度勾配を緩やかにすることが可能となるためである。なお、赤外線発生手段41における反射手段42を溶融帯域Mlの中心からデフォーカスさせるための機構は不図示としているが、当該機構を単結晶製造装置1に設けてももちろん構わない。
なお、本実施形態における単結晶製造装置1の内部の概略平面図である図4に示すように、本実施形態においては、反射手段42として4つの回転楕円鏡42a〜dを設けている。そして、各々の回転楕円鏡42に対応する赤外線発生手段41を、溶融帯域Mlよりも天地方向の天の位置、かつ、回転楕円鏡42の一方(上方)の焦点位置(F1)に配置している。もう一方(下方)の焦点位置(F0)には溶融帯域Mlが存在している。ここでは4つの回転楕円鏡42および赤外線発生手段41を設けているが、もちろんそれ以外の数の回転楕円鏡42および赤外線発生手段41を設けても構わない。なお、赤外線発生手段41に加え、レーザー光発生手段を、回転楕円鏡42の下方に設けても構わない。レーザー光発生手段により、原料Mに対して、赤外線に加え、レーザー光を照射しても構わない。ターゲットスコープ(図に記載せず)を用い、溶融帯域Mlに析出した固相に対してレーザー光を集中的に照射することで、原料Mを部分的に加熱し、溶融帯域Mlに固相を再度溶け込ませることも可能となる。これにより、安定した単結晶の成長が可能となる。このため、レーザー光発生手段は、回転楕円鏡42と同様に、溶融帯域Mlに向けて傾斜角をつけて配置しても構わない。また、レーザー光発生手段として、上下、左右および傾斜角度の任意制御が可能な構造を採用しても構わない。ただ、レーザー光発生手段を備えた装置は高額となるため、基本的には赤外線発生手段41のみが備えられており、オプションとしてレーザー光発生手段を備え付けることが可能な単結晶製造装置1とすることが好ましい。
1−E)冷却具合調節部5
本実施形態の大きな特徴点の一つとしては、冷却具合調節部5を設けていることがある。本実施形態における冷却具合調節部5は、天地方向に移動自在な赤外線の遮蔽筒51を備え、かつ、原料把持部2にて把持される原料Mにおける少なくとも一部を遮蔽筒51によって水平方向に包囲自在であり、かつ、当該遮蔽筒51が、赤外線発生手段41から放射される赤外線を遮蔽することにより溶融帯域Mlの内部に陰の部分を形成し、当該溶融帯域の冷却具合を調節するものである。冷却具合調節部5の存在のおかげで、溶融帯域Mlの内部からマイルドかつ迅速に冷却することが可能となる。その結果、溶融した原料の供給量を調節することが可能となり、マイルドな加熱および冷却を行うことの障害となっていた溶融帯域Mlの維持に固執する必要がなくなる。
なお、ここで言う「冷却具合」とは、「冷却度合い」と「冷却位置」の両方の状況を包括した表現である。
上記の利点に加え、冷却具合調節部5の存在により、溶融帯域Mlと原料Mとの間の接触を解きやすくなるというメリットもある。以下、先にも挙げた図2を用いて説明する。図2は、本実施形態における冷却具合調節部5により溶融帯域Mlと原料Mとの間の接触を解きやすくする様子を示す概略説明図でもある。
図2(b)には、冷却具合調節部5が存在するものの溶融帯域Mlの水平方向に赤外線発生手段41が存在する場合(特許文献3の場合)について例示している。この場合、溶融帯域Mlの水平方向においては赤外線を遮るものが無いので、溶融帯域Mlの内部における低温部分(斜線部分)はほとんど存在しなくなる。また、図2(c)には、斜め上の方向からの赤外線の照射を行っているものの冷却具合調節部5が存在しない場合(特許文献4の場合)について例示している。この場合、赤外線を遮るものが無いので、溶融帯域Mlの内部における低温部分(斜線部分)は原料Ms自身の陰の部分のみとなる。いずれも、溶融帯域Mlの維持を必須条件としていた従来技術にとっては好ましい状態である。
その一方、図2(a)に示す本実施形態では、斜め上の方向から赤外線を照射しつつも冷却具合調節部5が存在しているため、溶融帯域Mlの内部における低温部分が著しく大きくなる。従来技術にとっては全く好ましくない状態である。しかしながら、先に述べたように、本実施形態においては溶融帯域Mlの維持に腐心する必要はない。むしろ、成長部分Mcの形状を操作する際に必要あれば、溶融帯域Mlと原料との間の接触を積極的に解き、接触が解かれた後の溶融帯域Mlまたは冷却されて成長した成長部分Mcに対して溶融した原料融液の液滴を供給しても構わない。冷却具合調節部5が存在することにより、低温部分が大きくなっていることから、溶融帯域Mlと原料Mとの間の接触を解きやすい状態となっている。冷却具合調節部5は、結晶を成長させる方法のバリエーションを増やすのに一役買っている。これは従来技術には存在しない技術的思想である。
しかも、本実施形態における冷却具合調節部5のおかげで、1−D)加熱部4にて説明したように、斜め上の方向から赤外線が照射されるようにし、溶融帯域Mlの内部に陰の部分を意図的に形成するという手法ならば以下の効果が得られる。図1(c)に示すように、溶融帯域Mlが崩れる前に迅速に、溶融帯域Mlの大半を一旦冷却しつつ、当該溶融帯域Mlまたはそれが成長した成長部分Mcに対して溶融原料融液の液滴を自重(図中矢印)にて供給することにより、さらに結晶を成長させることが可能になる。
また、特許文献3や4のように温度勾配を急峻にするのとは反対に、斜め上の方向からの赤外線の照射によって赤外線発生手段41と焦点F0に存在する溶融帯域Mlとの間の距離に余裕をもたせてマイルドに原料を加熱することができ、しかも遮蔽筒51によって陰を形成することにより溶融帯域Mlの内部からマイルドかつ迅速に冷却することが可能となり、結果的に単結晶の質が著しく向上する。
それに加え、遮蔽筒51の位置を調節することにより溶融帯域Mlの内部の陰の部分の位置(冷却位置)および大きさ(冷却度合い)を調節することが可能となり、ひいては溶融帯域Mlを構成する溶融原料の量を迅速に適量とすることが可能となる。こうすることにより、下方の種結晶Sへの溶融帯域Mlの垂れを制御可能となり、しかも、溶融原料の量を適量とすることにより溶融帯域Mlの形状も容易に操作可能となり、課題1で挙げたようなネッキングMcnを確実に形成することが可能となる。
まとめると、上記の構成を採用することにより、溶融帯域Mlを維持せずとも、溶融帯域Mlを安定的に制御することが可能となる。そうなると、溶融帯域Mlを維持することに腐心する必要が無くなる。その結果、固液界面の温度勾配を急峻にする必要がなくなる。つまり、従来のFZ法における制約を解除することが可能となる。そのような知見に基づき、斜め上の方向から赤外線が照射されるようにし、溶融帯域Mlの内部に陰の部分を意図的に形成するという構成を、本発明者は採用した。これにより、原料に対する近距離からの赤外線照射を避けて成長部分Mcへの過剰な加熱を防ぐことができる。しかも、あるときには遮蔽筒51によって陰の位置となる冷却位置を設定した上で陰を大きく形成して固液界面の温度勾配を緩くする「冷却傾向」を作り出し、またあるときには、遮蔽筒51により陰が殆ど形成されないように配置して冷却度合いをほぼゼロにした上で、溶融帯域Mlを原料Mから分離した後に原料融液の液滴を自重にて供給する「過熱傾向」をも作り出すことができる。
仮に、溶融帯域Mlを原料Mから分離する際に、予め冷却傾向を作り出して溶融帯域Mlを冷却してある程度固化していないと、溶融帯域Mlにおいて液滴が大きくなりすぎ、溶融原料の液滴の落下の衝撃で、溶融帯域Mlの一部が垂れてしまうおそれもある。その一方、本実施形態における冷却具合調節部5のおかげで、上記の状況が生じないように陰の部分を作ることが可能となる。
そして、それに伴い、溶融帯域の形状を適切に保ったままネッキングMcnの形成を可能とできる。
つまり、本実施形態においては、加熱部4および冷却具合調節部5のおかげで、FZ法を用いながらも、「第1のパラメータである溶融帯域Mlおよび原料M(融液)の温度」そして「第2のパラメータである溶融帯域の形状」を個別に制御し得る。これも、従来技術には存在しない技術的思想である。
上記のように、2つのパラメータを個別に制御し得ることは、FZ法において単結晶を製造させる際の原料Mから単結晶Mcへの組成の変化という観点から見ても、極めて好ましい。
先にも述べたように、FZ法を用いた単結晶の製造においては、原料Mと種結晶Sとを接触させた上で加熱し、原料Mを融解させて溶融帯域Mlを形成する。溶融帯域Mlの段階で、雰囲気中のガスと原料Mとが反応して単結晶Mcを構成するべき化合物が生成する。そして、溶融帯域Mlが冷却されることにより当該化合物が析出し、成長部分(単結晶)Mcが形成される。そのため、原料Mを溶融帯域Mlへと変化させるにせよ、溶融帯域Mlを成長部分Mcへと変化させるにせよ、化学反応的な観点から見ると、温度変化をマイルドにするのが非常に好ましい。本実施形態の構成を採用することにより、溶融帯域Mlの冷却具合を調節することが可能となり、第1のパラメータである溶融帯域Mlおよび原料M(融液)の温度を制御することが可能となる。
しかも、それに加え、第1のパラメータを制御することにより、最終的に得るべき成長部分Mcの組成を所望なものとなるように変化させることも可能である。例えば、単結晶Mcを構成するべき化合物を生成する際に、冷却具合を調節することにより化学反応の進行度合い(例えば、どの程度酸化されているとか等)を調節することも可能となる。変化度合いを調節することにより、成長部分Mcの融点も変化する。この融点の変化も考慮に入れた上で、上記の加熱部4および冷却具合調節部5を用い、第1のパラメータ、更には第2のパラメータである溶融帯域の形状を調節することも可能となる。
以下、冷却具合調節部5の具体的な構成について説明する。
図3に示すように、溶融帯域Mlの上方にある原料Mの固体部分Msの周囲には遮蔽筒51が配置される。遮蔽筒51は上下方向への駆動機構52に連結している。
そして、遮蔽筒51は、天地方向において焦点F0と焦点F1との間に配置されるのが好ましい。ここで言う「焦点F0と焦点F1との間」とは、遮蔽筒51の下端部が焦点F0と焦点F1との間に存在することを指す。このような配置にすることにより、溶融帯域Mlにおける陰の部分を過度に形成せずに済む点で好ましい。また、この場合、焦点F0と焦点F1とを結ぶ直線よりも上方に遮蔽筒51の下端部が配置されるようにするのが、赤外線発生手段41からの直接照射を遮らずに加熱効率を向上させられる点で好ましい。なお、このことは、遮蔽筒51が焦点F0と焦点F1との間でしか遮蔽筒51が物理的に移動できないことを指すものではない。また、遮蔽筒51の下端部が焦点F0より下方に存在した状態で赤外線の照射を行うことを妨げるものではない。
また、冷却具合調節部5は、原料把持部2に対して相対的に、天地方向へと移動可能な構成を有している。この構成を採用する理由としては3つの理由がある。
1つ目の理由としては、以下の通りである。まず、原料把持部2に把持された棒状の原料Mは、加熱部4により溶融し、溶融帯域Mlを形成する。そして、原料把持部2と種結晶把持部3との間の距離が大きくなるように両者を移動させることにより、溶融帯域Mlから単結晶Mcが成長する。単結晶Mcが続々と成長していくため、原料Mの固体部分Msは徐々に減っていく。そうなると、原料Mの天地方向の高さは徐々に減少することになる。もし、冷却具合調節部5が原料把持部2に対して相対的に移動できないと、単結晶Mcの成長が進むと、原料Mが遮蔽筒51に完全に隠れてしまい、原料Mの溶融を行うことができなくなってしまう。そのため、冷却具合調節部5は、原料把持部2に対して相対的に移動可能な構成を有する。
2つ目の理由としては、溶融帯域Mlへの溶融原料の供給量の制御のためであり、ひいては溶融帯域Mlを安定して制御するためである。もちろん、溶融帯域Mlを維持することとは意味が異なり、溶融帯域Mlと原料Mとの接触を解いても構わない。ここで言う制御には、接触を解いた後、溶融帯域Mlが下方に垂れ落ちないように、溶融した原料Mの供給量を制御することも含まれるし、原料Mとの接触が解かれた溶融帯域Mlまたは当該溶融帯域Mlが冷却されて成長した結晶に対し、引き続き結晶を成長させるべく溶融した原料融液の液滴を供給する際の供給量を制御することも含まれる。
3つ目の理由としては、先に述べた溶融帯域Mlと原料との間の切り離しにおいて、溶融帯域Mlにおいてどの場所で切り離すかを調節するためである。こうすることにより、切り離す際の溶融帯域Mlの形状を所望のものとすることが可能となる。そうなると、結晶を成長させる方法のバリエーションも増えるし、結晶を成長させる際の形状操作の自由度が増大する。
なお、上記の2つ目の理由と3つ目の理由の根幹には、斜め上の方向から赤外線が照射されるようにし、溶融帯域Mlの内部に陰の部分を意図的に形成する際に、陰の部分の大きさや形状を操作することにより、溶融帯域Ml(ひいては成長部分)の形状を任意に操作できることがある。
もちろん、上記以外の構成であっても、単結晶製造装置1という用途に応じて適宜採用しても構わない。
<2.単結晶製造方法>
次に、本実施形態における単結晶製造装置1の操作手順について、図5を用いて説明する。図5は、本実施形態における単結晶製造方法の手順を示したフローチャートである。なお、以下の工程の内容は、<1.単結晶製造装置1>にて説明した内容と重複する部分もある。そのため、以下に記載が無い内容については、<1.単結晶製造装置1>にて説明した通りである。また、以下に記載が無い内容については、特許文献2〜4に記載の技術や公知の技術を適宜採用しても構わない。
また、以下の工程においては、発明を理解しやすくするために、単結晶製造装置1の各部または各手段を具体化したものについて述べる。もちろん、本発明は各部または各手段を具体化したものに限定されることはない。
2−A)準備工程
まず、単結晶製造装置1に必要な各構成を、<1.単結晶製造装置1>にて説明したように配置する。また、上方に設けられた原料把持部2に棒状の原料Mを係合させ、下方に設けられた種結晶把持部3に棒状の種結晶Sを把持させる。つまり、原料Mと種結晶Sは互いに対向した配置となっている。そして、原料把持部2と種結晶把持部3とを近接させることにより、原料把持部2に把持された原料Mと種結晶把持部3に把持された種結晶Sとを近接させる。
2−B)加熱工程
次に、本工程においては、赤外線発生手段41から発生させた赤外線を、原料Mに対して直接、および、回転楕円鏡42により反射した上で原料Mに照射する。そうして、直接光および回転楕円鏡42により集光された加熱光により、種結晶Sと対向する部分であって棒状の原料Mの下端を溶融する。その溶融部分に、多少溶融した種結晶Sの上端を接触させることで溶融帯域Mlが形成される。
2−C)単結晶成長工程
本工程では、溶融帯域Mlから単結晶を成長させる。本工程においては、天地方向において焦点F0と焦点F1との間の位置であって、原料把持部2にて把持される原料Mにおける少なくとも一部を水平方向に包囲するような位置に遮蔽筒51を配置し、赤外線発生手段41から照射される赤外線を遮蔽することにより溶融帯域Mlの内部に陰の部分を形成し、当該溶融帯域Mlの冷却具合を調節してネッキングMcnを形成する。
具体的に言うと、種結晶把持部3における下部シャフト32を下降させる。こうすることにより、溶融帯域Mlが下方へと引き下げられる。しかし、溶融帯域Mlの上方(成長部分Mc)は赤外線照射の焦点から徐々に外れて行き、成長部分Mcの温度は緩やかに下降する。
ネッキングMcnを形成自在な構成を採用するということは、FZ法において重大な意味を持つ。特に、高品質かつ大口径の単結晶Mcを製造する場合には、ネッキングMcnを形成自在な構成を採用するということは、極めて重大な意味を持つ。
まず、FZ法を採用することにより、るつぼを用いないで済む。そのため、不純物の混入の度合いを可能な限り減少させることができる。しかも、単結晶Mcを形成する際に必要なガスの導入も容易に行うことができる。そのため、化学的に高純度な単結晶の製造が可能となる。
それに加え、本発明の課題にて述べたように、ネッキングMcnの形成工程は、結晶成長初期に、更に成長部分Mcの口径を著しく細くして結晶欠陥や転位を除去する役割を有する。
つまり、化学的に高純度な単結晶の製造が可能なFZ法に対し、ネッキングMcnの形成を行うことは、効果を上乗せする形で、極めて高純度な単結晶を製造することが可能となり、FZ法の持ち味を十二分に引き出すことが可能となる。
本実施形態の構成を採用すれば、第1のパラメータである温度、そして第2のパラメータである溶融帯域Mlの形状、という2つのパラメータを調節することが可能となるため、ネッキングMcnを比較的容易に形成することが可能となる。
ただ、本実施形態の構成がもたらす効果はそれだけにとどまらない。
ネッキングMcnを形成した後、大口径の単結晶Mcを製造する場合、溶融帯域Mlの径を大きくしなければならない。従来だと、溶融帯域Mlの径を急激に大きくし過ぎると、全てが液状の溶融帯域Mlの形状が崩れて種結晶Sに融液が垂れてしまう。一方、溶融帯域Mlの径の拡大があまりに遅すぎると、大口径にする途中の成長部分Mcが無駄になってしまう。
ところが、本実施形態ならば、まず、原料の固体部分Msから溶融帯域Mlに供給される溶融原料の量を、加熱部4および冷却具合調節部5によって調節することが可能である。さらに、溶融帯域Mlが垂れないように、溶融帯域Mlの内部に陰を作って溶融帯域Mlを冷却し、溶融帯域Mlを垂れにくくすることも可能である。
このように、本実施形態ならば、ネッキングMcnの形成を比較的容易に行えることに加え、その後の大口径化も比較的容易に行うことが可能となる。しかも、先に述べたように、FZ法と本実施形態の構成とのおかげで、極めて高純度な単結晶を製造することが可能となる。
話を元に戻すと、原料Mにおいては、溶融帯域Mlから次々と単結晶Mcが成長していくため、新たな溶融帯域Mlを形成する必要がある。そのため、棒状の原料Mにおいて溶融帯域Mlの上方にある固体部分Msを、赤外線の集光部分へと次々に移動させる必要がある。そのため、原料把持部2における上部シャフト22を下降させる。しかし、この下降スピードは、溶融帯域Mlから単結晶を次々と成長させていかなければならない関係上、種結晶把持部3の下部シャフト32よりも小さくする。こうして、下方の種結晶把持部3(すなわち種結晶S)と上方の原料把持部2(すなわち原料Mの固体部分Ms)との距離は徐々に開いていく。本明細書ではこのことを「離間」と呼んでいる。
なお、棒状の原料Mが下方へと移動する関係上、遮蔽筒51もそれとともに下方へと移動させる。但し、冷却具合調節部5の下降スピードは、原料把持部2の上部シャフト22の下降スピードと一致させる必要はない。溶融帯域Mlが所望の状態となるように、固体部分Msから溶融帯域Mlへの溶融した原料の供給量を適宜調整しながら、冷却具合調節部5の下降スピードを調整すれば良い。
ところで、遮蔽筒51と原料把持部2の上下移動は、共に連動させても構わない。また、陰の作り具合を一定にするために、両者を相対的に移動させても構わない。
これに伴い、<1.単結晶製造装置1>に関する内容であるが、種結晶把持部3、原料把持部2および冷却具合調節部5の上下移動およびそれらのスピードを制御部(不図示)により制御しても良い。
本工程においては、単結晶の品質向上のために、先に述べたネッキングMcnを成長部分に対して形成する。
ネッキングMcnを行うために、まず、図1(a)に示すように、小口径の種結晶に口径を合わせるように溶融帯域Mlを形成する。この際、冷却具合調節部5は、固体部分Msからの溶融原料の供給量をほどほどに抑えるべく、比較的下方へと移動させ、溶融帯域Mlの内部に陰の部分を大きく形成する。
次に、図1(b)に示すように、ネッキングMcnを形成し、更に成長部分の口径を著しく細くして結晶欠陥や転位を除去する。この際、冷却具合調節部5は、固体部分Msからの溶融原料の供給量を可能な限り抑えるべく、ネッキングMcnを形成する箇所のほぼ水平位置ないしそのわずか上方の位置に至るくらい、下方へと移動させておく。そして、その直後、大口径(直径1mm以上、好ましくは45mmより大きい径、さらに好ましくは50mm以上)の結晶を成長させるために、冷却具合調節部5を急いで上方へと移動させ、溶融帯域Mlの内部に形成される陰の部分を小さくし、溶融原料の供給量を一気に増大させる。
なお、その後、図1(c)に示すように、溶融帯域Mlと原料Mの固体部分Msとの間の接触を解き、溶融帯域Mlまたは溶融帯域Mlが冷却されて成長した結晶に対し、液滴として溶融原料を供給し手も構わない。つまり、溶融帯域Mlを無理に維持する必要はない。そして、所望の形状へと結晶を成長させる。
以上の工程を行うことにより、溶融帯域Mlにおける成長部分Mcが冷却され、例えば直径1mm以上の大口径の単結晶が形成可能である。そして、所定の量の単結晶が形成されれば、適宜必要な作業を行いつつ、単結晶の製造を終了する。
<3.実施の形態による効果>
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
まず、従来だと、赤外線ランプを使用するFZ法では「溶融帯域Mlからの垂れ」が生じるおそれがあることが課題となっていた。そして、この垂れを生じさせないようにするために、溶融帯域と原料との界面、そして溶融帯域と種結晶との界面における温度勾配を急峻としていた。
しかしながら、本実施形態の手法を用いれば、斜め上の方向から赤外線が照射されるようにし、赤外線発生手段41と焦点F0に存在する溶融帯域Mlとの間の距離に余裕をもたせてマイルドに加熱することが可能になり、かつ、溶融帯域の内部に陰の部分を意図的に形成し、溶融帯域の内部からマイルドかつ迅速に冷却することが可能となる。
別の言い方をすると、あるときには遮蔽筒51によって陰を大きく形成して固液界面の温度勾配を緩くする「冷却傾向」を作り出し、またあるときには、遮蔽筒51により陰が殆ど形成されないように配置して冷却度合いをほぼゼロにした上で、溶融帯域Mlを原料Mから分離した後に原料融液の液滴を自重にて供給する「過熱傾向」をも作り出すことができる。
仮に、溶融帯域Mlを原料Mから分離する際に、予め冷却傾向を作り出して溶融帯域Mlを冷却してある程度固化していないと、溶融帯域Mlにおいて液滴が大きくなりすぎ、溶融原料の液滴の落下の衝撃で、溶融帯域Mlの一部が垂れてしまうおそれもある。その一方、本実施形態における冷却具合調節部5のおかげで、上記の状況が生じないように陰の部分を作ることが可能となる。
そして、それに伴い、溶融帯域の形状を適切に保ったままネッキングMcnの形成を可能とできる。
つまり、本実施形態においては、加熱部4および冷却具合調節部5のおかげで、FZ法を用いながらも、「第1のパラメータである溶融帯域Mlおよび原料M(融液)の温度」そして「第2のパラメータである溶融帯域の形状」を個別に制御し得る。
その結果、本実施形態により、本発明の課題で述べた課題に対応する効果を奏する。
(効果1)本実施形態の構成ならば、遮蔽筒51の位置を調節することにより溶融帯域Mlの内部の陰の部分を調節することが可能となり、ひいては溶融帯域Mlを構成する溶融原料の量を迅速に適量とすることが可能となる。こうすることにより、下方の種結晶Sへの溶融帯域Mlの垂れを制御可能となり、しかも、溶融原料の量を適量とすることにより溶融帯域Mlの形状も容易に操作可能となり、ネッキングMcnを確実に形成することが可能となる。その結果、大口径の良質な単結晶を製造することが可能となる。
(効果2)赤外線によるFZ法だと、単結晶の成長において、成長部分Mcの温度勾配を緩やかにすることができ、良質の結晶育成が可能となる。
つまり、近年の要望である、単結晶に求められる品質のレベルを向上させるという要望、および、精密機器に求められる単結晶のサイズを大きくするという要望を、本実施形態により満たすことが可能となる。
以上の通り、本実施形態によれば、赤外線を用い、かつ、るつぼを用いないFZ法を採用しつつも、小口径から大口径に至るまでの結晶成長における溶融帯域Mlの安定制御を可能とし、産業用途に適した大口径かつ長尺な高品質単結晶Mcを製造可能とする。
<4.先行技術文献と本発明との相違>
従来技術として、本明細書においては特許文献3および4を挙げている。特許文献3には、溶融帯域の水平方向に赤外線ランプを配置しつつ、原料棒(上側)の周囲を包囲するように遮蔽壁を設けることが記載されている(図1の符号22や[0007])。ただ、この遮蔽壁は、原料棒と溶融帯域との間の温度勾配を急峻にするためのものである。温度勾配を急峻にする理由としては、温度勾配が緩やかだと、溶融帯域の部分(液体的な部分)が大きくなってしまい、毛細管現象によって原料棒の細孔へと溶融帯域が染み込む可能性が大きくなってしまうからであると記載されている。
また、特許文献4には、赤外線が斜め上の方向から原料棒へ照射されることが記載されている(図4(a)や[0018][0019])。ただ、この構成は、種結晶側の固液界面の形状を凸状にしないようにするための手法である。また、この技術に関しても、原料棒と溶融帯域との間の温度勾配を急峻にすることを目的としている([0016])。
以上の内容を見ても、本発明の課題の一つは、温度勾配を緩やかにすることを考えると、先行技術文献と本発明とでは、目的とするところが全く逆である。
それに加え、仮に、特許文献3に対して特許文献4を組み合わせようとして赤外線ランプを斜め上の方向に配置すると、溶融帯域の内部に陰が生じてしまう。
特許文献3において、原料棒への熱供給は、溶融帯域からのみの熱供給である([0007])。そうなると、赤外線が原料棒を直射しなくなるため、原料棒が溶融しにくくなり、形成される結晶の歩留りが悪くなる。それに加え、溶融帯域へと真正面から光を照射させることがなくなるため、照射部分の温度が低下する。そうなると、自ずと原料棒における温度勾配が緩くなってしまう。これは、特許文献3が目的とするところと相反する。
一方、仮に、特許文献4に対して特許文献3を組み合わせようとして原料棒を包囲するように遮蔽壁を配置すると、図2(b)に示すように、ただでさえ原料棒により陰ができている状況に追い打ちをかけるように、陰が大きくなってしまう。そうなると、自ずと原料棒における温度勾配が緩くなってしまう。これは、特許文献4が目的とするところと相反する。
以上の通り、特許文献3と4を組み合わせようとは、当業者では思わない。本発明は、溶融帯域の内部に意図的に陰を作り出しつつ、赤外線発生手段41と焦点F0に存在する溶融帯域Mlとの間の距離に余裕をもたせつつマイルドな加熱およびマイルドかつ迅速な冷却そうとする思想があるかこそ、「斜め上の方向からの赤外線の照射」および「遮蔽筒によって原料を包囲」を行っている。これは、当業者では容易に想到することができない技術的思想である。
以下、本実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。以下に記載の無い構成や手法については、上記の実施形態または公知の文献に記載の技術を適宜使用しても構わない。
<実施例1>
出力2.5kWのハロゲンランプを備えた4個の回転楕円鏡42a〜dを、原料Mの溶融帯域Mlの水平方向から見て15度上方の位置に配置し、かつ、回転楕円鏡42の傾斜角は、回転楕円鏡42の中心軸を水平とした配置から天地方向の地の方向に向かって15度とした。そして、直径3mmの種結晶Sと太さ10〜15mmの棒状の原料Mを用意し、原料Mの周囲には直径内径25mmのアルミナ製の遮蔽筒51を配置した。そして、酸素濃度10〜90%の窒素混合ガス中で酸化ガリウム単結晶Mcの成長を行った。
種結晶Sと原料Mを互いに逆方向に回転させ、加熱光の出力を増加させると、まず種結晶Sの上端が溶融した。この融液に原料Mを接触させると、融液を起点として原料は急激に溶融した。原料Mの過剰溶融を防ぐために加熱光出力と遮蔽筒51の下端位置を適切に制御し、種結晶Sと原料Mとの間に適切な溶融帯域Mlを形成した。
溶融帯域Mlが安定した後、種結晶Sと原料Mを下方に徐々に(双方とも1〜10mm/h)引き下げると、種結晶S上に新たに単結晶Mcが成長し始めた。この時、種結晶S上に成長する結晶の直径は種結晶Sを配置した下側軸と原料Mを配置した上側軸の移動速度の相対速度により決まる。なお、一旦、直径を細くして結晶欠陥を除去するいわゆるネッキング工程も順調に行うことができた。この時、遮蔽筒51の下端位置を適切に制御し、溶融帯域Mlの形状を最適に保ったことは言うまでもない。
上側軸の引き下げ速度を徐々に早くしていき、下側軸に比べたときの相対速度を大きくしていくと、溶融帯域Mlに供給される原料Mの量は多くなり、溶融帯域Mlの体積は大きくなっていく。このときも遮蔽筒51の下端位置を適切に制御することにより、溶融帯域Mlが垂れ下がる事も、原料Mと成長部分とが接触する不具合も発生しなかった。結晶径が大きくなるのに伴って大きくなる溶融帯域Mlを維持するために、加熱光出力を増大し、遮蔽筒51の下端を上方に上げ、多くの加熱光が溶融帯域Mlに照射されるようにした。この時、種結晶S側固液界面は上方に移動した。
結晶直径が原料直径より十分に大きくなると、表面張力だけで溶融帯域Mlの維持は困難となり、原料側と溶融帯域Mlとの間は切り離された。しかし、マイルドな冷却ができていること、それに加え、結晶直径が十分に大きいことから、溶融帯域Mlの表面張力により融液が垂れ下がることはなかった。
上下軸ともそのまま引き下げ続けたところ、原料融液は液滴状のまま溶融帯域Mlに供給され続け、溶融帯域Mlは被加熱部分(焦点F0)より引き下げられることにより単結晶Mcとして固化し続けた。
得られた単結晶Mcは異物の混入もなく、亜粒界の発生もない良質な結晶で、直径も50mm〜60mmの間で直胴も100mmの長さに至った。
<比較例1>
出力2.5kWのハロゲンランプを備えた4個の回転楕円鏡42a〜dを、原料Mの溶融帯域Mlの水平方向から見て30度上方の位置に配置し、かつ、回転楕円鏡42の傾斜角は、回転楕円鏡42の中心軸を水平とした配置から天地方向の地の方向に向かって30度とした。なお、特許文献4と同様、遮蔽筒51は設けなかった。そして、直径3mmの種結晶Sと太さ10〜15mmの棒状の原料Mを用意した。そして、酸素濃度10〜90%の窒素混合ガス中で酸化ガリウム単結晶Mcの成長を行った。
種結晶Sと原料Mを互いに逆方向に回転させ、加熱光の出力を増加させると、まず種結晶Sの上端が溶融した。この融液に原料Mを接触させると、融液を起点として原料は急激に溶融した。原料Mの過剰溶融を防ぐために加熱光出力を制御したが、被加熱部分(焦点F0)に投影されるフィラメントの形状が大きいため、詳細な調整を行っても融液が再固化するか、溶融帯域Mlを形成しても上下方向に過剰な長さを有していた。このため、単結晶Mc成長を開始する前に溶融帯域Mlは垂れ下がり、単結晶Mc成長には至らなかった。
<比較例2>
出力1.5kWのハロゲンランプを備えた4個の回転楕円鏡42a〜dを、原料Mの溶融帯域Mlの水平方向から見て15度上方の位置に配置し、かつ、回転楕円鏡42の傾斜角は、回転楕円鏡42の中心軸を水平とした配置から天地方向の地の方向に向かって15度とした。なお、特許文献4と同様、遮蔽筒51は設けなかった。そして、直径3mmの種結晶Sと太さ10〜15mmの棒状の原料Mを用意した。そして、酸素濃度10〜90%の窒素混合ガス中で酸化ガリウム単結晶Mcの成長を行った。
種結晶Sと原料Mを互いに逆方向に回転させ、加熱光の出力を増加させると、まず種結晶Sの上端が溶融した。この融液に原料Mを接触させると、融液を起点として原料は急激に溶融した。原料Mの過剰溶融を防ぐために加熱光出力を制御し、種結晶Sと原料Mとの間に溶融帯域Mlを形成した。
溶融帯域Mlは不安定で、種結晶S周辺に微量に垂れ下がりながら急冷固化し、種結晶Sの上端部に単結晶Mcを形成したものの、ネッキングMcnの形成は不可能だった。その後、上下軸を下方に徐々に(例えば、双方とも1〜10mm/h)引き下げると、結晶上に新たに単結晶Mcが成長し始めた。
上側軸の引き下げ速度を徐々に早くしていき、下側軸との相対速度を早くしていくと、溶融帯域Mlに供給される原料Mの量は多くなり、溶融帯域Mlの体積は大きくなっていった。溶融帯域Mlが垂れ下がる事がないよう、かつ、原料Mと成長部分とが接触する不具合が発生しないように、操作者が細心の注意を払い加熱光出力を制御しながら結晶を成長させた。この時点で、良質な単結晶Mcが形成されるか否かが、操作者の熟練度に依存している。その後、結晶径が大きくなるのに伴って大きくなる溶融帯域Mlを維持するために、操作者が加熱光出力を増大させた。原料M側の固液界面は結晶径の増加とともに相対的に上方に移動した。
結晶直径が原料直径より十分に大きくなると、表面張力だけで溶融帯域Mlの維持は困難となり、原料Mの固体部分Msと溶融帯域Mlとの間は切り離された。このとき、マイルドな冷却はできていないと考えられるものの、結晶直径が十分に大きいため、溶融帯域Mlの表面張力により融液が垂れ下がることはなかった。
上下軸ともそのまま引き下げ続けたところ、原料融液は液滴状のまま溶融帯域Mlに供給され続け、溶融帯域Mlは被加熱部分(焦点F0)から外れるように引き下げられることにより単結晶Mcとして固化し続けた。
比較例2においても、実施例1と同様、原料側と溶融帯域Mlとで切り離し自体は行った。確かに、得られた単結晶Mcは異物の混入は無かったものの、結晶成長初期に生じた急冷固化ならびにネッキング工程が行えなかったために亜粒界が発生し低品質だった。得られた単結晶Mcの直径は40mm〜45mmの間にしか至らなかった。
<比較例3>
出力1.5kWのハロゲンランプを備えた4個の回転楕円鏡42a〜dを、原料Mの溶融帯域Mlの水平方向から見て30度上方の位置に配置し、かつ、回転楕円鏡42の傾斜角は、回転楕円鏡42の中心軸を水平とした配置から天地方向の地の方向に向かって30度とした。なお、特許文献4と同様、遮蔽筒51は設けなかった。そして、直径3mmの種結晶Sと太さ10〜15mmの棒状の原料Mを用意した。そして、酸素濃度10〜90%の窒素混合ガス中で酸化ガリウム単結晶Mcの成長を行った。
種結晶Sと原料Mを互いに逆方向に回転させ、加熱光の出力を増加させると、まず種結晶Sの上端が溶融した。この融液に原料Mを接触させると、融液を起点として原料は急激に溶融した。原料Mの過剰溶融を防ぐために加熱光出力を制御し、種結晶Sと原料Mとの間に溶融帯域Mlを形成した。
溶融帯域Mlは不安定で、種結晶S周辺に微量に垂れ下がりながら急冷固化し、種結晶Sの上端部に単結晶Mcを形成したものの、ネッキングMcnの形成は不可能だった。その後、上下軸を下方に徐々に(例えば、双方とも1〜10mm/h)引き下げると、結晶上に新たに単結晶Mcが成長し始めた。
上側軸の引き下げ速度を徐々に早くしていき、下側軸との相対速度を早くしていくと、溶融帯域Mlに供給される原料Mの量は多くなり、溶融帯域Mlの体積は大きくなっていった。溶融帯域Mlが垂れ下がる事がないよう、かつ、原料Mと成長部分とが接触する不具合が発生しないように、操作者が細心の注意を払い加熱光出力を制御しながら結晶を成長させた。この時点で、良質な単結晶Mcが形成されるか否かが、操作者の熟練度に依存している。その後、原料Mと結晶とが接触し、原料Mの回転がブレる事態が発生しやすくなった。溶融帯域Mlを維持するために、操作者が加熱光出力を増大させた。原料M側の固液界面は結晶径の増加とともに相対的に上方に移動した。
結晶直径が原料直径より十分に大きくなると、表面張力だけで溶融帯域Mlの維持は困難となり、原料Mの固体部分Msと溶融帯域Mlとの間は切り離された。このとき、マイルドな冷却はできていないと考えられるものの、結晶直径が十分に大きいため、溶融帯域Mlの表面張力により融液が垂れ下がることはなかった。
上下軸ともそのまま引き下げ続けたところ、原料融液は液滴状のまま溶融帯域Mlに供給され続け、溶融帯域Mlは被加熱部分(焦点F0)から外れるように引き下げられることにより単結晶Mcとして固化し続けた。
比較例3においても、実施例1と同様、原料側と溶融帯域Mlとで切り離し自体は行った。確かに、得られた単結晶Mcは異物の混入は無かったものの、結晶成長初期に急冷固化が生じたため、そして、ネッキング工程が行えなかったため、亜粒界が発生し低品質だった。得られた単結晶Mcの直径は40mm〜45mmの間にしか至らなかった。
実施例および比較例においては酸化ガリウム単結晶Mcの成長事例を挙げたが、本発明の単結晶Mc製造方法はもちろんこれに限定されない。また、実施例では単結晶Mc直胴部の成長を原料融液の液滴供給で行ったが、加熱光を制限するか遮蔽筒51の下端位置をやや下側にて維持するかあるいはその両方の操作を精密に行うことで、やや結晶径は小さくなるものの、溶融帯域Mlを維持したまま単結晶Mcを成長させることができることは言うまでもない。
1………単結晶製造装置
11……石英炉心管
12……下部シャフトフランジ
13……上部シャフトフランジ
14……雰囲気導入口
15……雰囲気排出口
2………原料把持部
21……原料ホルダー
22……上部シャフト
3………種結晶把持部
31……種結晶ホルダー
32……下部シャフト
4………加熱部
41……赤外線発生手段
42……反射手段(回転楕円鏡)
5………冷却具合調節部
51……遮蔽筒
52……駆動機構
M………原料
Ms……固体部分
Ml……溶融帯域
Mc……成長部分(単結晶)
S………種結晶


Claims (9)

  1. 原料把持部を天地方向の天の位置、種結晶把持部を天地方向の地の位置に配置させた上で両者を近接させることにより、前記原料把持部に把持された原料と前記種結晶把持部に把持された種結晶とを近接させ、加熱部により溶融帯域を形成し、当該溶融帯域を冷却することにより単結晶を製造する単結晶製造装置において、
    前記加熱部は、赤外線発生手段を複数有し、かつ、反射手段として複数の回転楕円鏡を有し、当該回転楕円鏡は共通の焦点を有しつつ、もう一方の焦点は当該共通の焦点から見て天地方向の天の方向に存在するとともに、前記赤外線発生手段は、当該もう一方の焦点に配置されており、
    前記回転楕円鏡の傾斜角は、前記回転楕円鏡の中心軸を水平とした配置から天地方向の地の方向に向かって10度以上20度以下であり、
    天地方向に移動自在な赤外線の遮蔽筒を備え、かつ、前記原料把持部にて把持される原料における少なくとも一部を当該遮蔽筒によって水平方向に包囲自在であり、かつ、当該遮蔽筒が、前記赤外線発生手段から照射される赤外線を遮蔽することにより溶融帯域の内部に陰の部分を形成し、当該溶融帯域の冷却具合および形状を調節する冷却具合調節部を有する、単結晶製造装置。
  2. 前記赤外線発生手段が、2.5kW以上のハロゲンランプ、または、デフォーカス自在な配置のキセノンアークランプである、請求項に記載の単結晶製造装置。
  3. 製造される単結晶の直径は45mmよりも大きい、請求項1または2に記載の単結晶製造装置。
  4. 前記遮蔽筒の下端部が、天地方向において前記共通の焦点と前記もう一方の焦点との間に存在するように、前記遮蔽筒は配置される、請求項1ないしのいずれかに記載の単結晶製造装置。
  5. 原料把持部を天地方向の天の位置、種結晶把持部を天地方向の地の位置に配置させた上で両者を近接させることにより、前記原料把持部に把持された原料と前記種結晶把持部に把持された種結晶とを近接させ、加熱部により溶融帯域を形成し、当該溶融帯域を冷却することにより単結晶を製造する単結晶製造方法において、
    前記加熱部は、赤外線発生手段を複数有し、かつ、反射手段として複数の回転楕円鏡を有し、当該回転楕円鏡は共通の焦点を有しつつ、もう一方の焦点は当該共通の焦点から見て天地方向の天の方向に存在するとともに、前記赤外線発生手段は、当該もう一方の焦点に配置されており、
    前記回転楕円鏡の傾斜角は、前記回転楕円鏡の中心軸を水平とした配置から天地方向の地の方向に向かって10度以上20度以下であり、
    単結晶を製造する際に、前記原料把持部にて把持される原料における少なくとも一部を水平方向に包囲するような位置に赤外線の遮蔽筒を配置し、前記赤外線発生手段から照射される赤外線を遮蔽することにより溶融帯域の内部に陰の部分を形成し、当該溶融帯域の冷却具合および形状を調節してネッキングを形成する、単結晶製造方法。
  6. 前記赤外線発生手段が、2.5kW以上のハロゲンランプ、または、デフォーカス自在な配置のキセノンアークランプである、請求項に記載の単結晶製造方法。
  7. 製造される単結晶の直径は45mmよりも大きい、請求項5または6に記載の単結晶製造方法。
  8. 溶融帯域の冷却具合を調節して原料と溶融帯域との接触を解き、当該溶融帯域または当該溶融帯域が冷却されて成長した結晶に対し、溶融された原料の液滴を供給する、請求項ないしのいずれかに記載の単結晶製造方法。
  9. 前記遮蔽筒の下端部を、天地方向において前記共通の焦点と前記もう一方の焦点との間に存在するように、前記遮蔽筒を配置する、請求項ないしのいずれかに記載の単結晶製造方法。
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